説明

無線装置

【課題】回路規模の増加と干渉量の増加とを抑制しながら、ブロードキャスト通信とユニキャスト通信とを実行する技術を提供する。
【解決手段】処理部46は、フレーム中の一部期間においてキャリアセンスを実行することによってパケット信号を第1電力で報知する第1モードと、フレームとは無関係にキャリアセンスを実行することによって他の無線装置にパケット信号を第2電力で送信する第2モードとのいずれかを実行する。ここで、第2電力は第1電力よりも小さい。切替制御部70は、動作モードとして、第1モードと第2モードとの間の切替を指示する。切替制御部70は、第2モードに対応したパケット信号を非受信の状態から受信の状態に遷移した場合に、第1モードを第2モードに切りかえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に所定の情報が含まれた信号を送信する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号が送信される。ITS(Intelligent Transport Systems)のような車車間通信に無線LANを適用する場合、不特定多数の車両のそれぞれに搭載された端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。
【0005】
その結果、端末装置は、ブロードキャストされた信号を受信することによって、他の車両の接近を検出し、それを運転者に通知することによって、車両間の衝突事故を防止するための注意を運転者に喚起させる。このようなITSにおけるブロードキャスト通信とは別に、1対1のユニキャスト通信が必要とされることもある。しかしながら、ITS用の通信機能とは別に、ユニキャスト通信用の通信機能を端末装置に実装した場合、端末装置の回路規模が増大する。一方、ITS用の通信機能とユニキャスト通信の通信機能とを共通化させた場合、両者の間の干渉が生じる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路規模の増加と干渉量の増加とを抑制しながら、ブロードキャスト通信とユニキャスト通信とを実行する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、フレーム中の一部期間においてキャリアセンスを実行することによってパケット信号を第1電力で報知する第1モードと、フレームとは無関係にキャリアセンスを実行することによって他の無線装置にパケット信号を第2電力で送信する第2モードとのいずれかを実行する通信部と、通信部の動作モードとして、第1モードと第2モードとの間の切替を指示する制御部とを備える。通信部における第2電力は第1電力よりも小さく、制御部は、通信部が第2モードに対応したパケット信号を非受信の状態から受信の状態に遷移した場合に、第1モードを第2モードに切りかえる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路規模の増加と干渉量の増加とを抑制しながら、ブロードキャスト通信とユニキャスト通信とを実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1のITS用基地局装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)−(d)は、図1の通信システムにおいて規定されるフレームのフォーマットを示す図である。
【図4】図4(a)−(b)は、図3(a)−(d)のサブフレームの構成を示す図である。
【図5】図5(a)−(b)は、図1の通信システムにおいて規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す図である。
【図6】図1の通信システムの別の構成を示す図である。
【図7】図1の車両に搭載された端末装置の構成を示す図である。
【図8】図7の端末装置における通信モードの選択手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。車両の接近を運転者に通知することによって、運転者に注意を促す。車車間通信と路車間通信との干渉を低減するために、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。
【0012】
基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間においてパケット信号をブロードキャスト送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。なお、車車間通信は、路車送信期間以外の車車間通信を実行するための期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてなされる。
【0013】
以上の通信は、ブロードキャスト通信にもとづくITSに相当する。ブロードキャスト通信では、多くの端末装置に送信機会を与えるため、各端末装置から送信されるデータ量は規制される。一方、このようなブロードキャスト通信に加えて、ユニキャスト通信の実行が望まれる。例えば、ユニキャスト通信では、特定の宛先の装置との間において、大容量のデータが送信される。端末装置の回路規模を小型化するために、ブロードキャスト通信とユニキャスト通信との規格には、共通する部分が多い方がよい。しかしながら、共通する部分が多くなると、ブロードキャスト通信とユニキャスト通信とが干渉してしまうおそれが高くなる。これに対応するために、本実施例に係る通信システムは、次の処理を実行する。
【0014】
端末装置は、通信モードとして、ブロードキャスト通信を実行するための第1モードと、ユニキャスト通信を実行するための第2モードとを実行可能である。ブロードキャスト通信については、前述のとおりであり、ユニキャスト通信は、周波数帯、変調方式、CSMA方式という点でブロードキャスト通信と共通する。一方、ユニキャスト通信には、通信可能なデータ量を増加させるために、ブロードキャスト通信のようなフレーム構成が規定されない。さらに、ユニキャスト通信からブロードキャスト通信への干渉を低減させるために、ユニキャスト通信での送信電力は、ブロードキャスト通信での送信電力よりも小さくなるように規定される。そのため、ひとつのユニキャスト通信用の基地局装置(以下、「ユニキャスト用基地局装置」という)がカバー可能なエリアは、ITS用基地局装置がカバー可能なエリアよりも小さい。端末装置は、通常、第1モードを選択することによってブロードキャスト通信を実行しており、ユニキャスト用基地局装置からのパケット信号を受信すると、第2モードを選択することによってユニキャスト通信を実行する。
