説明

無焼結窒化アルミニウム静電チャックおよびその製造方法

本発明は無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックおよびその製造方法に係わり、特に本発明はウエハーの加工時にウエハーを固定させるために使用する静電チャックにおいて、焼結工程や接着工程を行わずに誘電体を結合して使用することによって優れた静電特性を有すると共に優れた結合強度および熱伝導度を有する窒化アルミニウムのコーティング層が誘電体であることを特徴とする無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックおよびその製造方法に関する。 本発明は、静電チャックにおいて、誘電体がコーティングによって生成される窒化アルミニウム(AlN)であるので静電チャックの特性を向上させることができる窒化アルミニウム層を誘電体に使用するようになることによって、優れた静電特性および熱伝導性を有すると共に、これを焼結工程や接着工程を行わずに生成するようになるので優れた結合強度および熱伝導度を有する静電チャックを製作することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックおよびその製造方法に関し、特に、ウエハーの加工時にウエハーを固定させるために使用する誘電体層として無焼結窒化アルミニウム(AlN)を備える静電チャック(焼結工程や接着工程を行わずに誘電体を結合して使用することによって形成され、優れた静電特性を有すると共に優れた結合強度および熱伝導度を有する)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体素子のエッチング、蒸着などに使用される反応チャンバーで、ウエハーは加工の精密度を確保するためにチャックに強固に固定されなければならず、このような固定のために使用される静電チャックにおいて、ウエハーの固定はチャックに誘導された静電気を利用するのが一般的である。
【0003】
つまり、静電チャックは、一般に、プラズマ化学蒸着装備やエッチング装備などのような半導体を製造する装備に、シリコンウエハーを誘電分極現象で発生される静電気力を利用して瞬間的に吸着または脱着させる半導体装備の部品である。このためにはチャンバー内のプラズマとチャックとの間に静電力を発生させて基板の全面が吸着される構造を有する。この時、チャックには静電力のソースである誘電体と電圧印加のための電極を備えていなければならないのは勿論、特に乾式プロセスでは薄膜の均一性、熱応力、欠陥密度の低減のために真空雰囲気で正確、かつ均一な加熱/冷却、温度分布および静電力が必要であるため、優れた誘電特性と熱伝導度とを有する素材を選択してチャックを製造し、誘電体を通じたチャックの表面に均一な静電力および温度調節が可能なように部品を製造することが重要である。
【0004】
一般に、静電気誘導のための電極は誘電体内にフローティング状態で挿入されており、チャックの裏面に配線をしてチャンバー内のプラズマの間に電圧を加えるようになる。
大部分の静電チャックに使用される誘電体の素材にはポリイミド、酸化アルミニウム(Al23/black Al23)、シリコンゴム、窒化アルミニウム(AlN)等があり、特にこのうちの窒化アルミニウム(AlN)は、コーティング素材の特性を比較した表1に示されているように、他のコーティング素材に比べて高誘電率と高熱伝導性を有するだけでなく、耐プラズマ性も優れた素材であって、今後誘電体の材料として利用価値が高い。
【0005】
【表1】


しかし、大部分の静電チャックの製造において、従来、電極を挿入した後に誘電体を焼結する方法を使用している。しかし、窒化アルミニウム(AlN)は焼結が難しい難焼結性材料であり、たとえ焼結をしたとしても焼結した窒化アルミニウム(AlN)誘電体と基板との結合力が劣る問題点がある。したがって、窒化アルミニウム(AlN)を誘電体素材として使用するためには無焼結方式の製造方法が必要である。
【0006】
また、一部無焼結方式を適用した場合であって海外で製造されている静電チャックは窒化アルミニウム/電極/窒化アルミニウムをバルク形態で電極を挿入した後に焼結する工程で製造し、アルミニウム基板(母材チャック)とバルクとの接合を接着剤で付ける方式で製造されている。しかし、この場合にはバルクと基板との接合力が顕著に劣る問題と接触部位の不均一性によって工程中にアーキングが生じるなどの問題があることが知られている。
【0007】
したがって、このような問題を解決すると共に窒化アルミニウム(AlN)を誘電体に適用した静電チャックの開発が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来技術の問題点を解決しようと、本発明は静電チャックにおいて、誘電体が焼結方法および接着方法を使用せずに生成される窒化アルミニウム(AlN)を備える静電チャックを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は優れた静電特性を有すると共に、優れた結合強度および熱伝導度を有する静電チャックを提供することを目的とする。
