説明

無機質板およびその製造方法

【課題】 アスベスト繊維を用いなくとも、反り、割れ等を生じにくく、生産性に優れた無機質板を提供すること。
【解決手段】 無機材料からなるマトリックスおよび補強繊維を少なくとも含む無機質板において、前記無機質板の少なくとも一方の面に、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールのような多価アルコールが塗布されていることを特徴とする無機質板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質板に関するものであり、詳しくは、反り、割れ等を生じにくく、施工性、生産性に優れた無機質板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機質マトリックスを繊維補強してなる無機質板は、従来から建築材料として、平板、波形、リブ付き波形あるいはその他の形状を有する壁材あるいは屋根材等として用いられている。これらの建築材料には、補強繊維として天然鉱物のアスベスト繊維が用いられてきた。しかし、アスベスト繊維に長期間被爆すると健康に対して悪影響を与えることが指摘されており、昨年10月に、建材分野においては原則として使用が禁止されるに至った。
【0003】
そこで、アスベスト繊維以外の補強繊維(アスベスト代替繊維)を用いて、充分な耐久性を有する製品の開発が進められてきた。例えば、特許文献1(特開2003−335560号公報)には、未晒パルプ45〜95質量%及び晒パルプ5〜55質量%よりなる混合物を叩解処理して得られたカナダ標準ろ水度が100〜300mlの範囲内にある補強用パルプを用い、水硬性結合材と、その他の特定の充填材とを組み合わせてなる無機質抄造板が開示されている。この無機質抄造板は、アスベスト繊維を用いずとも、構造上及び外観上の欠陥がなく、長期耐久性に優れ、有用である。
【0004】
しかしながら、一般的に無機質板は多孔質であり、含水率の減少に伴って収縮し、寸法変化を生じるという性質があり、無機質板の片面のみが乾燥すると、反りを生じやすい。片面のみが乾燥する事例としては、片面のみに塗膜(化粧層)を設けた場合や、無機質板の製品を多段積みした場合の最上段などが挙げられる。従来、反りを防止するために例えば、(1)平衡含水率以下まで製品を乾燥する、(2)塗膜(化粧層)を両面に設ける、(3)製品を多段積みする場合は乾燥防止のためシートなどをかぶせる、等が考えられるが、(1)は乾燥のためのエネルギーコストがかかり、(2)は塗装コストが増大し、(3)は作業が煩雑になるという問題点がある。また、反りの生じた無機質板は、含水率が平衡状態になっても永久歪みとして残り、ベルトコンベア等での搬送が不可となったり、破損したりする恐れがある。また、反りの生じた製品を壁材などとして施工すると、波うちなどの外観上の欠陥を生じる。さらに、反りを生じ易い製品を屋根材として使用すると、夏季では直射日光により60℃以上に加熱され、亀裂の危険性がさらに高まる。そしてこの反りの問題は、従来のアスベスト繊維を用いた建築材料よりも、アスベスト代替繊維を用いた建築材料に多く発生している。
【0005】
なお、特許文献2(特開2002−146998号公報)には、水分の侵入に起因して基材に起こる伸縮、膨張、反りなどを防止することを目的とし、基材の表面に化粧層を設け、基材の裏側に水分遮蔽層を接着剤により貼り合わせ外装パネルが開示されている。水分遮断層としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートの樹脂シートが使用されている。
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、樹脂シートを特別に必要とするとともに、該樹脂シートを基材の裏面に接着剤により貼り合わせるため、材料費および手間がかかりコスト性、生産性に問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−335560号公報
【特許文献2】特開2002−146998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、アスベスト繊維を用いなくとも、反り、割れ等を生じにくく、施工性、生産性に優れた無機質板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、無機材料からなるマトリックスおよび補強繊維を少なくとも含む無機質板において、前記無機質板の少なくとも一方の面に、多価アルコールが塗布されていることを特徴とする無機質板である。
請求項2の発明は、前記無機質板が、抄造法により製造されたことを特徴とする請求項1に記載の無機質板である。
