説明

無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子製造装置、並びに無機質球状化粒子の製造方法

【課題】逆火を生じる恐れが無く、効率よく無機質球状化粒子を製造する事ができ、さらに、原料粉体の平均粒径が粒状化の過程において変動することが少なく、目的とする粒度分布を有する球状化粒子が得られる無機質球状化粒子製造用バーナおよび無機質球状化粒子製造装置、並びに無機質球状化粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】拡散型のバーナの原料供給路1Aに原料粉体をキャリアガスに搬送して送り込み、酸素を第一酸素供給路5Aと第二酸素供給路6Aとに二分して供給する。燃料ガスを燃料供給路4Aに送り込む。燃焼室9Bで生成した燃焼ガスを気体混合室9Aに導入する際、混合用ガスを第一及び第二気体供給路7A,8Aと二分して供給する。原料粉体の凝集状態を改善し、火炎温度及び火炎中での粒子の滞留時間を調整しながら原料粉体を加熱溶融する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子を製造する際に使用されるバーナおよびこのバーナを使用した無機質球状化粒子製造装置、並びにこの装置を使用した無機質球状化粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機質球状化粒子は、珪石などを粉砕した原料粉体を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球状化させたものである。
なお、本明細書においては、無機質球状化粒子を単に球状化粒子と記すことがある。
【0003】
無機質球状化粒子の製造に関し、従来技術として、特許文献1〜4に開示されている方法がある。
原料粉体の球状化には、高温の火炎が必要であることから、通常は、酸素・ガス燃焼方式のバーナが用いられている。
これらのバーナには、予混合型バーナと、拡散型バーナとがある。予混合型とは酸素と燃料ガスとを予め混合させて燃焼場に噴出させるものであり、拡散型とは酸素と燃料ガスとを別々に噴出し、燃焼場で混合させるものである。
【0004】
特許文献2に開示の方法では、予混合型バーナが用いられており、特許文献1、3、4に記載の方法では、拡散型バーナが使用されている。
特許文献1での拡散型バーナは、同心円状の二重管であって、その内管と外管との間に多数の小管を設けてある。このバーナを竪型炉に設置し、珪素質原料をバーナの中心管(内管)から自然流化または加圧流下させ、小管からの燃料ガスと外管からの酸素ガスとで形成した火炎中に原料粉体を投入し、溶融シリカ球状体を製造するものである。
【0005】
特許文献2に記載の予混合型バーナは、バーナ内で、原料粉体、酸素、LPGが充分に混合され、バーナ先端に形成される火炎中に原料粉体が供給されるものである。
特許文献3、4に記載の拡散型バーナは、同心の四重管構造であり、中心から酸素ガス又は酸素富化ガスをキャリアガスとして原料粉体を燃焼室に供給し、その外周から燃料ガスを、更にその外周から1次酸素と2次酸素を供給するように形成され、最外周には、バーナを冷却する冷却水通路が設けられている。
また、特許文献3、4には、このような拡散型バーナを用いて無機質球状化粒子を製造する装置が開示されている。
【0006】
特許文献4に開示されている無機質球状化粒子製造装置においては、図4に示すように、原料粉体が原料供給機Aから切り出され、キャリアガス供給装置A’から供給されるキャリアガスに同伴されてバーナBに搬送される。このバーナBには、酸素供給設備Cからの酸素と、LPG供給設備Dからの液化石油ガス(LPG)とが供給される。
竪型炉E内の火炎中で球状化された粒子を含む排ガスは、経路Fから竪型炉Eの底部に導入された空気により冷却され、後段のサイクロンG、バグフィルターHで球状化粒子が捕集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−145613号公報
【特許文献2】特開昭62−241543号公報
【特許文献3】特許第3331491号公報
【特許文献4】特許第3312228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示されている予混合型バーナでは、酸素等とLPG等の燃料ガスとを、バーナ内で予め混合している。このようなバーナは、ノズルの先端から、酸素と燃料ガスとの混合物が噴出する構造であるので、バーナ内へ逆火する可能性がある。
