無線タグ
【課題】平面視で非導電部材からなる領域が狭いディスク状の記録媒体に設けた場合に、通信距離が大幅に低下しない無線タグを提供すること。
【解決手段】円環状(ドーナツ状)の導体板10にスロット11を設けることでスロットアンテナが構成される。スロット11は、給電部2から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状をなしている。無線タグをCDの内周側に貼り付けた状態では、導体板10とCDの蒸着金属部とがオーバーラップし、高周波帯において、導体板10はCDの蒸着金属部、さらには蒸着金属部に接続されたCDの記録面金属部と電磁結合する。
【解決手段】円環状(ドーナツ状)の導体板10にスロット11を設けることでスロットアンテナが構成される。スロット11は、給電部2から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状をなしている。無線タグをCDの内周側に貼り付けた状態では、導体板10とCDの蒸着金属部とがオーバーラップし、高周波帯において、導体板10はCDの蒸着金属部、さらには蒸着金属部に接続されたCDの記録面金属部と電磁結合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触によりリーダライタと送受信を行う無線タグのアンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯(860〜960MHz)の無線回線を用いてリーダライタから約1Wの信号を送信し、無線タグ側でその信号を受信し、再びリーダライタ側へ応答信号を送り返すことにより、無線タグ内の情報をリーダライタで読み取ることができるRFIDシステムが既に知られている。国内では、952〜954MHzの無線周波数が用いられる。通信距離は、無線タグのアンテナゲイン、無線ICチップの動作電圧、リーダライタのアンテナゲイン、周囲環境にもよるが、およそ3〜10m程度である。この無線タグは、アンテナと、アンテナの給電点に接続される無線ICチップ(約0.5mm角程度)とで構成される。
無線タグでは、アンテナパターンが透明フィルムシート上に印刷、エッチング等によって形成される。アンテナの給電点には、特別な整合回路を実装することなくICチップが接続される。
【0003】
図1に示すように、無線ICチップ(以下、単に「ICチップ」という。)は、内部抵抗Rc(例えば1700Ω)とキャパシタンスCc(例えば1.0pF)との並列回路で等価的に表わすことができる。また、アンテナは、放射抵抗Ra(例えば2000Ω)と、インダクタンスLa(例えば30nH)の並列回路で等価的に表わすことができる。ICチップとアンテナを並列接続することにより、キャパシタンスCcとインダクタンスLaとが共振し、所望の共振周波数fo(例えば953MHz)でインピーダンス整合する。これにより、アンテナでの受信電力がICチップへ最大に供給される。上記共振周波数foは、1/(2π*(La*Cc)1/2)で表される。
【0004】
段ボールやプラスチック等、非導電性部材(又は非金属部材)に無線タグを貼り付ける場合、無線タグのアンテナとしては、ダイポール部をメアンダ状にしたダイポールアンテナ(λ/2として全長約140mm程度)が適用されることが多い。この場合、無線タグの大きさは10cm×2cm程度である。
【0005】
ところが、10cm×2cm程度の大きさの無線タグを、CDやDVD等のディスク状の記録媒体に貼り付けようとすると、記録媒体の円環状のデータ記録面の金属部(記録面金属部)と平面視でオーバーラップしてしまう。すなわち、記録媒体の円環状の記録面金属部は、内径φ36mm〜40mmであり、外径約φ120mm(ほぼ記録媒体自体の外径と等しい。)であるため、10cm×2cmの無線タグを取り付けると両者はオーバーラップする。そうなると、記録面金属部の遮蔽効果により、無線タグとリーダライタが全く無線通信できなくなる。
【0006】
そこで、従来、CDやDVD等のディスク状の記録媒体に貼り付けるために好適な無線タグが提案されている。この無線タグは、そのモノポールアンテナがディスク状の記録媒体の内周側の非導電部材(具体的には、透明プラスチック部)上に配置されるように、記録媒体に貼り付けられる。また、この無線タグの円環状の平板グランド部の一部が、記録媒体の記録面金属部と平面視でオーバーラップすることで、両者が電磁結合するように構成されている。これにより、記録媒体の記録面金属部を高周波においてグランドとみなすことができ、リーダライタと十分に無線通信ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−166573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来提案されている上記無線タグは、ディスク状の記録媒体の記録面金属部の内径としてφ36mm〜40mmの範囲を想定しており、その範囲内でモノポールアンテナを構成していた。しかしながら、近年、記録面金属部よりもさらに内周側に蒸着金属部が設けられたディスク状の記録媒体が市場で見られるようになった。この蒸着金属部の内径はφ20mm〜27mmの範囲で確認されている。記録面金属部と蒸着金属部を含むディスク状の記録媒体の構造を図2に示す。
【0009】
このような金属部の内径が小さい記録媒体では、記録媒体の内周側の非導電部材のみからなる領域が狭く、モノポールアンテナを実装することが困難である。例えば、従来のモノポールアンテナを円環状の狭い領域に形成しようとすると、モノポール部を円環状の領域内で2重又は3重に巻くようにして形成するか、モノポール部の線幅を細くしてメアンダ状に形成すること等が考えられる。しかし、そのようなモノポールアンテナの形成方法では、リーダライタとの通信距離が大幅に低下することは避けられない。
【0010】
よって、発明の1つの側面では、平面視で非導電部材からなる領域が狭いディスク状の記録媒体に設けた場合に、通信距離が大幅に低下しない無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
非導電部材からなる内周側の第1領域と、導電部材を含む外周側の第2領域とからなるディスク状の記録媒体、に取り付けられる無線タグが提供される。
この無線タグは、
(A)無線ICチップに接続される給電部と、
(B)スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、を備える。
導体板は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部が記録媒体の前記第2領域とオーバーラップするように形成される。スロットの長さは、スロットアンテナが無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される。
【発明の効果】
【0012】
開示の無線タグによれば、平面視で非導電部材からなる領域が狭いディスク状の記録媒体に設けた場合に、通信距離が大幅に低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】無線タグの内部等価回路を示す図。
【図2】記録面金属部と蒸着金属部を含むディスク状の記録媒体の構造を示す図。
【図3】第1実施例の無線タグの構成を示す図。
【図4】第1実施例の無線タグをCDに貼り付けた状態を示す図。
【図5】第1実施例の無線タグの寸法の一例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図6】第1実施例の無線タグの電磁界シミュレータでの計算結果を示す図。
【図7】第2実施例の無線タグの寸法の一例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図8】第2実施例の無線タグの電磁界シミュレータでの計算結果を示す図。
【図9】第3実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図10】第4実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図11】第5実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図12】第6実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図13】第7実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図14】第8実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図15】第9実施例の無線タグのスロットアンテナの構成例を示す図。
【図16】第10実施例の無線タグの構成例を示す図。
【図17】第11実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図18】第12実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図19】第13実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図20】第14実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例に係る無線タグについて説明する。なお、特記しない限り、寸法の単位はミリメートル[mm]とする。
【0015】
(1)第1実施例
図3は、第1実施例の無線タグの構成を示す。この無線タグでは、円環状(ドーナツ状)の導体板10にスロット(溝)11を設けることでスロットアンテナが構成されている。スロット11は、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状をなしている。導体板10は例えば、Cu,Ag,及びAlのいずれかを材料とする導体である。メアンダ状のスロット11の中央近傍にはICチップが実装される給電部2が設けられている。ICチップは、導体板10内に埋め込まれている。
【0016】
スロットアンテナは一般に、モノポールアンテナとは可逆的である。つまり、モノポールアンテナでは、所望のインダクタンス成分(図1に示したLa)を持たせるために長さをλ/2よりも長くするが、スロットアンテナでは、所望のインダクタンス成分を持たせるために長さをλ/2よりも短くすれば済む。すなわち、図3において、スロット11は、給電部2から両端までのスロット長がそれぞれλ/4よりも短くなっている。そのため、スロットアンテナでは、仮にモノポールアンテナを円弧状のメアンダ状にした場合の外径と比較して、円弧状のメアンダ形状としたスロットの外径を小さくすることが可能となっている。
【0017】
図3に示すように、本実施例において、スロット11のメアンダ形状は、複数のV字形状部が円弧状に連結されて形成されている。メアンダ形状を構成するのにV字形を適用するのは、隣接するV字形状部のスロットの外側の導体を流れる電流の向きは逆であるものの、互いに逆向きの電流ベクトル方向が斜めとなり、逆向きの電流によって生ずる電磁波のキャンセル量を低減できるためである。これにより、例えばメアンダ形状を構成するのにU字形の部分を複数連結する場合と比較して、アンテナ実効長を長くすることができ、スロット11の外径を小さくすることができる。
【0018】
