説明

無溶媒乳化によるポリエステルラテックスの製造方法

【課題】トナー製品に用いるのに適したポリマラテックスの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのポリエステル樹脂を、水酸化アンモニウム・フレーク、水酸化カリウム・フレーク、水酸化ナトリウム・フレーク、炭酸ナトリウム・フレーク、重炭酸ナトリウム・フレーク、水酸化リチウム・フレーク、炭酸カリウム・フレーク、有機アミン、及びそれらの組合せから成る群から選択された固形中和剤と、有機溶媒が存在しない状態で接触させてプレブレンド混合物を形成し、プレブレンド混合物を界面活性剤と接触させ、混合物を融解混合させ、融解混合した混合物を脱イオン水と接触させて水中油型エマルジョンを形成し、ラテックス粒子を連続的に回収するステップを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナーを製造するのに有用な樹脂エマルジョンを製造する方法に関する。より具体的には、押出機を利用した高収率のポリエステル樹脂の乳化に関する無溶媒連続プロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
トナーの調製に関して多くのプロセスが当業者の認識範囲内にある。エマルジョン凝集(EA)はその1つの方法である。エマルジョン凝集トナーは印刷及び又はゼログラフィ画像を形成するのに用いることができる。エマルジョン凝集技術は、モノマを加熱し、バッチ又は半連続的乳化重合を行ことによるポリマエマルジョンの形成を含むことができる。
【0003】
ポリエステルトナーは、非晶質及び結晶性ポリエステル樹脂を用いて調製されている。これらのポリエステルをトナーに混和するには、初めにそれらを、溶媒含有バッチプロセス、例えば、溶媒フラッシュ乳化及び/又は溶媒ベースの相反転乳化(PIE)により調製されたエマルジョンに配合する必要があるが、これは時間がかかりエネルギーを消費する。いずれにしても大量のケトン又はアルコールのような有機溶媒が、樹脂を溶解するのに用いられており、これは次にラテックスを形成するために大量のエネルギーを消費する蒸留を必要とする可能性があり、また環境に優しくない。
【0004】
無溶媒ラテックスエマルジョンは、熱的に軟化させた樹脂に中和溶液、界面活性剤溶液及び水を加えることによるバッチ又は押出プロセスで形成されている。しかし、これらのプロセスにおいては少量の粗材料が乳化されずに残るので、樹脂のラテックスへの転化は完全ではない。従って、ラテックスはこの粗材料分を除去するように処理する必要が有り、或は、残留樹脂又は粗材料をラテックス粒子に転化するための研磨ステップを加える必要が有る。例えば、ろ過によりあらゆる粗材料を除去することができ、同時に、押出機から生成されたラテックスに超音波処理、及び/又は外部の高剪断装置を用いた均質化処理を施して転化を完結させることができる。しかしこの付加的なプロセスステップは、複雑さ、エネルギー消費及びコストを増すので望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,593,049号
【特許文献2】米国特許第6,756,176号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0222991号
【特許文献4】米国特許第5,290,654号
【特許文献5】米国特許第5,302,486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トナー製品に用いるのに適したポリマラテックスの調製のための、より効率的で時間がかからず高収率のプロセスを提供することが有利となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高収率で粗粒分の少ないポリエステルラテックスを形成するための無溶媒連続プロセスを開示し、次にこれをトナーの形成に用いる。実施形態において、少なくとも1つのポリエステル樹脂を固形中和剤と接触させるステップを含むプロセスを提供する。
【0008】
他の実施形態において、少なくとも1つのポリエステル樹脂を固形中和剤と接触させるステップを含むプロセスを提供する。
【0009】
さらに他の実施形態においては、少なくとも1つのポリエステル樹脂を、有機溶媒が存在しない状態で水酸化ナトリウム・フレークと接触させて混合物を形成し、この混合物を固形界面活性剤と接触させ、混合物を融解混合し、融解混合した混合物を脱イオン水と接触させて水中油型エマルジョンを形成し、約0.01%乃至約1%の粗粒分を有するラテックス粒子を連続的に回収するステップを含むプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の実施例1によるポリエステルラテックスの調製のための押出機プロセスを示すフロー図である。
【図2】本開示の実施例1によるラテックスの粒径分布を示すグラフである。
【図3】本開示の実施例2によるポリエステルラテックスの調製のための押出機プロセスを示すフロー図である。
【図4】本開示の実施例2によるラテックスの粒径分布を示すグラフである。
【図5】本開示の実施例3によるポリエステルラテックスの調製のための押出機プロセスを示すフロー図である。
【図6】本開示の実施例3によるラテックスの粒径分布を示すグラフである。
【図7】本開示の別の実施形態によるポリエステルラテックスの調製のための押出機プロセスを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、トナーを形成するのに用いることができる、高収率で粗粒分の少ないポリエステルラテックスを調製するための無溶媒プロセスを提供する。
【0012】
実施形態において本開示は、有機溶媒が存在しない状態で少なくとも1つのポリエステル樹脂を固形中和剤と接触させてプレブレンド混合物を形成し、プレブレンド混合物を界面活性剤と接触させ、混合物を融解混合し、融解混合した混合物を3つの引き続いた間隔で脱イオン水と接触させてエマルジョンを形成し、粗粒分の少ないラテックス粒子を連続的に回収するステップを含んだ連続的プロセスを提供する。