さらに、本発明はコーティング法を適用して窒化アルミニウムを生成し、これによって基板素材の選定において低融点、高熱伝導度を有する材料の選定が可能であり、低い生産単価と高い生産性で静電チャックを製造することができる静電チャック製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明は、静電チャックにおいて、窒化アルミニウムのコーティング層から形成された誘電体を含む無焼結窒化アルミニウム(AlN)を有する静電チャックを提供する。
【0011】
また、本発明は、下から順次に基板、絶縁層、電極および誘電体を積層させ、誘電体を窒化アルミニウムをコーティングして形成する、無焼結窒化アルミニウム(AlN)を備える静電チャック製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、静電チャックにおいて、誘電体がコーティングによって生成される窒化アルミニウム(AlN)である。窒化アルミニウム層を誘電体として使用することによって、静電チャックの特性を向上させることができ、優れた静電特性および熱伝導性を有すると共に、これを焼結工程や接着工程を行わずに製造することができるため、優れた結合強度および熱伝導度を有する静電チャックを製造することができる。
【0013】
つまり、焼結工程を適用しないことによって、誘電体として窒化アルミニウム(AlN)を適用できるようになり、静電チャックが高静電力、高誘電率、高熱伝導度、高耐プラズマ性を有するようにすることができる。
【0014】
また、本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャック製造方法は、低温高速噴射コーティング法(Cold Spray)の適用において低温工程が可能になることによって、高温噴射コーティング法に対する弱点を除去することができる。さらに、物理学的観点では、コーティングされる素材が固体状態で膜を形成するように堆積されるため、コーティング素材の物性をそのまま維持することができ、母材である基板の酸化を防止することができる。加えて、基板の素材として低融点材質を選択することができ、基板素材の幅が拡大され、したがって低融点、高熱伝導性を有する金属材を選択することができ、低温高速噴射コーティング法でコーティングされた窒化アルミニウム(AlN)を焼結しないために、酸化に関連する問題を回避することができる。また、基板の残留応力を減少させることができ、高密度、高強度、加工硬度を有するコーティング膜の生成が可能であり、低酸化度の厚膜をコーティングすることができる。さらに、低い多孔度(>99%高密度、As−coated)と高いコーティング効率(>98%)を共に得ることができ、静電チャックを、低い製造コストで大量生産することができる。
【0015】
以上で説明した本発明は実施例および添付図面によって限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で当該技術分野の当業者が多様に修正および変更させたものも本発明の範囲内に含まれることは勿論である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は無焼結窒化アルミニウム静電チャックに関するものであって、静電チャックにおいて、誘電体層が無焼結窒化アルミニウムのコーティング層からなる。
以下、添付図面を参照して本発明の無焼結窒化アルミニウム静電チャックを詳しく説明する。
【0017】
本発明の好ましい一実施例として本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックは下から基板20、絶縁体15、電極30および誘電体10を含む。
図1および図2は本発明による無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックの一実施例に関する断面図および平面図を示す。
【0018】
本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックにおいて、窒化アルミニウムのコーティング層は多様なコーティング方法によって形成することができる。
特に、本発明のコーティング層は、例えば、気相蒸着法、溶射法(Hot Spray)または低温高速噴射法のうちのいずれか一つの方法で形成することができる。つまり、前記コーティング法は大きく分けると気相蒸着法と溶射法の2種類に分けられ、気相蒸着法としてはパルスレーザー蒸着(PLD)法、スパッタリング法、蒸気(Evaporation)法、CVD法などが適用可能であり、噴射方式としてはプラズマスプレーコーティング法、HOVF法、溶射コーティング法、低温噴射法などが適用可能である。
【0019】
なかでも、超音速によって加速された粒子は基板及び粒子の融点より低い温度でコーティングされるため、粒子の物性をそのまま維持し、基板の物性も変更せずにコーティングすることができ、既存の噴射法が有している基板の酸化や基板の応力、低融点基板にはコーティングできないという問題点を同時に解決することができるため、低温高速噴射法を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい一実施例として、図1及び図2に示したように、静電チャックは、下から基板20、絶縁体15、電極30および誘電体10を含んで構成される。