図4は、図3に示した無線タグを、ディスク状の記録媒体の一例としてCD(Compact Disk)に貼り付けた状態を示している。図4に示すように、無線タグは、CDの読み取り面とは逆側の面(いわゆるレーベル面)において、内周側の中心穴部の周囲に貼り付けられる。無線タグのCDに対する貼付け方法は問わないが、例えば極薄の両面テープ、接着剤、シール等が貼付けのために使用され得る。
【0019】
貼付け対象のCDのプラスチック部には、蒸着金属部が埋め込まれている。以下の説明において、CDにおいて平面視で、蒸着金属部又は記録面金属部よりも内周側の領域、すなわち、非導電部材からなる内周側の領域を「第1領域」という。CDにおいて平面視で、蒸着金属部又は記録面金属部などの導電部材を含む外周側の領域を「第2領域」という。また、蒸着金属部と記録面金属部を総称して「金属部」という。
ここで、図4(b)に見られるように、導体板10は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部がCDのプラスチック部に埋め込まれた蒸着金属部とオーバーラップするような外形で形成されている。すなわち、導体板10は、CDの第2領域の内径よりも大きい外径で形成され、かつ少なくとも一部がCDの第2領域とオーバーラップするように貼り付けられる。
【0020】
導体板10と蒸着金属部(CDの第2領域)をオーバーラップさせることで、高周波帯において、導体板10はCDの蒸着金属部、さらには蒸着金属部に接続された記録面金属部(図2参照)と電磁結合する。すなわち、高周波帯ではCDの金属部を導体板10の一部として機能させることができ、スロット11から十分に電波を放射させることができる。それゆえ、本実施例の無線タグはそれ自体コンパクトではあるが、リーダライタ(図示せず)との間の十分な有効通信距離を確保することができる。
【0021】
図5は、無線タグの寸法の一例を、CDの寸法と関連付けて示している。図5において、D1はCDの中心穴部の内径である。D2及びD3はそれぞれ、円弧状のメアンダ形状としたスロットの内径及び外径である。D4はCDの蒸着金属部の内径である。D5は導体板10の外径である。この寸法例では、導体板10と蒸着金属部(CDの第2領域)とがオーバーラップするように、すなわちD4<D5が成立するようにして、導体板10の外径が設定されている。なお、図5に示す例ではD4=φ24であるが、発明者らの調査によれば、D4としてφ20〜27の範囲のCDの存在が確認されている。そこで、D5はD4の採り得る最大値(D4=φ27)よりも大きく設定されている。
【0022】
また、図5に示す寸法例では、D3≦D4、すなわち、メアンダ形状としたスロットの外径を蒸着金属部の内径以下としている。このようにスロットの外径を形成することは、スロットからの電波が蒸着金属部により遮蔽されることがなく、有効通信距離を十分に確保する点で好ましい。
【0023】
図5におけるθは、円環状の無線タグの中心点と給電点とを結ぶ線を基準にして、スロットが形成されていない領域を示す、当該線からの角度である。このθ(0°〜30°)と周波数(900〜1000MHz)をパラメータとして入力し、市販の電磁界シミュレータで計算し、プロットした結果を図6に示す。なお、この計算では、ICチップ側の回路素子に関し、Rc=1700Ω、Cc=1.0pF(Rc、Ccについては図1参照)としている。図6では、(a)θとアンテナのインダクタンスLaとの関係、(b)無線周波数と有効通信距離(Read Range)との関係、をそれぞれ示している。図6に示すように、無線タグで使用される周波数をfo=953MHzとするとLa=27nHで共振し、Laを27nHとするためにはθ=15°にすれば良いことが分かる。このとき、有効通信距離は十分長い距離(4m)となる。
【0024】
なお、第1実施例の無線タグの形状とは異なり、導体板10とCDの蒸着金属部とをオーバーラップさせないとした場合(すなわち、D4>D5)には、高周波帯において、導体板10はCDの金属部と電磁結合せず、有効通信距離が1m程度に止まる。
【0025】
(2)第2実施例
図7は、第2実施例の無線タグの構成を示す。この無線タグは、第1実施例で想定したCDとは蒸着金属部の内径D4が異なるCDに貼り付けられることが意図されている。図7に示すように、本実施例において、貼付け対象のCDではD4=φ20であり、蒸着金属部の内径D4がスロットの外径D3よりも小さくなっている(D3>D4)。
【0026】
本実施例においても、前述したθ(0°〜30°)と周波数(900〜1000MHz)をパラメータとして入力し、市販の電磁界シミュレータで計算し、プロットした。その結果を図8に示す。なお、この計算では、ICチップ側の回路素子に関し、Rc=1700Ω、Cc=1.0pFとしている。図8では図6同様、(a)θとアンテナのインダクタンスLaとの関係、(b)無線周波数と有効通信距離(Read Range)との関係、をそれぞれ示している。図8に示すように、無線タグで使用される周波数をfo=953MHzとするとLa=27nHで共振し、Laを27nHとするためにはθ=28°にすれば良いことが分かる。このとき、有効通信距離は3.2mとなる。
本実施例では、有効通信距離が第1実施例の場合よりも低下したが、無線タグとしての機能上何ら問題ないレベルとなっている。すなわち、スロットアンテナのスロットの外径が、貼付け対象のディスク状の記録媒体の金属部の内径よりも大きい場合であっても、スロットの形状(具体的には上記θの角度)を適切に設定すれば、十分な有効通信距離を確保することができる。
なお、θ=28°のスロットを備えた第2実施例の無線タグは、蒸着金属部の内径D4がφ20のCDに最適化されたものであり、第1実施例で想定した蒸着金属部の内径D4がφ24のCDに適用することは好ましくない。共振条件が崩れ、有効通信距離が低下するためである。
【0027】
(3)第3実施例
第1実施例の無線タグがCDに貼り付けられた場合に導体板10とCDの金属部の電磁結合を生じさせるため、第1実施例の無線タグでは、導体板10とCDの蒸着金属部がオーバーラップするように導体板10の外径を設定していた。さらに、第1実施例の無線タグでは、導体板10の全周に亘る外縁でCDの蒸着金属部とオーバーラップするように、円環状の導体板10が形成されていた。しかしながら、蒸着金属部がないCD(すなわち、記録面金属部のみが存在するCD)の記録面金属部に対して、円環状の導体板の全周に亘る外縁でオーバーラップさせようとすると、導体板に使用される金属成分の量が過大となり、好ましくない。すなわち、導体板は例えばAgペーストによる印刷で製造されるが、導体板に使用されるAgペーストの使用量が多くなると、無線タグの原価上昇を招来する。そこで、蒸着金属部がないCDに貼り付ける無線タグでは、導体板10とCDの記録面金属部とのオーバーラップ領域の面積を少なくすることで、導体板10の占める面積を極力低減することが望まれる。
【0028】
かかる観点から、図9に、蒸着金属部がないCDに貼り付けるために好適な無線タグの一例として、第3実施例の無線タグの構成を示す。図9に示す導体板10では、例えば第1実施例で示した外径D5の円環状の導体板に対し、4箇所に延長部101が設けられている。この延長部101は、導体板10とCDの記録面金属部とをオーバーラップさせる目的で設けられている。このように、導体板10の少なくとも一部がCDの記録面金属部とオーバーラップしていれば、導体板10とCDの記録面金属部との電磁結合により、十分な有効通信距離が確保できる。
【0029】
(4)第4実施例
第4実施例の無線タグは、第3実施例同様、蒸着金属部がないCDに貼り付けるために好適な無線タグの一例であり、その構成を図10に示す。図10に示すように、本実施例の無線タグの導体板10は、少なくとも一部がCDの記録面金属部とオーバーラップするような矩形形状にて形成される。典型的には、導体板10は正方形である。
本実施例の無線タグの導体板10も第3実施例同様、導体板10を円環状に形成させてその外周の全領域でCDの記録面金属部とオーバーラップさせた場合と比較して、例えば導体板に使用されるAgペーストの使用量を低減することができる。
【0030】
(5)第5実施例
第5実施例の無線タグは、第3及び第4実施例同様、蒸着金属部がないCDに貼り付けるために好適な無線タグの一例であり、その構成を図11に示す。図11に示す無線タグは、導体板10を円環状に形成させてその全周に亘る外縁でCDの記録面金属部とオーバーラップさせている点で、第3及び第4実施例と異なる。そして、その円環状の導体板10には、スロット11よりも外周側の領域において、1又は複数の孔部が設けられている。ここで、導体板10において記録面金属部とオーバーラップしている領域とスロット11とが連通する限り、孔部の形状及び数は任意に設定することができる。本実施例のように、導体板10に孔部を設けることで、導体板10を円環状に形成させてその全周に亘る外縁でCDの記録面金属部とオーバーラップさせつつ、導体板に使用されるAgペーストの使用量を低減させることができる。
【0031】
(6)第6実施例
第1実施例の無線タグがCDに貼り付けられた場合に導体板10とCDの金属部の電磁結合を生じさせるため、第1実施例の無線タグでは、導体板10とCDの蒸着金属部がオーバーラップするように導体板10の外径を設定していた。そのため、蒸着金属部がないCDに対して、第1実施例の無線タグを貼り付けると、蒸着金属部よりも内径の大きい記録面金属部とは導体板10がオーバーラップせず、導体板10と記録面金属部とで電磁結合を生じさせることができない。CDのタイプ(蒸着金属部の有無)に応じて2種類の無線タグ(例えば第1実施例の無線タグと第3実施例の無線タグ)を用意し、その2種類の無線タグをCDのタイプに応じて貼り分ければよいが煩雑である。2種類の無線タグを用意すればコストも掛かる。
【0032】
かかる観点から、図12に示す本実施例の無線タグでは、導体板10(主導体部)とは別体で補助導体部15が設けられる。例えば、本実施例の無線タグは、第1実施例の無線タグに対して、別体で補助導体部15が設けられたものである。また、補助導体部15は、本実施例の無線タグがCDに貼り付けられた状態で導体板10を取り囲むような形状で形成された、円環状の導体板である。より具体的には、補助導体部15は、本実施例の無線タグがCDに貼り付けられた状態で、第1実施例の導体板10の外縁でオーバーラップするとともに、CDの記録面金属部の内縁とオーバーラップするようにして形成される。これにより、実質的に導体板10の導体領域が拡大される。
なお、導体板10と補助導体部15はDC上で絶縁されていてもよい。例えば、導体板10と補助導体部15がそれぞれビニール素材等でラッピングされており、両者がオーバーラップする部分で導体間の直接的な接触がない場合でも構わない。
図5に示した第1実施例の無線タグの寸法、及び記録面金属部の内径がφ40のCDの寸法を前提とすると、補助導体部15の内径は例えばφ26、外径は例えばφ42である。
【0033】
第6実施例の無線タグは、以下のとおり使用される。すなわち、蒸着金属部があるCDに対しては例えば第1実施例の無線タグが貼り付けられ、蒸着金属部がないCDに対しては本実施例の無線タグを貼り付けるようにする。このとき、本実施例の無線タグのCDに対する貼り付けは、補助導体部15を先ずCDのレーベル面に貼り付け、その上に第1実施例の無線タグを貼り付けることでなされる。すなわち、1種類の無線タグ(例えば第1実施例の無線タグ)を用意しておき、補助導体部15を付加するか否かによって、CDのタイプ(蒸着金属部の有無)に応じた無線タグをCDに設定することができるようになる。そのため、無線タグを2種類用意するよりも低コスト化を図ることができる。
