説明

無段変速機

【課題】前進,停止,及び後退の走行モードを連続的に変更可能な無段変速機における駆動力の伝達効率を向上する。
【解決手段】エンジン1から駆動力が入力され、変速比を無段階に調整して出力するCVT10と、エンジン1からの駆動力が反転して入力され、変速比を無段階に調整して出力するCVT20と、CVT10からの出力とCVT20からの出力とが入力され、駆動力を合成して出力軸60aへ出力する遊星歯車機構30とを備え、遊星歯車機構30のサンギア31には、CVT10とCVT20との一方からの出力が入力され、リングギア34には、CVT10とCVT20との他方からの出力が入力され、合成された駆動力は、プラネタリキャリア33から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速比を無段階に調整可能な無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用の自動変速機として、ベルト式やトロイダル式などのCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)が用いられている。
【0003】
特許文献1には、エンジンからの主入力とCVTを介した副入力とが遊星歯車に入力され、合成して駆動輪に出力する遊星歯車増幅型ベルト式無段変速装置が開示されている。この無段変速装置では、エンジン出力が直接入力される主入力と、CVTを介して変速されたエンジン出力が入力される副入力とを合成することによって、前進,停止,及び後退の走行モードを連続的に変更可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−186061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の無段変速装置では、エンジン出力が直接入力される主入力による駆動力と、CVTを介して変速されたエンジン出力が入力される副入力による駆動力とが互いに反対方向に作用して、内部損失が大きくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、前進,停止,及び後退の走行モードを連続的に変更可能な無段変速機における駆動力の伝達効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原動機の駆動力を変速して出力軸へ出力する無段変速機であって、前記原動機から駆動力が入力され、変速比を無段階に調整して出力する第一変速機構と、前記原動機からの駆動力が反転して入力され、変速比を無段階に調整して出力する第二変速機構と、前記第一変速機構からの出力と前記第二変速機構からの出力とが入力され、駆動力を合成して前記出力軸へ出力する遊星歯車機構と、を備え、前記遊星歯車機構は、自転可能なサンギアと、前記サンギアの外周に噛合し自公転可能なプラネタリギアを連結する自転可能なプラネタリキャリアと、前記プラネタリギアの外周に噛合し自転可能なリングギアと、を備え、前記サンギアには、前記第一変速機構と前記第二変速機構との一方からの出力が入力され、前記リングギアには、前記第一変速機構と前記第二変速機構との他方からの出力が入力され、合成された駆動力は、前記プラネタリキャリアから出力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、原動機からの駆動力が、第一変速機構へ入力され、第二変速機構へ反転して入力される。第一変速機構と第二変速機構とからの出力は遊星歯車機構のサンギアとリングギアとにそれぞれ入力され、合成された駆動力は、プラネタリキャリアから出力される。よって、第一変速機構の変速比と第二変速機構の変速比とを調整することで、前進,停止,及び後退の走行モードを連続的に変更可能である。このとき、プラネタリキャリアから出力される駆動力は、サンギアの回転による駆動力と、サンギアと反対方向に回転するリングギアの回転による駆動力との合計の大きさとなる。したがって、駆動力の伝達効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る無段変速機の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無段変速機における回転数の関係を説明する図である。
【図3】(a)は、車両の前進時における遊星歯車機構の動作を示す図であり、(b)は、車両の停止時における遊星歯車機構の動作を示す図であり、(c)は、車両の後退時における遊星歯車機構の動作を示す図である。
【図4】遊星歯車機構における駆動力の大きさを模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る無段変速機100について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、無段変速機100の構成について説明する。
【0012】
無段変速機100は、車両に搭載され、原動機としてのエンジン1から入力された駆動力を変速して駆動部5に出力するものである。無段変速機100は、入力された駆動力を無段階の変速比に変速可能であるとともに、前進,停止,及び後退の走行モードを連続的に切り換え可能である。
