説明

無端ベルト及び画像形成装置

【課題】現像剤の離型性に優れ、かつ、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することのできる無端ベルトを提供すること、及び、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】無端ベルト基体2と、無端ベルト基体2上に形成されたウレタン弾性層3とを備えてなり、前記弾性層3はシリカを含有していることを特徴とする無端ベルト1、及び、この無端ベルト1と無端ベルト1の外表面に圧接するクリーニングブレードとを備えてなる画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無端ベルト及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、現像剤の離型性に優れ、かつ、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することのできる無端ベルト、及び、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、無端ベルトの機能等に応じて、例えば、像担持体に現像された現像剤像を記録体に直接転写する直接転写方式と、現像剤像を一旦無端ベルトに転写し、無端ベルトから記録体に転写する中間転写方式とがある。
【0003】
直接転写方式は、感光ドラム等の像担持体に形成された静電潜像を現像手段に装備された現像剤担持体から供給される現像剤で現像し、この現像された現像剤像を、転写手段に電圧を印加することにより、無端ベルト(転写搬送ベルトともいう。)に静電的に吸着されて像担持体と転写手段との間に搬送される記録体に、転写し、次いで、現像剤像が転写された記録体を加圧ローラ及び定着ローラによって圧着又は加熱圧着して現像剤像を記録体上に画像や文字として定着する方式である。
【0004】
中間転写方式は、例えば、像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像し、現像された現像剤像を像担持体に当接又は圧接する無端ベルト(中間転写ベルトともいう。)に転写(一次転写)し、無端ベルトに転写された現像剤像を記録体に転写(二次転写)して、現像剤像が転写された記録体を加圧ローラ及び定着ローラによって圧着又は加熱圧着し、転写された現像剤像を記録体上に画像や文字として定着する方式である。このような中間転写方式の画像形成装置は、現像剤の転写性がよく、画像のカラー化及び高精細化、並びに、画像形成速度の高速化等を比較的実現しやすいことから、広く利用されている。
【0005】
これらの画像形成装置に装着される無端ベルト例えば中間転写ベルトは、現像剤を担持しかつ記録体に供給するから、優れた現像剤の転写性及び離型性を有している必要がある。無端ベルトにおける現像剤の離型性に劣ると、無端ベルトが担持した現像剤を記録体に所望のように供給することができなくなり、その結果、形成される画像の濃度が不足し、また、形成される画像に現像剤が転写されない白抜け部が生じる。特に、画像の高精細化、印刷速度の高速化、及び/又は、小型軽量化が図られている近年の画像形成装置に装着される無端ベルトには、所望の画像を形成するために、より一層優れた現像剤の離型性が要求されている。
【0006】
現像剤の転写性又は離型性の向上、耐久性向上等を目的として、無端ベルトを複層構造とすることがある。例えば、特許文献1には、「エラストマー材料からなる基層と、この基層の表面を被覆する表面層とを備えており、この表面層が、非フッ素系ポリマーと、水に対する接触角が100度以上であるフッ素樹脂とを含有している事務機器用の弾性部材。」が記載されている。また、特許文献2には、「感光体と、感光体にトナーを供給する複数の現像器と、感光体上のトナーを転写し保持する中間転写体と、中間転写体から印刷媒体へ転写する転写手段を有するカラー画像形成装置において、中間転写体が円筒状ベルトであって、ベルト基層と、バインダー層と、微小粒子層からなる3層構成であることを特徴とする画像形成装置。」が記載されている。
【0007】
ところで、このような無端ベルトを備えて成る画像形成装置は、これらの無端ベルトの表面に残存した現像剤を掻き落とすための、無端ベルトの外表面に圧接するクリーニングブレードを備えている。
【0008】
クリーニングブレードは、通常、無端ベルトの外表面にその端部又は端縁が無端ベルトに対して所定の角度及び所定の押圧力で圧接するように、無端ベルトの走行方向下流側に配置されている。このように、クリーニングブレードは、その端部近傍又は端縁近傍が無端ベルトに圧接されているから、無端ベルトとの摩擦等によって、無端ベルトの走行方向に捲れ返り、クリーニングブレードとして十分に機能しなくなってしまうことがある。特に、印刷速度すなわち無端ベルトの走行速度が高速化された画像形成装置においては、無端ベルトの走行時に、無端ベルトを圧接するクリーニングブレードの端部又は端縁に過大な負荷がかかり、クリーニングブレードがより捲れ返りやすくなる。
【0009】
【特許文献1】特開2001−42663号公報
【特許文献2】特開2004−354716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、現像剤の離型性に優れ、かつ、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することのできる無端ベルトを提供すること、及び、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、無端ベルト基体と、前記無端ベルト基体上に形成されたウレタン弾性層とを備えてなり、前記ウレタン弾性層はシリカを含有していることを特徴とする無端ベルトであり、
請求項2は、前記ウレタン弾性層は、フッ素樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトであり、
請求項3は、前記ウレタン弾性層は、静摩擦係数が0.7〜1.7の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の無端ベルトであり、
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルトと、前記無端ベルトの外表面に圧接するクリーニングブレードとを備えてなる画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る無端ベルトは、シリカを含有するウレタン弾性層が無端ベルト基体上に形成されているから、このウレタン弾性層は、現像剤の離型性に優れると共に、圧接されたクリーニングブレード上を滑走して、クリーニングブレードが無端ベルトの走行方向に捲れ返ることを防止することができる。したがって、この発明によれば、現像剤の離型性に優れ、かつ、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することのできる無端ベルトを提供することができる。
【0013】
また、この発明に係る画像形成装置は、この発明に係る無端ベルトを備えているから、この無端ベルトは、現像剤の離型性が優れると共に、クリーニングブレード上を滑走して、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができる。したがって、この発明によれば、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明に係る無端ベルトの一実施例である無端ベルトを、図を参照して、説明する。この無端ベルト1は、図1に示されるように、無端ベルト基体2と、無端ベルト基体2の外周面上に形成されたウレタン弾性層(以下、弾性層と称することがある。)3とを備えてなる。すなわち、この発明に係る無端ベルトはシリカを含有する弾性層3が表面層となっている。
【0015】
無端ベルト基体2と弾性層3とを備えてなる二層構造の無端ベルト1は、無端ベルト1の用途等に応じて、所望の幅及び内周径に設定される。その一例を挙げると、例えば、無端ベルト1の幅は200〜350mmであり、内周径は200〜2,500mmである。また、無端ベルト1の全体厚さは、特に限定されないが、通常、例えば、0.03〜1mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましく、0.07〜0.14mm程度であるのが特に好ましい。無端ベルト1の厚さが前記範囲内であると、機械的強度及び可撓性を確保することができ、耐久性に優れる。無端ベルト1の厚さは無端ベルト基体2と同様にして測定する。
【0016】
無端ベルト1は、1×10〜1×1013Ω/□の表面抵抗率を有しているのが好ましく、1×10〜1×1012Ω/□の表面抵抗率を有しているのより好ましく、1×10〜1×1011Ω/□の表面抵抗率を有しているのが特に好ましい。表面抵抗率が前記範囲内にあると、無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。表面抵抗率は、無端ベルト1、又は、無端ベルト1から切り出した試験片若しくは無端ベルト1と同様にして作製した試験片等の無端ベルト1に相当する試験片を準備し、この試験片の表面層について、後述する無端ベルト基体2の表面抵抗率と同様にして測定される。
【0017】
無端ベルト1は、1×10〜1×1012Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが好ましく、1×10〜1×1011Ω・cmの体積抵抗率を有しているのより好ましく、1×10〜1×1010Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが特に好ましい。体積抵抗率が前記範囲内にあると、無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。体積抵抗率は、無端ベルト1、又は、無端ベルト1から切り出した試験片若しくは無端ベルト1と同様にして作製した試験片等の無端ベルト1に相当する試験片を準備し、この試験片の表面層について、後述する無端ベルト基体2の体積抵抗率と同様にして測定される。無端ベルト1の表面抵抗率及び体積抵抗率は、例えば、弾性層3と同様にして調整することができる。
