説明

無線装置

【課題】充電式の電池パックを有する無線装置において、近距離通信などの通信機能と非接触充電機能を、省スペースかつ高性能に実現する。
【解決手段】筐体2に対して表裏を反転させて着脱可能な電池パック20と、この電池パックの表面と裏面のうちの一方に設けられた通信用のアンテナ23と、電池パックの表面と裏面のうちの他方に設けられた非接触充電用のコイル22と、筐体2に設けられて電池パック内の電池セル21から電力供給を受けて作動し、コイル22を介して外部から非接触で供給される電力によって電池セルの充電を行う非接触充電機能、及び、アンテナ23を介して通信を行う通信機能を有する無線装置本体1aと、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触充電機能を備えた無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触充電機能を備えた無線装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。これは、通信用のアンテナと非接触充電用のコイル(電磁誘導のためのコイル)とを共用化したものである。なお、携帯電話機などの無線装置の通信用アンテナとしては、通常の音声通話やデータ通信のためのアンテナの他に、RFID(Radio Frequency Identification)機能のための近距離通信用のアンテナ(例えば、ループ状のアンテナ)や、ローカルエリアネットワーク(LAN)に接続するためのアンテナ、テレビ放送受信用のアンテナなど、各種のアンテナが多数設けられるのが一般的となっている。例えば、特許文献3には、RFID機能のためのアンテナを携帯電話機の電池パックに実装したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−307032号公報
【特許文献2】特開2011−030404号公報
【特許文献3】特開2005−117354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非接触充電用のコイルや通信用アンテナは他のアンテナや金属部品が近くにある場合、必要な性能が確保し難く、特に前述したように多種のアンテナやコイルが搭載される携帯電話機などの無線装置では、アンテナやコイルの各性能を確保しつつ、いかにコンパクトにこれらを配置するかが設計上の課題となっている。特に、RFIDのアンテナと非接触充電のためのコイルは、ある程度の面積が必要であり、通信距離も短い。そのため、搭載位置が限られ、2つのアンテナを干渉がないように十分に離して搭載することが困難となっていた。
【0005】
そこで、前述した特許文献1や特許文献2のように通信用アンテナと非接触充電用コイルを共用化することが考えられるが、これには次のような問題がある。すなわち、通信と非接触充電の電磁誘導で異なる周波数を使う場合、十分な特性が出せない問題がある。例えば、RFIDのアンテナと電磁誘導のコイルを共用する技術はあるが、RFIDと非接触充電の電磁誘導で異なる周波数を使う場合、十分な特性が出せない場合がある。周波数の切替え回路などで対応したとしても、単独のアンテナに対しては性能が劣ってしまう。
【0006】
なお、RFIDも非接触充電もそれぞれ規格があり、標準化のためにも各規格に準じた設計が必要となっている。例えば、RFIDの規格であるFeliCa(登録商標)は周波数が13.5MHzであり、非接触充電の規格であるQi(登録商標)は周波数が100KHz程度で、かつ、コイルのサイズも規定されていている。そのような規格による制約から、RFIDのアンテナと非接触充電のコイルの共用した場合、それぞれの規格を満足し、さらに各機能の十分な無線性能を確保することが困難であった。
そこで本発明は、非接触充電機能を備えた無線装置において、近距離通信などの通信機能と非接触充電機能を、省スペースかつ高性能に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線装置は、筐体と、
この筐体に装着される電池パックと、
この電池パックの表面と裏面のうちの一方に設けられた通信用のアンテナと、
前記電池パックの表面と裏面のうちの他方に設けられた非接触充電用のコイルと、
前記筐体に設けられて前記電池パック内の電池セルから電力供給を受けて作動し、少なくとも、前記コイルを介して外部から非接触で供給される電力によって前記電池セルの充電を行う非接触充電機能、及び、前記アンテナを介して外部との通信を行う通信機能を有する無線装置本体と、
を備えることを特徴とする無線装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、近距離通信などの通信機能と非接触充電機能を、省スペースかつ高性能に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態である携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】前記携帯電話機の概念的な内部ブロック図である。
