説明

無線端末のソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新装置

【課題】 無線端末に大きな変更を強いることなく小さな消費電力でソフトウェアの更新を可能にする。
【解決手段】 アンテナ、RF信号処理部、IF信号処理部、ベースバンド信号処理部、制御部を備えた無線端末に搭載されているソフトウェアを更新する無線端末のソフトウェア更新方法において、保守用端末から更新データで変調したIF信号を送信し、アンテナに受信したIF信号がRF信号処理部を通過してIF信号処理部に入力し、このIF信号をベースバンド信号に変換して更新データを復調し、この更新データを用いてソフトウェアの更新を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中の無線端末の内部ファームウェアなどのソフトウェアの更新に用いられる無線端末のソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の無線端末のソフトウェア更新方法の第1の形態を示す。ここでは、無線端末をサービスショップなどに持ち込み、保守用端末から無線端末のファームウェアを更新する例を示す。
【0003】
図において、無線端末50は、アンテナ51と、無線信号処理部52と、ベースバンド信号処理部53と、更新対象のファームウェア54を含む制御部55から構成される。無線端末50には、インタフェースを介して制御部55に接続される保守用ポート56がある。ファームウェア54の更新が必要になった場合には、無線端末50の提供者がなんらかの方法でユーザに通知し、ユーザが無線端末50をサービスショップなどに持ち込む。サービスショップでは、無線端末50の保守用ポート56に保守用端末60を接続し、所定の操作により保守用端末60からファームウェア54の更新データをダウンロードし、ファームウェア54の書き換えを行う。
【0004】
図6は、従来の無線端末のソフトウェア更新方法の第2の形態を示す。ここでは、ネットワークから無線端末のファームウェアを更新する例を示す(非特許文献1)。
【0005】
図において、無線端末50は、アンテナ51と、無線信号処理部52と、ベースバンド信号処理部53と、更新対象のファームウェア54を含む制御部55から構成される。無線端末50のファームウェア54の更新が必要になった場合には、無線端末50の提供者が更新データを該当する無線端末50宛に送信する。この更新データは、図外のネットワークから無線基地局61に伝送され、無線基地局61から搬送波に乗せてRF(無線周波数)信号として送信される。無線端末50は、通常の受信処理に用いる信号処理回路を介して更新データを受信し、ファームウェア54の書き換えを行う。
【非特許文献1】無線通信を利用したソフトウェア更新システム「エアダウンロード」http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news release/report/050216.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線端末のソフトウェアを更新する従来の第1の形態では、無線端末50に専用の保守用端末60と接続する保守用ポート56を備える必要がある。そのため、無線端末50にその実装スペースを確保する必要があり、小型化の制約になっていた。また、この保守用ポート56を利用してユーザが勝手にソフトウェアの書き換えができないようにする必要があり、そのために余計な仕組みが必要になっていた。
【0007】
無線端末のソフトウェアを更新する従来の第2の形態では、ソフトウェアの更新のために運用中の伝送帯域を占有することになり、更新データが大きくなるほど伝送帯域を圧迫する問題があった。
【0008】
また、従来の第1の形態と第2の形態を合わせたものとして、無線端末の近くで専用の保守用端末から無線信号として更新データを送信し、無線端末の通常の受信系で受信してソフトウェアを更新する形態も考えられるが、サービス中の無線周波数を利用すると近くの他の無線端末に影響を与える可能性がある。また、第1の形態と同様に、公開されている無線周波数を使用すると、ユーザによる勝手な書き換えを阻止するための仕組みが必要になる。また、第2の形態と同様に、高周波RF回路を動作させる必要があり、消費電力が大きくなる問題がある。
【0009】
本発明は、無線端末に大きな変更を強いることなく小さな消費電力でソフトウェアの更新を行うことができる無線端末のソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、アンテナ、RF信号処理部、IF信号処理部、ベースバンド信号処理部、制御部を備えた無線端末に搭載されているソフトウェアを更新する無線端末のソフトウェア更新方法において、保守用端末から更新データで変調したIF信号を送信し、アンテナに受信したIF信号がRF信号処理部を通過してIF信号処理部に入力し、このIF信号をベースバンド信号に変換して更新データを復調し、この更新データを用いてソフトウェアの更新を行う。
【0011】
ここで、IF信号を受信するときに、RF信号処理部の電源をオフに制御するようにしてもよい。
【0012】
