説明

無線スケジューリング装置、無線スケジューリング方法および無線装置

【課題】 無線周波数を効率的に利用すると共に、無線区間におけるQoS保証を図る。
【解決手段】 QoS情報、優先度情報および無線区間のアクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出し、フロータグを生成するフロータグ生成・更新部21と、緊急度に基づいて一つのアクセス権が有効となる期間を複数含む長区間においてアクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する長区間選別部23と、無線状態パラメータに基づいて前記選別された候補の中からアクセス権が有効となる期間ごとにアクセス権を割当てる無線フローを選択する短区間選別部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムに係り、特に、無線スケジューリング装置、無線スケジューリング方法および無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の移動体通信ビジネスでは、通信データ量の増大と通信の多様化を実現する通信サービスがユーザから求められつつある。例えば、従来の音声通話やデータ通信(電子メール、Webページの閲覧、小容量のコンテンツのダウンロード)などに加えて、大容量の動画コンテンツをリアルタイムにストリーミング形式で配信したり、マルチキャスト形式で配信することなどが要望されている。従来の移動体通信システムでは、一般的にパケットを用いたデータ通信をサポートするように構成されているが、そのような多種多様な通信の要求に応えるためには、移動体通信システムの広帯域化、大容量化に加えて、通信の種類に応じたQoS(Quality of Service)を保証することが必要となる。また、ユーザやコンテンツの課金状態などから決定される優先度など、コンテンツの種類だけでなくサービスの多様化にも柔軟に対応してゆく必要がある。
【0003】
従来の移動体通信システムにおけるパケット通信では、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリング(以下、無線スケジューリングと称する)を行う際、QoS保証を行わない“Best Effort”や、その派生技術であるプロポーショナルフェアネスアルゴリズムなどに基づいてアクセス権の割当てを行っている(例えば、非特許文献1、2参照)。これらの技術は無線周波数の利用効率の最大化を基本的な設計指針としており、各ユーザの無線伝搬状態に応じて無線フローのスケジューリングを行っている。なお、無線フローとは、無線区間へのアクセスが発生する通信単位のことをいう。
【非特許文献1】V. Bharghavan, S. Lu and T. Nandagopal, “Fair Queueing in Wireless Networks: Issues and Approaches,” IEEE Personal Communications, Feb. 1999.
【非特許文献2】M. Jeong, H. Morikawa and T. Aoyama, “A Fair Scheduling Algorithm for Wireless Packet Networks,” IEICE Trans. On Fundamentals. Vol.84, no.7, pp.1624-1635, July 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の移動通信パケットシステムでは、無線スケジューリング時にQoS保証を行っていないので、上記した通信データ量の増大とコンテンツやサービスの多様化に対して充分に対応することができない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、無線周波数を効率的に利用すると共に、無線区間におけるQoS保証を図ることができる無線スケジューリング装置、無線スケジューリング方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、本発明の無線スケジューリング装置を備えた無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線スケジューリング装置は、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング装置において、無線フローが要求するQoSの情報を有するフロー情報を入力するフロー情報入力手段と、前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する無線状態パラメータ入力手段と、前記アクセス権の割当て状況を記憶する記憶手段と、前記フロー情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する緊急度算出手段と、前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する長区間選別手段と、前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する短区間選別手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る無線スケジューリング装置は、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング装置において、無線フローが要求するQoSの