説明

無線識別デバイス

【課題】 SIMを装着し無線通信機能を有する無線識別デバイスにおいて、10m程度の無線通信距離を得ることができ、無線通信以外の他の通信インターフェース(例えば、USBを使用した通信)を使用している間でも、無線通信を行うことができる無線識別デバイスを提供する。
【解決手段】 USB通信機能を備えた無線識別デバイスには、10m程度の無線通信距離を得るために、2.4GHz周波数帯を利用した無線通信手段(無線コントローラ250とアンテナ251)が備えられている。タイマー回路220が一定時間間隔を計測するごとに、トリガー信号がCPU200に入力され、SIMに記憶されたデータが無線通信手段で発信される。トリガー信号に基づいて前記データを発信することで、他の通信インターフェース(例えば、USBを使用した通信)を使用している間でも、無線通信を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所持者を識別する際に使用される識別デバイスの技術に関し、更に詳しくは、無線通信の機能を備えた識別デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
小型ICチップを実装したICカードは、前記ICチップのメモリに機密情報(例えば、認証局の証明証など)を機密に格納できるため、ネットワークのアクセス管理やパソコンの使用者管理などで識別デバイスとして使用されている。ただし、ICカードを使用する際は、ICカードとデータの通信を行うリーダライタが必要不可欠であり、リーダライタが予め備えられていない環境(例えば、外出先)からネットワークにリモートアクセスする場合には、ICカードを使用できないため、ICカードとリーダライタを一体化させた識別デバイスも開発されている。
【0003】
例えば、本出願人に係わる特許文献1,2または3で開示しているSIM(Subscriber Identity Module)およびSIMフォルダーは、ICカードとリーダライタを一体化させた識別デバイスを提供する一つの発明で、SIMフォルダーにISO7816規格に準じたリーダライタとUSB(Universal Serial Bus)用コネクタとを備え、このSIMフォルダーにSIMを装着することで、ICカードとリーダライタを一体化させた識別デバイスを実現している。
【0004】
また、特許文献2においては、上述の2つの通信インターフェースに加えて、SIMフォルダーが無線交信用のアンテナを備えることで、SIMフォルダーに接触/非接触のデュアルインターフェースを有するSIMが装着された際は、SIMフォルダーに備えられたアンテナを利用してISO14443規格に準じた非接触通信ができる識別デバイスを提供している。加えて、特許文献3においては、無線通信手段として近距離無線通信手段(例えば、ブルートゥース、Bluetooth)を備えたSIMフォルダーを提供している。
【特許文献1】特開2004−86402号公報
【特許文献2】特開2004−118771号公報
【特許文献3】特開2004−264915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では次の問題があった。第1の問題点は通信距離の問題である。特許文献1、2のISO14443規格に準じた非接触通信では、通信距離が数cmしか得ることができず、非接触ICカード用リーダライタとSIMフォルダーは触れるように近づけないとデータ通信を行うことができなかった。通信距離が短いと、例えば、セキュリティエリア内において、識別デバイスを所持した使用者の位置情報をリモートで常時監視したい場合などで不都合が生じる。
【0006】
第2の問題点は、無線通信以外の他の通信インターフェースを使用している間は、無線通信を実行できない点である。例えば、特許文献3に開示された技術を用いれば、無線通信手段を近距離無線通信手段とすることで、上述した第1の問題点は解決できるが、USBコネクタ110がパソコン等のUSBポートに差し込まれて使用しているときは、非接触通信手段は強制的に中断され、USBコネクタ110をパソコンのUSBポートに差し込んで使用しているときに、無線通信を実行することはできない。第2の問題も、セキュリティエリア内において、識別デバイスを所持した使用者の位置情報をリモートで常時監視しているときに、識別デバイスを所持した使用者の位置情報を把握できないときが生じるてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題を鑑みて、特許文献1,2または3で開示されているような無線通信機能を備え、ICカード(またはSIM)とリーダライタを一体化させた無線識別デバイスにおいて、無線通信手段の通信距離として10m程度もしくはそれ以上の通信距離を得ることができ、無線通信以外の他の通信インターフェース(例えば、USBを使用した通信)を使用している間でも、無線通信を行うことができる無線識別デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する第1の発明は、カード状の情報記憶媒体を装着し、無線データ通信機能を備えた無線識別デバイスであって、前記識別デバイスは、USBを用いてコンピュータ装置とデータ通信する第1の通信手段と、前記識別デバイスに装着された前記情報記憶媒体とデータ通信する第2の通信手段と、前記情報記憶媒体から読み出したデータを、無線を利用して発信する近距離無線通信手段と、トリガ信号を生成するトリガ生成手段を備え、前記近距離無線通信手段は、前記トリガ生成手段が生成した前記トリガ信号に基づいて、前記データを発信することを特徴とする無線識別デバイスである。