第2の発明は、アンテナ、RF信号処理部、IF信号処理部、ベースバンド信号処理部、制御部を備えた無線端末に搭載されているソフトウェアを更新する無線端末のソフトウェア更新装置において、ソフトウェアの更新データで変調したIF信号を送信する保守用端末を備え、無線端末は、アンテナに受信したIF信号がRF信号処理部を通過してIF信号処理部に入力し、このIF信号をベースバンド信号に変換して更新データを復調し、この更新データを用いてソフトウェアの更新を行う構成である。
【0013】
保守用端末は、無線端末のアンテナに受信するRF信号をシールドできる構造のIF信号放射部を備え、更新データで変調したIF信号を送信するときに当該IF信号放射部を無線端末のアンテナの近傍に配置するようにしてもよい。
【0014】
制御部は、更新データで変調したIF信号を受信するときに、RF信号処理部の電源をオフに制御する構成としてもよい。また、無線端末は、RF信号処理部をバイパスしてアンテナとIF信号処理部を接続するバイパス手段およびその接続をオン/オフするスイッチを備え、制御部は、RF信号を受信するときはスイッチをオフに制御し、更新データで変調したIF信号を受信するときにスイッチをオンに制御する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のソフトウェア更新方法および装置を用いた無線端末は、更新データをIF信号により受信するので、更新データをダウンロードするための有線ポートが不要である。
【0016】
また、外部に公開されない中間周波数のIF信号を用いるため、サービスに用いているRF信号を利用する場合に比べてユーザによる勝手な書き換えを阻止することが容易である。また、中間周波数は、サービスに用いられる無線周波数と異なるため、他の無線端末に与える影響は小さい。また、更新データで変調したIF信号を受信する際にRF信号をシールドすることにより、ソフトウエア更新期間中に基地局からの電波を遮断することができ、更新情報を安定に入力することができる。
【0017】
また、通常の運用中に比べて大量の更新データを、比較的消費電力が大きいRF信号処理部を使用せずにダウンロードすることができ、ソフトウェアの更新に伴う消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の無線端末のソフトウェア更新装置の実施形態を示す。
図において、無線端末10は、アンテナ11と、RF信号処理部12と、IF信号処理部13と、ベースバンド信号処理部14と、更新対象のファームウェア15を含む制御部16から構成される。基本的な構成は図6に示す従来構成と同様であるが、図6に示す従来構成では本実施形態のRF信号処理部12とIF信号処理部13を合わせて無線信号処理部52としている。
【0019】
本発明の特徴とするところは、保守用端末20と無線端末10を無線接続し、保守用端末20から無線端末10にソフトウェアの更新データをダウンロードする媒体としてIF(中間周波数)信号を用いるところにある。保守用端末20は、更新データで変調したIF信号を送信する機能を有し、IF信号放射部21は、無線端末10のアンテナ11に受信するRF信号をシールドできる構造とする。図1では、無線端末10のアンテナ11を包み込むような形状のIF信号放射部21を表示しているが、そのような形状に限定されるものではない。IF信号放射部21から放射されたIF信号は、アンテナ11からRF信号処理部12を通過してIF信号処理部13に入力され、IF信号からベースバンド信号に変換されてベースバンド信号処理部14に入力される。ベースバンド信号処理部14では、通常の信号処理によりIF信号を用いて伝送された更新データを復調し、制御部16を介してファームウェア15を更新する。
【0020】
図2は、無線端末の通常運用時の受信回路系を示す。
図において、アンテナ11に受信するRF信号(搬送波周波数fRF)は、増幅器121、ミキサ122、発振器(発振周波数fLO1 )123からなるRF信号処理部12でIF信号(周波数fIF=fRF−fLO1 )に変換され、さらに増幅器131、ミキサ132、発振器(発振周波数fLO2 =fIF)133からなるIF信号処理部13でベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部14に入力される。
【0021】
図3は、本発明の無線端末のソフトウェア更新装置における第1の受信回路系を示す。
図において、アンテナ11に受信する更新データで変調されたIF信号(周波数fIF)は、RF信号処理部12の回路内の寄生容量や基板、電源ラインなどを介し、減衰しつつもIF信号処理部13の増幅器131の入力に達する。このIF信号は、ミキサ132で発振器133の出力信号(周波数fLO2 =fIF)とミキシングしてベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部14に入力される。
【0022】
ここで、無線端末10の制御部16は、ソフトウェアの更新を行うコマンドを認識した場合に、RF信号処理部12の電源をオフ、IF信号処理部13以降の各部の電源をオンにする制御を行うことにより、更新データで変調されたIF信号を受信してソフトウェア更新を行うときの消費電力を低減することができる。
【0023】
図4は、本発明の無線端末のソフトウェア更新装置における第2の受信回路系を示す。
