説明

無線レピータ装置

【課題】コストを増大させることなく、自己の送信波に起因する干渉の影響を極小にし、多段階の中継も可能な無線レピータ装置を提供する。
【解決手段】制御部100は、当該無線通信システムで用いられる3つの無線通信周波数について、受信電力レベルを検出し、アンテナ1を通じた上り回線用の無線通信周波数に最も受信電力レベルの高い周波数を選択し、一方、アンテナ17を通じた下り回線用の無線通信周波数には最も受信電力レベルの低い周波数を選択して、無線中継を行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、モバイルブロードバンドや携帯電話事業において、建物の中、ビル陰やトンネル、地下街等に生じる電波の不感地帯対策に用いられる無線レピータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、建物の中、ビル陰やトンネル、地下街等においては、携帯電話システムやモバイルブロードバンド通信(例えば、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access))の基地局装置や公衆無線LANシステムのアクセスポイントからの無線信号が及ばない不感地帯が生じることがあり、この対策として、無線信号を中継する無線レピータ装置を敷設することで、運用エリアの補間を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、無線レピータ装置は、自己の送信波が受信側に回り込むことで干渉が拡大するため、送信電力レベルを上げることによる運用エリア拡大には限界がある。また複数の無線レピータ装置を用いて、多段階の中継を行うと、上記干渉が蓄積されることになる。これに対して従来は、光ファイバーや同軸ケーブルなどの有線回線を使って、無線レピータ装置の受信点と再送信点の場所と遠ざけることで、上記干渉を回避するなどの対策を講じることがあったが、有線回線の敷設は大規模工事になり、コスト面で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−271255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の無線レピータ装置では、自己の送信波が受信側に回り込むことによる干渉があり、また複数の無線レピータ装置を用いて多段階の中継を行うと、上記干渉が蓄積されるという問題があった。また有線回線を用いて受信点と再送信点に隔たりを持たせる場合には、コスト面で問題があった。
【0006】
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、コストを増大させることなく、自己の送信波に起因する干渉の影響を極小にし、多段階の中継も可能な無線レピータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、複数の無線通信周波数を受信する受信手段と、この受信手段が受信した複数の無線通信周波数の各受信品質を検出する受信品質検出手段と、この受信品質検出手段が検出した受信品質に基づいて、最も高い受信品質が得られた無線通信周波数で受信した信号を、この無線通信周波数以外の無線通信周波数で送信する中継手段とを具備して構成するようにした。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、この発明では、中継の上流側の無線通信では、最も高い受信品質が得られた無線通信周波数を用い、一方、中継の下流側の無線通信では、上記無線通信周波数以外の無線通信周波数を用いるようにしている。
【0009】
したがって、この発明によれば、中継の上流側と、中継の下流で異なる無線通信周波数が用いられるので、コストを増大させることなく、自己の送信波に起因する干渉の影響を極小にし、また多段階の中継も可能な無線レピータ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係わる無線レピータ装置の一実施形態の構成を示す回路ブロック図。