【0009】
なお、第1の発明において、前記カード状の情報記憶媒体は、ICカードまたはSIM(Subscriber Identify Module)が望ましく、前記第2の通信手段は、ISO7816規格に適合した通信手段であることが望ましい。加えて、前記近距離無線通信手段は、ブルートゥース(Bluetooth)等の2.4GHz周波数帯を利用した近距離無線通信手段であることが望ましい。
【0010】
第1の発明の作用によれば、前記無線識別デバイスが前記トリガ生成手段を備えることで、無線通信以外の他の通信インターフェースを使用している間でも、前記トリガ信号が発生すれば、前記情報記憶媒体から読み出した前記データを無線で発信することができる。また、無線手段を近距離無線通信手段(例えば、2.4GHz周波数帯を利用した手段)とすることで、10m程度もしくはそれ以上の通信距離を得ることができる。
【0011】
更に、第2の発明は、第1の発明に記載した無線識別デバイスにおいて、前記トリガ生成手段は、一定時間間隔を計測し、一定時間間隔が経過するごとに前記トリガ信号を発生する手段であることを特徴とする無線識別デバイスである。なお、第2の発明において、前記無線識別デバイスは、前記一定時間間隔を設定する時間間隔設定手段を備えていることが望ましい。第2の発明の作用によれば、一定時間間隔で前記トリガ信号を発生するため、一定時間間隔毎に前記情報記憶媒体から読み出した前記データを無線で発信することができる。
【0012】
更に、第3の発明は、第1の発明に記載した無線識別デバイスにおいて、前記トリガ生成手段は手動でトリガ信号を発生させる手段であることを特徴とする無線識別デバイスである。なお、第3の発明において、手動でトリガ信号を発生させる前記トリガ生成手段は、押しボタンを利用した手段であることが望ましい。第3の発明の作用によれば、手動でトリガ信号が発生するため、任意のタイミングで前記情報記憶媒体から読み出した前記データを無線で発信することができる。
【0013】
更に、第4の発明は、第1の発明記載した無線識別デバイスにおいて、第2の発明に記載した前記トリガ生成手段と第3の発明に記載した前記トリガ生成手段とを備えていることを特徴とする無線識別デバイスである。第4の発明の作用によれば、一定時間間隔毎かつ任意のタイミングで、前記情報記憶媒体から読み出した前記データを無線で発信することができる。
【発明の効果】
【0014】
これまで述べた本発明によれば、特許文献1,2または3で開示されているような無線通信機能を備え、ICカード(またはSIM)とリーダライタを一体化させた無線識別デバイスにおいて、無線通信手段を前記近距離無線通信手段とすることで、通信距離として10m程度もしくはそれ以上の通信距離を得ることができ、前記トリガ生成手段を備えることで、無線通信以外の他の通信インターフェース(例えば、USBコネクタ110を使用した通信)を使用している間でも、カード状の情報記憶媒体(例えば、SIM)から読み出したデータを無線で発信することができる無線識別デバイスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<<<識別デバイス>>>
ここから、本発明の無線識別デバイス100について、図を参照しながら詳細に説明する。図1は無線識別デバイス100の外観の一例を示した図である。図1に示したように無線識別デバイス100の左側には、USBコネクタ110としてAコネクタ(オス)を備え、右側にはSIM300を挿入するスロット150が設けられている。スロットからSIM300を挿入することで、無線識別デバイス100内にSIM300が装着され、無線識別デバイス100は、ICカードとリーダライタを一体化させた無線識別デバイスとして使用できる。
【0016】
なお、図1においては、USBコネクタ110をAコネクタ(オス)としているが、USBコネクタ110はミニBコネクタ(メス)であってもよい。USBコネクタはミニBコネクタ(メス)とすることで、無線識別デバイス100のUSBコネクタ110部の出っ張りを無くすことができる。
【0017】
