説明

無水屎尿処理方法と無水屎尿処理トイレシステム

【課題】屎尿を分離し、便槽と尿槽に溜める移動式貯蔵用コンテナの貯槽レベル検知機構と移動式貯蔵用コンテナの移送時の蓋を提供し、太陽光による乾燥、殺菌消毒を行う装置および方法。
【解決手段】屎尿を分離し、分離した屎尿をそれぞれ溜める貯蔵用コンテナを具備し、回収するコンテナの貯槽量を検知し、表示する機構と、該コンテナの移送時にコンテナ内部の圧力変動による容器の変形、破損を防止する蓋と運搬、収集、乾燥、消毒工程を行う設備を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屎尿を回収し、肥料や土壌改良に利用する無水屎尿処理方法と無水屎尿処理トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屎尿分離便器や、屎尿処理システムは、水道、電気、下水などを備えた環境で設置するものが一般的であった。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2007−196081 公開公報
【特許文献2】特開2007−111146 公開公報
【特許文献3】特開2005−304970 公開公報
【特許文献4】特開2005−304969 公開公報
【特許文献5】特開2005−143718 公開公報
【特許文献6】特許4025244 特許公告
例えば、特許文献1には、
屎尿や生活雑排水の処理が可能な排水処理システムとトイレ装置によって、尿と屎とを分離し、微生物によって硝化、BOD源を含有する排水を微生物により脱窒する脱窒部を備える排水処理システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、
悪臭を抑制し、また節水できる屎尿分離便器と、屎尿の利用と、施工コスト低減を図る共同トイレ・設備が記載されている。
そのトイレ設備である屎尿分離便器は、屎と尿を別々に受け、屎尿を分離収集する鉢部を有し、微生物の作用を利用し、複数個の屎尿分離・便器・が上下方向に整列配置され、屎を下方に屎用通路で導き、また、尿用鉢部で受けた尿を下方に導く尿用通路を備えた共同トイレ・設備が記載されている。
【0005】
また、特許文献3は、
網状部材を用い、屎と尿とを分離し、便受けの目詰りを防止するための目詰りを防止する針状突起を備え、掃除機構を設けた屎尿分離 便器 装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には
屎尿の分離効率よく分離し、屎と尿とをそれぞれ屎槽或いは尿槽へ導く屎尿分離便器装置が記載されている。また、網状部材屎を便受け、尿を便受けの孔を通じて尿槽に落下させ、且つ便受け上に残った屎を便受けの回動運動により送出する屎尿分離便器装置が記載されている。
また、特許文献5には、
ローラコンベヤを用い、屎と尿を効率高く簡単に分離することのできる屎尿分離便器装置が記載されている。更に、特許文献6には尿から有価物として、マグネシウム、りん、アンモニアガスを連続的に回収する方法と装置が記載されている。
しかしながら、これらの発明は、水洗トイレのように上下水を前提としており、また、ベルト状の網や、ローラなどの駆動機構を有するために、その駆動力に電動機を用い、電気、水道、下水などインフラ施設を必要とするなどの課題があった。また、下水に流す場合、汚水処理施設を必要とし、また、その上澄みを河川に流した場合でも環境負荷はさけられない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水道、下水の使用を前提とせず、屎尿分離構造を有するトイレ構造であり、また、衛生的、屎尿の資源化、トイレ設備の低コスト化、設置の簡便さを実現することを目的とする。また、屎尿を分離し、それぞれ収集し、屎・尿を、太陽熱を利用し、発酵、脱水することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1には、