【0013】
実施形態において本開示は、有機溶媒が存在しない状態で少なくとも1つのポリエステル樹脂と固形中和剤をスクリューフィーダに共供給して混合物を形成し、混合物を界面活性剤と接触させ、混合物を融解混合し、融解混合した混合物を3つの引く続いた間隔で脱イオン水と接触させてエマルジョンを形成し、粗粒分の少ないラテックス粒子を連続的に回収するステップを含んだ連続的プロセスを提供する。
【0014】
実施形態において本開示は、粗粒分の少ない高収率トナーを提供するが、このトナーは有機溶媒が存在しない少なくとも1つのポリエステル樹脂と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、ピペラジンのような誘起アミンなどから成る群から選択した固形中和剤と、界面活性剤と、脱イオン水と、随意にトナー組成物の1つ又はそれ以上の付加的成分とを含み、ここで、ラテックスの粗粒分は全固形分の約0.01%乃至約1%である。
【0015】
本開示のラテックスエマルジョンを形成するのに、任意の樹脂を用いることができる。実施形態において樹脂は、非晶質樹脂、結晶性樹脂、及び/又はそれらの組合せとすることができる。さらに別の実施形態において樹脂は、特許文献1及び特許文献2に記載されている樹脂を含むポリエステル樹脂とすることができる。
【0016】
実施形態において樹脂は、ジオールと二価酸を随意の触媒の存在下で反応させて形成したポリエステル樹脂とすることができる。
【0017】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約1乃至約50重量パーセント、実施形態においてはトナー成分の約5乃至約35重量パーセントの量で存在することができる。結晶性樹脂は様々な融点、例えば、約30℃乃至約120℃、実施形態においては約50℃乃至約90℃の融点を有することができる。結晶性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、例えば、約1,000乃至約50,000、実施形態においては約2,000乃至約25,000の数平均分子量(Mn)、及び、ポリエチレン標準を用いてゲル浸透クロマトグラフィで測定したとき、例えば、約2,000乃至約100,000、実施形態においては約3,000乃至約80,000の重量平均分子量(Mw)を有することができる。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、約2乃至約6、実施形態においては約3乃至約4とすることができる。
【0018】
上述の触媒は、ポリエステル樹脂を生成するのに用いる出発の2価酸又はジエステルに基づいて、約0.01モルパーセント乃至約5モルパーセントの量を用いることができる。
【0019】
上記の実施形態において、不飽和の非晶質ポリエステル樹脂をラテックス樹脂として用いることができる。
【0020】
実施形態において、適切なポリエステル樹脂は、mを約5乃至約1000とすることができる次式(I)
【化1】

(I)
を有するポリ(プロポキシ化ビスフェノールAコ-フマレート)樹脂のような非晶質ポリエステルとすることができる。
【0021】
ラテックス樹脂として用いることができる直鎖プロポキシ化ビスフェノールAフマレート樹脂に一例は、ブラジル、サンパウロ所在のResana S/A Industrias QuimicasからSPARIIの商品名で入手できるものである。使用可能で市販の他のプロポキシ化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、日本の花王株式会社からのGTUF及びFPESL−2、並びにノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク所在のライヒホールドからのEM181635などが挙げられる。
【0022】
上記の非晶質樹脂と随意に組み合せて用いることができる適切な結晶性樹脂には、その開示が全体として引用により本明細書に組み入れられる特許文献3に開示されているものが含まれる。実施形態において、適切な結晶性樹脂としては、エチレングリコールと、bを約5乃至約2000としdを約5乃至約2000とする次式
【化2】

(II)
を有するドデカン二酸及びフマル酸コ-モノマの混合物とから形成される樹脂を挙げることができる。
【0023】
1つ、2つ、又はそれ以上の樹脂を用いることができる。実施形態において2つ又はそれ以上の樹脂を用いる場合、樹脂は任意の適切な比(例えば重量比)、例えば約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)から約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)まで、実施形態においては約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)から約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)までの比で存在することができる。樹脂が非晶質樹脂及び結晶性樹脂を含む場合、2つの樹脂の重量比は約99%(非晶質樹脂):1%(結晶性樹脂)から約1%(非晶質樹脂):99%(結晶性樹脂)までとすることができる。
【0024】
実施形態において樹脂は酸基を有することができ、この酸基は実施形態において樹脂の末端に存在することができる。存在することができる酸基としては、カルボン酸基などを挙げることができる。カルボン酸基の数は、樹脂を形成するのに用いる材料及び反応条件を調節することにより制御することができる。
【0025】