【0018】
無端ベルト1は、弾性を有しているのが好ましく、例えば、通常、40〜90のJIS A硬度を有しているのがより好ましく、50〜80のJIS A硬度を有しているのがより好ましく、50〜70のJIS A硬度を有しているのが特に好ましい。無端ベルト1が前記範囲内のJIS A硬度を有していると、無端ベルト1が画像形成装置に装着されたときに、無端ベルト1と無端ベルト1が当接する部材との十分な当接幅を確保することができる。無端ベルト1のJIS A硬度は弾性層3のJIS A硬度と同様にして測定される。
【0019】
図1に示されるように、前記無端ベルト基体2は、後述する樹脂組成物を硬化してなり、単層構造とされている。無端ベルト基体2は、無端ベルト1の用途等、すなわち、画像形成装置に配設される位置(構成部分)、張架される複数のローラ間隔等に応じて、所望の幅及び内周径に設定される。無端ベルト基体2の厚さは、特に限定されないが、通常、例えば、50〜200μmであるのが好ましく、60〜170μmであるのがより好ましく、70〜160μmであるのが特に好ましい。無端ベルト基体2の厚さが前記範囲内にあると、無端ベルト1としたときの機械的強度及び可撓性を確保することができ、無端ベルト1の耐久性に優れる。無端ベルト基体2の厚さは、接触式膜厚計又は非接触式膜厚計等により測定することができ、例えば、過電流式膜厚計(商品名「CTR−1500E」、サンコー電子株式会社製)を使用することができる。
【0020】
無端ベルト基体2は、1×10〜1×1013Ω/□の表面抵抗率を有しているのが好ましく、1×10〜1×1012Ω/□の表面抵抗率を有しているのより好ましく、1×10〜1×1011Ω/□の表面抵抗率を有しているのが特に好ましい。表面抵抗率が前記範囲内にあると、無端ベルト基体2を備えた無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。無端ベルト基体2の表面抵抗率は、無端ベルト基体2、又は、無端ベルト基体2から切り出した試験片若しくは無端ベルト基体2と同様にして作製した試験片等の無端ベルト基体2に相当する試験片を準備して、温度23℃、相対湿度50%の条件において、円形電極(例えば、三菱化学株式会社製、商品名:Hiresta−UP、使用プローブ:URSプローブ)を使用し、JIS K6911に従って準備した試験片の表面抵抗率を測定したときの値を、算術平均して、求めることができる。
【0021】
無端ベルト基体2は、1×10〜1×1012Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが好ましく、1×10〜1×1011Ω・cmの体積抵抗率を有しているのより好ましく、1×10〜1×1010Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが特に好ましい。体積抵抗率が前記範囲内にあると、無端ベルト基体2を備えた無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。無端ベルト基体2の体積抵抗率は、無端ベルト基体2、又は、無端ベルト基体2から切り出した試験片若しくは無端ベルト基体2と同様にして作製した試験片等の無端ベルト基体2に相当する試験片を準備して、温度23℃、相対湿度50%の条件において、体積抵抗測定装置(三菱化学株式会社製、商品名:Hiresta−UP、使用プローブ:URS)により準備した試験片の体積抵抗率を測定したときの値を、算術平均して、求めることができる。
【0022】
無端ベルト基体2の表面抵抗率及び体積抵抗率は、例えば、無端ベルト基体2を形成する樹脂組成物に含まれる導電性付与剤の種類、含有量及び/又は成形条件等により、調整することができる。
【0023】
無端ベルト基体2は、表面微小硬度が、15〜30であるのが好ましく、20〜30であるのが特に好ましい。無端ベルト基体2の表面微小硬度が前記範囲内にあると、可撓性と剛性とのバランスがよく優れた機械特性を活かしつつ、耐折強さ及び引裂き強度が大きくなるという効果が得られる。無端ベルト基体2の表面微小硬度は、下記試験片において、以下の方法によって測定された表面微小硬度の算術平均値とする。すなわち、無端ベルト基体2から、10mm×10mmの大きさを有する試験片を複数枚切り出し、各試験片の表面微小硬度を、温度23℃、相対湿度50%の測定環境下で、表面微小硬度計(商品名「ダイナミック超微小硬度計(型式「DUH−W201S」)」、株式会社島津製作所製)を用いて、以下の測定条件で測定する。各試験片から測定された表面微小硬度の算術平均値を求めて、無端ベルト1の表面微小硬度とする。
【0024】
<測定条件>
・測定環境:25℃、50±5%RH
・試験モード:負荷−除荷試験
・負荷速度:3(0.473988mN/sec)
・圧子の種類:三角錐圧子115°
・試験力:9.8mN
・保持時間:5sec
【0025】
無端ベルト基体2の表面微小硬度は、樹脂組成物に含有される成分の種類、含有量及び/又は成形条件等により、調整することができる。
【0026】
無端ベルト基体2は、樹脂を含有する樹脂組成物を硬化してなる。樹脂組成物は、ある程度の強度を有し、繰返し変形に耐える可撓性に富む樹脂単体又は複数種類の樹脂を含有してなる樹脂組成物であるのがよく、このような樹脂組成物に含有される樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル・スチレン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アセチルセルロース、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、架橋型ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂(PESF)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン共重合体、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、四フッ化樹脂(PTFE)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、特に、芳香族ポリアミドイミド樹脂が、強度、可撓性、寸法安定性及び耐熱性等の機械的特性がバランスよく優れている点で、好ましい。
【0027】
前記芳香族ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを反応させるジイソシアネート法により製造することができ、ジイソシアネート法は原料の入手、反応性及び副生成物が少ない等の点で優れている。ジイソシアネート法で製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂の他にも、重縮合反応を好適に進めることができるのであれば、ジイソシアネート化合物に代えてジアミン化合物を用いて製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂も、好ましい。ジアミン化合物を用いて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂は、ヤング率が高く、無端ベルト基体2を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂として好適である。また、トリカルボン酸無水物の一部をテトラカルボン酸二無水物に代えてイミド結合を増加させた芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐湿性に優れている。芳香族ポリアミドイミド樹脂は、適宜の溶媒中で、常圧下、及び、常温下又は加熱下で反応させることにより、容易に合成することができる。
【0028】
前記トリカルボン酸無水物としては、芳香族トリカルボン酸無水物が好ましく、例えば、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、2,3,5−ピリジントリカルボン酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの酸無水物は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0029】
トリカルボン酸無水物の一部に代えて用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0030】
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物を好ましく挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネート化合物と共に、又は芳香族ジイソシアネート化合物に代えて、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を、又はこれらの誘導体であるアミン類を使用することもできる。
【0031】
芳香族ジイソシアネート化合物として、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、2,4−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの芳香族ジイソシアネート化合物の誘導体であるジアミン類も原料として利用できる。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、無端ベルト基体2の耐熱性、機械的特性及び溶解性等を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の60質量%以上、好ましくは70質量%以上を、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、イソホロンジイソシアネート又はこれらの誘導体であるジアミン類とすることが好ましい。さらに、無端ベルト基体2の寸法安定性を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の70質量%以上をジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はこの誘導体である4,4’−ジアミノジフェニルメタンとすることがより好ましい。
