説明

無水環状ホスホン酸の製造法



式(III)の無水環状ホスホン酸を、a)式(I)のホスホン酸誘導体を無水酢酸と30〜150℃で、酢酸と無水酢酸の混合物を蒸留により除去しながら反応させ、b)次いで、工程a)で得られた式(II)のオリゴマー状無水ホスホン酸を反応的蒸留にかけ、対応する式(III)の環状三量体状無水ホスホン酸に転化することにより、製造する方法を開示する。ここで、nは0〜300の数であり、Rは、アリル、アリール、または開鎖、環状、または分岐したC〜Cアルキル基、アリールオキシ、アリルオキシ、または開鎖、環状、または分岐したC〜Cアルキル基を含んでなるアルコキシである。好ましくは、工程b)で形成された環状三量体状無水ホスホン酸を、環状三量体状無水ホスホン酸に対して不活性な挙動を示す有機溶剤に直ちに溶解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公知の2,4,6−置換された1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド(III)を、式(I)の親ホスホン酸から、それらの式(II)の開鎖類似体を経由して、蒸留により製造する改良された方法に関するものである。
【化1】

【背景技術】
【0002】
式(II)のオリゴマー状無水ホスホン酸(OPA)の、適当な助剤(assistant)との縮合(EP−B−0527442明細書)による製造、およびこれらのOPAを使用するアミド結合の形成(DE−A−3839379明細書)はすでに公知である。
【0003】
しかし、アミド結合を形成するには、現状技術水準で、ヨーロッパ特許第0527442号明細書により製造される生成物では、鎖長P20〜P200の無水ホスホン酸が製造され、従ってOPAの組成が正確に分からないために、過剰のOPAを使用する必要がある。その結果生じるコストは、事実上、本発明の方法により製造される式(III)の無水環状プロパンホスホン酸(CPA)により、回避することができる。
【0004】
ホスホン酸は、微生物により典型的にはホスフェートに分解されるが、これは生態学的に問題である(富栄養)。無水環状ホスホン酸(CPA)は、化学量論的であるために少量で使用できるので、この問題を防止することができる。これによって、EP−A−0527442明細書およびEP−A−3839379明細書に記載されている公知の製造法および用途と比較して、式(III)の化合物を製造および使用することにより、さらなる優位性が達成される。
【0005】
実験室におけるCPAの選択的製造は、すでに成功している(H. Wissmann, H.J. Kleiner, Angew. Chem. Int. Ed. 1980, 19, 133 [129])。
【0006】
ここではCPAの蒸留可能性が記載されているが、粗製物としてすでに存在するCPAの追加精製蒸留である。その上、この方法では、二塩化ホスホニルを使用してCPAが製造されている。
【化2】

【0007】
この製法で形成されるHClは、その腐食性および毒性のために、この合成の工業的応用には多くの問題がある。さらに、生成物が塩化物を含んでなるために、CPAの可能な用途が制限されることがある。
【0008】
生成物混合物が未確認組成で得られ、大量の廃棄物が生じ、腐食性および毒性ガスが生じるか、または生成物が塩化物を含んでなる公知の方法の上記欠点から、これらの欠点が全く無い、改良された製法を提供することが求められている。
【発明の開示】
【0009】
この目的は、式(III)の無水環状ホスホン酸を、
a)式(I)のホスホン酸アルカンを無水酢酸と温度30〜150℃で反応させ、同時に酢酸と無水酢酸の混合物を蒸留により除去すること、
b)続いて、工程a)で得られた式(II)のオリゴマー状無水ホスホン酸を反応的蒸留にかけ、対応する式(III)の環状三量体状無水ホスホン酸に転化すること、
【化3】

c)形成された環状三量体状無水ホスホン酸を、好ましくは、環状三量体状無水ホスホン酸に対して不活性な有機溶剤に直ちに溶解させること
により製造することにより、達成され、ここで
nは0〜300の整数であり、
Rは、H、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アリル、アリール、開鎖または分岐したC〜Cアルキル基、アリールオキシ、アリルオキシまたは開環または分岐したC〜Cアルキル基を有するアルコキシ、ニトロ、ニトリル、カルボキシ、開鎖または分岐したC〜Cアルキル基を有するカルボン酸エステル、アミドまたは開鎖または分岐したC〜Cアルキル基を有するアルキルアミド基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法では、工程a)で得た式(II)のOPAを、反応的蒸留により、式(III)のCPAに直接転化し、それらのCPAが得られた直後に、適当な溶剤に溶解させる。このようにして、CPAの重合によりオリゴマー状無水ホスホン酸に直ち再編成されるのを阻止する。
