説明

無線送信方法および無線送信機

【課題】簡易な構成で他の無線通信システムへの干渉を低減できるようにする。
【解決手段】データ信号Dの1ビットに対応して矩形波信号S2を生成し出力する矩形波信号生成部2と、矩形波信号S2のパルス幅を矩形波信号S2ごとに制御するパルス幅制御部3と、矩形波信号S2により駆動される送信アンテナ4とを備える。矩形波信号S2のパルス幅を矩形波信号S2ごとに制御することにより、送信信号スペクトルが広帯域に拡散し、送信信号スペクトルのピーク値が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル信号を無線送信する無線送信方法および無線送信機に関し、特に、近距離の微弱無線通信に用いられる送信方法および送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、直流信号や周波数の低い信号をそのまま伝送するのは難しい。このため、通常、高周波の搬送波に情報変調を施して信号を送信することとしている。具体的には、送信側では、送信したい信号波(送信データ)によって搬送波に変調を施し、得られた被変調波を送信する。一方、受信側では、受信された被変調波を復調することで搬送波から信号波(送信データ)を取り出す(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
図16は、この種の従来の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
従来の無線送信機500は、図16(A)に示すように、搬送波(キャリア)を生成する電圧制御発振器(VCO)501と、搬送波に送信したいベースバンド信号を乗算して搬送波を変調することによりアップコンバートする乗算器502と、変調された搬送波すなわち被変調波を増幅するパワーアンプ503と、増幅された被変調波により駆動される送信アンテナ504とを有する。
これに対応する従来の無線受信機600は、図16(B)に示すように、受信アンテナ601と、受信アンテナ601で受信された被変調波を増幅する低雑音増幅器(LNA)602と、増幅された被変調波からイメージ成分を除去するイメージ除去フィルタ603と、搬送波を生成する電圧制御発振器(VCO)604と、イメージ成分が除去された被変調波を搬送波と乗算してダウンコンバートする乗算器605と、乗算器605の出力信号のうち中間周波数を通過させるチャネル選択フィルタ606と、チャネル選択フィルタ606を通過した信号を検波して送信されたベースバンド信号に変換する検波器607とを有する。
図16は位相変復調により無線通信を行う場合の一例であるが、他の無線通信方式においても搬送波を発生させ、搬送波に変復調を施して無線通信を行うのが一般的である。
【0004】
一方、搬送波を用いずに無線通信を行うシステムとして、超広帯域(Ultra Wideband:UWB)技術を用いた無線通信システムが提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。UWBの送信機は、数GHzという極めて広い周波数帯にわたって、1秒間に10億回以上という非常に時間軸の短いガウシアンモノパルスを送出する。受信機は、送信機から送られてきたパルスのシーケンスを受信し、パルスをデータに変換する。
【0005】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特表2003−529273号公報(国際公開第01/073965号パンフレット)
【特許文献2】特表2003−535552号公報(国際公開第01/093441号パンフレット)
【非特許文献1】大庭英雄,提坂秀樹,”無線通信機”,日本理工出版会,p.141−265,ISBN 4−89019−136−4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、図16に示した従来の送信機500を用いる場合には、送信機500および受信機600に搬送波を生成する電圧制御発振器501,604や、アップコンバージョンおよびダウンコンバージョンを行う乗算器502,605等の高周波アナログ回路が必要である。このため、無線通信システムが複雑化し、システム規模(ハードウェア量)が大きく、製造コストおよび消費電力が大きいという問題があった。