【0032】
芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒としては、溶解性の点で極性溶媒が好ましく、反応性を考慮すると非プロトン性極性溶媒が特に好ましい。非プロトン性極性溶媒として、例えば、N,N−ジアルキルアミド類が挙げられ、N,N−ジアルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、及び、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等が挙げられる。また、極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等も好ましい。これらの溶媒は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0033】
樹脂組成物は導電性付与剤を含有してもよい。導電性付与剤として、例えば、導電性粉末及びイオン導電性物質等を挙げることができる。導電性粉末としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、ナノ粒子等を挙げることができる。イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等を挙げることができる。これらの中でも、導電性カーボン及びゴム用カーボン類等が好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。導電性付与剤は、前記各種物質をその一種を単独で使用することができ、また二種以上を併用することもできる。導電性付与剤の好ましい形状は、球状又は不定形である。球状又は不定形をなす導電性付与剤の粒子のサイズは、一次粒子径として0.01〜10μm程度が好ましい。導電性付与剤がカーボンブラックの場合、そのBET比表面積は、一次粒子径との相関性が強く、50〜300m/gであることが好ましく、100〜200m/gがより好ましい。
【0034】
樹脂組成物における導電性付与剤の含有量は、導電性付与剤の導電性及び粒径、並びに、無端ベルト基体2に要求される導電特性等により、適宜調整すればよいが、通常、樹脂組成物と導電性付与剤との全質量100%に対して、1〜25質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましく、10〜20質量%であるのが特に好ましい。導電性付与剤の添加量が1質量%より少ないと、導電性物質同士の距離が離れすぎて無端ベルト基体2における導電性の発現が悪くなることがあり、一方、導電性付与剤の添加量が25質量%を超えると、無端ベルト基体2の機械的強度が低下することがある。導電性付与剤を樹脂に分散させるには、公知の方法を適宜選択することができ、公知の方法として、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル、ポットミル及びビーズミル等を用いた混合方法が挙げられる。
【0035】
樹脂組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、前記樹脂及び前記導電性付与剤に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、補強性充填材、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤等が挙げられる。また、この樹脂組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、他の樹脂が含有されていてもよい。これら他の成分の前記樹脂組成物における含有量は、これら他の成分の添加により前記樹脂組成物に発現させる特性に応じて適宜に決定されることが、できる。
【0036】
図1に示されるように、前記弾性層3は、前記無端ベルト基体2の外周面上で後述するゴム組成物を硬化してなり、単層構造とされている。したがって、弾性層3は、無端ベルト基体2の外周径と同じ内周径を有し、無端ベルト基体2の幅と同じ幅を有している。弾性層3の厚さは、後述するゴム組成物によって弾性を有する厚さに調整されればよく、通常、50〜400μmであるのが好ましく、70〜300μmであるのがより好ましく、100〜250μmであるのが特に好ましい。弾性層3の厚さが前記範囲内にあると、無端ベルト1が画像形成装置に装着されたときに、無端ベルト1と無端ベルト1が当接する部材との当接幅を確保して、現像剤の良好な転写性を実現することができる。弾性層3の厚さは、無端ベルト基体2の厚さと同様にして測定することができる。
【0037】
弾性層3は、1×10〜1×1013Ω/□の表面抵抗率を有しているのが好ましく、1×1010〜1×1013Ω/□の表面抵抗率を有しているのより好ましく、1×1010〜1×1012Ω/□表面抵抗率を有しているのが特に好ましい。表面抵抗率が前記範囲内にあると、弾性層3を備えた無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。表面抵抗率は、弾性層3、又は、弾性層3から切り出した試験片若しくは弾性層3と同様にして作製した試験片等の弾性層3に相当する試験片を準備し、前記無端ベルト基体2の表面抵抗率と同様にして測定される。
【0038】
弾性層3は、1×10〜1×1012Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが好ましく、1×10〜1×1012Ω・cmの体積抵抗率を有しているのより好ましく、1×10〜1×1011Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが特に好ましい。体積抵抗率が前記範囲内にあると、弾性層3を備えた無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。体積抵抗率は、弾性層3、又は、弾性層3から切り出した試験片若しくは弾性層3と同様にして作製した試験片等の弾性層3に相当する試験片を準備し、前記無端ベルト基体2の体積抵抗率と同様にして測定される。弾性層3の表面抵抗率及び体積抵抗率は、例えば、弾性層3を形成するゴム組成物に含まれる導電性付与剤の種類、含有量及び/又は成形条件等により、調整することができる。
【0039】
弾性層3は、弾性を有しているのが好ましく、例えば、通常、40〜90のJIS A硬度を有しているのがより好ましく、50〜80のJIS A硬度を有しているのがより好ましく、50〜70のJIS A硬度を有しているのが特に好ましい。弾性層3が前記範囲内のJIS A硬度を有していると、無端ベルト1が画像形成装置に装着されたときに、無端ベルト1と無端ベルト1が当接する部材との十分な当接幅を確保することができる。弾性層3のJIS A硬度は、JIS K6301に準拠して、弾性層3を形成するのに使用するゴム組成物を一定厚さに成形した試験片を測定した値とすることができる。弾性層3のJIS A硬度は、例えば、導電性付与剤の種類、含有量及び/又は成形条件等により、調整することができる。
【0040】
弾性層3は、下記測定方法における静摩擦係数が0.7〜1.7の範囲内にあるのが好ましく、0.9〜1.5の範囲内にあるのが好ましい。弾性層3の静摩擦係数が前記範囲内にあると、弾性層3における現像剤の離型性により一層優れ、帯電された現像剤を無端ベルト1の弾性層3から記録体等に現像剤を所望のように供給することができるうえ、無端ベルト1に圧接されたクリーニングブレード上を弾性層3が滑走して、クリーニングブレードが無端ベルト1の走行方向に捲れ返ることを長期間にわたって防止することができる。また、クリーニングブレードが捲れ返ることを長期間にわたって防止することができると、クリーニングブレードに過大な負荷がかかることなく、弾性層3に残存する現像剤をクリーニングすることができる。弾性層3の静摩擦係数は、例えば、弾性層3に含有されるシリカ及び/又はフッ素樹脂の種類及び/又は含有量等によって、前記範囲内に調整することができる。
【0041】
弾性層3の表面における静摩擦係数は、次のようにして測定する。まず、厚み1.5mm、幅13mm、長さ40mmの板状を成し、下記(I)〜(IV)の物性を有するウレタン系熱可塑樹脂製ブレードを、高さ77mm、幅54mm、長さ60mmの板状を成したアルミ製の支持体52(新東科学株式会社製)に、幅8mm及び長さ40mmが重なるように、両面テープ(商品名「両面テープ・ファスナー」、住友スリーエム株式会社製)で接着して、試験用ブレードを作製する。この試験用ブレードにおける前記ウレタン系熱可塑樹脂製ブレードの先端部の一端縁を、弾性層3の表面に対して接触角度θが23°、接触幅が40mm、荷重が100gとなるように、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、接触させ、この状態を維持しつつ、速度120mm/minの条件下、前記試験用ブレードを弾性層3の円周方向に一定の速度で移動させる。このときの生じる静摩擦係数を表面性測定装置(商品名「HEIDON−14D」新東科学株式会社製)を用いて測定する。この操作を複数回例えば5回行い、それらの算術平均値を静摩擦係数とする。
【0042】
(I)JIS A硬度:73
(II)伸び(測定方法は、JIS K6251(ダンベル状3号形試験片使用)に基づいて測定):320%
(III)300%モジュラス(測定方法は、JIS K6251(2004年度版)で規定):160kg/cm
(IV)引張強さ(JIS Z2241):200kg/cm
【0043】