情報を入力するQoS情報入力手段と、無線フローに与えられた優先度情報を入力する優先度情報入力手段と、前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する無線状態パラメータ入力手段と、前記アクセス権の割当て状況を記憶する記憶手段と、前記QoS情報、前記優先度情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する緊急度算出手段と、前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する長区間選別手段と、前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する短区間選別手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る無線スケジューリング装置においては、前記緊急度算出手段は、前記QoS情報に含まれるパケット許容可能最大遅延時間と、前記無線区間へのパケットの送信停止継続期間とに基づき、無線フローのパケットを無線区間に送信しなければならない時点までの残り時間の度合いを算出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無線スケジューリング装置においては、前記長区間選別手段は、前記無線状態パラメータに基づき、前記緊急度算出手段の計算結果に対して重み付けを行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る無線スケジューリング装置においては、前記短区間選別手段は、前記無線伝搬路の状態がよいものから順に無線フローを選択することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る無線装置は、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てて前記無線区間の通信を制御する無線装置において、無線フローごとに、無線フローが要求するQoSの情報を有するフロー情報を取得するフロー情報取得手段と、前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを無線フローに対応する前記無線伝搬路ごとに測定する無線状態測定手段と、前記フロー情報および前記無線状態パラメータを使用して、前記無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う請求項1、3、4、5のいずれかの項に記載の無線スケジューリング装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る無線装置は、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てて前記無線区間の通信を制御する無線装置において、無線フローごとに、無線フローが要求するQoSの情報を取得するQoS情報取得手段と、無線フローごとに、無線フローに与えられた優先度情報を取得する優先度情報取得手段と、前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを無線フローに対応する前記無線伝搬路ごとに測定する無線状態測定手段と、前記QoS情報、前記優先度情報および前記無線状態パラメータを使用して、前記無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う請求項2から5のいずれかの項に記載の無線スケジューリング装置とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る無線スケジューリング方法は、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング方法であって、無線フローが要求するQoSの情報を有するフロー情報を入力する過程と、前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する過程と、前記フロー情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する過程と、前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する過程と、前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する過程と、前記アクセス権の割当て状況を記憶する過程とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る無線スケジューリング方法は、無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング方法であって、無線フローが要求するQoSの情報を入力する過程と、無線フローに与えられた優先度情報を入力する過程と、前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する過程と、前記QoS情報、前記優先度情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する過程と、前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する過程と、前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する過程と、前記アクセス権の割当て状況を記憶する過程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急度や優先度に応じた長区間での無線フローの選別を行い、この選別結果に対してさらに無線伝搬路の状態に応じた短区間での無線フローの選別を行うことにより、無線周波数を効率的に利用すると共に、無線区間におけるQoS保証や優先制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動体通信システムの構成を示すブロック図である。図1において、基地局1は移動端末2との間で無線によりデータを送受信する。基地局1はパケット交換機能を有している。移動端末2は、基地局1を介して通話やパケット通信を行うことができる。
