説明

無線タグ及び無線タグが取り付けられた物品並びに無線タグが取り付けられたカード並びに無線タグ用の通信システム

【課題】小型化し、セキュリティを確保し易い無線タグを提供する。
【解決手段】無線タグ1は、誘電体からなる基板2を放射電極3と接地導体4とで挟み込んだアンテナ5を有し、放射電極3側に集積回路6が取り付けられている。放射電極3で通信に寄与する開放端31間の長さLbに対して、接地導体4の長さLcは、アンテナとしての利得が0dBi以下となる長さになっている。このため、無線タグ1単体では、アンテナ5の感度が低く実用的な無線通信ができないが、導体と協働させることで必要な無線通信が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に取り付けて用いられ、対象物に関連する情報を無線通信可能な無線タグ、無線タグが取り付けられた物品、無線タグが取り付けられたカード、無線タグ用の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線タグは、物品に取り付けて用いられ、情報を格納する集積回路と、無線通信のためのアンテナとを有し、非接触で集積回路から情報を読み出したり、集積回路の情報を更新したりできるように構成されている。このため、無線タグを用いると、製造工程における生産管理や、物流における商品管理などを行うことができる。ここで、無線タグが取り付けられる物品には、金属や水分を含むものなどのように、それ自体が電波に影響を与えるものがある。
このような金属などに取り付けて使用する場合には、無線タグのアンテナが物品の影響を受けないように、片面指向性を有するマイクロストリップアンテナ(パッチアンテナとも呼ばれる)を使用することが知られている。従来のマイクロストリップアンテナには、理想的には無限遠となる地板の上に誘電体の基板を設け、基板上に銅箔からなる放射用のアンテナ部を形成したものがある。基板は、共振周波数5.8GHz帯において比誘電率が2〜4の誘電体で、厚さは1〜4mmに形成されている。地板は、その面積がアンテナ部の面積以下で、かつ20×21.82mmに設定されている。アンテナ部は、物品である車体に設けられた他の基板から7mm離間して配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−31725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、放射電極(アンテナ部)で電波の送受信に直接寄与する開放端の長さは、通信用の電波の波長λの1/4にすると効率が良いことが知れている。さらに、片面指向性を得るためには、接地面(地板)の前記開放端に直交する方向の長さを、放射電極の幅にλ/10を加えた幅より大きくする必要があった。このため、従来のマイクロストリップアンテナは、小型化することが困難であった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マイクロストリップアンテナを小型化した無線タグや、そのような無線タグに好適な周辺機器を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、電波を送受信可能な一対の開放端を有する平面状の放射電極と、前記放射電極が一方の面に設けられた誘電体と、前記誘電体の一方の面の反対側の他方の面に設けられた平面状の接地導体と、前記放射電極の中心からオフセットした位置に配置され、前記放射電極と前記接地導体のそれぞれに電気的に接続される集積回路と、を有し、前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが0より大きく、かつアンテナとしての利得が0dBi以下となる長さであることを特徴とする無線タグとした。
この無線タグでは、接地導体がアンテナとしての利得が0dBi以下になるような大きさなので、限られた環境で無線通信が可能になる。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の無線タグにおいて、前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが前記開放端間の長さより大きく、かつ前記開放端間の長さに通信用の電波の実効波長の1/20を加えた長さ以下であることを特徴とする。
この無線タグでは、接地導体の大きさが従来の構成に比べて小さくなっており、無線タグ全体としての大きさが小さくなっている。
【0006】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の無線タグにおいて、前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが、0よりも大きく、前記開放端間の長さより小さいことを特徴とする。
