説明

無線受信装置

【課題】従来のものより短時間で、かつ、簡単な検出方法でマルチパスフェージングの発生を検知することができる無線受信装置を提供する。
【解決手段】ベースバンド信号に変換されたOFDM信号からシンボル区間を検出するシンボル区間検出部16と、シンボル区間検出部16で検出されたシンボル区間におけるシンボルパワーを検出するシンボルパワー検出部17と、ベースバンド信号からガード区間を検出するガード区間検出部18と、ガード区間検出部18で検出されたガード区間におけるガード区間パワーを検出するガード区間パワー検出部19と、シンボルパワー検出部17で検出されたシンボルパワーに対するガード区間パワー検出部19で検出されたガード区間パワーの比であるパワー比を計算するパワー比計算部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の受信状況を検知してユーザに通知する機能、特に、マルチパスフェージングの影響により電波受信状態が劣化する状況を検知して、ユーザに通知する機能を備えた無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年オフィスや家庭などで用いられる無線通信技術分野においては、例えばIEEE(Institute of Electronic and Electronics Engineers)802.11系の規格に基づいた無線LAN(Local Area Network)通信や、ワイヤレスUSB(Universal Serial Bus)規格に基づいた無線PAN(Personal Area Network)通信などが実用化され、様々な製品が市場に出されている。
【0003】
このような無線通信においてはマルチパスフェージングを抑制して電波を伝送することが重要である。マルチパスフェージングとは、無線送信装置から放射された電波が障害物によって反射・回折・散乱を受けて、様々な経路を通って無線受信装置に到達することにより、受信装置のアンテナで合成される電波が干渉を起こす現象である。
【0004】
従来一般に、無線通信装置において通信を行う場合、無線通信装置は受信信号強度を測定してユーザに示し、ユーザはその表示を見て所定強度以上であることを確認して通信を行うか、所定強度以上になるように受信場所を変更して通信を行っていた。
【0005】
すなわち、従来の無線通信装置は、受信信号強度のみを判断基準として電波受信状態を示し、受信信号強度が十分ならば電波受信状態は良好であると判断する。しかしながら、実際にはマルチパスフェージングの影響により、受信信号強度が十分あるにもかかわらず、電波受信状態が良好でないことがある。
【0006】
そこで、マルチパスフェージングの影響を検知してユーザに示す従来技術として、受信したパケットの受信信号強度とパケットエラー率に基づいてマルチパスフェージングなどによる電波妨害の程度を判定する無線通信装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、複数のパイロット信号の振幅と位相を検出して、本来の情報と大きく異なる場合はマルチパスフェージングが生じていると判別し報知を行う無線通信装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−27932号公報([0023]、[0024])
【特許文献2】特開2003−101468号公報([0029])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の無線通信装置は、電波妨害の程度を判定するために受信したパケットのパケットエラーを使用しているが、パケットエラーを検出するために多数のパケットの受信を必要とする。そのため、パケット受信頻度が少ない場合に、パケットエラーを精度よく検出するためには長時間を要するという課題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された従来の無線通信装置では、パイロット信号の振幅や位相を検出するためのパイロット信号位相振幅検出部が余分に必要となり、検出方法が簡単ではないため、ハード量が無視できない規模で増加するという課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、従来のものより短時間で、かつ、簡単な検出方法でマルチパスフェージングの発生を検知することができる無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線受信装置は、シンボル区間およびヌル信号からなるガード区間を有するOFDM信号を受信し、マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する無線受信装置であって、前記シンボル区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第1のパワー検出部と、前記ガード区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第2のパワー検出部と、前記シンボル区間および前記ガード区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