【0013】
はじめに、無段変速機100に入力される駆動力を発生するエンジン1、及び無段変速機100から出力される駆動力が入力される駆動部5の構成について説明する。
【0014】
エンジン1は、駆動力を発生する内燃機関である。エンジン1の出力は、出力軸1aの回転力として出力される。エンジン1に代えて、エンジン1の出力をアシストするモータを更に備えるハイブリッドシステムを原動機として用いてもよい。
【0015】
駆動部5は、無段変速機100の出力軸60aから出力された駆動力が入力されるディファレンシャルギア6と、ディファレンシャルギア6から左右の車輪8にそれぞれ駆動力を伝達する一対のアクスル7とを備える。無段変速機100から出力された駆動力は、ディファレンシャルギア6にて減速され、左右のアクスル7に分配されて車輪8に伝達される。
【0016】
次に、無段変速機100の内部の構成について詳細に説明する。
【0017】
無段変速機100は、エンジン1から駆動力が入力される第一変速機構としてのCVT10と、エンジン1からの駆動力が反転して入力される第二変速機構としてのCVT20と、エンジン1の駆動力をCVT10とCVT20とに各々反対向きの回転として伝達する反転機構40と、CVT10から出力される駆動力とCVT20から出力される駆動力とが入力され合成した駆動力を出力する遊星歯車機構30とを備える。また、無段変速機100は、エンジン1の出力軸1aの回転を増速して反転機構40に伝達する増速機構50と、遊星歯車機構30の出力軸30aの回転を減速して駆動部5に伝達する減速機構60とを備える。
【0018】
増速機構50は、クラッチ3を介して入力されたエンジン1の駆動力を、回転方向を反転させるとともに増速して伝達するものである。増速機構50は、エンジン1の出力軸1aと一体に回転する第一ギア51と、第一ギア51と噛合して反対向きに回転する第二ギア52とを備える。第一ギア51は、第二ギア52と比較して大径に形成される。これにより、増速機構50に入力された駆動力は、回転数が増速された分だけ小さくなって出力される。
【0019】
反転機構40は、クラッチ3及び増速機構50を介して入力されたエンジン1の駆動力を、CVT10とCVT20とに各々反対向きの回転として出力するものである。反転機構40は、増速機構50の出力軸50aと一体に回転する逆回転ギア41と、逆回転ギア41と噛合して反対向きに回転する正回転ギア42とを備える。
【0020】
逆回転ギア41は、CVT20に連結され、エンジン1から増速機構50を介して入力された駆動力を、回転方向を変えずにエンジン1とは反対方向の回転としてCVT10に伝達する。一方、正回転ギア42は、CVT10に連結され、エンジン1から増速機構50を介して入力された駆動力を、回転方向を反転させてエンジン1と同一方向の回転としてCVT20に伝達する。
【0021】
逆回転ギア41と正回転ギア42とは、同一の外径に形成される。これにより、CVT10に入力される駆動力と、CVT20に入力される駆動力とは、回転方向が反対なだけで同一の大きさとなる。
【0022】
反転機構40とエンジン1との間には、エンジン1からの駆動力の伝達を断接可能なクラッチ3が設けられる。これにより、例えば、車両が急減速して停止した場合にクラッチ3を切ることで、無段変速機100の停止モードへの切り換えタイミングが遅れても、エンジン1が停止することを防止できる。
【0023】
CVT10は、エンジン1からの駆動力が増速されて入力され、変速比を無段階に調整して出力するものである。CVT10は、エンジン1の駆動力が増速されて入力されるプライマリプーリ11と、プライマリプーリ11との間に掛け渡されたベルト13によって駆動力が伝達されるセカンダリプーリ12とを備える。CVT10は、プライマリプーリ11とベルト13との間の摩擦力と、セカンダリプーリ12とベルト13との間の摩擦力とによって駆動力を伝達する。
【0024】
プライマリプーリ11及びセカンダリプーリ12は、回転軸方向に沿って徐々に外径が変化する駒状の回転体である。
【0025】
プライマリプーリ11は、エンジン1からの駆動力が増速機構50と反転機構40とを介して伝達されるため、エンジン1の出力軸1aと同一方向に回転する。
【0026】
セカンダリプーリ12は、プライマリプーリ11の回転によって回転する。セカンダリプーリ12の回転軸は、出力軸10aとして引き出され、伝達機構15に連結される。
【0027】
プライマリプーリ11における外径が最小の位置と、セカンダリプーリ12における外径が最大の位置にベルト13が掛け渡されると、CVT10の変速比は最小となる。一方、プライマリプーリ11における外径が最大の位置と、セカンダリプーリ12における外径が最小の位置にベルト13が掛け渡されると、CVT10の変速比は最大となる。このように、CVT10では、ベルト13が掛け渡されるプライマリプーリ11及びセカンダリプーリ12の位置に応じて、変速比を無段階に調整可能である。
【0028】