無線識別デバイス100に備えられた無線通信手段(例えば、アンテナ等)は、無線識別デバイス100内部に電気回路と共に内蔵され、無線識別デバイス100の外側から無線通信手段は見えない構造となっている。図1に示したように、無線識別デバイス100の外側には、前述したUSBコネクタ110に加え、情報を表示する液晶ディスプレイ120、無線で情報を送信するときに使用する無線通信ボタン133、電源の入/切を行う電源ボタン130、液晶ディスプレイ120に表示されるメニュー情報から一つの情報を選択するときに使用する選択ボタン131、選択ボタン131で選択した情報を決定するときに使用する決定ボタン132、電源の入/切の状態を表示するLED140、そして、無線識別デバイス100をキーホルダー等に取付けるためのキー取付け穴141を備えている。
【0018】
本実施の形態において、液晶ディスプレイ120は、コストの安いSTN液晶(Super Twisted Nematic liquid crystal)としている。無線識別デバイス100のディスプレイとしては、薄型で消費電力の小さいディスプレイが望ましく、STN液晶よりも表示能力に優れているがコストの高いTFT液晶(Thin Film Transistor)、DSTN液晶(Dual-scan Super Twisted Nematic)や、有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display)等のディスプレイも、無線識別デバイス100のディスプレイとして利用できる。
【0019】
図2は、無線識別デバイス100に内蔵された電気回路の概要を説明する一例である。図2に示したように、無線識別デバイス100に内蔵された電気回路には、CPU200(Central Processing Unit)、メモリ210、タイマー回路220、USBコントローラ260、液晶コントローラ240、SIMコントローラ230、接続端子板241、無線通信コントローラ250、アンテナ251、ボタンスイッチ270〜273、電池280などが実装される。なお、図2には、本発明に係わる無線識別デバイス100の説明に必要なコンポーネントのみを記載し、電気回路として動作するために必要な他のコンポーネント(例えば、クロック信号生成器)は図示していない。
【0020】
図2において、CPU200とは、メモリ210に記憶されたプログラムを実行し、電気回路に実装されたコンポーネントを制御する役割を果たす。メモリ210はデータを記憶する装置で、CPU200が実行するプログラムや、処理中のデータを一時的に記憶する役割を果たす。無線識別デバイス100は、メモリ210として、フラッシュROM(Read Only Memory)とSRAM(Static Random Access Memory)の2つのメモリを有している。
【0021】
タイマー回路220とは時間を計測する回路で、無線通信を実行することを意味する信号であるトリガ信号を一定時間間隔毎に発生する役割を果たす。CPU200は、タイマー回路220に一定時間間に対応するカウンター値を設定し、タイマー回路220をスタートさせる。タイマー回路220は、外部または内部からクロック信号が入力されるごとにカウンター値を減算し、カウンター値が「0」になるとトリガ信号を発生させ、発生したトリガ信号はCPU200に入力される。
【0022】
USBコントローラ260とは、コンピュータ装置と無線識別デバイス100とのUSBによる通信を制御する回路で、USBコネクタ110およびUSBコントローラ260で、コンピュータ装置と無線識別デバイス100との通信手段が実現されている。
【0023】
液晶コントローラ240とは、液晶ディスプレイ120を駆動させ、CPU200から送信された情報の表示など、液晶ディスプレイ120を制御する回路である。
【0024】
ボタンスイッチ270〜273とは、無線識別デバイス100に備えられたボタン(電源ボタン130、選択ボタン131、決定ボタン132および無線通信ボタン133)の状態を電気信号に変える手段である。電源ボタン130が押された状態になると、電池280から電気回路に電源が供給される。また、選択ボタン131または決定ボタン132が押された状態になると、それぞれ選択ボタン131または決定ボタン132が押されたことを示す電気信号(例えば、パルス信号)がCPU200に入力される。
【0025】
無線通信ボタン133は、無線通信を実行することを意味する信号であるトリガ信号を手動で発生せる手段である。無線通信ボタン133が押されると、無線通信ボタン133に対応するボタンスイッチ273は、トリガ信号(例えば、パルス信号)を発生させ、発生されたトリガ信号はCPU200に入力される。
【0026】
SIMコントローラ230とは、無線識別デバイス100に挿入されたSIM300とのとの通信を制御する回路で、SIM300を動作させるために必要な機能、例えば、クロック信号やリセット信号等の電気信号を生成する機能、ISO7816に準拠した通信プロトコルを制御する機能などを有している。
【0027】