したがって、前記静電チャックは、アルミニウム合金、銅、銅合金またはセラミックからなる基板20、前記基板上に低温高速噴射コーティングによって生成される第1窒化アルミニウム(AlN)層15、前記第1窒化アルミニウム(AlN)層15に前記第1窒化アルミニウムの外周から中心側に一定間隔離隔した離隔部25を有して形成される電極30、および、前記電極30全体および前記離隔部25を塗布し、低温高速噴射コーティングによって生成される第2窒化アルミニウム(AlN)層10を含んで構成される。
【0021】
基板20は、通常の基板材料を用いることができ、好ましくは、熱伝導度または化学的安定性などの面でアルミニウム合金、銅、銅合金またはセラミック素材などを用いることができ、さらに好ましくは、強度と熱伝導度、重量の面などで長所がある6xxx系列のアルミニウム合金を陽極酸化処理したものを使用するのがいい。
【0022】
基板20上に形成される絶縁体15は、基板20と電極30との電流を防止する役割を果たし、通常の絶縁物質を使用することができる。本発明においては、絶縁体の物質として窒化アルミニウム(AlN)を使用し、特にこのような絶縁体層15を、コーティング、好ましくは低温高速噴射コーティングを利用することにより、第1窒化アルミニウム層15が形成される。また、絶縁性と作業性などを考慮して、絶縁層15の厚さは0.2から1.5mmがよく、好ましくは0.5から0.9mmであり、最も好ましくは約0.7mmがいい。
【0023】
また、電極30は絶縁層15上に形成され、好ましくは低温高速噴射コーティングを含む多様なコーティング方法によって形成されるのが結合力増加の面でいい。また、前記電極30は静電チャックの外部に露出される場合にアーク発生などが発生するので、絶縁を維持するために、好ましくは前記第1窒化アルミニウム(AlN)層15に前記第1窒化アルミニウムコーティング層の外周から中心側に一定間隔離隔した離隔部25を有して形成されるのがいい。つまり、電極層の表面において、第1窒化アルミニウム層より全部内側に位置するようにして外部に露出されないように構成する。これを通じて、電極が窒化アルミニウムによって完全に絶縁されるようにする。
【0024】
本発明で前記電極30の成分と厚さはウエハーを固定させ得る静電力を発生させることができる程度であれば足りるので、公知の錫、銅、銀(Ag)、アルミニウムなどを含む伝導体などの多様な材料と形状を当業者が選択して適用可能である。8インチウエハーを固定するのに使用される静電チャックの場合、好ましくは電極30が錫、銀(Ag)、アルミニウムまたは銅電極であり、厚さは静電力確保および静電チャックの適正構成のために0.01から0.5mmであるのが好ましく、さらに好ましくは約0.1mmである。
【0025】
本発明で電極30は一つまたは二つで構成することができ、この場合、電極30が一つ存在する場合を単極型(Unipolar Type)、二つ存在する場合を両極型(Bipolar Type)と区分し、本発明の場合には前記2種類方式に関係なく適用が可能である。
【0026】
また、電極30を絶縁して静電力を発生するための誘電体10は窒化アルミニウム(AlN)を電極30上にコーティングさせて形成される。つまり、図1から図2に示したように、前記電極30全体および前記離隔部25を塗布して構成される。また、本発明の静電チャックは前記窒化アルミニウム層(誘電体層:10)を電極30上に低温高速噴射コーティング法を含むコーティング方法によるコーティング層で形成させることによって、焼結が難しいという点を解決し、窒化アルミニウムを誘電体として使用する長所を全て受容することができるという長所がある。好ましくは、前記誘電体10は静電チャックの適正構成および静電力を確保するために厚さが0.05から1mmであるのがよく、さらに好ましくは約0.2mmである。
【0027】
また、本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックは、図2に示したように、装備構成および工程上の必要によってガス供給用補助孔40を追加的に形成することができる。
【0028】
本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックは、チャックの裏面の配線を通じて電極に電源を印加して、誘電体10と電極30との相互作用によって静電気が発生するようになるものである。
【0029】
従来の静電チャックの製造は誘電体層10として窒化アルミニウムを使用する場合に窒化アルミニウム(AlN)を焼結して製造しているが、窒化アルミニウムの難焼結性のため製造が難しいという問題点を有している反面、本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックは無焼結で製造することによって、このような問題点を完全に解決して、誘電率が非常に高く、熱伝導度が良好な素材である窒化アルミニウム(AlN)を焼結せず誘電体として提供するという長所がある。
【0030】