伝達機構15は、CVT10の出力軸10aに連結されて一体に回転する第一ギア16と、第一ギア16と噛合する第二ギア17とを備える。第二ギア17は、出力軸15aを介して後述する遊星歯車機構30のリングギア34に連結されて一体に回転する。伝達機構15は、CVT10の出力軸10aから入力された駆動力を、遊星歯車機構30のリングギア34から入力可能なように、第一ギア16及び第二ギア17を介して伝達するものである。
【0029】
CVT20は、エンジン1からの駆動力が増速かつ反転して入力され、変速比を無段階に調整して出力するものである。CVT20は、エンジン1の駆動力が増速かつ反転して入力されるプライマリプーリ21と、プライマリプーリ21との間に掛け渡されたベルト23によって駆動力が伝達されるセカンダリプーリ22とを備える。CVT10は、プライマリプーリ21とベルト23との間の摩擦力と、セカンダリプーリ22とベルト23との間の摩擦力とによって駆動力を伝達する。
【0030】
プライマリプーリ21は、エンジン1からの駆動力が増速機構50のみを介して伝達されるため、エンジン1の出力軸1aと反対方向に回転する。
【0031】
セカンダリプーリ22は、プライマリプーリ21の回転によって回転する。セカンダリプーリ22の回転軸は、出力軸20aとして引き出され、伝達機構25に連結される。
【0032】
プライマリプーリ21及びセカンダリプーリ22の構成は、CVT10におけるプライマリプーリ11及びセカンダリプーリ12と同様であるため、ここでは具体的な構成についての説明は省略する。
【0033】
伝達機構25は、CVT20の出力軸20aに連結されて一体に回転する第一ギア26と、第一ギア26と噛合する第二ギア27とを備える。第二ギア27は、出力軸25aを介して後述する遊星歯車機構30のサンギア31に連結されて一体に回転する。伝達機構25は、CVT20の出力軸20aから入力された駆動力を、遊星歯車機構30のサンギア31から入力可能なように、第一ギア26及び第二ギア27を介して伝達するものである。
【0034】
遊星歯車機構30は、自転可能なサンギア31と、サンギア31の外周に噛合し自公転可能な複数のプラネタリギア32と、複数のプラネタリギア32の中心軸を回転自在に連結するプラネタリキャリア33と、プラネタリギア32の外周に噛合し自転可能なリングギア34とを備える。遊星歯車機構30は、サンギア31の回転とリングギア34の回転とを合成して、入力された回転を減速又は増速するものである。
【0035】
遊星歯車機構30は、CVT10とCVT20とからそれぞれ入力された駆動力を合成し、出力軸30aから出力する。遊星歯車機構30の出力軸30aから出力された駆動力は、減速機構60を介して出力軸60aから駆動部5に出力される。
【0036】
サンギア31は、外周に歯が形成され、中心軸まわりに自転可能な歯車である。サンギア31の中心軸には、伝達機構25の出力軸25aが連結され、駆動力が伝達される。サンギア31には、CVT20から出力された駆動力が入力される。
【0037】
プラネタリギア32は、外周に歯が形成され、サンギア31の外周に噛合する歯車である。プラネタリギア32は、サンギア31との噛合によって中心軸まわりに自転し、かつ、サンギア31の外周を公転することが可能である。プラネタリギア32は、サンギア31の外周に、等角度間隔で複数配設される。
【0038】
プラネタリキャリア33は、環状に形成され、プラネタリギア32の公転と同期して自転する。プラネタリキャリア33の周上には、全てのプラネタリギア32の中心軸が回転自在に支持される。プラネタリキャリア33の中心軸は、出力軸30aとして引き出され、減速機構60に駆動力を出力する。
【0039】
プラネタリキャリア33は、CVT10から入力された駆動力と、CVT20から入力された駆動力とが合成されて回転する。プラネタリキャリア33は、プラネタリギア32がサンギア31の外周を公転することによって自転する。
【0040】
リングギア34は、内周に歯が形成され、プラネタリギア32の外周に噛合する歯車である。リングギア34は、プラネタリギア32の回転によって中心軸まわりに自転可能である。リングギア34の中心軸には、伝達機構15の出力軸15aが連結され、駆動力が伝達される。リングギア34には、CVT10から出力された駆動力が入力される。リングギア34は、サンギア31とは逆方向に回転する。
【0041】
上述したように、遊星歯車機構30は、CVT10の出力がリングギア34に入力され、CVT20の出力がサンギア31に入力され、合成された駆動力をプラネタリキャリア33から出力するものである。これに限らず、CVT10の出力をサンギア31に入力し、CVT20の出力をリングギア34に入力し、合成した駆動力をプラネタリキャリア33から出力するようにしてもよい。即ち、CVT10とCVT20との一方からの出力がサンギア31に入力され、他方からの出力がリングギア34に入力されるようにすればよい。
【0042】
減速機構60は、遊星歯車機構30から出力された駆動力を、回転方向を反転させるとともに減速して伝達する。減速機構60は、遊星歯車機構30の出力軸30aに連結されて一体に回転する第一ギア61と、第一ギア61と噛合する第二ギア62とを備える。第二ギア62は、出力軸60aを介して駆動部5のディファレンシャルギア6に連結され、無段変速機100の出力を伝達する。第一ギア61は、第二ギア62と比較して小径に形成される。これにより、減速機構60に入力された駆動力は、回転数が減速された分だけ大きくなって出力される。