請求項3の発明は、前記無機質の他方の面に、化粧層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の無機質板である。
請求項4の発明は、前記無機質板が、波形形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機質板である。
請求項5の発明は、前記多価アルコールが、グリセリン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機質板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無機質板の片面に多価アルコールを塗布するという簡単な手段で、アスベスト繊維を用いなくとも、反り、割れ等を生じにくく、施工性、生産性に優れた無機質板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における無機質板としては、無機材料からなるマトリックスおよび補強繊維を少なくとも含み、必要に応じてその他の充填材を含む公知の無機質板であることができ、例えば、けい酸カルシウム板、繊維強化セメント板、スラグ石膏板、石膏抄造板等が挙げられる。
けい酸カルシウム板としては、石灰質原料(消石灰、生石灰、ポルトランドセメント等、但しポルトランドセメントは珪酸質成分も含む)、珪酸質原料(珪石粉等の結晶質シリカ、珪藻土やシリカフューム等の非晶質シリカ等)および繊維原料を必須原料とし必要に応じて各種充填材(針状や粉状のワラストナイト、スラリー状や粉状の予め合成したトバモライトやゾノトライト等のけい酸カルシウム水和物、マイカやバーミキュライト等の層状鉱物粉、パーライト粉、炭酸カルシウム粉末、ベントナイトやカオリナイト等の粘土鉱物粉、パリゴルスカイトやセピオライト等の繊維状鉱物粉、ゼオライト等の多孔質鉱物粉、二水石膏や無水石膏等の石膏粉、繊維強化セメント板廃材やけい酸カルシウム板廃材や石膏板廃材等の廃材粉砕粉等)を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形して、さらに必要に応じて加圧成形後、オートクレーブ養生によりけい酸カルシウム水和物を生成させて硬化させることにより製造されたもの、あるいは、石灰質原料と珪酸質原料に水を加えて混合したスラリー状原料をオートクレーブ処理してけい酸カルシウム結晶が凝してなる二次粒子を形成し、これに繊維原料と必要に応じてその他添加材とを原料として添加して混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、乾燥硬化させることにより製造されたものが挙げられる。
繊維強化セメント板としては、繊維材料、ポルトランドセメント等の水硬性セメントを必須原料とし必要に応じて各種充填材(針状や粉状のワラストナイト、スラリー状や粉状の予め合成したトバモライトやゾノトライト等のけい酸カルシウム水和物、マイカやバーミキュライト等の層状鉱物粉、パーライト粉、炭酸カルシウム粉末、ベントナイトやカオリナイト等の粘土鉱物粉、パリゴルスカイトやセピオライト等の繊維状鉱物粉、ゼオライト等の多孔質鉱物粉、二水石膏や無水石膏等の石膏粉、結晶質または非晶質のシリカ粉、繊維強化セメント板廃材やけい酸カルシウム板廃材等の廃材粉砕粉等)を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、さらに必要に応じて加圧成形後、常温下、高温高湿度下(スチーム)、あるいはオートクレーブによる養生で硬化させ、必要に応じて二次養生を行うことによって得られるものが例示される。
スラグ石膏板としては、スラグ、石膏(石膏板の廃材粉砕粉であってもよい)、スラグと石膏との反応を開始させる刺激剤、繊維材料および無機充填材(針状や粉状のワラストナイト、スラリー状や粉状の予め合成したトバモライトやゾノトライト等のけい酸カルシウム水和物、マイカやバーミキュライト等の層状鉱物粉、パーライト粉、炭酸カルシウム粉末、ベントナイトやカオリナイト等の粘土鉱物粉、パリゴルスカイトやセピオライト等の繊維状鉱物粉、ゼオライト等の多孔質鉱物粉、結晶質または非晶質のシリカ粉、けい酸カルシウム板廃材等の廃材粉砕粉等)を混合し、スラリーを形成させ、このスラリーを抄造法により板状に成形し、必要に応じて加圧成形し、養生硬化し、乾燥することによって得られるものが例示される。