図3は、無線識別デバイス100に挿入されるSIM300を説明する図である。SIM300とは、図3に示したように、ICカードのICチップ301近傍を短冊状に切り取った形状をしており、UIM(User Identify Module)も図3に示したカード形状と同じ形状をしている。
【0028】
本実施の形態において、SIM300に実装されるICチップ301はISO7816規格に準拠した接触通信のみに対応し、ICチップ301には無線識別デバイス100の所有者を識別するデータ(以下、所有者識別データと記す)が少なくとも記憶されている。所有者識別データは、ICチップ301のメモリ210(EEPROMやPROM)に書き込まれデータでもよく、ICチップ301ごとに異なるICチップ製造番号を所有者識別データとして使用してもよい。
【0029】
なお、本実施の形態において、ICチップ301の通信インターフェースは接触インターフェースのみとしているが、本出願人に係わる特許文献2で開示されている発明を本発明のSIM300に適用すれば、ISO14443規格に準拠した非接触近接通信による通信も可能である。加えて、本発明においては、ICチップ301に実装されるOS(Operating System)およびアプリケーションプログラムの種別を問はない。
【0030】
図4は、SIM300が無線識別デバイス100に装着された状態を説明する図である。図4(a)に示したように、ストッパー160などを設けることで、無線識別デバイス100挿入されたSIM300は無線識別デバイス100内の所定の位置に止まる。所定の位置にセットされたSIM300のICチップ301面と対向する位置には、接続端子板241が設けられている。
【0031】
図2に示しているように、接続端子板241の表面には8個の接続端子241aが設けられ、SIM300が挿入されると、それぞれのターミナルはICチップ301の各接触端子と接続する。また、図4(b)に示したように、接続端子241aは押さえばねの機能も有し、ICチップ301と電気的に接続する役割に加えて、無線識別デバイス100に挿入されたSIM300を保持する役割も同時に果たしている。
【0032】
図2に示し、無線識別デバイス100に備えられた無線通信コントローラ250は、アンテナ251を利用して図外の無線リーダライタと通信する役割を果たす。本実施の形態において、無線通信で使用する周波数帯は2.4GHz帯である。13.56MHz帯の周波数を使用するISO14443規格では10cm程度の通信距離しか実現できないが、2.45GHz帯の周波数を使用する無線通信規格(例えば、BluetoothやZigBee)では最大30m程度までの通信距離を実現できる。なお、図2において、アンテナ251は、棒状小片のセラミック材に金導電材をらせん状に焼成したアンテナ251としている。
【0033】
図2に示した無線通信コントローラ250は、アンテナ251を用いて、SIM300に記憶された所有者識別データを無線で発信する役割を果たす。電源ボタン130が押されることにより無線識別デバイス100に電源が入ると、CPU200はSIM300に記憶された所有者識別データを読み取り、CPU200は読み取った所有者識別データをメモリ210のSRAMに記憶する。そして、無線通信コントローラ250はCPU200から指示を受けると、アンテナ251を利用して、前記SRAMに記憶した所有者識別データを無線で発信する。
【0034】
なお、本実施の形態における無線識別デバイス100に備えられた無線通信コントローラ250は、3通りの方法で所有者識別データを無線で発信する機能を有している。無線識別デバイス100が有している一つ目の発信方法は「任意発信」で、二つ目の発信方法は「一定時間発信」で、三つ目の発信方法は「任意発信および一定時間発信」である。それぞれの発信方法の選択は、電源投入時に液晶ディスプレイ120を用いて選択される。
【0035】
一つ目の発信方法である「任意発信」とは、トリガ信号を無線通信ボタン133が発生するトリガ信号のみとし、無線通信ボタン133が押されたときのみに、所有者識別データを発信する方法である。無線通信ボタン133が押されると、無線通信ボタン133に対応したボタンスイッチ273からCPU200にトリガ信号が入力され、CPU200から無線コントローラに所有者識別データの発信を要求する命令が送られ、無線コントローラは所有者識別データを発信する。すなわち、「任意発信」とは、所有者識別データをワンショットで送信する発信方法で、例えばドアゲートの開閉時に適した方法である。
【0036】
二つ目の発信方法である「一定時間発信」とは、トリガ信号をタイマー回路220が発生するトリガ信号のみとし、予め指定された一定時間間隔ごとに所有者識別データを発信する方法である。液晶ディスプレイ120で「一定時間発信」が選択されると、CPU200は、設定された一定時間間隔(例えば5分)にカウンター値を設定しタイマー回路220を作動させる。そして、タイマー回路220が一定時間を計測すると、タイマー回路220からCPU200にトリガ信号(例えば、割り込み信号)が入り、CPU200は無線コントローラに所有者識別データを発信する指示を出す。CPU200は無線コントローラに所有者識別データを発信する指示を出した後、上述したタイマー回路210の操作を繰り返し実行する。すなわち、「一定時間発信」とは、一定の時間間隔毎に所有者識別データを発信し続ける方法で、無線識別デバイス100を所持する所有者の位置情報の監視に適した方法である。