【図2】図1に示した無線レピータ装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】図2に示した制御処理による具体的な動作例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる無線レピータ装置の構成を示すものである。この無線レピータ装置は、図1に示すような機能ブロック1〜26、および制御部100を備える。
【0012】
なお、以下の説明では、WiMAXシステムで用いられる無線レピータ装置を例に挙げて説明する。また、ここで例に挙げるWiMAXシステムは、WiMAXシステムのネットワークに収容される無線基地局と、ユーザが所持する無線端末装置との間の無線通信で、3つの無線通信周波数f1,f2,f3のうち、いずれか1つを選択して無線通信を行うものである。
【0013】
アンテナ1は、WiMAXシステムのネットワークに収容される無線基地局や、当該無線レピータ装置と同様の構成から成り上記無線基地局との中継経路上に敷設された無線レピータ装置と、TDD(Time Division Duplex)方式で送信される無線信号を送受信するためのアンテナである。すなわち、アンテナ1は、上記ネットワークからの下り回線信号の受信と、同ネットワークへ向けた上り回線信号の送信に用いられるアンテナである。
【0014】
バンドパスフィルタ(BPF)2は、所定の周波数帯域(f1,f2,f3を含む)の信号のみ通過させるフィルタであって、アンテナ1により空間から得た無線周波数の信号をフィルタリングしてタイムスイッチ3に出力するとともに、タイムスイッチ3から入力される無線周波数の信号をフィルタリングしてアンテナ1に出力する。
【0015】
タイムスイッチ3は、後述する制御部100の制御によって所定の周期で切替制御されるスイッチであって、TDDを実現するために、バンドパスフィルタ2から入力される信号のローノイズアンプ(LNA)4への出力と、後述するパワーアンプ26から入力される信号のバンドパスフィルタ2への出力を順に繰り返し切り替えて行う。
【0016】
ローノイズアンプ4は、無線通信周波数f1,f2,f3の信号の増幅用に利得特性が調整された増幅器であって、タイムスイッチ3から入力される信号を所定のレベルまで増幅し、ダウンコンバータ5に出力する。
ダウンコンバータ5は、発振器6により発振されたローカル信号と、ローノイズアンプ4が出力する信号をミキシングして、ベースバンド信号にダウンコンバートする。
A/Dコンバータ(A/D)7は、ダウンコンバータ5から出力される中間周波数のアナログ信号をディジタル信号に変換する。
【0017】
バンドパスフィルタ8a〜8cは、それぞれ予め設定された周波数帯域(f1,f2,f3のいずれか)に対応する周波数のディジタル信号を抽出するためのフィルタである。バンドパスフィルタ8aは、無線通信周波数f1に対応する周波数F1のディジタル信号を抽出する。またバンドパスフィルタ8bは、無線通信周波数f2に対応する周波数F2のディジタル信号を抽出する。そしてバンドパスフィルタ8cは、無線通信周波数f3に対応する周波数F3のディジタル信号を抽出する。これらのバンドパスフィルタによって抽出された3つのディジタル信号は、それぞれ選択スイッチ9および制御部100に出力される。
【0018】
選択スイッチ9は、制御部100によって制御され、バンドパスフィルタ8a〜8cから入力される3つのディジタル信号のうち、いずれか1つを選択的に周波数変換部(f変換)10に出力する。
周波数変換部10は、制御部100によって制御され、選択スイッチ9から入力されるディジタル信号を、選択スイッチ9で選択したバンドパスフィルタには対応しない他の周波数に対応するディジタル信号に周波数変換して、D/Aコンバータ(D/A)11に出力する。
【0019】
D/Aコンバータ11は、周波数変換部10から入力されるディジタル信号をアナログ信号に変換し、アップコンバータ12に出力する。
アップコンバータ12は、発振器6により発振されたローカル信号と、D/Aコンバータ11から入力されるアナログ信号をミキシングして、上記アナログ信号をアップコンバートする。これにより、無線通信周波数f1,f2,f3のいずれかの信号が得られる。
【0020】