この無線タグでは、接地導体が放射電極より小さいので単体ではアンテナとして使用できないが、特定の環境では無線通信が可能になる。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の無線タグにおいて、前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが前記開放端間の長さに略等しいことを特徴とする。
この無線タグは、接地導体と放射電極を略等しい大きさにすることで、無線タグ単独で動作可能な最小サイズのものとなる。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグと、前記無線タグの前記接地導体側が固定される導体とを有し、前記導体は、前記開放端に直交する方向の長さが、前記無線タグを取り付けたときに前記無線タグのアンテナとしての利得が2dBi以上となる長さであることを特徴とする無線タグが取り付けられた物品とした。
この無線タグが取り付けられた物品は、物品が有する導体部分を利用することで単体では無線通信が難しい無線タグであっても無線通信が可能になる。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の無線タグが取り付けられた物品において、前記導体は、前記開放端に直交する方向の長さが、前記開放端間の長さより通信用の電波の実効波長の1/10以上長いことを特徴とする。
この物品では、接地導体の大きさが従来の構成に比べて小さい無線タグを使用することで、無線タグの取り付け位置が省スペース化される。さらに、取り付け位置のレイアウトの自由度が高まる。
【0010】
請求項7に係る発明は、請求項4又は請求項5に記載の無線タグが取り付けられた物品において、前記無線タグの前記接地導体と前記導体とを接着する接着層を有し、前記接着層の厚さは0mmより大きく5mm以下であることを特徴とする。
この無線タグが取り付けられた物品は、接着層を薄くすることで物品側の導体と無線タグが協働し易くなり、アンテナとしての利得を向上させる。
【0011】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の無線タグが取り付けられた物品において、前記接着層は、前記無線タグと導体とを着脱可能に接着する接着剤又は両面テープからなることを特徴とする。
この無線タグが取り付けられた物品は、必要に応じて無線タグを物品から取り外したり、再度付けたりできる。
【0012】
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグと、前記無線タグの前記接地電極側が固定されるカード本体と、を有し、前記カード本体で前記無線タグが固定される部分が誘電体からなり、その厚さが0mmより大きく5mm以下であることを特徴とする無線タグが取り付けられたカードとした。
この無線タグが取り付けられたカードは、単独では無線タグによる通信が難しいので、情報がスキミングされたり、改ざんされたりすることを防止できる。情報のやり取りが必要なときは無線タグが通信可能になるような環境下で使用する。
【0013】
請求項10に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグとの間で無線通信をするために用いられ、前記無線タグの前記接地導体側に近接して配置され、前記開放端に直交する方向における長さが、前記無線タグを取り付けたときに前記無線タグのアンテナとしての利得が2dBi以上となる長さの導体と、前記導体に近接配置した前記無線タグとの間で通信するアンテナ及び通信するデータを処理する制御部を有するリーダライタと、を有することを特徴とする無線タグ用の通信システムとした。
この無線タグ用の通信システムは、無線タグを単独では通信が難しい状態から、通信が可能な状態にする手段として導体を使用し、導体と無線タグの位置関係で通信の可否を制御する。
【0014】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載の無線タグ用の通信システムにおいて、前記導体の長さは、前記開放端に直交する方向における前記開放端間の長さより通信用の電波の実効波長の1/10以上長いことを特徴とする。
この無線タグ用の通信システムは、小型の無線タグを使用して無線通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線タグの接地導体を小さくすることで従来の比べて無線タグを小型化することができる。無線タグを使用する環境によっては、通信が難しくなるが、これを利用すればセキュリティ管理を確実に、かつ容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、無線タグ1は、誘電体からなる基板2を挟むように放射電極(導体パッチ)3及び接地導体4が設けられたアンテナ5と、放射電極3と接地導体4とに接続される集積回路6とを有する。図2において集積回路6は、放射電極3上に配置されている。このような無線タグ1は、RFID(Radio Frequency Identification)タグや、IC(Integrated Circuit)タグと呼ばれることもある。
