説明

無線基地局装置及び無線通信方法

【課題】MBMSにおいてセルや特定のエリアの端にいるユーザの受信品質を改善することができる無線基地局装置及び無線通信方法を提供すること。
【解決手段】本発明の無線基地局装置は、マルチメディア同報サービスに対応しており、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する制御信号受信部16と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する再送判定部15と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する空間多重送信部13と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する送信ダイバーシチ送信部14と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代移動通信システムにおける無線基地局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信ネットワークでは、近年動画像コンテンツを配信するサービスが提供されている。これまでのサービスでは、ポイント・ツー・ポイント接続によるストリーミング技術が適用されており、コンテンツも回線交換ドメインで転送される形態が主となっている。このため、多くのユーザにマルチメディア・サービスとして提供するためには、ネットワーク資源を効率的に使用したサービスが必要である。
【0003】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、パケット交換ドメインで、マルチキャスト接続によりサービスを提供するMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)を標準化している。このMBMS技術は、ブロードキャストメッセージサービスや高速ビデオストリーミングサービスを可能とする技術であるので、IMT−AdvancedシステムやLTE(Long Term Evolution)システムにおいて期待されている技術である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP, TR36.300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MBMSでは、複数のユーザに同一のデータを同時に送信する。このため、各ユーザからのフィードバック情報に基づいて送信を制御することが難しい。したがって、各ユーザからのフィードバック情報を用いる適応変復調・チャネル符号化、ハイブリッドARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)の適用は一般的に難しい。
【0006】
しかしながら、MBMSのデータレートは、MBMSを適用するセルや特定のエリア(複数のセルで構成される領域)の端における品質により決まる。このため、セルや特定のエリアの端にいるユーザの受信品質を改善することが重要となる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、MBMSにおいてセルや特定のエリアの端にいるユーザの受信品質を改善することができる無線基地局装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線基地局装置は、マルチメディア同報サービスに対応する無線基地局装置であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する受信手段と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する再送判定手段と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する空間多重送信手段と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する送信ダイバーシチ送信手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の無線通信方法は、マルチメディア同報サービスに対応する無線通信方法であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する工程と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する工程と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する工程と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マルチメディア同報サービスに対応する無線通信方法であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信し、前記フィードバック情報を用いて再送判定し、再送すると判定された際には、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信し、再送しないと判定された際には、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信するので、一定のデータレートを保ちつつMBMSにおいてセルや特定のエリアの端にいるユーザの受信品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1におけるMBMSのセルを説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る無線基地局装置の構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る無線基地局装置における送信形態を説明するための図である。