【0011】
適当な溶剤は、無水ホスホン酸と反応しない溶剤であり、特に非プロトン性有機溶剤である。
【0012】
適当な溶剤は、式(III)のCPAと反応しないすべての非プロトン性有機溶剤であり、リグロイン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、アセトニトリル、スルホラン、DMSO、HMPT、NMPまたはそれらの混合物が好ましく、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、アセトニトリルまたはそれらの混合物がより好ましく、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、tert−ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、アセトニトリルまたはそれらの混合物が特に好ましい。
【0013】
反応的蒸留の際、酢酸および未転化無水酢酸を減圧下で完全に蒸留除去した後、存在する式(II)のOPA(EP−B−0527442明細書に準じて製造)を、0.001mbar〜500mbarの真空下、温度100℃〜450℃で解離させ、式(III)のCPAを純粋な形態で得る。
【0014】
本発明の方法には、これまで公知の方法と対照的に、式(II)のOPAの製造および式(III)のCPAの製造を同じ反応容器で行うことができるので、装置の複雑さが低レベルで済むという特別な特徴がある。
【0015】
環状化合物(III)の形成が、反応的蒸留により効果的に行われることは、非常に驚くべきことである。蒸留における条件を選択することにより、所望のCPAが純粋な形態で得られ、再オリゴマー化が起こらない。
【0016】
上記のように、式(I)、(II)および(III)における適当な基Rは、アリル、アリールまたは開鎖環状または分岐したC〜Cアルキル基、アリールオキシ、アリルオキシまたは開鎖環状または分岐したC〜Cアルキル基を有するアルコキシである。特に適当な基は、R=メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、である基であり、エチル、プロピル、およびブチル基が非常に適当な基である。
【0017】
無水酢酸と式(I)のホスホン酸の比は、所望により選択できるが、あまり小さくすべきではなく、好ましくは20:1〜1:1、より好ましくは10:1〜1:1、最も好ましくは5:1〜1:1である。
【0018】
本発明の方法における反応および蒸留は、
a)式(I)のホスホン酸を縮合させ、式(II)のOPAを形成し、同時に酢酸および未転化無水酢酸を30℃〜150℃(反応器内部温度)または30℃〜130℃(最上部温度)、好ましくは50℃〜130℃(反応器内部温度)または35℃〜100℃(最上部温度)、最も好ましくは70℃〜110℃(反応器内部温度)または40℃〜70℃(最上部温度)で蒸留すること、および
b)式(II)のOPAを、100℃〜450℃(反応器内部温度)または100℃〜380℃(最上部温度)、好ましくは150℃〜400℃(反応器内部温度)または150℃〜350℃(最上部温度)、より好ましくは200℃〜350℃(反応器内部温度)または200℃〜300℃(最上部温度)で反応的蒸留にかけ、式(III)のCPAを形成すること
からなる2段階で行う。
【0019】
本発明の方法では、a)酢酸および未転化無水酢酸の蒸留における圧力は、1mbar〜1000mbar、好ましくは10mbar〜500mbar、より好ましくは50mbar〜200mbarであり、b)式(II)のOPAから式(III)のCPAへの反応的蒸留における圧力は、0.001mbar〜500mbar、好ましくは0.005mbar〜100mbar、より好ましくは0.01mbar〜50mbarである。
【0020】
蒸留は、どのような時間ででも行うことができるが、
a)酢酸および無水酢酸の蒸留は、100時間以内、好ましくは80時間以内、より好ましくは60時間以内、で行い、
b)式(II)のOPAから式(III)のCPAへの反応的蒸留は、120時間以内、好ましくは90時間以内、より好ましくは60時間以内、で行う
ことが多い。
【0021】
一般的に、蒸留および反応的蒸留は、小規模で、比較的短時間で行うことができるが、この反応時間は、例えばパイロットプラント規模に移行すると増加する。
【0022】