実施形態において樹脂は、樹脂1グラム当たり約2mgKOH乃至約200mgKOH、実施形態においては樹脂1グラム当たり約5mgKOH乃至約50mgKOHの酸度を有するポリエステル樹脂とすることができる。酸含有樹脂はテトラヒドロフラン溶液に溶かすことができる。酸度は、指示薬としてフェノールフタレンを含有するKOH/メタノール溶液を用いた滴定により決定することができる。酸度は、滴定の終点として同定される、樹脂の全ての酸基を中和するのに要するKOH/メタノールの当量に基づいて算出することができる。
【0026】
実施形態において樹脂は、弱塩基又は中和剤とプレブレンドすることができる。実施形態において塩基は固形として溶液を用いる必要性をなくすことができ、これにより溶液のポンピングに伴う危険及び困難さが避けられる。
【0027】
実施形態において、樹脂及び中和剤は共供給プロセスにより同時に供給することができ、これによりプロセスを通して押出機への塩基及び樹脂の両方の供給速度を正確に制御することができ、次に融解混合させ次いで乳化させることができる。このプロセスを用いると、塩基濃度の制御が可能になり、より効率的なプロセスが可能になる。共供給によりプロセスの再現性及び安定性、並びに初めの立ち上げの無駄を著しく低くすることが可能になる。
【0028】
実施形態において、中和剤を用いて樹脂中の酸基を中和することができ、それゆえ中和剤は、本開示では「塩基性中和剤」と呼ぶこともできる。本開示により、任意の適切な塩基性中和剤を用いることができる。実施形態において適切な塩基性中和剤には、無機塩基剤及び有機塩基剤の両方を含めることができる。
【0029】
実施形態において、本開示により形成されるエマルジョンはまた少量の水、実施形態においては脱イオン水(DIW)を、約30%乃至約95%、実施形態においては約30%乃至約60%の量で、約40℃乃至約140℃、実施形態においては約60℃乃至約100℃の樹脂を融解又は軟化させる温度において、含むことができる。
【0030】
塩基剤は、例えば水酸化ナトリウムのフレークのような固形で用いて、樹脂の約0.001重量%乃至50重量%、実施形態においては樹脂の約0.01重量%乃至25重量%、実施形態においては樹脂の約0.1重量%乃至5重量%の量で存在するようにすることができる。
【0031】
上述のように、塩基性中和剤を、酸基を有する樹脂に加えることができる。従って、塩基性中和剤の添加は、酸基を有する樹脂を含んだエマルジョンのpHを約5から約12まで、実施形態においては約6から約11まで上昇させることができる。酸基の中和は、実施形態においてエマルジョンの形成を促進する。
【0032】
実施形態において本開示のプロセスは、融解混合の前又はその最中に、高温で界面活性剤を樹脂に添加するステップを含むことができる。実施形態において界面活性剤は、融解混合の前に高温で樹脂に添加することができる。実施形態において固形界面活性剤を樹脂及び中和剤と共に押出機に共供給することができる。実施形態においては、固形界面活性剤を融解混合の前に樹脂及び中和剤に添加してプレブレンド混合物を形成することができる。界面活性剤を用いる場合、樹脂エマルジョンは1つ、2つ、又はそれ以上の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤はイオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択することができる。陰イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤は用語「イオン性界面活性剤」により包含される。実施形態において界面活性剤は、固形で、又は、約5重量%乃至約100重量%(純界面活性剤)、実施形態においては約10重量%乃至約95重量%の濃度の溶液として、添加することができる。実施形態において界面活性剤は、樹脂の約0.01重量%乃至約20重量%、実施形態においては樹脂の約0.1重量%乃至約16重量%、他の実施形態においては樹脂の約1重量%乃至約14重量%の量で存在するように用いることができる。
【0033】
前述のように、本開示の連続的プロセスは、樹脂、固形又は水性界面活性剤、及び固形中和剤を含んだ混合物を高温で融解混合して、プロセス中に有機溶媒を用いずに、ラテックスエマルジョンを形成するステップを含む。実施形態において樹脂及び中和剤は融解混合の前にプレブレンドすることができる。実施形態において樹脂は、固形中和剤と共にスクリューフィーダに共供給することができる。
【0034】
ラテックスを形成するのに1つより多くの樹脂を用いることができる。前述のように、樹脂は、非晶質樹脂、結晶性樹脂、又はそれらの組合せとすることができる。実施形態において樹脂は非晶質樹脂とし、前記の高温とは非晶質樹脂のガラス転移温度より高い温度とすることができる。他の実施形態において樹脂は結晶性樹脂とし、高温とは結晶性樹脂の融点より高い温度とすることができる。さらに別の実施形態において樹脂は非晶質及び結晶性樹脂の混合物とし、温度は混合物のガラス転移温度より高くすることができる。
【0035】
実施形態において、用いることができる中和剤には水酸化ナトリウムのフレークが含まれるが、前記の他の中和剤を用いることもできる。実施形態において用いる界面活性剤は、アルキルジフェニルオキシド二スルホン酸塩の水溶液とし、NaOHフレークを用いるとき適切な樹脂中和が起こり、粗粒分が少ない高品質のラッテクスが生じることを確実にすることができる。代替的に、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムの固形界面活性剤を用い、樹脂と共に押出機供給ホッパーに共供給して、溶液を用いる必要性を無くして簡単化し、より効率的なプロセスを開発することができる。
【0036】
実施形態において界面活性剤は、融解混合の前、又はその間、又はその後に、樹脂組成物の1つ又はそれ以上の成分に添加することができる。実施形態において界面活性剤は、中和剤の添加の前、その間、又はその後に添加することができる。実施形態において界面活性剤は、中和剤の添加の前に添加することができる。実施形態において固形界面活性剤を、融解混合の前のプレブレンド混合物に添加することができる。