弾性層3は、シリカを含有している。弾性層3にシリカが含有されていると、弾性層3の柔軟性(追従性)を損なうことなく、弾性層3の静摩擦係数を低下させることができ、その結果、弾性層3における現像剤の離型性が向上し、かつ、無端ベルト1とクリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができる。その理由は、詳細には明らかではないが、弾性層3の表面にシリカ粒子の一部が存在し、このシリカにより、弾性層3の表層が凹凸状になって静摩擦係数が低下すると考えられる。シリカは、例えば、疎水性シリカ、親水性シリカ等が挙げられる。
【0044】
前記シリカは非結晶分を5〜50質量%の割合で有しているのが好ましい。シリカの非結晶分は、粉末X線回折装置(例えば、モデルMini Flex;RIGAKU社製)を用い、CuKα線の2θが26°〜27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができる。例えば、シリカの場合、結晶分は26.7°に主ピークが存在するが、非結晶ではピークは存在せず、非結晶分と結晶分が混在していると、それらの割合に応じた26.7°のピーク高さが得られるので、結晶分シリカ標準試料のX線強度に対する試料のX線強度の比から、結晶分シリカ混在比(試料のX線回折強度/結晶分シリカのX線回折強度)を算出し、「非晶質分(質量%)=(1−結晶分シリカ混在比)×100」から非結晶分を求めることができる。シリカの形状は特に限定されないが、球状又は楕円球状であるのが好ましく、0.1〜20μmの平均粒子径を有しているのが、弾性層3を構成するウレタン中に均一に分散することができる点で、さらに好ましい。シリカの平均粒子径は、コールターカウンター法(商品名「コールターマルチサイザーII」(コールター株式会社製)を用いて50μmのアパーチャーチューブを用いて測定し、測定された粒度分布における、重量積算値の50%値を平均粒子径とする。)により測定することができる。
【0045】
弾性層3におけるシリカの含有量は、弾性層3を形成するウレタン100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、5〜45質量部であるのがより好ましく、10〜40質量部であるのが特に好ましい。シリカの含有量が前記範囲にあると、この弾性層3を備えた無端ベルト1は、現像剤の離型性に優れ、前記圧接状態を長期間にわたって維持することができる。
【0046】
弾性層3は、フッ素樹脂を含有していてもよい。弾性層3にフッ素樹脂が含有されていると、弾性層3の柔軟性(追従性)を大きく損なうことなく、弾性層3における現像剤の離型性が向上し、かつ、無端ベルト1とクリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができる。フッ素樹脂は、直鎖炭化水素鎖を主鎖として、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された樹脂であればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PFEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。フッ素樹脂は一種単独で又は二種以上が混合されて弾性層3に含有される。
【0047】
フッ素樹脂は、粒子として含有されているのが好ましい。フッ素樹脂が粒子として弾性層3に含有されていると、弾性層3における現像剤の離型性がより一層向上し、かつ、無端ベルト1とクリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができる。フッ素樹脂粒子の形状は、特に限定されないが、球状又は楕円球状であるのが好ましい。フッ素樹脂粒子の平均粒子径は、0.1〜20μmであるのが、弾性層3を構成するウレタン中に均一に分散することができる点で、好ましい。フッ素樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー散乱(50%平均粒径)法により測定することができる。
【0048】
弾性層3におけるフッ素樹脂の含有量は、弾性層3を形成するウレタン100質量部に対して、1〜40質量部であるのが好ましく、1〜35質量部であるのがより好ましく、1〜25質量部であるのが特に好ましい。弾性層3におけるフッ素樹脂の含有量が前記範囲にあると、この弾性層3を備えた無端ベルト1は、現像剤の離型性に優れ、前記圧接状態を長期間にわたって維持することができる。
【0049】
弾性層3は、ウレタン組成物を硬化してなる。このウレタン組成物は、ポリウレタン調製成分とシリカとを含有し、所望により、フッ素樹脂、各種添加剤を含有する。弾性層3がウレタン組成物で形成されていると、無端ベルト1が画像形成装置に装着されたときに無端ベルト1が当接する像担持体等の部材を、その構成成分又は低分子量成分で汚染することがなく、その結果、高品質の画像を形成することに貢献することができる。この発明に係る無端ベルトは、弾性層3がウレタン組成物で形成されているから、たとえ中間転写ベルトとして用いられても、像担持体及び記録体を汚染し、かつ現像剤の離型性に劣ることがない。
【0050】
ポリウレタン調製成分は、ポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマー、及び、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1種の成分が挙げられる。
【0051】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよいが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが、弾性層3の耐摩耗性等に優れる点で、好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0052】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリイソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添MDI、等が挙げられる。
【0053】
ポリイソシアネートとして、これらのポリイソシアネートの他に、ブロック剤でイソシアネート基がブロックされたブロックポリイソシアネートが好適に使用される。ブロックポリイソシアネートは、常温での安定性が高く、加熱によってブロック剤が遊離してイソシアネート基が再生するため、取り扱いが容易である等の利点を有する。特に、湿度の高い夏場でも安定して反応し、さらには、アミノ基等の反応性の高い活性基を有する試薬とも併用することができるという利点を有する。前記ブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム類、メチルエチルケトオキシム類、3,5−ジメチルピラゾール類、アルコール類及びフェノール類等が挙げられる。また、ブロック剤として、イソシアネート類も挙げられ、この場合には、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートダイマー(ポリウレトジオン)となる。ブロック剤は、前記のいずれをも用いることができるが、溶剤との相溶性に優れる点で、ε−カプロラクタム類及びメチルエチルケトオキシム類が好適である。前記ブロックイソシアネートは、前記イソシアネートと前記ブロック剤とを任意に組み合わせることができるが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とε−カプロラクタムとを反応させてなるブロックポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)とε−カプロラクタムとを反応させてなるブロックポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とメチルエチルケトオキシムとを反応させてなるブロックポリイソシアネート等が好ましい。
【0054】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO、ブロックポリイソシアネートの場合は遊離し得るイソシアネート基)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが、得られるポリウレタンにおける所望の架橋度等を実現することができる点で、好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。
【0055】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物において、前記組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を含有してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0056】
前記プレポリマー及び前記ポリウレタンは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマー及びポリウレタンであればよく、それらの分子量等も特に限定されない。プレポリマー及びポリウレタンは、所望により前記助剤等の存在下、ワンショット法又はプレポリマー法等によって、ポリオールとポリイソシアネートとを例えば前記モル比で反応して、得られる。
【0057】
前記ポリウレタン調製成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが好ましく、特に、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが特に好ましい。すなわち、前記組成物は、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールと、ポリイソシアネートとの混合物を含有するのが特に好ましい。
【0058】
ウレタン組成物に含有される前記シリカ及びフッ素樹脂は、弾性層3に含有されるシリカ及びフッ素樹脂と基本的に同様である。
【0059】