第3のパワー検出部と、前記第1のパワー検出部によって検出されたパワーに対する前記第2のパワー検出部によって検出されたパワーの比を計算するパワー比計算部と、前記パワー比計算部によって計算された比および前記第3のパワー検出部によって検出されたパワーに基づいて前記マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定するマルチパスフェージング判定部と、を備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の無線受信装置は、シンボル区間におけるOFDM信号のパワー、ガード区間におけるOFDM信号のパワー、シンボル区間およびガード区間におけるOFDM信号のパワーに基づいてマルチパスフェージングの発生を判定するため、従来のものより短時間で、かつ、簡単な検出方法でマルチパスフェージングの発生を検知することができる。
【0013】
また、前記マルチパスフェージング判定部は、前記第3のパワー検出部によって検出されたパワーが予め定められた第1の閾値を超え、前記パワー比計算部によって計算された比が予め定められた第2の閾値を超えた場合にマルチパスフェージングが発生していると判定するようにしてもよい。
【0014】
この構成により、本発明の無線受信装置は、受信信号のパワーが十分に大きい場合でも、マルチパスフェージングの発生を検知することができる。
【0015】
また、本発明の無線受信装置は、前記マルチパスフェージング判定部によって判定された判定結果を表示する表示部を備えていてもよい。
【0016】
この構成により、本発明の無線受信装置は、マルチパスフェージングの発生をユーザに視覚的に通知することができる。
【0017】
また、本発明の無線受信装置は、前記判定結果を外部端末装置に出力するためのインターフェース部を備えていてもよい。
【0018】
この構成により、本発明の無線受信装置は、外部端末装置を介してマルチパスフェージングの発生をユーザに通知することができる。
【0019】
また、前記表示部は、前記判定結果とともに前記第3のパワー検出部によって検出されたパワーおよび前記パワー比計算部によって計算された比を表示するようにしてもよい。
【0020】
この構成により、本発明の無線受信装置は、マルチパスフェージングの発生をユーザに通知するとともに受信信号のパワーやパワー比計算部で計算された比を通知することで、より詳細な電波受信状態に関わる情報をユーザが認知できる。
【0021】
本発明の無線受信装置は、シンボル区間およびヌル信号からなるガード区間を有するOFDM信号を受信し、マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する無線受信装置であって、前記シンボル区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第1のパワー検出部と、前記ガード区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第2のパワー検出部と、前記第1のパワー検出部によって検出されたパワーに対する前記第2のパワー検出部によって検出されたパワーの比を計算するパワー比計算部と、前記パワー比計算部によって計算された比および前記第1のパワー検出部によって検出されたパワーに基づいて前記マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定するマルチパスフェージング判定部と、を備えた構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の無線受信装置は、シンボル区間におけるOFDM信号のパワー、ガード区間におけるOFDM信号のパワーに基づいてマルチパスフェージングの発生を判定するため、従来のものより短時間で、かつ、簡単な検出方法でマルチパスフェージングの発生を検知することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、従来のものより短時間で、かつ、簡単な検出方法でマルチパスフェージングの発生を検知することができる無線受信装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る無線受信装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。図1に示す本発明の第1の実施形態の無線受信装置1は、周波数f1のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を受信するアンテナ10と、アンテナ10によって受信されたOFDM信号を増幅する低雑音増幅器11と、低雑音増幅器11によって増幅されたOFDM信号と不図示の局部発振器から出力される周波数f2の局部発振信号とを周波数混合することによりOFDM信号を周波数f2±f1の信号に変換する周波数変換器12と、周波数f2±f1の信号をフィルタリングして周波数f2−f1のベースバンド信号を透過させるバンドパスフィルタ(BPF)13と、BPF13によって透過されたベースバンド信号をデジタル化するAD変換器14と、BPF13によって透過されたベースバンド信号から受信信号強度を検出する第3のパワー検出部としての受信信号強度検出部15と、を備えている。