また、従来のUWBを用いた送信機を用いる場合には、搬送波が不要である反面、ガウシアンモノパルスを生成する短パルス生成回路が必要となる。この短パルス生成回路は構成が複雑でかつ消費電力が大きいので、上述した送信機500を用いる場合と同様に、ハードウェア量が大きく、製造コストおよび消費電力が大きいという問題があった。
【0007】
一方、近距離の微弱無線通信では、他の電子機器や無線通信システムへの影響(干渉)を考えて、無線送信機からの送信電力が厳しく制限されている。上述した従来の無線通信システムにおいても、送信電力の規制値を超えないように、送信機からの出力を制限して利用されている。一般的に送信機からの送信電力により通信距離や伝送レートが決まるため、上述した規制値によって無線通信システムの性能が定まり、通信距離や伝送レートを大きくすることがない。
上述した規制値は、干渉が起きないように、単位周波数あたりの送信電力で規定されている。送信信号スペクトルを拡散することにより、単位周波数あたりの電力値が低下する。したがって、これを利用することにより、干渉の影響を抑えつつ、全送信信号電力を大きくすることが可能となる。一般的なスペクトル拡散手段として拡散符号や周波数ホッピングを用いた技術があるが、ハードウェア量がさらに大きくなり、消費電力のさらなる増加をもたらすという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、無線通信システムを簡易化し、製造コストおよび消費電力を低減することにある。
他の目的は、簡易な構成で送信信号スペクトルの単位周波数あたりの電力値を低減し、無線通信システムの性能を確保しつつ他の無線通信システムへの干渉を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明に係る無線送信方法は、入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信方法であって、前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成するステップと、前記矩形波信号のパルス幅を前記矩形波信号ごとに制御するステップと、前記矩形波信号によりアンテナを駆動し送信信号を出力するステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る無線通信方法は、入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信方法であって、前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成するステップと、前記矩形波信号が生成されるタイミングを前記矩形波信号ごとに制御するステップと、前記矩形波信号によりアンテナを駆動し送信信号を出力するステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る無線通信方法は、入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信方法であって、前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して2以上のパルスからなる矩形波信号を生成するステップと、前記矩形波信号を構成する前記パルスが生成される時間間隔を前記矩形波信号ごとに制御するステップと、前記矩形波信号によりアンテナを駆動し送信信号を出力するステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
これらの無線送信方法において、前記矩形波信号を生成するステップは、前記ディジタル信号における2状態何れかのビットに対応して前記矩形波信号を生成するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る無線送信機は、入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信機であって、前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成し出力する矩形波信号生成手段と、この矩形波信号生成手段により生成される前記矩形波信号のパルス幅を前記矩形波信号ごとに制御するパルス幅制御手段と、前記矩形波信号生成手段から入力される前記矩形波信号により駆動されるアンテナとを備えることを特徴とする。