なお、本実施例の無線タグの基礎となる無線タグ、すなわち補助導体部15が付加されていない状態の無線タグとして第1実施例の無線タグを想定したが、これに限られない。基礎となる無線タグの構成、形状は、蒸着金属部があるCDに適したものであればよく、例えば第2実施例の無線タグでもよい。その場合には、前述したθが調整される。
【0034】
(7)第7実施例
第7実施例の無線タグは、第6実施例の無線タグと同様の観点で形成されている。本実施例の無線タグは、補助導体部15の形態が第6実施例のものと異なる。図13に本実施例の無線タグの構成を示す。図13に示すように、本実施例の無線タグは、CDに貼り付けられた状態で、例えば第1実施例の導体板10(主導体部)の上面の一部を覆うことにより平面視で導体板10の外縁とオーバーラップするとともに、CDの記録面金属部の内縁と平面視でオーバーラップするようにして形成される。本実施例の無線タグも第6実施例と同様、蒸着金属部がないCDに貼り付けられる。このとき、本実施例の無線タグのCDに対する貼り付けは、例えば第1実施例の無線タグを先ずCDのレーベル面に貼り付け、その上に図13に示す補助導体部15を貼り付けることでなされる。
【0035】
(8)第8実施例
スロットの外径が、無線タグの貼付け対象のCDの金属部の内径以下である場合(第1実施例の無線タグ)と、CDの金属部の内径より大きい場合(第2実施例の無線タグ)とで電磁結合の程度が異なるため、無線タグの有効通信距離が異なる(図6、図8参照)。他方、前述したように、発明者らの調査によれば、蒸着金属部の内径D4としてφ20〜27の範囲のCDの存在が確認されている。よって、無線タグのスロット外径をφ20〜27の範囲内で一意に設定したとすれば、スロットと蒸着金属部がオーバーラップするCDとオーバーラップしないCDが混在することになり、CD毎に無線タグの有効通信距離が異なることになる。そこで、本実施例の無線タグでは、CDの蒸着金属部の内径に依存しない安定した有効通信距離を得るために、補助導体部が利用される。
【0036】
本実施例の無線タグを図14に示す。この無線タグは第6実施例と同様の補助導体部15を備えるが、第6実施例の場合と比較して補助導体部15の内径が異なる。本実施例では、補助導体部15の内径は、スロット外径よりも小さく設定される。これにより、補助導体部15がCDに貼り付けられた場合、本実施例の無線タグのスロットは、CDの蒸着金属部の内径に関わらず常に補助導体部15とオーバーラップすることになる。補助導体部15の外径は、第6実施例と同じく、CDの記録面金属部の内縁とオーバーラップするようにして形成される。また、第2実施例同様、有効通信距離を確保するためにスロットの形状(図7のθ)が適切に設定される。
【0037】
上述したように、本実施例の無線タグでは、CDのタイプ(蒸着金属部の有無、蒸着金属部の内径の大きさ)に関わらず、CDに貼り付けた場合に常に補助導体部15がスロットとオーバーラップする。そのため、スロットの形状(図7のθ)を適切に設定することで、無線タグの有効通信距離がCDのタイプに依存せずに安定する。
【0038】
(9)第9実施例
上述した第1〜第8実施例の無線タグでは、スロット11の形態が全体として円弧状のメアンダ形状をなしている場合について説明したが、これに限られない。図15には、本実施例の無線タグにおいて、スロット11の様々な変形例に係る形状が示される。
図15(a)に示すスロット11の形態は、給電部から両側に延びており、全体として円弧状の非メアンダ形状となっている。図15(a)に示すスロット11は全体として正確な円弧となっているが、多少蛇行した形状でも構わない。スロット11の全長が所要のインダクタンスを確保するため、図15(a)に示すように全長を調整するための折り返し部を設けてもよい。
図15(b)に示すスロット11の形態は、2.45GHzの無線周波数を用いる場合の形状である。この場合、953MHzの場合と比較して波長が短くなるため、メアンダ形状にせずに済む。
図15(c)に示すスロット11の形態は、上述した各実施例と同様にメアンダ形状であるが、このメアンダ形状は複数のランダムな形の略U字形状部が円弧状に連結されて形成されている。ランダムな形の略U字形状部としたのは、隣接する略U字形状部のスロットの外側の導体を流れる電流の向きは逆であるものの、互いに逆向きの電流ベクトル方向が完全には平行とならず、逆向きの電流によって生ずる電磁波のキャンセル量を低減できるためである。これにより、アンテナ実効長を、例えばメアンダ形状を構成するのに正確な(ランダムでない)U字形を適用する場合と比較して長くすることができ、スロット11の外径を小さくすることができる。
【0039】
(10)第10実施例
第1〜第9実施例に無線タグに関し、ディスク状の記録媒体に貼り付けることを前提として説明してきたが、これに限られない。非導電部材と離間した内側の第1領域と、導電部材に近接した外側の第2領域とからなる対象部材に適用することができる。このような対象部材として典型的なのは、例えば車両用のアーム又はフレーム等の凹部のある金属部材である。このような金属部材では例えば軽量化の目的で凹部が予め設けられているため、その凹部に本実施例の無線タグを取り付ける。この場合は、第1領域が凹部に相当し、第2領域が凹部の周辺領域に相当する。無論、金属部材の軽量化の目的のために設けられた凹部に無線タグを取り付けてもよいし、金属部材の機能上の障害がない箇所に予め設けた凹部に無線タグを取り付けてもよい。
【0040】
図16は、本実施例の無線タグが金属部材に取り付けられた状態を示す。本実施例の無線タグは、例えば第1実施例の無線タグに対して導体板の中央の孔部を埋めて円形にしたものとなっている。スロットアンテナを構成する導体板及びメアンダ状のスロットの寸法は、取付対象の金属部材の形状、及び無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られる目的で最適化される。
図16において、金属部材には円筒状の凹部が設けられており、この凹部上に、全体として円形の平板状の本実施例の無線タグが取り付けられる。そのため、本実施例の無線タグの外径は、取付対象となる金属部材の凹部の径よりも大きい。金属部材に対する無線タグの取付方法は問わないが、例えば極薄の両面テープ、接着剤、シール等が取付のために使用され得る。好ましくは、メアンダ状のスロットの外径は、金属部材の凹部の径よりも小さい。無線タグの外径を極力小さくするために、前述した実施例同様、ここでもメアンダ状のスロットアンテナが適用される。
【0041】
図16に示すオーバーラップの部分は、無線タグの金属部材への取り付けのためのみならず、無線タグのスロットアンテナを構成する導体板との電磁結合を生じさせる。すなわち、このオーバーラップにより、高周波帯において、無線タグの導体板が金属部材とが電磁結合するため、金属部材を導体板の一部として機能させることができ、スロットから十分に電波を放射させることができる。一方、この無線タグが金属部材に取り付けられた場合、スロットの下部には金属部材の凹部が配置されることになり、スロットアンテナから放射される電波を遮蔽することが防止される。それゆえ、本実施例の無線タグはそれ自体コンパクトではあるが、リーダライタ(図示せず)との間の十分な有効通信距離を確保することができる。
【0042】
以上、対象部材として金属部材に本実施例の無線タグが取り付けられる場合について説明したが、対象部材として金属部材のみならず、所定の大きさの凹部、空洞部、孔部が存在する導電性部材に対して適用可能であることは明らかである。例えば、図16に示す無線タグは、円筒状の金属部材の凹部に適合するように円形の無線タグ(すなわち、円形の導体板)としたが、これに限られない。無線タグの全体の形態は、対象部材の形態に対して最適化されうる。例えば、対象部材の凹部が直方体形状であれば、無線タグの全体の形態は矩形になりうる。
【0043】
また、第10実施例の無線タグに対して、第1〜第9実施例の無線タグに適宜適用できることは言うまでもない。例えば、スロットは、無線タグを金属部材の内側に取り付けた場合に金属部材の第1領域、すなわち凹部にスロット全体が収容されるようにして形成されることが好ましい。また、導体板の外縁で導体板とオーバーラップするように形成され、導体板の導体領域を拡大するための補助導体部、をさらに備けることで、凹部の大きさが異なる複数の金属部材に対し、1種類の無線タグを適用することができる。
【0044】
(11)第11実施例
上記第3実施例(図9参照)では、蒸着金属部がないCDに対して無線タグを取り付ける場合に、導体板10とCDの記録面金属部とをオーバーラップさせるための延長部101を4箇所設けた例について説明した。これに対して、第11実施例では、第3実施例の無線タグのさらに好ましい例について説明する。
第11実施例の無線タグを図17に示す。図17は、第11実施例の無線タグを、蒸着金属部がないCDに貼り付けた状態を示している。図17に示すように、本実施例の無線タグの導体板10は、第1導体部110と第2導体部120(第3実施例の延長部101に相当するもの)を備えている。第1導体部110は、スロット11が形成され、CDの記録面金属部(第2領域)の内径よりも小さい外径を有する環状の導体部材である。第2導体部120は、給電部2とCDの中心を結ぶ線(B−B線)に沿って、CDの外縁に向かって第1導体部110から相対する2方向に延びており、CDの記録面金属部とオーバーラップするように形成された導体部材である。
【0045】
本実施例の無線タグをCDに貼り付けた場合、導体板10の第1導体部110とCDの記録面金属部との間には、平面視で見て周方向に非導体部分が設けられることになる。よって、第2導体部120とCDの記録面金属部の2箇所のオーバーラップの間においてダイポールアンテナが形成されるとともに、第2導体部120とオーバーラップするCDの記録面金属部全体が無線タグと電磁結合することによって電磁波が放射されるようになる。すなわち、本実施例の場合、給電部2とCDの中心を結ぶ線に沿った導体板10の全長は、例えば約52mm程度であるが、オーバーラップ部分を介してCD(外径φ120)全体で動作させることで、国内でのRFIDシステムで使用される952〜954MHzのλ/2(約150mm)にダイポールアンテナの実効長を近付けることができるようになる。そのため、スロット11によるスロットアンテナとしての動作のみの場合よりも、通信距離を拡張することができる。また、第3実施例(図9参照)の場合と比較して導体板10の面積がさらに小さくなり、低コスト化に寄与する。記録面金属部の内周側に蒸着金属部が存在して平面視で蒸着金属部と導体板10がオーバーラップするようなCDについては、上述したダイポールアンテナが形成されず、スロットアンテナのみが動作することになる。
なお、本実施例の場合の好ましい寸法例を挙げれば、第2導体部120の幅は10mm、B−B線に沿った第2導体部120の長さは12〜13mm、第2導体部120とCDの記録面金属部のオーバーラップ量は4mmである。
【0046】
(12)第12実施例
次に、第12実施例の無線タグについて、図18を参照して説明する。