【図4】(a)〜(e)は、送信ダイバーシチの態様を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるMBMSの特定エリアを説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る無線基地局装置の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る無線基地局装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、一つのセル内の携帯端末(UE:User Equipment)に対して同一のデータを同時に送信するMBMSについて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1におけるMBMSのセルを説明するための図である。図1から分かるように、一つのセルに、マルチメディア同報サービスに対応する無線基地局装置1と、この無線基地局装置1と通信する複数の携帯端末2が存在する。無線基地局装置1と複数の携帯端末2との間では、各携帯端末2からのフィードバック情報を用いる制御である、ハイブリッドARQを行う。すなわち、無線基地局装置1から下り送信データを送信し、携帯端末2が下り送信データを受信すると、携帯端末2においてデータの復号後の誤りを検出する。携帯端末2において、正しく復号できた場合は、携帯端末2は、ACK(Acknowledgement:確認応答)を無線基地局装置1に送信する。一方、携帯端末2において、誤って復号された場合は、携帯端末2は、NACK(Negative-Acknowledgement:否定応答)を無線基地局装置1に送信する。無線基地局装置1は、NACKを受信した場合には、そのパケットデータを再送信する。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1に係る無線基地局装置の構成を説明するための図である。図2に示す無線基地局装置は、MBMS信号を生成するMBMS信号生成部11と、送信パケットを再送用に保存する再送パケット保存部12と、初めて送信するパケットと再送パケットを空間多重して送信するする空間多重送信部13と、初めて送信するMBMS信号を送信ダイバーシチで送信する送信ダイバーシチ送信部14と、フィードバック情報(ここでは、ACK情報又はNACK情報)を受信する制御信号受信部16と、フィードバック情報を用いて再送判定する再送判定部15と、2つの送信アンテナ17a,17bとから主に構成されている。
【0015】
MBMS信号生成部11は、携帯端末2に配信するデータ(MBMS信号:マルチメディア同報サービスデータ)を生成する。MBMS信号生成部11は、MBMS信号を再送パケット保存部12に送ると共に、空間多重送信部13又は送信ダイバーシチ送信部14に送る。この場合において、再送判定部15で再送が必要と判定されたときには、MBMS信号(初めて送信されるパケット:初回送信パケット)は空間多重送信部13に送られ、再送パケットと共に空間多重処理されて送信される。この再送パケットは、再送パケット保存部12から空間多重送信部13に出力される。一方、再送判定部15で再送が不要と判定されたときには、MBMS信号(初回送信パケット)は送信ダイバーシチ送信部14に送られ、送信ダイバーシチが適用されて2つのアンテナ17a,17bから送信される。
【0016】
再送パケット保存部12は、携帯端末2からNACKが送られてきたときに再送するために、送信パケットを保存する。再送パケット保存部12に保存された再送用のパケットは、再送判定部15で再送が必要と判定されたときに、空間多重送信部13に送られる。
【0017】
空間多重送信部13は、再送すると判定された際に、初めて送信するMBMS信号(初回送信パケット)と再送データ(再送パケット)とを空間多重する。すなわち、空間多重送信部13では、再送判定部15で再送すると判定された際(再送パケットがある場合)に、初回送信パケットと再送パケットを空間多重する。このとき、初回送信パケット(新パケット)はMBMS信号生成部11から出力され、再送パケットは再送パケット保存部12から出力される。このように、初回送信パケットと再送パケットを空間多重することにより、初回送信パケットにもともと与えられていた帯域の一部を使って再送パケットを送信するので、再送パケット用に追加で無線リソースを使わない。このため、伝送レートを一定に保つことができる(固定の伝送レート)。空間多重送信部13は、空間多重処理されたパケットを送信アンテナ17a,17bから送信する。
【0018】
送信ダイバーシチ送信部14は、再送判定部15で再送しないと判定された際に、MBMS信号(初回送信パケット)を、送信ダイバーシチを適用して送信アンテナ17a,17bから送信する。
【0019】
制御信号受信部16は、下り送信データに対するフィードバック情報であるACK情報又はNACK情報を受信する。制御信号受信部16は、フィードバック情報を再送判定部15に出力する。
【0020】