【0026】
また、無線受信装置1は、AD変換器14によってデジタル化されたベースバンド信号からシンボル区間を検出するシンボル区間検出部16と、シンボル区間検出部16によって検出されたシンボル区間におけるデジタル化されたベースバンド信号のパワー(以下、シンボルパワーと記す)を検出する第1のパワー検出部としてのシンボルパワー検出部17と、AD変換器14によってデジタル化されたベースバンド信号からガード区間を検出するガード区間検出部18と、ガード区間検出部18によって検出されたガード区間におけるデジタル化されたベースバンド信号のパワー(以下、ガード区間パワーと記す)を検出する第2のパワー検出部としてのガード区間パワー検出部19と、シンボルパワー検出部17によって検出されたシンボルパワーに対するガード区間パワー検出部19によって検出されたガード区間パワーの比(以下、パワー比と記す)を計算するパワー比計算部20と、をさらに備えている。
【0027】
さらに、無線受信装置1は、パワー比と受信信号強度に基づいてマルチパスフェージングが発生しているか否かを判定するマルチパスフェージング判定部21と、マルチパスフェージング判定部21を制御する制御部22と、マルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングの発生が判定された場合にユーザにその旨を通知する表示部23と、を備えている。
【0028】
ここで、図2に受信信号の構成を模式的に示す。従来から用いられているOFDM伝送方式は、複数の直交するサブキャリアを用いることにより長いシンボル長を実現するとともに、シンボル間にガード区間を設けることにより、異なるシンボル間の干渉を軽減することが可能な伝送方式である。
【0029】
なお、ガード区間には、シンボル信号の一部を繰り返し伝送する方式や、ワイヤレスUSB通信の伝送方式のようにヌル信号(ヌル・プリフィックス)を挿入する方式などが用いられるが、本発明では、ガード区間にヌル信号を挿入する方式を採用する。
【0030】
すなわち、図2に示すように、OFDM信号には1シンボル毎にガード区間としてヌル信号が挿入されている。ガード区間の時間幅は、伝送路の状況、すなわち復調に影響を及ぼす遅延波の最大遅延時間によって決定される。遅延波の最大遅延時間よりもガード区間を大きくすることで、シンボル間干渉を防ぐことができる。例えばワイヤレスUSB方式の場合のシンボル区間は242.42nsであり、ガード区間は70.08nsと決められている。
【0031】
受信信号強度検出部15は、受信信号のパワーをリアルタイムに表した信号である受信信号強度を検出して一時的に記憶し、例えば予め定められた区間(例えば、シンボル区間およびガード区間)における複数の時点の受信信号強度の平均値をその区間の受信信号強度として出力する。
【0032】
シンボル区間検出部16は、デジタル化されたベースバンド信号のパワーの変化でシンボル区間の開始時点を検出し、タイマなどを使用して一定時間(例えばワイヤレスUSBでは242.42ns)を検出することでシンボル区間を検出する。
【0033】
シンボルパワー検出部17は、デジタル化されたベースバンド信号のデジタルデータの二乗値をシンボル区間積和することでシンボルパワーの検出を行う。
【0034】
ガード区間検出部18は、シンボル区間の終了時点をガード区間の開始時点とし、タイマなどを使用して一定時間(例えばワイヤレスUSBでは70.08ns)を検出することでガード区間を検出する。
【0035】
ガード区間パワー検出部19は、例えばデジタル化されたベースバンド信号のデジタルデータの二乗値をガード区間積和することでガード区間パワーの検出を行う。
【0036】
表示部23は、例えばLEDの点灯により、マルチパスフェージング判定部21においてマルチパスフェージングの発生が判定された場合にユーザにその旨を通知する。
【0037】
図3に受信信号の時間波形を模式的に示す。波形3−1)は、マルチパスフェージングが無い状態であり、ガード区間には信号が無い。波形3−2)は、マルチパスフェージングがある状態であり、ガード区間にシンボル信号の遅延波が現れている。波形3−3)も同様にマルチパスフェージングがあり、ガード区間にシンボル信号の遅延波が現れている。
【0038】
波形3−2)の波形については、遅延波のレベルは波形3−3)より小さいが遅延時間が長いことがわかる。逆に波形3−3)については、遅延波のレベルは波形3−2)より大きいが遅延時間が短いことがわかる。そのため、パワー比計算部20は、ガード区間パワーとシンボルパワーとの比(ガード区間パワー/シンボルパワー)であるパワー比を計算することにより、受信信号のマルチパスフェージングの発生を検出できる。
【0039】
ただし、パワー比のみの検出では、マルチパスフェージングによってパワー比が大きくなっているのか、または、単に受信信号のレベルが小さいため(例えば、無線送信装置が無線受信装置から遠いなどの理由で)低雑音増幅器11のノイズによるSNR劣化によってパワー比が大きくなっているのかを判別することができない。そのため、マルチパスフェージング判定部21は、マルチパスフェージングによる影響を検出するために、パワー比に加えて受信信号強度検出部15から出力された受信信号強度を使用する。