図18に示すように、本実施例の無線タグは、第11実施例の無線タグとは、第2導体部120において、第1導体部110からCDの記録面金属部の間がメアンダ状で形成されている点で異なる。これにより、第2導体部120を実質的により長くすることができるため、第11実施例で述べたダイポールアンテナとしての動作をより高めるようにすることができる。すなわち、上述したように国内でのRFIDシステムで使用される場合のλ/2が約150mmであるが、第2導体部120をメアンダ状とすることで、導体板10によって形成されるダイポールアンテナの全長を150mmに近付けることができるようになる。例えば、第11実施例では、給電部2とCDの中心を結ぶ線に沿った導体板10の全長が約52mm程度であるが、本実施例では、メアンダの線幅を1mmとした場合に、導体板10の全長を約130mm(実効長は110〜120mm)とすることができ、上記λ/2に近付けることができる。
なお、導体板10の全長を上記λ/2に近付けることができるので、本実施例の無線タグはそれ単独で、すなわち、CDの記録面金属部との電磁結合を考慮することなく使用することができる。例えば、本実施例の無線タグを、導電性部分を持たないVHSテープのプラスチックの筐体に貼り付ける、または本などに貼り付けることなどが可能である。
【0047】
なお、本実施例の無線タグでは、第2導体部120において、第1導体部110からCDの記録面金属部の間がメアンダ状で形成されているが、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分はメアンダ形状にしないようにすることが好ましい。つまり、このオーバーラップする部分をもメアンダ状にすると、第11実施例と同じ電磁結合性能を維持するために、すなわち実質的なオーバーラップ量を確保するために無線タグの全長が長くなってしまうためである。
【0048】
(13)第13実施例
次に、第13実施例の無線タグについて、図19を参照して説明する。
図19に示すように、本実施例の無線タグは、第11実施例の無線タグとは、第2導体部120において、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分が記録面金属部の内周に沿って延びている点で異なる。このオーバーラップ部分を記録面金属部の内周に沿って延長させているのは、無線タグ全体を全体的にコンパクトにするためである。このように第2導体部120を形成することで、第12実施例と同様に、第2導体部120を実質的により長くすることができるため、第11実施例で述べたダイポールアンテナとしての動作をより高めるようにすることができる。
本実施例の無線タグは、第2導体部120の長さを十分に確保しようとする点において第12実施例と同一の考え方に基づいたものであるが、第12実施例のように第2導体部120をメアンダ形状により成形していないため、通信性能上有利である。つまり、第12実施例のように第2導体部120をメアンダ形状により成形した場合には、メアンダの略V字部分において電流の向きが逆向きに近くなることによる電気的損失が生ずるが、本実施例のものではそのような損失が生じない。そのため、本実施例の無線タグは、第12実施例のものよりも通信距離を長くすることができる。
【0049】
なお、本実施例の無線タグは、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分を、導体板10の実効長がダイポールアンテナとして適切に動作するλ/2になるまで、記録面金属部の内周に沿って延長させることができる。この点でも、メアンダ形状を用いた第12実施例のものよりも設計上の制約が少ないと言える。
【0050】
(14)第14実施例
次に、第14実施例の無線タグについて、図20を参照して説明する。
図20に示すように、本実施例の無線タグは、上述した第12および第13実施例の無線タグの特徴を共に備えたものである。すなわち、本実施例の無線タグは、第2導体部120において、第1導体部110からCDの記録面金属部の間がメアンダ状で形成され、かつ、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分が記録面金属部の内周に沿って延びている。本実施例の無線タグは、第12実施例の無線タグに対する改良型と捉えることもできる。すなわち、本実施例の無線タグは、導体板10がダイポールアンテナとして適切に動作するための実効長を確保するのに、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分が記録面金属部の内周に沿って延びている分、メアンダ形状の部分の長さを第12実施例の場合ほど必要とならない。その結果、第12実施例の場合よりもメアンダ形状の部分の折り返し回数を減らすことができ、メアンダ形状の部分の電気的損失が抑制される。
【0051】
本発明の複数の実施例について詳細に説明したが、本発明の無線タグは上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。例えば、上述した各実施例では、無線タグの貼り付け対象がCDである場合を主として述べてきたが、CDと同種の構造の他の物品、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc;登録商標)等に応じて本発明の無線タグを適宜最適化しうることは当業者に理解される。
【0052】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0053】
(付記1)
非導電部材からなる内周側の第1領域と、導電部材を含む外周側の第2領域とからなるディスク状の記録媒体、に取り付けられる無線タグであって、
無線ICチップに接続される給電部と、
スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、
を備え、
前記導体板は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部が記録媒体の前記第2領域とオーバーラップするように形成され、
前記スロットの長さは、前記スロットアンテナが前記無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される、
無線タグ。(1)
【0054】
(付記2)
前記スロットは、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に記録媒体の前記第1領域にスロット全体が収容されるようにして形成される、
付記1に記載された無線タグ。(2)
【0055】
(付記3)
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状である、
付記1又は2に記載された無線タグ。(3)
【0056】
(付記4)
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状の非メアンダ形状である、
付記1又は2に記載された無線タグ。(4)
【0057】
(付記5)
前記スロットは、長さを調整するための折り返し部を有する、
付記4に記載された無線タグ。(5)
【0058】
(付記6)
前記導体板は、
前記スロットが設けられた環状の主導体部と、
前記導体本体部とは内周側でオーバーラップし、かつ記録媒体の前記第2領域とは外周側でオーバーラップする環状の補助導体部と、を有する、
付記1〜5のいずれかに記載された無線タグ。(6)
【0059】
(付記7)
前記導体板は、
前記スロットが形成され、記録媒体の前記第2領域の内径よりも小さい外径を有する環状の第1導体部と、
前記給電部と記録媒体の中心を結ぶ線に沿って、記録媒体の外縁に向かって前記第1導体部から相対する2方向に延びており、前記第2領域とオーバーラップするように形成された第2導体部と、を有する、
付記1〜5のいずれかに記載された無線タグ。(7)
【0060】
(付記8)
前記第2導体部において、前記第1導体部から前記第2領域の間がメアンダ状で形成されている、
付記7に記載された無線タグ。(8)
【0061】
(付記9)
前記第2導体部において、前記第2領域とオーバーラップする部分が前記第2領域の内周に沿って延びている、
付記7または8に記載された無線タグ。(9)
【0062】
(付記10)
非導電部材と離間した内側の第1領域と、導電部材に近接した外側の第2領域とからなる対象部材、に取り付けられる無線タグであって、
無線ICチップに接続される給電部と、
スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、
を備え、
前記導体板は、無線タグを対象部材の内側に取り付けた場合に、少なくとも一部が対象部材の前記第2領域とオーバーラップするように形成され、
前記スロットの長さは、前記スロットアンテナが前記無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される、
無線タグ。
【0063】
(付記11)
前記スロットは、無線タグを対象部材の内側に取り付けた場合に対象部材の前記第1領域にスロット全体が収容されるようにして形成される、
付記10に記載された無線タグ。
【0064】
(付記12)
前記導体板の外縁で導体板とオーバーラップするように形成され、導体板の導体領域を拡大するための補助導体部、をさらに備えた、
付記10又は11に記載された無線タグ。
【符号の説明】
【0065】
2…給電部
10…導体板
11…スロット
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触によりリーダライタと送受信を行う無線タグのアンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯(860〜960MHz)の無線回線を用いてリーダライタから約1Wの信号を送信し、無線タグ側でその信号を受信し、再びリーダライタ側へ応答信号を送り返すことにより、無線タグ内の情報をリーダライタで読み取ることができるRFIDシステムが既に知られている。国内では、952〜954MHzの無線周波数が用いられる。通信距離は、無線タグのアンテナゲイン、無線ICチップの動作電圧、リーダライタのアンテナゲイン、周囲環境にもよるが、およそ3〜10m程度である。この無線タグは、アンテナと、アンテナの給電点に接続される無線ICチップ(約0.5mm角程度)とで構成される。
無線タグでは、アンテナパターンが透明フィルムシート上に印刷、エッチング等によって形成される。アンテナの給電点には、特別な整合回路を実装することなくICチップが接続される。
【0003】
図1に示すように、無線ICチップ(以下、単に「ICチップ」という。)は、内部抵抗Rc(例えば1700Ω)とキャパシタンスCc(例えば1.0pF)との並列回路で等価的に表わすことができる。また、アンテナは、放射抵抗Ra(例えば2000Ω)と、インダクタンスLa(例えば30nH)の並列回路で等価的に表わすことができる。ICチップとアンテナを並列接続することにより、キャパシタンスCcとインダクタンスLaとが共振し、所望の共振周波数fo(例えば953MHz)でインピーダンス整合する。これにより、アンテナでの受信電力がICチップへ最大に供給される。上記共振周波数foは、1/(2π*(La*Cc)1/2)で表される。
【0004】
段ボールやプラスチック等、非導電性部材(又は非金属部材)に無線タグを貼り付ける場合、無線タグのアンテナとしては、ダイポール部をメアンダ状にしたダイポールアンテナ(λ/2として全長約140mm程度)が適用されることが多い。この場合、無線タグの大きさは10cm×2cm程度である。
【0005】