本発明は前記無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャック製造方法を提供し、本発明の静電チャック製造方法は静電チャックの誘電体として窒化アルミニウムをコーティングさせて形成させる。
【0031】
前記コーティングに適用されるコーティング方法としては公知の多様なコーティング方法を適用することができ、具体的には、気相蒸着法、溶射法または低温高速噴射コーティング法のうちのいずれか一つの方法が挙げられる。つまり、前記コーティング法は大きく分けると気相蒸着法と溶射法の2種類に分けられ、気相蒸着法としてはパルスレーザー蒸着(PLD)法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などが適用可能であり、溶射(Spray)方式としてはプラズマスプレーコーティング法、HOVFコーティング法、高温溶射、低温高速噴射コーティング法などが適用可能である。
【0032】
好ましくは、前記窒化アルミニウムのコーティングは、窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法でコーティングするのが、粒子の物性をそのまま維持し、基板の物性も変更せずコーティングすることができる。また、既存の溶射法が有している基板の酸化や基板の応力、低融点基板にはコーティングできないという問題点までも同時に解決することができる。
【0033】
図1から図2に一実施例として示したような静電チャックを製造する場合には窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法でコーティングして、基板20上に絶縁層である窒化アルミニウム層を形成する第1層15形成工程、前記第1層15上に伝導体粉末を低温高速噴射コーティング法で、前記第1層15の外周から中心側に一定間隔離隔した離隔部25を有するように電極30をコーティングして形成する第2層30形成工程、および前記第2層30および離隔部25の上部に窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法によってコーティングして窒化アルミニウム層を形成する第3層10形成工程を含む製造方法によって製造することができる。
【0034】
また、この製造方法においては、コーティング面の粗度管理およびコーティングの効率性などを考慮して各コーティング工程の進行前に被コーティング層を平坦加工する工程をさらに含むように構成することができ、最終的に第3層を形成した後にもこれを平坦化する加工工程をさらに含むことができる。その他、前記電極(第2層)形成工程に使用される伝導体粉末は多様な伝導性を有する粉末を使用することができ、好ましくは伝導性金属、特に錫粉末を使用することができる。
【0035】
本発明の好ましい実施例の一つである静電チャックの製造に適用される低温高速噴射コーティング法をより具体的に説明する。
低温高速噴射コーティング法は、超音速を利用した低温高速噴射コーティング法の一つであり、これは超音速ジェット気流によって加速された小さい粒子が金属やセラミック基板にぶつかってコーティングされる方法である。主にガス温度、ガス種類、基板との離隔距離、粉末供給率(ガス流量、圧力、ガス速度、気体と粉末間の比率の関数になることができる)、粉末の自体の組成、粒度、添加剤、粘度、供給方法(高圧/低圧方式など)などがコーティングが行われるための工程変数として作用する。
【0036】
特に、加熱していない基板上に高速に加速された粒子を衝突させてコーティングする原理であるので、それぞれのコーティングする素材によってコーティング効率が異なるようになり、加速された粒子の速度が増加するほどコーティング効率が増加し、一定の速度以上で急激に増加する特性を示す。つまり、粒子速度によるコーティング効率について図3に示したように、コーティング効率は二つの特定の領域に分けられ、加速された粒子が臨界速度(Vcrit)に至らない領域と臨界速度を越える領域に分けられる。第1の領域(V<Vcrit)は、基板に全くコーティングされず、加速された粒子が臨界速度を越える領域は基板にコーティングされることが示される。
【0037】
一般的な超音速を利用した低温高速噴射コーティング法でコーティングするための基本的な要求事項は、微細な粒子を高速に高温状態ではない形態で噴射しなければならず、これに関する好ましい条件は次の通りである。a)ジェット気流の温度が加速される粒子の溶融点または軟化される点より低くなければならない。b)加速される粒子は1から50μm範囲でなければならない。c)粒子の速度は粒子素材と大きさによって300から1200m/sでなければならない。実際に、粒子はマッハ2から4程度、1から3MPaの間の超音速のジェット気流の助けを受けてコーティングが行われる。
【0038】
使用可能なガスとしては、多様な種類のものが挙げられ、好ましくは、不活性および安定性を考慮して空気、窒素、ヘリウム、混合気体などを使用することができ、いかなる気体を使用しても加速される粒子が臨界速度を越えるようにするときのみコーティングが可能である(V>Vcrit)。但し、一般にヘリウム>窒素>空気の順に粒子速度の速度が決定されるので、ヘリウムを使用した時に最も高いコーティング効率を有すると知られており、ヘリウムガスが経済的な面で競争力が劣るため、経済的な面まで考慮する場合には空気を利用するのがさらに好ましい。
