説明

無線受信機

【課題】電波状況等により受信したデータにエラーが発生してもユーザに違和感や不快感を与えることなく音響上の不都合を解消することのできる無線受信機を提供する。
【解決手段】無線受信機は、誤データの発生を検出及び訂正するための符号を含む音声データの搬送波を逐次受信すると、この符号に基づき音声データの誤りを訂正し、誤り訂正後の音声データのエラーをチェックする。エラーチェックの結果、音声データにエラーを検出すると、エラーが検出されなかった複数フレーム分の音声データを音声バッファから読み出し、残響音の音声データを生成し、スピーカに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワイヤレスマイクシステムとして使用され、音声の搬送波を受信して該音声をスピーカに出力する無線受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレスマイクなどの無線通信機、無線LANなどの無線受信機においては、伝送品質の確保の観点から、ダイバーシティ通信システムの採用やデジタル化が急速に進展している。
【0003】
ダイバーシティ通信システムでは、複数のチャンネルを使用し、無線劣化の少ないチャンネルからのデータを受信することで、伝送品質を確保している。また、デジタル化においては、送信データに冗長性を付与しておくことで、受信側でデータの誤り検出及び訂正を行っている。冗長化方式としては、垂直パリティチェック方式、水平パリティチェック方式、ハミング符号方式、CRC方式、リードソロモン符号方式、畳み込み符号方式、ビタビ復号方式、ターボ符号方式等が知られている。
【0004】
しかしながら、帯域幅の限界から冗長データの量にも限界があるため、十分に効果的な誤り訂正処理を行うことができない場合がある。例えば、ワイヤレスマイクを用いた例では、使用周波数帯域や、壇上等で発話者が持って動き回る等の用途から、搬送波の電波状況が変化しやすい特性があり、符号ビットなどの重要データについて誤りが多くなってしまい受信機側で訂正し切れない場合がある。この場合、受信機側では、音途切れの発生や、極端なノイズの発生等の音響上の不都合が生じる。
【0005】
そのため、エラー発生による不都合を事後的に解決する技術が各種提案されている。例えば、誤りのある音声データに代えて、その直前データを再度出力することにより、音途切れの発生を事後的に防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、音声データにエラーが発生した際、音声をミュートすることで、極端なノイズの発生を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−312620号公報
【特許文献2】特開2007−288511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術について図6に基づき説明する。例えば、「あいう」という音声を示す音声データが複数フレーム又は複数サブフレームに分割されて受信機1に到達し、そのうち、「あ」及び「い」を構成する各複数の分割データにはエラーが生じていないが、「う」を構成する第1のフレームデータにエラーが生じているものとする。この場合、特許文献1の技術では、「い」の音声の後、「い」の構成要素である1つの分割データを繰り返し、スピーカに出力することで無音状態を防止している。
【0008】
しかしながら、この特許文献1の技術により繰り返し出力される一つの分割データは、「い」の構成要素の一つではあるが、44.1kHz等の高サンプリングレートでサンプリングされている場合、ユーザにとっては、発話者により発話された「い」の音声の一部として認識できない。発話者の音声の一部と認識できない音は、結局ノイズと等価な音声出力である。
【0009】
また、電波状況が悪く、連続する複数フレームにエラーが発生している場合には、1フレーム分のデータのみを記憶しておいて、エラー発生区間においてその1フレーム分のデータを繰り返し音声出力することになり、このノイズと等価な音声が複数結合された新たな不自然な音声を作り出してしまう。
【0010】
従って、特許文献1の技術は、結果として、ユーザに不快感を与えてしまい、音途切れの発生や極端なノイズの発生を効果的に防止しているとは言えない。
【0011】
また、特許文献2の技術においては、ユーザにノイズを聞かせることはなく、不快感を与えることは解消できるが、音声が無音になることによりユーザに違和感を与えてしまう。
【0012】
このように、従来では、音響上の不都合をユーザに違和感や不快感を与えることなく解消することが困難であった。