【図3】(a)は前記携帯電話機の裏面図、(b)は電池パックの上面図である。
【図4】(a)は電池パックの正面図、(b)は電池パックの裏面図である。
【図5】前記携帯電話機の裏面図であり、(a)は電池パックの正面を手前側にして装着した状態、(b)は電池パックの裏面を手前側にして装着した状態を示す図である。
【図6】前記携帯電話機の要部の概念的なブロック図であり、(a)は電池パックの正面(アンテナ側)を手前側(電話機裏面の表面側)にして装着した状態、(b)は電池パックの裏面(コイル側)を手前側にして装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態(本発明を携帯電話機に適用した例)を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1(RFID機能及び非接触充電機能付き携帯電話機)の外観図である。この図において、携帯電話機1は、筐体2の主面(表面であって主たる操作対象となる面のこと)にタッチパネル3を設けるとともに、そのタッチパネル3の背面に液晶ディスプレイやELパネルなどの表示デバイスからなる表示部4を設けている。また、そのタッチパネル3の上辺近くに受話器としてのスピーカ5aやインカメラ7を設け、さらに、そのタッチパネル3の下辺近くにキー12a,12b,12cを設けている。
【0011】
ここで、「近く」とは、少なくとも筐体2の主面の端からタッチパネル3の端までの間のいわゆる額縁内の任意の位置のことをいう。筐体2は、回路基板等の内蔵部品を収納して携帯電話機1の表面を構成するフレームであり、手持ちに適した形状、この場合、薄い直方体状の箱形となっている。キー12a,12b,12cは、利用者が押下する操作ボタンであり、それぞれ、例えばメニューを表示させるためのメニューキー、デスクトップ(初期画面)を表示させるホームキー、一つ前の画面に戻すための戻るキーである。また、図1における符号6は、筐体2の下端面に設けられた送話器としてのマイクを示す。
【0012】
なお、筐体2の任意部分に、電源ボタンやバッテリ充電用端子などが設けられているが、図では省略している。また図示省略しているが、筐体2の任意部分に、着脱可能なカード型メモリを装着する装着部(スロット)が設けられていてもよい。また図3(a)に示しているが、筐体2の裏面(主面と反対側の面)に、着信音やアラーム或いは楽音などを出力するためのスピーカ5bが設けられている。
【0013】
図2は、携帯電話機1の概念的な内部ブロック図である。この図において、携帯電話機1は、タッチパネル3、表示部4、インカメラ7、無線通信部8、音声入出力部9、中央制御部10、電源・充電回路11、操作部12、アウトカメラ13、RFID回路14、電池パック20を備える。なお、携帯電話機1を構成する実際の回路や機器は、通常、主にベースバンドブロックと無線ブロックとに分けられる。このようにブロック分けされた場合、図2における無線通信部8が無線ブロックに属し、タッチパネル3、表示部4、インカメラ7、中央制御部10、操作部12、及びアウトカメラ13等がベースバンドブロックに属する。
【0014】
無線通信部8は、アンテナ8aを介して最寄りの基地局(図示略)等との間で無線によるデジタルデータの送受信を行う。デジタルデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれる。この無線通信部8は、中央制御部10からの制御に従って、上記のデジタルデータの送信や受信を行う。例えば、衆網基地局や家庭用親機からの無線信号は、無線通信部8によって復調され出力される。この無線通信部8からの出力信号は、音声信号又は制御信号としてベースバンドブロックの中央制御部10に入力される。このうち、音声信号は、音声処理されてスピーカ5a等から音声として出力される。制御信号は、ベースバンドブロック内の処理に用いられる。なお、アンテナ8aは、公知のダイバーシティ(Diversity)やMIMO(Multiple input output)などのマルチアンテナ技術に対応する場合には、複数設けられる。
【0015】
音声入出力部9は、中央制御部10からの制御により、マイク6で拾った音声信号をデジタルデータに変換して中央制御部10に出力したり、中央制御部10から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ5aから拡声したりする。マイク6やスピーカ5aは電話の送受話用であるが、スピーカ5aは、さらに電話の着信音等(或いはムービー再生等に伴う音声)の出力に用いられてもよい。なお、前述したように受話用のスピーカ5aとは別に、筐体2の裏面にはスピーカ5bが設けられており、音声入出力部9を介してこのスピーカ5bから着信音等の出力を行ってもよい。