ところが、10cm×2cm程度の大きさの無線タグを、CDやDVD等のディスク状の記録媒体に貼り付けようとすると、記録媒体の円環状のデータ記録面の金属部(記録面金属部)と平面視でオーバーラップしてしまう。すなわち、記録媒体の円環状の記録面金属部は、内径φ36mm〜40mmであり、外径約φ120mm(ほぼ記録媒体自体の外径と等しい。)であるため、10cm×2cmの無線タグを取り付けると両者はオーバーラップする。そうなると、記録面金属部の遮蔽効果により、無線タグとリーダライタが全く無線通信できなくなる。
【0006】
そこで、従来、CDやDVD等のディスク状の記録媒体に貼り付けるために好適な無線タグが提案されている。この無線タグは、そのモノポールアンテナがディスク状の記録媒体の内周側の非導電部材(具体的には、透明プラスチック部)上に配置されるように、記録媒体に貼り付けられる。また、この無線タグの円環状の平板グランド部の一部が、記録媒体の記録面金属部と平面視でオーバーラップすることで、両者が電磁結合するように構成されている。これにより、記録媒体の記録面金属部を高周波においてグランドとみなすことができ、リーダライタと十分に無線通信ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−166573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来提案されている上記無線タグは、ディスク状の記録媒体の記録面金属部の内径としてφ36mm〜40mmの範囲を想定しており、その範囲内でモノポールアンテナを構成していた。しかしながら、近年、記録面金属部よりもさらに内周側に蒸着金属部が設けられたディスク状の記録媒体が市場で見られるようになった。この蒸着金属部の内径はφ20mm〜27mmの範囲で確認されている。記録面金属部と蒸着金属部を含むディスク状の記録媒体の構造を図2に示す。
【0009】
このような金属部の内径が小さい記録媒体では、記録媒体の内周側の非導電部材のみからなる領域が狭く、モノポールアンテナを実装することが困難である。例えば、従来のモノポールアンテナを円環状の狭い領域に形成しようとすると、モノポール部を円環状の領域内で2重又は3重に巻くようにして形成するか、モノポール部の線幅を細くしてメアンダ状に形成すること等が考えられる。しかし、そのようなモノポールアンテナの形成方法では、リーダライタとの通信距離が大幅に低下することは避けられない。
【0010】
よって、発明の1つの側面では、平面視で非導電部材からなる領域が狭いディスク状の記録媒体に設けた場合に、通信距離が大幅に低下しない無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
非導電部材からなる内周側の第1領域と、導電部材を含む外周側の第2領域とからなるディスク状の記録媒体、に取り付けられる無線タグが提供される。
この無線タグは、
(A)無線ICチップに接続される給電部と、
(B)スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、を備える。
導体板は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部が記録媒体の前記第2領域とオーバーラップするように形成される。スロットの長さは、スロットアンテナが無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される。
【発明の効果】
【0012】
開示の無線タグによれば、平面視で非導電部材からなる領域が狭いディスク状の記録媒体に設けた場合に、通信距離が大幅に低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】無線タグの内部等価回路を示す図。
【図2】記録面金属部と蒸着金属部を含むディスク状の記録媒体の構造を示す図。
【図3】第1実施例の無線タグの構成を示す図。
【図4】第1実施例の無線タグをCDに貼り付けた状態を示す図。
【図5】第1実施例の無線タグの寸法の一例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図6】第1実施例の無線タグの電磁界シミュレータでの計算結果を示す図。
【図7】第2実施例の無線タグの寸法の一例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図8】第2実施例の無線タグの電磁界シミュレータでの計算結果を示す図。
【図9】第3実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図10】第4実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図11】第5実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図12】第6実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図13】第7実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図14】第8実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図15】第9実施例の無線タグのスロットアンテナの構成例を示す図。
【図16】第10実施例の無線タグの構成例を示す図。
【図17】第11実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図18】第12実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図19】第13実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【図20】第14実施例の無線タグの構成例をCDの寸法と関連付けて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例に係る無線タグについて説明する。なお、特記しない限り、寸法の単位はミリメートル[mm]とする。
【0015】
(1)第1実施例
図3は、第1実施例の無線タグの構成を示す。この無線タグでは、円環状(ドーナツ状)の導体板10にスロット(溝)11を設けることでスロットアンテナが構成されている。スロット11は、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状をなしている。導体板10は例えば、Cu,Ag,及びAlのいずれかを材料とする導体である。メアンダ状のスロット11の中央近傍にはICチップが実装される給電部2が設けられている。ICチップは、導体板10内に埋め込まれている。
【0016】
スロットアンテナは一般に、モノポールアンテナとは可逆的である。つまり、モノポールアンテナでは、所望のインダクタンス成分(図1に示したLa)を持たせるために長さをλ/2よりも長くするが、スロットアンテナでは、所望のインダクタンス成分を持たせるために長さをλ/2よりも短くすれば済む。すなわち、図3において、スロット11は、給電部2から両端までのスロット長がそれぞれλ/4よりも短くなっている。そのため、スロットアンテナでは、仮にモノポールアンテナを円弧状のメアンダ状にした場合の外径と比較して、円弧状のメアンダ形状としたスロットの外径を小さくすることが可能となっている。
【0017】
図3に示すように、本実施例において、スロット11のメアンダ形状は、複数のV字形状部が円弧状に連結されて形成されている。メアンダ形状を構成するのにV字形を適用するのは、隣接するV字形状部のスロットの外側の導体を流れる電流の向きは逆であるものの、互いに逆向きの電流ベクトル方向が斜めとなり、逆向きの電流によって生ずる電磁波のキャンセル量を低減できるためである。これにより、例えばメアンダ形状を構成するのにU字形の部分を複数連結する場合と比較して、アンテナ実効長を長くすることができ、スロット11の外径を小さくすることができる。
【0018】
図4は、図3に示した無線タグを、ディスク状の記録媒体の一例としてCD(Compact Disk)に貼り付けた状態を示している。図4に示すように、無線タグは、CDの読み取り面とは逆側の面(いわゆるレーベル面)において、内周側の中心穴部の周囲に貼り付けられる。無線タグのCDに対する貼付け方法は問わないが、例えば極薄の両面テープ、接着剤、シール等が貼付けのために使用され得る。
【0019】
貼付け対象のCDのプラスチック部には、蒸着金属部が埋め込まれている。以下の説明において、CDにおいて平面視で、蒸着金属部又は記録面金属部よりも内周側の領域、すなわち、非導電部材からなる内周側の領域を「第1領域」という。CDにおいて平面視で、蒸着金属部又は記録面金属部などの導電部材を含む外周側の領域を「第2領域」という。また、蒸着金属部と記録面金属部を総称して「金属部」という。
ここで、図4(b)に見られるように、導体板10は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部がCDのプラスチック部に埋め込まれた蒸着金属部とオーバーラップするような外形で形成されている。すなわち、導体板10は、CDの第2領域の内径よりも大きい外径で形成され、かつ少なくとも一部がCDの第2領域とオーバーラップするように貼り付けられる。
【0020】
導体板10と蒸着金属部(CDの第2領域)をオーバーラップさせることで、高周波帯において、導体板10はCDの蒸着金属部、さらには蒸着金属部に接続された記録面金属部(図2参照)と電磁結合する。すなわち、高周波帯ではCDの金属部を導体板10の一部として機能させることができ、スロット11から十分に電波を放射させることができる。それゆえ、本実施例の無線タグはそれ自体コンパクトではあるが、リーダライタ(図示せず)との間の十分な有効通信距離を確保することができる。
【0021】
図5は、無線タグの寸法の一例を、CDの寸法と関連付けて示している。図5において、D1はCDの中心穴部の内径である。D2及びD3はそれぞれ、円弧状のメアンダ形状としたスロットの内径及び外径である。D4はCDの蒸着金属部の内径である。D5は導体板10の外径である。この寸法例では、導体板10と蒸着金属部(CDの第2領域)とがオーバーラップするように、すなわちD4<D5が成立するようにして、導体板10の外径が設定されている。なお、図5に示す例ではD4=φ24であるが、発明者らの調査によれば、D4としてφ20〜27の範囲のCDの存在が確認されている。そこで、D5はD4の採り得る最大値(D4=φ27)よりも大きく設定されている。
【0022】
また、図5に示す寸法例では、D3≦D4、すなわち、メアンダ形状としたスロットの外径を蒸着金属部の内径以下としている。このようにスロットの外径を形成することは、スロットからの電波が蒸着金属部により遮蔽されることがなく、有効通信距離を十分に確保する点で好ましい。
【0023】
図5におけるθは、円環状の無線タグの中心点と給電点とを結ぶ線を基準にして、スロットが形成されていない領域を示す、当該線からの角度である。このθ(0°〜30°)と周波数(900〜1000MHz)をパラメータとして入力し、市販の電磁界シミュレータで計算し、プロットした結果を図6に示す。なお、この計算では、ICチップ側の回路素子に関し、Rc=1700Ω、Cc=1.0pF(Rc、Ccについては図1参照)としている。図6では、(a)θとアンテナのインダクタンスLaとの関係、(b)無線周波数と有効通信距離(Read Range)との関係、をそれぞれ示している。図6に示すように、無線タグで使用される周波数をfo=953MHzとするとLa=27nHで共振し、Laを27nHとするためにはθ=15°にすれば良いことが分かる。このとき、有効通信距離は十分長い距離(4m)となる。
