説明

無端ベルト、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置

【課題】繰り返し変形に対する疲労耐久性が良好な無端ベルトを提供する。
【解決手段】銅を1質量%以上7質量%以下の範囲で含有するステンレス合金で構成された金属層30aと、金属層30a上に設けられた離型層30cと、を有する、無端ベルト30。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルト、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電鋳プロセスによって製造されたニッケル製のシームレスベルトを用いた定着装置が開示されている。
特許文献2には、特定のマイクロビッカーズ硬度を有するニッケル・マンガン合金からなる無端状電鋳シートを基体として形成された定着ベルトが開示されている。
特許文献3には、離型層と、特定の結晶配向性を有するニッケル電鋳の金属層と、を有する定着ベルトが開示されている。
特許文献4には、離型層と、結晶子の平均サイズが特定の範囲である電鋳ニッケルからなる金属層と、を有する定着ベルトが開示されている。
特許文献5には、離型層とニッケル電鋳ベルトからなる金属層とを有し、厚み及び表面粗さRzが特定の範囲である定着ベルトが開示されている。
【0003】
特許文献6には、塑性加工法により成型されたステンレス製の定着ベルトが開示されている。
特許文献7には、塑性加工された金属組織を呈しており、厚さの公差が特定の範囲である金属円筒体が開示されている。
特許文献8には、オーステナイト系ステンレス鋼からなる円筒部を備え、電磁誘導により加熱される加熱ローラを用いた定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−13448号公報
【特許文献2】特開平9−34286号公報
【特許文献3】特開2002−258648号公報
【特許文献4】特開2004−68148号公報
【特許文献5】特開2004−126274号公報
【特許文献6】特開2001−225134号公報
【特許文献7】特開2003−275834号公報
【特許文献8】特開2005−241891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、繰り返し変形に対する疲労耐久性が良好な無端ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
銅を1質量%以上7質量%以下の範囲で含有するステンレス合金で構成された金属層と、
前記金属層上に設けられた離型層と、
を有する、無端ベルトである。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記ステンレス合金は、さらにニオブを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有する、請求項1に記載の無端ベルトである。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記ステンレス合金は、さらにタンタルを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有する、請求項1又は請求項2に記載の無端ベルトである。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無端ベルトである、定着ベルトである。
【0010】
請求項5に係る発明は、
請求項4に記載の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接する加圧部材と、
を備えた定着装置である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
前記定着ベルトの繰り返し歪み幅が0.5%以上である、請求項5に記載の定着装置である。
【0012】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させる請求項5又は請求項6に記載の定着装置である定着手段と、
を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、ステンレス合金に含まれる銅の含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。
請求項2に係る発明によれば、ステンレス合金に含まれるニオブの含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。
請求項3に係る発明によれば、ステンレス合金に含まれるタンタルの含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。
請求項4に係る発明によれば、ステンレス合金に含まれる銅の含有量が上記範囲から外れる場合に比較して、繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。