【0037】
三つ目の発信方法である「任意発信および一定時間発信」とは、上述した「任意発信」と「一定時間発信」の二つの機能を兼ね備えた発信方法で、トリガ信号をタイマー回路220が発生するトリガ信号と、トリガ信号を無線通信ボタン133が発生するトリガ信号とし、いずれかのトリガ信号が発生した場合に、CPU200は無線通信コントローラ250に所有者識別データの発信指示を出す。なお、上述した発信方法の説明では、所有者識別データを一つとして記述していたが、無線コントローラは、「任意発信」および「一定時間発信」で異なる所有者識別データを発信してもよい。
【0038】
図2で示した電気回路の各要素の機能をより詳細に説明するために、図5に電気回路のブロック図を示す。図5には、図2のメモリ210をSRAM212とフラッシュROM211に分けて記載し、また図2には記載していない充電回路291を記載している。
【0039】
図5に示したように、無線識別デバイス100に実装された電池280と電源供給ライン290の間には、電源ボタン130に対応したボタンスイッチ270が設けられ、このボタンスイッチ270がON状態になると、図5に示した各コンポーネントに電池280から電力が供給される。本実施の形態において、電池280は二次電池(例えば、小型のリチウム電池)を採用し、USBコネクタ110がUSBポートに接続されている間は、USBバスパワー(bus power)から電力が充電回路291に供給され、電池280(二次電池)に電力が充電される仕組みとしている。
【0040】
電源ボタン130に対応するボタンスイッチ270がON状態になるとCPU200が動作する。CPU200が実行するプログラムはフラッシュROM211に記憶されている。電源が投入されると、CPU200は電気回路の初期チェック等を行い、電気回路に問題がなければ、前述した発信方法の選択プログラムを実行する。
【0041】
図6は、発信方法の選択プログラム動作中に、液晶ディスプレイ120に表示される情報を示した一例である。発信方法の選択プログラムが動作すると、CPU200は、図6(a)の液晶コントローラ240に発信方法を選択するメニュー画面を表示させる。無線識別デバイス100の所有者は、選択ボタン131を押すことで、図6(a)のメニュー画面で3つの発信方法の中から、一つの発信方法を選択し、決定ボタン132を押すことで選択した発信方法が決定される。
【0042】
発信方法を選択・決定された情報は、選択ボタン131および決定ボタン132に対応したそれぞれのボタンスイッチ271、272からCPU200に入力される。CPU200は、選択ボタン131が押された回数から、選択された発信方法を特定でき、発信方法を特定した内容を図6(a)のメニュー画面に反映する(例えば、選択された発信方法の左横に表示した○印を白丸から黒丸に変更するなど)。また、CPU200は、決定ボタン132が押されることで、発信方法が選択されたことを知ることができる。
【0043】
図6(a)のメニュー画面において、「一定時間発信」または「任意発信および一定時間発信」が選択された場合は、図6(b)の発信時間間隔を決定するメニュー画面を表示させるデータを液晶コントローラ240に送る。図6(b)の発信時間間隔を決定するメニューにおいては、上述したように、選択ボタン131と決定ボタン132で発信時間間隔が決定される。図6(b)においては、発信時間間隔を選択するメニュー画面を一例として記載しているが、発信時間間隔を入力する画面であっても当然構わない。
【0044】
上述の手順で発信方法(および発信時間間隔)が決定されると、CPU200は、決定したデータをSRAM212に記憶する。そして、CPU200はSIMコントローラ230に対して、SIM300に記憶された所有者識別データを読み取る命令を送信する。SIMコントローラ230はISO7816で記載された手順でICチップ301を活性化させた後、ICチップ301から所有者識別データを読み取り、読み取った所有者識別データをCPU200に返送する。CPU200は、SIMコントローラ230から返信された所有者識別データをSRAM212に記憶する。なお、所有者識別データを読み取った後、電力を節約するために、SIMコントローラ230はISO7816で記載された手順でICチップ301を不活性化させている。
【0045】