ウレタン組成物中におけるシリカの含有量は、前記ポリウレタン調製成分100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、5〜45質量部であるのがより好ましく、10〜40質量部であるのが特に好ましい。ウレタン組成物中におけるシリカの含有量が前記範囲にあると、現像剤の離型性に優れ、前記圧接状態を長期間にわたって維持することができる弾性層3を形成することができる。ウレタン組成物中におけるフッ素樹脂の含有量は、前記ポリウレタン調製成分100質量部に対して、1〜40質量部であるのが好ましく、1〜35質量部であるのがより好ましく、1〜25質量部であるのが特に好ましい。ウレタン組成物中におけるフッ素樹脂の含有量が前記範囲にあると、現像剤の離型性に優れ、前記圧接状態を長期間にわたって維持することができる弾性層3を形成することができる。
【0060】
ウレタン組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、通常、組成物に含有される各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、前記鎖延長剤及び前記架橋剤等の助剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、硬化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0061】
ウレタン組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、ポリウレタン調製成分及びシリカ、所望によりフッ素樹脂粒子及び各種添加剤等を均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0062】
次に、この発明に係る無端ベルトの製造方法を説明する。この発明に係る無端ベルトを製造するには、無端ベルト基体2を形成する樹脂組成物及び弾性層3を形成するゴム組成物をそれぞれ、前記のようにして、準備する。
【0063】
準備した樹脂組成物を、公知の成形方法によって、環状に成形する。例えば、樹脂組成物に含有される樹脂として熱可塑性樹脂を選択した場合には、遠心成形、押出成形、射出成形等により、一方、樹脂として熱硬化性樹脂を選択した場合には、遠心成形、RIM成形等により、無端ベルト基体2を成形することができる。これらの成形方法の中でも、材料を問わずに適用可能であり、かつ厚さ精度に優れる等の点で、遠心成形が好ましい。
【0064】
無端ベルト基体2を遠心成形によって成形する場合には、樹脂組成物はその成形時の粘度を50,000mPa・s以下に調整するのが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルト基体2を製造するのが困難になることがある。樹脂組成物の粘度の下限については、特に限定されるものではないが、10mPa・s以上であるのが好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲を外れる場合は、前記溶媒の添加量等を調節することにより、樹脂組成物の粘度を前記範囲内に調整することができる。溶媒としては、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒が挙げられる。
【0065】
遠心成形によると、溶媒を含有することにより流動性を発現した樹脂組成物を円筒形の金型に注入し、金型を回転させて遠心力で金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開し、樹脂組成物の層から溶媒を乾燥除去して、無端ベルト成形体が製造される。金型は各種金属管を用いることができる。好適な金型としては、金型の内周面は鏡面研磨されており、鏡面となった内周面はフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤により離型処理され、形成した無端ベルト成形体が内周面から容易に脱型できるようにされた金属管を挙げることができる。
【0066】
なお、樹脂組成物に含まれる樹脂としてポリアミドイミド樹脂を選択する場合には、上述した遠心成形による他に、ポリアミドイミド樹脂の原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とが一部重合したポリアミド酸の溶液を、金型の内周面や外周面に浸漬方式、遠心方式、塗布方式等によってコートし、又は前記ポリアミド酸の溶液を注形型に充填する等の適宜な方式で筒状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベルト形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する公知の方法(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)等により、無端ベルト成形体を製造することもできる。
【0067】
金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去して、無端ベルト成形体が製造される。ここで、除去される溶媒は、金型内周面に展開された樹脂組成物の層に含有された溶媒であり、例えば、樹脂組成物の粘度を調整する際に使用される溶媒の他に、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される溶媒等が挙げられる。金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去する処理として、加熱処理を挙げることができるが、溶媒を除去するには、以下の一次溶媒除去工程及び二次溶媒除去工程からなる溶媒除去処理を行うのが好ましい。
【0068】
前記一次溶媒除去工程は、金型を回転して金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去しつつ成形し、樹脂組成物の層をフィルム状成形体とする。一次溶媒除去工程は、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風を金型内に通過させることにより、溶媒が除去される。熱風温度が150℃を超えると、及び/又は、加熱時間が60分を超えると、成形されるフィルム状成形体が酸化されることがある。
【0069】
二次溶媒除去工程は、一次溶媒除去工程で成形されたフィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、金型ごと加熱して、フィルム状成形体から溶媒を除去し、無端ベルト成形体とする。例えば、熱風乾燥器、オーブン等の加熱器を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃で1〜3時間加熱すればよく、また、過熱水蒸気炉を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜260℃の過熱水蒸気で、0.5〜3時間加熱すればよい。なお、フィルム成形体の変形等を防止することができれば、フィルム成形体を金型から脱型し、前記条件で加熱することもできる。
【0070】
このようにして溶媒が除去された無端ベルト成形体を作製した後、無端ベルト成形体を金型から取り出し、放冷する。なお、金型ごと無端ベルト成形体を放冷すると、金型と無端ベルト成形体との熱膨張率の差により、無端ベルト成形体を脱型することができる。
【0071】
このようにして無端ベルト成形体を脱型して、環状の無端ベルト成形体における両側端部を除去し、所定幅に裁断して、無端ベルト基体2が作製される。無端ベルト成形体を切断する切断機は、無端ベルト成形体の切断開始点と切断終了点とが略一致するように、切断することができる装置であればよい。
【0072】
このようにして作製される無端ベルト基体2の外周面に前記ウレタン組成物を塗布する。ウレタン組成物の塗布は、通常の塗布方法、例えば、ディップ法、スプレー法、ロールコータ法、ドクターブレードコート法等で、硬化後の弾性層3の厚さが前記範囲内になる塗布量で、塗布される。次いで、無端ベルト基体2の外周面に塗布されたウレタン組成物を硬化する。ウレタン組成物は湿気及び/又は加熱等により硬化される。湿気硬化条件は、例えば、10〜70%の条件が挙げられる。加熱条件は、例えば、ウレタン樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、50〜150℃、特に100〜150℃、加熱時間は30〜120分間、特に60〜90分間であるのが好ましい。このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面を研磨又は研削されてもよい。
【0073】
このようにして製造される無端ベルト1は、シリカを含有する弾性層3を無端ベルト基体2の外周面に表面層として備えているから、ウレタン弾性層3における現像剤の離型性を向上させることができる。また、無端ベルト1は、シリカを含有する弾性層3を無端ベルト基体2の外周面に表面層として備えているから、圧接されたクリーニングブレード上を滑走して、クリーニングブレードが無端ベルト1の走行方向に捲れ返ることを防止することができる。その結果、無端ベルト1はクリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができる。さらに、無端ベルト1が走行しても、クリーニングブレードに過大な負荷がかかることなく、弾性層3に残存する現像剤を所望のようにクリーニングすることができる。
【0074】
無端ベルト1は、現像剤の離型性に優れ、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができるから、付着した現像剤を除去する機能を有し、その端部又は端縁が無端ベルト1に圧接されるクリーニングブレードを備えた画像形成装置に好適に用いられる。特に、無端ベルト1は、前記クリーニングブレードを備え、印刷速度すなわち無端ベルトの走行速度が高速化された画像形成装置に好適に用いられる。
【0075】