請求項5に係る発明によれば、ステンレス合金に含まれる銅の含有量が上記範囲から外れた定着ベルトを用いた場合に比較して、耐久性が向上する。
請求項6に係る発明によれば、前記繰り返し歪み幅が前記範囲であっても、ステンレス合金に含まれる銅の含有量が上記範囲から外れた定着ベルトを用いた場合に比較して、耐久性が向上する。
請求項7に係る発明によれば、ステンレス合金に含まれる銅の含有量が上記範囲から外れた定着ベルトを用いた場合に比較して、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る無端ベルトの一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<無端ベルト、定着ベルト>
本実施形態の無端ベルトは、銅を1質量%以上7質量%以下の範囲で含有するステンレス合金で構成された金属層と、金属層上に設けられた離型層と、を有し、必要に応じてその他の層を有していてもよい。
本実施形態の無端ベルトは、上記構成であることにより、例えば上記ステンレス合金に含まれる銅の含有量が上記範囲から外れた場合に比べ、繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。すなわち本実施形態の無端ベルトは、例えば大きな曲率(例えば繰り返し歪み幅が0.5%以上)で曲げ、曲げ変形によるひずみが生じた状態で無端ベルトを回転させても、繰り返し変形による金属層の疲労が起こりにくく、前記疲労に起因する亀裂の発生等が抑制される。
【0016】
その理由は定かではないが、ステンレス合金中に銅が上記含有量で固溶していることにより、銅が鉄母体を軟化させ、塑性加工の際に硬化する度合いが和らげられ、加工硬化による脆化が抑制されるためであると推測される。そして本実施形態の無端ベルトは、上記構成であるため、銅が上記範囲よりも少ない場合に比べ、銅の固溶に起因する上記脆化の抑制効果が得られ、銅が上記範囲よりも多い場合に比べ、銅が多すぎることに起因するステンレス合金の硬化が抑制される。
ここで上記「繰り返し歪み幅」とは、歪みが発生する領域(例えば無端ベルトを定着ベルトとして用いた場合、定着ベルトが加圧部材に接触する定着領域)での無端ベルト表面に加えられる歪みの大きさ(絶対値の総和)を意味する。具体的には、無端ベルト表面に歪みゲージを貼り付けて、歪みが発生する領域(例えば定着領域)を通過させた際の歪みの大きさ(具体的には圧縮歪みの絶対値の最大値と引張り歪みの絶対値の最大値との和)として算出された値を意味する。
【0017】
本実施形態の無端ベルトでは、前記ステンレス合金が、さらにニオブを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有することが望ましい。
本実施形態の無端ベルトが上記構成であることにより、ニオブの含有量が上記範囲から外れた場合に比べ、さらに繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
具体的には、ステンレス合金中に銅及びニオブが上記含有量で固溶していることにより、ステンレス合金を形状加工した後に後述する固溶加熱処理及び析出硬化熱処理を施すことでFe−Cu−Nbの金属間化合物が析出し、それによって金属層が強化されると推測される。そして上記銅の固溶に起因する脆化の抑制効果に加えて、上記金属間化合物の析出に起因する析出強化の効果が得られることにより、さらに繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上するものと推測される。
【0018】
本実施形態の無端ベルトでは、前記ステンレス合金が、さらにタンタルを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有することが望ましい。
本実施形態の無端ベルトが上記構成であることにより、タンタルの含有量が上記範囲から外れた場合に比べ、さらに繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上する。その理由は定かではないが、上記と同様に、ステンレス合金の形状加工、固溶加熱処理、及び析出硬化熱処理を施すことで、Fe−Cu−Taの金属間化合物が析出し、それによって金属層が強化されると推測される。そして上記銅の固溶に起因する脆化の抑制効果に加えて、上記金属間化合物の析出に起因する析出強化の効果が得られることにより、さらに繰り返し変形に対する疲労耐久性が向上するものと推測される。
【0019】
また、本実施形態の無端ベルトを定着ベルトに適用すれば、ステンレス合金における銅の含有量が上記範囲から外れる無端ベルトを適用した場合に比べ、繰り返し変形に対する疲労耐久性が良好な定着ベルトとなる。
具体的には、例えば、定着ベルトを大きな曲率(例えば繰り返し歪み幅が0.5%以上)で曲げた状態で回転させる定着装置に上記定着ベルトを用いても、繰り返し変形による金属層の疲労が起こりにくく、前記疲労に起因する亀裂の発生等が抑制される。その結果、例えば電磁誘導方式の定着装置に定着ベルトとして用いた場合、上記亀裂の発生に伴って発熱不良が生じることが抑制される。