屎尿を分離し、その分離した屎尿をそれぞれコンテナに収集し、太陽熱を集熱する可動式屋根の下に設置し、屎尿それぞれを太陽熱により乾燥することを特徴とする無水屎尿処理装置が記載されている。すなわち、昼間の太陽熱により、それぞれ分離した屎・尿の含む水分を蒸発乾燥させ、発酵を促進するとともに、夜間は屎・尿の自己発酵熱により乾燥を促進するものである。
【0009】
本発明の請求項2には、
請求項1において、太陽熱を集熱する屋根に太陽電池を用いることを特徴とする無水屎尿処理装置記載されている。すなわち、太陽電池の内、特に単結晶又は多結晶シリコン結晶系の太陽電池は、赤外光線を通過させ、裏面に伝熱特性の良い金属板を設ければ、太陽光による発電を行いながら、太陽電池の反射防止膜を介して通過した赤外線領域を中心とする熱を集光する効果がある。また、裏面を冷却ファンで冷却すれば、太陽電池の温度上昇による発電効率の低下を防止できるとともに、集熱した熱を冷却ファンによって発生する熱風を被乾燥物である屎尿に宛て、乾燥を促進することができる。
【0010】
又、本発明の請求項3には、請求項1において、
コンテナの中に収めた個別の尿を貯尿タンクに集合し、前記貯尿タンクから落差で尿を乾燥蒸発槽に穴あき配管で尿を分散しながら送りこみ、前記太陽熱を集熱する可動式屋根の下に乾燥蒸発槽を位置させ、尿の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする無水尿処理装置が記載されている。コンテナによって運搬して来た個別の尿を貯尿タンクに集合し、貯尿タンクより下方に向かって落差を設け、前記落差を利用し、穴あき配管から第一の乾燥蒸発槽へ散布し、第一の乾燥蒸発槽の液堤を超えた尿が第二の乾燥蒸発槽に注がれ、さらに第三、第四の乾燥蒸発槽に注がれる。最終層の尿の水準が規定水準に達すると貯尿タンクと前記穴あき配管の間に設けた調整弁を閉じ、尿からの脱水を待つ。ここでは、落差を利用しての作業であり、動力を要せず作業が進行する。
【0011】
更に、本発明の請求項4には、請求項1から3のいずれかにおいて、
太陽熱を集熱した屎尿の乾燥室を密閉し、室内気圧を陽圧下で乾燥作業を行い、乾燥室と外気の差圧を持って排気を行う排気口を有することを特徴とする無水尿処理装置が記載されている。すなわち、該乾燥室は、屋根で太陽熱を集熱し、室内を昇温し、室内の空気が膨張し、また、屎尿の水分が蒸発し、室内気圧が上昇する。この気圧の上昇を利用し、排気口からの排気を行う。
【0012】
又、本発明の請求項5には、請求項4において、
前記排気口にケミカルフィルタを設け、前記差圧を持たせるとともに、臭気対策とすることを特徴とする無水尿処理装置が記載されている。排気口には排気圧を持たせるべくケミカルフィルタを有するため、室内圧力を高めるとともに、ケミカルフィルタによりアンモニアなどの臭気を除去することができる。前記ケミカルフィルタは、電動機により、フィルタ面を劣化しないように、徐々に移動させることもできる。この時の電動機を駆動する電力は太陽熱を集熱する屋根に設置された太陽電池によって発電された電力を用いる。また、アンモニアを除去するには、フィルタを水に浸漬させ、水に吸着させることもできる。
【0013】
更に、本発明の請求項6には、請求項1から3のいずれかにおいて、
屎尿を分離し、それぞれを利用するトイレシステムにおいて、分離した屎尿を収めるコンテナを貯槽する屎又は尿の量を感知する浮子を有することを特徴とする無水屎尿処理装置が記載されている。分離した屎尿を収めるコンテナは、コンテナの内容物である屎あるいは、尿の蓄積された水準を該浮子により、感知し、コンテナの交換時期を感知することができる。尿は、尿素やウロキナーゼなど成分を分離し利用する場合は、そのまま、分離精製工程に送るが、主に乾燥させ農業用肥料として用いる。
【0014】
更に、本発明の請求項7には、請求項6において、
屎尿を収めるコンテナを貯槽する前記貯槽の量を感知する浮子に取り付けた表示機構を設けたことを特徴とする無水屎尿処理装置が記載されている。すなわち、浮子がコンテナの内容物である屎または尿の蓄積が進むことにより、押し上げられて上昇し、一定水準に達すると該浮子の先端部に設けた転倒自在部によって転倒し、コンテナの交換水準となったことを表示する。また、この転倒機構を用いて、使用中の第一のコンテナ口と空の第2のコンテナの口を切り替えるために、切り替えバネを引いて転倒機構によって支えておき、転倒機構が作動した時、転倒機構によって支えがはずれ、コンテナ口に接続が第一のコンテナから第二のコンテナにバネの力で配管ルートを切り替えることもできる。