ここで、前記矩形波信号生成手段は、前記ディジタル信号を遅延させる遅延回路と、前記ディジタル信号の状態と前記遅延回路の出力信号の状態とが互いに同じか異なるかで出力電圧を変えることにより前記矩形波信号を生成する演算回路とを備え、前記パルス幅制御手段は、前記遅延回路の遅延量を制御するものであってもよい。
【0014】
また、本発明に係る無線送信機は、入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信機であって、前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成し出力する矩形波信号生成手段と、この矩形波信号生成手段により前記矩形波信号が生成されるタイミングを前記矩形波信号ごとに制御するタイミング制御手段と、前記矩形波信号生成手段から入力される前記矩形波信号により駆動されるアンテナとを備えることを特徴とする。
ここで、前記ディジタル信号とクロック信号とに基づき前記ディジタル信号をこのディジタル信号における2状態何れかのビットに対応して状態遷移する信号に変換し前記矩形波信号生成手段に出力する信号変換手段を更に備え、前記タイミング制御手段は、前記クロック信号の周波数を制御するものであってもよい。
【0015】
また、本発明に係る無線送信機は、入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信機であって、前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して2以上のパルスからなる矩形波信号を生成し出力する矩形波信号生成手段と、前記矩形波信号を構成する前記パルスが生成される時間間隔を前記矩形波信号ごとに制御する生成間隔制御手段と、前記矩形波信号生成手段から入力される前記矩形波信号により駆動されるアンテナとを備えることを特徴とする。
ここで、前記矩形波信号生成手段は、縦続接続された複数の矩形波信号生成回路を備え、前記矩形波信号生成回路は、入力信号を遅延させる遅延回路と、前記入力信号の状態と前記遅延回路の出力信号の状態とが互いに同じか異なるかで出力電圧を変えることにより前記パルスを生成する演算回路とを備え、前記生成間隔制御手段は、2段目以降の矩形波信号生成回路に対し前記遅延回路の遅延量を制御するものであってもよい。
【0016】
また、上述した無線送信機は、前記ディジタル信号をこのディジタル信号における2状態何れかのビットに対応して状態遷移する信号に変換し前記矩形波信号生成手段に出力する信号変換手段を更に備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る無線送信機では、ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成し、この矩形波信号でアンテナを駆動する。これにより、簡易な構成でパルスを生成し、搬送波を用いずに無線通信することが可能となる。したがって、本発明を用いる無線通信システムでは、搬送波を生成する電圧制御発振器やアップコンバージョンおよびダウンコンバージョンを行う乗算器等が不要となるので、システムを構成する無線送信機および無線受信機のハードウェア量を削減することができ、システムの簡易化、製造コストおよび消費電力の低減が可能となる。特に、無線送信機については、ディジタル信号処理がメインとなるので、高周波アナログ回路を大幅に削減し、大幅な製造コストおよび消費電力の低減が可能となる。
【0018】
また、本発明に係る無線送信機では、矩形波信号のパルス幅を矩形波信号ごとに制御することにより、パルス幅を固定した場合と比べて送信信号スペクトルが広帯域に拡散し、送信信号スペクトルのピーク値が小さくなる。したがって、アンテナ帯域の電力を一定に保ちつつ、単位周波数あたりの送信信号電力ピーク値を低減できるので、簡易な構成で他の無線通信システムへの干渉の影響を大幅に低減することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る無線送信機では、矩形波信号が生成されるタイミングを矩形波信号ごとに制御することにより、送信信号のデータレートが変わり、送信信号の線スペクトルの間隔が変わる。したがって、矩形波信号が生成されるタイミングを固定した場合と比べて、送信信号スペクトルのピーク値が小さくなる。したがって、簡易な構成で他の無線通信システムへの干渉の影響を大幅に低減することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る無線送信機では、矩形波信号を構成する2以上のパルスの生成時間間隔を矩形波信号ごとに制御する。