一方、特許文献1に記載された拡散型バーナにおいては、逆火の心配は無いが、火炎中での原料粉体の滞留時間が短いため、単位流量当たりの原料粉体投入量を多くすると、十分に球状化することが出来ない不都合があった。また、滞留時間を確保するために単に流速を下げた場合は、燃料と酸素との混合が不十分になり、この結果、火炎の温度低下や、原料粉体の分散状態が不均一になるなどの不具合を招いてしまう。
【0009】
ところで、原料粉体は、火炎中で、主に火炎からの強制対流熱伝達により加熱・溶融され、表面張力によって球状化する。
特許文献3、4に記載された構造の拡散型バーナにおいては、燃焼室が設けられ、特許文献1に記載のバーナに比べ、製造した無機質球状化粒子の凝集状態に改善がみられる。
【0010】
しかし、種々の平均粒径を持つ原料粉体を同一燃焼量で球状化処理したところ、原料粉体の平均粒度が小さくなるにつれて、凝集がすすみ、球状化処理できる量が減少する傾向が見られた。
また、火炎中で処理された後の球状粒子の平均粒度が、原料粉体の平均粒度より大きくなる傾向が見られた。
したがって、特許文献3、4に記載されたバーナは、酸素燃焼による高温の火炎が形成されるため、効率良く原料粒子を処理出来るといった利点があるが、燃焼ガス量が少ないために火炎中での原料粒子の分散が不十分となり、溶融・球状化された粒子同士が火炎中で融着して粗大化するといった課題があった。すなわち、平均粒度が、より小さい球状化粒子を得るためには、特許文献3、4に記載されたバーナでは不充分であることがわかった。
【0011】
そこで、本発明における課題は、逆火を生じる恐れが無く、効率よく無機質球状化粒子を製造する事ができ、さらに、原料粉体の平均粒径が粒状化の過程において変動することが少なく、目的とする粒度分布を有する球状化粒子が得られる無機質球状化粒子製造用バーナおよび無機質球状化粒子製造装置、並びに無機質球状化粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究した結果、上記問題の原因が原料粉体の凝集状態と、火炎温度及び火炎中での粒子の滞留時間にあることを突き止め、原料粉体が火炎中に突入した段階で、凝集状態が解放され、その後、高温火炎中で対流する間に、溶融・球状化し、あるいは粒子同士が融着する事を見いだして本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、無機質球状化粒子製造用バーナであって、
キャリアガスに同伴された原料粉体を供給する原料供給路と、
前記原料供給路の外周に設けられて燃料ガスを供給する燃料供給路と、
前記燃料供給路の外周に設けられて酸素含有ガスを供給する第一酸素供給路と、
前記第一酸素供給路の外周に設けられて酸素含有ガスを供給する第二酸素供給路と、
前記第二酸素供給路の外周に設けられて混合用ガスを供給する第一気体供給路と、
前記第一気体供給路の外周に設けられて混合用ガスを供給する第二気体供給路と、
前記原料供給路の先端に多数の小孔が形成された粉体分散板を介して接続された原料分散室と、
前記原料分散室に接続され出口側が拡径した燃焼室と、
前記燃焼室の出口側に接続された気体混合室と、を備え、
前記燃焼室の円錐状壁面に、前記燃料供給路、前記第一酸素供給路、前記第二酸素供給路の先端がそれぞれ開口しており、
前記燃料供給路の開口部が、前記燃焼室の壁面からバーナ中心軸に対して並行に燃料を噴出する燃料ガス噴出孔であり、
前記第一酸素供給路の開口部が、燃焼室の壁面から燃焼室内に旋回流を形成する方向に酸素含有ガスを噴出する第一酸素噴出孔であり、
前記第二酸素供給路の開口部が、前記第一酸素噴出孔よりバーナ先端側に開口する第二酸素噴出孔であるとともに、
前記気体混合室の壁面に、前記第一及び第二気体供給路の先端がそれぞれ開口しており、
前記第一気体供給路の開口部が、空気混合室の壁面から空気混合室内に旋回流を形成する方向に混合用ガスを噴出する第一気体噴出孔であり
前記第二気体供給路の開口部が、前記第一気体噴出孔よりバーナ先端側に開口するとともに、空気混合室の壁面から空気混合室内に旋回流を形成する方向に混合用ガスを噴出する第二気体噴出孔であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の無機質球状化粒子製造装置において、前記混合用気体が、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガス、及び窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスのいずれか又は一以上の混合物であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のバーナを炉頂部に垂直下向きに備えた竪型の球状化炉と、
