説明

無線基地局の障害管理方法及びシステム

【課題】無線基地局について、より正確な修理情報を得ることができるようにすること。
【解決手段】各無線基地局110〜130に複数のベースバンド部210A、210Bを設け、保守装置100は、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と、前記ベースバンド部が含まれる無線基地局内の他のベースバンド部からの環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成して、前記障害が生じたベースバンド部に送信する。前記ベースバンド部は前記障害情報を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の無線基地局で発生した障害を管理するための無線基地局の障害管理方法、携帯型通信端末によって利用されるデータの管理方法、データを利用する携帯型通信端末、データ管理装置、及び、コンピュータによって前記データ管理装置を構築するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話システム等において、端末と端末間の通信を中継するために無線基地局が利用されている(特許文献1〜7参照)。
例えば、特許文献1に示される障害管理装置を無線基地局システムに適用した場合を考える。この場合、障害の発生したベースバンド部から障害情報や環境情報などの障害を管理する保守装置に通知し、保守装置内で過去の障害実績などから適切な修理方法を選択し、運用管理者に出力することになる。
【0003】
ベースバンド部の保守対応において、発生した障害現象を再現させることは、問題解決のための有効な手段となるが、環境に起因した障害の場合、障害を再現させるには、時間と労力を要することになる。障害が発生したとき、障害情報と同時に温度や電圧などの環境情報を送信することで、動作環境を知ることは可能であるが、それだけでは不十分で簡単に障害現象を再現できないことや、障害によっては環境情報を取得できないことがあり、有効活用できていない状況にある。
【0004】
収集した障害情報は保守装置内で解析され、修理情報を選択することになる。修理情報は保守装置内でも管理されるが、配下に多数の無線基地局を制御しているため、ベースバンド部の情報は膨大な量となる。その中から適切な修理情報を探し出すのは多大な労力を要し、保守部門の修理コストに影響が出るばかりか、誤って修理してしまう可能性もある。
【0005】
従来の障害情報管理システムを図6のフローチャートを参照して説明する。
本フローチャートでは、ベースバンド部A(210A)に障害が発生した場合(ステップ701)を説明している。
ベースバンド部A(210A)は障害情報と環境情報を制御部200に対して通知する(ステップ702)。制御部200はベースバンド部A(210A)から受信した障害情報、環境情報を保守装置100に対して通知する(ステップ703)。
【0006】
通知を受けた保守装置100は障害情報の解析を行い、修理情報を選択する(ステップ704)。
保守担当者はこの保守装置100より修理情報を入手し、保守作業を行うことになる。情報入手方法は例えば、特許文献2ではインターネットを用いて、保守員が所持する端末から情報をダウンロードするように構成されている。
【0007】
しかしながら、従来のシステムでは以下のような問題が挙げられる。
第1の問題は、保守対応に活用できる環境情報が十分に取得できない点がある。環境情報は保守対応にて障害現象を再現させるのに有力な情報となる。重度な障害が発生し、ベースバンド部自身は障害情報や環境情報を上位に通知できない場合、制御部が保守装置に障害情報を通知することになるが、このときは環境情報を取得することは不可能となる。また、同一装置、同一環境内で障害の発生していないベースバンド部との環境差分を知ることも、従来の装置では不可能である。
【0008】
また第2の問題は、修理情報伝達の不正確さがある。
例えば、特許文献2では、保守員自らが修理情報をダウンロードするが、保守装置は配下のベースバンド部全ての情報を管理しているため、膨大なデータがあり、ダウンロード処理のオペレーションミスを誘発するおそれがある。
一方、特許文献3には、故障したベースバンド処理部に割り当てられていた移動端末の通信を継続できるようにした基地局装置が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3記載の発明では、故障時に他のベーズバンド処理に処理を移行して基地局装置としての処理を継続させるようにした発明が開示されているにすぎず、処理を継続させる場合でも、故障時用ベースバンド処理15’はデータ保存部17から故障したベースバンド部15の処理情報を受け取ってベースバンド処理を継続するようにしている。したがって、故障情報については何ら考慮させず又、故障修理を考慮したものでもない。
【0010】
【特許文献1】特開2006−099249号公報
【特許文献2】特開2005−215791号公報
【特許文献3】特開2004−112055号公報
【特許文献4】特開2000−253148号公報
【特許文献5】特開2005−260516号公報
【特許文献6】特開2007−60092号公報
【特許文献7】特開平10−108244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、無線基地局について、より正確な修理情報を得ることができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、無線基地局に複数のベースバンド部を設け、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の他のベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする無線基地局の障害管理方法が提供される。