【0037】
高温とは、約30℃乃至約300℃、実施形態において約50℃乃至約200℃、他の実施形態においては約70℃乃至約150℃とすることができる。
【0038】
融解混合は、押出機、即ち、2軸押出機、ハーケ社のミキサーのようなニーダー(kneader)、バッチ反応器、又は粘稠性材料をよく混合してほぼ均質な混合物を造ることができる任意の他の装置内で実施することができる。
【0039】
必須ではないが、撹拌してラテックスの形成を促進することができる。任意の適切な撹拌装置を用いることができる。実施形態において撹拌は、約10回転毎分(rpm)乃至約5,000rpm、実施形態においては約20rpm乃至約2,000rpm、他の実施形態においては約50rpm乃至約1,000rpmで行うことができる。撹拌は一定速度とする必要はなく、変化させることができる。例えば、混合物の加熱がより均一になるにつれて撹拌速度を増すことができる。
【0040】
ひとたび樹脂、中和剤及び界面活性剤を融解混合させると、次に混合物を水に接触させてラテックスエマルジョンを形成することができる。約5%乃至約50%、実施形態においては約10%乃至約40%の固形分を有するラテックスを形成するように水を加えることができる。より高い水温は溶解過程を促進するが、一方ラテックスは、室温のように低い温度で形成することができる。他の実施形態において水温は約40℃乃至約110℃、実施形態においては約50℃乃至約100℃とすることができる。
【0041】
水と樹脂混合物の接触は、任意の適切な様式で、例えば容器又は連続導管中において、充填層中で達成することができる。実施形態において、実施例1で説明するように図1に示す無溶媒押出機プロセスを用いる。実施形態において、樹脂混合物が押出機内を下に移動するときに、3つの続くポートにおいて水を添加することができる。これは、油中水型エマルジョンから水中油型エマルジョンへの移行を緩やかにし、材料が相分離せずに混ざり続けて押出機中でのエマルジョン形成を最適にすることを保証する利点となり得る。実施形態においてポートは予備加熱した脱イオン水を押出機内に約40g/min乃至約400g/min、実施形態においては約100g/min乃至約200g/minの速度で注入することができる。
【0042】
押出機から出た生成物にはラテックスのストリームが含まれ、これが緩やかな撹拌によりスチームトレース・タンク内で収集され、次いで放出されて貯蔵され、その後以下に説明する凝集/融合プロセスに用いられる。
【0043】
形成されるラテックスエマルジョンの粒径は、ポリエステル樹脂に対する界面活性剤及び中和剤の濃度比により制御することができる。ラテックスの固形分濃度は、水に対する樹脂混合物の比により制御することができる。
【0044】
本開示により、本開示のプロセスは、エマルジョンを形成するのに用いる出発樹脂、実施形態においては予め作成した樹脂と同じ分子量特性を保持する乳化樹脂粒子を生成することができることを見出した。
【0045】
水性媒質中の乳化樹脂粒子は、約1500nm又はそれ以下、例えば約10nm乃至約1200nm、実施形態においては約30nm乃至約1000nmの粒径を有することができる。
【0046】
本開示のラテックスの粒径分布は、約60nm乃至約300nm、実施形態においては約125nm乃至約200nmとなり得る。
【0047】
本開示のラテックスの粗粒分は、約0.01重量%乃至約1重量%、実施形態においては約0.1重量%乃至約0.5重量%となり得る。
【0048】
本開示のラテックスの固形分は、約5重量%乃至約50重量%、実施形態においては約30重量%乃至約40重量%となり得る。
【0049】
乳化の後、必須ではないが、付加的な界面活性剤、水、及び/又は中和剤を随意に添加してエマルジョンを薄めることができる。乳化後、エマルジョンは室温、例えば約20℃乃至約25℃に冷却することができる。
【0050】
本開示のラテックスエマルジョンは幾つかの利点を提供することができ、それには、例えば、少ない粗粒分、エマルジョン凝集トナー製造用に適切な厳格な粒径分布及び粒径、ラテックスの調製に必要なホモジナイザ又は他の分散装置を必要としないこと、粗い粒子を除去するためのろ過を必要としないこと、通常の固形材料からの要求に応じたラテックス製造、が挙げられる。
【0051】
次に本開示のラテックスエマルジョンは、エマルジョン凝集超低融解プロセスに適した粒径を、結晶性及び/又は非晶質ポリエステル樹脂を用いて形成するのに用いることができる。ラテックスは、均質化又はろ過を用いずに少ない粗粒分で作成することができる。
【0052】
上記のように、ひとたび樹脂混合物を水と接触させてエマルジョンを形成すると、結果として得られるラテックスは次に、当業者の認識範囲内にある任意の方法でトナーを形成するのに用いることができる。ラテックスエマルジョンは、随意に分散液中で着色剤、及び他の添加剤と接触させて適切なプロセス、実施形態においてはエマルジョン凝集及び融合プロセスにより超低融解トナーを形成することができる。
【0053】
実施形態において、着色剤、ワックス、及び他の添加剤を含む、トナー組成物の随意の付加的成分を、樹脂を融解混合する前、その間又はその後に添加して、本開示のラテックスエマルジョンを形成することができる。付加的成分はラテックスエマルジョンの形成前、形成中、又は形成後に添加することができる。さらに別の実施形態において、着色剤を界面活性剤の添加前に添加することができる。
【0054】
添加する着色剤として、様々な既知の適切な着色剤、例えば染料、顔料、混合染料、混合顔料、及び染料と顔料の混合物などをトナーに含めることができる。実施形態において着色剤は、例えばトナーの約0.1乃至約35重量%、又はトナーの約1乃至約15重量%、又はトナーの約3乃至約10重量%の量をトナーに含めることができるが、着色剤の量はこれらの範囲外であってもよい。
【0055】