【0015】
更に、本発明の請求項8には、請求項7において、
前記表示機構の表示器に太陽電池によって充電した蓄電池を電源とし、発光ダイオードを用いて表示することを特徴とする無水屎尿処理装置が記載されている。前記浮子の先端部に設けた転倒したことを監視するスイッチにより、電気的に前記先端部転倒を検出し、発光ダイオードを点灯し、コンテナ交換時期に達したことを表示することができる。
【0016】
更に、本発明の請求項9には、請求項6から8のいずれかにおいて、
屎槽貯蔵用コンテナまたは尿槽貯蔵用コンテナを交換し、乾燥プロセス工程(乾燥室)に移送及び保管する場合において、内容物の漏れを防止する蓋を用いるとこを特徴とする屎尿貯蔵用コンテナが記載されている。コンテナの移動時には、内容物である屎または尿が漏れないための蓋をし、衛生状態を保つことができる。
【0017】
又、本発明の請求項10には、請求項9において、
前記コンテナ容器の蓋の構造をコンテナ内部の減圧または増圧に備え、圧力を逃がすことを特徴とする屎尿貯蔵用コンテナが記載されている。コンテナの内圧は、温度により変動するため、密封状態とするとコンテナの変形や、過度な圧力上昇時には、コンテナの破裂や変形が生じ得る。そこで、一定圧力以上または、一定圧力以下の圧力で圧力を開放する解放弁を有するコンテナの蓋を備えている。
【0018】
更に、本発明の請求項11には、請求項1から10のいずれかにおいて、
屎尿を貯蔵したコンテナや空の前記コンテナ、容器の蓋および治具工具を、太陽熱を集熱する可動式屋根の下に保管することにより、それぞれを50℃以上の高温にて殺菌し、衛生管理状態を保つことを特徴とする無水屎尿処理装置が記載されている。すなわち太陽熱を集熱する可動式屋根を有する乾燥工程室は、50℃以上更に60℃レベルとなり、室内にあるあらゆる物の殺菌消毒が可能であり、これによって、乾燥対象の屎尿は勿論のこと、コンテナ、容器の蓋および治具工具を殺菌消毒することができる。
【0019】
更に、本発明の請求項12には、請求項1から11のいずれかにおいて、
屎尿を貯蔵したコンテナや空の前記コンテナ、容器の蓋、運搬作業に使用する治具工具を、水洗し、天日乾燥し、再利用することを特徴とする無水屎尿処理方法が記載されている。乾燥後粉体化した屎尿は容易に且つ衛生的に保管が可能であるが、容器、治工具についても一旦水洗し、直射日光乾燥することにより、その後の再利用を行う上で更に衛生的に使用することができる。従って、空のコンテナや治工具水洗し、天日乾燥する領域を設け、再利用の汚れ対策、清浄化と日光消毒を行う。
【0020】
又、本発明の請求項13には、請求項1から3のいずれかにおいて、
乾燥後の結晶化した尿、又は粉体化した屎を農業用の肥料又は土壌改良材とすることを特徴とする無水屎尿処理方法が記載されている。
【0021】
更に、本発明の請求項14には、請求項1から4又は8又は11のいずれかにおいて、
太陽光発電の電力を用いて、揚水、集尿、結晶化した尿の収集、乾燥し粉体化した屎の粉体移送を行う電動機を駆動する電源とし、また、前記電動機の始動、停止、監視、制御を自動制御すること特徴とする無水屎尿処理システムが記載されている。太陽電池パネルを当該システムの乾燥工程以外の屋根に設置し、発電した電力で蓄電池を充電し、またはそのまま電源として利用し、井戸ポンプの揚水や、粉体移送、また、電磁弁の開閉を行うことができる。
【0022】