無線基地局に複数のベースバンド部を設け、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の他のベースバンド部からの環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成する。
【0013】
ここで、障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを参照して、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように構成してもよい。
また、前記障害が生じたベースバンド部に対応付けて前記修理情報を記憶手段に記憶し、要求に応じて前記修理情報を出力するように構成してもよい。
また、少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部は前記決定された内容の自己診断を行うように構成してもよい。
【0014】
また、前記障害が生じたベースバンド部から障害情報及び環境情報を保守装置に送信すると共に、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の他のベースバンド部から環境情報を前記保守装置に送信し、前記保守装置は、少なくとも前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断内容を決定して前記事故が生じたベースバンド部に通知し、前記事故が生じたベースバンド部は前記保守装置が決定した内容で自己診断を行うように構成してもよい。
また、前記保守装置は、前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信するように構成してもよい。
【0015】
また、本発明によれば、障害が生じたことを検出して障害情報及び環境情報を保守装置に送信すると共に、前記保守装置からの環境情報要求に応答して環境情報を前記保守装置に送信する複数のベースバンド部を有する無線基地局と、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部が含まれる無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成する保守装置とを備えて成ることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0016】
無線基地局は、障害が生じたことを検出して障害情報及び環境情報を保守装置に送信すると共に、前記保守装置からの環境情報要求に応答して環境情報を前記保守装置に送信する複数のベースバンド部を有する。保守装置は、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部が含まれる無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成する。
【0017】
ここで、前記保守装置は、障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを有し、前記テーブルを参照して、前記受信した前記障害情報及び環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように構成してもよい。
また、前記各ベースバンドに対応付けて修理情報を記憶する記憶手段を有し、要求に応じて前記記憶手段に記憶した修理情報を出力するように構成してもよい。
【0018】
また、前記保守装置は、少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部は前記決定された内容の自己診断を行うように構成してもよい。
また、前記保守装置は、前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信し、前記障害が生じたベースバンド部は自身の記憶手段に前記修理情報を記憶し、要求に応じて前記修理情報を出力するように構成してもよい。
【0019】
また、障害が生じたことを検出して障害情報及び環境情報を外部に送信すると共に、外部からからの環境情報要求に応答して環境情報を外部に送信する複数のベースバンド部を備えて成るように構成してもよい。
また、外部から受信した修理情報を、障害が生じたベースバンドに対応付けて記憶する記憶手段を有し、要求に応じて前記記憶手段に記憶した修理情報を出力するように構成してもよい。
【0020】
また、前記障害が生じたベースバンド部は自身の記憶手段に前記修理情報を記憶し、要求に応じて前記修理情報を出力するように構成してもよい。
また、前記障害が生じたベースバンド部は、外部から指示された内容の自己診断を行うように構成してもよい。
【0021】
また、本発明によれば、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする保守装置が提供される。
【0022】
保守装置は、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成する。
【0023】
また、障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを有し、前記テーブルを参照して、前記受信した前記障害情報及び環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように構成してもよい。
また、少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部に自己診断の内容を指示するように構成してもよい。