【0040】
マルチパスフェージング判定部21は、[表1]に示すようなテーブルを用いて、受信信号強度とパワー比を使用してマルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する。[表1]に示したテーブルにおいては、受信信号強度用の第1の閾値aとパワー比用の第2の閾値bが予め設定され、状況が4種類に場合わけされている。
【表1】

【0041】
状況1は、受信信号強度が大きくパワー比が大きい場合であり、無線送信装置との距離が近いにもかかわらずガード区間パワーが大きい。すなわち、状況1ではマルチパスフェージングの発生によって電波受信状態が良好でないため、マルチパスフェージング判定部21は、「マルチパスフェージングあり」と判定する。
【0042】
状況2は、受信信号強度が大きくパワー比が小さい場合であり、無線送信装置との距離が近くガード区間パワーが小さい。すなわち、状況2ではマルチパスフェージングが発生しておらず電波受信状態が良好であるため、マルチパスフェージング判定部21は、「マルチパスフェージングなし」と判定する。
【0043】
状況3は、受信信号強度が小さくパワー比が大きい場合であり、無線送信装置との距離が遠いため受信信号のレベルが小さく、低雑音増幅器11のノイズによるSNR劣化によりガード区間パワーが大きい場合である。すなわち、状況3ではマルチパスフェージングの発生にかかわらず、電波受信状態が良好でない。このとき、マルチパスフェージング判定部21は、「マルチパスフェージングなし」と判定する。
【0044】
状況4は、受信信号強度が小さくパワー比が小さい場合であり、無線送信装置との距離が遠いため受信信号のレベルが小さいが、低雑音増幅器11のノイズによるSNR劣化によるガード区間パワーも小さい場合である。すなわち、状況4ではマルチパスフェージングが発生していないが、受信信号のレベルが小さいために電波受信状態は、状況3よりも良好であるが状況2よりは良好ではない。このため、マルチパスフェージング判定部21は、「マルチパスフェージングなし」と判定する。
【0045】
なお、閾値aやbは、実験で得られた値や電波の空間減衰の理論値などにより求められる値であり、制御部22によって変更可能である。
【0046】
次に、本実施形態の無線受信装置1の動作について説明する。
【0047】
アンテナ10によって受信された信号は、低雑音増幅器11によって増幅され、周波数変換器12によって不図示の局部発振器から出力される周波数f2の局部発振信号と周波数混合されて、周波数f2±f1の信号に変換される。周波数f2±f1の信号はBPF13によってフィルタリングされて、周波数f2−f1の信号のベースバンド信号として透過される。
【0048】
ベースバンド信号は、AD変換器14によってデジタル化される。デジタル化されたベースバンド信号からシンボル区間検出部16によってシンボル区間が検出され、シンボルパワー検出部17によってシンボル区間におけるシンボルパワーが検出される。
【0049】
また、デジタル化されたベースバンド信号からガード区間検出部18によってガード区間が検出され、ガード区間パワー検出部19によってガード区間におけるガード区間パワーが検出される。
【0050】
このように得られたシンボルパワーとガード区間パワーからパワー比計算部20によってパワー比が計算される。
【0051】
一方、BPF13によって透過されたベースバンド信号から受信信号強度検出部15によって受信信号強度が検出される。マルチパスフェージング判定部21によってパワー比と受信信号強度から[表1]に示したテーブルに基づいてマルチパスフェージングの発生が判定される。
【0052】
マルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングが発生していると判定された場合には、その旨が表示部23によってユーザに通知される。これにより、ユーザが、マルチパスフェージングによる電波状態の劣化を表示部23により認識するとともに、アンテナの位置や方向を変更することで、マルチパスフェージングの発生を抑えることが可能となり、安定した無線通信が可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では、第1のパワー検出部が、受信信号強度検出部15のようにシンボル区間における複数の時点の受信信号強度の平均値をシンボルパワーとして検出するものであってもよく、第2のパワー検出部が、受信信号強度検出部15のようにガード区間における複数の時点の受信信号強度の平均値をガード区間パワーとして検出するものであってもよい。また、第3のパワー検出部が、シンボルパワー検出部17およびガード区間パワー検出部19のようにシンボル区間およびガード区間における信号パワーを検出するものであってもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の無線受信装置は、受信信号強度とパワー比を使用してマルチパスフェージングを判定するため、従来のものより短時間で、かつ、簡単な検出方法でマルチパスフェージングの発生を検知することができる。
【0055】