バンドパスフィルタ(BPF)13は、所定の周波数帯域(f1,f2,f3を含む)の信号のみ通過させるフィルタであって、アップコンバータ12から出力される無線周波数の信号から、アップコンバータ12によるアップコンバートで生じたイメージ信号をキャンセルして、パワーアンプ14に出力する。
パワーアンプ14は、バンドパスフィルタ13から入力される無線周波の信号を、所定の送信電力レベルまで増幅し、タイムスイッチ15に出力する。
【0021】
タイムスイッチ15は、制御部100の制御によって所定の周期で切替制御されるスイッチであって、TDD(Time Division Duplex)を実現するために、パワーアンプ14から入力される信号のバンドパスフィルタ(BNP)16への出力と、バンドパスフィルタ16から入力される信号のローノイズアンプ(LNA)18への出力を順に繰り返し切り替えて行う。
【0022】
バンドパスフィルタ16は、所定の周波数帯域(f1,f2,f3を含む)の信号のみ通過させるフィルタであって、タイムスイッチ15から入力される無線周波数の信号をフィルタリングしてアンテナ1に出力するとともに、アンテナ17により空間から得た無線周波数の信号をフィルタリングしてタイムスイッチ15に出力する。
【0023】
アンテナ17は、無線端末装置や、当該無線レピータ装置と同様の構成から成り上記無線端末装置との中継経路上に敷設された無線レピータ装置と、無線信号を送受信するためのアンテナである。すなわち、アンテナ17は、上記無線端末装置へ向けた下り回線信号の送信と、同無線端末装置からの上り回線信号の受信に用いられるアンテナである。
【0024】
ローノイズアンプ18は、無線通信周波数f1,f2,f3の信号の増幅用に利得特性が調整された増幅器であって、タイムスイッチ15から入力される信号を所定のレベルまで増幅し、ダウンコンバータ19に出力する。
ダウンコンバータ19は、発振器6により発振されたローカル信号と、ローノイズアンプ18が出力する信号をミキシングして、中間周波数のアナログ信号にダウンコンバートする。
A/Dコンバータ(A/D)20は、ダウンコンバータ19から出力される中間周波数のアナログ信号をディジタル信号に変換する。
【0025】
可変バンドパスフィルタ21は、制御部100によって制御され、周波数変換部10で変換した周波数のディジタル信号を抽出するためのフィルタである。この可変バンドパスフィルタ21によって抽出されたディジタル信号は、周波数変換部(f変換部)22に出力される。
【0026】
周波数変換部22は、制御部100によって制御され、可変バンドパスフィルタ21から入力されるディジタル信号を、選択スイッチ9が選択したバンドパスフィルタに対応する周波数のディジタル信号に周波数変換して、D/Aコンバータ(D/A)23に出力する。
D/Aコンバータ23は、周波数変換部22から入力されるディジタル信号をアナログ信号に変換し、アップコンバータ24に出力する。
アップコンバータ24は、発振器6により発振されたローカル信号と、D/Aコンバータ23から入力されるアナログ信号をミキシングして、上記アナログ信号をアップコンバートする。これにより、無線通信周波数f1,f2,f3のいずれかの信号が得られる。
【0027】
バンドパスフィルタ(BPF)25は、所定の周波数帯域(f1,f2,f3を含む)の信号のみ通過させるフィルタであって、アップコンバータ24から出力される無線周波数の信号から、アップコンバータ24によるアップコンバートで生じたイメージ信号をキャンセルして、パワーアンプ26に出力する。
パワーアンプ26は、バンドパスフィルタ25から入力される無線周波の信号を、所定の送信電力レベルまで増幅し、タイムスイッチ3に出力する。
【0028】
制御部100は、マイクロプロセッサと、制御データや制御プログラムを記憶する記憶回路を備え、上記マイクロプロセッサが上記制御データや制御プログラムにしたがって動作することにより、当該無線レピータ装置の各部を統括して制御して、各種無線装置(無線基地局装置、他の無線レピータ装置、あるいは無線端末装置)との間で無線中継を行うものであって、TDD制御手段101と、電力レベル検出手段102と、中継周波数制御手段103とを備えている。
【0029】