また、前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信するように構成してもよい。
【0024】
また、本発明によれば、コンピュータを、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように機能させることを特徴とするプログラムが提供される。
【0025】
コンピュータは、プログラムを実行することにより、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように機能する。
【0026】
ここで、コンピュータを、障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを参照して、前記受信した前記障害情報及び環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように機能させるようプログラムを構成してもよい。
また、コンピュータを、少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部に前記決定した自己診断を実行するように指示するよう機能させるようにプログラムを構成してもよい。
【0027】
また、コンピュータを、前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信するように機能させるようプログラムを構成してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る無線基地局の障害管理方法、無線通信システムによれば、無線基地局について、より正確な修理情報を得ることが可能になる。
また、本発明によれば、前記無線基地局の障害管理方法、無線通信システムに好適な無線基地局、保守装置を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、コンピュータを用いて前記保守装置を構築することが可能なプログラムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る無線基地局の障害管理方法に好適な無線通信システムのブロック図である。
図1において、保守装置100は配下の複数の無線基地局110、120、130から障害情報250、環境情報251A、251Bを収集し、内部のサーバ等にもつデータベースから適切な修理情報を選択する機能をもつ。
【0030】
この保守装置100内の動作については、例えば前記特許文献1、4に代表されるように公開特許公報として開示されているものが多々あるので、本実施の形態に係る説明においてはその詳細な説明は省略する。
無線基地局110、120、130は携帯電話端末(図示せず)との間で無線通信を行うための装置だが、ここでは本実施の形態に関連する機能として、制御部200とベースバンド部A(210A)とベースバンド部B(210B)を具備する。
【0031】
制御部200の配下には複数のベースバンド部が実装されるが、本実施の形態では簡略化のため、ベースバンド部A(210A)、ベースバンド部B(210B)の2つとする。それぞれのベースバンド部は無線基地局110から取り外し、交換可能な構成となっている。
【0032】
ベースバンド部A(210A)、B(210B)は障害発生時、制御部200に対し、障害情報250や環境情報251A、251Bを送信する。障害情報250には、発生した障害名、発生時刻、各障害に紐付けされた(各障害に関係する)デバイスの設定値等が含まれている。環境情報251A、251Bには、様々な情報があるが、一例として、温度情報、電圧値、電流値などが考えられる。環境情報251A、251Bは、制御部200から環境情報要求253を受信したときにも制御部200に対して送出する。
【0033】
制御部200は、ベースバンド部A(210A)、B(210B)と保守装置100の間のインタフェースを取り持ち、ベースバンド部A(210A)、B(210B)から受信した障害情報250、環境情報251A、251Bを保守装置100に対して送信したり、保守装置100から受信した修理情報252を配下のベースバンド部A(210A)、B(210B)へ送信したりする。
【0034】
また、制御部200は、配下のベースバンド部A(210A)、B(210B)の監視を行い、障害を検出したときには、自ら障害情報250を保守装置100に送出する。保守装置100は前述のように内部に修理情報を格納したデータベースを持ち、制御部200より受信した障害情報250、環境情報251A、251Bから適切な修理方法を選択し、修理情報252として、制御部200へ返信する。
【0035】
前記データベースは、障害情報250、環境情報251A、251B、修理方法を対応付けたテーブルであり、保守装置100は、前記テーブルを参照して、障害情報250、環境情報251A、251Bに対応する修理方法を修理情報252として選択する。制御部200を経由して修理情報252を受信したベースバンド部A(210A)、B(210B)は、各ベースバンド部A(210A)、B(210B)内に設けられ記憶手段を構成する各メモリ(図示せず)に修理情報252を記憶する。
【0036】
尚、前記テーブルは少なくとも障害情報250と修理方法とを対応付けたテーブルであり、保守装置100は前記テーブルを参照して、少なくとも障害情報250に基づいて修理方法を修理情報252として選択するように構成できる。
図2を参照すると、図1に示すベースバンド部の内部構成が示されている。ベースバンド制御部211は、ベースバンド部全体の制御を行う機能部である。ベースバンド信号処理部212はベースバンド部のメインとなる機能部で、ベースバンド信号の処理を行う。電源部213はベースバンド部各部に電源を供給する。
【0037】