【0024】
なお、第1実施例の無線タグの形状とは異なり、導体板10とCDの蒸着金属部とをオーバーラップさせないとした場合(すなわち、D4>D5)には、高周波帯において、導体板10はCDの金属部と電磁結合せず、有効通信距離が1m程度に止まる。
【0025】
(2)第2実施例
図7は、第2実施例の無線タグの構成を示す。この無線タグは、第1実施例で想定したCDとは蒸着金属部の内径D4が異なるCDに貼り付けられることが意図されている。図7に示すように、本実施例において、貼付け対象のCDではD4=φ20であり、蒸着金属部の内径D4がスロットの外径D3よりも小さくなっている(D3>D4)。
【0026】
本実施例においても、前述したθ(0°〜30°)と周波数(900〜1000MHz)をパラメータとして入力し、市販の電磁界シミュレータで計算し、プロットした。その結果を図8に示す。なお、この計算では、ICチップ側の回路素子に関し、Rc=1700Ω、Cc=1.0pFとしている。図8では図6同様、(a)θとアンテナのインダクタンスLaとの関係、(b)無線周波数と有効通信距離(Read Range)との関係、をそれぞれ示している。図8に示すように、無線タグで使用される周波数をfo=953MHzとするとLa=27nHで共振し、Laを27nHとするためにはθ=28°にすれば良いことが分かる。このとき、有効通信距離は3.2mとなる。
本実施例では、有効通信距離が第1実施例の場合よりも低下したが、無線タグとしての機能上何ら問題ないレベルとなっている。すなわち、スロットアンテナのスロットの外径が、貼付け対象のディスク状の記録媒体の金属部の内径よりも大きい場合であっても、スロットの形状(具体的には上記θの角度)を適切に設定すれば、十分な有効通信距離を確保することができる。
なお、θ=28°のスロットを備えた第2実施例の無線タグは、蒸着金属部の内径D4がφ20のCDに最適化されたものであり、第1実施例で想定した蒸着金属部の内径D4がφ24のCDに適用することは好ましくない。共振条件が崩れ、有効通信距離が低下するためである。
【0027】
(3)第3実施例
第1実施例の無線タグがCDに貼り付けられた場合に導体板10とCDの金属部の電磁結合を生じさせるため、第1実施例の無線タグでは、導体板10とCDの蒸着金属部がオーバーラップするように導体板10の外径を設定していた。さらに、第1実施例の無線タグでは、導体板10の全周に亘る外縁でCDの蒸着金属部とオーバーラップするように、円環状の導体板10が形成されていた。しかしながら、蒸着金属部がないCD(すなわち、記録面金属部のみが存在するCD)の記録面金属部に対して、円環状の導体板の全周に亘る外縁でオーバーラップさせようとすると、導体板に使用される金属成分の量が過大となり、好ましくない。すなわち、導体板は例えばAgペーストによる印刷で製造されるが、導体板に使用されるAgペーストの使用量が多くなると、無線タグの原価上昇を招来する。そこで、蒸着金属部がないCDに貼り付ける無線タグでは、導体板10とCDの記録面金属部とのオーバーラップ領域の面積を少なくすることで、導体板10の占める面積を極力低減することが望まれる。
【0028】
かかる観点から、図9に、蒸着金属部がないCDに貼り付けるために好適な無線タグの一例として、第3実施例の無線タグの構成を示す。図9に示す導体板10では、例えば第1実施例で示した外径D5の円環状の導体板に対し、4箇所に延長部101が設けられている。この延長部101は、導体板10とCDの記録面金属部とをオーバーラップさせる目的で設けられている。このように、導体板10の少なくとも一部がCDの記録面金属部とオーバーラップしていれば、導体板10とCDの記録面金属部との電磁結合により、十分な有効通信距離が確保できる。
【0029】
(4)第4実施例
第4実施例の無線タグは、第3実施例同様、蒸着金属部がないCDに貼り付けるために好適な無線タグの一例であり、その構成を図10に示す。図10に示すように、本実施例の無線タグの導体板10は、少なくとも一部がCDの記録面金属部とオーバーラップするような矩形形状にて形成される。典型的には、導体板10は正方形である。
本実施例の無線タグの導体板10も第3実施例同様、導体板10を円環状に形成させてその外周の全領域でCDの記録面金属部とオーバーラップさせた場合と比較して、例えば導体板に使用されるAgペーストの使用量を低減することができる。
【0030】
(5)第5実施例
第5実施例の無線タグは、第3及び第4実施例同様、蒸着金属部がないCDに貼り付けるために好適な無線タグの一例であり、その構成を図11に示す。図11に示す無線タグは、導体板10を円環状に形成させてその全周に亘る外縁でCDの記録面金属部とオーバーラップさせている点で、第3及び第4実施例と異なる。そして、その円環状の導体板10には、スロット11よりも外周側の領域において、1又は複数の孔部が設けられている。ここで、導体板10において記録面金属部とオーバーラップしている領域とスロット11とが連通する限り、孔部の形状及び数は任意に設定することができる。本実施例のように、導体板10に孔部を設けることで、導体板10を円環状に形成させてその全周に亘る外縁でCDの記録面金属部とオーバーラップさせつつ、導体板に使用されるAgペーストの使用量を低減させることができる。
【0031】
(6)第6実施例
第1実施例の無線タグがCDに貼り付けられた場合に導体板10とCDの金属部の電磁結合を生じさせるため、第1実施例の無線タグでは、導体板10とCDの蒸着金属部がオーバーラップするように導体板10の外径を設定していた。そのため、蒸着金属部がないCDに対して、第1実施例の無線タグを貼り付けると、蒸着金属部よりも内径の大きい記録面金属部とは導体板10がオーバーラップせず、導体板10と記録面金属部とで電磁結合を生じさせることができない。CDのタイプ(蒸着金属部の有無)に応じて2種類の無線タグ(例えば第1実施例の無線タグと第3実施例の無線タグ)を用意し、その2種類の無線タグをCDのタイプに応じて貼り分ければよいが煩雑である。2種類の無線タグを用意すればコストも掛かる。
【0032】
かかる観点から、図12に示す本実施例の無線タグでは、導体板10(主導体部)とは別体で補助導体部15が設けられる。例えば、本実施例の無線タグは、第1実施例の無線タグに対して、別体で補助導体部15が設けられたものである。また、補助導体部15は、本実施例の無線タグがCDに貼り付けられた状態で導体板10を取り囲むような形状で形成された、円環状の導体板である。より具体的には、補助導体部15は、本実施例の無線タグがCDに貼り付けられた状態で、第1実施例の導体板10の外縁でオーバーラップするとともに、CDの記録面金属部の内縁とオーバーラップするようにして形成される。これにより、実質的に導体板10の導体領域が拡大される。
なお、導体板10と補助導体部15はDC上で絶縁されていてもよい。例えば、導体板10と補助導体部15がそれぞれビニール素材等でラッピングされており、両者がオーバーラップする部分で導体間の直接的な接触がない場合でも構わない。
図5に示した第1実施例の無線タグの寸法、及び記録面金属部の内径がφ40のCDの寸法を前提とすると、補助導体部15の内径は例えばφ26、外径は例えばφ42である。
【0033】
第6実施例の無線タグは、以下のとおり使用される。すなわち、蒸着金属部があるCDに対しては例えば第1実施例の無線タグが貼り付けられ、蒸着金属部がないCDに対しては本実施例の無線タグを貼り付けるようにする。このとき、本実施例の無線タグのCDに対する貼り付けは、補助導体部15を先ずCDのレーベル面に貼り付け、その上に第1実施例の無線タグを貼り付けることでなされる。すなわち、1種類の無線タグ(例えば第1実施例の無線タグ)を用意しておき、補助導体部15を付加するか否かによって、CDのタイプ(蒸着金属部の有無)に応じた無線タグをCDに設定することができるようになる。そのため、無線タグを2種類用意するよりも低コスト化を図ることができる。
なお、本実施例の無線タグの基礎となる無線タグ、すなわち補助導体部15が付加されていない状態の無線タグとして第1実施例の無線タグを想定したが、これに限られない。基礎となる無線タグの構成、形状は、蒸着金属部があるCDに適したものであればよく、例えば第2実施例の無線タグでもよい。その場合には、前述したθが調整される。
【0034】
(7)第7実施例
第7実施例の無線タグは、第6実施例の無線タグと同様の観点で形成されている。本実施例の無線タグは、補助導体部15の形態が第6実施例のものと異なる。図13に本実施例の無線タグの構成を示す。図13に示すように、本実施例の無線タグは、CDに貼り付けられた状態で、例えば第1実施例の導体板10(主導体部)の上面の一部を覆うことにより平面視で導体板10の外縁とオーバーラップするとともに、CDの記録面金属部の内縁と平面視でオーバーラップするようにして形成される。本実施例の無線タグも第6実施例と同様、蒸着金属部がないCDに貼り付けられる。このとき、本実施例の無線タグのCDに対する貼り付けは、例えば第1実施例の無線タグを先ずCDのレーベル面に貼り付け、その上に図13に示す補助導体部15を貼り付けることでなされる。
【0035】
(8)第8実施例
スロットの外径が、無線タグの貼付け対象のCDの金属部の内径以下である場合(第1実施例の無線タグ)と、CDの金属部の内径より大きい場合(第2実施例の無線タグ)とで電磁結合の程度が異なるため、無線タグの有効通信距離が異なる(図6、図8参照)。他方、前述したように、発明者らの調査によれば、蒸着金属部の内径D4としてφ20〜27の範囲のCDの存在が確認されている。よって、無線タグのスロット外径をφ20〜27の範囲内で一意に設定したとすれば、スロットと蒸着金属部がオーバーラップするCDとオーバーラップしないCDが混在することになり、CD毎に無線タグの有効通信距離が異なることになる。そこで、本実施例の無線タグでは、CDの蒸着金属部の内径に依存しない安定した有効通信距離を得るために、補助導体部が利用される。
【0036】
本実施例の無線タグを図14に示す。この無線タグは第6実施例と同様の補助導体部15を備えるが、第6実施例の場合と比較して補助導体部15の内径が異なる。本実施例では、補助導体部15の内径は、スロット外径よりも小さく設定される。これにより、補助導体部15がCDに貼り付けられた場合、本実施例の無線タグのスロットは、CDの蒸着金属部の内径に関わらず常に補助導体部15とオーバーラップすることになる。補助導体部15の外径は、第6実施例と同じく、CDの記録面金属部の内縁とオーバーラップするようにして形成される。また、第2実施例同様、有効通信距離を確保するためにスロットの形状(図7のθ)が適切に設定される。
【0037】
上述したように、本実施例の無線タグでは、CDのタイプ(蒸着金属部の有無、蒸着金属部の内径の大きさ)に関わらず、CDに貼り付けた場合に常に補助導体部15がスロットとオーバーラップする。そのため、スロットの形状(図7のθ)を適切に設定することで、無線タグの有効通信距離がCDのタイプに依存せずに安定する。
【0038】
(9)第9実施例
