説明

無線チャンネル品質インジケータのための定期的リフレッシング

【課題】モバイル環境により適した受信方法及び受信機を提供する。
【解決手段】それぞれ異なる周波数を有する数個の無線周波数(RF)チャンネルを介して送信されるデータストリームを受信するこの方法は、帯域幅を走査して、利用可能な無線周波数チャンネルを識別する工程2と、各利用可能な無線周波数チャンネルについて品質インジケータを判定する工程4と、前記品質インジケータに応じて、前記データストリームを受信するためのチャンネルを選択する工程6と、を含む。上記方法は、各利用可能なチャンネルの前記品質インジケータについてのリフレッシング期間を判定し、現在受信されているチャンネルの品質インジケータの値に応じて各所定のリフレッシング期間を重み付けする工程20をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタルビデオ放送(DVB)環境におけるような数個の無線周波数チャンネル上で放送されるビットストリームの受信に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
DVBシステムでは、プログラムは、数個のトランスポートストリーム(TS)を介して繰り返し送信される。各トランスポートストリームは、3つの異なるタグまたは識別子の使用により、ラベル付けされる。ネットワークIDは、当該ストリームの発信元であるネットワークを識別し、オリジナルネットワークIDは、当該ストリームの発生元であるネットワークを識別し、トランスポートストリームIDは、トランスポートストリームを識別する。
【0003】
各ストリームは、1個または数個の無線周波数チャンネルを介して送信され、各チャンネルは、異なる周波数を有する。
【0004】
IPプロトコルが用いられる場合、いわゆるSI/PSIテーブルまたはサービステーブルにより、当該データの検索を可能にする周波数と共に当該データのIPアドレスがマッピングされる。
【0005】
受信後、チューナーが適切な無線周波数に設定され、パケットをソートして、選択されたプログラムを検索する。
【0006】
しかし、これらの無線周波数チャンネルは、例えば環境変化および信号フェージングに起因して、変動する。
【0007】
このような変化は、受信器および/または環境状況の展開が急速なモバイル環境においては、必ず増大する。その上、無線周波数およびIPアドレスをマッピングする上記テーブルは、所定の地域内でしか有効にならない。一領域から別領域へと移動が発生した場合、異なるプログラムを搬送するために、同一無線周波数が用いられる。
【0008】
通常、受信器は、帯域幅を走査して、利用可能な無線周波数チャンネルそれぞれを検出する。その後、各無線周波数チャンネルについて、品質インジケータが判定される。受信器は、品質インジケータが所定の閾値を越えているチャンネルをロックオンし、当該チャンネルによって搬送される信号を処理する。
【0009】
既存のデバイスの場合、信号損失が発生するまで(すなわち、品質が処理対象にならないほど低下するまで)、受信器は選択されたチャンネル上で保持される。これらの状況において受信器が出来ることは、信号品質が上昇するまで待機するか、または、帯域幅の走査によってやり直すことである。その結果、品質が低下した際、処理の長期遅延が発生する。
【0010】
本発明の1つの目的は、請求項1中に記載されているようなモバイル環境により適した受信方法と、請求項12中に記載されているような対応する受信器とを提供することとである。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例示の目的のみのために与えられる以下の記載を読み、また、付属図面を参照すれば、明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の側面としての方法は、それぞれ異なる周波数を有する数個の無線周波数(RF)チャンネルを介して送信されるデータストリームを受信する方法であって、帯域幅を走査して、利用可能な無線周波数チャンネルを識別する工程(2)と、各利用可能な無線周波数チャンネルについて品質インジケータを判定する工程(4)と、前記品質インジケータに応じて、前記データストリームを受信するためのチャンネルを選択する工程(6)と、を含み、前記方法は、各利用可能なチャンネルの品質インジケータについてリフレッシング期間を判定し、現在受信されているチャンネルの品質インジケータの値に応じて各所定のリフレッシング期間を重み付けする工程(20)をさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
それぞれ異なる周波数を有する数個の無線周波数(RF)チャンネルを介して送信されるデータストリームを受信するモバイル環境により適した受信方法と集積回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して図示されているこの例において、数個の無線周波数チャンネルを介して送信されるデジタルプログラム(より詳細には、IPプロトコルを用いて送信されるDVBHプログラム)の受信のために、モバイル器具が用いられる。
【0015】