送信信号スペクトルがパルス幅と生成時間間隔で決まる周波数成分から構成されるため、生成時間間隔を固定した場合と比べて送信信号スペクトルが広帯域に拡散し、送信信号スペクトルのピーク値が小さくなる。したがって、簡易な構成で他の無線通信システムへの干渉の影響を大幅に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態ついて詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線送信機の構成を示すブロック図である。図2は、この無線送信機の各部の信号波形の一例を示す図である。
図1に示す無線送信機は、データが「1」と「0」の状態にコード化されたディジタル信号(以下「データ信号」という)Dをそのデータ信号Dの状態「1」のビットに対応して状態遷移する信号S1に変換する信号変換部1と、信号変換部1から入力される信号S1の状態遷移に同期して矩形波信号S2を生成する矩形波信号生成部2と、矩形波信号生成部2により生成される矩形波信号S2のパルス幅Tを矩形波信号S2ごとに制御するパルス幅制御部3と、矩形波信号生成部2から供給される矩形波信号S2により駆動される送信アンテナ4とから構成される。なお、「矩形波信号」とは、電圧の立ち上がりから立ち下がりまで(場合によっては、立ち下がりから立ち上がりまで)のパルス的な電圧変化をいう。
【0022】
信号変換部1は更に、データ信号Dとこのデータ信号Dに同期したクロック信号C1との論理和を演算するAND回路11と、AND回路11の出力信号がクロック端子clkに入力されるDフリップフロップ回路(DFF)12と、DFF12の出力端子outに入力端子が接続され出力端子がDFF12の入力端子inに接続されたインバータ回路13とから構成される。
【0023】
データ信号Dとクロック信号C1とは、図2(A),(B)に示すように互いに同期している。このため、AND回路11の出力信号は、図2(C)に示すように、データ信号Dの状態「1」のとき、1ビットに対し1クロック分だけ状態が「1」となる。一方、DFF12の入力端子inにはその出力端子outから出力される出力信号S1の反転信号が入力されるので、クロック端子clkに入力されるAND回路11の出力信号の状態が「1」から「0」に遷移するごとに、出力信号S1の状態が「0」→「1」または「1」→「0」に遷移する。
したがって、信号S1は図2(D)に示すように、データ信号Dの状態「1」のビットに対応して状態遷移する。より具体的には、状態「1」のビットのDuty50%(中央)の位置で状態遷移する。言い換えれば、信号S1の立ち上がりおよび立ち下がりが、データ信号Dの状態「1」にビットに対応することになる。
【0024】
なお、信号変換部1は図1に示した構成に限らず、同等の機能を有するものであればよい。すなわち、データ信号Dを状態「0」のビットに対応して状態遷移する信号S1に変換するものであってもよい。また、状態「1」のビットのDuty0%(始まり)または100%(終わり)の位置で状態遷移する信号S1に変換するものであってもよい。
【0025】
また、矩形波信号生成部2は更に、信号S1を時間T遅延させて出力する遅延回路21と、信号S1と遅延回路21の出力信号(時間T遅延した信号S1)との排他的論理和(Exclusive OR,XOR)を演算する排他的論理和回路22とから構成される。信号S1と時間T遅延した信号S1との排他的論理和を演算することにより、図2(E)に示すように、信号S1の立ち上がりおよび立ち下がりに一致して、パルス幅Tの矩形波信号S2が生成される。なお、矩形波信号S2のスペクトルを図3に示す。
パルス幅制御部3は、遅延回路21の遅延量を制御する。遅延回路21の遅延量により矩形波信号S2のパルス幅Tが決まるので、遅延量の変化に合わせてパルス幅Tが変化する。
【0026】
矩形波信号生成部2で生成された矩形波信号S2が送信アンテナ4に供給されることにより、アンテナ帯域に応じて、送信アンテナ4から図2(F)に示すように矩形波信号S2に一致した高周波パルス信号(RFパルス信号)が出力される。したがって、無線送信機からは、データ信号Dの状態「1」に対応してRFパルス信号が出力されることとなる。
【0027】