障害情報格納メモリ214は不揮発性のメモリであって記憶手段を構成し、ベースバンド制御部211により、自ベースバンド部で発生した障害情報を格納するほか、上位の保守装置100から通知される修理情報も格納する。上位接続インタフェース215は図1に示す制御部200との接続を行い、各種情報のやりとりを行う。
【0038】
メンテナンス用インタフェース216は保守作業者が障害情報格納メモリ214にアクセスできる機能をもち、保守装置100から通知された修理情報を直接読み出し、障害発生部分の修理方法を知ることができる。
図3は、本発明の実施の形態における障害情報収集動作を示すフローチャートである。図3のフローチャートでは、ベースバンド部A(210A)に障害が発生(ステップ301)した場合を説明している。
【0039】
先ず、本実施の形態の携帯電話無線基地局の障害情報を収集する無線通信システムの動作を概略説明すると、あるベースバンド部に異常が発生したとき、同一無線基地局に実装されている別のベースバンド部からも環境情報を収集することで、より正確な動作環境情報を入手できるように構成している。また、障害情報の解析結果、修理情報を障害が発生したベースバンド部に書き残すことで、保守部門まで情報を正確に連絡できるように構成している。
【0040】
図1において、無線通信システムは保守装置100とその配下にいくつかの無線基地局110、120、130が配置されている構成としている。複数の無線基地局110、120、130の内部構成を無線基地局110を例に挙げて説明する。無線基地局110は、制御部200と複数のベースバンド部、(ここでは例としてベースバンド部A(210A)とベースバンド部B(210B)とする)を有し、制御部200が各ベースバンド部210A、210Bを監視、制御する。
【0041】
ここで、ベースバンド部A(210A)で障害が発生したとする。ベースバンド部A(210A)は障害情報250と環境情報251Aを制御部200へ送信する。制御部200は障害の発生した環境のさらなる詳細情報を取得するため、同一無線基地局内のベースバンド部B(210B)に対し、環境情報要求253を送信する。環境情報要求253を受信したベースバンド部B(210B)は環境情報251Bを制御部200へ送信する。
【0042】
制御部200はベースバンド部A(210A)から受信した障害情報250と環境情報251A、ベースバンド部B(210B)から受信した環境情報251Bを保守装置100へ送信する。制御部200は、自ら配下のベースバンド部210A、210Bの監視も行い、障害を検出した際には、制御部200自身が保守装置100に対して、障害情報250を送信する。
【0043】
保守装置100は障害情報250、環境情報251A、251Bから障害の発生したベースバンド部A(210A)の適切な修理方法を選択し、修理情報252として、制御部200を経由し、ベースバンド部A(210A)へ送信する。修理情報252を受信したベースバンド部A(210A)は修理情報252を記録する。
このように、本発明の実施の形態では、同一無線基地局内のベースバンド部から環境情報を収集しているため、より正確な動作環境情報を入手することができる。さらに、修理情報を障害が発生したベースバンド部に記録しているので、修理情報を保守担当者に確実に伝達することが可能になる。
【0044】
また、あるベースバンド部で障害が発生したときに、同一無線基地局内の別のベースバンド部から環境情報を取得することで、環境情報の取得を確実にし、また障害の発生したベースバンド部と発生していないベースバンド部の差分情報を入手できることから、障害解析、再現に有効活用することができる。修理情報を障害の発生したベースバンド部に直接記録することで、修理情報を保守部門に単純かつ確実に伝達することが可能となる。
【0045】
以下、図1〜図3を参照して、本実施の形態の動作を詳細に説明する。
ベースバンド部A(210A)に障害が発生(ステップ301)した場合、ベースバンド部A(210A)は障害情報250と環境情報251Aを制御部200に対して通知する(ステップ302)。
制御部200は、障害が生じたベースバンド部A(210A)が含まれる無線基地局110内の障害が生じていない他のベースバンド部B(210B)から環境情報251Aを収集するため、環境情報要求253をベースバンド部B(210B)に対して送信する(ステップS303)。
【0046】
このとき、図1に示したように、同一無線基地局内に複数のベースバンド部が存在している場合は、存在するベースバンド部の数だけ環境情報要求を送信する。ここで同一無線基地局内全てのベースバンド部に同時に通知するマルチキャスト送信を用いてもよい。
j ベースバンド部B(210B)は環境情報要求253を受け、環境情報251Bを制御部200へ通知する(ステップ304)。
【0047】
制御部200は、ベースバンド部A(210A)、ベースバンド部B(210B)から受信した障害情報250、環境情報251A、251Bを保守装置100に対して通知する(ステップ305)。
通知を受けた保守装置100は障害情報250の解析を行い、前記テーブルを参照して修理情報を選択し(ステップ306)、修理情報通知として制御部200へ修理情報を通知する(ステップ307)。
【0048】
前記テーブルは少なくとも障害情報250と修理方法とを対応付けたテーブルであり、保守装置100は前記テーブルを参照して、少なくとも障害情報250に基づいて修理方法を修理情報252として選択するように構成できる。
制御部200は修理情報通知307を障害の発生したベースバンド部A(210A)へ通知する(ステップ308)。修理情報通知308を受信したベースバンド部A(210A)は、修理情報を図2に示した障害情報格納メモリ(記憶手段)214に記録する(ステップ309)。
【0049】