また、本実施形態の無線受信装置は、無線受信信号にマルチパスフェージングが生じているかどうか判定できるため、電波受信状態が良好でないことをユーザに認知させ、アンテナの方向や場所を変更させることにより、良好な受信状態を得ることが可能となる。
【0056】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。図4に示す本発明の第2の実施形態の無線受信装置4は、シンボル区間検出部46、シンボルパワー検出部47、ガード区間検出部48およびガード区間パワー検出部49が、デジタル化されたベースバンド信号ではなく、アナログのベースバンド信号の受信信号強度を用いて、シンボル区間、シンボルパワー、ガード区間およびガード区間パワーをそれぞれ検出する点が本発明の第1の実施形態の無線受信装置と異なる。
【0057】
次に、本実施形態の無線受信装置4の動作について説明する。
【0058】
本発明の第1の実施形態の無線受信装置と同様に、周波数f2±f1の信号が、BPF13によってフィルタリングされて、周波数f2−f1の信号のベースバンド信号として透過される。BPF13によって透過されたベースバンド信号から受信信号強度検出部15によって受信信号強度が検出される。
【0059】
そして、シンボル区間検出部46によって、受信信号強度検出部15から出力された受信信号強度からシンボル区間が検出され、シンボルパワー検出部47によってシンボルパワーが検出される。すでに述べたように、受信信号強度は受信信号のパワーをリアルタイムに表した信号であるため、シンボルパワー検出部47によってシンボルパワーを検出する際には、例えば、シンボル区間内の一時点の受信信号強度、あるいは複数の時点の受信信号強度の平均値を用いるとよい。
【0060】
同様に、受信信号強度からガード区間検出部48によってガード区間が検出され、ガード区間パワー検出部49によって、例えば、ガード区間内の一時点の受信信号強度、あるいは複数の時点の受信信号強度の平均値によりガード区間パワーが検出される。
【0061】
そして、本発明の第1の実施形態の無線受信装置と同様に、シンボルパワーとガード区間パワーからパワー比計算部20によってパワー比が計算され、マルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングが発生していると判定された場合には、その旨が表示部23によってユーザに通知される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の無線受信装置は、本発明の第1の実施形態の効果に加えて、AD変換器を用いずにマルチパスフェージングを検出することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。図5に示す本発明の第3の実施形態の無線受信装置5は、AD変換器14によってデジタル化されたベースバンド信号から受信信号強度を検出する受信信号強度検出部55と、マルチパスフェージングの発生情報を出力する入出力インターフェース(IO)部50と、マルチパスフェージングの発生情報を画面表示する外部端末装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)51と、マルチパスフェージング判定部21で用いられる閾値a、bを変更するとともに、IO部50を介してPC51にマルチパスフェージングの発生情報を伝送する制御部52と、を備えている点が本発明の第1の実施形態の無線受信装置と異なる。なお、外部端末装置としては、PDA(Personal Digital Assist)などを用いてもよい。
【0064】
次に、本実施形態の無線受信装置5の動作について説明する。
【0065】
本発明の第1の実施形態の無線受信装置と同様にマルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングが発生していると判定された場合には、制御部52によってその判定結果がIO部50を介してPC51に伝送される。
【0066】
PC51によって、伝送された判定結果に基づいたマルチパスフェージングの発生情報が画面表示される。例えばマルチパスフェージングが発生している場合には、パワー比がバーグラフで表示されることにより、マルチパスフェージングの度合いが表示されてもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の無線受信装置は、本発明の第1の実施形態の効果に加えて、マルチパスフェージングが発生している場合にはその旨を外部端末装置を介してユーザに通知することができる。
【0068】
また、本実施形態の無線受信装置は、装置の回路構成の大半をデジタル回路とすることができるため、回路構成が容易である。
【0069】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。本発明の第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。図6に示す本発明の第4の実施形態の無線受信装置6は、AD変換器14によってデジタル化されたベースバンド信号から受信信号強度を検出する受信信号強度検出部55と、マルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングの発生が判定された場合にユーザにその旨を通知する表示部63と、を備えている。