ここで、矩形波信号生成部2の遅延回路21およびパルス幅制御部3の構成例について説明する。図4は、その構成例を示す回路図である。
遅延回路21は、図4(A)に示すようなDFF51で実現することができる。DFF51では、供給されるクロック信号C2の周波数によって遅延量が決まり、矩形波信号S2のパルス幅Tが決まる。したがって、パルス幅制御部3としてクロック制御回路61を用い、DFF51に供給するクロック信号C2の周波数を変化させることにより、矩形波信号S2のパルス幅Tを変化させることができる。
【0028】
遅延回路21はまた、インバータ回路を複数段つなげても実現できる。図4(B)には、インバータ回路52,55を2段つなげて遅延回路21を実現する例が示されている。インバータ回路52,55の出力端子がMOSスイッチ53,56および容量54,57を介して接地されている。MOSスイッチ53,56のゲート端子電圧Vによってインバータ回路52,55の出力のRC時定数が決まり、遅延量が決まる。したがって、パルス幅制御部3として電圧制御回路62を用い、MOSスイッチ53,56のゲート端子電圧Vを変化させることにより、矩形波信号S2のパルス幅Tを変化させることができる。この場合には、クロック信号を変化させる必要がないので、パルス幅制御部3を簡易に実現することができる。
【0029】
図4(B)はMOSスイッチ53,56を可変抵抗器として用いる例であるが、MOSスイッチ53,56の代わりに一般的な可変抵抗器を用いて遅延回路21を実現してもよい。また、MOSスイッチ53,56の代わりに抵抗器を用い、容量54,57の代わりに可変容量を用いて遅延回路21を実現し、容量を変化させることにより矩形波信号S2のパルス幅Tを変化させるようにしてもよい。
なお、インバータ回路を4段以上の偶数段をつなげて遅延回路21を実現することもできる。インバータ回路を3段以上の奇数段をつなげて遅延回路21を実現することもできが、この場合には排他的論理和回路(Exclusive OR回路)22の代わりにExclusive NOR回路を用いる必要がある。
いずれにせよ、遅延回路21およびパルス幅制御部3は、図4に示した構成には限定されない。
【0030】
次に、矩形波信号S2を送信アンテナ4に供給することにより、送信アンテナ4からRFパルス信号が出力される原理について説明する。ここでは、矩形波信号生成部2が遅延回路21と排他的論理和回路22とから構成される場合を例にとる。
【0031】
図5は、矩形波信号および矩形波信号に含まれる高調波信号成分を示す概念図である。矩形波信号は、矩形波信号と同周期の正弦波信号成分(基本波、1次高調波)、3倍の周波数の正弦波信号成分(3次高調波)、5倍の周波数の正弦波信号成分(5次高調波)、という奇数(2n+1、nは非負整数)次の高調波信号成分からなる。したがって、図2(E)に示す矩形波信号S2のようなパルス幅Tのパルス信号には、2Tを1周期とした正弦波信号およびその高次高調波信号が含まれることになる。このため、中心周波数が1/2Tまたはその奇数倍のアンテナを送信アンテナ4として用いることで、送信アンテナ4を上述した正弦波信号またはその高次高調波信号で駆動し、RFパルス信号を送信することが可能となる。
【0032】
具体的には、矩形波信号S2のパルス幅Tを5nsとすると、矩形波信号S2の基本波成分の信号周波数は100MHz(1周期は10ns)となり、高次高調波成分の信号周波数は300MHz、500MHz・・・となる。このため、中心周波数が100MHz、300MHz、500MHzといったアンテナを送信アンテナ4として用いることで、送信アンテナ4からRFパルス信号を送信することが可能となる。
2n+1次高調波成分の信号振幅は、図5に示すように矩形波信号の信号振幅に比べ1/(2n+1)になる(3次高調波では1/3、5次高調波では1/5)。したがって、高次の高調波成分を送信する場合ほど、送信信号電力が小さくなる。
【0033】
図6は、矩形波信号S2の3次高調波成分を送信する場合の信号波形を示す概念図である。図6(A)に示すように矩形波信号S2のパルス幅Tを5nsとすると、図6(B)に示す矩形波信号S2の3次高調波成分の信号周波数は300MHzとなる。したがって、この矩形波信号S2を中心周波数が300MHzの送信アンテナ4に供給すると、送信アンテナ4からは300MHzの周波数で振動する図6(C)に示すようなRFパルス信号が出力される。
このRFパルス信号のパルス幅は、送信アンテナ4のインパルス応答およびアンテナ帯域で決まる。アンテナ帯域が広い場合にはこのパルス幅は短くなり、逆にアンテナ帯域が狭い場合にはこのパルス幅は長くなる。