TDD制御手段101は、中継経路の上流側に位置する上流側無線装置(無線基地局や他の無線レピータ装置)からの受信信号(バンドパスフィルタ8a〜8cの出力)に基づいて、上流側無線装置からの受信タイミングと、上流側無線装置への送信タイミングをそれぞれ検出し、これらのタイミングに基づいて、上流側無線装置が、中継経路の下流側に位置する下流側無線装置(他の無線レピータ装置や無線端末装置)と直接無線通信しているかのように認識できるように、タイムスイッチ3を切替制御して、上流側無線装置との間でTDDを実現する。すなわち、上流側無線装置から受信を行うタイミングでは、バンドパスフィルタ2とローノイズアンプ4を接続し、一方、上流側無線装置へ送信を行うタイミングでは、パワーアンプ26とバンドパスフィルタ2とを接続する。
【0030】
またTDD制御手段101は、下流側無線装置に対しては、下流側無線装置が上流側無線装置に直接無線接続しているかのように認識できるように、上記受信タイミングおよび上記送信タイミングに同期したタイミングに基づいて、タイムスイッチ15を切替制御して、下流側無線装置との間でTDDを実現する。すなわち、下流側無線装置へ送信を行うタイミングでは、パワーアンプ14とバンドパスフィルタ16とを接続し、一方、下流側無線装置から受信を行うタイミングでは、バンドパスフィルタ16とローノイズアンプ18を接続する。この様な動作を行う為、タイムスイッチ3およびタイムスイッチ15は、TDDのタイミングに合わせて同時に動作する事となる。
【0031】
電力レベル検出手段102は、バンドパスフィルタ8a〜8cの各出力の電力レベルを検出して、上流側無線装置から送信される3つの無線通信周波数f1,f2,f3のうち、最も大きな電力レベルの無線通信周波数fmaxと、最も小さい電力レベルの無線通信周波数fminを検出する。
【0032】
中継周波数制御手段103は、上流側無線装置との通信に無線通信周波数fmaxを用い、一方、下流側無線通信装置との通信に無線通信周波数fminを用いるように各部を制御する。具体的には、選択スイッチ9、周波数変換部10、可変バンドパスフィルタ21および周波数変換部22を制御する。
【0033】
次に、上記構成の無線レピータ装置の動作について説明する。図2は、制御部100の制御処理を説明するためのフローチャートであり、この図を参照して説明する。なお、この制御処理は、電源が投入された場合や、中継を行っていない状態が所定時間続いた場合や、中継を行っていない場合に所定の時刻が到来すると、中継に好適する無線通信周波数を見直すために、実行される。なお、初期状態においては、タイムスイッチ3はLNA4に接続した状態とし、パワーアンプ14,26への電力供給は停止して、消費電力を抑制している。
【0034】
まずステップ2aにおいて制御部100は、電力レベル検出手段102により、バンドパスフィルタ8a〜8cの各出力の電力レベルを検出し、ステップ2bに移行する。これにより、上流側無線装置から送信される3つの無線通信周波数f1,f2,f3で受信した信号の電力レベルが検出される。
【0035】
ステップ2bにおいて制御部100は、電力レベル検出手段102により、ステップ2aの検出結果に基づいて、最も高い受信レベルの無線通信周波数を検出して、これをfmaxとして上流側無線装置との通信に用いる周波数として決定し、ステップ2cに移行する。
【0036】
ステップ2cにおいて制御部100は、電力レベル検出手段102により、ステップ2aの検出結果に基づいて、最も低い受信レベルの無線通信周波数を検出して、これをfminとして下流側無線装置との通信に用いる周波数として決定し、ステップ2dに移行する。
【0037】
ステップ2dにおいて制御部100は、パワーアンプ14およびパワーアンプ26に電力を供給して、その動作を開始させ、ステップ2eに移行する。なお、ステップ2dまでに電力を供給してもよいが、その場合は、十分な利得が得られるほどの電力は供給せず、ステップ2dに移行した場合に、所望の利得が得られるような十分な電力を供給する。
【0038】
ステップ2eにおいて制御部100は、中継周波数制御手段103により、選択スイッチ9を制御して、ステップ2bで決定したfmaxに対応する受信信号を周波数変換部10に出力するように設定し、ステップ2fに移行する。
【0039】