【0016】
表示部4は、先にも説明したとおり、その前面に、人体の一部(例えば、手の指)の接触又は接近を検知できるタッチパネル3を併設している。タッチパネル3は、例えば、圧電方式のものであってもよいし、静電容量方式のものであってもよい。
【0017】
電池パック20は、充電可能な二次電池である電池セル21と、非接触充電用のコイル22と、RFIDアンテナ23とを備える。この電池パック20の詳細については、後述する。なお、携帯電話機1(無線装置)の電池パック20を除いた部分を、図6に示すように携帯電話本体1a(無線装置本体)と定義する。
【0018】
電源・充電回路11は、電池パック20の電池セル21の電力から携帯電話機1の動作に必要な各種電源電圧を発生して各部に供給する電源回路としての機能と、コイル22を介して外部から非接触で供給される電力によって電池セル21の充電を行う充電回路としての機能と、を有する。なお後述するように、本実施形態で非接触充電機能を有効にするためには、図6(b)に示す状態(後述する裏面外側状態)で電池パック20を装着する必要がある。図2では、図6(a)に示す状態(後述する正面外側状態)で電池パック20が装着されている状態を図示している。
【0019】
操作部12は、前述した電源ボタンやキー12a,12b,12cなどの操作の入力処理を行う。なお、タッチパネル3は、ダイヤル入力、文字入力、コマンド入力などを入力するもので、中央制御部10は、操作部12とこのタッチパネル3からの入力操作信号に応じた処理を実行する。
【0020】
中央制御部10は、マイクロコンピュータ(以下、CPUと表記する。)10a、読み出し専用半導体メモリ(以下、ROMと表記する。)10b、高速半導体メモリ(以下、RAMと表記する。)10c、書き換え可能な不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリやEEPROMなど。以下、EPROMと表記する。)10d、ならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素である。この中央制御部10は、あらかじめROM10bやEPROM10dに格納されている制御プログラムをRAM10cにロードしてCPU10aで実行することにより、各種の処理を逐次に実行して、この携帯電話機1の全体動作を統括制御する。
【0021】
次に、インカメラ7は、筐体2における表示部4と同じ面(すなわち主面)に設けられ、例えば携帯電話機1を持っている利用者自身の顔を含む静止画又は動画を撮像可能である。またアウトカメラ13は、筐体2の裏面(主面と反対側の面)に設けられ、他者や風景などの静止画又は動画を撮像するためのカメラである。利用者は、キー12a,12b,12cやタッチパネル3を操作することによって、インカメラ7やこのアウトカメラ13による静止画や動画の撮影等のアプリケーションを作動させることが可能となっている。また図示省略しているが、筐体2における例えば右側の側面には、利用者が操作してこれらカメラによる撮影のシャッター操作等を容易に実行するためのシャッターボタンが設けられていてもよい。
【0022】
そして、撮影された静止画や動画のデータ、及び動画等と同期して記録された音声データは、例えばEPROM10d、或いは前述した装着部に装着されたカード型メモリに記録され、表示部4やスピーカ5a等によって再生可能である。また、表示部4には、この携帯電話機1とは異なる他の機器で撮影された静止画や動画(例えば、EPROM10dや前記カード型メモリに記録されたもの)も再生可能である。
【0023】
また、携帯電話機1には、音声データを送受信して通話する音声通話機能のほか、TV(テレビ)電話機能が備えられていてもよい。更に、携帯電話機1には、電子メール機能、インターネット接続機能、TV放送表示機能、スケジュール管理機能、電卓機能、アラーム(目覚まし)機能、音楽データ再生機能、などが備えられていてもよいことは、いうまでもない。
【0024】
次に、電池パック20及びその関連構成について説明する。
電池パック20は、筐体2よりも小さく、薄い直方体状の箱形の電池ケース20aを備える。電池ケース20a内には、二次電池である電池セル21の他に、例えば、過充電や過放電を防止するためのスイッチング素子及びコントロールIC(図示省略)や、外部の回路で電池パック20の温度を検知するための抵抗であるサーミスタ(図示省略)などが内蔵されている。
【0025】
図4(a)に示すように、電池ケース20aの正面には、RFIDアンテナ23が形成されている。RFIDアンテナ23は、この場合、電池ケース20aの正面の外周部を略3周分だけ周回するように形成された線状(幅の狭い帯状)の導体よりなる。このRFIDアンテナ23の両端は、電池ケース20aの下面を経て裏面側に形成された電池側RFID端子TM11,12(図4(b)に示す)にそれぞれ接続されている。