【0015】
ここでは、ブロードキャスト通信によるITSをまず説明する。図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、ITS用基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、歩行者16と総称される第1歩行者16a、第2歩行者16bを含む。なお、各車両12には、図示しない端末装置が設置される。また、エリア212は、ITS用基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214は、エリア212の外側に形成されている。
【0016】
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
【0017】
ITS用基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。ITS用基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他のITS用基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。ITS用基地局装置10は、複数のサブフレームのうち、他のITS用基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。ITS用基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。ITS用基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。
【0018】
車両12は、エンジンにて駆動され、端末装置を搭載する。端末装置は、第1モードを選択している場合、受信したパケット信号に含まれた制御情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、ITS用基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、端末装置は、車車送信期間において、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。端末装置は、例えば、存在位置に関する情報をパケット信号に格納する。また、端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、ITS用基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置によって転送される。
【0019】
一方、ITS用基地局装置10からのパケット信号を受信できない端末装置、つまりエリア外214に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。さらに、端末装置は、他の端末装置からのパケット信号を受信することによって、他の端末装置が搭載された車両の接近を運転者へ通知する。
【0020】
図2は、ITS用基地局装置10の構成を示す。ITS用基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、ネットワーク通信部28、制御部30を含む。処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
【0021】
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置や他のITS用基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
【0022】
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0023】
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0024】
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。
【0025】
なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他のITS用基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
【0026】
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。選択部34は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他のITS用基地局装置10あるいは端末装置からの復調結果を入力する。選択部34は、入力した復調結果のうち、他のITS用基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他のITS用基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
【0027】
図3(b)は、第1ITS用基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1ITS用基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1ITS用基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間において第1ITS用基地局装置10aはパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1ITS用基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
【0028】