そして本実施形態の定着ベルトを用いた定着装置及び前記定着装置を用いた画像形成装置は、上記の通り、定着ベルトの繰り返し変形に対する疲労耐久性が良好であるため、装置としての耐久性が良好である。
【0020】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は適宜省略する。
図1は本実施形態に係る無端ベルトの構成の一例を示す模式断面図であり、一例として、金属層と、金属層上に設けられた弾性層と、金属層上に前記弾性層を介して設けられた離型層と、を有する三層構成の形態について示している。
【0021】
図1の無端ベルト30は、例えば、内周側から順に、ベース金属層(基材)である金属層30a、耐熱性弾性層である弾性層30b、及び耐熱性樹脂層である離型層30cをこの順に設けた三層構成となっている。
【0022】
金属層30aは、上記の通り、銅を1質量%以上7質量%以下の範囲で含有するステンレス合金で構成されている。
上記ステンレス合金は、銅の含有量が上記範囲であれば特に限定されず、例えば銅の他に鉄及びクロムを含むもの、銅の他に、鉄、クロム、及びニッケルを含むもの、さらにその他の金属元素を含むもの等が挙げられる。
【0023】
上記ステンレス合金としては、例えば、ステンレス合金全体に対し、クロム含有量が13質量%以上20質量%以下、ニッケル含有量が1質量%以上7質量%以下、銅含有量が1質量%以上7質量%以下、ニオブ含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下、タンタル含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下、マンガン含有量が2質量%以下、シリカ含有量が2質量%以下、りん含有量が0.05質量%以下、硫黄含有量が0.05質量%以下、カーボン(炭素)含有量が0.1質量%以下であり、残部が鉄より成るステンレス合金が挙げられる。
【0024】
上記ステンレス合金においては、クロム含有量が0.5質量%以上25質量%以下であってもよく、ニッケル含有量が0.5質量%以上12質量%以下であってもよく、銅含有量が0.5質量%以上12質量%以下であってもよく、ニオブ含有量が0.03質量%以上1.0質量%以下であってもよく、タンタル含有量が0.03質量%以上1.0質量%以下であってもよく、マンガン含有量が0.3質量%以上5質量%以下であってもよく、シリカ含有量が0.3質量%以上5質量%以下であってもよく、りん含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であってもよく、硫黄含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であってもよく、炭素含有量が0.03質量%以上0.3質量%以下であってもよい。
【0025】
上記ステンレス合金で構成された金属層30aにおいては、クロム含有量が上記範囲であるため、Fe中にCrが固溶してFe−Cr合金が形成されていると考えられる。そのため、クロム含有量が上記範囲よりも少ない場合に比べて、固溶強化の効果によって繰り返し曲げ変形に対する疲労強度が良好になると考えられる。そして上記ステンレス合金は、クロム含有量が上記範囲よりも多い場合に比べて、クロムが多すぎることによってステンレス合金が硬化しすぎ硬く脆くなりすぎることが抑制されると考えられる。
【0026】
また上記ステンレス合金で構成された金属層30aにおいては、ニッケル含有量が上記範囲であるため、Fe中にNiが固溶してFe−Ni合金が形成されていると考えられる。そのため、ニッケル含有量が上記範囲よりも少ない場合に比べて、固溶強化の効果によって繰り返し曲げ変形に対する疲労強度が良好になると考えられる。そして上記ステンレス合金は、ニッケル含有量が上記範囲よりも多い場合に比べて、ニッケルが多すぎることによってステンレス合金が硬化しすぎ硬く脆くなりすぎることが抑制されると考えられる。
【0027】
また上記ステンレス合金で構成された金属層30aにおいては、マンガン含有量が上記範囲であるため、マンガン含有量が上記範囲よりも多い場合に比べて、マンガンが多すぎることによってステンレス合金が硬化しすぎ硬く脆くなりすぎることが抑制されると考えられる。また上記ステンレス合金がマンガンを含む場合、Fe−Cr−Ni合金中にMnが固溶してFe−Cr−Ni−Mn合金が形成されていると考えられる。そのため、マンガンを含まない場合に比べて、塑性加工の際の硬化度合いが和らげられ、加工硬化による脆化が抑制されて繰り返し曲げ変形に対する疲労強度が向上すると考えられる。
【0028】
また上記ステンレス合金で構成された金属層30aにおいては、シリカ含有量が上記範囲であるため、シリカ含有量が上記範囲よりも多い場合に比べて、シリカの元素が不純物として結晶粒界に析出し結晶粒界を硬く脆くさせることが抑制されると考えられる。りん及び硫黄についても上記シリカと同様である。
また上記ステンレス合金で構成された金属層30aにおいては、カーボン含有量が上記範囲であるため、カーボン含有量が上記範囲よりも多い場合に比べて、炭素が鉄と反応して硬く脆いセメンタイト(FeC)の生成が抑制されると考えられる。そのため、上記セメンタイトの生成に起因して金属層全体が脆化することが抑制されると考えられる。