【0013】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、電波状況等により受信したデータにエラーが発生してもユーザに違和感や不快感を与えることなく音響上の不都合を解消することのできる無線受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、本発明は、音声データの搬送波を逐次受信する無線受信機であって、前記音声データのエラーを逐次検出する検出手段と、前記検出手段でエラーが検出されなかった複数フレーム分の前記音声データを逐次蓄積しておく音声バッファ手段と、前記検出手段でエラーが検出されると、エラー直前の複数フレーム分の音声データを前記音声バッファ手段から読み出し、遅延、増減幅の変更、又は出力順序の変更の少なくとも一つの加工を施すことで、残響音の音声データを生成する残響音生成手段と、前記残響音の音声データを前記エラー直前の音声データに続き出力するスピーカ手段と、を備えること、を特徴とする。
【0015】
前記検出手段によりエラーが一定以上連続して検出されると、前記スピーカ手段からの前記残響音を出力停止するミュート手段を更に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、音声データにエラーが発生した場合には、エラー直前の複数フレーム分の音声データを用いて残響音を生成し、音声出力する。また、そのために、エラーが発生していない音声データを音声バッファに逐次蓄積しておく。エラー直前の複数フレームデータから生成された残響音であれば、ユーザは直前音声の残響と十分に認知することができ、不快感を覚えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る受信機の音声出力動作を示すフローチャートである。
【図3】受信機によるエラー時間検出動作を示すフローチャートである。
【図4】残響音の生成を示す模式図である。
【図5】残響音からミュートへの切り替えタイミングを示す模式図である。
【図6】従来の音声補間方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る無線受信機の実施形態について、本方法を適用した受信機を例にとり、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
[1.受信機の構成]
図1は、本実施形態に係る無線受信機の構成を示すブロック図である。図1に示す受信機1は、ワイヤレスマイクシステムの音声受信側となる。この受信機1は、ダイバーシティ方式で音声データを受信及び解析し、誤りの無い又は誤りの訂正に成功した一の音声データが存在すれば、その音声を出力する。
【0020】
解析の結果、音声データにエラーが生じていると、受信機1は、音声データのエラー時間が所定未満であれば、エラー直前の音声データを複数フレーム分用いて残響音を生成して出力する。残響音は、ユーザに残響音として認識される音声であり、エラー直前の複数フレーム分の音声を残響音に似せて加工した音声である。受信機1は、エラー直前の音声データを逐次複数フレーム分蓄積しておく。一方、音声データのエラーが所定時間以上続くようであれば、受信機1は、残響音の出力から音声のミュートに切り替える。
【0021】
エラーが生じている場合とは、音声データに誤りが存在し、所定数以上の誤りの訂正に失敗した場合である。エラー時間とは、エラーの音声データが続く時間であり、具体的にはエラーのデータ数である。受信機1は、エラーデータの連続数をカウントして、エラー時間を検出する。
【0022】
この受信機1は、2系統の受信部12A,12Bと、その後段にベースバンド処理部13A,13Bを備えている。また、ベースバンド処理部13A,13Bの後段には、受信信号処理部として、2系統のチャンネルコーデック部14A,14Bと誤り訂正部15A,15B、及び誤り検出部16を順番に備えている。
【0023】
さらに、この受信機1は、受信信号処理部の後段に、音声処理部として、スピーカ24まで順に、音声コーデック19、音声バッファ20、ミュート部21、残響音生成部25、D/A変換部22、増幅器23を備えている。ミュート部21及び残響音生成部25は、回路構成において択一式、すなわちパラレルに備えられている。
【0024】
受信機1は、制御部17及び表示部18を備えており、制御部17により、誤り訂正部15A、誤り訂正部15B、誤り検出部16、音声コーデック19、音声バッファ20、ミュート部21、残響音生成部25、及びD/A変換部22が制御される。
【0025】
各受信部12A,12Bは、アンテナで受信した信号を処理するRF部を備えている。RF部は、アンテナから出力される信号のうちRF信号成分のみを通過させるバンドパスフィルタ、RF信号を増幅する増幅回路、RF信号をダウンコンバートするダウンコンバータなどを含む。
【0026】