【0039】
また、コールドスプレー法では、高速の気体が長時間噴射されるので多量のガス流量が必要となる。従って、これを満足させ必要な気体の速度を得るためには気体の温度を増加させる方法を使用してもよい。図4は、本発明の無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャックの製造時にコーティング方法として低温高速噴射コーティング法を使用する時のそのシステムに関する全体的な概略図を示したものである。圧縮された気体がガスヒーターを通過しながら気体が加熱され、加熱された気体がノズルの首部分を通過すると、超音速気流が流れるようになる。これによりノズルに注入された粒子がこの超音速の気流に乗って基板にぶつかり、コーティングが行われる。ガスは高速ガス噴射と均一な供給のために、温度を100から700℃の温度範囲で±3℃以内の温度偏差を有するように制御してもよく、流量は300から500リットル/分になるように構成するのが好ましい。
【0040】
特に、ガスの温度の場合は、噴射されるガスの温度が高くなるほどコーティングの効率が増加することが示され、したがって低温高速噴射コーティング法では噴射されるガスの温度を増加させるときのみコーティング効率が増加される。しかし、ガスの温度がある程度増加すると、コーティング効率が一定に維持されるので、コーティング効率と粒子速度の維持のための十分な流量のガス供給のためには前記温度範囲であるのが好ましい。また、噴射されるガスを予め加熱させる場合と予め加熱しなかった場合のコーティング効率は一定であることが示され、予めガスを加熱することはコーティング効率に影響を与えない。このような理由で、コーティング効率を増加させるための工程変数制御中に、加速しようとするガスの温度を上昇させることが必須であり、大量生産の場合には多くの流量のガスを使用するのでガスが流れた状態でも均一な温度を維持するための大容量加熱装置を使用する。
【0041】
このように形成された圧縮ガスはノズルの一側に供給され、ノズルの他側には窒化アルミニウム粉末が注入されて、ガスの超音速気流に乗って被コーティング層にぶつかるようにコーティングされる。また、前記ノズルは多様な形状のノズルを使用することができ、ノズルの形状はコーティング効率に大きな影響を与えず、大量生産の場合は時間を短縮し単価を減らすことが必要であるので、前記ノズルは好ましくは典型的なデラバル型(De Laval Type)で均一度、コーティング速度が優れた長方形に設計されるのがいい。また、ノズルの大きさに対する適切な調整で需要およびコーティング速度が最適化されるようにすることができる。
【0042】
前記ノズルに供給される窒化アルミニウム粉末はコーティング層の要求仕様によって多様な大きさの粒度を有する粉末を使用することができ、好ましくは大量生産の面と収率面で1から150μmの大きさを有する粉末を使用することができ、さらに好ましくは1から50μmの大きさを有する粉末を使用するのがコーティング効率面でいい。
【0043】
また、粉末には分散剤など添加剤を使用して、高い粘度を有する場合には、一般的な低温高速噴射用の高圧粉末供給装置の他に低圧供給装置も使用が可能である。
低温高速噴射用の高圧粉末供給装置および低圧供給装置に使用される前記窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウムだけを使用するか、窒化アルミニウム粉末に通常の分散剤またはバインダーなどの添加剤を追加して製造することができ、これにはポリイミド、ガラス樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ、松脂、ゴム樹脂、ポリエチルグリコール、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリルアミド、ガラスフリットなどを用いることができ、好ましくは、誘電率および接着性、高温適用性などを考慮して、ポリイミド、ガラス樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)またはこれらの混合物を10から30重量%混合して粉砕した粉末を使用することができる。これによって窒化アルミニウム粉末のコーティングの効率性および結合力を増加させることができる。さらに好ましくは、15から20重量%のポリイミド、ガラス樹脂、PVAまたはこれらの混合物を添加して粉末を製造することができる。
【0044】
また、添加剤を添加して製造される粉末は、前記窒化アルミニウムと添加剤の混合物をボールミル粉砕した後に乾燥し、破砕して篩にかけて窒化アルミニウム粉末を準備するのが好ましく、特に前記混合して粉砕した粉末を一定の粒度に分級して使用するのがさらに好ましい。前記分級された粉末をコーティング条件によって多様な等級の粉末を使用することができ、好ましくは150μmの粒度を篩を利用して分級した粉末を使用するのが大量生産、粗度確保および結合力維持のためにいい。このように製造された粉末は粉末供給装置を通じて前記ノズルに供給され、これは粉末の凝集なしに高圧で100から150cm3/hrで粉末量が均一で連続的に供給されるようにする。
【0045】