【0029】
金属層30aの膜厚としては、例えば、10μm以上250μm以下の範囲が挙げられ、30μm以上200μm以下の範囲であってもよい。
【0030】
弾性層30bの材料は、無端ベルトの用途に応じて選択され、特に制限されるものではないが、例えば、シリコーンゴム又はフッ素ゴムが挙げられる。シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴム等が挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)等が挙げられる。
弾性層30bの厚さとしては、例えば、0.1mm以上0.5mm以下が挙げられ、0.15mm以上0.3mm以下であってもよい。
【0031】
離型層30cの材料は、無端ベルトの用途に応じて選択され、特に制限されるものではないが、例えば、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂;シリコーン樹脂;ポリイミド樹脂;等が挙げられる。
弾性層30bの厚さとしては、例えば、10μm以上50μm以下が挙げられ、20μm以上40μm以下であってもよい。
【0032】
図1の無端ベルト30は、上記の通り、金属層30a、弾性層30b、及び離型層30cをこの順に設けた三層構成であるが、本実施形態では上記層構成に限定されず、弾性層30bを有さない形態でもよく、またその他の層を有する形態であってもよい。
その他の層を有する形態としては、例えば、金属層30a上に、他の金属層を設け、他の金属層上に弾性層30b及び離型層30cをこの順に設けた構成が挙げられる。具体的には、例えば、ベース金属層である上記金属層30aとは別に、上記他の金属層として発熱層を設ける形態が挙げられる。前記発熱層は、例えば、電磁誘導加熱によって発熱させる目的の層が挙げられ、発熱層の材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリュウム、アンチモン、ステンレスまたはこれらの合金の金属材料が挙げられる。また発熱層の膜厚としては、例えば1μm以上15μm以下が挙げられ、発熱層の固有抵抗値としては、例えば2.7×10−8Ωcm以下が挙げられる。
また、他の金属層を設ける形態として、例えば、金属層30a上に前記発熱層を設け、前記発熱層上に保護層を設け、さらに前記保護層上に弾性層30b及び離型層30cをこの順に設けた構成も挙げられる。前記保護層は、例えば、前記発熱層を保護する目的の層が挙げられ、保護層の材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。また保護層の膜厚としては、例えば5μm以上100μm以下が挙げられる。なお、上記保護層を設ける場合は、上記保護層も上記金属層30aと同様のステンレス合金で構成されていてもよい。
【0033】
−無端ベルトの製造方法−
本実施形態の無端ベルトの製造方法としては、例えば、金属層を形成する金属層形成工程と、金属層上に離型層を形成させる離型層形成工程と、を有し、前記金属層形成工程が、銅を1質量%以上7質量%以下の範囲で含有するステンレス合金で構成された無端状の管状体を準備する準備工程と、前記管状体を前記ステンレス合金の融点−600℃以上前記融点−400℃以下の温度に加熱する固溶化熱処理工程と、前記固溶化熱処理工程を経た前記管状体を前記融点−1100℃以上前記融点−800℃以下の温度に加熱する析出硬化熱処理工程と、を有する無端ベルトの製造方法が挙げられる。
【0034】
上記無端ベルトの製造方法では、上記固溶化熱処理工程において上記温度に加熱することで、ステンレス合金内を銅の成分が満遍なく分散し、上記析出硬化熱処理工程において上記温度にすることで、鉄の結晶粒界に銅の成分が満遍なく析出し、鉄の結晶格子が歪むことで、繰り返し変形に対する疲労耐久性が良好な無端ベルトが得られると推測される。
【0035】
以下、本実施形態における無端ベルトの製造方法の一例として、図1の無端ベルト30の製造方法について具体的に説明する。
図1の無端ベルト30の製造方法は、具体的には、例えば、まず前記組成を有するステンレス合金の板材を準備し、その板材を塑性加工法により特定の膜厚を有するベルト状に成型し、管状体を得る(準備工程)。前記塑性加工法としては、例えば、深絞法、へら絞り法、プレス法、回転塑性加工法等が挙げられる。また回転塑性加工法としては、例えばスピニング加工が挙げられる。なお、ステンレス合金の板材を成型する前に、前記板材に熱処理を施してもよい。前記熱処理の条件としては、例えば、非酸化性の雰囲気下において、加熱温度が900℃以上1200℃以下、処理時間が0.5時間以上2時間以下の条件が挙げられる。前記「非酸化性の雰囲気下」としては、例えば、窒素ガス雰囲気下、水素ガス雰囲気下等が挙げられ、以下同様である。
【0036】
次に、上記管状体に固溶化熱処理を行う(固溶化熱処理工程)。上記固溶化熱処理の条件としては、例えば、非酸化性の雰囲気下において、加熱温度が1000℃以上1100℃以下、処理時間が0.5時間以上3時間以下の条件が挙げられる。また上記固溶化熱処理の後、急冷(例えば降温速度50℃/秒以上)することにより、銅の成分がステンレス合金内に満遍なく分散した状態でステンレス合金が固まると考えられる。