【0018】
図2は、本実施形態に係る基地局(無線装置)1の構成を示すブロック図である。図2に示される基地局1は、時分割複信(TDD;Time Division Duplex)方式であり、送受信に同じ無線周波数を使用して、移動端末1への送信と移動端末2からの受信とを時分割で行う。したがって、基地局1と移動端末2間の無線区間における無線伝搬路は送受信で同じとなる。なお、図2には、TDD方式の基地局における、基地局から移動端末へ送信する際の無線スケジューリングを行う構成を示しており、その他の構成は省略している。
【0019】
図2において、送信バッファ11は、ネットワークから受信したユーザデータのパケットを記憶し、無線区間に送信するパケットを一時的に蓄積するためのものである。送信バッファ11は、無線フローごとにパケットを区別して記憶する。
【0020】
無線フレーム生成部12は、無線区間に送出される無線フレームを生成する。無線フレーム生成部12は、スケジューラ16から指示された無線フローのパケットを送信バッファ11から読み出し、該読み出したパケットを格納した無線フレームを生成して無線部13へ出力する。
【0021】
無線部13は、無線フレーム生成部12から受け取った無線フレームをアンテナ14を介して無線送信する。また、無線部13は、アンテナ14を介して受信した無線信号の受信状態を表す情報をCNR測定部15に出力する。
【0022】
CNR測定部15は、無線部13から受け取った情報に基づき、移動端末2ごとにCNR(Carrier to Noise Ratio)を測定する。図2の基地局1はTDD方式であるので、該測定結果のCNRは無線区間の送受信の双方向に有効である。CNR測定部15は、移動端末2ごとに、瞬間的なCNR(瞬時CNR)と、該瞬時CNRを平均した平均CNRとを測定し、これら測定結果をスケジューラ16に出力する。
【0023】
なお、本実施形態では、無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータとして、CNRを用いている。また、ある移動端末に対して測定されたCNRは、当該移動端末に係る無線フローに対応する無線伝搬路の状態を表すものである。また、マルチキャリアシステムにおいては、CNRの測定はキャリアごとにも行われる必要がある。同様に平均CNRに関しても、キャリアごとの平均CNRや全キャリアの平均CNRを求める必要がある。
【0024】
スケジューラ16は、無線フローごとにフロー情報をネットワークから受信する。フロー情報は、無線フローを特定可能な識別情報と、当該無線フローが要求するQoSの情報(QoS情報)および当該無線フローの優先度情報とを有する。スケジューラ16は、該QoS情報および優先度情報と、CNR測定部15から受け取ったCNR情報(瞬時CNRおよび平均CNR)とに基づいて、無線スケジューリングを行う。そして、そのスケジューリング結果に基づき、無線フレームごとに、パケットを格納する対象の無線フローを、該当する無線フロー識別情報を出力することにより無線フレーム生成部12に指示する。
【0025】
図3は、本実施形態に係るスケジューラ(無線スケジューリング装置)16の構成を示すブロック図である。
図3において、フロータグ生成・更新部21は、フロー情報(QoS情報と優先度情報)およびCNR情報を使用して、無線フローごとにフロータグを生成する。そして、生成したフロータグを該当する無線フロー識別情報に対応付けてフロータグ記憶部22に記憶させる。また、フロータグ記憶部22に記憶されているフロータグの更新を行う。フロータグとは、無線フローに関するスケジューリングに係るパラメータセットのことをいう。
【0026】
フロータグに有されるパラメータには、QoS情報、優先度情報、緊急度、経過フレーム数、瞬時CNR、平均CNRおよび送信フラグが含まれる。
【0027】
上記優先度情報は、ユーザクラスを示すパラメータを有する。ユーザクラスには、通信サービスを提供する際のユーザやコンテンツの課金情報などに基づく優先度に応じて複数の種類のクラスが設けられている。例えば、最高の優先度を有するプレミアムユーザのクラスや標準の優先度を有するノーマルユーザのクラスなどである。
【0028】
上記QoS情報は、当該無線フローが要求するQoSを表すものであり、QoSクラスを示すパラメータと、フローQoSを示すパラメータとを有する。
QoSクラスには、通信アプリケーションの種類に応じて複数の種類のクラスが設けられている。例えば、固定の通信速度が要求される通信アプリケーション用のCBR(固定ビットレート)クラス、リアルタイム性および可変の通信速度が要求される通信アプリケーション用のrt−VBR(リアルタイム可変ビットレート)クラス、リアルタイム性は要求されないが可変の通信速度が要求される通信アプリケーション用のnrt−VBR(非リアルタイム可変ビットレート)クラス、特に通信速度の要求がない通信アプリケーション用のUBR(未指定ビットレート)クラス、最小の通信速度のみが要求される通信アプリケーション用のABR(使用可能ビットレート)クラスなどである。なお、上記したCBR、rt−VBR、nrt−VBR、UBRおよびABRは、ATM(非同期転送モード)フォーラムで規定されている。