ステップ2fにおいて制御部100は、中継周波数制御手段103により、周波数変換部10を制御して、選択スイッチ9を通じて入力されるfmaxに対応する受信信号を、ステップ2cで決定したfminに対応する信号に周波数変換させるように設定し、ステップ2gに移行する。この設定によって得られる周波数変換された受信信号は、D/Aコンバータ11でアナログ信号に変換された後、アップコンバータ12によりアップコンバートされ、バンドパスフィルタ13を介することにより、無線通信周波数fminの高周波信号となり、下流側無線装置に送信される。
【0040】
ステップ2gにおいて制御部100は、中継周波数制御手段103により、可変バンドパスフィルタ21を制御して、そのフィルタリングにより、無線通信周波数fminに対応する受信信号を出力するように設定し、ステップ2hに移行する。これにより、アンテナ17を通じて受信された無線信号のうち、無線通信周波数fminに対応する受信信号が周波数変換部22に入力されることになる。
【0041】
ステップ2hにおいて制御部100は、中継周波数制御手段103により、周波数変換部22を制御して、可変バンドパスフィルタ21から入力されるfminに対応する受信信号を、ステップ2bで検出したfmaxに対応する信号に周波数変換させるように設定し、当該処理を終了する。この設定によって得られる周波数変換された受信信号は、D/Aコンバータ23でアナログ信号に変換された後、アップコンバータ24によりアップコンバートされ、バンドパスフィルタ25を介することにより、無線通信周波数fmaxの高周波信号となり、上流側無線装置に送信される。
【0042】
次に、図3を参照して、図2に示した制御処理による具体的な動作例を説明する。図3では、ビルB内の深部に無線端末装置MSが存在し、これとWiMAXシステムのネットワークに収容される無線基地局とを中継する場合を例に挙げている。
【0043】
ビルBの屋外には、無線基地局BS1〜BS3が存在し、BS1、BS2、BS3の順に、ビルBから近い位置に存在している。そして、ビルBでは、無線基地局BS1から無線通信周波数f1の信号が強く受信され、また無線基地局BS2からは、無線通信周波数f2の信号が強く受信され、そして無線基地局BS3からは、無線通信周波数f3の信号が強く受信されている。またビルB内には、この発明に係わる無線レピータ装置REP1、REP2、REP3が、無線基地局BS1〜BS3と無線端末装置MSとの間に、この順序で敷設されているものとする。
【0044】
無線レピータ装置REP1は、他の無線レピータ装置REP2、REP3よりも無線基地局BS1〜BS3の近くに位置し、最も近くに存在する無線基地局BS1からの無線通信周波数f1の無線信号を最も高い電力レベルの信号として受信し、一方、最も遠くに存在する無線基地局BS3からの無線通信周波数f3の無線信号を最も低い電力レベルの信号として受信する。
【0045】
このため、無線レピータ装置REP1は、ステップ2bにて無線通信周波数f1をfmaxに決定し、ステップ2cにて無線通信周波数f3をfminに決定する。すなわち、無線基地局BS1との上り回線用のTDD通信のために、無線通信周波数f1を採用することを決定し、下り回線用のTDD通信のために無線通信周波数f3を採用することを決定する。
【0046】
次に、無線レピータ装置REP2は、他の無線レピータ装置REP3よりも無線レピータ装置REP1に近く、無線基地局BS1〜BS3からの無線信号電力レベルが低いため、無線レピータ装置REP1からの無線通信周波数f3の無線信号を最も高い電力レベルの信号として受信する。一方、無線レピータ装置REP1で用いていない無線通信周波数f2の無線信号を最も低い電力レベルの信号として受信する。
【0047】
このため、無線レピータ装置REP2は、ステップ2bにて無線通信周波数f3をfmaxに決定し、ステップ2cにて無線通信周波数f2をfminに決定する。すなわち、無線レピータ装置REP1との上り回線用のTDD通信のために、無線通信周波数f3を採用することを決定し、下り回線用のTDD通信のために無線通信周波数f2を採用することを決定する。
【0048】