【0026】
また図4(b)に示すように、電池ケース20aの裏面には、非接触充電用のコイル22が、正面側のRFIDアンテナ23とは別個に形成されている。コイル22は、この場合、電池ケース20aの裏面の外周部を略1周分だけ周回するように形成された線状の導体よりなる。このコイル22の両端は、電池ケース20aの上面に形成された後述の電池側充電端子TM9,10(図3(b)に示す)にそれぞれ接続されている。また電池ケース20aの裏面の下部には、図4(b)に示すように、電池側RFID端子TM11,12が形成されている。
【0027】
次に図3(a)に示すように、筐体2の裏面には、電池パック20を装着できる収納凹部2a(電池装着部)が形成されている。この収納凹部2a及び電池パック20は、電池パック20の表裏を反転させて収納凹部2a内に対して電池パック20を着脱できる構造となっている。すなわち、図5(a)に示すように、電池パック20の正面を筐体2の裏面の表面側に位置させて電池パック20を収納凹部2a内に装着することもできるし、また図5(b)に示すように、電池パック20の裏面を筐体2の裏面の表面側に位置させて電池パック20を収納凹部2a内に装着することもできる構成となっている。以下では、図5(a)に示す向きに電池パック20を装着した状態を正面外側状態といい、図5(b)に示す向きに電池パック20を装着した状態を裏面外側状態という。
【0028】
ここで、収納凹部2aの表面(開口)は、電池パック20を装着した状態で、図示省略したカバー(蓋部材)を取り付けることによって閉じられる。また、このように取り付けられたカバーによって装着された電池パック20が覆われ保護される。図3(a)や図5は、このカバーを取り外した状態を図示している。また図3(a)は、さらに電池パック20を取り外した状態を図示している。なお、図3(a)と図4において一点鎖線で示すのは、電池パック20の反転の中心となる軸線A1と軸線A2である。軸線A1は電池パック20に対して固定された線であり、軸線A2は筐体2に対して固定された線である。電池パック20を反転させて装着の向きを変更しても、これら軸線A1と軸線A2が常に一致する構成となっている。逆にいうと、電池パック20を反転させて装着の向きを変更しても、筐体2と電池パック20の間で相対的に変わらない位置が、軸線A1と軸線A2の位置である。
【0029】
図3(b)に示すように、電池ケース20aの上端面には、端子TM4〜10が設けられている。端子TM4〜10のうち、端子TM4〜8は、電池側電池端子である。これら端子TM4〜8のうち、端子TM4と端子TM8は電池セル21の負極側に接続されたマイナス端子(−)であり、端子TM5と端子TM7は前述したサーミスタ(温度測定用の抵抗)の一方の端子に接続されたサーミスタ端子(T)であり、端子TM6は電池セル21の正極側に接続されたプラス端子(+)である。
【0030】
ここで、これら電池側電池端子TM4〜8は、電池パック20の反転の中心となる軸線A1に対して対称に設けられている。本実施形態の場合、プラス端子TM6が軸線A1上に配置され、その両側同距離の位置にサーミスタ端子TM5,7が配置され、さらにその両側同距離の位置にマイナス端子TM4,8が配置されている。
【0031】
なお、電池パック20に内蔵された前述のサーミスタの一方の端子はサーミスタ端子TM5,7に接続されているが、このサーミスタの他方の端子は、電池パック20内において電池セル21の負極側に接続されている。携帯電話本体1aの例えば電源・充電回路11では、マイナス端子TM4,8とサーミスタ端子TM5,7との間の抵抗値(すなわち、前記サーミスタの抵抗値)に基づいて電池パック20内の温度に相当する信号を生成する。この信号(温度データ)は、携帯電話本体1aにおいて例えば充電制御機能(電池パック20の温度が規定値を超えていると充電を停止するといった機能)に利用される。
【0032】
また、端子TM4〜10のうち、端子TM9,10は、電池側充電端子である。この電池側充電端子TM9,10は、既述したように、電池ケース20aの裏面に形成された非接触充電用のコイル22の両端に接続された端子である。
【0033】
一方、図3(a)に示すように、筐体2の収納凹部2aにおける上部には、本体側電池端子TM1〜3と本体側充電端子TM15,16が設けられている。本体側電池端子TM1〜3のうち、端子TM1はプラス端子、端子TM2はサーミスタ端子、端子TM3はグランド端子(マイナス端子)である。またプラス端子TM1は、前述した軸線A2上に配置されている。また、筐体2の収納凹部2aにおける下部には、本体側RFID端子TM13,14が設けられている。
【0034】