再送判定部15は、フィードバック情報を用いて再送判定する。再送判定の方法としては、例えば、少なくとも1ユーザ(1つの携帯端末2)がNACKを送信した場合に再送する必要があると判定する方法、NACKの数にしきい値を設けておき、このしきい値を超えるNACK数になったときに再送する必要があると判定する方法、NACKの受信パワにしきい値を設けておき、このしきい値を超えるNACK受信パワになったときに再送する必要があると判定する方法などが挙げられる。再送判定部15は、再送判定結果(再送する/再送しない)をMBMS信号生成部11、空間多重送信部13、送信ダイバーシチ送信部14に出力する。
【0021】
上記構成を有する無線基地局装置1を備えた無線通信システムにおいては、次のような手順でサービス(MBMS)が提供される。マルチキャストモードでは、サービス加入により予め取得したMBMSユーザサービスの情報(パラメータ)を用いてサービスへの参加をネットワークに要求してマルチキャストグループに加わる。これにより、ネットワークがユーザの携帯端末をマルチキャストルートに接続する。次いで、ネットワーク側からのセッション開始手順により、ネットワーク内のMBMSベアラのリソースが活性化され、当該セッションで配信されるデータが携帯端末に転送される。
【0022】
一方、放送モードの場合には、提供されるサービスエリア全体に配信されるので、サービス加入などの手順は不要であり、各携帯端末上で、受信したサービスアナウンスメントから接続に必要なパラメータを得て、それぞれの放送サービスのチャネルに合わせることでサービスを受けることができる。
【0023】
このようなMBMS伝送において、下り送信データに対するフィードバック情報を受信し、前記フィードバック情報を用いて再送判定し、再送すると判定された際に、初めて送信するMBMS信号(初回送信パケット)と再送データ(再送パケット)とを空間多重して送信し、再送しないと判定された際に、初めて送信するMBMS信号を送信ダイバーシチで送信する。
【0024】
具体的には、無線基地局装置1が初回送信パケットを下り回線で各携帯端末2に送信する。携帯端末2においては、初回送信パケットを受信して復号し、誤りが検出されるかどうかを判定する。誤りが検出されれば、フィードバック情報をNACKとし、誤りが検出されなければ、フィードバック情報をACKとする。セル内の各携帯端末2は、このフィードバック情報(ACK情報又はNACK情報)を上り回線で無線基地局装置1に送信する。無線基地局装置1において、制御信号受信部16がフィードバック情報を受信する。このフィードバック情報は再送判定部15に出力される。再送判定部15においては、フィードバック情報に基づいて初回送信パケットを再送するか否かを判定する。再送判定の方法は上述した通りである。再送判定の結果は、MBMS信号生成部11、空間多重送信部13、送信ダイバーシチ送信部14に出力される。
【0025】
再送が必要と判定された場合(再送パケットがある場合)には、空間多重送信部13において、MBMS信号生成部11からの初回送信パケットと、再送パケット保存部12からの再送パケットとを空間多重し、空間多重されたパケットを送信アンテナ17a,17bから送信する。例えば、図3(b)に示すように、初回送信パケット(新パケット)を一方の送信アンテナ17aから送信し、再送パケットを他方の送信アンテナ17bから送信する。このとき、同じパケットをセル内のすべての携帯端末2に対して送信する。このように、再送時に空間多重を適用することにより、再送用の無線リソースを使う必要がないので、データレートを落とさずに再送を適用することができる。そして、再送を適用することができるので、マルチキャスト伝送におけるセル端の携帯端末の受信品質を改善することができる。
【0026】
再送が不要と判定された場合(再送パケットがない場合)には、送信ダイバーシチ送信部14において、MBMS信号生成部11からの初回送信パケットを、送信ダイバーシチを適用して送信アンテナ17a,17bから送信する。すなわち、図3(a)に示すように、初回送信パケット(新パケット)をそれぞれ送信アンテナ17a,17bから送信する。このとき、同じパケットをセル内のすべての携帯端末2に対して送信する。このように、初回送信パケットのみに送信ダイバーシチを適用することにより、携帯端末における受信品質を改善することができる。
【0027】
ここで、送信ダイバーシチについては、フィードバック情報が不要なオープンループ型の送信ダイバーシチであることが好ましい。オープンループ型の送信ダイバーシチとしては、FSTD(Frequency Switched Transmit Diversity)、TSTD(Time Switched Transmit Diversity)、SFBC(Space Frequency Block Code)、STBC(Space Time Block Code)、CDD(Cyclic Delay Diversity)などを挙げることができる。
【0028】
FSTDは、図4(a)に示すように、同一OFDMシンボル区間の隣接する2サブキャリア信号で交互に送信アンテナを切り替える方式であり、TSTDは、図4(b)に示すように、隣接するOFDMシンボルで交互に送信アンテナを切り替える方式である。SFBCは、図4(c)に示すように、隣接する2サブキャリアの同じ時間の2データシンボルをセットにして、空間・周波数符号化(Alamouti符号化)を行う方式である。STBCは、図4(d)に示すように、隣接するOFDMシンボルの2サブキャリア分をセットにして、空間・周波数符号化(Alamouti符号化)を行う方式である。CDDは、図4(e)に示すように、送信アンテナ17aの送信信号に対して、送信アンテナ17bの送信信号のタイミングを遅延させる方式である。なお、遅延量はCP(Cyclic prefix)以内である。