【0043】
減速機構60は、増速機構50によって増速された回転を減速して、もとの適切な回転数に戻すものである。このように、無段変速機100では、エンジン1の回転が増速機構50によって増速されて入力され、出力された回転を減速機構60によって減速して駆動部5に伝達している。増速機構50が設けられることで、無段変速機100に入力される駆動力が小さくなるため、無段変速機100内の各所に作用するトルクの大きさが小さくなる。よって、無段変速機100の耐久性を向上できる。
【0044】
なお、増速機構50と減速機構60とを設けずに、エンジン1から反転機構40の正回転ギア42に駆動力を直接入力し、遊星歯車機構30の出力軸30aから駆動部5に駆動力を直接出力してもよい。この場合、無段変速機100の構成をシンプルにできるため、小型軽量化が可能となる。
【0045】
次に、図2及び図3を参照して、無段変速機100の動作について説明する。
【0046】
図2(a)〜(c)に実線で示す矢印は、サンギア31,プラネタリキャリア33,及びリングギア34の各々の回転速度を示す。
【0047】
図2(a)〜(c)に示すように、無段変速機100は、サンギア31から入力された回転とリングギア34から入力された回転とを合成して、プラネタリキャリア33の回転として出力するものである。無段変速機100では、CVT10にてサンギア31の回転速度を調整し、CVT20にてリングギア34の回転速度を調整することによって、プラネタリキャリア33の回転速度を無段階に調整可能である。なお、サンギア31及びリングギア34は、エンジン1の回転が伝達されるものであるため、停止したり反対方向に回転したりすることはない。
【0048】
図2の状態(a)は、CVT10の変速比が最大であり、かつ、CVT20の変速比が最小の状態である。この状態では、図3(a)に示すように、サンギア31が低速に回転し、リングギア34がサンギア31と比較して高速にかつサンギア31と反対方向に回転することで、プラネタリギア32は、自転するとともに順方向に公転する。これにより、プラネタリキャリア33は、サンギア31の回転とリングギア34の回転とを合成した駆動力によって順方向に回転する。よって、車両は、前進することとなる。
【0049】
図2の状態(b)は、図2の状態(a)と比較して、CVT10の変速比を小さくし、かつ、CVT20の変速比を大きくした状態である。この状態では、図3(b)に示すように、サンギア31とリングギア34とが互いに反転方向に回転し、プラネタリギア32との噛合部における速度が等しくなる。これにより、プラネタリキャリア33は、サンギア31の回転とリングギア34の回転とを合成した駆動力が零となるため、回転が停止する。よって、車両は、停止することとなる。
【0050】
図2の状態(c)は、図2の状態(b)と比較して、CVT10の変速比を更に小さくし、かつ、CVT20の変速比を更に大きくした状態である。この状態では、図3(c)に示すように、サンギア31が高速に回転し、リングギア34がサンギア31と比較して低速にかつサンギア31と反対方向に回転することで、プラネタリギア32は、自転するとともに逆方向に公転する。これにより、プラネタリキャリア33は、サンギア31の回転とリングギア34の回転とを合成した駆動力によって、逆方向に回転する。よって、車両は、後退することとなる。
【0051】
以上のように、無段変速機100では、CVT10とCVT20との変速比を調整し、サンギア31の回転速度とリングギア34の回転速度とを調整することで、エンジン1の出力を一定に維持したまま、車両の前進,停止,及び後退を自在に切り換えることが可能である。よって、車両を後退させるためのリバースギアなどを設ける必要がない。運転者は、前進,停止,及び後退のいずれかの走行モードに切り換えるスイッチを操作するだけでよいため、運転が容易である。
【0052】
また、無段変速機100では、CVT10とCVT20との変速比の調整によって、エンジン1の出力を一定に維持したまま、前進時及び後退時の車両の速度を自在に調整することが可能である。よって、無段変速機100を用いることによって、エンジン1を熱効率の最も高い回転数に維持して、燃費を向上させることができる。
【0053】
次に、図4を参照して、遊星歯車機構30から出力される駆動力について説明する。
【0054】
図4は、遊星歯車機構30における駆動力の大きさの関係を、模式的に示したものである。図4において、Tsは、サンギア31の回転によるトルクを示し、Trは、リングギア34の回転によるトルクを示し、Tcは、プラネタリキャリア33から出力されるトルクを示す。また、Rsは、サンギア31の半径であり、Rrは、リングギア34の半径である。
【0055】