前記球状化炉の下流に無機質球状化粒子を捕集するサイクロンおよびバグフィルターと、を備えることを特徴とする無機質球状化粒子製造装置である。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の無機質球状化粒子製造装置において、前記バーナの第一気体供給路と第二気体供給路とに供給する混合用気体を、それぞれ独立して制御する制御手段を備えることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載の無機質球状化粒子製造装置において、サイクロンを経由してバグフィルターに接続する経路と、サイクロンを経由せずバグフィルターに接続する経路を有し、且つそれぞれの経路が切り替え可能となっていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の無機質球状化粒子製造装置において、
サイクロンにて粗粒子を捕集するとともに、バグフィルターにて微粒子を捕集することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法である。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の無機質球状化粒子の製造方法において、前記バグフィルターが粒子を一括捕集することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバーナにあっては、拡散型のバーナであるので、逆火を生じることがない。また、酸素又は酸素富化空気をキャリアガスとして原料粉体を供給することにより、配管の自然摩耗を低減することができる。したがって、配管からガスがリークするおそれがないため、安全性が高く取扱が容易になる。
【0020】
本発明のバーナは、燃料ガス供給路と酸素ガス供給路とが接続された燃焼室の後方に、気体混合室が設けられている。この気体混合室において燃焼ガス中に気体を吹き込むことにより、バーナ火炎中における原料の分散性を向上させることができる。また、燃焼ガスの体積を増加させることにより、火炎中での粒子の滞留時間を増加させることができる。
また、気体混合室には、第一及び第二気体噴出孔が設けられており、これらの第一及び第二気体噴出孔から噴出される気体は、それぞれ独立に流量を制御する事が可能であるため、球状化粒子の製造おいて最適な燃焼状態を容易に調整することができる。
したがって、要求に応じた粒径あるいは粒度分布を有する球状化粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した一実施形態であるバーナを示す概略断面図である。
【図2】本発明を適用した一実施形態であるバーナを示す概略側面図である。
【図3】本発明を適用した無機質球状化粒子の製造装置の例を示す概略構成図である。
【図4】従来の無機質球状化粒子の製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナについて、これを用いた無機質球状化粒子の製造装置とともに図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0023】
図1及び図2は、本発明を適用した一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ(以下、単にバーナと呼ぶことがある)を示すものであり、図1はバーナ中心軸に沿って切断した断面図であり、図2はバーナをその先端側から眺めた側面図であるが、原料粉体、燃料、酸素の噴出孔のみを示している。
これらの図において、符号1は原料供給管を示し、その内部は原料粉体とキャリアガスとの混合物が供給される原料供給路1Aとなっている。
キャリアガスとしては酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガスが用いられる。
原料粉体としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ガラスなどの無機質粉末であって、その粒子形態が角を有する非球形の粒子であるものが用いられる。
【0024】
この原料供給管1の出口端には粉体分散板2が取り付けられている。この粉体分散板2は、原料粉体とキャリアガスとの混合粉体をバーナ出口方向に向けて放射状に噴出させるもので、斜め外方に向けた複数の原料噴出孔3、3・・が円周上に等間隔に形成されている。
【0025】
原料供給管1の外側には、燃料供給管4が同軸的に設けられており、原料供給管1と燃料供給管4との間の空隙は燃料供給路4Aとなって、液化石油ガス(LPG)などの燃料ガスが供給されるようになっている。燃料供給路4Aの出口端は複数の燃料ガス噴出孔4B、4B・・となっており、バーナ中心軸に対して平行に燃料を噴出するようになっている。これら複数の燃料ガス噴出孔4B、4B・・は、円周上に等間隔に形成されている。