なお、本フローチャートにおいては、制御部200はベースバンド部A(210A)、ベースバンド部B(210B)から障害情報、環境情報をすべて取得してから保守装置100へ通知しているが、通知手順はこの限りでなく、制御部200が各ベースバンド部から通知を順次受けた時点で、順次そのまま個別に保守装置100へ通知する手順でもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態においては、以下に記載するような効果を奏する。
即ち、あるベースバンド部で障害が発生したときに、同一無線基地局内の別のベースバンド部からも環境情報を取得しているので、環境情報の取得を確実にし、また障害の発生したベースバンド部と発生していないベースバンド部の差分情報を入手することが可能になる。
また、修理情報を障害の発生したベースバンド部に直接記録しているので、修理情報を保守部門に単純かつ確実に伝達することが可能になる。
【0051】
ここで、障害が発生したベースバンド部からの情報と障害が発生していないベースバンド部からの情報を使用して修理情報を生成する場合の具体例を説明する。一例として、環境情報として温度情報を取得する場合を考える。この場合、障害が発生したベースバンド部の温度が障害が発生していないベースバンド部の温度よりも著しく上昇していれば、「部品故障による異常発熱あり」として修理情報を記憶するように構成することができる。
また、他の例として、環境情報として電圧情報を取得する場合を考える。障害が発生したベースバンド部の電圧が障害が発生していないベースバンド部のそれよりも著しく低下していれば「経年劣化による電源部故障の疑いあり」として修理情報を記憶するように構成できる。
【0052】
尚、障害が発生したベースバンド部からの情報のみを使用して、即ち、少なくとも障害が発生したベースバンド部からの情報(障害情報、環境情報)に基づいて、修理情報を選択するように構成することも可能である。例えば、温度依存により故障しやすい部品(ここではデバイスAとする)が存在するとする。デバイスAは温度T度以上で故障しやすいことがわかっているとする。この情報をあらかじめ保守装置100の修理情報を関連付けたテーブルに登録しておく。障害が生じたベースバンド部から送信された環境情報より、保守装置100は障害発生時の環境温度が所定温度(例えばT度)以上かどうか判定する。もし、T度以上であればデバイスAが故障している疑いがあるので、「デバイスA故障疑いあり」の修理情報をベースバンド部に記憶するようにする。
【0053】
前述した「デバイスAは温度T度以上で故障しやすい」というのは実際はこの結論に達するまでにかなりの時間を要する場合が多い。修理情報のデータベースは保守部門もしくは開発部門が成長させていくものであるが、障害発生から障害を解決しデータベースを作成するまでには障害現象の再現試験を行うことになる。温度依存の現象の場合、再現試験、障害解析が困難な作業になる。この場合、前述したように、障害が発生しているベースバンド部の環境情報と、発生していないベースバンド部の環境情報とを入手し、その差分を調査することが再現試験、障害解析の大きなヒントになる。このように修理用データベース作成のための情報として、保守部門や開発部門で有効利用することが可能になる。
【0054】
本発明の他の実施の形態として、その基本的構成は上記の通りであるが、情報収集手順についてさらに工夫している。
保守装置はその内部に過去の障害情報から得たデータベースを具備しているので、修理情報だけでなく、過去の障害情報の解析結果から得られた障害状態からの復旧方法や、運用状態では行えないような自己診断を行うための診断試験内容を選択する機能をもつことが可能である。
【0055】
自己診断を行うことを取り入れた他の実施の形態のブロック図を図4に示す。基本構成は図1に示したとおりである。
保守装置400は修理情報だけでなく障害の発生したベースバンド部A(210A)から障害情報550、環境情報551Aを受信し、これらの情報から自己診断内容を選択し、自己診断要求554を故障したベースバンド部A(510A)に対して送信する。制御部500を経由して、自己診断要求554を受信したベースバンド部A(510A)は自己診断要求554の自己診断内容に従って自己診断を実施し、診断結果555を保守装置400に通知する。
【0056】
図5は、本他の実施の形態の処理を示すフローチャートである。
以下、図4における障害情報収集動作を図5に示すフローチャートを参照して説明する。
ベースバンド部A(510A)、ベースバンド部B(510B)、制御部500、保守装置400の構成は図3に示したフローと同様である。
ベースバンド部A(510A)に障害が発生し(ステップ601)、制御部500が障害情報550と環境情報551を保守装置400に通知する(ステップ605)までのフローも図3と同様である。
【0057】
障害情報550、環境情報551の通知を受けた保守装置400は、前記テーブルを参照して、障害情報550の解析から自己診断項目を選択し(ステップ606)、制御部500に対して、前記選択した自己診断を行うように要求するための自己診断要求554を送信する(ステップ607)。
【0058】
制御部500は受信した自己診断要求554を障害の発生したベースバンド部A(510A)へ送信する(ステップ608)。
ベースバンド部A(510A)は自己診断要求554をもとに自己診断を実施し、その診断結果555を図2に示した障害情報格納メモリ214に記録すると同時に、制御部500へ通知する(ステップ609)。
【0059】