【0017】
放射電極3は、基板2の一方の面2Aに貼り付けられた略矩形で平面状の導電体からなる。放射電極3の中心を通って、放射電極3の辺に平行な軸線C1上で、中心から所定距離だけオフセットした位置には、集積回路6が取り付けられている。基板2には、集積回路6の配置位置に合わせてスルーホール7が形成されている。スルーホール7は、放射電極3が形成された一方の面2Aから、反対側の他方の面2Bに貫通しており、内部が導体層になっている。スルーホール7の周囲には、放射電極3が取り除かれた除去部8になっており、放射電極3と接地導体4とが直接導通しないようになっている。接地導体4は、スルーホール7を介して集積回路6に接続されている。放射電極3も集積回路6に接続されている。つまり、この無線タグ1は、放射電極3及び接地導体4に対する接続点9A,9b(集積回路6の給電位置)が放射電極3の中心からオフセットした位置で、かつ軸線C1上に設定されている。
【0018】
放射電極3において軸線C1に平行な一対の辺は、電波の送受信に寄与する開放端31であり、その長さLaは通信用の電波の実効波長λの1/4になっている。軸線C1に直交する一対の辺32の長さLbは、開放端31と略同じ長さになっているが通信に直接影響を与えないので、開放端31より短くても良い。辺32を短くすれば、無線タグ1をさらに小型化できる。
【0019】
基板2は、ガラスエポキシや、セラミックスなどの誘電体から製造されている。基板2の外形は、放射電極3よりも大きい。軸線C1に直交する一対の辺22の長さLcは、放射電極3の辺32の長さLbの両端にそれぞれλ/20ずつ加えた大きさ以上になっている。すなわち、放射電極3の開放端31から基板2の辺21に至るまでの距離(差Db)は、両側共にλ/20である。
接地導体4は、基板2の他方の面2Bの略全面を覆っている。このため、軸線C1に直交する方向で接地導体4は放射電極3よりも片側λ/20ずつ長い。
【0020】
ここで、無線タグ1は、単独ではアンテナ5の感度が実用レベルよりも低くなるように構成されている。このような観点から、差Dbは、0以上λ/20以下であることが好ましい。このことを図3を参照して説明する。
図3は、2.45GHz帯における差Db(mm)とアンテナの利得の計算結果を示している。ラインL1は、基板2にFR4と呼ばれるガラスエポキシ材(誘電率4.4、厚さ1.6mmt)を使用した場合について計算した結果を示している。ラインL2は、基板2にBTと呼ばれる高周波向けの基板(誘電率4.7、厚さ1.6mmt)を使用した場合について計算した結果を示している。
ラインL1では、接地導体4の幅から放射導体3の幅を引いた差分P2(mm)でアンテナとしての利得が0dBiになっており、差分P4でアンテナとしての利得が2dBiになっている。差分P2は、λ/20に相当し、例えば6mmである。差分P4は、λ/10に相当し、例えば12mmである。
また、ラインL2では、接地導体4の幅から放射導体3の幅を引いた差分P1(mm)でアンテナとしての利得が0dBiになっており、差分P3でアンテナとしての利得が2dBiになっている。
【0021】
従来のアンテナは、一般的に実用可能なアンテナの利得である2dBiを超える領域(ラインL1において差分P4より右側、ラインL2において差分P3より右側)で使用されていたが、この実施の形態では、ラインL1においては差分P4以下の領域、ラインL2においては差分P3以下の領域で使用される。
例えば、ラインL1に示すような基板2の場合、λ/10(=約12mm)よりも差分が小さいと、一般的に実用可能な従来のアンテナの利得である約2dBiを下回るが、後述する使用方法によって必要な利得を確保することができる。さらに、λ/20以下になると利得が0dBi以下となって限られた環境下でしか動作しなくなるが、後述するセキュリティ保持の観点からは好適である。そして、差Dbが0mmを下回ると、無線タグ1単独では動作しないのでセキュリティ性はさらに高くなる。
【0022】
次に、図4に無線タグ1のリーダライタ51を示す。リーダライタ51は、無線タグ1と通信を行うためのアンテナ52と、アンテナ52が接続される本体部53とを有する。本体部53は、データを保有するメモリ55と、CPU(中央演算装置)を有する制御部56と、制御部56で作成したデータを無線通信に適した信号に変調する変調部57と、変調した信号を増幅してアンテナ52から放射させる送信アンプ58と、アンテナ52で受信した電波信号を増幅する受信アンプ59と、増幅された電波信号からデータを復調して制御部56に受け渡す復調部60とを有する。
【0023】