【0037】
次に、固溶化熱処理を経た上記管状体に析出硬化熱処理を行う(析出硬化熱処理工程)。上記析出硬化熱処理の条件としては、例えば、非酸化性の雰囲気下において、加熱温度が400℃以上700℃以下、処理時間が5時間以上20時間以下の条件が挙げられる。
以上のようにして、金属層30aが得られる(金属層形成工程)。
【0038】
次に、必要に応じて、得られた金属層30aの外周面に、弾性層30bを形成する。弾性層30bの形成方法としては、例えば、リング塗布法、浸漬塗布法、注入成型法等が挙げられる。
そして弾性層30bの外周面に離型層30cを形成する。離型層30cの形成方法としては、例えば、静電粉体塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、遠心製膜法等が挙げられる。
以上のようにして、図1の無端ベルト30が得られる。
【0039】
なお、上記他の金属層を設ける形態においては、例えば、前記ステンレス合金の板材と、他の金属層に用いる金属板と、を準備し、それぞれの接着面を研磨して酸化被膜を除去した後、圧延加工を行うことで接着させた合板を形成する。そして、上記金属層30aを形成する工程において、前記ステンレス合金の板材の代わり上記合板を用いることで、同様の方法により無端ベルトが得られる。
また、上記他の金属層(例えば発熱層等)を設ける形態においては、上記方法の他に、例えば、ベース金属層である前記金属層30aを形成した後、電気めっき法を用いて前記金属層30aに他の金属層を形成してもよく、前記金属層30aと他の金属層とを別々に形成した後に両者を貼り合わせてもよい。
【0040】
<定着装置>
次に、上記実施形態の無端ベルトを定着ベルトとして適用した定着装置について説明する。本実施形態の定着装置は、上記無端ベルトを用いた定着ベルトと、前記定着ベルトの外周面に接する加圧部材と、を備えている。
また本実施形態では、上記の通り、定着ベルトの繰り返し歪み幅が0.5%以上であってもよい。上記定着ベルトの繰り返し歪み幅が0.5%以上となる定着装置としては、具体的には、例えば、定着ベルトと加圧部材との接触部(定着領域)に、曲率中心が定着ベルトの外側となっている領域が存在する定着装置が挙げられる。
【0041】
図2は、本実施形態に係る定着装置の一例の構成を示した模式断面図である。図2に示す定着装置は、図1に示す無端ベルト30において、ベース金属層である金属層30a上に発熱層を設け、発熱層上に弾性層30b及び離型層30cをこの順に設けた構成の無端ベルトを定着ベルトとして用いた形態である。また図2に示す定着装置は、電磁誘導コイルを備えた形態であり、電磁誘導コイルによって上記発熱層に渦電流を発生させることで、定着ベルト全体が加熱される形態の定着装置である。
図2に示す定着装置20は、定着ベルト10と、該定着ベルト10の外周面に接触する加圧ローラ11と、定着ベルト10の内周面に接触し前記加圧ローラ11と対抗する位置に配置される定着パッド12と、該定着パッド12を支持する支持部材13と、定着ベルト10の外周面側に非接触の状態で、前記金属層に渦電流を発生させて前記定着ベルト10の外周面を発熱させる電磁誘導コイル14と、該電磁誘導コイル14を支持するコイル支持部材15と、を備える。
【0042】
加圧ローラ11は、不図示の駆動源により矢印R方向に回転する。また、定着ベルト10と加圧ローラ11とは、記録媒体16が挿通するように接触しており、加圧ローラ11の矢印R方向への回転に伴い、定着ベルト10は従動回転する。定着ベルト10の内周面には、前記接触部で定着ベルト10の外周面と接触している加圧ローラ11の表面を押圧するように、定着パッド12が配置されている。また、定着パッド12は、定着ベルト10の内周面に設けられた支持部材13により固定されている。
【0043】
一方、定着ベルト10の外周面側には、電磁誘導コイル14が非接触の状態で設けられ、該電磁誘導コイル14はコイル支持部材15により固定されている。電磁誘導コイル14は不図示の電源に接続されており、電磁誘導コイル14に交流電流が流された際に、電磁誘導コイル14周辺に定着ベルト10外周面と直行する磁界を発生させる。なお、前記磁界は、不図示の励起回路により、定着ベルト10に含まれる発熱層中に渦電流を発生させるように変動するものである。
【0044】
定着装置20による画像定着の動作について説明する。
加圧ローラ11の矢印R方向への回転に伴い、定着ベルト10が従動回転し、電磁誘導コイル14により発生した磁界に曝される。この際、電磁誘導コイル14周辺の定着ベルト10に含まれる発熱層には渦電流が発生し、定着ベルト10の外周面が加熱される。
【0045】
このようにして加熱された定着ベルト10は、加圧ローラ11との接触部まで移動する。一方、不図示の搬送手段により矢印P方向へと、未定着トナー像17が表面に設けられた記録媒体16が搬送される。記録媒体16が前記接触部を通過した際に、未定着トナー像17は定着ベルト10により加熱されて記録媒体16表面に定着され、定着画像18となる。このようにして定着画像18が表面に形成された記録媒体16は、不図示の搬送手段により矢印P方向へと搬送され。定着装置20から排出される。