図において、アンテナ11に受信する更新データで変調されたIF信号(周波数fIF)は、増幅器121、ミキサ122、発振器(発振周波数fLO1 )123からなるRF信号処理部12をバイパスするバイパス経路17を介して、IF信号処理部13の増幅器131に入力する。このIF信号は、ミキサ132で発振器133の出力信号(周波数fLO2 =fIF)とミキシングしてベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部14に入力される。
【0024】
ここで、バイパス経路17には、通常のRF信号受信時にはオフとなり、ソフトウェアの更新のために更新データで変調されたIF信号を受信するときにオンとなるスイッチ18を設ける。無線端末10の制御部16は、ソフトウェアの更新を行うコマンドを認識した場合に、RF信号処理部12の電源をオフ、IF信号処理部13以降の各回路の電源をオンにするとともに、スイッチ18をオンにする制御を行うことにより、更新データで変調されたIF信号の伝送を容易にし、かつソフトウェア更新を行うときの消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の無線端末のソフトウェア更新装置の実施形態を示す図。
【図2】無線端末の通常運用時の受信回路系を示す図。
【図3】本発明の無線端末のソフトウェア更新装置における第1の受信回路系を示す図。
【図4】本発明の無線端末のソフトウェア更新装置における第2の受信回路系を示す図。
【図5】従来の無線端末のソフトウェア更新方法の第1の形態を示す図。
【図6】従来の無線端末のソフトウェア更新方法の第2の形態を示す図。
【符号の説明】
【0026】
10 無線端末
11 アンテナ
12 RF信号処理部
13 IF信号処理部
14 ベースバンド信号処理部
15 ファームウェア
16 制御部
20 保守用端末
21 IF信号放射部
50 無線端末
51 アンテナ
52 無線信号処理部
53 ベースバンド信号処理部
54 ファームウェア
55 制御部
56 保守用ポート
60 保守用端末
61 無線基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ、RF(無線周波数)信号処理部、IF(中間周波数)信号処理部、ベースバンド信号処理部、制御部を備えた無線端末に搭載されているソフトウェアを更新する無線端末のソフトウェア更新方法において、
保守用端末から更新データで変調したIF(中間周波数)信号を送信し、
前記アンテナに受信した前記IF信号が前記RF信号処理部を通過して前記IF信号処理部に入力し、このIF信号をベースバンド信号に変換して前記更新データを復調し、この更新データを用いて前記ソフトウェアの更新を行う
ことを特徴とする無線端末のソフトウェア更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線端末のソフトウェア更新方法において、
前記IF信号を受信するときに、前記RF信号処理部の電源をオフに制御する
ことを特徴とする無線端末のソフトウェア更新方法。
【請求項3】
アンテナ、RF(無線周波数)信号処理部、IF(中間周波数)信号処理部、ベースバンド信号処理部、制御部を備えた無線端末に搭載されているソフトウェアを更新する無線端末のソフトウェア更新装置において、
前記ソフトウェアの更新データで変調したIF(中間周波数)信号を送信する保守用端末を備え、
前記無線端末は、前記アンテナに受信した前記IF信号が前記RF信号処理部を通過して前記IF信号処理部に入力し、このIF信号をベースバンド信号に変換して前記更新データを復調し、この更新データを用いて前記ソフトウェアの更新を行う構成である
ことを特徴とする無線端末のソフトウェア更新装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線端末のソフトウェア更新装置において、
前記保守用端末は、前記無線端末のアンテナに受信するRF信号をシールドできる構造のIF信号放射部を備え、前記更新データで変調したIF信号を送信するときに当該IF信号放射部を前記無線端末のアンテナの近傍に配置する
ことを特徴とする無線端末のソフトウェア更新装置。
【請求項5】
請求項3に記載の無線端末のソフトウェア更新装置において、
前記制御部は、前記更新データで変調したIF信号を受信するときに、前記RF信号処理部の電源をオフに制御する構成である
ことを特徴とする無線端末のソフトウェア更新装置。
【請求項6】
請求項3に記載の無線端末のソフトウェア更新装置において、
前記無線端末は、前記RF信号処理部をバイパスして前記アンテナと前記IF信号処理部を接続するバイパス手段およびその接続をオン/オフするスイッチを備え、
前記制御部は、前記RF信号を受信するときは前記スイッチをオフに制御し、前記更新データで変調したIF信号を受信するときに前記スイッチをオンに制御する構成である
ことを特徴とする無線端末のソフトウェア更新装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−244600(P2008−244600A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79344(P2007−79344)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】