石膏抄造板としては、半水石膏やII型無水石膏等の水和性石膏、繊維材料、水和性石膏の硬化調整剤、必要に応じてその他の充填材(針状や粉状のワラストナイト、スラリー状や粉状の予め合成したトバモライトやゾノトライト等のけい酸カルシウム水和物、マイカやバーミキュライト等の層状鉱物粉、パーライト粉、炭酸カルシウム粉末、ベントナイトやカオリナイト等の粘土鉱物粉、パリゴルスカイトやセピオライト等の繊維状鉱物粉、ゼオライト等の多孔質鉱物粉、結晶質または非晶質のシリカ粉、けい酸カルシウム板廃材等の廃材粉砕粉等)を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、さらに必要に応じて加圧成形し、養生硬化し、乾燥することによって得られるものが挙げられる。
なお、繊維材料としては特に制限されないが、例えば化学パルプ、木質パルプ等のセルロースパルプ、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、鋼繊維(スチール線繊維)、アモルファス金属繊維等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維(カーボンファイバー)、ロックウール繊維、ウィスカー等の無機繊維などが挙げられるが、セルロースパルプを基本とし必要に応じて他の繊維を併用することが多い。
【0011】
前記の各無機質板を製造するために採用される抄造法には、丸網法、長網法、フローオン法等があり、周知のように、各種原料を含むスラリーを薄膜状に抄き取り、脱水しながらロールに巻き取って積層し、所定の厚さになったならばロールより取り出す工程を有する。抄造法により得られる無機質板は、板の抄造方向すなわち板の長手方向に繊維材料が配向し、この配向方向に直交する方向にかかる力に対しては高強度である反面、その配向方向と平行にかかる力に対しては繊維材料の補強効果が弱く、反りや割れが発生し易い。したがって、本発明は、とくに抄造法により製造された無機質板の、繊維材料の配向方向に平行な方向の反りや割れを有利に防止することができる。なお、本発明は、抄造法により得られた無機質板に制限されず、原料スラリーを型枠内に流し込みプレスする公知のプレスモールド法により得られた無機質板や、木片等の木質原料とセメントとを半湿式状態で混合しプレス成形してなる木片セメント板であってもよい。
【0012】
なお、無機質板の板厚、寸法等はとくに制限されず、用途等を勘案して適宜決定すればよいが、本発明の無機質板は、反りや割れの発生しやすい薄手の無機質板、すなわち厚さ3〜16mmの無機質板であることができ、とくに本発明の効果が有利に発揮されるのは、厚さ3〜10mmの繊維強化セメント板である。
【0013】
また、無機質板の形状は、とくに制限されないが、例えば平板、波形形状を有するものであることができる。ここで、本発明でいう「波形形状」とは、曲げ部外側の曲率半径が板厚以上、曲げ角度が90度以下で、正逆交互に板厚以上の間隔で2回以上周期的あるいは非周期的に折り曲げられた形状を有するものである。また、間隔とは折り曲げによって生じた隣り合う谷部の距離をいう。折り曲げによって生じた山部の頂点が描く線は直線状、曲線状あるいは少なくとも1つの角を有する折れ線状の何れでも良い。なお、周期的に折り曲げた形状の一例としてJIS A5430:2001の付属書1図1に示される形状を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明は、無機質板が波形形状を有する場合に、とくに反り、割れの防止効果を発揮することができる。
【0014】
本発明の無機質板は、多価アルコールが塗布される面とは反対の面、すなわち前記無機質板の他方の面に、化粧層が設けられていてもよい。ここでいう化粧層とは、着色を目的とした塗料を塗装してなる塗膜層や、化粧フィルムや化粧紙等を被覆することによるいわゆる意匠性を高めるための化粧層であってもよく、無機質板の他方の面から水分の出入りが阻害される層の形成を意味する。着色を目的とした塗料としては、従来から公知の各種塗料であることができ、またその塗装方法についてもとくに制限されず、公知のロールコーター、スプレー等の方法が挙げられる。
また塗膜層の構成としては、単純な構成では無機質板の他方の面に含浸シーラー処理を施し、その上に塗料を塗装して塗膜層を形成した構成であり、複雑な構成としては、例えば含浸シーラー処理層、下地層、印刷層、クリアー層、これら層間に適宜設けられる接着剤層を有するものが挙げられ、代表的なものとして、湿気硬化型ウレタン系樹脂からなる含浸シーラー層、紫外線硬化型樹脂からなる下地層、化粧紙に代表される印刷層、透明または半透明硬化樹脂層からなるクリアー層が例示される。塗膜層の厚さは特に限定されるものではないが、30μm〜300μmであることが多い。
また、化粧フィルムや化粧紙により化粧層を形成する場合には、無機質板の他方の面に含浸シーラー処理を施し、その上に接着層を介して化粧フィルムや化粧紙を積層することにより化粧層を形成し、必要に応じて更にその上にクリアー層(トップクリアー層)が設けられる。