上記モバイル器具は、帯域幅を走査して各利用可能なチャンネルを識別する工程2により、受信方法を開始する。この工程は、「全帯域走査」としても公知である。
【0016】
次に、本方法は、利用可能なチャンネルそれぞれについて品質インジケータ(QIで示す)を判定する工程4を含む。多くの異なる演算方法および品質インジケータが、利用可能である。このインジケータが変調パラメータに依存している場合でも、1つの極めて一般的なQIは、信号対雑音比である。有利なことに、QIは変調パラメータから独立しているため、その変調パラメータと関係無く、無線周波数チャンネルの比較を高速かつ信頼性を以て行うことができる。
【0017】
次に、本方法は、利用可能なチャンネルそれぞれについて品質インジケータ(QIで示す)を判定する工程4を含む。多くの異なる演算方法および品質インジケータが、利用可能である。このインジケータが変調パラメータに依存している場合でも、1つの極めて一般的なQIは、信号対雑音比である。有利なことに、QIは変調パラメータから独立しているため、その変調パラメータと関係無く、無線周波数チャンネルの比較を高速かつ信頼性を以て行うことができる。
【0018】
その後、上記器具の利用状態に応じて、工程6において、1個の無線周波数チャンネルが選択される。例えば、この選択は、上記器具を駆動して対応する特定IPアドレスによりパケット搬送ストリームを探すための特定プログラムについてのユーザからのリクエストに起因する。上記器具は、上記プログラムをIPアドレスおよびチャンネル周波数と共にマッピングするサービステーブルを用いて、チューナーを設定する。上述した実施形態において、上記サービステーブルは、INTテーブル(IP/Mac通知テーブル)として公知であり、他のSI/PSIテーブルと組み合わせ可能である。
【0019】
工程8の間、データストリームが受信され、従来の様式で処理される。
【0020】
試験10において、上記方法では、この現在受信されている無線チャンネルの品質インジケータをリフレッシングする必要性を評価する。上記品質インジケータについて上記器具中においてリフレッシング期間が設定され、この期間が満了すると、上記プロセスは、工程4に戻り、上記選択されたチャンネルの品質インジケータを再度評価する。あるいは、上記信号が損失すると、上記方法は、工程2に戻り、帯域幅全体を走査することにより、再度開始する。
【0021】
これらの工程に加えて、本発明の方法は、上記対応する品質インジケータに基づいて、少なくとも現在の無線チャンネルについてリフレッシング期間を判定する工程20をさらに含む。
【0022】
第1の実施形態において、上記方法は、品質インジケータ値を分析する工程22を含む。異なる品質インジケータ閾値が設定され、各範囲について、対応するリフレッシング期間が判定される。例えば、品質インジケータ値が高い(すなわち、第1の閾値よりも高い)場合、リフレッシング期間を長く設定することができる。反対に、品質インジケータが第2の閾値を下回る場合、リフレッシング期間を極めて短くすることができる。
【0023】
もちろん、任意の種類の伝達関数を用いて、品質インジケータからリフレッシング期間を直接得ることもできる。
【0024】
有利なことに、上記方法は、数個のサンプルについての品質インジケータの展開を分析する工程24も含む。この場合において、品質インジケータが上昇する傾向にある場合、リフレッシング期間はより長くなる。反対に、品質インジケータが低減する傾向にある場合、リフレッシング期間は短くなる。
【0025】
有利なことに、上記方法は、現在受信されているデータストリームのコンテンツを分析して、優先レベルを判定する工程26も含む。例えば、音声プログラムまたは映像プログラムを搬送する無線チャンネルは、異なる品質レベルで処理可能であるため、異なるリフレッシング期間を持つことができる。
【0026】
また、上述した実施形態において、工程2における第1の走査時に識別された各チャンネルについて演算された品質インジケータが記憶され、各チャンネルについて、特定のリフレッシング期間が設定される。
【0027】
この実施形態において、上記方法は、無線周波数チャンネルの分類28をさらに含み、各クラスについて、異なるリフレッシング期間が設定される。
【0028】
例えば、5個のクラスが、増大するリフレッシング期間と共に設定される。
【0029】
第1のクラスは、現在受信されているプログラムのストリームを搬送する無線周波数についてのものである。
【0030】
第2のクラスが、やはり現在のプログラムを搬送しているものとして識別されかつチューナーレベルにおいてロックオンしている(すなわち、チューナーによる受信および処理が可能な)その他の無線周波数について、設定される。
【0031】
第3のクラスが、上記サービステーブルによって識別されているような現在のサービスを搬送している可能性があるがロックオンしていない無線周波数について、設定される。有利なことに、このクラスは、チューナーレベルにおいてロックオンしているが必要なプログラムを搬送していない無線周波数についても、利用される。
【0032】
第4のクラスが、ロックオンしておらずかつ必要なプログラムを搬送していない無線周波数を再グループ化する。
【0033】
第5のクラスが、その他の無線周波数全てについて、設定される。