実際に前述のように低温高速噴射コーティング法のコーティング効率とコーティング膜の特性を向上させるためのコーティング工程変数としては、ガス温度、ガス種類、基板との離隔距離、粉末供給率(ガス流量、圧力、ガス速度、気体と粉末間の比率の関数になることができる)、粉末の自体の組成、粒度、添加剤、粘度、供給方法(高圧/低圧方式など)などが考慮される。
【0046】
特に、基板との距離は基板とノズルとの距離によってコーティング効率が変化することを確認することができる。ヘリウムガスを使用する場合には基板との距離が増加するほどコーティング効率が減少し、これは基板との距離が遠いほど加速された微粒子の速度が減少して衝突する微粒子間に反応(焼成変形)が起こらず弾性変形が起こるためコーティング効率が減少すると思われる。しかし、空気を使用する場合には基板との距離が一定距離まで増加する間にはコーティング効率が若干増加し、一定距離以上になると急激に減少することと示され、最適距離が存在することが分かる。
【0047】
以上の工程条件に対してコーティング方法の好ましい例としては前記粒子の加速に使用されるガスの温度は400から500℃であり、ガスの圧力は3から7kgf/cm2、ノズルと被コーティング層との離隔距離は5から50mmである。さらに好ましくは、前記ガスの温度は約450℃であり、ガスの圧力は5から6kgf/cm2であり、離隔距離は20から30mmである。
【0048】
また、本発明の無焼結窒化アルミニウム静電チャックの製造方法による各層の厚さは固定しようとするウエハーによって変更されることができる。8インチウエハーの場合、好ましくは、前述のように絶縁層である第1窒化アルミニウム層(第1層)は0.2から1.5mm、電極(第2層)は0.01から0.5mm、誘電層の窒化アルミニウム層(第3層)は0.05から1mmである。
【0049】
また、最適なコーティングのためには、コーティング面に対して平坦化処理を行ってもよい。具体的な例としては、基板を固定し、移動させるジグ50を調節することによって行う。基板の移動方法としては上下左右に移動する方式と回転方式が可能である。前者の場合、それぞれの移動速度を工程変数とすることができ、回転方式によってコーティングを実施する場合には回転速度を工程変数とすることができる。
【0050】
また、チャック用ジグの製作において、静電チャックコーティング時、表面粗度の均一のためにX−Y軸上の移動が可能なジグだけでなく、回転方式(5〜50RPM)+1軸移動形態のジグ移動が可能なシステムを構成することができ、前記ジグとノズルとの動きが連動されるように制御システムのインターフェースを構成することができる。
【0051】
また、前記コーティングの完了後に、好ましくはコーティング面に対する平坦化加工を行う。具体的には、コーティングされた窒化アルミニウム(AlN)コーティング膜の表面加工のための装備として、加工しようとする形状が円盤形であるので、回転加工用ダイとミリング装備を活用することができる。セラミックバルクの表面加工とは異なり、コーティング膜を加工するため、精巧な微細型セラミック専用加工装備を使用して加工できる装備を設計、製作することができる。
【0052】
また、本発明の製造方法は、第3層形成工程以後に、コーティングを完了した静電チャックを硬化し、その上面を平坦加工する工程、および前記硬化を完了したチャックに対して必要な補助孔を加工して静電チャックを完成する工程をさらに含むことができる。これによって、コーティング層の結合強度および密度向上を得ることができ、前記添加剤を含む粉末の場合には添加剤を除去する効果を共に得ることができる。
【0053】
硬化温度は使用された添加剤によって多様な温度範囲を有することができ、好ましくは、添加剤のバーンアウト(Burn-Out)を効率的に行うために、100から500℃である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上の方法によって、製造された無焼結窒化アルミニウムを誘電体とする静電チャックは誘電率が少なくとも8(測定周波数が100KHzから1MHzである場合)、一般には8から9の範囲を有し、静電力は500Vの電圧を印加した場合に少なくとも150gf/cm2、150から200gf/cm2の範囲を有する特性を有する。また、静電チャックは、付着力、温度分布均一性、熱膨張係数、熱伝導度などで優れた特性を有する。例えば、付着力は0.3から0.5MPa、温度分布均一性は約±3℃、熱膨張係数は4.7×10-6/K、熱伝導度は50から80W/m/Kの特性を有する。したがって、このように製造された静電チャックは、使用温度は−50から500℃で使用が可能であり、表面粗度/平坦度は、Ra≦0.25μm/3μmを有するように製造することができる。
【0055】
本発明による無焼結窒化アルミニウム静電チャックはエッチング工程や、CVD工程などでウエハーを固定することに適用することができ、この時の工程温度は−40から500℃付近が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の無焼結窒化アルミニウム静電チャックに関する一実施例の静電チャックの断面図である。