更に、本発明の請求項15には、請求項1から14のいずれか又はそれぞれの組み合わせにおいて、無水屎尿処理を行うことを特徴とする無水屎尿処理システムが記載されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、有線電力供給設備、水道、下水の使用を必要とせずまた、トイレを製作する地域で得られる安い材料で製作することができ、低コストで屎尿分離後の利用システムを、衛生、資源化が容易に実現できることができる。また、電気、水道、下水の使用を必要としないことから、これら公共施設の無い地方において、又は都市から離れた電気、水道、下水の設置が難しい場所において、容易に設置できる利点がある。また、電気、水道、下水に依存しないことから、災害時にも使用上の制約を受けない利点がある。乾燥された大便は土壌改良材とし、尿も太陽熱で乾燥したものを肥料として利用できる。6ケ月程度、太陽熱により高温乾燥させる事によって、病原菌の消毒を行うことができるため、地下浸透による病原菌の汚染の伝搬や感染症を防止できるため、衛生的な環境を得ることができる。さらに、高温による雑草種子又は発芽制御が可能となる。また、下水を使用せず、従って、汚水処理を必要とせず、水質汚染を無くす事が可能となり環境汚染の軽減に寄与出来る。
【0024】
また、乾燥させた屎は有機肥料として、また、疲弊した土壌の改良に利用できる事、尿に含まれる窒素、燐酸、カリュウムは水で薄めて肥料としての利用可能であり、尿に含まれるウロキナーゼを医薬品としての利用も可能である。また、貯蔵用コンテナの使用により、集荷、移動、乾燥用貯蔵が容易に行える構造となっており、応用し易い利点がある。大地から得られた食糧が人体を経由し、最終的に自然の形で大地へ戻すことができる。すなわち、屎尿のみに限らず、本発明に係る貯蔵用コンテナの最終処分を考慮し、材料選定を行うことによって、自然環境への負荷軽減が可能である。例えば、貯蔵用コンテナ材料をFRPとした場合でも、粉砕し、無機質と有機質を分離し、それぞれ燃料、建築構造物への再利用を可能とすることができる。
【0025】
上記の実施により、高価な公共下水道の敷設や処理場の施設建設費が軽減され、またさらに、回収する屎尿の費用は土壌改良材や肥料の販売益での補填が可能となる。
また、太陽光発電設備を併用すれば、電力送電を要することなく、独立電源が確保できる。該発電電力を使用し、電動機を動力源とする粉体移送や、用水の動力源として電動機を用い、また、自動制御も可能となった。
【0026】
以下に本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明におけるトイレの平面図を示す。
【図2】本発明におけるトイレの側面の断面図を示す。
【図3】洗水型トイレの場合の平面図を示す。
【図4】洗水型トイレの側面の断面図を示す。
【図5】本発明におけるフロート構造を示す。(浮子が内容物を感知していない状態)。
【図6】本発明におけるフロート構造を示す。(浮子が内容物を感知した状態)。
【図7】本発明におけるコンテナの圧力解放弁の側面断面図を示す。
【図8】本発明における移送用蓋の側面断面図を示す。
【図9】本発明における移送用蓋の平面図を示す。
【図10】本発明における移送用蓋の取付け時の側面断面図を示す。
【図11】本発明における圧力解放蓋の側面断面図を示す。
【図12】本発明における圧力解放蓋の平面図を示す。
【図13】本発明における圧力解放蓋の取付け時の側面断面図を示す。
【図14】本発明における屎尿処理の太陽光発電システムによる制御回路図を示す。
【図15】本発明における移動型太陽熱集熱屋根構造を示す。
【図16】本発明における移動型太陽熱集熱屋根に取付けられた送風ファンを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
本発明の実施例を図1から図15によって説明する。
図1は、本発明におけるトイレの平面図である。図において、トイレの踏石8の中心近傍に屎受け穴1を有し、屎は、直接直下に設置した屎用貯蔵用コンテナに落下し溜める。屎、尿はそれぞれ分離できているため、液跳ねによる汚染は無いが、便器には臭気防止用のふたを設けている。
衛生的に使用するために用足し後の屎用貯蔵用コンテナには、灰容器13の中の木灰など植物灰を一握り屎受け穴に撒くことによって、水分の早期除去と虫の発生を防止できる。床板12は、寿命の確保のため、耐食性のある素材として、材質を合成樹脂又は、軽量ダイキャスト素材とし、施工の単純化、工期短縮を図れる構造としている。また、床板12の表面は、汚れにくく、滑りにくい撥水塗装や加工を施し、合成樹脂素材で成型し、使用者の滑り転倒防止をする。