【0029】
フローQoSには、送信端末のパケット送信速度、パケットの許容可能な最大遅延時間(パケット許容可能最大遅延時間)、及びパケットの許容可能な損失率(パケット許容可能損失率)が含まれる。
【0030】
上記緊急度は、当該無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表すものである。本実施形態の緊急度(P)は単調増加する関数によって与えられる。緊急度(P)の計算式の一例を(1)式に示す。この値Pが大きい程に、より緊急を要することを表す。
P=1/(待機可能フレーム数−経過フレーム数) ・・・(1)
但し、待機可能フレーム数は、当該無線フローのパケットを無線区間に送信することを停止し続けることが許される最大の期間に相当する無線フレーム数である。具体的には、待機可能フレーム数は、上記したフローQoS内のパケット許容可能最大遅延時間に相当する無線フレーム数として算出される。
また、経過フレーム数は、フロータグ内の一パラメータであって、当該無線フローのパケットに関し、無線区間への前回の送信時点から送信を停止し続けている期間に相当する無線フレーム数である。経過フレーム数は、無線区間のアクセス権の割当て状況を表すパラメータである。
なお、本実施形態の緊急度とは、言い換えれば、当該無線フローのパケットを無線区間に送信しなければならない時点までの残り時間の度合いである。
【0031】
上記送信フラグは、一定の期間(後述する長区間)において無線区間のアクセス権を割当てる無線フローの候補であることを表すフラグである。
【0032】
図3に戻り、フロータグ記憶部22は、無線フロー識別情報およびフロータグを対応付けて記憶する。フロータグ記憶部22は、上記したフロータグ生成・更新部21の他、長区間選別部23および短区間選別部24からアクセス可能である。
【0033】
長区間選別部23は、所定の期間(長区間)ごとに、次の長区間において無線区間のアクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する。この長区間での無線フローの選別は、上記した緊急度、優先度および平均CNRに基づいて行う。長区間選別部23は、該選別した候補のフロータグ内の送信フラグをオンし、この後、長区間選別の終了を短区間選別部24に通知する。
【0034】
なお、上記長区間は、複数の無線フレームを有する期間として予め設定される。また、一無線フレームの期間は、無線区間の一つのアクセス権が有効となる期間である。
【0035】
短区間選別部24は、長区間選別部23から長区間選別の終了の通知を受けると、送信フラグがオンされている無線フローの中から、無線フレーム(短区間)ごとに実際に無線区間のアクセス権を割当てる無線フローを選択する。この短区間での無線フローの選別は、瞬時CNRに基づいて行う。短区間での無線フローの選別結果は、上記図2の無線フレーム生成部12に出力される。これにより、次の長区間内の各無線フレームごとに無線区間のアクセス権を割当てる無線フローが、無線フレーム生成部12に通知される。なお、短区間選別部24において選別される無線フローの数は、本発明が適用されるシステムにおいて同時間に送信可能な無線フローの数により決定される。
【0036】
また、短区間選別部24は、フロータグ生成・更新部21に対して、フロータグの更新を指示する。
【0037】
次に、図4を参照して、上記図3のスケジューラ16に係る動作を説明する。
図4は、図3に示すスケジューラ16の動作フローを示すフローチャートである。
図4において、先ず、各部の初期化を行う(ステップS1)。この初期化において、フロータグ生成・更新部21は、各無線フローのフロータグを生成してフロータグ記憶部22に記憶させる。フロータグ内のQoS情報、優先度情報、瞬時CNRおよび平均CNRには、スケジューラ16に入力された各情報がそのまま設定される。また、経過フレーム数は初期値“0”に設定される。また、送信フラグは初期値“オフ”に設定される。また、緊急度は、上記(1)式により算出された値Pが設定される。
【0038】
次いで、長区間選別部23は、各無線フローのフロータグ内の緊急度、優先度および平均CNRをフロータグ記憶部22から読み出し、読み出した緊急度、優先度および平均CNRに基づいて長区間での無線フローの選別を行う(ステップS2)。具体的には、無線フローを緊急度の高いものから順にランキング付けし、このランキング結果に対して優先度と平均CNRにより重み付けを行う。優先度による重み付けの例としては、プレミアムユーザとノーマルユーザの優先度をそれぞれPrP、PrNとし、その値を積算して再度ランキング付けを行う。平均CNRによる重み付けの例としては、平均CNRが一定の通信速度を確保できる値(例えば所定のCNR値)以上である場合に1を積算し、一方、確保できない場合には0を積算し、再度ランキング付けを行う。そして、そのランキング付けした無線フローの中から、所定数を選択する。この所定数は、長区間に相当する無線フレーム数以上の値である。そして、その選択した無線フローのフロータグ内の送信フラグをオンする書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う。この後、長区間選別の終了を短区間選別部24に通知する。なお、長区間選別部23は、ステップS2の長区間選別処理を長区間ごとに実行する。