以上の筐体2に設けられた本体側の端子のうち、まず、本体側電池端子TM1〜3は、前述した電池側電池端子TM4〜8と対をなす端子であり、これら本体側電池端子TM1〜3と電池側電池端子TM4〜8は、電池用コネクタ31(図6に示す)を構成している。すなわち、これら本体側電池端子TM1〜3と電池側電池端子TM4〜8は、電池パック20の着脱にともなって接離(接触したり離れたりすること)して、電池セル21と携帯電話本体1a(電源・充電回路11)との間の電気的接続及び離脱を行う電池用コネクタ31として機能する。
【0035】
この電池用コネクタ31は、前述の正面外側状態(図5(a))で電池パック20が装着されると、プラス端子TM1とプラス端子TM6が、サーミスタ端子TM2とサーミスタ端子TM5が、さらにグランド端子TM3とマイナス端子TM4が、それぞれ接触して導通することによって接続状態となる。また電池用コネクタ31は、前述の裏面外側状態(図5(b))で電池パック20が装着されている場合には、プラス端子TM1とプラス端子TM6が、サーミスタ端子TM2とサーミスタ端子TM7が、さらにグランド端子TM3とマイナス端子TM8が、それぞれ接触して導通することによって接続状態となる。
【0036】
また、本体側充電端子TM15,16は、前述した電池側充電端子TM9,10と対をなす端子であり、これら本体側充電端子TM15,16と電池側充電端子TM9,10は、充電用コネクタ32(図6(b)に示す)を構成している。すなわち、これら本体側充電端子TM15,16と電池側充電端子TM9,10は、電池パック20の着脱にともなって接離して、非接触充電用のコイル22と携帯電話本体1a(電源・充電回路11)との間の電気的接続及び離脱を行う充電用コネクタ32として機能する。
【0037】
この充電用コネクタ32は、前述の正面外側状態(図5(a))で電池パック20が装着されると、電池側充電端子TM9,10が軸線A2を中心に本体側充電端子TM15,16と対称の位置(図3(a)において左右方向反対側の位置)に離れるため、それぞれの端子が非接触となり非接続状態となる。また充電用コネクタ32は、前述の裏面外側状態(図5(b))で電池パック20が装着されている場合には、端子TM15と端子TM9が、さらに端子TM16と端子TM10が、それぞれ接触して導通することによって接続状態となる。
【0038】
また、本体側RFID端子TM13,14は、前述した電池側RFID端子TM11,12と対をなす端子であり、これら本体側RFID端子TM13,14と電池側RFID端子TM11,12は、RFID用コネクタ33(図6(a)に示す)を構成している。すなわち、これら本体側RFID端子TM13,14と電池側RFID端子TM11,12は、電池パック20の着脱にともなって接離して、RFIDアンテナ23と携帯電話本体1a(RFID回路14)との間の電気的接続及び離脱を行うRFID用コネクタ33として機能する。
【0039】
このRFID用コネクタ33は、前述の裏面外側状態(図5(b))で電池パック20が装着されると、電池側RFID端子TM11,12が図5(b)に示すように表面側にきて本体側RFID端子TM13,14から離れるため、それぞれの端子が非接触となり非接続状態となる。またRFID用コネクタ33は、前述の正面外側状態(図5(a))で電池パック20が装着されている場合には、端子TM13と端子TM11が、さらに端子TM14と端子TM12が、それぞれ接触して導通することによって接続状態となる。
【0040】
以上説明した充電用コネクタ32とRFID用コネクタ33の接続状態の変化によって、本実施形態では、前述の正面外側状態(RFIDアンテナ23が収納凹部2aの表面側に位置する電池パック20の装着状態)では、RFID機能(近距離通信機能)が実行可能で、非接触充電機能が実行不可能となり、前述の裏面外側状態(非接触充電用のコイル22が収納凹部2aの表面側に位置する電池パック20の装着状態)では、RFID機能(近距離通信機能)が実行不可能であり、非接触充電機能が実行可能となる。
【0041】
次に、携帯電話機1の電池パック20の装着及びそれによる作用について説明する。
携帯電話機1に電池パック20を取り付ける際、RFID機能を使う場合には、RFIDアンテナ23を手前にして前述の正面外側状態で収納凹部2aに取り付け(図5(a))、非接触充電機能を使う場合には、コイル22を手前にして前述の裏面外側状態で収納凹部2aに取り付ければよい(図5(b))。
【0042】
前記正面外側状態で電池パック20を取り付ければ、電池パック20を覆う前述のカバーを収納凹部2aに取り付けた場合、RFIDアンテナ23はこのカバーの近くに位置し、コイル22や電池セル21と適正なクリアランスを持つことで、アンテナとして適切な性能を持たせることが可能となる。これにより、携帯電話機1の裏面の前記カバー付近を通信相手となるRFIDの端末に近づけることで、RFID機能の通信を良好に行うことができる。
【0043】