【0070】
表示部63は、パワー比計算部20によって計算されたパワー比を表示するパワー比表示部63aと、受信信号強度検出部55によって検出された受信信号強度を表示する信号強度表示部63bと、マルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングの発生が判定された場合にその判定結果を表示する判定結果表示部63cと、を備えている。
【0071】
次に、本実施形態の無線受信装置6の動作について説明する。
【0072】
本発明の第1の実施形態と同様にマルチパスフェージング判定部21によってマルチパスフェージングが発生していると判定された場合には、その旨が判定結果表示部63cに表示されユーザに通知される。同時にパワー比がパワー比表示部63aに表示されるとともに、受信信号強度が信号強度表示部63bに表示される。
【0073】
したがって、本実施形態の無線受信装置は、本発明の第1の実施形態の効果に加えて、同時にパワー比と受信信号強度を表示することにより、より詳細な電波状況の情報や、受信信号品質に係る情報をユーザに認識させることができる。
【0074】
すなわち、パワー比表示部63aが表示するパワー比が大きく、かつ、信号強度表示部63bが表示する受信信号強度が大きい場合には、ユーザは、無線送信装置が近くにあり受信信号のレベルは十分であるが、周囲の環境による強いマルチパスフェージングが発生していることを認識でき、アンテナの向きを変えるなどの方法でマルチパスフェージングを避ける事ができる。
【0075】
また、パワー比表示部63aが表示するパワー比が小さく、かつ、信号強度表示部63bが表示する受信信号強度が小さい場合には、ユーザは、無線送信装置が遠くに存在し受信信号のレベルが小さいことを認識でき、受信信号強度が大きくなるようにアンテナの位置を無線送信装置に近づけることで電波状況を改善できる。
【0076】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。図7に示す本発明の第5の実施形態の無線受信装置7においては、マルチパスフェージング判定部71が、シンボルパワー検出部17で検出されたシンボルパワーおよびパワー比計算部20によって計算されたパワー比に基づいてマルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する。なお、無線受信装置7においては、受信信号強度を検出する受信信号強度検出部が省略されている。
【0077】
マルチパスフェージング判定部71は、[表2]に示すようなテーブルを用いて、シンボルパワーとパワー比を使用してマルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する。[表2]に示したテーブルにおいては、シンボルパワー用の閾値cとパワー比用の閾値bが予め設定され、状況が4種類に場合わけされている。
【表2】

【0078】
状況Aは、シンボルパワーが大きくパワー比が大きい場合であり、無線送信装置との距離が近いにもかかわらずガード区間パワーが大きい。すなわち、状況Aではマルチパスフェージングの発生によって電波受信状態が良好でないため、マルチパスフェージング判定部71は、「マルチパスフェージングあり」と判定する。
【0079】
状況Bは、シンボルパワーが大きくパワー比が小さい場合であり、無線送信装置との距離が近くガード区間パワーが小さい。すなわち、状況Bではマルチパスフェージングが発生しておらず電波受信状態が良好であるため、マルチパスフェージング判定部71は、「マルチパスフェージングなし」と判定する。
【0080】
状況Cは、シンボルパワーが小さくパワー比が大きい場合であり、無線送信装置との距離が遠いため受信信号のレベルが小さく、低雑音増幅器11のノイズによるSNR劣化によりガード区間パワーが大きい場合である。すなわち、状況Cではマルチパスフェージングの発生にかかわらず、電波受信状態が良好でない。このとき、マルチパスフェージング判定部71は、「マルチパスフェージングなし」と判定する。
【0081】
状況Dは、シンボルパワーが小さくパワー比が小さい場合であり、無線送信装置との距離が遠いため受信信号のレベルが小さいが、低雑音増幅器11のノイズによるSNR劣化によるガード区間パワーも小さい場合である。すなわち、状況Dではマルチパスフェージングが発生していないが、受信信号のレベルが小さいために電波受信状態は、状況Cよりも良好であるが状況Bよりは良好ではない。このため、マルチパスフェージング判定部71は、「マルチパスフェージングなし」と判定する。
【0082】
なお、閾値bやcは、実験で得られた値や電波の空間減衰の理論値などにより求められる値であり、制御部22によって変更可能である。
【0083】
次に、本実施形態の無線受信装置7の動作について説明する。
【0084】
本発明の第1の実施形態と同様に、シンボルパワーとガード区間パワーからパワー比計算部20によりパワー比が計算される。そして、マルチパスフェージング判定部71によってシンボルパワーとパワー比から[表2]に示したテーブルに基づいてマルチパスフェージングの発生が判定される。
【0085】