【0039】
次いで、短区間選別部24は、変数aを“0”に初期化する(ステップS3)。この変数aは、短区間での無線フローの選別回数を表す。
【0040】
次いで、短区間選別部24は、送信フラグがオンされている無線フローのフロータグ内の瞬時CNRをフロータグ記憶部22から読み出し、読み出した瞬時CNRに基づいて短区間での無線フローの選別を行う(ステップS4)。具体的には、送信フラグがオンされている無線フローの中から、瞬時CNRが最大である無線フローを選択する。そして、この選択した無線フローの識別情報を無線フレーム生成部12へ通知する。これにより、次の長区間内の一無線フレームに無線区間のアクセス権を割当てる一無線フローが、無線フレーム生成部12に通知される。そして、短区間選別部24は、その無線フレーム生成部12に通知した無線フローのフロータグ内の送信フラグをオフする書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う。
なお、マルチキャリアシステムにおいては、上記ステップS4で、各キャリアの瞬時CNRを元に無線フローがキャリアごとに選択される。
【0041】
次いで、短区間選別部24は、フロータグ生成・更新部21に対して短区間タグ更新を指示する。この指示により、フロータグ生成・更新部21は、新たに入力された瞬時CNRを使用して、各無線フローのフロータグ内の瞬時CNRを更新する書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う(ステップS5)。
【0042】
次いで、短区間選別部24は、変数aを1カウントアップする(ステップS6)。次いで、変数aと“長区間/短区間”の値とを比較する(ステップS7)。“長区間/短区間”の値は、一長区間の間に行う短区間選別回数を表すものであり、所定値である。その比較の結果、変数aが“長区間/短区間”の値に満たなければ(ステップS7がYES)、ステップS4に戻り、次の短区間での無線フローの選別を行う。これにより、瞬時CNRの大きいものから順に、短区間選別回数と同じ数の無線フローが選択されて無線フレーム生成部12に通知される。
【0043】
一方、変数aが“長区間/短区間”の値以上ならば(ステップS7がNO)、ステップS8に進み、短区間選別部24は、フロータグ生成・更新部21に対して長区間タグ更新を指示する。この指示により、フロータグ生成・更新部21は、新たに入力された平均CNRおよび瞬時CNRを使用して、各無線フローのフロータグ内の平均CNRおよび瞬時CNRを更新する書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う。さらに、送信フラグがオンのままである無線フローに関し、そのフロータグ内の経過フレーム数に“長区間/短区間”の値を加算して当該経過フレーム数を更新する書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う。さらに、各無線フローの緊急度を上記(1)式により再計算し、この計算結果の値Pにより緊急度を更新する書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う。さらに、各無線フローの送信フラグを全てオフする書き込みをフロータグ記憶部22に対して行う。
【0044】
次いで、無線スケジューリング処理が継続ならば(ステップS9がNO)、ステップS2に戻り、さらに次の長区間での無線フローの選別を行う。一方、無線スケジューリング処理が終了ならば(ステップS9がYES)、図4の処理を終了する。
【0045】
上述したように本実施形態によれば、長区間での無線フローの選別を行い、この選別結果に対してさらに短区間での無線フローの選別を行う二段階選別により、無線スケジューリングを行う。
その長区間での選別では、各無線フローの緊急度に応じて無線フローを選択することにより、無線区間におけるQoS保証を図ることができる。さらには平均CNRに基づいて重み付けを行うことにより、一定の通信速度を確保して無線区間の通信を行うようにするなどの制御を行うことができるので、無線区間の通信スループットを向上させることが可能となる。また、優先度による重み付けにより、課金情報などによるユーザの状態に応じたサービスを提供することが可能となる。
一方、短区間での選別では、瞬時CNRに基づいて無線伝搬路の状態がよいものから順に無線フローを選択することにより、無線周波数の利用効率の最大化を図ることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、緊急度、優先度および平均CNRに基づいて長区間での無線フローの選別を行ったが、緊急度のみに基づいて長区間での無線フローの選別を行ってもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、長区間選別部23が優先度に基づいて緊急度の重み付けを行ったが、フロータグ生成・更新部21が上記(1)式の計算結果に対して予め優先度による重み付けを行うようにしてもよい。
【0048】