図1の平面図において、トイレ入り口部分は、ドアの取付け位置の例をドア軌跡11として表している。
【0029】
図2に本発明の実施例のトイレ側面断面図を示す。
屎尿分離便器29の屎受け穴1は、下方向に直胴管で接続しており、屎分は、直下の屎槽貯蔵用コンテナ2に落下する構造である。直胴管部の側面から臭気抜き配管10によって、臭気が上方に上がってくるのを防止する。一方、尿受3は、尿を導く尿用蛇管4に接続される尿穴に向かって傾斜を持ち、尿用蛇管4を経由し、図2の尿槽貯蔵用コンテナ5に溜める。植物油を使用前に少量流しておくことで、この尿用蛇管4に当該植物油が滞留し、尿が優先して尿槽貯蔵用コンテナ5にながれ、臭気対策ができる。屎尿分離便器29は、前記屎受け穴1と尿受3で構成しており、屎尿分離を果たしている。
【0030】
架台は、鋼製アングル及び軽量形鋼を構造材として使用することによって、強度及び施工工期短縮を図る。また、構造材と基礎の結合はアンカーボルトで締結し、安定を保つ構造としている。さらに、トイレの壁面や屋根部材については、図1、図2の下部と容易に縫いつけが可能な構造としており、設置地域によって入手しやすく、コストの安い材料で製作可能なトイレ構造となっている。屎尿分離後、屎尿をそれぞれ太陽熱で数カ月乾燥させるため、衛生的であり、肥料や土壌改良材として屎尿の資源化ができること、また、汚水の発生もなく、環境負荷が低いシステムとして、さらに低コストトイレ設備であって、設置工事の簡便さも考慮したトイレシステムを実現できる。
【0031】
また、構造材と床板はボルト締めで容易に結合できるようにしている。
床板は、耐食性のある材質として、合成樹脂又は成型部材を用いる。そして、床板の表層仕上げはスリップ防止及び清潔さを保てる表面処理として、撥水塗装、またはコーティングを行う。同様に、足置き台についても、表層を撥水塗装、またはコーティングを行い、滑り転倒の防止処理を図る。便器と屎貯蔵用コンテナ2、尿貯蔵用コンテナ5の接続部のシール構造を持ち、接続部を設け、空のコンテナと交換する着脱作業を容易に行える構造としている。また、切り離し後、蓋を施し、移送を容易にできる構造としている。作業性を考慮し、該コンテナの内容物容量と風袋を含め、30Kg程度としている。
【0032】
屎貯蔵用コンテナ2、尿貯蔵用コンテナ5は、太陽熱下で6ヶ月程度の期間、殺菌、熟成を行うため、都度交換し、利用するが、そのため、太陽光による紫外線や熱線による貯蔵用コンテナ寿命が低下することがない容器として、テフロン系塗装を内外に施した圧延鋼板や、同等性能の樹脂容器を用いる。さらに、屎コンテナには臭気抜き用換気筒を設置することもできる。また、屎貯蔵用コンテナ2、尿貯蔵用コンテナ5は、単純な構造にして、耐久性のあるタンク構造であり、運搬時は、転倒させ、転がし搬送が可能な形状としている。また、屎貯蔵用コンテナ2、尿貯蔵用コンテナ5内で粉体となった屎尿を屎貯蔵用コンテナ2または尿貯蔵用コンテナ5から取り出しが容易にできる接続開口部がとなっており、乾燥した屎尿の粉体を利用できる。
【0033】
また、図2本発明におけるトイレの側面の断面図である。浮子取付け栓33により、屎、尿それぞれの蓄積量を感知する浮子30の転倒により、屎尿のレベルの蓄積量を検知していることを示す。図において、 屎受け穴1の摺動管を上方行に摺動移動し、屎の蓄積量を検知した時点でトイレシステムから屎の入った屎槽貯蔵用コンテナ2を取り外し、開口部に移送用蓋37、38をそれぞれ螺合する。これによって屎槽貯蔵用コンテナ2の内容物の漏れを防止し、移送することができる。
図3は、図1に示す無水屎尿処理トイレシステムに水洗機能を持つ水洗型トイレの場合の平面図である。
また、図4は、洗水型トイレの側面の断面図である。水洗式のトイレシステムにおいても、無水屎尿処理トイレシステムと同様に屎尿分離処理および乾燥粉体化し、肥料、土壌改良を行うことができる。図2と同じく、屎槽貯蔵用コンテナ2及び尿貯蔵用コンテナ5に浮子取付け栓33を取り付け、屎槽貯蔵用コンテナ2及び尿貯蔵用コンテナ5の内容物である屎尿の貯蔵量の把握ができる(図示せず)。