【0029】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、複数のセルで構成される特定エリア内の携帯端末に対して同一のデータを同時に送信するMBMSについて説明する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態2におけるMBMSの特定エリアを説明するための図である。図5から分かるように、ここでは、3つのセルで特定エリアを構成している。それぞれのセルに、マルチメディア同報サービスに対応する無線基地局装置1a,1b,1cと、各セルにおいて無線基地局装置1aと通信する複数の携帯端末2aが存在し、無線基地局装置1bと通信する複数の携帯端末2bが存在し、無線基地局装置1cと通信する複数の携帯端末2cが存在する。無線基地局装置1aと複数の携帯端末2aとの間、無線基地局装置1bと複数の携帯端末2bとの間、無線基地局装置1cと複数の携帯端末2cとの間では、各携帯端末からのフィードバック情報を用いる制御である、ハイブリッドARQを行う。すなわち、無線基地局装置1a,1b,1cから下り送信データを送信し、携帯端末2a,2b,2cがそれぞれ下り送信データを受信すると、携帯端末2a,2b,2cにおいてデータの復号後の誤りを検出する。携帯端末2a,2b,2cにおいて、正しく復号できた場合は、携帯端末2a,2b,2cは、ACKを無線基地局装置1a,1b,1cに送信する。一方、携帯端末2において、誤って復号された場合は、携帯端末2a,2b,2cは、NACKを無線基地局装置2a,2b,2cに送信する。無線基地局装置1は、NACKを受信した場合には、そのパケットデータを再送信し、ACKを受信するまで次のパケットを送信しない。
【0031】
このシステムにおいては、各無線基地局装置で再送判定を行い、複数の無線基地局装置のうちの一つの無線基地局装置で特定エリアに再送するか否かの決定を行い、再送する場合にそのタイミングを決定し、そのタイミング情報を他の無線基地局装置に伝送する。そして、特定エリア内のすべての無線基地局装置がタイミングを合わせて携帯端末にパケットを送信する。
【0032】
図6及び図7は、本発明の実施の形態2に係る無線基地局装置の構成を説明するための図である。図6及び図7において、図2と同じ部分については図2と同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図6は、複数の無線基地局装置1a,1b,1cのうちの一つの無線基地局装置1aの構成を示しており、無線基地局装置1aは、自装置及び他の無線基地局装置1b,1cからの再送判定結果を用いて特定エリアに対する再送を決定すると共に、送信タイミングを決定する再送決定・タイミング決定部18を備えている。
【0034】
再送判定部15は、フィードバック情報を用いて再送判定する。再送判定の方法としては、上述した通りである。再送判定部15は、再送判定結果(再送する/再送しない)を再送決定・タイミング決定部18に出力する。また、他の無線基地局装置1b,1cからの再送判定結果も再送決定・タイミング決定部18に送られる。
【0035】
再送決定・タイミング決定部18は、自装置1a及び他の無線基地局装置1b,1cからの再送判定結果を用いて特定エリアに対する再送を決定すると共に、送信タイミングを決定する。再送決定の方法としては上述した通りである。再送決定・タイミング決定部18は、再送を決定し、そのタイミングを決定したときは、タイミング情報を自装置1aのMBMS信号生成部11、空間多重送信部13、送信ダイバーシチ送信部14に出力する。また、再送決定・タイミング決定部18は、再送を決定し、そのタイミングを決定したときは、他の無線基地局装置1b,1cにタイミング情報を送信する。なお、再送決定・タイミング決定部18は、再送を行わないときも、送信タイミングを決定し、他の無線基地局装置1b,1cにタイミング情報を送信する。
【0036】
図7は、複数の無線基地局装置1a,1b,1cのうちの一つの無線基地局装置1a以外の無線基地局装置1b,1cの構成を示しており、無線基地局装置1b,1cの再送判定部15は、再送判定結果を無線基地局装置1aに送信すると共に、無線基地局装置1aからのタイミング情報を受信する。再送判定部15は、タイミング情報(必要に応じて再送決定情報も含む)をMBMS信号生成部11、空間多重送信部13、送信ダイバーシチ送信部14に出力する。
【0037】
図5に示すシステムでのMBMS伝送においては、特定エリア内においてマルチメディア同報サービスに対応する複数の無線基地局装置1a,1b,1cにおいて、下り送信データに対するフィードバック情報を受信し、前記フィードバック情報を用いて再送判定し、前記複数の無線基地局装置1a,1b,1cのうちの一つの無線基地局装置1aにおいて、自装置1a及び他の無線基地局装置1b,1cからの再送判定結果を用いて前記特定エリアに対する再送を決定すると共に送信タイミングを決定し、再送すると判定された際に、初めて送信するMBMS信号(初回送信パケット)と再送データ(再送パケット)とを空間多重して送信し、再送しないと判定された際に、初めて送信するMBMS信号を送信ダイバーシチで送信する。この場合において、複数の無線基地局装置1a,1b,1cのうちの前記一つの無線基地局装置1a以外の無線基地局装置1b,1cにおいて、再送すると判定された際に、前記空間多重されたMBMS信号と再送データを、前記一つの無線基地局装置1aからのタイミング情報にしたがって空間多重して送信する。また、無線基地局装置1aは、再送を行わないときも、送信タイミングを決定し、他の無線基地局装置1b,1cにタイミング情報を送信する。このように、パケット送信の際に、複数の無線基地局装置1a,1b,1cで同期してパケットを送信する。