実施形態において、顔料又は着色剤は、固形分ベースでトナー粒子の約1重量%乃至約35重量%、他の実施形態においては約5重量%乃至約25重量%の量を用いることができる。しかし、実施形態において、これらの範囲外の量を用いることもできる。
【0056】
トナー粒子を形成する際に、随意にワックスを樹脂及び着色剤と組み合せることもできる。ワックスはワックス分散液中で供給することができ、これには単一種類のワックス又は2つ若しくはそれ以上の異なるワックスの混合物を含めることができる。単一のワックスをトナー配合物に加えて、例えば、トナー粒子形状、トナー粒子表面上のワックスの存在及び量、帯電及び/又は定着特性、光沢、剥離、オフセット性質などのような特定のトナー特性を改善することができる。代替的にワックスの組合せを添加してトナー組成物に複数の特性を与えることができる。
【0057】
ワックスを含める場合、ワックスは、例えばトナー粒子の約1重量%乃至約25重量%、実施形態においてはトナー粒子の約5重量%乃至約20重量%の量で存在することができるが、ワックスの量はこれらの範囲外であってもよい。
【0058】
ワックス分散液を用いる場合、ワックス分散液はエマルジョン凝集トナー組成物中に普通に用いられる種々のワックスのいずれかを含むことができる。選択することができるワックスには、例えば平均分子量が約500乃至約20,000、実施形態においては約1,000乃至約10,000のワックスが含まれる。
【0059】
実施形態においてワックスは、1つ若しくはそれ以上の水性エマルジョン、又は水中の固形ワックス分散液の形でトナー中に組み込むことができ、ここで固形ワックスの粒径は約100乃至約300nmの範囲とすることができる。
【0060】
トナー粒子は当業者の認識範囲内の任意の方法により調製することができる。トナー粒子製造に関連する実施形態は、以下でエマルジョン凝集プロセスに関して説明するが、特許文献4及び特許文献5に開示されている懸濁及びカプセル化プロセスのような化学プロセスを含む任意の適切な方法を用いることもできる。実施形態においてトナー組成物及びトナー粒子は、小サイズの樹脂粒子を凝集させて適切なトナー粒径にし、次いで融合させて最終的なトナー粒子の形状及び形態を達成する凝集及び融合プロセスにより調製することができる。
【0061】
実施形態においてトナー組成物は、随意の着色剤、随意のワックス及び任意の他の所望の又は必要な添加剤、並びに上記の樹脂を含むエマルジョン、の混合物を、随意に上記のように界面活性剤中で凝集させ、次いで凝集混合物を融合させるステップを含むプロセスのような、エマルジョン凝集プロセスにより調製することができる。混合物は、やはり随意に界面活性剤含んだ分散液にすることができる着色剤及び随意のワックス又は他の物質を、樹脂を含む2つ又はそれ以上のエマルジョンの混合物とすることができるエマルジョンに加えることによって調製することができる。結果として得られる混合物のpHを、例えば、酢酸又は硝酸などのような酸によって調節することができる。実施形態において混合物のpHは約2乃至約5に調節することができる。さらに、実施形態において混合物を均質化することができる。混合物を均質化する場合、均質化は約600乃至約6,000回転毎分において混合することにより遂行することができる。均質化は、例えば、IKA ULTRA TURRAX T50プローブホモジナイザを含む任意の適切な手段によって遂行することができる。
【0062】
上記の混合物を調製した後、この混合物に凝集剤を添加することができる。任意の適切な凝集剤を用いてトナーを形成することができる。
【0063】
凝集剤は、トナーを形成するのに用いる混合物に、例えば、混合物中の樹脂の約0重量%乃至約10重量%、実施形態においては約0.2重量%乃至約8重量%、他の実施形態においては約0.5重量%乃至約5重量%の量を添加することができる。これは凝集のために十分な量の凝集剤を与える必要がある。
【0064】
粒子は、所定の所望の粒径が得られるまで凝集させることができる。所定の所望の粒径とは、形成前に決定された得るべき所望の粒径を意味し、成長プロセス中、その粒径に達するまで粒径をモニタする。成長プロセス中にサンプリングし、例えばコールターのカウンタにより平均粒径を分析することができる。従って凝集は、撹拌を続けながら、高温を維持し、又は温度を例えば約40℃乃至約100℃までゆっくり上昇させ、この温度に混合物を約0.5時間乃至約6時間、実施形態においては約1時間乃至約5時間保持することにより進行させて凝集粒子をもたらすことができる。ひとたび所定の所望の粒径に達したら、成長プロセスを停止させる。
【0065】
凝集剤添加後の粒子の成長及び成形は任意の適切な条件下で遂行することができる。例えば、成長及び成形は、凝集が融合とは別に起る条件下で遂行することができる。別々の凝集段階及び融合段階に対して、凝集プロセスは、上記の樹脂のガラス転移温度より低くすることができる、例えば、約40℃乃至約90℃、実施形態においては約45℃乃至約80℃の高温における剪断条件下で実施することができる。
【0066】
ひとたびトナー粒子の所望の最終的粒径に達すると、混合物のpHを塩基により約3乃至約10、実施形態においては約5乃至約9の値に調節することができる。pHの調節はトナー成長を凍結、即ち停止させるのに用いることができる。
【0067】
実施形態において、凝集後、しかし融合の前に、樹脂コーティングを凝集粒子に塗布してその上にシェルを形成することができる。上記の任意の樹脂をシェルとして用いることができる。実施形態において、上記のポリエステル非晶質樹脂ラテックスをシェル内に含めることができる。さらに他の実施形態において、上記のポリエステル非晶質樹脂ラテックスを異なる樹脂と組み合せ、樹脂コーティングとして粒子に添加し、シェルを形成することができる。
【0068】