【0026】
燃料供給管4の外側には、第一酸素供給管5が同軸的に設けられており、燃料供給管4と第一酸素供給管5との間の空隙は第一酸素供給路5Aとして、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガスが供給されるようになっている。
第一酸素供給路5Aの出口端は複数の第一酸素噴出孔5B、5B・・となっており、これら第一酸素噴出孔5B、5B・・の出口はバーナ中心軸に向いて開口しており、バーナ中心軸に対して直角方向に酸素を噴射し、後述する燃焼室9B内で旋回流を形成するように構成されている。
これら複数の第一酸素噴出孔5B、5B・・は、円周上に等間隔に形成されており、かつ前記複数の燃料噴出孔4B、4B・・と円周上異なる位置であって2つの燃料噴出孔4B、4Bの中間に配されている。
【0027】
第一酸素供給管5の外側には第二酸素供給管6が同軸的に設けられており、第一酸素供給管5と第二酸素供給管6との間の空隙は、第二酸素供給路6Aとなっている。この第二酸素供給路6Aは、第一酸素供給路5Aに比較してその断面積が広くなっており、多くの酸素を供給できるようになっている。第二酸素供給路6Aの出口端は、複数の第二酸素噴出孔6B、6B・・が形成され、この第二酸素噴出孔6B、6B・・は円周上に等間隔に形成されている。これら第二酸素噴出孔6B、6B・・は、バーナ中心軸に平行方向に開口しており、酸素含有ガスがバーナ中心軸に対して平行方向に噴出されるようになっている。
【0028】
第二酸素供給管6の外側には、第一気体供給管7が同軸的に設けられており、第二酸素供給管6と第一気体供給管7との間の空隙は第一気体供給路7Aとして、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガス、或いは窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス(以下、単に「混合用ガス」ということもある)が供給されるようになっている。
第一気体供給路7Aの出口端は複数の第一気体噴出孔7B、7B・・となっており、これら第一気体噴出孔7B、7B・・の出口はバーナ中心軸に向いて開口しており、バーナ中心軸に対して直角方向に上記混合用ガスを噴射し、後述する気体混合室9Aで旋回流を形成するように構成されている。
【0029】
第一気体供給管7の外側には、第二気体供給管8が同軸的に設けられており、第一気体供給管7と第二気体供給管8との間の空隙は第二気体供給路8Aとして、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガス、或いは窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが供給されるようになっている。上記混合用ガスとしては、特に空気を用いることが好ましい。
第二気体供給路8Aの出口端は複数の第二気体噴出孔8B、8B・・が形成されている。また、この第二気体噴出孔8B、8B・・は、円周上に等間隔に形成されている。さらに、これら第二気体噴出孔8B、8B・・は、バーナ中心軸に向いて開口しており、バーナ中心軸に対して直角方向に上記混合用ガスを噴射し、後述する気体混合室9Aで旋回流を形成するように構成されている。
【0030】
また、第二気体供給管8は、その厚さが厚くなっており、その内部には冷却水が循環して流れる冷却水通路81が形成され、バーナ自体を冷却できるようになっている。
【0031】
バーナの先端には、円筒部分が設けられており、この円筒部分の内部の空間が気体混合室9Aとなっている。すなわち、気体混合室9Aは、バーナ先端を構成する第二気体供給管8、第一気体供給間7、第二酸素供給管6の先端部分を同一の内径を有する円筒状に形成して、バーナ中心軸に対して平行方向に並べることで構成される。そして、気体混合室9Aの底部は、燃焼室9Bに続いている。
【0032】
また、気体混合室9Aの円筒状壁面には、第一気体噴出孔7B、7B・・、第二気体噴出孔8B、8B・・がそれぞれ開口している。
さらに、前記第二気体噴出孔8Bは、第一気体噴出孔7Bよりバーナの先端側に開口している。
【0033】
バーナの気体混合室9Aの底部から続く部分は、すり鉢状に凹んでおり、この部分が燃焼室9Bとなっている。すなわち、燃焼室9Bは、気体混合室9Aと後述する原料分散室9Cとの間に連続して設けられた空間であり、その内径は、原料分散室9C側から気体混合室9A側に向かって漸次拡径されている。