一方、前記裏面外側状態で電池パック20を取り付ければ、電池パック20を覆う前述のカバーを収納凹部2aに取り付けた場合、コイル22はこのカバーの近くに位置し、RFIDアンテナ23や電池セル21と適正なクリアランスを持つことで、非接触充電用のコイルとして適切な性能を持たせることが可能となる。これにより、携帯電話機1の裏面の前記カバー付近を非接触充電の充電台に近づけることで、良好に非接触充電を行うことができる。
【0044】
ここで、RFID機能を使う場合の電池パック20と携帯電話本体1aの接続は、既述したように、電池セル21と電源・充電回路11が電池用コネクタ31における所定の端子(電池側電池端子TM6,5,4と本体側電池端子TM1,2,3)によって接続され、RFIDアンテナ23とRFID回路14がRFID用コネクタ33によって接続される(図6(a))。一方、非接触充電機能を使う場合は、電池セル21と電源・充電回路11は電池用コネクタ31における一部異なる端子(電池側電池端子TM6,7,8と本体側電池端子TM1,2,3)によって接続され、非接触充電用のコイル22と電源・充電回路11が充電用コネクタ32によって接続される(図6(b))。
【0045】
以上のとおり、本実施形態によれば、通信機能(この場合、RFID機能)と非接触充電機能を、省スペースかつ高性能に実現できる。すなわち、RFIDアンテナ23とコイル22が電池パック20の裏表に別個に離れて搭載されているので、これらアンテナとコイルの干渉が無くなり、それぞれの無線性能を高く確保することが容易となる。また、これらアンテナとコイルは、これらアンテナとコイルを構成する導体の僅かな厚さ分だけ電池パック20の厚さを僅かに厚くするだけで配置できることになるため、携帯電話機1(無線装置)内の限られたスペースに高密度に配置することができ、これらアンテナとコイルを設けても携帯電話機1の外径はほとんど大きくならない。
【0046】
また本実施形態は、電池パック20が収納凹部2a(電池装着部)に対して表裏を反転させて着脱可能である。これにより、電池パック20の装着の向きの変更によって、RFIDアンテナ23とコイル22のうち、使用する方を、携帯電話機1(無線装置)の裏面におけるより表面側に配置することができる。したがって、アンテナによる通信機能(この場合、RFID機能)と非接触充電機能のそれぞれを、より高性能に実現できる。
【0047】
また本実施形態は、電池パック20の着脱の際にコイル22と携帯電話本体1a(無線装置本体)との間の電気的接続及び離脱を行う充電用コネクタ32と、電池パック20の着脱の際にRFIDアンテナ23と携帯電話本体1aとの間の電気的接続及び離脱を行うRFID用コネクタ33(通信用コネクタ)とは、収納凹部2aと電池パック20とに設けられて電池パック20の着脱にともなって接離する端子(電池側充電端子TM9,10と本体側充電端子TM15,16、電池側RFID端子TM11,12と本体側RFID端子TM13,14)により構成されている。このため、これらアンテナとコイルに関して、電池パック20の脱着に伴う配線作業(コネクタの脱着作業)が不要であり、電池パック20の着脱作業が容易である。
【0048】
また本実施形態は、コイル22が収納凹部2aの表面側に位置する電池パック20の装着状態(裏面外側状態)では、充電用コネクタ32が接続状態となる一方で、RFID用コネクタ33が非接続状態となり、RFIDアンテナ23が収納凹部2aの表面側に位置する電池パック20の装着状態(正面外側状態)では、RFID用コネクタ33が接続状態となる一方で、充電用コネクタ32が非接続状態となる。このため、非接触充電機能とRFID機能(近距離通信機能)は、電池パック20の装着の向きの切り替えによって、いずれか一方のみが実行可能となる。したがって、例えば子供が利用する携帯電話機1についてRFID機能を禁止したい場合などに、電池パック20を所定の向きに装着しておくことでRFID機能が確実に働かないようにすることができるなどの利点がある。
【0049】
また本実施形態は、電池パック20の着脱の際に電池セル21と携帯電話本体1aとの間の電気的接続及び離脱を行う電池用コネクタ31が、収納凹部2aと電池パック20とに設けられて電池パック20の着脱にともなって接離する端子(電池側電池端子TM4〜8と本体側電池端子TM1〜3)により構成されている。このため、この電池セル21に関して、電池パック20の脱着に伴う配線作業(コネクタの脱着作業)が不要であり、電池パック20の着脱作業が容易である。
【0050】
特に本実施形態は、電池用コネクタ31を構成する前記端子の一方側(この場合、電池側電池端子TM4〜8)が、電池パック20の反転の中心となる軸線A1に対して対称に設けられていることにより、電池パック20の装着の向きにかかわらず、電池用コネクタ31が接続状態となる。このため、電池パック20の装着の向きにかかわらず、電池パック20を収納凹部2aにはめ込んで装着するだけで、電池セル21と携帯電話本体1aとの接続が確保される。したがって、電池パック20を外して表裏を反転させて再度装着する際にも、配線作業(コネクタの脱着作業)等は不要であり、この点でも電池パック20の着脱作業や反転作業が容易である。