シェルを形成するのに用いることができる樹脂には、それらに限定されないが、上記の結晶性樹脂ラテックス、及び/又は上記の非晶質樹脂が含まれる。実施形態において、本開示によりシェルを形成するのに用いることができる非晶質樹脂には、随意に上記の結晶性ポリエステル樹脂ラテックスと組み合せた非晶質ポリエステルが含まれる。複数の樹脂を任意の適切な量で用いることができる。実施形態において、第1の非晶質ポリエステル樹脂、例えば上記の式Iの非晶質樹脂は、全シェル樹脂の約20重量パーセント乃至約100重量パーセント、実施形態においては全シェル樹脂の約30重量パーセント乃至約90重量パーセントの量で存在することができる。従って、実施形態において第2の樹脂は、シェル樹脂中に、全シェル樹脂の約0重量パーセント乃至約80重量パーセント、実施形態においては全シェル樹脂の約10重量パーセント乃至約70重量パーセントの量で存在することができる。
【0069】
シェル樹脂は、当業者の認識範囲内の任意の方法により凝集粒子に塗布することができる。実施形態において、シェルを形成するのに用いる樹脂は、上記のいずれかの界面活性剤を含むエマルジョンにすることができる。樹脂を含有するエマルジョン、即ち、随意に上記のNaOHフレークで中和した無溶媒結晶性ポリエステル樹脂ラテックスを上記の凝集粒子と混ぜ合せて凝集粒子の上にシェルを形成することができる。
【0070】
凝集粒子上のシェルの形成は、約30℃乃至約80℃、実施形態においては約35℃乃至約70℃の温度に加熱している間に起こり得る。シェルの形成は約5分乃至約10時間、実施形態においては約10分乃至約5時間の間に起こり得る。
【0071】
所望の粒径への凝集及び任意の随意的シェルの塗布の後、次に粒子を融合させて所望の最終的形状にすることができ、この場合融合は、例えば、混合物を、トナー粒子を形成するのに用いる樹脂のガラス転移温度又はそれ以上にすることができる温度、約45℃乃至約100℃、実施形態においては約55℃乃至約99℃の温度に加熱し、及び/又は、撹拌速度を、例えば約100rpm乃至1,000rpm、実施形態においては約200rpm乃至約800rpmに減速することによって達成される。融合は、約0.01乃至約9時間、実施形態においては約0.1乃至約4時間の間にわたって遂行することができる。
【0072】
凝集及び/又は融合の後、混合物は室温、例えば約20℃乃至約25℃に冷却することができる。冷却は、所望により急速に又はゆっくり行うことができる。適切な冷却法としては、反応器の周りのジャケットに冷水を導入することを挙げることができる。冷却後、トナー粒子は随意に水洗し、次いで乾燥させることができる。乾燥は、例えば凍結乾燥法を含んだ任意の適切な乾燥法により遂行することができる。
【0073】
実施形態においてトナー粒子はまた、所望の又は必要な他の随意の添加剤を含むことができる。
【0074】
また形成後トナー粒子には、トナー粒子の表面に存在することができる流れ促進剤を含んだ外添剤粒子を混ぜ合せることができる。
【0075】
一般に、トナーフロー、摩擦帯電強化、混合の制御、改善された現像及び転写安定性、並びにより高いトナーブロッキング温度のために、トナー表面にシリカを塗布することができる。TiO2を塗布して相対湿度(RH)安定性を向上させ、摩擦帯電を制御し、現像及び転写安定性を向上させることができる。また随意にステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸マグネシウムを、潤滑特性、現像剤の導電性、摩擦帯電強化のための外添剤として用い、トナー粒子と担体粒子の間の接触数を増すことによって、より高いトナー帯電及び帯電安定性を可能にすることができる。実施形態において、フェロ(Ferro)社から入手できるステアリン酸亜鉛Lとして知られる市販のステアリン酸亜鉛を用いることができる。外面添加剤は、コーティング有りで又は無しで用いることができる。
【0076】
これらの外添剤の各々は、トナーの約0.1重量%乃至約5重量%、実施形態においてはトナーの約0.25重量%乃至約3重量%の量を用いることができるが、これらの範囲外の添加剤量を用いることもできる。実施形態においてトナーは、例えば、約0.1重量%乃至約5重量%のチタニア、約0.1重量%乃至約8重量%のシリカ、及び約0.1重量%乃至約4重量%のステアリン酸亜鉛を含むことができる。
【実施例1】
【0077】
NaOHフレーク及びダウファックス(登録商標)2A1(ダウ・ケミカル社からのアルキルジフェニルオキシドジスルホネート)を用いた押出しによる結晶性ポリエステル樹脂の無溶媒乳化。
図1に示すように、供給ホッパー及び液体注入ポートを備えた押出機を約95℃に予備加熱し、回転子速度を約450rpmに設定した。約64.6グラムのNaOHフレーク及び約6.46キログラムのポリ(デカン酸ノニレン)結晶性ポリエステル樹脂をタンブラ10内で約15分間約15rpmの回転子速度で混合してプレブレンド混合物を調製した。このプレブレンド混合物をスクリューフィーダ20のホッパーに充填し、このスクリューフィーダが混合物を約380g/minで押出機30に送出した。材料がスクリューフィーダ内を下流に移動し融解するときに、約55℃の温度に予備加熱された、固形分が約20%のダウファックス(登録商標)2A1が、容器40から、ダイアフラムポンプ50を経由し、熱交換器60により加熱されて、押出機の第1の注入ポート70に約162g/minの供給速度で供給された。この溶液中の水分はNaOHにより活性化され、一方水分が運んできた界面活性剤は樹脂と融解混合し、中和された樹脂の均質な混合物を生成した。
【0078】
混合物が押出機内を下流に移動するとき、予備加熱した脱イオン水(DIW)を3つの続くポートにおいて添加した。タンク80からのDIWは、押出機の第2の注入ポート110、第3の注入ポート140、及び第4の注入ポート170に、それぞれダイアフラムポンプ90、120及び150を経由して、それぞれ熱交換器100、130、及び160により加熱されて、それぞれ、約161g/min、約153g/min、及び約110g/minの供給速度で供給された。この水の添加は、油中水型エマルジョンから水中油型エマルジョンへの漸進的な移行をもたらし、材料が相分離せずに混合し続けることを確実にした。
【0079】