上述の手順で発信方法と発信時間間隔が決定され、SIM300から所有者識別データを取得した後、CPU200にトリガ信号が入力されると、CPU200は無線通信コントローラ250に所有者識別データの発信指示を出す。無線コントローラは、SRAM212から所有者識別データを取得し、アンテナ251を利用して取得した所有者識別データを無線で発信する。ISO14443規格において非接触ICカードは、リーダライタからコマンド受信するとレスポンスを返信するが、本発明の無線識別デバイス100は、リーダライタからのコマンド受信することなく、トリガ信号が発生するたびに所有者識別データを無線で発信する。
【0046】
発信方法が「任意発信」または「任意発信および一定時間発信」の場合は、無線通信ボタン133が押されボタンスイッチ273からトリガ信号がCPU200に入力された場合のみ、所有者識別データは無線で発信される。
【0047】
発信方法が「一定時間発信」または「任意発信および一定時間発信」の場合は、所有者識別データは一定時間間隔で発信される。本実施の形態において、無線識別デバイス100には、CPU200とは別に、一定時間間隔を測定するタイマー回路220が設けられている。CPU200は、液晶ディスプレイ120を利用して決定され、SRAM212に記憶された一定時間間隔のデータに対応するカウンター値をタイマー回路220にセットし、タイマー回路220を作動させ、一定時間間隔が経過すると(例えば、カウンター値が0になると)、トリガ信号(例えば、タイマーの割り込み信号)をCPU200に入力する。CPU200は、タイマー回路220からトリガ信号が入力されると、CPU200は無線通信コントローラ250に所有者識別データを発信する命令を送信する。この動作を繰り返すことで、無線識別デバイス100は一定時間間隔ごとに所有者識別データを無線で発信する。
【0048】
無線識別デバイス100に備えられたUSBコネクタ110およびUSBコントローラ260は、コンピュータ装置と無線識別デバイス100がデータ通信するときに使用される。無線識別デバイス100に備えられたUSBコネクタ110が、ホストPCのUSBポートに差し込まれると、CPU200はSIM300を自動的に活性化し、USBコントローラ260は、USBコネクタ110を介してホストPCから伝送された電気信号の自動処理や、USBプロトコルの自動処理を行い、ホストPCから伝送されたデータをSRAM212に記憶する。
【0049】
そして、CPU200は、USBコントローラ260からデータを受信完了した信号を受取ると、SRAM212からUSBコントローラ260が受信したデータを取得し、取得したデータはSIMコントローラ230を介してSIM300に伝送される。SIM300からレスポンスデータがあると、SIMコントローラ230はレスポンスデータをSRAM212に記憶し、CPU200は、SRAM212に記憶されたレスポンスデータをコンピュータ装置に送出する指示をUSBコントローラ260に出す。
【0050】
このように、無線識別デバイス100がUSBを利用した通信手段を備えることで、無線識別デバイス100がコンピュータ装置のUSBポートに差し込まれると、コンピュータ装置は電子マネーや電子チケットなどアプリケーションの情報を、USBポート経由で無線識別デバイス100に転送し、無線識別デバイス100に装着されたSIM300に記憶/読出しすることができる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、CPU200が無線コントローラ250にデータを発信する指示を出すが、無線コントローラ250をCPU200とは独立して動作する回路としてもよい。図7は、無線コントローラ250aがCPU200aとは独立して動作するときのブロック図である。なお、図7のブロック図において、CPU200a、ボタンスイッチ273a、無線通信コントローラ250a、タイマー回路200aとが、図5のブロック図と異なり、他のコンポーネントは同じである。
【0052】
図7に示したように、無線通信ボタン133に対応したボタンスイッチ273aまたはタイマー回路220aが発生するトリガ信号は、CPU200aではなく無線通信コントローラ250aに入力される。この場合は、無線通信コントローラ250は、一旦、CPU200からデータ(発信方法、一定時間間隔および所持者識別データ)を受取ると、トリガ信号が入力されるたびに、アンテナ251を利用して無線で所持者識別データを発信する。
【0053】
<<<無線識別デバイスの応用例>>>
ここから、本実施の形態の無線識別デバイスをオフィスに適用した一例について簡単に記述する。図8は、オフィスでの無線識別デバイスの利用形態を示した図である。エントランスおよびセキュリティルーム入り口にはドアゲート400、401を設け、無線識別デバイス(例えば、図1)の所持者が入退場する時には任意発信方法により、ワンショットで所有者識別データを無線で発信することで、ドアゲート400、401の開閉を管理できる。また、一定時間発信方法により、エントランス、オフィスルーム、ミーティングルームおよびセキュリティルームには無線リーダ410から413を設け、無線識別デバイスが一定時間間隔(例えば、5分間隔)で所有者識別データを発信する電波を、無線リーダ401から413が検知することで、無線識別デバイスの所持者の位置情報(例えば、無線識別デバイスの所持者がいる場所等)を管理把握できる。