【0034】
図5は、本発明におけるフロート構造である。この図において、浮子取付け栓33は、浮子30、浮力伝達軸31、回転軸32、偏重軸34からなり、この図においては、浮子が内容物を感知していない状態である。回転軸32が浮子取付け栓33のガイド管部分を抜け出して通過した時点で偏重軸34が転倒し、この転倒したことによって、内容物レベルが貯蔵量の限界に達したことを感知することができる。
図6では、本発明におけるフロート構造である。この場合、浮子の状態が内容物を感知した状態である。
図7は、本発明におけるコンテナの圧力解放弁の側面断面図である。前述のように、圧力解放を自由に行っても良いが、図7のコンテナの圧力解放弁を用いることによって、コンテナ内部の圧力が減圧状態でも加圧状態においても加圧リリース弁35、減圧リリース弁36がそれぞれリリース弁のバネで抑制できない加圧・減圧状態に達すると圧力解放ができるものである。
【0035】
図8は、本発明における移送用蓋の側面断面図である。移送用蓋37で内容物が移送時に漏れを生じないようにすることができる。移送用蓋37の中央部は、コンテナの受け口部分の雄螺子部に旋回しながら容易に取り付けできる形状としているが、開栓時に、内圧変化又は螺子部の付着物により旋回が固い場合、当該部分にてこの原理で開栓を行うハンドルを用いることができる(図示せず)。
また、図9は、本発明における移送用蓋の平面図である。図において、移送用蓋37、38によって、内容物が移送時に漏れを生じないようにすることができる。
【0036】
図10は、本発明における移送用蓋の取付け時の側面断面図である。図9における移送用蓋37がコンテナの受け口部分の雄螺子部に旋回して固定している状態の側面図であり、また、移送用蓋38がコンテナの浮子取付け栓33を取り付ける雄螺子部浮子取付け栓33の代わりに旋回して固定している状態の側面図である。
さらに、図11は、本発明における圧力解放蓋の例を示す側面断面図である。この場合、先の図7で示すコンテナの圧力解放弁に代えより簡単な構造の圧力解放蓋を示す。
図において、圧力解放蓋39の雌螺子部をコンテナの開口部の雄螺子に螺合し、固定する。太陽熱による昇温で、コンテナ内部の屎に含まれる水分は、開口部から放出され、乾燥することができる。
【0037】
図12は、本発明における圧力解放蓋をコンテナの受け口部分の雄螺子部に旋回して固定している状態の平面図である。
また、図13は、図12における本発明における圧力解放蓋をコンテナの受け口部分の雄螺子部に旋回して固定している状態の取付け時の側面断面図である。
【0038】
さらに、図14は、本発明における屎尿処理の太陽光発電システムによる制御回路図である。本発明における屎尿処理は、基本的に水道、電気、下水などの公共施設を必要とせず、電力の供給も無しに操業する仕組みとなっている。しかしながら太陽電池40の入手も容易であり、太陽電池の表面は、反射防止膜を有していることから、集熱効果も高い。特に多結晶シリコンや、単結晶シリコンを使用した太陽電池の場合、太陽光のエネルギの13%以上を電気エネルギとして取り出すことができる一方、赤外線は裏面側に通過する特徴がある。そこで、裏面側へ通過する赤外線などの熱線を後述する移動型太陽熱集熱屋根の昇温に充てれば、移動型太陽熱集熱屋根の加熱に集熱効果が利用できる。従って、太陽電池の表面の反射防止膜による集熱と同時に発電された電力も利用できるので、全ての作業を手作業で行うのではなく、使用設備・部品の水洗を行うための揚水、各種液体のレベルを感知するセンサの作動、粉体や液体の搬送制御のために電力が使用できる。また、この場合、有線電力送電を必要とせず、独立電力源として使用するこができるので、前記屎尿処理システムの動力源のみに限定することなく、広く電源としても使用できる。
【0039】