図3(c)は、第2ITS用基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2ITS用基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2ITS用基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3ITS用基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3ITS用基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3ITS用基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数のITS用基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
【0029】
生成部36は、選択部34から受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきRSUパケット信号を生成する。なお、以下の説明において、RSUパケット信号とパケット信号とは区別せずに使用される。図4(a)−(b)は、サブフレームの構成を示す。図4(a)は、路車送信期間が設定されたサブフレームを示す。図示のごとく、ひとつのサブフレームは、路車送信期間、車車送信期間の順に構成される。図4(b)は、路車送信期間におけるパケット信号の配置を示す。図示のごとく、路車送信期間において、複数のRSUパケット信号が並べられている。ここで、前後のパケット信号は、SIFS(Short Interframe Space)だけ離れている。
【0030】
ここでは、RSUパケット信号の構成を説明する。図5(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。図5(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「LLCヘッダ」、「メッセージヘッダ」、「データペイロード」、「FCS」を配置する。データペイロードに含まれる情報については、後述する。図5(b)は、生成部36によって生成されるメッセージヘッダの構成を示す図である。メッセージヘッダには、基本部分が含まれている。
【0031】
基本部分は、「プロトコルバージョン」、「送信ノード種別」、「再利用回数」、「TSFタイマ」、「RSU送信期間長」を含む。プロトコルバージョンは、対応しているプロトコルのバージョンを示す。送信ノード種別は、MACフレームが含まれたパケット信号の送信元を示す。例えば、「0」は端末装置を示し、「1」はITS用基地局装置10を示す。選択部34が、入力した復調結果のうち、他のITS用基地局装置10からの復調結果を抽出する場合に、選択部34は、送信ノード種別の値を利用する。再利用回数は、メッセージヘッダが端末装置によって転送される場合の有効性の指標を示し、TSFタイマは、送信時刻を示す。RSU送信期間長は、路車送信期間の長さを示しており、路車送信期間に関する情報といえる。図2に戻る。
【0032】
ネットワーク通信部28は、図示しないネットワーク202に接続される。ネットワーク通信部28は、ネットワーク202から、渋滞情報を受けつける。生成部36は、ネットワーク通信部28から、渋滞情報を取得し、データペイロードに格納することによって、前述のRSUパケット信号を生成する。制御部30は、ITS用基地局装置10全体の処理を制御する。
【0033】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
図6は、通信システム100の別の構成を示す。通信システム100は、ITS用基地局装置10、端末装置14、ユニキャスト用基地局装置18を含む。通信システム100におけるITS用基地局装置10と端末装置14との組合せは、図1と同様であり、ブロードキャスト通信によるITSに相当する。ユニキャスト用基地局装置18は、端末装置14とユニキャスト通信を実行するための基地局装置であり、図示しないネットワークに接続されている。ユニキャスト用基地局装置18は、ITS用基地局装置10と比較して、フレーム構成を規定しない点で異なる。また、ユニキャスト用基地局装置18の送信電力は、ITS用基地局装置10の送信電力よりも低くなるように規定される。例えば、前者は後者の半分以下に規定されたり、前者の送信電力が10mW以下で後者の送信電力が100mW以下であるように規定されたりする。
【0035】
一方、その他の点、例えば、周波数帯、変調方式、CSMA方式等ににおいて、ユニキャスト用基地局装置18は、ITS用基地局装置10と同一である。例えば、ユニキャスト用基地局装置18は、IEEE802.11a、g規格やIEEE802.11p規格と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、ユニキャスト用基地局装置18の構成について説明を省略するが、ユニキャスト用基地局装置18は、自らの存在を周囲に知らしめるために、ビーコン信号を周期的に報知する。
【0036】
ユニキャスト用基地局装置18は、ドライブスルーや駐車場等の限定された場所に配置される。また、ユニキャスト用基地局装置18によって形成されるエリアは、ITS用基地局装置10によって形成されるエリア212よりも狭くなる。そのため、端末装置14は、通常、第1モードを選択し、ITS用基地局装置10によって規定されたフレームにしたがって、ブロードキャスト通信を実行する。一方、端末装置14は、ユニキャスト用基地局装置18によって形成されたエリアに進入すると、第1モードを第2モードに切りかえる。端末装置14は、ユニキャスト用基地局装置18との間でユニキャスト通信を実行する。さらに、端末装置14は、ユニキャスト用基地局装置18によって形成されたエリアから退出すると、第2モードを第1モードに戻す。
【0037】
図7は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ40、RF部42、変復調部44、処理部46、制御部48を含む。処理部46は、切替制御部70、第1通信部72、第2通信部74を含む。第1通信部72は、タイミング特定部50、転送決定部56、取得部58、通知部60、生成部62を含み、タイミング特定部50は、抽出部52、キャリアセンス部54を含む。第2通信部74は、キャリアセンス部64、生成部66、受信処理部68を含む。アンテナ40、RF部42、変復調部44は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
【0038】