【図2】本発明の無焼結窒化アルミニウム静電チャックに関する一実施例の静電チャックの平面図である。
【図3】低温高速噴射コーティング法使用時の粉末の平均速度によるコーティング効率を示すグラフである。
【図4】本発明の低温高速噴射コーティングシステムの全体概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウムのコーティング層を静電チャックの誘電体として含む無焼結窒化アルミニウム(AlN)を備える静電チャック。
【請求項2】
前記窒化アルミニウムのコーティング層が、窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法で堆積して形成される請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記静電チャックが、
アルミニウム合金、銅、銅合金またはセラミックからなる基板;
前記基板上に低温高速噴射コーティングによって形成された第1窒化アルミニウム(AlN)層;
前記第1窒化アルミニウム(AlN)層上に、前記第1窒化アルミニウムの外周から中心側に一定間隔離隔した離隔部を有して形成された電極;および
前記電極全体および前記離隔部を被覆する、低温高速噴射コーティングによって生成された第2窒化アルミニウム(AlN)層を含む請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1窒化アルミニウム層の厚さは0.2から1.5mm、電極の厚さは0.01から0.5mmであり、第2窒化アルミニウム層の厚さは0.05から1mmである請求項3に記載の静電チャック。
【請求項5】
静電チャックの誘電体として窒化アルミニウムをコーティングして形成する無焼結窒化アルミニウム(AlN)静電チャック製造方法。
【請求項6】
前記窒化アルミニウムのコーティングは、窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法で堆積することによって行う請求項5に記載の方法。
【請求項7】
窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法で基板上に堆積して、絶縁層である第1窒化アルミニウム層を形成する第1層形成工程;
伝導体粉末を低温高速噴射コーティング法で前記第1層上に堆積し、前記第1層の外周から中心側に一定間隔離隔した離隔部を有するように電極を形成する第2層形成工程;および
窒化アルミニウム粉末を低温高速噴射コーティング法で前記第2層および離隔部の上に堆積して窒化アルミニウム層を形成する第3層形成工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記低温高速粉末コーティング法を、ガスの温度が400から500℃、ガスの圧力が3から7kgf/cm2、ノズルと基板との間隔が5から50mmで行う請求項5から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記窒化アルミニウム粉末を、ポリイミド、ガラス樹脂、ポリビニルアルコールまたはこれらの混合物を10から30重量%で混合し、粉砕する請求項5から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記粉砕した混合粉末を一定の粒度を得るために分級する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1層の厚さは0.2から1.5mm、第2層の厚さは0.01から0.5mm、第3層の厚さは0.05から1mmである請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第3層形成工程の後に、前記コーティングを完了した静電チャックを硬化し、その表面を平坦化する工程、および前記硬化が完了したチャックに対して補助孔を加工する工程をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化を、100から500℃の温度で行う請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項5から7のいずれか1つに記載の製造方法で製造され、測定周波数が100KHzから1MHzである場合に誘電率が少なくとも8であり、500Vの電圧を印加した場合に静電力が少なくとも150gf/cm2である無焼結窒化アルミニウム(AlN)を備える静電チャック。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−508690(P2007−508690A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532093(P2006−532093)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002547
【国際公開番号】WO2005/034233
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(505232852)エスエヌティー コーポレーション,リミティッド (2)
【Fターム(参考)】