各ベースバンド処理部13A,13Bは、A/D変換器、デマッピング処理回路、及びP/S変換回路を備えている。A/D変換器は、受信部12A、12Bから出力されたRF信号をデジタル変換してベースバンド信号に変換する。デマッピング処理回路は、ベースバンド信号に対してマッピングの復調処理を行う。例えば、デジタル変調方式の一つである16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等によって複素信号にマッピングされたデータ信号群の送信ビット列を復元する。P/S変換回路は、パラレル信号をシリアル変換する。
【0027】
各チャンネルコーデック部14A,14Bは、ベースバンド処理部13A,13Bから出力されたシリアル信号に対してフレームタイミング検出処理及びデインターリーブ処理を行う。フレームタイミング検出処理では、フレームデータを検出し、2系統のフレームデータ間のフレームタイミングを補う。デインターリーブ処理では、周波数インターリーブ、時間インターリーブ、ビットインターリーブ、バイトインターリーブ等を解除し、伝送用に圧縮されたフレームデータを伸張する。
【0028】
誤り訂正部15A,15Bは、数十サンプル分の音声データであるフレームデータについて、誤り訂正処理を行う。送信側では、予め誤り訂正処理により、フレームデータに対して、検査ビット等の訂正符号と、同期を合わせるためのプリアンブルであるフレーム情報が付加される。誤り訂正部15A,15Bは、誤り訂正処理において、フレームデータのうち、復号に不可欠な重要ビットを検査し、訂正符号を用いて検査された重要ビットの誤り検出及び訂正を行う。
【0029】
誤り検出部16は、2系統のフレームデータのうち、音声品質が良好なフレームデータを選択する。音声品質は、誤データの有無を参照して判断される。すなわち、誤り検出部16は、予め記憶している閾値と誤り訂正部15A,15Bで訂正できなかった誤データの数を比較し、誤データの数が閾値未満であれば、そのフレームデータを選択する。誤り検出部16は、選択したフレームデータのみを次段に出力する。
【0030】
同時に、誤り検出部16は、エラー情報又はエラー無情報を制御部17に出力する。エラー無情報は、少なくとも一方のフレームデータの誤データの数が閾値未満であれば、制御部17に出力され、エラー無を示す。エラー情報は、全系統のフレームデータの各誤データの数が閾値以上であれば、制御部17に出力され、エラーを示す。
【0031】
制御部17は、コンピュータ又は電子回路から構成され、誤り訂正部15A、誤り訂正部15B、誤り検出部16、音声コーデック19、音声バッファ20、ミュート部21、残響音生成部25、及びD/A変換部22を制御する。
【0032】
特に、制御部17は、エラー無情報が入力されれば、音声コーデック19にフレームデータをコーデックさせ、ミュート部21にフレームデータを素通りさせ、D/A変換部22にフレームデータをD/A変換させる。
【0033】
一方、制御部17は、エラー情報が入力されれば、エラー情報のカウント、カウント結果に応じたエラー処理の制御、カウント結果に応じた受信状態情報の生成、及び受信状態情報の表示部18への出力を行う。すなわち、制御部17は、フレームデータにエラーが生じていると、残響音生成部25に残響音を生成させ、エラー時間が所定以上続くとミュート部21に音声をミュートさせる。残響音を継続させ、以後、音声をミュートさせるエラー時間は、例えば60msである。
【0034】
具体的には、制御部17は、エラー処理の制御において、誤り検出部16から出力されるエラー情報が続く数をカウントし、カウント数が1以上、所定数未満であれば、残響音生成部25に残響音を生成させる。一方、エラー情報のカウント数が所定数以上にインクリメントされた場合には、ミュート部21に音声のミュートを行わせる。
【0035】
表示部18は、受信状態情報を表示するLCDモニタや有機ELモニタである。受信状態情報は、音声断、すなわちデッドポイントの発生か、若しくは通信断の何れかを示す。残響音生成時を音声断として取り扱い、ミュート時を通信断として取り扱う。
【0036】
音声コーデック19は、誤り検出部16で選択されたフレームデータを再生用の非圧縮形式のデジタルデータに復元する。例えば、フレームデータをADPCM(適応予測差分PCM)方式で伸張し、24ビット、48KHzのPCM音声データに復元する。
【0037】
音声バッファ20は、音声コーデック19から出力された複数分のフレームデータを記憶する。音声コーデック19から出力されたフレームデータとは、誤り検出部16を通過したデータであり、エラーの生じていないフレームデータである。当該フレームデータは、少なくとも、残響音生成に用いるフレームデータの数だけ蓄積される。
【0038】
ミュート部21は、エラー時間が所定以上続く場合にミュートをかける。ミュートは、ゲインを徐々に小さくしてもよいし、一瞬にして音を止めるようにしてもよい。音声データにエラーが発生していない場合には、音声バッファ20からFIFO(First−In First−Out)方式で順次フレームデータが入力され、そのまま当該フレームデータを素通りさせてD/A変換部22に出力する。