図において、太陽電池40で発電した電力は、充放電制御回路41によって過充電、過放電を防止しながら発電された電力を蓄電池に充電する。太陽光から得られた電力により、井戸水の揚水や貯水槽からの揚水を行い、水洗システム42によって、本発明に係る治工具やコンテナの洗浄を行うことができる。また、乾燥し、粉体化した尿を乾燥槽からかきとり、収集するとともに粉体移送システム43によって、保管タンクに移送する。粉体移送には螺旋回転子による粉体移送を行うこともできる。また、屎尿のレベル検知やセンサと電磁弁による流量制御や、レベル制御が行えるため、無人の屎尿処理システムを構築することができる。
【0040】
また、図15は、本発明における移動型太陽熱集熱屋根の断面構造である。図において、屎槽貯蔵用コンテナ2を集合して収めた土台部分がわずかに段差を有し、高くなっており、移動型太陽熱集熱屋根の側板をこの土台部分に習い移動させることによって、屎槽貯蔵用コンテナ2の集合、設置作業を容易にしている。図15においては、屋根が二重になっており、前述の屎槽貯蔵用コンテナ2の集合、設置作業時の横方向、縦方向の配列作業の自由度を上げ、作業性を良くしている。屎槽貯蔵用コンテナ2の配列配置作業が終わった時点で前述の土台部分の段差に沿わせて移動型太陽熱集熱屋根を移動して配置された屎槽貯蔵用コンテナ2を覆い、端面の扉を閉め乾燥作業が始まる。この図においては、屋根が二重構造になっているが、三重、四重にして更に乾燥室の面積を広げることも可能である。
【0041】
また、この多重構造のそれぞれの屋根の摺動部や側板摺動部さらに前述の土台と側板の摺動部には、それぞれ弾性体のシール構造を有し、乾燥室内部の気圧が摺動部から外部に漏れないようにしている。
また、移動集熱屋根44の内面は、自然対流で屎尿の乾燥を行っても良いが、先の太陽光発電による電力で送風ファンを動作させ、乾燥室内部に強制対流をさせれば、乾燥作業が一層効果的に行える。更に、太陽電池は昇温により、電力変換効率が低下する特性を有するが、移動集熱屋根44の内面を送風ファンで冷やせば太陽電池の裏面の昇温を抑えることができ、発電効率の低下を妨げることもできるため、乾燥の促進と発電効率低下防止の両面について効果を上げることができる。
【0042】
図16は、本発明における移動型太陽熱集熱屋根に取付けられた送風ファンを示す。移動型太陽熱集熱屋根の外側は太陽電池モジュールが取り付けられており、発電しながら集熱を行うが、太陽電池モジュールを通過した赤外線は、移動型太陽熱集熱屋根の内側に伝熱する。この移動型太陽熱集熱屋根を送風ファンで冷却することにより、太陽電池の昇温を防ぎ、尚且つ乾燥室の被乾燥物の乾燥のための熱伝搬を良くする効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の利用は、通常のトイレの構造のみに限らず、尻洗水を用いる慣習の地域にも尻洗水を用いる構造を持つことができる設計となっており、広く利用することができる。無水式の移動便槽としても利用できるため、仮設トイレとしても使用し易い。
【符号の説明】
【0044】
1 屎受け穴 2 屎槽貯蔵用コンテナ 3 尿受 4 尿用蛇管
5 尿槽貯蔵用コンテナ 6 尻洗水 7 洗水用蛇管 8 足置き台
9 洗水槽 10 臭気抜き配管 11 ドア軌跡 12 床 板
13 灰容器 14 蓋 15 固定金具 16 集熱板
17 太陽光線 18 台 19 集熱板 20 排気口
21 吸気口 22 搬入口 23 酸供給タンク
24 尿タンク 25 尿供給バルブ 26 蒸発器 27 台車
28 尿 29 屎尿分離便器 30 浮子 31 浮力伝達軸
32 回転軸 33 浮子取付け栓 34 偏重軸
35 加圧リリース弁 36 減圧リリース弁
37、38 移送用蓋 39 圧力解放蓋 40 太陽電池
41 充放電制御回路 42 水洗システム
43 粉体移送システム 44 移動集熱屋根 45 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屎尿を分離し、その分離した屎尿をそれぞれコンテナに収集し、太陽熱を集熱する可動式屋根の下に設置し、屎尿それぞれを太陽熱により乾燥することを特徴とする無水屎尿処理装置。
【請求項2】
請求項1において、太陽熱を集熱する屋根に太陽電池を用いることを特徴とする無水屎尿処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