得られた式(III)のCPAは、蒸留直後に有機溶剤に溶解させ、溶剤とCPAの混合比は所望により選択することができるが、化合物の粘度のためにあまり低く選択すべきではなく、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5、最も好ましくは2:1〜1:2、である。好ましい実施態様では、CPA縮合物は、不活性有機溶剤中で直接集め、重合および類似のオリゴマーへの再編を阻止する。
【0023】
このようにして製造された式(III)のCPAおよび選択した溶剤または溶剤混合物の溶液は、縮合反応、例えばアミド形成(M. Feigel et al., Angew. Chem. Int. Ed. 1989, 28, 486 [466])およびエステル形成(F.P. Montforts et al., Eur. J. Org. Chem. 2001, 1681-1687)、アシル化(独国特許第10063493号明細書)および複素環式化合物の製造(国際特許第WO99/37620号パンフレット)に直接使用することができる。
【0024】
特に、本発明の方法には、先行技術に対して、式(II)の様々なオリゴマーから、限定された分子量の式(III)の化合物が形成され、従って、化学量論的量で使用できるという利点がある。これによって、これらの無水ホスホン酸の、化学プロセス、例えばカルボン酸とアルコールまたはアミンの縮合反応、における経済的な有用性が増大する。シロップ状の化合物を有機溶剤に溶解させることにより、特に容易に取り扱うことができ、驚くべきことに、この形態で多くの反応に直接使用することもできる。
【0025】
このようにして得られた溶液は、特にアミド結合を形成することができ、カップリング試薬を限定された、控えめな量で加えることができる。
【0026】
下記の例および比較例により、本発明の課題を説明するが、本発明はこれらの例に限定するものではない。
【0027】
諸例
例1 2,4,6−トリプロピル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシドの合成
攪拌機、栓、内部温度計および蒸留カラムを備えたガラス製フラスコ中で、プロパンホスホン酸33.0g(0.27mol)を、アルゴン下で無水酢酸189.3g(1.85mol)中に溶解させ、2時間還流加熱する。続いて、酢酸と無水酢酸の混合物を100mbarで留別する。外部温度を350℃に、真空を0.1mbarに増加する。最上部温度280℃で、無色、シロップ状の2,4,6−トリプロピル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド22.9gが得られる(収率80%)。
【0028】
こうして得られたCPAをジクロロメタン22.9gに溶解させ、この形態でその後の合成に使用できる。
【0029】
例2 2,4,6−トリプロピル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシドの合成
攪拌機、栓、内部温度計および蒸留カラムを備えたガラス製フラスコ中で、プロパンホスホン酸33.0g(0.27mol)を、アルゴン下で無水酢酸189.3g(1.85mol)中に溶解させ、2時間還流加熱する。続いて、酢酸と無水酢酸の混合物を100mbarで留別する。外部温度を350℃に、真空を0.1mbarに増加する。最上部温度280℃で、無色、シロップ状の2,4,6−トリプロピル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド22.9gが得られる(収率80%)。
【0030】
こうして得られたCPAをジメチルホルムアミド22.9gに溶解させ、この形態でその後の合成に使用できる。
【0031】
例3 2,4,6−トリエチル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシドの合成
攪拌機、栓、内部温度計および蒸留カラムを備えたガラス製フラスコ中で、エタンホスホン酸40.2g(0.37mol)を、アルゴン下で無水酢酸204.9g(2.01mol)中に溶解させ、2時間還流加熱する。続いて、酢酸と無水酢酸の混合物を100mbarで留別する。外部温度を350℃に、真空を0.1mbarに増加する。最上部温度295℃で、無色、シロップ状の2,4,6−トリエチル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド20.2gが得られる(収率66%)。
【0032】
例4 2,4,6−トリヘキシル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシドの合成