【0046】
また、前記接触部において定着処理を終え、外周面の表面温度が低下した定着ベルト10は、次の定着処理に備えて再度加熱されるために、電磁誘導コイル14方向へと回転する。
【0047】
尚、電磁誘導コイル14と定着ベルト10との距離は、特に制限されるものではないが、力率を高めるために電磁誘導コイル14と定着ベルト10の金属層との結合係数を大きくする観点からは、非接触で5mm以内に設定することが好ましい。
【0048】
なお、図2に示す定着装置20においては、上記の通り電磁誘導コイル14によって定着ベルト10の金属層に渦電流を発生させる形態であるが、これに限られない。
具体的には、例えば、電磁誘導コイル14により発熱する加熱補助部材を備え、電磁誘導コイル14によって加熱補助部材に渦電流が発生して発熱し、加熱補助部材が定着ベルト10を加熱する形態であってもよい。
また、例えば、電磁誘導コイル14に代えて輻射ランプ発熱体を備え、輻射ランプ発熱体が発する放射線(赤外線等)を定着ベルト10が吸収することによって定着ベルト10が加熱される形態の定着装置であってもよい。なお上記輻射ランプ発熱体としては、例えばハロゲンランプ等が挙げられる。また、輻射ランプ発熱体の位置は特に限定されず、定着ベルト10の内側に備えてもよく、定着ベルト10の外側に備えてもよい。
また、例えば、電磁誘導コイル14に代えて抵抗発熱体を備え、抵抗発熱体に設けられた抵抗に電流を流すことによりジュール熱を発生させ、その熱を定着ベルト10に伝導させることにより、定着ベルト10が加熱される形態の定着装置であってもよい。なお上記抵抗発熱体としては、例えば、セラミック基板に厚膜抵抗を有する膜を形成して焼成させたものが挙げられる。また、抵抗発熱体の位置としては、発生したジュール熱が定着ベルト10に伝わる位置であれば特に限定されない。
【0049】
なお、図2に示す定着装置20においては、上記の通り、ベース金属層上に発熱層を設け、発熱層上に弾性層及び離型層をこの順に設けた構成の無端ベルトを定着ベルトとして用いている。一方、上記加熱補助部材を備えた形態、輻射ランプ発熱体を備えた形態、及び抵抗発熱体を備えた形態においては、上記発熱層を設けていない無端ベルト(例えば図1に示す無端ベルト30等)を定着ベルトとして用いてもよい。
【0050】
<画像形成装置>
次に、上記実施形態の定着装置を用いた画像形成装置について説明する。本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させる上記定着手段と、を有し、定着手段として上記定着装置を用いる。
図3は、本実施形態の画像形成装置の一例の概略構成図である。図3に示す画像形成装置は、複数の画像形成ユニットが並ぶタンデム型であり、かつ、中間転写方式の画像形成装置である。
【0051】
図3に示す画像形成装置100は、像形成部の一例として、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kを備える。次に、転写部の一例として、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成する各色成分トナー像を中間転写ベルト6に順次転写(一次転写)する一次転写部9と、中間転写ベルト6上に転写した重畳トナー画像を記録材の一例としての記録媒体16に一括転写(二次転写)する二次転写部60を有する。さらに、定着部の一例として、二次転写された画像を記録媒体16上に定着する定着装置20(定着手段)を備える。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有する。
【0052】
図3に示すように、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム2(像保持体)と、感光体ドラム2を帯電する帯電器3と、感光体ドラム2上に静電潜像を書込むレーザ露光器4と(帯電器3及びレーザ露光器4で潜像形成手段を構成)、各色成分トナーを収容し感光体ドラム2上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器5(現像手段)と、を有する。また、感光体ドラム2上に形成する各色成分トナー像を一次転写部9にて中間転写ベルト6に転写する一次転写ロール7(一次転写ロールと後述する二次転写ロールとで転写手段を構成)と、感光体ドラム2上の残留トナーを除去するドラムクリーナ8(残留トナー除去手段)と、を有する。これらの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト6の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に略直線状に配置されている。
【0053】
中間転写ベルト6は、各種ロールにより、図3に示す矢印B方向に循環駆動される。各種ロールとして、中間転写ベルト6を駆動する駆動ロール31と、中間転写ベルト6を支持する支持ロール32と、中間転写ベルト6に張力を与え蛇行を防止するロール33と、二次転写部60に設けるロール25と、中間転写ベルト6上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けるロール34とを有している。