制御部500は診断結果555を保守装置400へ通知する(ステップ610)。保守装置400は、障害情報550の解析結果(ステップ606)から修理情報を得ているので、修理情報552を制御部500へ通知し(ステップ611)、通知を受けた制御部500はベースバンド部A(510A)に対して修理情報552を通知する(ステップ612)。ベースバンド部A(510A)は修理情報552を図2に示した障害情報格納メモリ214に記録する(ステップ613)。尚、保守装置400は、自己診断結果を参照して、修理情報を生成して通知するように構成してもよい。
【0060】
以上述べたように、本発明の各実施の形態に係る無線基地局の障害情報管理方法、無線通信システムによれば、無線基地局について、より正確な修理情報を得ることが可能になる。
また、あるベースバンド部で障害が発生したときに、同一無線基地局内の別のベースバンド部から環境情報を取得することで、環境情報の取得を確実にし、また障害の発生したベースバンド部と発生していないベースバンド部の差分情報を入手できることから、障害解析、再現に有効活用することができる。修理情報を障害の発生したベースバンド部に直接記録することで、修理情報を保守部門に単純かつ確実に伝達することが可能となる。
【0061】
また、本発明の実施の形態によれば、前記無線基地局の障害情報管理方法、無線通信システムに好適な無線基地局、保守装置を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、コンピュータを用いて前記保守装置を構築することが可能なプログラムを提供することが可能になる。
【0062】
尚、前記各実施の形態では、携帯型通信端末が携帯電話の例で説明したが、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance,Personal Digital Assistants:個人向け携帯型情報通信機器)等の通信機能を有する通信端末と無線通信を行う無線基地局の障害情報管理方法、無線通信システム、これらに使用する無線基地局、保守装置に利用可能である。また、無線LAN(Local Area Network)を利用したシステム等にも利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
携帯電話、PHS、PDA、携帯型パソコンをはじめとして、無線通信機能を有する通信端末と無線通信を行う無線基地局の障害情報管理方法、無線通信システム、これらに使用する無線基地局、保守装置に利用可能である。また、無線LAN(Local Area Network)を利用したシステム等にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線基地局の障害管理方法に好適な無線通信システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線基地局の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態のフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る無線基地局の障害管理方法に好適な無線通信システムのブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態のフローチャートである。
【図6】従来の障害情報管理システムのフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
100・・・保守装置
110、120、130、410、420、430・・・無線基地局
200、500・・・制御部
210A・・・ベースバンド部A
210B・・・ベースバンド部B
211・・・ベースバンド制御部
212・・・ベースバンド信号処理部
213・・・電源部
214・・・障害情報格納メモリ
215・・・上位接続インタフェース
216・・・メンテナンス用インタフェース
250、550・・・障害情報
251A、251B、551A、552B・・・環境情報
252、552・・・修理情報
253、553・・・環境情報要求
554・・・自己診断要求
555・・・診断結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局に複数のベースバンド部を設け、障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の他のベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする無線基地局の障害管理方法。
【請求項2】
障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを参照して、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする請求項1記載の無線基地局の障害管理方法。
【請求項3】
前記障害が生じたベースバンド部に対応付けて前記修理情報を記憶手段に記憶し、要求に応じて前記修理情報を出力することを特徴とする請求項1又は2記載の無線基地局の障害管理方法。
【請求項4】
少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部は前記決定された内容の自己診断を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の無線基地局の障害管理方法。
【請求項5】
前記障害が生じたベースバンド部から障害情報及び環境情報を保守装置に送信すると共に、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の他のベースバンド部から環境情報を前記保守装置に送信し、
前記保守装置は、少なくとも前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断内容を決定して前記事故が生じたベースバンド部に通知し、