そして、マルチパスフェージング判定部71によってマルチパスフェージングが発生していると判定された場合には、その旨が表示部23に表示されユーザに通知される。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の無線受信装置は、本発明の第1の実施形態の効果に加えて、シンボルパワーとパワー比を使用してマルチパスフェージングを判定するため、受信信号強度検出部を用いずにマルチパスフェージングを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。
【図2】受信信号の構成を説明するための概念図である。
【図3】受信信号の時間波形を示す概念図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の第5の実施形態の無線受信装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0088】
1、4、5、6 無線受信装置
10 アンテナ
11 低雑音増幅器
12 周波数変換器
13 BPF
14 AD変換器
15、55 受信信号強度検出部
16、46 シンボル区間検出部
17、47 シンボルパワー検出部
18、48 ガード区間検出部
19、49 ガード区間パワー検出部
20 パワー比計算部
21、71 マルチパスフェージング判定部
22、52 制御部
23、63 表示部
50 IO部
51 PC
63a パワー比表示部
63b 信号強度表示部
63c 判定結果表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンボル区間およびヌル信号からなるガード区間を有するOFDM信号を受信し、マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する無線受信装置であって、
前記シンボル区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第1のパワー検出部と、
前記ガード区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第2のパワー検出部と、
前記シンボル区間および前記ガード区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第3のパワー検出部と、
前記第1のパワー検出部によって検出されたパワーに対する前記第2のパワー検出部によって検出されたパワーの比を計算するパワー比計算部と、
前記パワー比計算部によって計算された比および前記第3のパワー検出部によって検出されたパワーに基づいて前記マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定するマルチパスフェージング判定部と、を備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記マルチパスフェージング判定部は、前記第3のパワー検出部によって検出されたパワーが予め定められた第1の閾値を超え、前記パワー比計算部によって計算された比が予め定められた第2の閾値を超えた場合にマルチパスフェージングが発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記マルチパスフェージング判定部によって判定された判定結果を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記判定結果を外部端末装置に出力するためのインターフェース部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記判定結果とともに前記第3のパワー検出部によって検出されたパワーおよび前記パワー比計算部によって計算された比を表示することを特徴とする請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項6】
シンボル区間およびヌル信号からなるガード区間を有するOFDM信号を受信し、マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定する無線受信装置であって、
前記シンボル区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第1のパワー検出部と、
前記ガード区間における前記OFDM信号のパワーを検出する第2のパワー検出部と、
前記第1のパワー検出部によって検出されたパワーに対する前記第2のパワー検出部によって検出されたパワーの比を計算するパワー比計算部と、
前記パワー比計算部によって計算された比および前記第1のパワー検出部によって検出されたパワーに基づいて前記マルチパスフェージングが発生しているか否かを判定するマルチパスフェージング判定部と、を備えたことを特徴とする無線受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−284389(P2009−284389A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136385(P2008−136385)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】