一方、変復調部44、処理部46は、第1モードの際、図示しない他の端末装置14やITS用基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部44、処理部46は、路車送信期間において、ITS用基地局装置10からのパケット信号を受信する。前述のごとく、変復調部44、処理部46は、車車送信期間において、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。また、変復調部44、処理部46は、第1モードの際であっても、図示しないユニキャスト用基地局装置18からのパケット信号を受信することもある。変復調部44、処理部46は、第2モードの際、図示しないユニキャスト用基地局装置18からのパケット信号を受信する。
【0039】
切替制御部70は、端末装置14の動作モードとして、第1モードと第2モードとの間の切替を指示する。ここでは、第1モードの動作が第1通信部72の動作に相当し、第2モードの動作が第2通信部74の動作に相当する。具体的に説明すると、切替制御部70は、変復調部44、RF部42が、ユニキャスト用基地局装置18からのビーコン信号を所定の期間にわたって受信していなければ、第1通信部72の動作を選択する。また、切替制御部70は、変復調部44、RF部42が、ユニキャスト用基地局装置18からのビーコン信号を非受信の状態から受信の状態に遷移した場合に、第1通信部72の選択を第2通信部74の選択に切りかえる。さらに、切替制御部70は、変復調部44、RF部42が、ユニキャスト用基地局装置18からのビーコン信号を受信の状態から非受信の状態に遷移した場合に、第2通信部74の選択を第1通信部72の選択に切りかえる。なお、非受信の状態は、所定期間にわたって受信していないことを示す。第1通信部72および第2通信部74のうち、切替制御部70によって選択された方のみが動作する。
【0040】
第1通信部72は、切替制御部70によって選択されたときに、フレーム中の車車送信期間においてキャリアセンスを実行することによってパケット信号を報知する。抽出部52は、変復調部44からの復調結果が、図示しないITS用基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。その際、抽出部52は、図1のエリア212内に存在すると推定する。抽出部52は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容、具体的には、RSU送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述のフレーム規定部32と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部52は、ITS用基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。
【0041】
一方、抽出部52は、RSUパケット信号を受信していない場合、図1のエリア外214に存在すると推定する。抽出部52は、エリア212に存在していることを推定した場合、車車送信期間を選択する。抽出部52は、エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部52は、車車送信期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部54へ出力する。抽出部52は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部54に指示する。
【0042】
キャリアセンス部54は、抽出部52から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部54は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部54は、干渉電力をもとに、車車送信期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部54は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部54は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、抽出部52から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、決定した送信タイミングを生成部62へ通知する。
【0043】
取得部58は、図示しないGPS受信機、ジャイロセンサ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、端末装置14の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部58は、位置情報を生成部62へ出力する。
【0044】
転送決定部56は、メッセージヘッダの転送を制御する。転送決定部56は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号がITS用基地局装置10から直接送信されている場合には、再利用回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の端末装置14から送信されている場合には、再利用回数が「1以上」の値に設定されている。転送決定部56は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、再利用回数が最も小さいメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部56は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部56は、選択対象のメッセージヘッダを生成部62へ出力する。その際、転送決定部56は、再利用回数を「1」増加させる。
【0045】
生成部62は、取得部58から位置情報を受けつけ、転送決定部56からメッセージヘッダを受けつける。生成部62は、図5(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、位置情報をデータペイロードに格納する。生成部62は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成するとともに、キャリアセンス部54において決定した送信タイミングにて、変復調部44、RF部42、アンテナ40を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。これは、車車間通信に相当する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