【0039】
残響音生成部25は、フレームデータにエラーが発生した場合に残響音の音声データを生成してD/A変換部22に出力するリバーブレータである。残響音としては、後部残響音のほか、初期反射音及び後部残響音の何れでもよい。残響音の生成の際、残響音生成部25には、音声バッファ20からエラー発生前の複数分のフレームデータが入力される。入力されるフレームデータ数は、直前音声の残響音としてユーザが認識可能なフレームデータ数である。
【0040】
残響音生成部25は、入力された複数分のフレームデータを加工して加算することで残響音の音声データを生成する。残響音の加工及び加算では、複数分のフレームデータに対して、各遅延時間の付与、まびき処理、及び減衰のための各重み付け処理、変調、生成された各データを時間方向に散乱させた出力順序の変更等を施し、加算処理を施す。
【0041】
D/A変換部22は、ミュート部21又は残響音生成部25から出力された音声データをアナログ信号に変換する。増幅器23は、D/A変換部22から出力されたアナログ信号を増幅し、スピーカ24に出力する。
【0042】
受信機1は、以上のような構成により、複数系統の音声データのうち、誤りの無い音声データを出力し、音声データにエラーが発生した場合には音声バッファ20に逐次蓄積しておいた複数フレームの音声データを加工して残響音を生成して出力する一方、エラー時間が所定以上続けば音声をミュートする。
【0043】
[2.受信機の動作]
この受信機1の音声出力動作を図2及び3に基づき説明する。図2は、2系統の受信部を有する受信機1の音声出力動作を示すフローチャートである。図3は、受信機1によるエラー時間検出動作を示すフローチャートである。
【0044】
図2に示すように、受信機1において、まず、AチャンネルとBチャンネルの受信部12A,12Bは、それぞれ送信側から送信されてきた搬送波を受信してRF信号を抽出する(ステップS01)。ベースバンド処理部13A,13Bは、RF信号に対してベースバンド処理を行うことで、RF信号をベースバンド信号に変換してデマッピング処理及びシリアル変換を施す(ステップS02)。そして、各チャンネルコーデック部14A,14Bは、フレームタイミングを検出し(ステップS03)、フレームタイミングが確認できた場合には、デインターリーブ処理によってフレームデータを取り出す(ステップS04)。
【0045】
次に、誤り訂正処理部15A,15Bにおいて、各フレームデータについて訂正符号を利用した誤り訂正処理を施す(ステップS05)。誤り訂正処理部15A,15Bで誤り訂正処理が施されたA及びBチャンネルのフレームデータは、誤り検出部16に入力される。
【0046】
誤り検出部16では、まず、Aチャンネルのフレームデータについてエラーがあるかチェックする(ステップS06)。エラーチェックでは、制御部16は、誤データの数と閾値との比較を行う。
【0047】
誤データの数が閾値未満であった場合、すなわちエラーがない場合には(ステップS06,OK)、受信機1は、Aチャンネルのフレームデータを音声出力する(ステップS07)。
【0048】
具体的には、ステップS07において、誤り検出部16は、Aチャンネルのフレームデータを音声コーデック19に出力する。同時に、誤り検出部16は、制御部17に対してエラー無情報を出力させる。エラー無情報が入力された制御部17は、音声コーデック19を制御し、この制御のもと、音声コーデック19は、Aチャンネルのフレームデータを再生用の非圧縮形式のデジタルデータに復元し、音声バッファ20に記憶させる。
【0049】
さらに、制御部17は、ミュート部21に素通り制御信号を出力し、素通り制御信号が入力されたミュート部21は、音声バッファ20に記憶されたフレームデータをFIFO形式で読み出して、素通りさせる。ミュート部21を素通りしたフレームデータは、D/A変換部22でアナログ音声信号に変換され、増幅器23で増幅された後、スピーカ24によって音声として出力される。
【0050】
一方、誤データの数が閾値以上であった場合、すなわちAチャンネルのフレームデータにエラーが発生している場合には(ステップS06,ERR)、誤り検出部16は、Bチャンネルのフレームデータについてエラーがあるかチェックする(ステップS08)。
【0051】
誤データの数が閾値未満であった場合、すなわちBチャンネルのフレームデータにエラーがない場合には(ステップS08,OK)、受信機1は、Bチャンネルのフレームデータを音声出力する(ステップS09)。
【0052】
具体的には、ステップS09において、誤り検出部16は、Bチャンネルのフレームデータを音声コーデック19に出力する。同時に、誤り検出部16は、制御部17に対してエラー無情報を出力させる。エラー無情報が入力された制御部17は、音声コーデック19を制御し、この制御のもと、音声コーデック19は、Bチャンネルのフレームデータを再生用の非圧縮形式のデジタルデータに復元し、音声バッファ20に記憶させる。