なお、上述した実施形態では、図2にTDD方式の基地局における、基地局から移動端末へ送信する際の無線スケジューリングを行う構成を示したが、周波数分割複信(FDD;Frequency Division Duplex)方式の基地局にも同様に適用可能である。FDD方式の場合には、送受信で異なる無線周波数を使用するので、基地局と移動端末間の無線区間における無線伝搬路は送受信で異なる。したがって、基地局から移動端末へ送信する際の無線スケジューリングには、移動端末が受信した無線信号に基づいて測定したCNR情報(平均CNRおよび瞬時CNR)が必要となる。このため、移動端末が測定したCNR情報を取得する手段をFDD方式の基地局に設けることにより、FDD方式の基地局において基地局から移動端末へ送信する際の無線スケジューリングを行うことができる。
【0049】
また、移動端末から基地局へ送信する際の無線スケジューリングを行う場合にも、本実施形態に係るスケジューラを同様に適用することができる。図5は、本実施形態に係る基地局(無線装置)1において、移動端末から基地局へ送信する際の無線スケジューリングを行う構成を示すブロック図である。この図5において図2の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0050】
移動端末から基地局へ送信する際の無線スケジューリングには、基地局が受信した無線信号に基づいて測定したCNR情報(平均CNRおよび瞬時CNR)を使用する。このことから図5の構成はTDDおよびFDDの双方の方式に共通である。
【0051】
図5では、フロー仮想部31が設けられている。
図5において、フロー仮想部31には、受信部13aにより移動端末から受信したフロー送信要求とネットワークからの優先度情報とが入力される。フロー送信要求は、移動端末が無線区間を介して行う通信のQoS情報を有する。フロー仮想部31は、該フロー送信要求とネットワークからの優先度情報とに基づいて、当該無線フローのフロー情報を生成する。このフロー情報はスケジューラ16に出力される。
【0052】
CNR測定部15は、受信部13aによりアンテナ14を介して受信した無線信号に基づき、CNR情報(平均CNRおよび瞬時CNR)を測定する。このCNR情報はスケジューラ16に出力される。
【0053】
スケジューラ16は、入力されたフロー情報およびCNR情報を使用して、上記図4の無線スケジューリング処理を実行する。この無線スケジューリング処理により選択した無線フローに対応する移動端末に対して、フロー送信要求に対する応答を送信部13bによりアンテナ14を介して送信する。
【0054】
これにより、フロー送信要求に対する応答を受信した移動端末は、無線区間のアクセス権を得て無線送信することができる。さらに、そのアクセス権は、QoS保証および無線周波数の効率的使用を図ることができるように割当てられる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータとして、CNRを測定して無線スケジューリングに使用したが、他の種類のパラメータ(例えば受信強度)を測定して無線スケジューリングに使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動体通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基地局(無線装置)1の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスケジューラ(無線スケジューリング装置)16の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すスケジューラ16の動作フローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る基地局(無線装置)1の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1…基地局(無線装置)、2…移動端末、11…送信バッファ、12…無線フレーム生成部、13…無線部、13a…受信部、13b…送信部、14…アンテナ、15…CNR測定部、16…スケジューラ(無線スケジューリング装置)、21…フロータグ生成・更新部、22…フロータグ記憶部、23…長区間選別部、24…短区間選別部、31…フロー仮想部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング装置において、
無線フローが要求するQoSの情報を有するフロー情報を入力するフロー情報入力手段と、
前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する無線状態パラメータ入力手段と、
前記アクセス権の割当て状況を記憶する記憶手段と、
前記フロー情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する緊急度算出手段と、
前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する長区間選別手段と、
前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する短区間選別手段と、
を備えたことを特徴とする無線スケジューリング装置。
【請求項2】
無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング装置において、
無線フローが要求するQoSの情報を入力するQoS情報入力手段と、
無線フローに与えられた優先度情報を入力する優先度情報入力手段と、
前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する無線状態パラメータ入力手段と、
前記アクセス権の割当て状況を記憶する記憶手段と、
前記QoS情報、前記優先度情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する緊急度算出手段と、