このような画像形成装置に装着される無端ベルトとして、例えば、記録体を搬送する搬送ベルト、記録体への現像剤の転写に貢献する転写ベルト、記録体を搬送すると共に記録体への現像剤の転写に貢献する転写搬送ベルト、現像剤を像担持体に供給する現像ベルト、記録体に転写された現像剤を定着させる転写ベルト、現像剤像を担持する感光ベルト等として好適に用いられ、特に、像担持体から現像剤を受取り(一次転写)、一旦担持した現像剤を記録体に供給する(二次転写)する中間転写ベルト等が好適挙げられる。
【0076】
このように、無端ベルト1は現像剤の離型性に優れ、かつ、クリーニングブレードとの初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができるから、画像形成装置に装着されると、高品質の画像を形成することに貢献することができる。特に、高精細化された画像を形成することのできる画像形成装置、画像を高速で形成することのできる画像形成装置、及び、高精細化された画像を高速で形成することのできる画像形成装置に装着されても、高い現像剤の離型性を十分に発揮すると共に前記圧接状態を長期間にわたって維持して、所望の高品質を有する画像を長期間にわたって安定して形成することに大きく貢献することができる。したがって、この発明によれば、高精細化された近年の画像形成装置、高速化された近年の画像形成装置又は小型軽量化された近年の画像形成装置等に装着されても、所望の高品質を有する画像を長期間にわたって安定して形成することのできる無端ベルトを提供するという目的を達成することができる。
【0077】
この発明に係る無端ベルトは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、無端ベルト1の無端ベルト基体2及び弾性層3はいずれも単層構造とされているが、この発明において、無端ベルトの無端ベルト基体及び/又は弾性層は二以上の層を積層した多層構造とされてもよい。
【0078】
また、無端ベルト1は、無端ベルト基体2の外周面に弾性層3が形成されているが、この発明においては、無端ベルト基体2の外周面に接着剤層又はプライマー層等が形成された後、この接着剤層又はプライマー層等の外周面に弾性層3が形成されてもよい。さらに、無端ベルト1は、無端ベルト基体2と弾性層3とを備え、弾性層3が表面層となっているが、この発明において、無端ベルトは、所望により、弾性層の外周面に前記フッ素樹脂粒子等で形成された表面層等を有していてもよく、また、弾性層の外周面に前記フッ素樹脂粒子等が付着していてもよい。
【0079】
さらに、無端ベルト1は、無端ベルト基体2と弾性層3とを備えてなるが、この発明において、無端ベルトは、所望により、無端ベルト基体の内周面であって無端ベルト基体における軸線方向の少なくとも一端部に、弾性材料で形成された紐状又は帯状の細長いガイド部材が設けられてもよい。このガイド部材は無端ベルトの走行中の横ぶれ防止用のガイドとして機能する。ガイド部材の材料としては、適度なゴム弾性と耐摩耗性とを有する弾性材料、例えば、ウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系樹脂エラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性に優れる、JIS K 6253−1997によるA硬度が30以上95以下のウレタン系エラストマーが好適である。ガイド部材は、好ましくは、無端ベルト基体における軸線方向の両端部に無端ベルト基体の内周面を一巡するように設けられる。
【0080】
次に、この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。この画像形成装置10は、中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置である。中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置10は従来公知の画像形成装置と基本的に同様に構成されているが、この発明に係る無端ベルト1が中間転写ベルト7として装着されている。
【0081】
この画像形成装置10は、図2に示されるように、二本の支持ローラ42に巻回されて無限軌道を図2における矢印の方向に走行する中間転写ベルト7と、前記無限軌道の走行方向における二次転写部40の下流側に配置され、中間転写ベルト7の外周面に圧接するクリーニングブレード51とを備えている。無端ベルト1は、中間転写ベルトとして、二本の支持ローラ42、テンションローラ43及び対向ローラ44に張架されている。そして、対向ローラ44の設置位置近傍に、対向ローラ44と二次転写ローラ45と電極ローラ46とを備えて成る二次転写部40が配置されている。
【0082】
図2に示されるように、画像形成装置10は、中間転写ベルト7上に四種の現像ユニットB、C、M及びYが直列に配置されている。現像ユニットBは、感光体等の像担持体11Bと帯電ローラ12Bと露光手段13Bと現像ローラ23B及び筐体21Bを備えた現像手段20Bと転写ローラ14Bと像担持体用クリーニングブレード15Bとを備えている。現像ユニットBには黒色現像剤が収納されている。なお、現像ユニットC、M及びYは、現像ユニットBと同様に構成され、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
【0083】
図2に示されるように、画像形成装置10における記録体16の搬送方向下流には、定着ベルトとしての無端ベルト35を備えた定着手段30が配置されている。この定着装置30は、開口を有する筐体34内に、定着ローラ31と支持ローラ33と定着ベルト35と加圧ローラ32とを備えて成る圧力熱定着装置である。なお、定着手段30は、熱ローラ定着装置、加熱定着装置、圧力定着装置等が採用されてもよい。
【0084】
前記クリーニングブレード51は、図2及び図4に示されるように、支持体52と弾性体53と備えている。このクリーニングブレード51は、圧縮永久歪(JIS K6301、60℃、48時間)が0.1〜20%の範囲内にあるのが好ましい。
【0085】
支持体52は、図4に示されるように、一方向に延在する板状部55と、板状部55の長手方向の一端縁に沿ってこの一端縁から板状部55に対して略垂直に延在するように形成された取付部56とで形成されている。すなわち、支持体52は長手方向に垂直な断面における断面形状が略L字型をなす板状部材に形成されている。この支持体52は、後述する弾性体53を支持し、中間転写ベルト7に弾性体53を所望の押圧力で当接させる。したがって、支持体52は、弾性体53を支持することができる材料例えば金属材料等で形成される。支持体52は、通常、50〜250μmの厚さを有しているのが好ましく、80〜120μmの厚さを有しているのが特に好ましい。支持体52は、その全面にわたって均一な厚さを有していることが好ましい。支持体52は、その長手方向の長さが中間転写ベルト7の幅方向長さよりも長くなるように調整されている。
【0086】
弾性体53は、任意の形状に形成されることができ、例えば図2及び図4に示されるように、所定の厚さを有する長方形の板状又は直方体に形成される。この弾性体53はその端部又は端縁(先端圧接部と称する。)が中間転写ベルト7に所望の押圧力で当接して、中間転写ベルト7上を摺動する。このように弾性体53の先端圧接部が中間転写ベルト7の弾性層3に当接することによって、中間転写ベルト7の弾性層3に付着した現像剤等を効果的に除去することができる。
【0087】
弾性体53は、中間転写ベルト7を傷付けないように、弾性を有する弾性材料、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム等で形成される。ウレタンゴムとしては、例えば、熱可塑性ウレタンゴムが挙げられ、より具体的には、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール等を用いたウレタンゴム、イソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等を用いたウレタンゴム等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、例えば、HTVゴム(高温硬化型ミラブルシリコーンゴム等)、液状シリコーンゴム(LTV、RTV等)等が挙げられる。
【0088】
弾性体53の厚さは、任意の厚さに調整され、具体的には、0.1〜3mmである。弾性体53は、その全面にわたって均一な厚さを有していることが好ましい。また、弾性体53は、支持体52と同様に、その長手方向の長さが、中間転写ベルト7の幅方向長さよりも長くなるように調整されているのが好ましく、弾性体53の長手方向に垂直な方向の長さは、特に限定されず、例えば、10〜30mm程度に調整される。
【0089】
弾性体53は、中間転写ベルト7に圧接するから、JIS A硬度が60〜80の範囲にあるのが好ましく、60〜75の範囲にあるのが特に好ましい。また、100%モジュラス(JIS K6251(2004年度版))が20〜30kg/cm、300%モジュラス(JIS K6251(2004年度版))が100〜200kg/cm、伸び(JIS K6251(ダンベル状3号形試験片使用))が300〜320%、引張強さ(JIS Z2241)が200kg/cm以上であるのが好ましい。
【0090】
弾性体53は、中間転写ベルト7の外表面に付着した現像剤を除去するものであるから、JIS−K7311(荷重1Kg,摩耗輪H−22;1000回転)で測定される摩耗量が50mg以下であるのが好ましく、30mg以下であるのが特に好ましい。
【0091】
クリーニングブレード51は、支持体52及び弾性体53をそれぞれ前記材料で公知の方法により作製し、所望により、支持体52に接着剤を塗布し、塗布された接着剤上に弾性体53を重ね合わせ、接着剤を公知の方法で硬化させて、製造することができる。
【0092】
クリーニングブレード51は、その先端圧接部が中間転写ベルト7の弾性層3に圧接していればよく、その先端圧接部が中間転写ベルト7の軸線に沿って換言すると中間転写ベルト7の走行方向に対して略垂直になるように、圧接しているのが好ましい。
【0093】