押出機から収集された生成物はラテックス・ストリームを含み、これは、タンク80からダイアフラムポンプ180を経由し、熱交換器190により加熱されて16g/minの供給速度で供給された付加的なDIWと共に穏やかに撹拌することにより、スチームトレース・タンク内200で収集した。
【0080】
約950g/minで収集したラテックス・ストリーム210からサンプリングし、25μmフィルターを通してろ過し、ラテックスの粗粒分、固形分、粒径、粒径分布、及び樹脂分子量を決定した。粗粒分は約0.4%、固形分は約39.7%、粒径は約208nmで図2に示すような狭い粒径分布を有し、ラテックス中の樹脂の分子量は低下しなかった。乾燥ラテックス樹脂の重量平均分子量は21,400Daであったのに対して出発材料は21,300Daの分子量を有した(この差は測定誤差の範囲内)。エマルジョンの固形分はDIWに対する樹脂混合物の比によって制御した。次にラテックスエマルジョンを凝集/融合プロセス内で用いた。
【実施例2】
【0081】
NaOHフレーク及ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのフレークを用いた、押出しによる結晶性ポリエステル樹脂の無溶媒乳化。
図3に示すように、供給ホッパー及び液体注入ポートを備えた押出機を約100℃に予備加熱し、回転子速度を約450rpmに設定した。約64.6グラムのNaOHフレーク、約485グラムのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、及び約6.46キログラムのポリ(デカン酸ノニレン)結晶性ポリエステル樹脂をタンブラ10内で約15分間約15rpmの回転子速度で混合してプレブレンド混合物を調製した。このプレブレンド混合物をスクリューフィーダ20のホッパーに充填し、図3に示すように、このスクリューフィーダが混合物を約380g/minで押出機30に送出した。材料がスクリューフィーダ内を下流に移動し融解するとき、予備加熱されたDIWがタンク80からダイアフラムポンプ70を経由し、熱交換器60により加熱されて、押出機の第1の注入ポート70に約120g/minの供給速度で供給された。この溶液中の水分はNaOHにより活性化され、界面活性剤は中和された樹脂の均質な混合物を生成した。
【0082】
混合物が押出機内を下流に移動するとき、予備加熱したDIW水を3つの続くポートにおいて添加した。タンク80からのDIWは、押出機の第2の注入ポート110、第3の注入ポート140、第4の注入ポート170に、それぞれダイアフラムポンプ90、120及び150を経由し、それぞれ熱交換器100、130、及び160により加熱されて、それぞれ、約180g/min、約190g/min、及び約110g/minの供給速度で供給された。これらの速度での水の添加は、油中水型エマルジョンから水中油型エマルジョンへの漸進的な移行をもたらし、材料が相分離せずに混合し続けることを確実にした。
【0083】
押出機から収集された生成物はラテックス・ストリームを含み、これは、タンク80からダイアフラムポンプ180を経由し、熱交換器190により加熱されて16g/minの供給速度で供給された付加的なDIWと共に穏やかに撹拌することによりスチームトレース・タンク内200で収集した。
【0084】
約1180g/minで収集したラテックス・ストリーム210からサンプリングし、25μmフィルターを通してろ過し、ラテックスの粗粒分、固形分、粒径、粒径分布、及び樹脂分子量を決定した。粗粒分は約0.1%、固形分は約32.8%、粒径は約132nmで図4に示すような狭い粒径分布を有し、ラテックス中の樹脂の分子量は低下しなかった。乾燥ラテックス樹脂の重量平均分子量は20,000Daであったのに対して出発材料は21,300Daの分子量を有した(この差は測定誤差の範囲内)。
【実施例3】
【0085】
NaOHフレーク及びダウファックス(登録商標)2A1を用いた、押出しによる非晶質ポリエステル樹脂の無溶媒乳化。
図5に示すように、供給ホッパー及び液体注入ポートを備えた押出機を約100℃に予備加熱し、回転子速度を約450rpmに設定した。約38.8グラムのNaOHフレーク及び約6.46キログラムのポリ(コ-プロポキシ化ビスフェノール-コ-エトキシ化ビスフェノール-コ-テレフタレート)ポリエステル非晶質樹脂をタンブラ10内で約15分間約15rpmの回転子速度で混合してプレブレンド混合物を調製した。このプレブレンド混合物をスクリューフィーダ20のホッパーに充填し、図5に示すように、このスクリューフィーダが混合物を約350g/minで押出機30に送出した。材料がスクリューフィーダ内を下流に移動し融解するとき、約55℃の温度に予備加熱された、固形分が約25%のダウファックス(登録商標)2A1が、容器40から、ダイアフラムポンプ50を経由し、熱交換器60により加熱されて、押出機の第1の注入ポート70に約82g/minの供給速度で供給された。この溶液中の水分はNaOHにより活性化され、一方界面活性剤は樹脂と融解混合し、中和された樹脂の均質な混合物を生成した。
【0086】
混合物が押出機内を下流に移動するとき、予備加熱したDIW水を3つの続くポートにおいて添加した。タンク80からのDIWは、押出機の第2の注入ポート110、第3の注入ポート140、及び第4の注入ポート170に、それぞれダイアフラムポンプ90、120及び150を経由して、それぞれ熱交換器100、130、及び160により加熱され、それぞれ、約89g/min、約190g/min、及び約110g/minの供給速度で供給された。これらの速度での水の添加は、油中水型エマルジョンから水中油型エマルジョンへの漸進的な移行をもたらし、材料が相分離せずに混合し続けることを確実にした。
【0087】
押出機から収集された生成物はラテックス・ストリームを含み、これは、タンク80からダイアフラムポンプ180を経由し、熱交換器190により加熱されて81g/minの供給速度で供給された付加的なDIWと共に穏やかに撹拌することによりスチームトレース・タンク200内で収集した。