前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する長区間選別手段と、
前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する短区間選別手段と、
を備えたことを特徴とする無線スケジューリング装置。
【請求項3】
前記緊急度算出手段は、前記QoS情報に含まれるパケット許容可能最大遅延時間と、前記無線区間へのパケットの送信停止継続期間とに基づき、無線フローのパケットを無線区間に送信しなければならない時点までの残り時間の度合いを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線スケジューリング装置。
【請求項4】
前記長区間選別手段は、前記無線状態パラメータに基づき、前記緊急度算出手段の計算結果に対して重み付けを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線スケジューリング装置。
【請求項5】
前記短区間選別手段は、前記無線伝搬路の状態がよいものから順に無線フローを選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線スケジューリング装置。
【請求項6】
無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てて前記無線区間の通信を制御する無線装置において、
無線フローごとに、無線フローが要求するQoSの情報を有するフロー情報を取得するフロー情報取得手段と、
前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを無線フローに対応する前記無線伝搬路ごとに測定する無線状態測定手段と、
前記フロー情報および前記無線状態パラメータを使用して、前記無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う請求項1、3、4、5のいずれかの項に記載の無線スケジューリング装置と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項7】
無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てて前記無線区間の通信を制御する無線装置において、
無線フローごとに、無線フローが要求するQoSの情報を取得するQoS情報取得手段と、
無線フローごとに、無線フローに与えられた優先度情報を取得する優先度情報取得手段と、
前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを無線フローに対応する前記無線伝搬路ごとに測定する無線状態測定手段と、
前記QoS情報、前記優先度情報および前記無線状態パラメータを使用して、前記無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う請求項2から5のいずれかの項に記載の無線スケジューリング装置と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項8】
無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング方法であって、
無線フローが要求するQoSの情報を有するフロー情報を入力する過程と、
前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する過程と、
前記フロー情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する過程と、
前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する過程と、
前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する過程と、
前記アクセス権の割当て状況を記憶する過程と、
を含むことを特徴とする無線スケジューリング方法。
【請求項9】
無線区間のアクセス権を無線フロー別に割当てるスケジューリングを行う無線スケジューリング方法であって、
無線フローが要求するQoSの情報を入力する過程と、
無線フローに与えられた優先度情報を入力する過程と、
前記無線区間における無線伝搬路の状態を表す無線状態パラメータを入力する過程と、
前記QoS情報、前記優先度情報および前記アクセス権の割当て状況に基づき、無線フローが無線区間にアクセスするための権利を取得する際の緊急の度合いを表す緊急度を算出する過程と、
前記緊急度に基づいて、一つの前記アクセス権が有効となる期間を複数含む長区間において前記アクセス権を割当てる無線フローの候補を選別する過程と、
前記無線状態パラメータに基づいて、前記選別された候補の中から、前記アクセス権が有効となる期間ごとに、前記アクセス権を割当てる無線フローを選択する過程と、
前記アクセス権の割当て状況を記憶する過程と、
を含むことを特徴とする無線スケジューリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−157797(P2006−157797A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348615(P2004−348615)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】