【0051】
(他の実施形態)
次に本発明の他の実施形態について説明する。
まず、前述の第1実施形態では、電池パックにRFID機能用のアンテナを設けたが、RFID機能以外の通信機能のためのアンテナを設けてもよい。但し、RFID機能のアンテナは、既述したように、ある程度の面積が必要であり、通信距離も短いので、本発明を適用する効果(電池パックの一面に設けることによる高性能化及び省スペース効果)が著しい。
【0052】
また本発明は、電池パックの表裏を反転することができない態様でもよい。無線装置によっては、電池パックの両面が無線装置の筐体の表面近くに配置される可能性があり、このような場合には、電池パックを反転させる必要がないからである。
【0053】
また、各コネクタは、電池パックの表裏を反転させる際に接続したままとすることができる態様でもよい。例えば、電池パックから電線を伸ばし、この電線の端末を無線装置本体側に接続するコネクタを設け、電池パックの表裏を反転させても前記電線が捻じれることによって、コネクタの接続状態を維持できる態様があり得る。
【0054】
また、電池パックの表裏を反転させても(すなわち、電池パックの装着の向きを変更しても)、アンテナとコイルの両方の接続が維持されて、近距離通信などの通信機能と非接触充電機能の両方が同時に使用できる態様もあり得る。
【0055】
また、電池用コネクタ31において対称に設ける端子は、電池側ではなく、本体側の端子(前述の第1実施形態では、本体側電池端子TM1〜3)であってもよい。すなわち、例えば図3(a)において、プラス端子TM1の左側に、サーミスタ端子とグランド端子を、右側のサーミスタ端子TM2やグランド端子TM3と対称に(軸線A2を中心に対称に)設けた態様でもよい。この場合、電池側電池端子TM4〜8では、例えば一方のサーミスタ端子TM7とマイナス端子TM8を削除することができる。
【0056】
また無線装置は、電池パック以外にもバッテリ(例えば一次電池)を内蔵し、無線装置本体がこのバッテリからも電源供給を受ける態様でもよい。
【0057】
また、以上説明した実施形態では携帯電話機を例に挙げて説明したが、本発明は携帯電話機以外の装置、例えば、PDA(携帯情報端末)、パーソナルコンピュータ(例えば、ノートPC、タブレットPC)、音楽プレイヤ、ゲーム機、携帯ラジオ等、二次電池を搭載し非接触充電機能と通信機能を備える各種の電子機器等に適用可能である。
【0058】
以下、本発明の特徴を付記する。
前記の各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
筐体と、
この筐体に装着される電池パックと、
この電池パックの表面と裏面のうちの一方に設けられた通信用のアンテナと、
前記電池パックの表面と裏面のうちの他方に設けられた非接触充電用のコイルと、
前記筐体に設けられて前記電池パック内の電池セルから電力供給を受けて作動し、少なくとも、前記コイルを介して外部から非接触で供給される電力によって前記電池セルの充電を行う非接触充電機能、及び、前記アンテナを介して外部との通信を行う通信機能を有する無線装置本体と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【0059】
(付記2)
前記筐体は、一面に電池装着部を有し、
前記電池パックは、前記電池装着部に対して表裏を反転させて着脱可能であることを特徴とする付記1に記載の無線装置。
【0060】
(付記3)
前記電池パックの着脱の際に前記コイルと前記無線装置本体との間の電気的接続及び離脱を行う充電用コネクタと、前記電池パックの着脱の際に前記アンテナと前記無線装置本体との間の電気的接続及び離脱を行う通信用コネクタとは、前記電池装着部と前記電池パックとに設けられて前記電池パックの着脱にともなって接離する端子により構成されていることを特徴とする付記2に記載の無線装置。
【0061】
(付記4)
前記コイルが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態では、前記充電用コネクタが接続状態となる一方で、前記通信用コネクタが非接続状態となり、
前記アンテナが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態では、前記通信用コネクタが接続状態となる一方で、前記充電用コネクタが非接続状態となることを特徴とする付記3に記載の無線装置。
【0062】
(付記5)
前記電池パックの着脱の際に前記電池セルと前記無線装置本体との間の電気的接続及び離脱を行う電池用コネクタは、前記電池装着部と前記電池パックとに設けられて前記電池パックの着脱にともなって接離する端子により構成されていることを特徴とする付記2ないし付記4のいずれかに記載の無線装置。
【0063】
(付記6)