【0038】
具体的には、無線基地局装置1a,1b,1cが初回送信パケットを下り回線で各携帯端末2a,2b,2cにそれぞれ送信する。携帯端末2a,2b,2cにおいては、初回送信パケットを受信して復号し、誤りが検出されるかどうかを判定する。誤りが検出されれば、フィードバック情報をNACKとし、誤りが検出されなければ、フィードバック情報をACKとする。特定エリア内の各携帯端末2a,2b,2cは、このフィードバック情報(ACK情報又はNACK情報)を上り回線で無線基地局装置1a,1b,1cにそれぞれ送信する。無線基地局装置1a,1b,1cにおいて、制御信号受信部16がフィードバック情報を受信する。このフィードバック情報は再送判定部15に出力される。再送判定部15においては、フィードバック情報に基づいて初回送信パケットを再送するか否かを判定する。再送判定の方法は上述した通りである。再送判定の結果は、無線基地局装置1aの再送決定・タイミング決定部18に出力される。
【0039】
再送決定・タイミング決定部18で再送が必要と判定された場合(再送パケットがある場合)には、各無線基地局装置1a,1b,1cの空間多重送信部13において、MBMS信号生成部11からの初回送信パケットと、再送パケット保存部12からの再送パケットとを空間多重して送信アンテナ17a,17bから送信する。例えば、図3(b)に示すように、初回送信パケット(新パケット)を一方の送信アンテナ17aから送信し、再送パケットを他方の送信アンテナ17bから送信する。このとき、同じパケットを特定エリア内のすべての携帯端末2a,2b,2cに対してタイミングを合わせて送信する。このように、再送時に空間多重を適用することにより、再送用の無線リソースを使う必要がないので、データレートを落とさずに再送を適用することができる。そして、再送を適用することができるので、マルチキャスト伝送におけるセル端の携帯端末の受信品質を改善することができる。
【0040】
再送決定・タイミング決定部18で再送が不要と判定された場合(再送パケットがない場合)には、各無線基地局装置1a,1b,1cの送信ダイバーシチ送信部14において、MBMS信号生成部11からの初回送信パケットを、送信ダイバーシチを適用して送信アンテナ17a,17bから送信する。すなわち、図3(a)に示すように、初回送信パケット(新パケット)をそれぞれ送信アンテナ17a,17bから送信する。このとき、同じパケットを特定エリア内のすべての携帯端末2a,2b,2cに対してタイミングを合わせて送信する。このように、初回送信パケットに送信ダイバーシチを適用することにより、携帯端末における受信品質を改善することができる。
【0041】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態1,2においては、送信アンテナが2本である場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、送信アンテナが3本以上である場合にも適用することができる。また、上記実施の形態1,2において、初回送信パケットと再送パケットを空間多重して送信する場合において、初回送信パケットと再送パケットを2つの送信アンテナにそれぞれ割り当てて送信する場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、初回送信パケットと再送パケットを合成し、合成信号を2つの送信アンテナから送信する場合にも適用することができる。また、上記実施の形態2においては、各無線基地局装置で再送判定を行った後にその再送判定結果を用いて最終の再送決定を行う場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、一つの無線基地局装置にすべてのセルのフィードバック情報を送信し、その一つの無線基地局装置において再送判定を行うようにしても良い。
【0042】
本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、上記説明における処理部の数、処理手順については適宜変更して実施することが可能である。また、図に示される要素の各々は機能を示しており、各機能ブロックがハードウエアで実現されても良く、ソフトウエアで実現されてもよい。その他、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1a,1b,1c 無線基地局装置
2,2a,2b,2c 携帯端末
11 MBMS信号生成部
12 再送パケット保存部
13 空間多重送信部
14 送信ダイバーシチ送信部
15 再送判定部
16 制御信号受信部
17a,17b 送信アンテナ