【0034】
例えば、第1のクラスの無線周波数は、各バーストにおいてリフレッシュされたQIを有し、第2のクラスは10〜15秒間のリフレッシング期間を有し、第5のクラスは、約5分間に設定されたリフレッシング期間を有する。
【0035】
別の実施形態において、全チャンネルのリフレッシング期間が、現在処理されているチャンネルの品質インジケータに応じた転送により、重み付けされる。
【0036】
特定の曲線が、図2中に示される。この図上において、品質インジケータは、0から100の間に設定され、x軸で示される。重み係数は、y軸で示される。この曲線は、QI値の関数として付加すべき重みを表す伝達関数を示す。
【0037】
現在処理されている無線周波数のQIが判定された後、その他全てのリフレッシング期間が、対応する係数により、重み付けされる。図示の例の場合において、QIが0から30の間である場合、リフレッシング期間をゼロで乗算し、その結果、全チャンネルが常時モニタリングされる。QI値が30から40の間である場合、リフレッシング期間は1/3〜1/2の間の値で乗算され、その結果、現在処理されているチャンネルが低品質になることに起因して、リフレッシング期間が短縮される。値が40から50の間である場合、リフレッシング期間は、1/2から3の間の値で乗算される。品質インジケータが50よりも高い場合、リフレッシング期間は3で乗算され、これにより、現在のチャンネルが高品質インジケータを持つ際、各チャンネルについてリフレッシング期間が増大される。
【0038】
その結果、各無線周波数チャンネルのリフレッシング期間は、現在処理されているチャンネルの受信品質に応じて、適合される。
【0039】
このような実施形態において、現在処理されているチャンネルのリフレッシング期間に重み付け関数を適用するか、または、この特定のリフレッシング期間を別個に取り扱うことが、可能になる。
【0040】
また、このような受信方法により、受信された信号の異なる種類の処理も可能になる。例えば、ハンドオーバー決定が、現在受信されているチャンネルの品質インジケータの値によってトリガされ、リフレッシング期間の適合により、品質インジケータが確実に正確になる。
【0041】
2個の無線チャンネルが同一データを搬送する場合は、現在の無線周波数チャンネルの品質インジケータが第2のチャンネルの品質インジケータよりも高い場合、ハンドオーバーをトリガすることができる。その結果、現在のチャンネルが処理可能な品質を持っている状態のまま、ハンドオーバーを損失無くトリガすることが可能となる。
【0042】
さらに別の実施形態において、上記方法は、リフレッシング期間に基づいて、受信の品質インジケータを器具ユーザに表示する工程を含む。
【0043】
もちろん、他の多くの実施形態および上述した実施形態の組み合わせも、達成可能である。
【0044】
1つの別の実施形態において、エミッタの地理的再分割に関する情報が公知であり、モバイル器具によって記憶される。この場合、上記方法は、リフレッシング期間を地理的位置の関数として判定する工程も含む。例えば、現在受信されている無線周波数のエミッタに近接するエミッタから放出される信号を搬送する無線周波数は、短いリフレッシング期間で密にモニタリングされる。
【0045】
さらに、1個の周波数チャンネルを分析すべきか否かを判定することができるように、周波数チャンネルによって搬送されるタグに応じてフィルタを設定することができる。フィルタは、選択されたプログラムに対する受信を制限するようなデータストリームのレベルか、または、ネットワークID、オリジナルネットワークIDまたはトランスポートストリームID上のフィルタによるトランスポートのレベルにおいて、設定することができる。プラットフォーム識別子などの他の識別子および使用プロトコルに基づいた信号の種類に基づいて他のフィルタを設定することも、可能である。
【0046】
例えば、特定の1つのネットワークのプログラムのみを受信するように、1つの器具を設定することができる。従って、この場合、フィルタを設定する際、当該フィルタ中に設定されているネットワークID以外のネットワークIDを搬送している全ての周波数チャンネルを処理しないように、当該フィルタを設定する。
【0047】
有利なことに、本発明は、節電のために用いられる。より詳細には、本発明は、電力消費を低減する方法と統合することができる。リフレッシング期間がチャンネル品質に合わせて調節されるため、品質が良好である場合にリフレッシング期間を短縮することができ、その結果、節電に繋がる。
【0048】
同様に、受信側デバイスの電力消費に応じてリフレッシング期間を設定することもできる。例えば、上記方法はバッテリレベルの分析を含み、上記バッテリが低下した際は、節電のために、各チャンネルまたはいくつかのチャンネルの品質インジケータについてのリフレッシング期間が増大する。
【0049】
これは、電力消費の関数としても、適用可能である。分析された電力消費が特定の閾値を越えた場合、各チャンネルまたはいくつかのチャンネルの品質インジケータについてのリフレッシング期間が増大する。
【0050】
もちろん、他の多くの実施形態および上述した実施形態の組み合わせが、設計可能である。
【0051】
詳細には、本発明の方法は、マイクロプロセッサ用プログラムにより、実施可能である。