コンテナの中に収めた個別の尿を貯尿タンクに集合し、前記貯尿タンクから落差で尿を乾燥蒸発槽に穴あき配管で送りこみ、前記太陽熱を集熱する可動式屋根の下に乾燥蒸発槽を位置させ、尿の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする無水尿処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のそれぞれにおいて、
太陽熱を集熱した屎尿の乾燥室を密閉し、室内気圧を陽圧下で乾燥作業を行い、乾燥室と外気の差圧を持って排気を行う排気口を有することを特徴とする無水尿処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記排気口にケミカルフィルタを設け、前記差圧を持たせるとともに、臭気対策とすることを特徴とする無水尿処理装置。
【請求項6】
請求項1から3のそれぞれにおいて、
屎尿を分離し、それぞれを利用するトイレシステムにおいて、分離した屎尿を収めるコンテナを貯槽する屎又は尿の量を感知する浮子を有することを特徴とする無水屎尿処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
屎尿を収めるコンテナを貯槽する前記貯槽の量を感知する浮子に取り付けた表示機構を設けたことを特徴とする無水屎尿処理装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記表示機構の表示器に太陽電池によって充電した蓄電池を電源とし、発光ダイオードを用いて表示することを特徴とする無水屎尿処理装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかにおいて、
屎槽貯蔵用コンテナまたは尿槽貯蔵用コンテナを交換し、乾燥プロセス工程(乾燥室)に移送及び保管する場合において、内容物の漏れを防止する蓋を用いるとこを特徴とする屎尿貯蔵用コンテナ。
【請求項10】
請求項9において、
前記コンテナ容器の蓋の構造をコンテナ内部の減圧または増圧に備え、圧力を逃がすことを特徴とする屎尿貯蔵用コンテナ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかにおいて、
屎尿を貯蔵したコンテナや空の前記コンテナ、容器の蓋および治具工具を、太陽熱を集熱する可動式屋根の下に保管することにより、それぞれを50℃以上の高温にて殺菌し、衛生管理状態を保つことを特徴とする無水屎尿処理装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかにおいて、
屎尿を貯蔵したコンテナや空の前記コンテナ、容器の蓋、運搬作業に使用する治具工具を、水洗し、天日乾燥し、再利用することを特徴とする無水屎尿処理方法。
【請求項13】
請求項1から3のいずれかにおいて、
乾燥後の結晶化した尿、又は粉体化した屎を農業用の肥料又は土壌改良材として利用し、又は乾燥前の尿は、尿の成分を抽出する原料として尿を収集することを特徴とする無水屎尿処理方法。
【請求項14】
請求項1から3又は7又は10のいずれかにおいて、
太陽光発電の電力を用いて、揚水、集尿、結晶化した尿の収集、乾燥し粉体化した屎の粉体移送を行う電動機を駆動する電源とし、また、前記電動機の始動、停止、監視、制御を自動制御すること特徴とする無水屎尿処理システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか又はそれぞれの組み合わせにおいて、
無水屎尿処理を行うことを特徴とする無水屎尿処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−260039(P2010−260039A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129622(P2009−129622)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(508040371)
【出願人】(508183092)
【Fターム(参考)】