遊星歯車機構30では、CVT10の駆動力とCVT20の駆動力とが互いに逆方向の回転として入力される。そのため、サンギア31の回転によってプラネタリギア32に作用するトルクと、リングギア34の回転によってプラネタリギア32に作用するトルクは、ともにプラネタリギア32を同じ方向に回転させるように作用する。よって、図4に示すように、サンギア31の回転によるトルクTsと、リングギア34の回転によるトルクTrとの合計が、プラネタリキャリア33から出力されるトルクTcとなる。
【0056】
このように、プラネタリキャリア33から出力される駆動力は、サンギア31の回転による駆動力と、サンギア31と反対方向に回転するリングギア34の回転による駆動力との合計の大きさとなる。したがって、サンギア31からの駆動力とリングギア34からの駆動力が互いに打ち消し合うことがないため、遊星歯車機構30における内部損失を低減し、駆動力の伝達効率を向上することができる。
【0057】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0058】
エンジン1からの駆動力は、CVT10へ入力され、CVT20へ反転して入力される。CVT10とCVT20とからの出力は遊星歯車機構30のサンギア31とリングギア34とにそれぞれ入力され、合成された駆動力は、プラネタリキャリア33から出力される。よって、CVT10の変速比とCVT20の変速比とを調整することで、前進,停止,及び後退の走行モードを連続的に変更可能である。
【0059】
このとき、プラネタリキャリア33から出力される駆動力は、サンギア31の回転による駆動力と、サンギア31と反対方向に回転するリングギア34の回転による駆動力との合計の大きさとなる。したがって、遊星歯車機構30における駆動力の伝達効率を向上することができる。
【0060】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0061】
例えば、CVT10及びCVT20は、ベルトドライブ式のCVTであるが、チェーンドライブ式やトロイダル式など他の形式のCVTであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 無段変速機
1 エンジン(原動機)
1a 出力軸1a
3 クラッチ
10 CVT(第一変速機構)
11 プライマリプーリ
12 セカンダリプーリ
13 ベルト
20 CVT(第二変速機構)
21 プライマリプーリ
22 セカンダリプーリ
23 ベルト
30 遊星歯車機構
30a 出力軸
31 サンギア
32 プラネタリギア
33 プラネタリキャリア
34 リングギア
40 反転機構
50 増速機構
60 減速機構
60a 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の駆動力を変速して出力軸へ出力する無段変速機であって、
前記原動機から駆動力が入力され、変速比を無段階に調整して出力する第一変速機構と、
前記原動機からの駆動力が反転して入力され、変速比を無段階に調整して出力する第二変速機構と、
前記第一変速機構からの出力と前記第二変速機構からの出力とが入力され、駆動力を合成して前記出力軸へ出力する遊星歯車機構と、を備え、
前記遊星歯車機構は、自転可能なサンギアと、前記サンギアの外周に噛合し自公転可能なプラネタリギアを連結する自転可能なプラネタリキャリアと、前記プラネタリギアの外周に噛合し自転可能なリングギアと、を備え、
前記サンギアには、前記第一変速機構と前記第二変速機構との一方からの出力が入力され、前記リングギアには、前記第一変速機構と前記第二変速機構との他方からの出力が入力され、合成された駆動力は、前記プラネタリキャリアから出力されることを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記原動機の駆動力を前記第一変速機構と前記第二変速機構に各々反対向きの回転として伝達する反転機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
前記第一変速機構及び第二変速機構は、
前記原動機の駆動力が入力されるプライマリプーリと、
前記プライマリプーリとの間に掛け渡されたベルトによって駆動力が伝達されるセカンダリプーリと、を各々備え、
前記第一変速機構のプライマリプーリには、前記原動機と同一方向の回転が入力され、前記第二変速機構のプライマリプーリには、前記原動機と反対方向の回転が入力されることを特徴とする請求項2に記載の無段変速機。
【請求項4】
前記原動機と前記反転機構との間に設けられ駆動力の伝達を断接可能なクラッチを更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の無段変速機。
【請求項5】
前記原動機の出力軸の回転を増速して前記反転機構に伝達する増速機構と、
前記遊星歯車機構の出力軸の回転を減速して出力する減速機構と、を更に備えることを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108588(P2013−108588A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255191(P2011−255191)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】