【0054】
一次転写部9は、中間転写ベルト6を挟み感光体ドラム2に対向する一次転写ロール7を有する。二次転写部60は、中間転写ベルト6のトナー像保持面側に配置する二次転写ロール22と、二次転写ロール22の対向電極として中間転写ベルト6の裏面側に配置されたロール25と、ロール25に二次転写バイアスを印加する給電ロール26とを有する。
【0055】
二次転写部60よりも矢印B方向下流側に、中間転写ベルト6上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ35を設ける。イエローの画像形成ユニット1Yの上流側に、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42を配設する。また、黒の画像形成ユニット1Kよりも矢印B方向下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43を配設する。
【0056】
記録媒体搬送系には、記録媒体収容部50と、記録媒体収容部50中の記録媒体16を取り出して搬送するロール51と、記録媒体16を搬送する搬送ロール52と、記録媒体16を二次転写部60へと送る搬送路53と、二次転写ロール22により二次転写された記録媒体16を定着装置20へと搬送する搬送ベルト55と、記録媒体16を定着装置20に導く定着入口ガイド56とを有する。
【0057】
画像形成装置100の基本的な作像プロセスについて説明する。
図3に示す画像形成装置100では、画像読取装置(図示せず)等から出力される画像データに画像処理を施した後、画像データをY、M、C、Kの4色の色材階調データに変換し、レーザ露光器4に出力する。レーザ露光器4は、色材階調データに応じ、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの矢印A方向に回転する各感光体ドラム2に照射する。各感光体ドラム2の表面を帯電器3によって帯電した後、レーザ露光器4によって表面を走査露光し、静電潜像を形成する。形成した静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像する。
【0058】
次に、感光体ドラム2上に形成するトナー像を、一次転写部9において中間転写ベルト6の表面に順次重ね合わせて一次転写を行う。中間転写ベルト6は矢印B方向に移動してトナー像を二次転写部60に搬送する。記録媒体搬送系は、トナー像を二次転写部60に搬送するタイミングに合わせて、記録媒体収容部50から記録媒体16を供給する。
二次転写部60では、中間転写ベルト6上に保持された未定着トナー像を、中間転写ベルト6と二次転写ロール22とに挟み込まれた記録媒体16上に静電転写する。その後、トナー像を静電転写した記録媒体16を搬送ベルト55により定着装置20まで搬送し、定着装置20は、記録媒体16上の未定着トナー像を熱及び圧力で処理し記録媒体16上に定着する。定着画像を形成した記録媒体16は、画像形成装置100から排出される。
以上のようにして、画像形成装置100による画像形成が行われる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜実施例30、比較例1〜比較例11)
<無端ベルトの作製>
[ベース金属層(金属層30a)]
ベース金属層用のステンレス板として、下記表1から表4に記載の組成であるステンレス板(厚さ0.4mm)を準備した。上記ステンレス板を、窒素雰囲気下において、処理温度1100℃、処理時間60分の条件にて熱処理を施した。
次に、このステンレス板をプレス・深絞り加工にて円筒容器状に成型した後、回転塑性加工法にて、内径30mm、長さ370mm、肉厚50μmの管状体を得た。具体的には、前記プレス・深絞り加工(加工カッププレス)によって円筒容器状に成型されたステンレス板を、スピニング加工によって肉厚を調整した後、両端を切断することによって、上記管状体を得た。
【0061】
次に、上記管状体を、水素雰囲気下において、表1から表4に示す処理温度及び処理時間の条件にて熱処理(固溶加熱処理)を行った後、100℃/秒の降温速度で急冷を行った。そしてさらに、水素雰囲気下において、表1から表4に示す処理温度及び処理時間の条件にて熱処理(析出硬化熱処理)を行うことで、ベース金属層を得た。
【0062】
[発熱層]
次に、得られたベース金属層の外周面上に、電気めっき法を用いて厚さ10μmの銅層を析出させることで、発熱層(厚さ10μmの銅層)を形成した。
【0063】
[弾性層(弾性層30b)]
上記発熱層の外周面に、JISタイプAで規定される硬度が35°となるように調整された液状シリコーンゴム(KE1940−35、液状シリコーンゴム35°品、信越化学工業社製)を膜厚が200μmとなるように塗布し、乾燥させることにより、弾性層を形成した。
【0064】
[離型層(離型層30c)]