同様に、無線レピータ装置REP3は、無線基地局BS1〜BS3からの無線信号の電力レベルが低いため、無線レピータ装置REP2からの無線通信周波数f2の無線信号を最も高い電力レベルの信号として受信する。一方、無線レピータ装置REP2で用いていない無線通信周波数f1の無線信号を最も低い電力レベルの信号として受信する。
【0049】
このため、無線レピータ装置REP3は、ステップ2bにて無線通信周波数f2をfmaxに決定し、ステップ2cにて無線通信周波数f1をfminに決定する。すなわち、無線レピータ装置REP2との上り回線用のTDD通信のために、無線通信周波数f2を採用することを決定し、下り回線用のTDD通信のために無線通信周波数f1を採用することを決定する。
【0050】
このため、ユーザが所持する無線端末装置MSは、無線レピータ装置REP3から送信される無線通信周波数f1の無線信号の電力レベルが高いことを検出し、無線レピータ装置REP3と無線通信周波数f1を通じて無線接続する。このようにして無線接続された無線端末装置MSは、無線レピータ装置REP3、REP2、REP1を順に介して、無線基地局BS1に接続される。
【0051】
以上のように、上記構成の無線レピータ装置では、上り回線用の無線通信周波数に最も受信電力レベルの高い周波数を選択し、一方、下り回線用の無線通信周波数には最も受信電力レベルの低い周波数を選択して、無線中継を行うようにしている。
【0052】
したがって、上記構成の無線レピータ装置によれば、他局との通信に用いる無線通信周波数を、上りと下りで干渉しないように選択するので、コストを増大させることなく、自己の送信波に起因する干渉の影響を極小でき、また多段階の中継も可能である。
【0053】
そしてまた無線レピータ装置の設置に際して、装置間で認証設定などの複雑な設定が不要であるため、電力さえ得られれば容易に設置することができ、また変更の容易に可能である。
【0054】
すなわち、複数の無線レピータ装置を用いて中継する場合には、多段接続された無線レピータ毎に、わずかに伝送遅延が発生する。TDD方式で伝送するバースト状の信号の立ち上がり期間に、上記信号品質を検出する必要がある。つまり、初段の無線レピータが上述したアルゴリズムにより周波数を選択して送信すると、その後は初段の無線レピータが受信する信号が、第2の送信出力が回り込んでしまう為、正しい信号品質の評価ができなくなる。これを回避する為に、上記TDD方式で伝送するバースト状の信号の立ち上がりで、まだ再送信を行う前の期間で判断を行う事が必要である。
【0055】
また上記構成の無線レピータ装置では、中継に用いる周波数を決定するまでの間、送信系のパワーアンプ14,26への電力供給を停止するようにしているので、中継開始前の消費電力を抑制することができる。
【0056】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
その一例として例えば、上記実施の形態では、受信品質を判定する基準として、受信電力レベルを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えばC/N比など他の指標に基づいて信号品質を判定し、最も信号品質のよい周波数で上流側無線装置と無線通信し、それ以外の周波数で下流側無線装置と無線通信するようにしてもよい。
【0058】
また上記実施の形態では、図3を例に挙げ、ビルB内の設置する場合を例に挙げて説明したが、設置場所はこれに限定されるものではなく、例えば、地下鉄駅構内や、地下鉄線路区間、トンネルなどに設置することも可能である。これらの環境では、外部からの干渉波は少なく、隣接する無線レピータ装置間での干渉に限定されるため、本発明の係わる無線レピータ装置が好適する。
【0059】
そしてまた上記実施の形態では、1つの無線基地局が1つの無線通信周波数を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、複数の無線通信周波数を用いる場合にも適用可能である。
【0060】