【0053】
さらに、制御部17は、ミュート部21に素通り制御信号を出力し、素通り制御信号が入力されたミュート部21は、音声バッファ20に記憶されたフレームデータをFIFO形式で読み出して、素通りさせる。ミュート部21を素通りしたフレームデータは、D/A変換部22でアナログ音声信号に変換され、増幅器23で増幅された後、スピーカ24によって音声として出力される。
【0054】
誤データの数が閾値以上であった場合、すなわちAチャンネルにもBチャンネルのフレームデータにエラーがある場合には(ステップS08,ERR)、制御部17は、エラー時間を検出する(ステップS10)。
【0055】
具体的には、図3に示すように、制御部17は、予め、エラー情報のカウント数を初期値0に初期化しておく。カウント数を初期化した状態で、制御部17は、誤り検出部16から入力された情報がエラー情報であるか確認する(ステップS101)。エラー情報が誤り検出部16より入力されると(ステップS101,Yes)、制御部17は、その度にカウント数を1インクリメントする(ステップS102)。この状態で、制御部17は、予め記憶している閾値とエラー情報のカウント数を比較する(ステップS103)。一方、エラー無情報が入力されると(ステップS101,No)、制御部17は、エラー情報のカウント数を0に初期化する(ステップS104)。
【0056】
エラー情報が1以上、閾値未満であれば(図3:ステップS103,Yes)、すなわちエラー時間が所定時間未満であると(図2:ステップS10,OK)、受信機1は、残響音を音声出力する(図2:ステップS11)。
【0057】
具体的には、S11において、制御部16は、残響音生成部25に残響音制御信号を出力する。残響音制御信号が入力された残響音生成部25は、音声バッファ20から、複数フレームのフレームデータを読み出す。この複数フレームのフレームデータは、劣化の少なかったAチャンネル若しくはBチャンネルのフレームデータ、換言すると、S06若しくはS08においてエラー無しとして誤り検出部16により出力され、音声コーデック19によりコーデックされたフレームデータであり、エラー直前のフレームデータである。
【0058】
残響音生成部25は、複数フレームのフレームデータを読み出すと、これらフレームデータから残響音の音声データを生成する。すなわち、複数分のフレームデータに対して、各遅延時間の付与、まびき処理、及び減衰のための各重み付け処理、変調等を施し、生成された各データを時間方向に散乱させ、加算処理を施す。
【0059】
生成された残響音のデータは、D/A変換部22でアナログ音声信号に変換され、増幅器23で増幅された後、スピーカ24によってエラー直前の音声に対する残響音として出力される。
【0060】
一方、エラー情報が閾値以上に達すると(図3:ステップS103,No)、すなわちエラー時間が所定時間以上となると(図2:ステップS10,TimeOut)、受信機1は、エラー直前の音声に対する残響音の出力を中止し、音声の出力を停止する(図2:ステップS12)。
【0061】
具体的には、S12において、制御部17は、ミュート部21に対してミュート制御信号を出力する。ミュート部21は、ミュート制御信号を受けると、音声バッファ20からフレームデータを読み出すことなく駆動を停止する。すなわち、ミュート部21は、後段のD/A変換部22、増幅器23、スピーカ24への信号を絶つ。
【0062】
[3.作用効果]
以上のように、本実施形態に係る受信機1は、音声データにエラーが発生した場合には、エラー直前の複数フレーム分の音声データを用いて残響音を生成し、スピーカ24に出力する。また、そのために、受信機1は、エラーが発生していない音声データをFIFO形式で常に音声バッファ20に逐次蓄積しておく。複数フレームデータから生成された残響音であれば、ユーザは直前音声の残響と十分に認知することができ、不快感を覚えることはない。
【0063】
例えば、図4に示すように、「あいう」という音声を示す音声データが複数フレームに分割されて受信機1に到達し、そのうち、「あ」及び「い」を構成する各複数のフレームデータにはエラーが生じていないが、「う」を構成する第1のフレームデータにエラーが生じているものとする。
【0064】
この場合、「あ」及び「い」を構成する各複数のフレームデータは、誤り検出部16を通過し、音声コーデック19により復元されてFIFO方式で音声バッファ20に蓄積される。そして、制御部17には、「あ」及び「い」を構成する各複数のフレームデータを処理している間、エラー無情報が入力されているため、これらフレームデータは順次ミュート部21を素通りし、D/A変換部22と増幅器23を経てスピーカ24から音声として出力される。
【0065】