上記弾性層の外周面に、PFA分散液(パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、500CL、三井・デュポンフロロケミカル社製)を膜厚30μmとなるように塗布し、380℃で焼成することにより、シリコーンゴムで構成された弾性層上にPFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で構成された離型層を形成し、無端ベルトを得た。
【0065】
<加圧ロールの作製>
内面に接着用プライマーを塗布した外径50mm、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チューブと金属製の中空芯金コアを成形金型内にセットし、フッ素樹脂チューブとコア(中空芯金コア)間に液状発泡シリコーンゴム(層厚:2mm)を注入後、加熱処理(150℃で2時間)によりシリコーンゴムを加硫し、発泡させ、ゴム弾性を有した加圧ロールを作製した。
【0066】
<無端ベルトの評価>
得られた無端ベルトを定着ベルトとして用い、かつ、作製した上記加圧ロールを用いた定着装置(図2に示す定着装置20)を備えた画像形成装置(図3に示す画像形成装置100、富士ゼロックス製、Docu Print C620)を用いて評価を行った。
具体的には、上記画像形成装置を用いて、定着ベルトを電磁誘導加熱した状態で、連続200時間空回転させる電磁誘導発熱空回転耐久評価を実施し、定着ベルトの発熱維持性(発熱不良が発生するまでの時間)及び亀裂(耐久評価後におけるベース金属層亀裂発生の有無)について評価した。
なお、定着装置における定着ベルトの繰り返し歪み幅は表1から表4に示す通りであり、定着温度が180℃となるように設定して上記評価を行った。また、上記電磁誘導発熱空回転耐久評価は、高速条件(1分あたりに定着ベルトが150周回転する条件)及び低速条件(1分当たりに定着ベルトが90周回転する条件)で行った
なお、上記「発熱不良」とは、定着領域におけるベルト表面温度が部分的にでも100℃以下に低下したことを意味する。結果を表1から表4に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
(比較例12)
外径30mmの円筒形ステンレス金型を、硫酸ニッケルが主成分である電解めっき浴(PH=3.0、浴温=50℃)中に浸漬し、陰極電流密度=7A/dmにて60分電析を行なった。その後、ステンレス金型を取り外すことにより、内径30mm、膜厚50μm、長さ370mmのニッケル製金属ベルトを作成した。さらに、実施例1と同様の方法にて、発熱層、弾性層、及び離型層を形成して無端ベルトを得た。
次に、実施例1と同様の評価を行った。
その結果、高速機における評価では、発熱不良発生時間は117時間であり、亀裂は発生していた。また低速機における評価では、発熱不良発生時間は175時間であり、亀裂は発生していた。
【0072】
以上の結果から、実施例では、比較例に比べ、繰り返し変形に対する疲労耐久性が良好な無端ベルトであることが分かる。
【符号の説明】
【0073】
2 感光体ドラム(像保持体)
3 帯電器(静電潜像形成手段)
4 レーザ露光器(静電潜像形成手段)
5 現像器(現像手段)
6 中間転写ベルト(転写手段)
7 一次転写ロール(転写手段)
10 定着ベルト
16 記録媒体
20 定着装置(定着手段)
30 無端ベルト
30a 金属層
30c 離型層
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を1質量%以上7質量%以下の範囲で含有するステンレス合金で構成された金属層と、
前記金属層上に設けられた離型層と、
を有する、無端ベルト。
【請求項2】
前記ステンレス合金は、さらにニオブを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有する、請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
前記ステンレス合金は、さらにタンタルを0.05質量%以上0.5質量%以下の範囲で含有する、請求項1又は請求項2に記載の無端ベルト。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無端ベルトである、定着ベルト。
【請求項5】
請求項4に記載の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接する加圧部材と、
を備えた定着装置。
【請求項6】
前記定着ベルトの繰り返し歪み幅が0.5%以上である、請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させる請求項5又は請求項6に記載の定着装置である定着手段と、
を有する画像形成装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189889(P2012−189889A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54529(P2011−54529)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】