さらにまた上記実施の形態では、通信に適した無線基地局を見つけるための周波数と、通信に用いる周波数が同じ場合を例に挙げて説明したが、異なる場合にも適用できる。例えば、複数の無線基地局(あるいは、無線レピータ装置)が互いに共通する周波数を通じて、固有の識別情報を含んだパイロット信号を送信するようにし、無線レピータ装置が最も良好な受信品質が得られる無線基地局(あるいは、無線レピータ装置)を特定し、この無線基地局を上流側無線装置として、上記パイロット信号が送信される周波数とは別の周波数を通じて通信を行うようにしてもよい。そして、下流側無線装置とは、上記別の周波数とは、さらに別の周波数を通じて通信を行うようにする。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1,17…アンテナ、2,8a,8b,8c,13,16,25…バンドパスフィルタ(BPF)、3,15…タイムスイッチ、4,18…ローノイズアンプ(LNA)、5,19…ダウンコンバータ、6…発振器、7,20…A/Dコンバータ(A/D)、9…選択スイッチ、10,22…周波数変換部、11,23…D/Aコンバータ(D/A)、12,24…アップコンバータ、14,26…パワーアンプ、21…可変バンドパスフィルタ、100…制御部、101…TDD制御手段、102…電力レベル検出手段、103…中継周波数制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる無線通信周波数の複数の無線信号を受信する受信手段と、
この受信手段が受信した無線通信周波数毎の無線信号の各受信品質を検出する受信品質検出手段と、
この受信品質検出手段が検出した受信品質に基づいて、最も高い受信品質が得られた無線通信周波数で受信した信号を、この無線通信周波数以外の無線通信周波数を用いて送信する中継手段とを具備することを特徴とする無線レピータ装置。
【請求項2】
無線信号を送受信する第1無線通信手段と、
無線信号を送受信する第2無線通信手段と、
前記第1無線通信手段が受信した信号を前記第2無線通信手段に送信させ、一方、前記第2無線通信手段が受信した信号を前記第1無線通信手段に送信させる中継制御手段と、
前記第1無線通信手段を制御して、それぞれ異なる無線通信周波数の複数の無線信号を受信し、最も高い受信品質が得られた第1無線通信周波数と、それ以外の第2無線通信周波数を検出する周波数検出手段と、
前記第1無線通信手段が前記第1無線通信周波数を用いて無線信号の送受信を行うように制御するとともに、前記第2無線通信手段が前記第2無線通信周波数を用いて無線信号の送受信を行うように制御する周波数制御手段とを具備することを特徴とする無線レピータ装置。
【請求項3】
複数の無線局からそれぞれ無線信号を受信して、各無線局からの受信品質を検出する受信品質検出手段と、
この受信品質検出手段の検出結果に基づいて、最も高い受信品質が得られた無線局から受信した信号を、この信号の受信に用いられた無線通信周波数以外の無線通信周波数で送信する中継手段とを具備することを特徴とする無線レピータ装置。
【請求項4】
無線信号を送受信する第1無線通信手段と、
無線信号を送受信する第2無線通信手段と、
前記第1無線通信手段が受信した信号を前記第2無線通信手段に送信させ、一方、前記第2無線通信手段が受信した信号を前記第1無線通信手段に送信させる中継制御手段と、
前記第1無線通信手段を制御して
、複数の無線局からそれぞれ無線信号を受信し、最も高い受信品質が得られた無線局を検出する無線局検出手段と、
前記第1無線通信手段が前記第1無線通信周波数を用いて、前記無線局検出手段が検出した無線局と通信するように制御するとともに、前記第2無線通信手段が前記第1無線通信周波数とは異なる第2無線通信周波数を用いて無線信号の送受信を行うように制御する周波数制御手段とを具備することを特徴とする無線レピータ装置。
【請求項5】
さらに、送信に用いる無線通信周波数が決定するまで、送信系の増幅器への電力供給を制限する送信電力制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線レピータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−139157(P2011−139157A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296342(P2009−296342)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】