化粧フィルムや化粧紙の材質としては、紙、オレフィン樹脂フィルム、塩化ビニル樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム等の樹脂フィルム、アルミ箔、ステンレス箔等の金属箔等がある。また前記接着層の材料としては、酢酸ビニル系接着剤、ウレタン系接着剤、反応型ウレタン系ホットメルト等があり、接着方法としては熱プレス、熱ロールプレス等がある。また、化粧フィルムや化粧紙の厚さは特に限定されるものではないが、25μm〜500μmのものが使用されることが多い。
【0015】
本発明で使用される多価アルコールは、炭化水素の複数個の水素をヒドロキシル基で置換した化合物であり、本発明では、グリセリン、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールが好ましい。具体的には、アルキレングリコールとしてエチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられ、ポリアルキレングリコールとしてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。中でも無機質板の反り、割れを防止するという効果を最大限に発揮するのは、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールの平均分子量は、200〜2000、好ましくは200〜1000である。また、グリセリン、エチレングリコール、ポリチレングリコールは、無機質板への塗布性に優れ、材料費も低く抑えられるという利点を有する。
【0016】
多価アルコールの無機質板への塗布は、原液をそのまま用いて塗布してもよいが、水や1価アルコール等の有機溶媒で希釈あるいは溶解して塗布するのが好ましい。多価アルコールとしてグリセリン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールを用い、希釈液として水を用いる場合、水は、原液に対し、30〜100質量%の割合で加えるのが好ましい。
塗布量は、原液として、10〜200g/m2、好ましくは50〜180g/m2、さらに好ましくは80〜130g/m2である。
塗布方法は、塗装の目的で行われている、当業界で周知の各種方法を採用することができる。例えば、刷け塗り、スプレー塗装、浸漬、フローコーター、ロールコーター等、各種手段が挙げられる。
塗布後は、とくに乾燥する必要はないが、必要に応じて表面を乾燥させる程度の乾燥工程を行うこともできる。
多価アルコールの塗布は、無機質板の片面のみに塗布すれば、反り、割れを防止することができるが、当然、無機質板の両面に塗布してもよい。
多価アルコールの塗布は、無機質板の養生硬化後が好ましい。
また、無機質板の他方の面に、塗装が施されている場合、多価アルコールを塗布する時期は、該塗装を行う前、後のいずれであってもよい。例えば、無機質板が屋根材である場合、無機質板の片面に多価アルコールを塗布した後、施工現場まで運搬し、屋根形状を作製した後、その場で屋根材の表面に塗装面を形成してもよい。
また、通常無機質板は複数枚をパレット上に積み重ねて出荷するのが一般的であるが、予め工場内で無機質板の片面のみに多価アルコールを塗布し、他の面には化粧層等が設けられておらず素板のままである場合には、多価アルコールを塗布した面を上向きにして積み重ねるのが好ましく、他の面に化粧層を設けた場合には、2枚の無機質板の化粧層を設けた面同士を向き合わせ、必要に応じてその間に合紙を入れて重ね合わせたものを1組として、組単位で積み重ねるのが好ましい。
【0017】
無機質板の一方の面に塗布された多価アルコールは、長時間が経過すると蒸発等により消失していくが、無機質板の反り、割れを防止するという本発明の効果を達成するためには、多価アルコールは短期間無機質板表面に存在していればよい。例えば無機質板の製造後、半年ないし一年経過すると材料が安定化し、また無機質板の含水率も平衡含水率となるので、多少の温度変化や水分変動では無機質板に反り、割れは発生しにくい。したがって、無機質板の反り、割れが生じ易い、製造直後から半年間程度まで、多価アルコールが無機質板表面に存在していればよい。
【実施例】
【0018】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0019】
(実施例1)