【0088】
約880g/minで収集したラテックス・ストリーム210からサンプリングし、25μmフィルターを通してろ過し、ラテックスの粗粒分、固形分、粒径、粒径分布、及び樹脂分子量を決定した。粗粒分は約0.2%、固形分は約39.7%、粒径は約170nmで図6に示すような狭い粒径分布を有し、ラテックス中の樹脂の分子量は低下しなかった。乾燥ラテックス樹脂の重量平均分子量は19,100Daであったのに対して出発材料は18,600Daの分子量を有した(この差は測定誤差の範囲内)。
【実施例4】
【0089】
NaOHフレーク及びダウファックス(登録商標)2A1を用いた、共供給押出しプロセスによる結晶性ポリエステル樹脂の無溶媒乳化。
図7に示すように、供給ホッパー及び液体注入ポートを備えた押出機を約95℃に予備加熱し、回転子速度を約450rpmに設定した。図7に示すように、容器220から供給されたNaOHフレークを約9g/minの速度で、同時にスクリューフィーダ20から供給されたポリ(デカン酸ノニレン)結晶性ポリエステル樹脂を約760g/minの速度で共供給し、これにより混合物が約769mg/minで押出機30に供給された。材料がスクリューフィーダ内を下流に移動し融解するとき、約55℃の温度に予備加熱された、固形分が約25%のダウファックス(登録商標)2A1が、容器40から、ダイアフラムポンプ50を経由し、熱交換器により加熱されて、押出機の第1の注入ポート70に供給された。この溶液中の水分はNaOHにより活性化され、一方水分が運んできた界面活性剤は樹脂と融解混合し、中和された樹脂の均質な混合物を生成した。
【0090】
混合物が押出機内を下流に移動するとき、予備加熱したDIW水を3つの続くポートにおいて添加した。タンク80からのDIWは、押出機の第2の注入ポート110、第3の注入ポート140、及び第4の注入ポート170に、それぞれダイアフラムポンプ90、120及び150を経由して、それぞれ熱交換器100、130、及び160により加熱され、それぞれ、約160g/min、約226g/min、及び約110g/minの供給速度で供給された。この水の添加は、油中水型エマルジョンから水中油型エマルジョンへの漸進的な移行をもたらし、材料が相分離せずに混合し続けることを確実にした。
【0091】
押出機から収集された生成物はラテックス・ストリームを含み、これは、タンク80からダイアフラムポンプ180を経由し、熱交換器190により加熱されて1067g/minの供給速度で供給された付加的なDIWと共に穏やかに撹拌することによりスチームトレース・タンク200内で収集した。
【0092】
約2630g/minで収集したラテックス・ストリーム210からサンプリングし、25μmフィルターを通してろ過し、ラテックスの粗粒分、固形分、粒径、粒径分布、及び樹脂分子量を決定した。粗粒分は約0.1%、固形分は約35%、粒径は約154nmで狭い粒径分布を有し、ラテックス中の樹脂の分子量は低下しなかった。次にこのラッテクスエマルジョンを凝集/融合プロセス内で用いた。
【符号の説明】
【0093】
10:タンブラ
20:スクリューフィーダ
30:押出機
40、220:容器
50、90、120、150、180:ダイアフラムポンプ
60、100、130、160、190:熱交換器
70、110、140、170:注入ポート
80:タンク
200:スチームトレース・タンク
210:ラテックス・ストリーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリエステル樹脂を、水酸化アンモニウム・フレーク、水酸化カリウム・フレーク、水酸化ナトリウム・フレーク、炭酸ナトリウム・フレーク、重炭酸ナトリウム・フレーク、水酸化リチウム・フレーク、炭酸カリウム・フレーク、有機アミン、及びそれらの組合せから成る群から選択された固形中和剤と、有機溶媒が存在しない状態で接触させてプレブレンド混合物を形成し、
前記プレブレンド混合物を界面活性剤と接触させ、
前記混合物を融解混合させ、
前記融解混合した混合物を脱イオン水と接触させて水中油型エマルジョンを形成し、
ラテックス粒子を連続的に回収する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂は、非晶質樹脂、結晶性樹脂、及びそれらの組合せから成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのポリエステル樹脂と、水酸化アンモニウム・フレーク、水酸化カリウム・フレーク、水酸化ナトリウム・フレーク、炭酸ナトリウム・フレーク、重炭酸ナトリウム・フレーク、水酸化リチウム・フレーク、炭酸カリウム・フレーク、有機アミン、及びそれらの組合せから成る群から選択された固形中和剤とを、有機溶媒が存在しない状態で接触させて混合物を形成し、
前記混合物を界面活性剤と接触させ、
前記混合物を融解混合させ、
前記融解混合した混合物を脱イオン水と接触させて水中油型エマルジョンを形成し、
約0.01%乃至約1%の粗粒分を有するラテックス粒子を連続的に回収する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
少なくとも1つのポリエステル樹脂と水酸化ナトリウム・フレークとを有機溶媒が存在しない状態で接触させて混合物を形成し、
前記混合物を固形界面活性剤と接触させ、
前記混合物を融解混合させ、
前記融解混合した混合物を脱イオン水と接触させて水中油型エマルジョンを形成し、
約0.01%乃至約1%の粗粒分を有するラテックス粒子を連続的に回収する
ステップを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−32471(P2011−32471A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165458(P2010−165458)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】