【0054】
更に、オフィスまたはセキュリティルームに設置されたPC420、421にはPKI等を利用したログオン管理機能が備えられており、識別デバイスが有するUSB通信機能を利用してPC420、421のログオン管理を行うことができる。
【0055】
上述したオフィスでの利用は、単に本発明の識別デバイスの一例を述べたに過ぎず、会社などの構築物の中だけでなく、敷地構内全体(例えば、テーマパーク)に無線リーダライタを配しておくことにより構内での所持者の位置情報を把握できる。また市街地にも同じように配置しておけば、例えば老人などの徘徊者の位置確認なども行える。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】識別デバイスの外観図。
【図2】識別デバイスの電気回路図。
【図3】SIMの説明図。
【図4】SIMを識別デバイスに装着した状態を説明する図。
【図5】電気回路の第1のブロック図。
【図6】液晶ディスプレイに表示される情報の一例を示した図。
【図7】電気回路の第2のブロック図。
【図8】識別デバイスをオフィスに適用した一例を示した図。
【符号の説明】
【0057】
100 識別デバイス
110 USBコネクタ
120 液晶ディスプレイ
133 無線通信ボタン
200 CPU
210 メモリ
211 フラッシュROM
212 SRAM
220 タイマー回路
230 SIMコントローラ
240 LCDコントローラ
250 無線通信コントローラ
260 USBコントローラ
270〜273 ボタンスイッチ
280 電池




【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状の情報記憶媒体を装着し、無線データ通信機能を備えた無線識別デバイスであって、
前記識別デバイスは、USBを用いてコンピュータ装置とデータ通信する第1の通信手段と、前記識別デバイスに装着された前記情報記憶媒体とデータ通信する第2の通信手段と、前記情報記憶媒体から読み出したデータを、無線を利用して発信する近距離無線通信手段と、トリガ信号を生成するトリガ生成手段と、を備え、
前記近距離無線通信手段は、前記トリガ生成手段が生成した前記トリガ信号に基づいて、前記データを発信することを特徴とする無線識別デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の無線識別デバイスおいて、前記カード状の情報記憶媒体は、ICカードまたはSIM(Subscriber Identify Module)であって、前記第2の通信手段は、ISO7816規格に適合していることを特徴とする無線識別デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線識別デバイスにおいて、前記近距離無線通信手段は、2.4GHz周波数帯を利用した近距離無線通信手段であること特徴とする無線識別デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線識別デバイスにおいて、前記トリガ生成手段は、一定時間間隔を計測し、一定時間間隔が経過するごとに前記トリガ信号を発生する手段であることを特徴とする無線識別デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の前記無線識別デバイスにおいて、前記一定時間間隔を設定する時間間隔設定手段を備えている無線識別デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線識別デバイスにおいて、前記トリガ生成手段は手動でトリガ信号を発生させる手段であることを特徴とする無線識別デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の前記無線識別デバイスにおいて、手動でトリガ信号を発生させる前記トリガ生成手段は、押しボタンを利用した手段であることを特徴とする無線識別デバイス。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線識別デバイスにおいて、請求項4に記載の前記トリガ生成手段と請求項6に記載した前記トリガ生成手段とを備えていることを特徴とする無線識別デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−134171(P2006−134171A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324005(P2004−324005)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】