しかし、誤り検出部16は、「う」の構成要素である第1のフレームデータにはエラーが生じているため、当該フレームデータを通過させず、同時に制御部17にエラー情報を出力する。制御部17にエラー情報が入力されると、残響音生成部25は、ユーザが「い」という音声を認識できるために必要な複数分のフレームデータを音声バッファ20から読み出す。そして、残響音生成部25は、この読み出した複数のフレームデータが構成する音声の残響音、すなわちユーザが「い」の残響音と十分に認識できる音声を生成する。この「い」の残響音は、「あい」の音声に続き、出力される。
【0066】
但し、エラー時に出力される音声が送信側で発音された音声の残響音であるとしてユーザに十分に認識される場合であっても、当該残響音がいつまでも続くと、ユーザに不快感を与えてしまうおそれがある。
【0067】
そこで、図5に示すように、本実施形態に係る受信機1では、「あいう」のうち、「う」を構成するフレームデータに連続してエラーが生じているため、直前の「い」の音声を用いた残響音が出力されているものとする。この場合、受信機1は、「い」の残響音を60ms未満の間は継続して出力するが、エラー時間が60ms以上になると、音声をミュートする。
【0068】
このように、エラー時間が所定以上続く場合に残響音の出力から音声ミュートに切り替えることによって、残響音が継続することを防止し、ユーザに不快感を与えることはない。残響音からミュートへの切り替えは、60ms程度が有効であり、この程度であれば、ユーザに残響音が継続することへの不快感を与えることはない。
【0069】
また、本実施形態に係る受信機1により、ユーザは、エラーの発生がデッドポイントの発生を原因とするものであるのか、通信断を原因とするものであるのかを即座に判断することができる。すなわち、ユーザは、表示部18の受信状態情報を参照する必要なく、受信機1の受信状態を認識できる。
【0070】
[4.他の実施形態]
以上のように、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そのような変形例も実施形態と共に発明の範囲や要旨に含まれる。
【0071】
例えば、本実施形態では、ダイバーシティ方式の無線受信機を例に説明したが、その他の方式の受信機であってもよい。また、誤り検出部16では、複数系統のフレームデータを比較して、より音声劣化の少ないフレームデータを音声コーデック19側へ出力するようにしてもよい。
【0072】
さらに、エラー時間の検出では、音声バッファ20にはエラーのあるフレームデータも蓄積するようにしておき、エラー情報のカウントに代えて、エラーのあるフレームデータ数をカウントするようにしてもよい。また、リアルタイムクロックや、OSの計時プログラムを実行するCPUでエラーが発生する時間を計時するようにしてもよい。
【0073】
また、エラー発生直前のフレームデータをD/A変換部22に出力する前に、次のフレームデータのエラー検出及び残響音生成を行い、遅延を与えた上で当該残響音の音声データをエラー発生直前のフレームデータに加算するようにして、直前音声と残響音とを途切れることなく繋ぐようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 受信機
12A 受信部
12B 受信部
13A ベースバンド処理部
13B ベースバンド処理部
14A チャンネルコーデック部
14B チャンネルコーデック部
15A 誤り訂正部
15B 誤り訂正部
16 誤り検出部
17 制御部
18 表示部
19 音声コーデック
20 音声バッファ
21 ミュート部
22 D/A変換部
23 増幅器
24 スピーカ
25 残響音生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データの搬送波を逐次受信する無線受信機であって、
前記音声データのエラーを逐次検出する検出手段と、
前記検出手段でエラーが検出されなかった複数フレーム分の前記音声データを逐次蓄積しておく音声バッファ手段と、
前記検出手段でエラーが検出されると、エラー直前の複数フレーム分の音声データを前記音声バッファ手段から読み出し、遅延、増減幅の変更、又は出力順序の変更の少なくとも一つの加工を施すことで、残響音の音声データを生成する残響音生成手段と、
前記残響音の音声データを前記エラー直前の音声データに続き出力するスピーカ手段と、
を備えること、
を特徴とする無線受信機。
【請求項2】
前記検出手段によりエラーが一定以上連続して検出されると、前記スピーカ手段からの前記残響音を出力停止するミュート手段を更に備えること、
を特徴とする請求項1記載の無線受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199732(P2012−199732A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61972(P2011−61972)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】