また、燃焼室9Bの傾斜した壁の部分は、第二酸素供給管6の先端部に設けられた円筒部分の内側の部分と第一酸素供給管5の先端部分を斜めに形成することで構成され、燃焼室9Bの底部は円筒状の原料分散室9Cに続いている。原料分散室9Cは、原料供給管1の出口端部が粉体分散板2よりもバーナの先端方向に向けて薄肉となって円筒状に延びることによって形成されている。
【0034】
さらに、燃焼室9Bの円錐状壁面には、燃料ガス噴出孔4B、4B・・、第一酸素噴出孔5B、5B・・、第二酸素噴出孔6B、6B・・がそれぞれ開口している。
また、前記第二酸素噴出孔6Bは第一酸素噴出孔5Bよりバーナの先端側に開口している。
【0035】
このような構造の無機質球状化粒子製造用バーナにあっては、原料供給路1Aの先端が多数の小孔を有する粉体分散板2を介して原料分散室9Cに接続され、原料供給路1Aの外周に設けられた燃料ガス供給路4Aと、該燃料ガス供給路4Aの外周に設けられた第一酸素供給路5Aと、該第一酸素供給路5Aの外周に設けられた第二酸素供給路6Aとが、各供給路の先端に接続する出口側が拡径した燃焼室9Bに向けて開口しているため、バーナ火炎中における原料粉体の分散性が向上する。
【0036】
本実施形態のバーナは、燃料ガス供給路4Aと酸素ガス供給路5A,6Aとが接続された燃焼室9Bの後方(すなわち、バーナの先端)に、気体混合室9Aが設けられている。この気体混合室9Aにおいて燃焼ガス中に気体を吹き込むことで、バーナ火炎中における原料の分散性を向上させるとともに、燃焼ガスの体積を増加させることができる。
また、気体混合室9Aには、第一及び第二気体噴出孔7B,8Bが設けられており、これらの第一及び第二気体噴出孔7B,8Bから噴出される気体は、それぞれ独立に流量を制御する事が可能であるため、球状化粒子の製造おいて最適な燃焼状態を容易に調整することができる。
【0037】
また、本実施形態のバーナは、拡散型のバーナであるので、逆火を生じることがない。また、酸素又は酸素富化空気をキャリアガスとして原料粉体を供給するため、配管の自然摩耗を低減することができる。したがって、配管からガスがリークするおそれがないため、安全性が高く取扱が容易になる。
【0038】
図3は、本発明を適用した無機質球状化粒子製造装置の一例を示すもので、図中符号11は球状化炉を示す。この球状化炉11は、円筒形の竪型炉であって、その天井部には上述のバーナ12が、その先端側を炉内に臨ませるようにして垂直に取り付けられている。
球状化炉11の底部付近には空気導入口13が形成されており、ここから冷却用空気を内部に導入し、排出される燃焼ガスの温度を下げることができるようになっている。
【0039】
球状化炉11の底部付近には燃焼ガス排出口14が形成されており、ここから生成した球状化粒子が燃焼ガスに搬送されて導出され、ダクト15、ダンパー16を介してサイクロン17の入口に送られるようになっている。
ダクト15は、そのダンパー16の上流側において、ダクト18に接続されて分岐され、このダクト18はバグフィルター19の入口に接続されている。
【0040】
ダクト18には、その途中に空気導入ポート20が設けられており、このポート20から適宜空気をダクト18内に取り入れ、ダクト18内を流れる燃焼ガスの温度を下げて調節することができるようになっている。
また、サイクロン17の出口にはダクト21が接続され、このダクト21はダンパー22を介してバグフィルター19の入口に接続されている。
【0041】
バーナ12の原料供給路1Aには原料供給パイプ(図示略)が接続され、この原料供給パイプは原料フィーダー23に接続されている。原料フィーダー23には、原料粉体が貯えられ、キャリアガス供給源24からのキャリアガスが送られ、このキャリアガスに所定量の原料粉体が搬送されて前記原料供給パイプを介してバーナ12の原料供給路1Aに送られるようになっている。
原料フィーダー23には、図示しない制御装置からの原料粉体供給量制御信号に応じて、所定量の原料粉体を送り出す送出機構が備えられている。
キャリアガスには、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガスが用いられる。
キャリアガス供給源24にも、図示しない制御装置からのキャリアガス供給量制御信号に応じて、所定量のキャリアガスを原料フィーダー23に送り出す流量調整弁が備えられている。
【0042】
バーナ12の燃料供給路4Aには燃料供給パイプ(図示略)が接続され、この燃料供給パイプは燃料ガス供給源26に接続されている。燃料ガス供給源26は、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)などの燃料ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の燃料ガスが前記燃料ガス供給パイプを介してバーナ12の燃料供給路4Aに送られるようになっている。