上述した第1〜第8実施例の無線タグでは、スロット11の形態が全体として円弧状のメアンダ形状をなしている場合について説明したが、これに限られない。図15には、本実施例の無線タグにおいて、スロット11の様々な変形例に係る形状が示される。
図15(a)に示すスロット11の形態は、給電部から両側に延びており、全体として円弧状の非メアンダ形状となっている。図15(a)に示すスロット11は全体として正確な円弧となっているが、多少蛇行した形状でも構わない。スロット11の全長が所要のインダクタンスを確保するため、図15(a)に示すように全長を調整するための折り返し部を設けてもよい。
図15(b)に示すスロット11の形態は、2.45GHzの無線周波数を用いる場合の形状である。この場合、953MHzの場合と比較して波長が短くなるため、メアンダ形状にせずに済む。
図15(c)に示すスロット11の形態は、上述した各実施例と同様にメアンダ形状であるが、このメアンダ形状は複数のランダムな形の略U字形状部が円弧状に連結されて形成されている。ランダムな形の略U字形状部としたのは、隣接する略U字形状部のスロットの外側の導体を流れる電流の向きは逆であるものの、互いに逆向きの電流ベクトル方向が完全には平行とならず、逆向きの電流によって生ずる電磁波のキャンセル量を低減できるためである。これにより、アンテナ実効長を、例えばメアンダ形状を構成するのに正確な(ランダムでない)U字形を適用する場合と比較して長くすることができ、スロット11の外径を小さくすることができる。
【0039】
(10)第10実施例
第1〜第9実施例に無線タグに関し、ディスク状の記録媒体に貼り付けることを前提として説明してきたが、これに限られない。非導電部材と離間した内側の第1領域と、導電部材に近接した外側の第2領域とからなる対象部材に適用することができる。このような対象部材として典型的なのは、例えば車両用のアーム又はフレーム等の凹部のある金属部材である。このような金属部材では例えば軽量化の目的で凹部が予め設けられているため、その凹部に本実施例の無線タグを取り付ける。この場合は、第1領域が凹部に相当し、第2領域が凹部の周辺領域に相当する。無論、金属部材の軽量化の目的のために設けられた凹部に無線タグを取り付けてもよいし、金属部材の機能上の障害がない箇所に予め設けた凹部に無線タグを取り付けてもよい。
【0040】
図16は、本実施例の無線タグが金属部材に取り付けられた状態を示す。本実施例の無線タグは、例えば第1実施例の無線タグに対して導体板の中央の孔部を埋めて円形にしたものとなっている。スロットアンテナを構成する導体板及びメアンダ状のスロットの寸法は、取付対象の金属部材の形状、及び無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られる目的で最適化される。
図16において、金属部材には円筒状の凹部が設けられており、この凹部上に、全体として円形の平板状の本実施例の無線タグが取り付けられる。そのため、本実施例の無線タグの外径は、取付対象となる金属部材の凹部の径よりも大きい。金属部材に対する無線タグの取付方法は問わないが、例えば極薄の両面テープ、接着剤、シール等が取付のために使用され得る。好ましくは、メアンダ状のスロットの外径は、金属部材の凹部の径よりも小さい。無線タグの外径を極力小さくするために、前述した実施例同様、ここでもメアンダ状のスロットアンテナが適用される。
【0041】
図16に示すオーバーラップの部分は、無線タグの金属部材への取り付けのためのみならず、無線タグのスロットアンテナを構成する導体板との電磁結合を生じさせる。すなわち、このオーバーラップにより、高周波帯において、無線タグの導体板が金属部材とが電磁結合するため、金属部材を導体板の一部として機能させることができ、スロットから十分に電波を放射させることができる。一方、この無線タグが金属部材に取り付けられた場合、スロットの下部には金属部材の凹部が配置されることになり、スロットアンテナから放射される電波を遮蔽することが防止される。それゆえ、本実施例の無線タグはそれ自体コンパクトではあるが、リーダライタ(図示せず)との間の十分な有効通信距離を確保することができる。
【0042】
以上、対象部材として金属部材に本実施例の無線タグが取り付けられる場合について説明したが、対象部材として金属部材のみならず、所定の大きさの凹部、空洞部、孔部が存在する導電性部材に対して適用可能であることは明らかである。例えば、図16に示す無線タグは、円筒状の金属部材の凹部に適合するように円形の無線タグ(すなわち、円形の導体板)としたが、これに限られない。無線タグの全体の形態は、対象部材の形態に対して最適化されうる。例えば、対象部材の凹部が直方体形状であれば、無線タグの全体の形態は矩形になりうる。
【0043】
また、第10実施例の無線タグに対して、第1〜第9実施例の無線タグに適宜適用できることは言うまでもない。例えば、スロットは、無線タグを金属部材の内側に取り付けた場合に金属部材の第1領域、すなわち凹部にスロット全体が収容されるようにして形成されることが好ましい。また、導体板の外縁で導体板とオーバーラップするように形成され、導体板の導体領域を拡大するための補助導体部、をさらに備けることで、凹部の大きさが異なる複数の金属部材に対し、1種類の無線タグを適用することができる。
【0044】
(11)第11実施例
上記第3実施例(図9参照)では、蒸着金属部がないCDに対して無線タグを取り付ける場合に、導体板10とCDの記録面金属部とをオーバーラップさせるための延長部101を4箇所設けた例について説明した。これに対して、第11実施例では、第3実施例の無線タグのさらに好ましい例について説明する。
第11実施例の無線タグを図17に示す。図17は、第11実施例の無線タグを、蒸着金属部がないCDに貼り付けた状態を示している。図17に示すように、本実施例の無線タグの導体板10は、第1導体部110と第2導体部120(第3実施例の延長部101に相当するもの)を備えている。第1導体部110は、スロット11が形成され、CDの記録面金属部(第2領域)の内径よりも小さい外径を有する環状の導体部材である。第2導体部120は、給電部2とCDの中心を結ぶ線(B−B線)に沿って、CDの外縁に向かって第1導体部110から相対する2方向に延びており、CDの記録面金属部とオーバーラップするように形成された導体部材である。
【0045】
本実施例の無線タグをCDに貼り付けた場合、導体板10の第1導体部110とCDの記録面金属部との間には、平面視で見て周方向に非導体部分が設けられることになる。よって、第2導体部120とCDの記録面金属部の2箇所のオーバーラップの間においてダイポールアンテナが形成されるとともに、第2導体部120とオーバーラップするCDの記録面金属部全体が無線タグと電磁結合することによって電磁波が放射されるようになる。すなわち、本実施例の場合、給電部2とCDの中心を結ぶ線に沿った導体板10の全長は、例えば約52mm程度であるが、オーバーラップ部分を介してCD(外径φ120)全体で動作させることで、国内でのRFIDシステムで使用される952〜954MHzのλ/2(約150mm)にダイポールアンテナの実効長を近付けることができるようになる。そのため、スロット11によるスロットアンテナとしての動作のみの場合よりも、通信距離を拡張することができる。また、第3実施例(図9参照)の場合と比較して導体板10の面積がさらに小さくなり、低コスト化に寄与する。記録面金属部の内周側に蒸着金属部が存在して平面視で蒸着金属部と導体板10がオーバーラップするようなCDについては、上述したダイポールアンテナが形成されず、スロットアンテナのみが動作することになる。
なお、本実施例の場合の好ましい寸法例を挙げれば、第2導体部120の幅は10mm、B−B線に沿った第2導体部120の長さは12〜13mm、第2導体部120とCDの記録面金属部のオーバーラップ量は4mmである。
【0046】
(12)第12実施例
次に、第12実施例の無線タグについて、図18を参照して説明する。
図18に示すように、本実施例の無線タグは、第11実施例の無線タグとは、第2導体部120において、第1導体部110からCDの記録面金属部の間がメアンダ状で形成されている点で異なる。これにより、第2導体部120を実質的により長くすることができるため、第11実施例で述べたダイポールアンテナとしての動作をより高めるようにすることができる。すなわち、上述したように国内でのRFIDシステムで使用される場合のλ/2が約150mmであるが、第2導体部120をメアンダ状とすることで、導体板10によって形成されるダイポールアンテナの全長を150mmに近付けることができるようになる。例えば、第11実施例では、給電部2とCDの中心を結ぶ線に沿った導体板10の全長が約52mm程度であるが、本実施例では、メアンダの線幅を1mmとした場合に、導体板10の全長を約130mm(実効長は110〜120mm)とすることができ、上記λ/2に近付けることができる。
なお、導体板10の全長を上記λ/2に近付けることができるので、本実施例の無線タグはそれ単独で、すなわち、CDの記録面金属部との電磁結合を考慮することなく使用することができる。例えば、本実施例の無線タグを、導電性部分を持たないVHSテープのプラスチックの筐体に貼り付ける、または本などに貼り付けることなどが可能である。
【0047】
なお、本実施例の無線タグでは、第2導体部120において、第1導体部110からCDの記録面金属部の間がメアンダ状で形成されているが、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分はメアンダ形状にしないようにすることが好ましい。つまり、このオーバーラップする部分をもメアンダ状にすると、第11実施例と同じ電磁結合性能を維持するために、すなわち実質的なオーバーラップ量を確保するために無線タグの全長が長くなってしまうためである。
【0048】
(13)第13実施例
次に、第13実施例の無線タグについて、図19を参照して説明する。
図19に示すように、本実施例の無線タグは、第11実施例の無線タグとは、第2導体部120において、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分が記録面金属部の内周に沿って延びている点で異なる。このオーバーラップ部分を記録面金属部の内周に沿って延長させているのは、無線タグ全体を全体的にコンパクトにするためである。このように第2導体部120を形成することで、第12実施例と同様に、第2導体部120を実質的により長くすることができるため、第11実施例で述べたダイポールアンテナとしての動作をより高めるようにすることができる。
本実施例の無線タグは、第2導体部120の長さを十分に確保しようとする点において第12実施例と同一の考え方に基づいたものであるが、第12実施例のように第2導体部120をメアンダ形状により成形していないため、通信性能上有利である。つまり、第12実施例のように第2導体部120をメアンダ形状により成形した場合には、メアンダの略V字部分において電流の向きが逆向きに近くなることによる電気的損失が生ずるが、本実施例のものではそのような損失が生じない。そのため、本実施例の無線タグは、第12実施例のものよりも通信距離を長くすることができる。
【0049】
なお、本実施例の無線タグは、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分を、導体板10の実効長がダイポールアンテナとして適切に動作するλ/2になるまで、記録面金属部の内周に沿って延長させることができる。この点でも、メアンダ形状を用いた第12実施例のものよりも設計上の制約が少ないと言える。