前記事故が生じたベースバンド部は前記保守装置が決定した内容で自己診断を行うことを特徴とする請求項4記載の無線基地局の障害管理方法。
【請求項6】
前記保守装置は、前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信することを特徴とする請求項5記載の無線基地局の障害管理方法。
【請求項7】
障害が生じたことを検出して障害情報及び環境情報を保守装置に送信すると共に、前記保守装置からの環境情報要求に応答して環境情報を前記保守装置に送信する複数のベースバンド部を有する無線基地局と、
障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部が含まれる無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成する保守装置とを備えて成ることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
前記保守装置は、障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを有し、前記テーブルを参照して、前記受信した前記障害情報及び環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする請求項7記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記各ベースバンドに対応付けて修理情報を記憶する記憶手段を有し、要求に応じて前記記憶手段に記憶した修理情報を出力することを特徴とする請求項7又は8記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記保守装置は、少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部は前記決定された内容の自己診断を行うことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記保守装置は、前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信し、
前記障害が生じたベースバンド部は自身の記憶手段に前記修理情報を記憶し、要求に応じて前記修理情報を出力することを特徴とする請求項10記載の無線通信システム。
【請求項12】
障害が生じたことを検出して障害情報及び環境情報を外部に送信すると共に、外部からからの環境情報要求に応答して環境情報を外部に送信する複数のベースバンド部を備えて成ることを特徴とする無線基地局。
【請求項13】
外部から受信した修理情報を、障害が生じたベースバンドに対応付けて記憶する記憶手段を有し、要求に応じて前記記憶手段に記憶した修理情報を出力することを特徴とする請求項12記載の無線基地局。
【請求項14】
前記障害が生じたベースバンド部は自身の記憶手段に前記修理情報を記憶し、要求に応じて前記修理情報を出力することを特徴とする請求項13記載の無線基地局。
【請求項15】
前記障害が生じたベースバンド部は、外部から指示された内容の自己診断を行うことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一に記載の無線基地局。
【請求項16】
障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする保守装置。
【請求項17】
障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを有し、前記テーブルを参照して、前記受信した前記障害情報及び環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成することを特徴とする請求項16記載の保守装置。
【請求項18】
少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部に自己診断の内容を指示することを特徴とする請求項16又は17記載の保守装置。
【請求項19】
前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信することを特徴とする請求項16乃至18のいずれか一に記載の保守装置。
【請求項20】
コンピュータを、
障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報を受信して、前記障害が生じたベースバンド部を含む無線基地局内の障害が生じていないベースバンド部に環境情報を要求し、前記障害が生じたベースバンド部からの障害情報及び環境情報と前記障害が生じていないベースバンド部からの環境情報とに基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
コンピュータを、
障害情報、環境情報及び修理情報を対応付けたテーブルを参照して、前記受信した前記障害情報及び環境情報に基づいて、前記障害が生じたベースバンド部の修理情報を生成するように機能させることを特徴とする請求項20記載のプログラム。
【請求項22】
コンピュータを、
少なくとも障害が生じたベースバンド部からの障害情報に基づいて自己診断の内容を決定し、前記障害が生じたベースバンド部に前記決定した自己診断を実行するように指示するよう機能させることを特徴とする請求項20又は21記載のプログラム。
【請求項23】
コンピュータを、
前記障害が生じたベースバンド部から自己診断結果を受信した後に、前記修理情報を前記障害が生じたベースバンド部へ送信するように機能させることを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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