クリーニングブレード51は、図2及び図4に示されるように、弾性体53の幅方向の仮想延長線と、クリーニングブレード51が当接していない状態における中間転写ベルト7の走行面とのなす圧接角度θ(図2参照。)が15°〜25°の範囲となるように、画像形成装置10に装着されるのが好ましい。クリーニングブレード51は、前記圧接角度θとなるように、中間転写ベルト7を0.2〜2MPaの圧接圧力Pで押圧するのが好ましい。クリーニングブレード51が前記圧接角度θ及び圧接圧力Pとなるように、装着されると、中間転写ベルト7との圧接状態を長期間にわたって維持することができると共に、中間転写ベルト7の外周面に付着した現像剤を所望のように除去することができる。クリーニングブレード51は、図2に示されるように、弾性体53の先端圧接部側が中間転写ベルト7の走行方向(図2において矢印が示す方向)に対して上流側に、弾性体53の支持体52側が中間転写ベルト7の走行方向に対して下流側に配置されているのが、好ましい。クリーニングブレード51がこのように配置されていると、中間転写ベルト7の走行方向に対して逆方向から弾性体53が中間転写ベルト7に圧接するから、現像剤を高度に除去することができる。
【0094】
画像形成装置10は、次にようにして画像を形成する。まず、現像ユニットBによって、像担持体11Bの表面に静電潜像が黒色現像剤22Bで現像剤像として可視化され、この現像剤像が中間転写ベルト7上に転写される(一次転写)。続いて、現像ユニットC、M及びYによって中間転写ベルト7に現像剤像が転写され、カラー像が形成される。カラー像は中間転写ベルト7の回転によって二次転写部40に至り、二次転写部40に搬送された記録体16上に転写される(二次転写)。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は定着手段30に搬送され、カラー像が永久画像として定着される。二次転写部40を通過した中間転写ベルト7の表面に残存している現像剤は、下流に配置されたクリーニングブレード51によって、除去される。このようにして記録体16にカラー画像が形成される。なお、画像形成装置10を用いてカラー画像を形成する場合について説明したが、モノクロ画像を形成する場合には中間転写ベルト7に一次転写された現像剤像を直ちに記録体16に二次転写して定着手段30に搬送すればよい。
【0095】
この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の別の一例を、図3を参照して、説明する。この画像形成装置50は、中間転写方式のマルチパス型カラー画像形成装置である。この中間転写方式のマルチパス型カラー画像形成装置50は従来公知の画像形成装置と基本的に同様に構成されているが、この発明に係る無端ベルト1が中間転写ベルト7として装着されている。
【0096】
この画像形成装置50は、図3に示されるように、二本の支持ローラ42に巻回されて無限軌道を図3における矢印の方向に走行する中間転写ベルト7と、前記無限軌道の走行方向における二次転写部40の下流側に配置され、中間転写ベルト7の外周面に圧接するクリーニングブレード51とを備えている。無端ベルト1は、中間転写ベルトとして、二本の支持ローラ42、テンションローラ43及び対向ローラ44に張架されている。そして、対向ローラ44の設置位置近傍に、対向ローラ44と二次転写ローラ45と電極ローラ46とを備えて成る二次転写部40が配置されている。
【0097】
図3に示されるように、画像形成装置50は、四種の現像ユニットB、C、M及びYを内蔵した現像手段20を備えている。現像手段20に内蔵された現像ユニットB、C、M及びYは帯電手段、露光手段等を内蔵し、それぞれ、黒色現像剤、シアン現像剤、マゼンタ現像剤及び黄色現像剤を収納している。なお、現像手段20は、現像手段20の外部であって像担持体11の近傍に帯電手段、露光手段等が配置されていてもよい。
【0098】
図3に示されるように、画像形成装置50における記録体16の搬送方向下流には定着手段30が配置されている。定着装置30は画像形成装置10の定着装置30と同様に構成されている。
【0099】
前記クリーニングブレード51は、図3及び図4に示されるように、支持体52と弾性体53と備えており、前記画像形成装置10におけるクリーニングブレード51と基本的に同様である。
【0100】
画像形成装置50は、次にようにして画像を形成する。まず、現像手段20の現像ユニットBによって、像担持体11の表面に静電潜像が黒色現像剤22Bで現像剤像として可視化され、中間転写ベルト7上に転写される(一次転写)。続いて、クリーニングブレード51の中間転写ベルト7への圧接が解除された状態で、像担持体11及び中間転写ベルト7が1回転して、現像ユニットC、M及びYによって中間転写ベルト7に各現像剤像が重畳転写され、カラー像が形成される。カラー像は中間転写ベルト7の回転によって二次転写部40に至り、二次転写部40に搬送された記録体16上に転写される(二次転写)。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は定着手段30に搬送され、カラー像が永久画像として定着される。一方、現像剤像が記録体16上に転写されると、クリーニングブレード51が中間転写ベルト7に圧接され、二次転写部40を通過した中間転写ベルト7の表面に残存している現像剤は、下流に配置されたクリーニングブレード51によって、除去される。このようにして、記録体16にカラー画像が形成される。なお、画像形成装置50を用いてカラー画像を形成する場合について説明したが、モノクロ画像を形成する場合には中間転写ベルト7に一次転写された現像剤像を直ちに記録体16に二次転写して定着手段30に搬送すればよい。
【0101】
この画像形成装置10及び50によれば、中間転写ベルト7として無端ベルト1が装着されているから、一次転写時及び二次転写時における現像剤の離型性に優れ、現像剤を所望のように像担持体11から中間転写ベルト7へ、また、中間転写ベルト7から記録体16へ転写させることができる。また、中間転写ベルト7とクリーニングブレード51との初期の圧接状態を長期間にわたって維持することができる。したがって、これらの画像形成装置によれば、高品質の画像を形成することができる。
【0102】
画像形成装置10及び50は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10及び50は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。画像形成装置1010及び50は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0103】
また、画像形成装置10及び50は、1つのクリーニングブレード51を備えているが、この発明において、画像形成装置は複数のクリーニングブレードを備えていてもよい。
【実施例】
【0104】
(実施例1)
まず、無端ベルト基体2を作製した。反応容器中に、N−メチル−2−ピロリドンと、トリメリット酸無水物と、これと当量のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと、反応原料(トリメリット酸無水及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート)の合計モル数に対して2mol%のフッ化カリウム(触媒)とを加え、撹拌しながら30分間かけて室温から150℃に昇温後、同温度を5時間保持して、反応物濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド樹脂)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。この溶液に、N−メチル−2−ピロリドンをさらに加え、反応物濃度15質量%のポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH4.0、揮発分10.0%)をポリアミドイミド樹脂と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して18質量%の割合で加え、ポットミルで24時間混合分散して、樹脂組成物を調製した。成形に使用する金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさを有し、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。次いで、金型両端の開口部に、リング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して、金型を閉塞し、樹脂組成物を1,000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。次いで、金型を同速度で30分間回転させて金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、フィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、250℃に調節された過熱水蒸気炉で2時間過熱水蒸気処理した後、室温で放冷して、無端ベルト成形体とした。金型ごと無端ベルト成形体を冷却して、金型と無端ベルト成形体との熱膨張率の差により無端ベルト成形体を剥離して、無端ベルト成形体を金型から脱型した。この無端ベルト成形体の両端部をそれぞれ切断し、周長約226mm、幅240mm、厚さ100μmの大きさに切り出し、無端ベルト基体を作製した。
【0105】
固形分30質量%のウレタン溶液(商品名「ニッポラン5120」、日本ポリウレタン工業株式会社製)を用意した。このウレタン溶液に、疎水性シリカ(商品名「TS720」、キャボット社製)を前記ウレタン溶液100質量部に対して1.2質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して4質量部)添加し、室温で10分間攪拌して、ウレタン組成物を調整した。次いで、ドクターブレードコート法で、このウレタン組成物を無端ベルト基体2の外周面に均一に塗布した。ウレタン組成物の塗布量は弾性層3の厚さが(非乾燥状態で)600μmとなる量とした。塗布されたウレタン組成物を150℃で1時間加熱して、無端ベルト基体2の外周面に厚さ200μmの弾性層3を形成した。このようにして実施例1の無端ベルトを製造した。前記疎水性シリカは、非結晶分を10質量%の割合で有する球状であり、コールターカウンター法による平均粒子径は6μmであった。