【0046】
通知部60は、抽出部52を介して、図示しないITS用基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部60は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。さらに、通知部60は、渋滞情報等も運転者へモニタやスピーカを介して通知する。
【0047】
第2通信部74は、切替制御部70によって選択されたときに、フレームとは無関係にキャリアセンスを実行することによってユニキャスト用基地局装置18にパケット信号を送信する。その際、RF部42に設定される送信電力は、第1通信部72が動作している場合にRF部42に設定される送信電力よりも小さい。キャリアセンス部64は、キャリアセンス部54において抽出部52からキャリアセンスの実行を指示された場合と同様に、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。生成部66は、キャリアセンス部64が決定した送信タイミングにおいて送信すべきパケット信号を生成する。パケット信号には、ユニキャスト用基地局装置18を介して通信すべき所定の通信装置を宛先としたデータが含まれる。受信処理部68は、ユニキャスト用基地局装置18を介して、所定の通信装置から受信したパケット信号を受けつける。当該パケット信号の宛先は、本端末装置14である。また、受信処理部68は、パケット信号からデータを抽出し、データに応じた処理を実行する。
【0048】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図8は、端末装置14における通信モードの選択手順を示すフローチャートである。ユニキャスト用基地局装置18からのビーコン信号を受信していれば(S10のY)、切替制御部70は、第2モードの実行を選択する(S12)。一方、ユニキャスト用基地局装置18からのビーコン信号を受信していなければ(S10のN)、切替制御部70は、第1モードの実行を選択する(S14)。
【0049】
本発明の実施例によれば、ユニキャスト用基地局装置からのビーコン信号を受信している場合に第2モードを選択し、他の場合に第1モードを選択するので、ユニキャスト通信を優先的に選択できる。また、ユニキャスト通信を優先的に選択しながらも、かつ第2モードでの送信電力を第1モードでの送信電力よりも小さくするので、ブロードキャスト通信への干渉量を低減できる。また、ユニキャスト通信においてフレームの規定がないので、送信可能なデータ量を増加できる。また、ユニキャスト通信とブロードキャスト通信とにおいて共通部分が多いので、回路規模を低減できる。また、ユニキャスト用基地局装置からのビーコン信号を受信しているか否かに応じて、第1モードと第2モードとを自動的に切りかえるので、運転者の操作性を向上できる。
【0050】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0051】
本発明の実施例において、切替制御部70は、変復調部44、RF部42が、ユニキャスト用基地局装置18からのビーコン信号を受信の状態から非受信の状態に遷移した場合に、第2通信部74の選択を第1通信部72の選択に切りかえている。しかしながらこれに限らず例えば、切替制御部70は、別の基準をもとに、第2通信部74の選択を第1通信部72の選択に切りかえてもよい。具体的には、切替制御部70は、車両12の速度センサに接続されており、速度センサからのデータが車両12の停止から動作に遷移した場合に、第2通信部74の選択を第1通信部72の選択に切りかえる。本変形例によれば、ユニキャスト通信を車両12の停止中に制限できる。また、運転者の操作をもとに、切替制御部70は、第2通信部74の選択を第1通信部72の選択に切りかえてもよい。本変形例によれば、運転者の意図に応じた切替を実現できる。
【符号の説明】
【0052】
10 ITS用基地局装置、 12 車両、 14 端末装置、 16 歩行者、 18 ユニキャスト用基地局装置、 20 アンテナ、 22 RF部、 24 変復調部、 26 処理部、 28 ネットワーク通信部、 30 制御部、 32 フレーム規定部、 34 選択部、 36 生成部、 40 アンテナ、 42 RF部、 44 変復調部、 46 処理部、 48 制御部、 50 タイミング特定部、 52 抽出部、 54 キャリアセンス部、 56 転送決定部、 58 取得部、 60 通知部、 62 生成部、 64 キャリアセンス部、 66 生成部、 68 受信処理部、 70 切替制御部、 72 第1通信部、 74 第2通信部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム中の一部期間においてキャリアセンスを実行することによってパケット信号を第1電力で報知する第1モードと、フレームとは無関係にキャリアセンスを実行することによって他の無線装置にパケット信号を第2電力で送信する第2モードとのいずれかを実行する通信部と、
前記通信部の動作モードとして、第1モードと第2モードとの間の切替を指示する制御部とを備え、
前記通信部における第2電力は第1電力よりも小さく、
前記制御部は、前記通信部が第2モードに対応したパケット信号を非受信の状態から受信の状態に遷移した場合に、第1モードを第2モードに切りかえることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通信部が第2モードに対応したパケット信号を受信の状態から非受信の状態に遷移した場合に、第2モードを第1モードに切りかえることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−199863(P2012−199863A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63866(P2011−63866)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】