燃料ガス供給源26には、図示しない制御装置からの燃料ガス供給量制御信号に応じて、所定量の燃料ガスを送り出す送出機構が備えられている。
【0043】
バーナ12の第一酸素供給路5Aには第一酸素供給パイプ(図示略)が接続され、この第一酸素供給パイプは第一酸素供給源27に接続されている。第一酸素供給源27は、前記酸素含有ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の酸素含有ガスが前記第一酸素供給パイプを介してバーナ12の第一酸素供給路5Aに送られるようになっている。
第一酸素供給源27には、図示しない制御装置からの第一酸素供給量制御信号に応じて、所定量の酸素含有ガスを送り出す送出機構が備えられている。
【0044】
バーナ12の第二酸素供給路6Aには第二酸素供給パイプ(図示略)が接続され、この第二酸素供給パイプは第二酸素供給源28に接続されている。第二酸素供給源28は、前記酸素含有ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の酸素含有ガスが前記第二酸素供給パイプを介してバーナ12の第二酸素供給路6Aに送られるようになっている。
第二酸素供給源28にも、図示しない制御装置からの第二酸素供給量制御信号に応じて、所定量の酸素含有ガスを送り出す送出機構が備えられている。
なお、第一酸素供給源27と第二酸素供給源28とを一体化し、これに二基の送出機構を設け、それぞれの送出機構から第一酸素供給パイプと第二酸素供給パイプとに別々に酸素含有ガスを送り出し、バーナ12の第一酸素供給路5Aと第二酸素供給路6Aとにそれぞれ所定量の酸素含有ガスを供給するようにしてもよい。
【0045】
バーナ12の第一気体供給路7Aには第一気体供給パイプ(図示略)が接続され、この第一気体供給パイプは第一気体供給源29に接続されている。第一気体供給源29は、前記混合用ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の混合用ガスが前記第一気体供給パイプを介してバーナ12の第一気体供給路7Aに送られるようになっている。
第一気体供給源29には、図示しない制御装置からの第一気体供給量制御信号に応じて、所定量の混合用ガスを送り出す送出機構が備えられている。
【0046】
バーナ12の第二気体供給路8Aには第二気体供給パイプ(図示略)が接続され、この第二気体供給パイプは第二気体供給源30に接続されている。第二気体供給源30は、前記混合用ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の混合用ガスが前記第二気体供給パイプを介してバーナ12の第二気体供給路8Aに送られるようになっている。
第二気体供給源30にも、図示しない制御装置からの第二気体供給量制御信号に応じて、所定量の混合用ガスを送り出す送出機構が備えられている。
なお、第一気体供給源29と第二気体供給源30とを一体化し、これに二基の送出機構を設け、それぞれの送出機構から第一気体供給パイプと第二気体供給パイプとに別々に混合用ガスを送り出し、バーナ12の第一気体供給路7Aと第二気体供給路8Aとにそれぞれ所定量の混合用ガスを供給するようにしてもよい。
【0047】
次に、このような製造装置を用いた球状化粒子の製造方法を説明する。
原料フィーダー23から、例えば粒径10μm以上の粗粒の原料粉体をバーナ12の原料供給路1Aにおくり、原料噴出孔3から原料分散室9Cを介して燃焼室9Bに向けて噴出する。
【0048】
バーナ12の第一酸素供給路5A、第二酸素供給路6Aにそれぞれ所定量の酸素含有ガスを第一酸素供給源27、第二酸素供給源28から送り込み、第一酸素噴出孔5B、第二酸素噴出孔6Bを経て燃焼室9Bに向けて噴出する。
バーナ12の燃料供給路4Aに所定量の燃料ガスを燃料ガス供給源26から送り込み、燃料ガス噴出孔4Bを経て燃焼室9Bに向けて噴出する。
【0049】
バーナ12の第一気体供給路7A、第二気体供給路8Aにそれぞれ所定量の混合用ガスを第一気体供給源29、第二気体供給源30から送り込み、第一気体噴出孔7B、第二気体噴出孔8Bを経て気体混合室9Aに向けて噴出する。
【0050】
火炎中に噴出された原料粉体は、それぞれ火炎の高温の中心領域、低温の外側領域において、加熱されて溶融し、球状化して粒径の異なる球状化粒子となる。
【0051】