図5に無線タグ1の使用形態を示す。無線タグ1は、管理対象となる物品61が有する導体62に取り付けて使用される。接地導体4は、接着層65を介して導体62に固定されている。接着層65としては、接着剤や、両面テープが用いられ、必要に応じて無線タグ1を物品61から取り外すことができる程度の強度を有する。無線タグ1を回収する必要などがない場合には、取り外し不能な接着層65を形成しても良い。
接着層65は、薄いことが好ましいが、5mm程度の厚さを有しても良い。導体62の厚さは任意であり、無線タグ1の軸線C1に直交する方向の長さLdが放射電極3の一対の開放端31より片側がλ/10以上ずつ大きい。導体62は、物品61の全体又は一部の構成要素そのものでも良いし、物品61に貼り付けられた金属製のシートであっても良い。なお、無線タグ1を貼り付ける対象物となる物品61は、金属製で内部に飲料や加工物などが収容される金属製の缶や、内容物を紙やプラスチックで梱包する容器で、外面の一部に導体62を貼り付けたものなどがあげられる。
【0024】
ここで、接着層65に相当する接地導体4と物品の導体62との間の距離と、アンテナとしての利得の関係を計算した結果を図6に示す。ラインL3は、基板2にFR4と呼ばれるガラスエポキシ材(誘電率4.4、厚さ1.6mmt)を使用した場合について計算した結果を示している。ラインL4は、基板2にBTと呼ばれる高周波向けの基板(誘電率4.7、厚さ1.6mmt)を使用した場合について計算した結果を示している。
ラインL3では、距離P5(mm)でアンテナとしての利得が2dBiになっており、距離P6でアンテナとしての利得が0dBiになっている。距離P5は例えば6mmであり、距離P6は例えば9mmである。ラインL3に示すような場合、5mm以下であれば、アンテナとしての利得が2dBiとなって、物品61に貼り付けた場合にアンテナとして十分に機能させることができる。
また、ラインL4では、距離P7(mm)でアンテナとしての利得が2dBiになっており、距離P8でアンテナとしての利得が0dBiになっている。ラインL4に示すような場合、距離P7以下であれば、アンテナとしての利得が2dBiとなって、物品61に貼り付けた場合にアンテナとして十分に機能させることができる。
【0025】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
まず、無線タグ1を製造するときは、誘電体からなる基板2の両面2A,2Bに銅箔を貼り付けた銅貼積層板にドリル等でスルーホール7を形成する。スルーホール7には、無電解メッキをしてから銅メッキし、スルーホール7に導体層を形成する。その後、一方の面2Aに放射電極3のパターンと除去部8のパターンを公知の露光技術でパターニングし、余分な銅箔をケミカルエッチングする。これによって放射電極3の接続点9Aや、スルーホール7の周囲の接続点9Bが形成されるので、ここに集積回路6を半田等によって接合する。
【0026】
この無線タグ1は、放射電極3と接地導体4の大きさの差Dbが小さいので、電波は放射電極3の積層方向で図4に矢印Y1に示す方向だけでなく、接地導体4の積層方向である矢印Y2に示す方向にも僅かではあるが発振する。その結果、無線タグ1単独ではアンテナ5の指向性が低く、無線通信に必要な電波強度が得られない。したがって、従来の無線タグで無線通信できる距離であってもリーダライタ51との間で実用的な通信、つまり情報の読み書きを行うことができない。
これに対して、図5に示すように、物品61に取り付けた状態では、導体62が接地導体4と協働し、あたかも接地導体のように機能するので、矢印Y3に示すような片面指向性を有する放射特性を持つようになる。これによって、無線通信に十分な電波強度又は受信特性が得られるようになる。したがって、従来の無線タグと同様にリーダライタ51で集積回路6に記憶されている情報を読み出したり、リーダライタ51の情報を集積回路6に格納させたりできる。
【0027】
ここで、無線タグ1が不要になった場合には、無線タグ1を物品61から剥がす。物品61の導体62から離れた状態、即ち図4に示す状態では無線タグ1が再び通信不能状態になるので、無線タグ1の情報を読み取ることができなくなる。例えば、物品61が飲料入りの缶である場合、製造段階や流通段階では無線タグ1で商品情報や生産管理や物流の情報を管理し、缶を客に販売したときに無線タグ1を剥がせば、商品情報や生産管理や物流の情報が第三者に流出することを防止できる。
なお、無線タグ1を導体に再び貼り付ければ、無線通信が可能になるので、無線タグ1を再利用することもできる。このときの導体は、物品61の導体62でも良いし、他の導体でも良い。
【0028】
さらに、図7を参照して、多数の無線タグ1を検査したり、初期情報を書き込んだりする際の通信システム70について説明する。通信システム70は、無線タグ1を搬送するコンベア装置71を有する。コンベア装置71のベルト72上には、多数の無線タグ1が等間隔に一列に載置される。ベルト72は、厚さが5mm程度以内の絶縁性の材料から製造されており、ベース73上を移動するように配置されている。ベース73には、一箇所だけ導体のプレート74が嵌め込まれており、その他の領域は絶縁材料から製造されている。プレート74の長さLeは、1つの無線タグ1を中央に配置したときに、一対の開放端31の長さLb(図1参照)よりも片側がλ/10以上ずつ大きい。この通信システム70では、無線タグ1の搬送方向Xに平行な方向が長さLeに設定されているが、無線タグ1を90°回転させて配置するときには、搬送方向Xに直交する方向の長さがLeになる。