【0106】
(実施例2)
前記疎水性シリカに代えて親水性シリカ(商品名「AEROSIL200」、日本アエロジル株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の無端ベルトを製造した。前記親水性シリカは、非結晶分を21質量%の割合で有する球状であり、コールターカウンター法による平均粒子径は11μmであった。
(実施例3〜5)
前記疎水性シリカの含有量1.2質量部をそれぞれ、6質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して20質量部)、29質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して96.7質量部)及び2質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して6.7質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3〜5の無端ベルトを製造した。
【0107】
(実施例6)
前記ウレタン溶液に代えてウレタン溶液(固形分30%、商品名「LQ3510」、三洋化成株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の無端ベルトを製造した。
(実施例7)
ウレタン溶液に、フッ素樹脂の粒子(化学名「ポリテトラフルオロエチレン粒子」、商品名「ルブロン L−2」、平均粒子径0.2μm、ダイキン化学工業株式会社製)を、前記ウレタン溶液100質量部に対して10質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して33.3質量部)添加し、室温で10分間攪拌して、ウレタン組成物を調整した。このウレタン組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の無端ベルトを製造した。
【0108】
(比較例1)
前記疎水性シリカを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の無端ベルトを製造した。
(比較例2)
前記疎水性シリカに代えてアルミナ(酸化アルミニウム)系充填材(商品名「YFA−07070」、キンセイマテック株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の無端ベルトを製造した。
(比較例3)
前記疎水性シリカを用いなかった以外は、実施例7と同様にして、比較例3の無端ベルトを製造した。
【0109】
(比較例4)
前記ウレタン溶液に代えてシリコーンゴム組成物(商品名「KEシリーズ」、信越化学工業株式会社製、組成を下記に示す。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の無端ベルトを製造した。
<シリコーンゴム組成物の組成>
・シリコーン生ゴム100質量部
・付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部
・発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル(商品名「KEP−13」、信越化学工業株式会社製)3.0質量部
・付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤適量と、有機過酸化物架橋剤としての「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量
【0110】
(比較例5)
前記ウレタン組成物に代えて塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂100質量部とシリカ100質量部とを含有する樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例5の無端ベルトを製造した。
【0111】
(ウレタン弾性層中のシリカ及びフッ素樹脂)
各無端ベルトのウレタン弾性層を、ガスクロマトグラフィー法によって確認したところ、ウレタン弾性層においてウレタン100質量部に対するシリカ及びフッ素樹脂の含有量は、ウレタン弾性層を形成する各ウレタン組成物に含有させたシリカ及びフッ素樹脂のウレタン調整成分100質量部に対する含有量とほぼ同じ含有量であった。
【0112】
(静摩擦係数の測定)
各無端ベルトにおける弾性層の静摩擦係数を前記測定方法に従って5回測定し、これらの算術平均値を各無端ベルトの静摩擦係数とした。その結果を第1表に示す。
【0113】
(体積抵抗率、表面抵抗率、超微小硬度及びJIS A硬度の測定)
各無端ベルト並びにその無端ベルト基体及びウレタン弾性層における体積抵抗率、表面抵抗率並びに超微小硬度又はJIS A硬度を前記方法により測定し、その結果を第1表に示す。
【0114】
(現像剤の離型性評価)
各無端ベルトを、図2に示される画像形成装置商品名「DocuPrint C830」、富士ゼロックス株式会社製)における中間転写ベルト7として装着し、次いで温度22℃、相対湿度60%の環境下で10,000枚印刷した。その後、各無端ベルトを取り外し、各無端ベルトにおいて、二次転写部40とクリーニングブレード51との間に位置していた弾性層3の表面を目視で観察し、表面に現像剤の付着を確認できなかった場合を「◎」、その表面に現像剤が付着していたが機能上問題の無いほど微量であった場合を「○」、その表面に現像剤が機能上問題が生じるほど付着していた場合を「×」として、第1表に示す。
【0115】
(クリーニングブレードとの圧接状態試験)
各無端ベルトとクリーニングブレードとの圧接状態を静摩擦係数の測定方法と同様にして評価した。すなわち、各無端ベルトの弾性層の表面に前記クリーニングブレードを圧接させた状態で無端ベルトを5時間にわたって走行させ、クリーニングブレードが無端ベルトの走行方向に捲れ返るか否かを評価した。その結果、無端ベルトの走行中にクリーニングブレードが捲れ返ることなく、各無端ベルトとクリーニングブレードとの圧接状態を無端ベルトの走行中維持していた場合を「◎」、無端ベルトの走行中にクリーニングブレードが機能上問題の無い程度に僅かに圧接状態が変化した(捲れ返ることはなかった)場合を「○」、無端ベルトの走行中にクリーニングブレードが捲れ返り、所期の機能を発揮できなかった場合を「×」として、第1表に示す。
【0116】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、この発明に係る無端ベルトの一実施例である無端ベルトを示す概略側面図である。
【図2】図2は、この発明に係る画像形成装置の一例であるタンデム型カラー画像形成装置の概略図である。
【図3】図3は、この発明に係る画像形成装置の一例であるマルチパス型カラー画像形成装置の概略図である。
【図4】図4は、この発明に係る無端ベルトに圧接されるクリーニングブレードの一実施例であるクリーニングブレードを示す図であり、図4(a)はこの発明に係る無端ベルトに圧接されるクリーニングブレードの一実施例であるクリーニングブレードを示す正面図であり、図4(b)はこの発明に係る無端ベルトに圧接されるクリーニングブレードの一実施例であるクリーニングブレード側面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 無端ベルト
2 無端ベルト基体
3 ウレタン弾性層(弾性層)
7 無端ベルト(中間転写ベルト)
10、50 画像形成装置
11、11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14、14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y 像担持体用クリーニングブレード
16 記録体
20、20B、20C、20M、20Y 現像手段
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
30 定着装置
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 定着ベルト支持ローラ
35 無端ベルト(定着ベルト)
40 二次転写部
42 支持ローラ
43 テンションローラ
44 対向ローラ
45 二次転写ローラ
46 電極ローラ
B、C、M、Y 現像ユニット
51 クリーニングブレード
52 支持体
53 弾性体
55 板状部
56 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト基体と、前記無端ベルト基体上に形成されたウレタン弾性層とを備えてなり、前記ウレタン弾性層はシリカを含有していることを特徴とする無端ベルト。
【請求項2】
前記ウレタン弾性層は、フッ素樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
前記ウレタン弾性層は、静摩擦係数が0.7〜1.7の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の無端ベルト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルトと、前記無端ベルトの外表面に圧接するクリーニングブレードとを備えてなる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−85518(P2010−85518A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252116(P2008−252116)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】