前記電池用コネクタを構成する前記端子の一方側が、前記電池パックの反転の中心となる軸線に対して対称に設けられていることにより、前記コイルが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態においても、前記アンテナが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態においても、前記電池用コネクタが接続状態となることを特徴とする付記5に記載の無線装置。
【0064】
(付記7)
前記アンテナを介して外部と行う通信は、RFID機能のための近距離通信であることを特徴とする付記1ないし付記6のいずれかに記載の無線装置。
【符号の説明】
【0065】
1 携帯電話機(無線装置)
1a 携帯電話本体(無線装置本体)
2 筐体
2a 収納凹部(電池装着部)
10 中央制御部
20 電池パック
21 電池セル
22 コイル(非接触充電用のコイル)
23 RFIDアンテナ(通信用のアンテナ)
31 電池用コネクタ
32 充電用コネクタ
33 RFID用コネクタ(通信用コネクタ)
TM1〜3 本体側電池端子
TM4〜8 電池側電池端子
TM9,10 電池側充電端子
TM11,12 電池側RFID端子
TM13,14 本体側RFID端子
TM15,16 本体側充電端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
この筐体に装着される電池パックと、
この電池パックの表面と裏面のうちの一方に設けられた通信用のアンテナと、
前記電池パックの表面と裏面のうちの他方に設けられた非接触充電用のコイルと、
前記筐体に設けられて前記電池パック内の電池セルから電力供給を受けて作動し、少なくとも、前記コイルを介して外部から非接触で供給される電力によって前記電池セルの充電を行う非接触充電機能、及び、前記アンテナを介して外部との通信を行う通信機能を有する無線装置本体と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記筐体は、一面に電池装着部を有し、
前記電池パックは、前記電池装着部に対して表裏を反転させて着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記電池パックの着脱の際に前記コイルと前記無線装置本体との間の電気的接続及び離脱を行う充電用コネクタと、前記電池パックの着脱の際に前記アンテナと前記無線装置本体との間の電気的接続及び離脱を行う通信用コネクタとは、前記電池装着部と前記電池パックとに設けられて前記電池パックの着脱にともなって接離する端子により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記コイルが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態では、前記充電用コネクタが接続状態となる一方で、前記通信用コネクタが非接続状態となり、
前記アンテナが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態では、前記通信用コネクタが接続状態となる一方で、前記充電用コネクタが非接続状態となることを特徴とする請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記電池パックの着脱の際に前記電池セルと前記無線装置本体との間の電気的接続及び離脱を行う電池用コネクタは、前記電池装着部と前記電池パックとに設けられて前記電池パックの着脱にともなって接離する端子により構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
前記電池用コネクタを構成する前記端子の一方側が、前記電池パックの反転の中心となる軸線に対して対称に設けられていることにより、前記コイルが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態においても、前記アンテナが前記電池装着部の表面側に位置する前記電池パックの装着状態においても、前記電池用コネクタが接続状態となることを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
【請求項7】
前記アンテナを介して外部と行う通信は、RFID機能のための近距離通信であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無線装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−244263(P2012−244263A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109974(P2011−109974)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】