18 再送決定・タイミング決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチメディア同報サービスに対応する無線基地局装置であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する受信手段と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する再送判定手段と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する空間多重送信手段と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する送信ダイバーシチ送信手段と、を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
特定エリア内においてマルチメディア同報サービスに対応する複数の無線基地局装置のうちの一つの無線基地局装置であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する受信手段と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する再送判定手段と、自装置及び他の無線基地局装置からの再送判定結果を用いて前記特定エリアに対する再送を決定すると共に送信タイミングを決定する再送決定・タイミング決定手段と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する空間多重送信手段と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する送信ダイバーシチ送信手段と、を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項3】
特定エリア内においてマルチメディア同報サービスに対応する複数の無線基地局装置のうちの一つの無線基地局装置であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する受信手段と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する再送判定手段と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する空間多重送信手段と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを、請求項2記載の無線基地局装置からのタイミング情報にしたがって送信ダイバーシチで送信する送信ダイバーシチ送信手段と、を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項4】
前記送信ダイバーシチ送信手段は、再送しないと判定された際に、前記マルチメディア同報サービスデータを送信することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線基地局装置。
【請求項5】
前記送信ダイバーシチがオープンループ型の送信ダイバーシチであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線基地局装置。
【請求項6】
マルチメディア同報サービスに対応する無線通信方法であって、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する工程と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する工程と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する工程と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
特定エリア内においてマルチメディア同報サービスに対応する複数の無線基地局装置において、下り送信データに対するフィードバック情報を受信する工程と、前記フィードバック情報を用いて再送判定する工程と、前記複数の無線基地局装置のうちの一つの無線基地局装置において、自装置及び他の無線基地局装置からの再送判定結果を用いて前記特定エリアに対する再送を決定すると共に送信タイミングを決定する工程と、再送すると判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータと再送データとを空間多重して送信する工程と、再送しないと判定された際に、初めて送信するマルチメディア同報サービスデータを送信ダイバーシチで送信する工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
前記複数の無線基地局装置のうちの前記一つの無線基地局装置以外の無線基地局装置において、再送すると判定された際に、前記空間多重された前記マルチメディア同報サービスデータ及び前記再送データを、前記一つの無線基地局装置からのタイミング情報にしたがって送信することを特徴とする請求項7記載の無線通信方法。
【請求項9】
再送しないと判定された際に、前記マルチメディア同報サービスデータを、送信ダイバーシチを適用して送信することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記送信ダイバーシチがオープンループ型の送信ダイバーシチであることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−206455(P2010−206455A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49040(P2009−49040)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】