攪拌機、栓、内部温度計および蒸留カラムを備えたガラス製フラスコ中で、ヘキサンホスホン酸44.8g(0.27mol)を、アルゴン下で無水酢酸189.3g(1.85mol)中に溶解させ、2時間還流加熱する。続いて、酢酸と無水酢酸の混合物を100mbarで留別する。外部温度を350℃に、真空を0.1mbarに増加する。最上部温度240℃で、無色、シロップ状の2,4,6−トリヘキシル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド30.0gが得られる(収率75%)。
【0033】
こうして得られたCPAをジクロロメタン30gに溶解させ、この形態でその後の合成に使用できる。
【0034】
例5 2,4,6−トリシクロヘキシル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシドの合成
攪拌機、栓、内部温度計および蒸留カラムを備えたガラス製フラスコ中で、シクロヘキサンホスホン酸44.3g(0.27mol)を、アルゴン下で無水酢酸189.3g(1.85mol)中に溶解させ、2時間還流加熱する。続いて、酢酸と無水酢酸の混合物を100mbarで留別する。外部温度を350℃に、真空を0.1mbarに増加する。最上部温度260℃で、無色、シロップ状の2,4,6−トリシクロヘキシル−[1,3,5,2,4,6]−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド27.6gが得られる(収率75%)。
【0035】
こうして得られたCPAをジクロロメタン27.6gに溶解させ、この形態でその後の合成に使用できる。
【0036】
例6 N−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−アラニンメチルエステルの合成
L−アラニンメチルエステルヒドロクロリド0.1g(0.7mmol)、N−アセチル−L−フェニルアラニン0.2g(1mmol)およびN−メチルモルホリン0.55ml(5mmol)をジクロロメタン50mlに溶解させ、−10℃に冷却する。例1から得たCPA0.5g(CHCl中50%、0.8mmol)を徐々に加え、混合物を低温条件下で3時間、および室温で72時間攪拌する。この溶液を蒸発により濃縮し、酢酸エチルおよび1N HCl溶液、飽和NaHCO、飽和NaClおよび蒸留水で抽出する。有機相を硫酸マグネシウム上で除湿し、濾別し、蒸発により濃縮する。白色のN−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−アラニンメチルエステル0.18gが得られる(88%)。
【0037】
例7 N−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成
L−フェニルアラニンメチルエステルヒドロクロリド0.38g(1.8mmol)、N−アセチル−L−フェニルアラニン0.37g(1.7mmol)およびN−メチルモルホリン1.6ml(14.6mmol)をジメチルアセトアミド30mlに溶解させ、0℃に冷却する。次いで、例2から得たCPA1.2ml(ジメチルホルムアミド中50%、1.9mmol)を加える。混合物を0°でさらに1時間、および室温で12時間攪拌する。この溶液を蒸発により濃縮し、酢酸エチルおよび1N HCl溶液、飽和NaHCO、飽和NaClおよび蒸留水で抽出する。有機相を硫酸マグネシウム上で除湿し、濾別し、蒸発により濃縮する。白色のN−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−フェニルアラニンメチルエステル0.53gが得られる(84%)。
【0038】
比較例8 例5と同じ量のOPAによるN−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成
L−フェニルアラニンメチルエステルヒドロクロリド0.38g(1.8mmol)、N−アセチル−L−フェニルアラニン0.37g(1.7mmol)およびN−メチルモルホリン1.6ml(14.6mmol)をジメチルアセトアミド30mlに溶解させ、0℃に冷却する。次いで、ヨーロッパ特許第0527442号、例1に記載されているようにして製造したOPA1.2ml(ジメチルホルムアミド中50%、組成が不明なので、モル量は記載できない)を加える。混合物を0°でさらに1時間、および室温で12時間攪拌する。この溶液を蒸発により濃縮し、酢酸エチルおよび1N HCl溶液、飽和NaHCO、飽和NaClおよび蒸留水で抽出する。有機相を硫酸マグネシウム上で除湿し、濾別し、蒸発により濃縮する。白色のN−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−フェニルアラニンメチルエステル0.14gが得られる(22%)。