ここで、本実施形態の方法では、原料粉体の凝集状態と、火炎温度及び火炎中での粒子の滞留時間を制御することができる。すなわち、燃焼室9Bから気体混合室9Aに排出された燃焼ガスに、上記第一及び第二気体噴出孔7Bから混合用気体を吹き込むことにより、バーナ火炎中における原料の分散性が向上する。
また、第一及び第二気体噴出孔7B,8Bからの混合気体の流量を調整して気体混合室9Aに吹き込むことにより、火炎温度を調整可能となる。
さらに、燃焼ガスの体積を増加させることができるため、火炎中での粒子の滞留時間が増加する。
【0052】
例えば、燃焼室9Bの出口近傍に設けられた第一気体噴出孔7Bから噴出する混合用ガスの比率を多くすると、燃焼ガスの体積を増加させると共に、酸素燃焼火炎の温度を急激に低下させ、火炎中に噴出された原料粉体の粒子が融点以上の火炎温度域に対流する時間を短くすることが出来る。このように、最適な燃焼状態に調整することで、得られる球状化粒子の平均粒度を小さくすることが出来る。
【0053】
一方、燃焼室9Bの出口から遠くに設けられた第二気体噴出孔8Bから噴出する混合用ガスの比率を多くすると、燃焼ガスの体積を増加させるとともに、原料粉体の粒子が融点以上の火炎温度域に対流する時間を長くすることが出来る。これにより、得られる球状化粒子の平均粒度を大きくすることができる。
【0054】
この球状化粒子は、バーナ12から生成した燃焼ガスと空気導入口13から導入される空気とのガスに浮遊して球状化炉11の燃焼ガス排出口14からダクト15、ダンパー16を経てサイクロン17に送られる。燃焼ガスに空気を混合することでサイクロン17に導入されるガスの温度が低下し、サイクロン17での粒子捕集に適した温度となる。
【0055】
サイクロン17では、ガス中に浮遊している球状化粒子のうち、粗粒の球状化粒子が捕集される。サイクロン17から導出されたガスはダクト18を介してバグフィルター19に送られ、ここで球状化粒子のうち、細粒の球状化粒子が捕集される。
【0056】
また、必要に応じて、ダクト15のダンパー16を閉とし、ガスをダクト18に流して直接バグフィルター19に送ってすべての球状化粒子をここで捕集することもできる。この際、ガスの温度を下げる必要がある場合には、空気導入ポート20から適量の空気をガスに混入することもできる。
以上の操作により、得られる球状化粒子の平均粒度を制御するとともに、原料粉体の粒度にほぼ一致した粒度の球状化粒子を効率よく得ることができる。
【0057】
以下、具体例を示す。
図3に示す無機質球状化粒子製造装置を用いて球状化粒子を製造した。
原料粉体として全量でシリカ粉末(平均粒度:30μ)20kg/hを7.5Nm/hの酸素からなるキャリアガスで搬送した。燃料ガスとしてLPG5Nm/hを供給した。酸素含有ガスとして全量で酸素20Nm/hをバーナ12に二分して導入した。混合用ガスとして全量で空気100Nm/hを、バーナ12に二分して導入して球状化粒子を製造し、得られる球状化粒子のガラス化率と平均粒度を求めた。
【0058】
このとき、第一気体噴出孔7B及び第二気体噴出孔8Bに供給する空気の割合を、第一気体0〜100%、第二気体100〜0%の範囲で組み合わせた条件を評価した。
球状化粒子は、サイクロン17ならびにバグフィルター19でそれぞれ回収した。
表1に処理結果を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、例1は、本発明のバーナ12を用いているが、第一気体噴出孔7B及び第二気体噴出孔8Bのいずれにも空気を供給しないため、従来技術のバーナと構造が類似する。そして、例1で得られた球状化粒子は、ガラス化率が100%であったが、平均粒度が50μmとなり、原料粉体の平均粒度(30μm)よりも悪化することが確認された。ここで、ガラス化率とは、製品粉末中の溶融(非晶質)粉末の割合をいう。
【0061】
これに対して、例2〜例3で得られた球状化粒子は、ガラス化率が100%未満であるが、平均粒度は原料粉体の平均粒度(30μm)に近づくことを確認した。
特に、例3に示すように、第一気体噴出孔7Bと第二気体噴出孔8Bとに供給する空気の割合を調整して最適化することにより、高いガラス化率と原料粉体に近い平均粒度とを備えた球状化粒子を製造することができる。
【0062】
上記結果より、本発明におけるバーナ構造を用いることで、より原料粒度に近い無機質球状化粒子を得ることが出来ることが確認された。
【符号の説明】
【0063】
1・・・原料供給管
1A・・・原料供給路
2・・・粉体分散板
3・・・原料噴出孔
4・・・燃料供給管
4A・・・燃料供給炉
4B・・・燃料ガス噴出孔
5・・・第一酸素供給管
5A・・・第一酸素供給路
5B・・・第一酸素噴出孔
6・・・第二酸素供給管
6A・・・第二酸素供給路
6B・・・第二酸素噴出孔
7・・・第一気体供給管
7A・・・第一気体供給路