さらに、通信システム70は、リーダライタ51が、プレート74に配置された無線タグ1aが通信可能なエリアに入るように配置されている。なお、無線タグ1の配置間隔は、プレート74の中央に1つの無線タグ1aが位置するときに、その両隣りの無線タグ1b,1cがプレート74と協働せずに、リーダライタ51と通信不能な状態を保つような配置間隔である。
【0029】
検査や初期情報の書き込みを行う場合には、コンベア装置71を駆動させて、無線タグ1を1つずつ順番にプレート74上に搬送する。プレート74から離れている無線タグ1(例えば、無線タグ1b,1c)のアンテナ5の利得は低く、リーダライタ51との通信ができないのに対して、プレート74上の無線タグ1aはプレート74と協働することでアンテナ5の利得が高くなってリーダライタ51との通信が行われる。リーダライタ51による動作チェックや必要な情報の書き込みを行い、その後その無線タグ1をプレート74上から移動させる。プレート74から離れることでアンテナ5の利得が下がってリーダライタ51との間で実用的な通信が不能になる。これによって、1つの無線タグ1に対してリーダライタ51が重複して検査したり、情報の2重に書き込んだりすることはない。そして、新たにプレート74上に配置された無線タグ1にリーダライタ51による検査や情報の書き込みが行われる。なお、プレート74が大きくて、かつ無線タグ1間の距離が十分に離れている場合には、ベルト72を停止させることなく検査や書き込みを実施できる。
【0030】
このようにすると、常に1つの無線タグ1だけが通信可能な状態になるので多数の無線タグ1を互いに干渉することなく順番に処理することが可能になる。電波を吸収する部材で他の無線タグ1を覆うなどの対策が不要になり、工場の生産ラインで多数の無線タグ1を取り扱う場合などに有効である。なお、無線タグ1を移動させる代わりに、プレート74を移動させる構成であっても良い。
【0031】
次に、無線タグの他の使用形態及び通信システムについて図8を参照して説明する。無線タグ1が取り付けられる対象物(物品)は、個人認証カードなどの非接触式のICカード81である。ICカード81のカード本体82は、絶縁材料から製造されており、無線タグ1の接地導体4が取り付けられる固定部83が凹設されている。固定部83は、放射電極3の開放端31間の長さLbよりも両側にそれぞれλ/10以上大きい。さらに、固定部83の厚さは0〜5mmになっている。接地導体4を取り付ける接着層には、無線タグ1が取り外し不能なものを用いることが好ましい。なお、カード本体82が薄い場合には、固定部83を凹形状に形成しなくても良い。また、無線タグ1をカード本体82に挟み込んでも良い。無線タグ1の誘電体21がカードの基材となっても良い。この場合、接地導体4がカード裏面に露出しても良い。さらに、カード本体82の一部(固定部83から離れ、無線タグ1の機能に影響しない部分)に導体を使用しても良い。
【0032】
無線タグ1は、接地導体4が小さいために、アンテナ5の利得が低く、ICカード81単体で取り扱う場合には、従来の無線タグで通信可能な距離であっても、リーダライタ51との間で実用的な通信を行うことができない。したがって、ICカード81と通信をするときには、通信システム85を使用する。この通信システム85は、リーダライタ51と、リーダライタ51の通信可能範囲内に配置される導体86とからなる。導体86は、ICカード81を載せられる大きさであり、無線タグ1に比べて十分に大きい。導体86にICカード81を無線タグ1の接地導体4側を向けて載せると、無線タグ1と導体86が協働してアンテナ5の利得が高くなり、リーダライタ51との無線通信が可能になる。
【0033】
このようにすると、ICカード81を保管したり、持ち運んだりするときには接地導体4側が導体に接しないようにすれば、外部のリーダライタで無線タグ1の情報を読んだり、情報を書き込んだりすることができなくなる。したがって、持ち主が意図しない状況下で情報がスキミングされたり、改ざんされたりすることを防止できる。具体的には、ICカード81をカバンにしまっている場合のみならず、財布やポケットなどに入れている状態でも実用的な通信を行えないようになる。
また、情報の読み書きが必要な場合には、金属板などの導体86上におくだけで無線通信が可能になるので、通信制御を容易に行える。したがって、無線タグ1を使用する上でセキュリティを向上できる。また、電波を吸収する通信妨害部材を別途設け、使用時以外に無線タグ1を通信妨害部材で覆うなどの対策が不要になる。
【0034】