普通セメント74質量部、シリカヒューム5質量部、セピオライト1質量部、石灰石粉末6質量部、ワラストナイト8質量部、ポリビニルアルコール繊維1.5質量部、パルプ4.5質量部を混合し、得られた原料混合物を水に分散させて固形分濃度7質量%のスラリーとした後、丸網式抄造機を用いて厚さ7mmのグリーンシートを作製した。次に、得られたグリーンシートを波形形状に形付けした後、プレス成形し、更に、60℃で加温養生した後2週間養生し、厚さ6mmのJIS A5430に規定される大波板に相当する形状の長さ30cm、幅95cmの無機質抄造板を得た。
なお、上記原料の詳細は以下のとおりである。
普通セメント:太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント
シリカフューム:THE EGYPTIAN FERROALLOYS COMPANY社製、平均粒子径10.5μm
セピオライト:巴工業(株)社製、Minugel200i、平均粒子径10.7μm
石灰石粉末:奥多摩工業社製、ブレーン値3500cm2/g
ワラストナイト:インド産ケモリットA−60、ブレーン値2000cm2/g
ポリビニルアルコール繊維:クラレ社製、RMH−182、繊維長6mm
【0020】
次に、グリセリン100質量部に対し、水30質量部を加え、多価アルコール溶液を調製し、得られた無機質抄造板の片面(裏面)に、該多価アルコール溶液を、150g/m2の塗布量で、刷毛を用いて塗布した。また、無機質板の他方の面(表面)には、ウレタン塗装を施した。ウレタン塗装の塗料としては二液性ウレタン塗料(川上塗料(株)製、商品名ウレオールASE#300)を用い、130g/m2の塗布量で塗布した。
続いて、無機質板の表面側を60℃で所定時間加熱し、反り量を測定した。反り量は、裏面の巾方向の、両端の谷底間(13cm×6ピッチ)に水糸を張り、中央の谷底と水
糸との距離を反り量として測定した。
結果を表1に示す。
【0021】
(実施例2)
多価アルコールとしてポリエチレングリコール(平均分子量=400)を用い、該ポリエチレングリコール100質量部に対し、水30質量部を加え、多価アルコール溶液を調製し、得られた無機質抄造板の裏面に、該多価アルコール溶液を、120g/m2の塗布量で塗布したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0022】
(比較例1)
実施例1において、無機質抄造板の裏面に、多価アルコール溶液を塗布せずに、湿気硬化型ウレタン系樹脂(コニシ(株)製、商品名KU663)からなる含浸シーラーを、ロールコーターで50g/m2塗装したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0023】
(比較例2)
実施例1において、無機質抄造板の裏面に、何も塗布しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0024】
(参考例1)
実施例1において、無機質抄造板の表面にも裏面にも、何も塗布しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0025】
(参考例2)
実施例1において、無機質抄造板の裏面に、多価アルコール溶液を塗布せずに、表面に施したウレタン塗装を行ったこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1の結果から、裏面に多価アルコールを塗布した実施例の無機質板は、加熱後6時間を経過しても反り量が抑制されている。そしてその結果は、無機質板の片面のみが乾燥しない条件、すなわち、無機質板の表面にも裏面にも何も塗布しなかった場合(参考例1)および無機質板の両面にウレタン塗装を行った場合(参考例2)と同等である。これに対し、無機質板の表面にウレタン塗装を行い、裏面には含浸シーラー処理を行った場合(比較例1)は、反りの防止効果が発現しておらず、無機質板の表面にウレタン塗装を行い、裏面には多価アルコールを塗布しなかった場合(比較例2)の結果と同じである。このことは、通常の含浸シーラー処理では、反りの防止効果が発揮されないことを証明している。
【0028】
(実施例3)
普通セメント74質量部、シリカヒューム5質量部、セピオライト1質量部、石灰石粉末6質量部、ワラストナイト8質量部、ポリビニルアルコール繊維1.5質量部、パルプ4.5質量部を混合し、得られた原料混合物を水に分散させて固形分濃度7質量%のスラリーとした後、丸網式抄造機を用いて厚さ7mmのグリーンシートを作製した。次に、得られたグリーンシートを波形形状に形付けした後、プレス成形し、更に、60℃で加温養生した後2週間養生し、厚さ6mmのJIS A5430に規定されるフレキシブル板に相当する形状の長さ30cm、幅91cmの無機質抄造板を得た。
なお、上記原料の詳細は以下のとおりである。
普通セメント:太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント
シリカフューム:THE EGYPTIAN FERROALLOYS COMPANY社製、平均粒子径10.5μm
セピオライト:巴工業(株)社製、Minugel200i、平均粒子径10.7μm
石灰石粉末:奥多摩工業社製、ブレーン値3500cm2/g
ワラストナイト:インド産ケモリットA−60、ブレーン値2000cm2/g
ポリビニルアルコール繊維:クラレ社製、RMH−182、繊維長6mm
【0029】
次に、グリセリン100質量部に対し、水30質量部を加え、多価アルコール溶液を調製し、得られた無機質抄造板の片面(裏面)に、該多価アルコール溶液を、150g/m2の塗布量で、刷毛を用いて塗布した。また、無機質板の他方の面(表面)には、ウレタン塗装を施した。ウレタン塗装の塗料としては二液性ウレタン塗料(川上塗料(株)製、商品名ウレオールASE#300)を用い、130g/m2の塗布量で塗布した。
続いて、無機質板を常温室内にこば立てし、所定時間経過後の反り量を測定した。反り量は、裏面の巾方向の、両端の谷底間(13cm×6ピッチ)に水糸を張り、反り量と
して測定した。
結果を表2に示す。
【0030】
(実施例4)
多価アルコールとしてポリエチレングリコール(平均分子量=400)を用い、該ポリエチレングリコール100質量部に対し、水30質量部を加え、多価アルコール溶液を調製し、得られた無機質抄造板の裏面に、該多価アルコール溶液を、120g/m2の塗布量で塗布したこと以外は、実施例3を繰り返した。
【0031】
(比較例3)
実施例3において、無機質抄造板の裏面に、多価アルコール溶液を塗布せずに、湿気硬化型ウレタン系樹脂(コニシ(株)製、商品名KU663)からなる含浸シーラーを、ロールコーターで50g/m2塗装したこと以外は、実施例3を繰り返した。
【0032】
(比較例4)
実施例3において、無機質抄造板の裏面に、何も塗布しなかったこと以外は、実施例3を繰り返した。
【0033】
(参考例3)
実施例3において、無機質抄造板の表面にも裏面にも、何も塗布しなかったこと以外は、実施例3を繰り返した。
【0034】
(参考例4)
実施例3において、無機質抄造板の裏面に、多価アルコール溶液を塗布せずに、表面に施したウレタン塗装を行ったこと以外は、実施例3を繰り返した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2の結果から、裏面に多価アルコールを塗布した実施例の無機質板は、加熱後24時間を経過しても反り量が抑制されている。そしてその結果は、無機質板の片面のみが乾燥しない条件、すなわち、無機質板の表面にも裏面にも何も塗布しなかった場合(参考例3)および無機質板の両面にウレタン塗装を行った場合(参考例4)と同等である。これに対し、無機質板の表面にウレタン塗装を行い、裏面には含浸シーラー処理を行った場合(比較例3)は、反りの防止効果が発現しておらず、無機質板の表面にウレタン塗装を行い、裏面には多価アルコールを塗布しなかった場合(比較例4)の結果とほぼ同じである。このことは、通常の含浸シーラー処理では、反りの防止効果が発揮されないことを証明している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、無機質板の片面に多価アルコールを塗布するという簡単な手段で、アスベスト繊維を用いなくとも、反り、割れ等を生じにくく、施工性、生産性に優れた無機質板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料からなるマトリックスおよび補強繊維を少なくとも含む無機質板において、前記無機質板の少なくとも一方の面に、多価アルコールが塗布されていることを特徴とする無機質板。
【請求項2】
前記無機質板が、抄造法により製造されたことを特徴とする請求項1に記載の無機質板。
【請求項3】
前記無機質板の他方の面に、化粧層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の無機質板。
【請求項4】
前記無機質板が、波形形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機質板。
【請求項5】
前記多価アルコールが、グリセリン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機質板。

【公開番号】特開2006−273656(P2006−273656A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94895(P2005−94895)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】