【0050】
(14)第14実施例
次に、第14実施例の無線タグについて、図20を参照して説明する。
図20に示すように、本実施例の無線タグは、上述した第12および第13実施例の無線タグの特徴を共に備えたものである。すなわち、本実施例の無線タグは、第2導体部120において、第1導体部110からCDの記録面金属部の間がメアンダ状で形成され、かつ、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分が記録面金属部の内周に沿って延びている。本実施例の無線タグは、第12実施例の無線タグに対する改良型と捉えることもできる。すなわち、本実施例の無線タグは、導体板10がダイポールアンテナとして適切に動作するための実効長を確保するのに、CDの記録面金属部とオーバーラップする部分が記録面金属部の内周に沿って延びている分、メアンダ形状の部分の長さを第12実施例の場合ほど必要とならない。その結果、第12実施例の場合よりもメアンダ形状の部分の折り返し回数を減らすことができ、メアンダ形状の部分の電気的損失が抑制される。
【0051】
本発明の複数の実施例について詳細に説明したが、本発明の無線タグは上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。例えば、上述した各実施例では、無線タグの貼り付け対象がCDである場合を主として述べてきたが、CDと同種の構造の他の物品、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc;登録商標)等に応じて本発明の無線タグを適宜最適化しうることは当業者に理解される。
【0052】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0053】
(付記1)
非導電部材からなる内周側の第1領域と、導電部材を含む外周側の第2領域とからなるディスク状の記録媒体、に取り付けられる無線タグであって、
無線ICチップに接続される給電部と、
スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、
を備え、
前記導体板は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部が記録媒体の前記第2領域とオーバーラップするように形成され、
前記スロットの長さは、前記スロットアンテナが前記無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される、
無線タグ。(1)
【0054】
(付記2)
前記スロットは、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に記録媒体の前記第1領域にスロット全体が収容されるようにして形成される、
付記1に記載された無線タグ。(2)
【0055】
(付記3)
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状である、
付記1又は2に記載された無線タグ。(3)
【0056】
(付記4)
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状の非メアンダ形状である、
付記1又は2に記載された無線タグ。(4)
【0057】
(付記5)
前記スロットは、長さを調整するための折り返し部を有する、
付記4に記載された無線タグ。(5)
【0058】
(付記6)
前記導体板は、
前記スロットが設けられた環状の主導体部と、
前記導体本体部とは内周側でオーバーラップし、かつ記録媒体の前記第2領域とは外周側でオーバーラップする環状の補助導体部と、を有する、
付記1〜5のいずれかに記載された無線タグ。(6)
【0059】
(付記7)
前記導体板は、
前記スロットが形成され、記録媒体の前記第2領域の内径よりも小さい外径を有する環状の第1導体部と、
前記給電部と記録媒体の中心を結ぶ線に沿って、記録媒体の外縁に向かって前記第1導体部から相対する2方向に延びており、前記第2領域とオーバーラップするように形成された第2導体部と、を有する、
付記1〜5のいずれかに記載された無線タグ。(7)
【0060】
(付記8)
前記第2導体部において、前記第1導体部から前記第2領域の間がメアンダ状で形成されている、
付記7に記載された無線タグ。(8)
【0061】
(付記9)
前記第2導体部において、前記第2領域とオーバーラップする部分が前記第2領域の内周に沿って延びている、
付記7または8に記載された無線タグ。(9)
【0062】
(付記10)
非導電部材と離間した内側の第1領域と、導電部材に近接した外側の第2領域とからなる対象部材、に取り付けられる無線タグであって、
無線ICチップに接続される給電部と、
スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、
を備え、
前記導体板は、無線タグを対象部材の内側に取り付けた場合に、少なくとも一部が対象部材の前記第2領域とオーバーラップするように形成され、
前記スロットの長さは、前記スロットアンテナが前記無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される、
無線タグ。
【0063】
(付記11)
前記スロットは、無線タグを対象部材の内側に取り付けた場合に対象部材の前記第1領域にスロット全体が収容されるようにして形成される、
付記10に記載された無線タグ。
【0064】
(付記12)
前記導体板の外縁で導体板とオーバーラップするように形成され、導体板の導体領域を拡大するための補助導体部、をさらに備えた、
付記10又は11に記載された無線タグ。
【符号の説明】
【0065】
2…給電部
10…導体板
11…スロット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電部材からなる内周側の第1領域と、導電部材を含む外周側の第2領域とからなるディスク状の記録媒体、に取り付けられる無線タグであって、
無線ICチップに接続される給電部と、
スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、
を備え、
前記導体板は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部が記録媒体の前記第2領域とオーバーラップするように形成され、
前記スロットの長さは、前記スロットアンテナが前記無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される、
無線タグ。
【請求項2】
前記スロットは、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に記録媒体の前記第1領域にスロット全体が収容されるようにして形成される、
請求項1に記載された無線タグ。
【請求項3】
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状である、
請求項1又は2に記載された無線タグ。
【請求項4】
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状の非メアンダ形状である、
請求項1又は2に記載された無線タグ。
【請求項5】
前記スロットは、長さを調整するための折り返し部を有する、
請求項4に記載された無線タグ。
【請求項6】
前記導体板は、
前記スロットが設けられた環状の主導体部と、
前記導体本体部とは内周側でオーバーラップし、かつ記録媒体の前記第2領域とは外周側でオーバーラップする環状の補助導体部と、を有する、
請求項1〜5のいずれかに記載された無線タグ。
【請求項7】
前記導体板は、
前記スロットが形成され、記録媒体の前記第2領域の内径よりも小さい外径を有する環状の第1導体部と、
前記給電部と記録媒体の中心を結ぶ線に沿って、記録媒体の外縁に向かって前記第1導体部から相対する2方向に延びており、前記第2領域とオーバーラップするように形成された第2導体部と、を有する、
請求項1〜5のいずれかに記載された無線タグ。
【請求項8】
前記第2導体部において、前記第1導体部から前記第2領域の間がメアンダ状で形成されている、
請求項7に記載された無線タグ。
【請求項9】
前記第2導体部において、前記第2領域とオーバーラップする部分が前記第2領域の内周に沿って延びている、
請求項7または8に記載された無線タグ。
【請求項1】
非導電部材からなる内周側の第1領域と、導電部材を含む外周側の第2領域とからなるディスク状の記録媒体、に取り付けられる無線タグであって、
無線ICチップに接続される給電部と、
スロットが設けられた導体板を含み、前記給電部から給電されるスロットアンテナと、
を備え、
前記導体板は、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に、少なくとも一部が記録媒体の前記第2領域とオーバーラップするように形成され、
前記スロットの長さは、前記スロットアンテナが前記無線ICチップとの間で所定の無線周波数で共振するようなインダクタンスが得られるように設定される、
無線タグ。
【請求項2】
前記スロットは、無線タグを記録媒体の内周側に取り付けた場合に記録媒体の前記第1領域にスロット全体が収容されるようにして形成される、
請求項1に記載された無線タグ。
【請求項3】
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状である、
請求項1又は2に記載された無線タグ。
【請求項4】
前記スロットは、前記給電部から両側に延びており、全体として円弧状の非メアンダ形状である、
請求項1又は2に記載された無線タグ。
【請求項5】
前記スロットは、長さを調整するための折り返し部を有する、
請求項4に記載された無線タグ。
【請求項6】
前記導体板は、
前記スロットが設けられた環状の主導体部と、
前記導体本体部とは内周側でオーバーラップし、かつ記録媒体の前記第2領域とは外周側でオーバーラップする環状の補助導体部と、を有する、
請求項1〜5のいずれかに記載された無線タグ。
【請求項7】
前記導体板は、
前記スロットが形成され、記録媒体の前記第2領域の内径よりも小さい外径を有する環状の第1導体部と、
前記給電部と記録媒体の中心を結ぶ線に沿って、記録媒体の外縁に向かって前記第1導体部から相対する2方向に延びており、前記第2領域とオーバーラップするように形成された第2導体部と、を有する、
請求項1〜5のいずれかに記載された無線タグ。
【請求項8】
前記第2導体部において、前記第1導体部から前記第2領域の間がメアンダ状で形成されている、
請求項7に記載された無線タグ。
【請求項9】
前記第2導体部において、前記第2領域とオーバーラップする部分が前記第2領域の内周に沿って延びている、
請求項7または8に記載された無線タグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−155627(P2011−155627A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179264(P2010−179264)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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