【0052】
また、本発明の方法は、このようなプログラムまたはこの方法を達成するように具体的に設計されたものを含む任意のデコーダによっても、実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明のプロセスの一般的フローチャートを示す。
【図2】図2は、リフレッシング期間のための重み付け曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる周波数を有する数個の無線周波数(RF)チャンネルを介して送信されるデータストリームを受信する方法であって、
帯域幅を走査して、利用可能な無線周波数チャンネルを識別する工程(2)と、
各利用可能な無線周波数チャンネルについて品質インジケータを判定する工程(4)と、
前記品質インジケータに応じて、前記データストリームを受信するためのチャンネルを選択する工程(6)と、
を含み、
前記方法は、各利用可能なチャンネルの品質インジケータについてリフレッシング期間を判定し、現在受信されているチャンネルの品質インジケータの値に応じて各所定のリフレッシング期間を重み付けする工程(20)をさらに含む、
方法。
【請求項2】
各利用可能なチャンネルを分類する工程(28)をさらに含み、前記対応するチャンネルのクラスの関数としてリフレッシング期間が設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記品質インジケータについてのリフレッシング期間は、前記品質インジケータ値に転送を適用することにより、判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記品質インジケータの変動を分析する工程(24)をさらに含み、無線周波数チャンネルの前記品質インジケータについての前記リフレッシング期間は、前記品質インジケータの変動に基づいて判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記データストリームのコンテンツを分析する工程(26)をさらに含み、無線周波数チャンネルの前記品質インジケータについての前記リフレッシング期間は、前記データストリームのコンテンツに基づいて判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
受信側デバイスのバッテリレベルを分析する工程をさらに含み、無線周波数チャンネルの品質インジケータについての前記リフレッシング期間は、前記バッテリレベルに基づいて判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
受信側デバイスの電力消費を分析する工程をさらに含み、無線周波数チャンネルの品質インジケータについての前記リフレッシング期間は、前記電力消費に基づいて判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各無線周波数チャンネルについてのエミッタの地理的場所を判定する工程をさらに含み、無線周波数チャンネルの品質インジケータについての前記リフレッシング期間は、対応するエミッタの地理的場所に基づいて判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
現在の無線周波数チャンネルの品質インジケータについての前記リフレッシング期間に基づいて受信インジケータを器具のユーザに表示する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
2個の無線周波数チャンネル間のハンドオーバーをその品質インジケータに基づいてトリガする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
復調器用のプログラムであって、前記復調器の計算器によって実行されると、請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載の方法を実施する命令を含む、プログラム。
【請求項12】
復調器用の集積回路であって、
帯域幅を走査して、利用可能な無線周波数チャンネルを識別する手段と、
各利用可能な無線周波数チャンネルについて品質インジケータを判定する手段と、
前記品質インジケータに応じて、データストリームを受信するためのチャンネルを選択する手段と、
前記選択されたチャンネルの品質インジケータを定期的にリフレッシュする手段と、
を含み、
前記集積回路は、各利用可能なチャンネルの前記品質インジケータについてリフレッシング期間を判定する手段と、現在受信されているチャンネルの品質インジケータの値に応じて各所定のリフレッシング期間を重み付けする手段とをさらに含む、
集積回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−10951(P2009−10951A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164558(P2008−164558)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(506267558)ディブコム (7)
【Fターム(参考)】