このように、本実施の形態の無線タグ1は、アンテナとしての利得が0dBi以下(具体例として接地導体4が放射電極3の開放端31間の長さプラス0〜λ/20)になるように構成したので、アンテナ5単体では実用に十分な利得は得られないが、接地導体4側に面積が大きい導体を配置することでアンテナ5の利得を高めて通信を行わせることが可能になる。このようにすることで、無線タグ1の外形を小さくしつつ、必要なアンテナの感度を確保することができる。また、使用時に接地導体4を剥がす必要がないので取り扱いが容易である。
また、物品61の導体62は、無線タグ1を取り付けたときに無線タグ1のアンテナとしての利得が2dBi以上になるように形成されているので、無線タグ1単体では十分な特性が得難い場合でも、導体62に貼り付けて使用することで通信が可能になる。
【0035】
なお、図9に示す無線タグ1dのように、放射電極3と接地導体4、並びに基板2の長さがLbで略一致する構成にすると、無線タグ1dを最も小型化できる。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図10及び図11に示すように、無線タグ91は、誘電体からなる基板92の一方の面92Aに放射電極3を設け、他方の面92Bに接地導体94を設けたアンテナ用積層体95と、放射電極3側に取り付けられた集積回路6とを有する。接地導体94は、軸線C1に直交する方向の長さLfが放射電極3の開放端31間の長さLbより小さい。この無線タグ91では、アンテナ用積層体95は、単体ではアンテナとしては機能することはできない。
【0037】
無線タグ91は、図5に例示するような物品61の導体62に取り付けて使用される。導体62は、無線タグ91を取り付けたときに、開放端31(アンテナ用積層体95)から導体62の周縁までの長さがλ/20より大きくなるサイズが使用される。物品61の導体62に取り付けられるまでは無線タグ91は、リーダライタ51との間で通信することができない。導体62に取り付けられることで無線通信が可能になる。
【0038】
検査や初期情報の書き込みを行う場合には、図7に例示するような通信システム70のコンベア装置71で多数の無線タグ91を搬送しながら行う。無線タグ91のアンテナ用積層体95は、導体からなるプレート74上に配置されたときに初めて電波を送受信可能になり、その他の位置では電波を送受信できない。このため、目的とする無線タグ91以外に情報を書き込んだりすることがなく、無線タグ91同士が干渉することもない。
【0039】
また、図8に例示するような個人認証カードなどのICカード81として使用する場合、ICカード81単体ではアンテナ用積層体95がアンテナとして機能しないので、リーダライタ51を接近させても通信を行うことはできず、セキュリティ性が高い。通信システム85のように導体86上にアンテナ用積層体95の接地導体94を向けてICカード81を配置したときに、アンテナ用積層体95と導体86とが協働して実用可能なアンテナとなって、通信を行うことが可能になる。
【0040】
この実施の形態によれば、接地導体94が放射電極3の開放端31間の長さよりも小さく、接地導体94側に面積が大きい導体を配置することでアンテナとして機能するようになる。このため、無線タグ91の外形を小さくしつつ、意図しない通信をさらに確実に防止することができる。
また、物品61の導体62は、無線タグ91を取り付けたときに無線タグ91のアンテナとしての利得が2dBi以上になるように形成されているので、無線タグ91単体では十分な特性が得難い場合でも、導体62に貼り付けて使用することで通信が可能になる。
【0041】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されずに広く応用することができる。無線タグ1,91の製造方法や、使用する材料は、実施の形態に限定されない。また、無線タグ1,91を取り付ける物品は、他の形状や用途に用いる物品でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線タグの構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す無線タグの側面図である。
【図3】放射電極と接地導体の長さの差とアンテナとしての利得の関係を計算したグラフである。
【図4】リーダライタの構成を示すと共に、リーダライタが無線タグ単体とは通信ができないことを説明する図である。
【図5】無線タグを取り付ける物品の一例を示すと共に、物品に取り付けた無線タグとリーダライタが通信可能であることを説明する図である。
【図6】接地導体と物品の導体との間の距離とアンテナとしての利得の関係を計算したグラフである。
【図7】無線タグの検査工程の一例を示すと共に、プレート上にある無線タグのみがリーダライタと通信可能であることを説明する図である。
【図8】無線タグを取り付けたICカードの一例を示すと共に、ICカードをプレート上に置いたときだけリーダライタと通信可能であることを説明する図である。