7B・・・第一気体噴出孔
8・・・第二気体供給管
8A・・・第二気体供給路
8B・・・第二気体噴出孔
9A・・・気体混合室
9B・・・燃焼室
9C・・・分散室
11・・・球状化炉
12・・・バーナ
17・・・サイクロン
19・・・バグフィルター
23・・・原料フィーダー
24・・・キャリアガス供給源
26・・・燃料供給源
27・・・第一酸素供給源
28・・・第二酸素供給源。
29・・・第一気体供給源
30・・・第二気体供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質球状化粒子製造用バーナであって、
キャリアガスに同伴された原料粉体を供給する原料供給路と、
前記原料供給路の外周に設けられて燃料ガスを供給する燃料供給路と、
前記燃料供給路の外周に設けられて酸素含有ガスを供給する第一酸素供給路と、
前記第一酸素供給路の外周に設けられて酸素含有ガスを供給する第二酸素供給路と、
前記第二酸素供給路の外周に設けられて混合用ガスを供給する第一気体供給路と、
前記第一気体供給路の外周に設けられて混合用ガスを供給する第二気体供給路と、
前記原料供給路の先端に多数の小孔が形成された粉体分散板を介して接続された原料分散室と、
前記原料分散室に接続され出口側が拡径した燃焼室と、
前記燃焼室の出口側に接続された気体混合室と、を備え、
前記燃焼室の円錐状壁面に、前記燃料供給路、前記第一酸素供給路、前記第二酸素供給路の先端がそれぞれ開口しており、
前記燃料供給路の開口部が、前記燃焼室の壁面からバーナ中心軸に対して並行に燃料を噴出する燃料ガス噴出孔であり、
前記第一酸素供給路の開口部が、燃焼室の壁面から燃焼室内に旋回流を形成する方向に酸素含有ガスを噴出する第一酸素噴出孔であり、
前記第二酸素供給路の開口部が、前記第一酸素噴出孔よりバーナ先端側に開口する第二酸素噴出孔であるとともに、
前記気体混合室の壁面に、前記第一及び第二気体供給路の先端がそれぞれ開口しており、
前記第一気体供給路の開口部が、空気混合室の壁面から空気混合室内に旋回流を形成する方向に混合用ガスを噴出する第一気体噴出孔であり
前記第二気体供給路の開口部が、前記第一気体噴出孔よりバーナ先端側に開口するとともに、空気混合室の壁面から空気混合室内に旋回流を形成する方向に混合用ガスを噴出する第二気体噴出孔であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項2】
前記混合用気体が、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素含有ガス、及び窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスのいずれか又は一以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の無機質球状化粒子製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバーナを炉頂部に垂直下向きに備えた竪型の球状化炉と、
前記球状化炉の下流に無機質球状化粒子を捕集するサイクロンおよびバグフィルターと、を備えることを特徴とする無機質球状化粒子製造装置。
【請求項4】
前記バーナの第一気体供給路と第二気体供給路とに供給する混合用気体を、それぞれ独立して制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項3記載の無機質球状化粒子製造装置。
【請求項5】
サイクロンを経由してバグフィルターに接続する経路と、サイクロンを経由せずバグフィルターに接続する経路を有し、且つそれぞれの経路が切り替え可能となっていることを特徴とする請求項3又は4に記載の無機質球状化粒子製造装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の無機質球状化粒子製造装置において、
サイクロンにて粗粒子を捕集するとともに、バグフィルターにて微粒子を捕集することを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項7】
前記バグフィルターが粒子を一括捕集することを特徴とする請求項6に記載の無機質球状化粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−286175(P2010−286175A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140397(P2009−140397)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】