【0039】
比較例9 例5と比較して増加した量のOPAによるN−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成
L−フェニルアラニンメチルエステルヒドロクロリド0.38g(1.8mmol)、N−アセチル−L−フェニルアラニン0.37g(1.7mmol)およびN−メチルモルホリン5.0ml(45.5mmol)をジメチルアセトアミド30mlに溶解させ、0℃に冷却する。次いで、ヨーロッパ特許第0527442号、例1に記載されているようにして製造したOPA5ml(ジメチルホルムアミド中50%、組成が不明なので、モル量は記載できない)を加える。混合物を0°でさらに1時間、および室温で12時間攪拌する。この溶液を蒸発により濃縮し、酢酸エチルおよび1N HCl溶液、飽和NaHCO、飽和NaClおよび蒸留水で抽出する。有機相を硫酸マグネシウム上で除湿し、濾別し、蒸発により濃縮する。白色のN−アセチル−L−フェニルアラニニル−L−フェニルアラニンメチルエステル0.55gが得られる(87%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)のホスホン酸誘導体を無水酢酸と温度30〜150℃で反応させ、同時に酢酸と無水酢酸の混合物を蒸留により除去すること、
b)続いて、工程a)で得られた式(II)のオリゴマー状無水ホスホン酸を反応的蒸留にかけ、対応する式(III)の環状三量体状無水ホスホン酸に転化すること、
【化1】

(式中、
nは0〜300の整数であり、
Rは、アリル、アリール、または開鎖環状または分岐したC〜Cアルキル基、アリールオキシ、アリルオキシまたは開鎖環状または分岐したC〜Cアルキル基を有するアルコキシである)
により、式(III)の無水環状ホスホン酸を製造する方法。
【請求項2】
工程b)で形成された環状三量体状無水ホスホン酸を、環状三量体状無水ホスホン酸に対して不活性な有機溶剤に直ちに溶解させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無水酢酸と式(I)のホスホン酸の比が20:1〜1:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)における反応的蒸留が、温度100〜450℃(内部反応器温度)および最上部温度100〜380℃で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
a)酢酸および未転化無水酢酸の蒸留における圧力が1mbar〜1000mbarであり、b)式(II)のオリゴマー状無水ホスホン酸から式(III)の環状無水ホスホン酸への反応的蒸留における圧力が0.001mbar〜500mbarである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
連続的に行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
得られた式(III)の環状三量体状無水ホスホン酸を、反応的蒸留の後、有機溶剤中に、溶剤と無水ホスホン酸の混合比10:1〜1:10で溶解させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶剤が、リグロイン、スルホラン、DMSO、HMPT、NMP、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、THF、ジオキサン、アセトニトリル、スルホラン、DMSO、HMPT、NMPまたはそれらの混合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により得られる式(III)の環状無水ホスホン酸の、縮合反応、アシル化および複素環式化合物製造のための使用。

【公表番号】特表2006−528140(P2006−528140A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520716(P2006−520716)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007468
【国際公開番号】WO2005/014604
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506315284)アルキミカ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】ARCHIMICA GMBH
【Fターム(参考)】