【図9】放射電極と接地電極の長さが略等しい無線タグの構成を示す側面図である。
【図10】放射電極より接地電極が小さい無線タグの構成を示す平面図である。
【図11】図10に示す無線タグの側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1d,91 無線タグ
2,92 基板
3 放射電極
4,94 接地電極
6 集積回路
31 開放端
51 リーダライタ
52 アンテナ
53 制御部
61 物品
62,74,86 導体
70 通信システム
81 ICカード
83 固定部
C1 軸線
Lb 長さ(開放端間の長さ)
Lc,Lf 長さ(接地導体の長さ)
Ld,Le 長さ(導体の長さ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信可能な一対の開放端を有する平面状の放射電極と、
前記放射電極が一方の面に設けられた誘電体と、
前記誘電体の一方の面の反対側の他方の面に設けられた平面状の接地導体と、
前記放射電極の中心からオフセットした位置に配置され、前記放射電極と前記接地導体のそれぞれに電気的に接続される集積回路と、
を有し、前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが0より大きく、かつアンテナとしての利得が0dBi以下となる長さであることを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが前記開放端間の長さより大きく、かつ前記開放端間の長さに通信用の電波の実効波長の1/20を加えた長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の無線タグ。
【請求項3】
前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが、0よりも大きく、前記開放端間の長さより小さいことを特徴とする請求項1に記載の無線タグ。
【請求項4】
前記接地導体は、前記開放端に直交する方向の長さが前記開放端間の長さに略等しいことを特徴とする請求項1に記載の無線タグ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグと、前記無線タグの前記接地導体側が固定される導体とを有し、前記導体は、前記開放端に直交する方向の長さが、前記無線タグを取り付けたときに前記無線タグのアンテナとしての利得が2dBi以上となる長さであることを特徴とする無線タグが取り付けられた物品。
【請求項6】
前記導体は、前記開放端に直交する方向の長さが、前記開放端間の長さより通信用の電波の実効波長の1/10以上長いことを特徴とする請求項5に記載の無線タグが取り付けられた物品。
【請求項7】
前記無線タグの前記接地導体と前記導体とを接着する接着層を有し、前記接着層の厚さは0mmより大きく5mm以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の無線タグが取り付けられた物品。
【請求項8】
前記接着層は、前記無線タグと導体とを着脱可能に接着する接着剤又は両面テープからなることを特徴とする請求項7に記載の無線タグが取り付けられた物品。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグと、
前記無線タグの前記接地電極側が固定されるカード本体と、
を有し、前記カード本体で前記無線タグが固定される部分が誘電体からなり、その厚さが0mmより大きく5mm以下であることを特徴とする無線タグが取り付けられたカード。
【請求項10】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグとの間で無線通信をするために用いられ、
前記無線タグの前記接地導体側に近接して配置され、前記開放端に直交する方向における長さが、前記無線タグを取り付けたときに前記無線タグのアンテナとしての利得が2dBi以上となる長さの導体と、
前記導体に近接配置した前記無線タグとの間で通信するアンテナ及び通信するデータを処理する制御部を有するリーダライタと、
を有することを特徴とする無線タグ用の通信システム。
【請求項11】
前記導体の長さは、前記開放端に直交する方向における前記開放端間の長さより通信用の電波の実効波長の1/10以上長いことを特徴とする請求項10に記載の無線タグ用の通信システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−35033(P2008−35033A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204397(P2006−204397)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】