矩形波信号S2のスペクトルが示されている図3を参照すると、矩形波信号S2の3次高調波成分の周波数は3/2Tに相当するから、3次高調波成分を送信アンテナ4から出力する場合には、図3に示すような帯域の送信アンテナ4を用意すればよい。
【0034】
一般的な近距離の微弱無線通信では、その送信信号電力がかなり小さな値に制限されている。このため、矩形波信号S2の基本波成分を利用すると、送信信号電力が大きく、規制値を超えてしまうことがある。この場合には、減衰器で信号電力を弱めて送信すればよい。また、送信したい信号周波数帯に対応した高次高調波成分を含む矩形波信号S2を生成し、この矩形波信号S2の3次高調波、5次高調波といった信号成分を送信するようにしてもよい。この場合には、高次高調波になるほど信号振幅が小さくなり送信信号電力が小さくなるので、規制値に適合した信号電力の高次高調波成分を選択して使えばよい。高次高調波成分を送信する場合には、基本波成分を送信する場合に比べて、次のような効果も得られる。
【0035】
矩形波信号S2の基本波成分を送信する場合には、遅延回路21で実現しなければならない遅延量が高次高調波成分を送信する場合に比べて短くなり、遅延回路21の実現がより難しくなる。具体的には、500MHz帯のRFパルス信号を送信する場合に、矩形波信号S2の基本波成分を利用すると、1nsの遅延量を実現する必要がある。これに対し、矩形波信号S2の5次高調波成分を利用するならば、5nsの遅延量を実現すればよい。遅延回路21を図4(A)に示すようにDFF51で実現する場合では、前者は1GHzのクロック信号C2が必要になるのに対し、後者は200MHzのクロック信号C2であればよく、クロック生成が高次高調波成分を利用する場合の方が容易である。
さらに、遅延量が小さいほど、矩形波信号S2を出力する排他的論理和回路22も高速に動作する必要がある。遅延量が大きければ、排他的論理和回路22に要求される動作速度は緩和される。
また、規制値に対応した高次高調波成分を利用することで、基本波成分を利用する場合に必要となる減衰器を用いる必要がなくなるといった効果も得られる。
【0036】
次に、図7および図8を参照し、パルス幅制御部3を用いて矩形波信号S2のパルス幅Tを矩形波信号S2ごとに制御することにより得られる効果について説明する。図7は、パルス幅の異なる3つの矩形波信号の信号波形を示す概念図である。3つの矩形波信号S21,S22,S23のパルス幅をそれぞれT1,T2,T3(T1<T2<T3)とする。図8は、3つの矩形波信号S21,S22,S23の信号スペクトルを示す概念図である。図8(A)には、矩形波信号S22の信号スペクトルを実線で、矩形波信号S21,S23のスペクトルを点線で示している。
【0037】
矩形波信号S22の信号スペクトルを中心に考えると、矩形波信号S21はパルス幅が矩形波信号S22よりも短いので、その信号スペクトルは図8(A)に示すように矩形波信号S22に比べより高周波側へシフトする。一方、矩形波信号S23はパルス幅が矩形波信号S22よりも長いので、その信号スペクトルは図8(A)に示すように矩形波信号S22に比べより低周波側へシフトする。
【0038】
パルス幅制御部3を用いて矩形波信号S2のパルス幅をT1→T2→T3→T1→T2→T3というように時間とともに周期的に変化させると、送信信号の信号スペクトルは矩形波信号S21,S22,S23の信号スペクトルの平均となり、図8(B)に実線で示すようになる。この図から分かるように、矩形波信号S2のパルス幅を固定した場合に比べ、時間とともに変化させることにより、送信信号スペクトルが広帯域に拡散され、送信信号スペクトルのピーク値が小さくなる。パルス幅の変化量を大きくするほど、またその変化速度を速くするほど送信信号スペクトルが広帯域に拡散され、単位周波数あたりの送信信号電力ピーク値が小さくなる。
したがって、矩形波信号S2のパルス幅を矩形波信号S2ごとに制御することにより、アンテナ帯域の電力を一定に保ちつつ、単位周波数あたりの送信信号電力ピーク値を低減できるので、他の無線通信システムへの干渉の影響を低減することが可能となる。
【0039】
このような干渉低減効果は、矩形波信号S2のパルス幅Tを徐々に長くする方向および短くする方向に変化させても、ランダムに変化させても得ることができる。また、必ずしも矩形波信号S2ごとにそのパルス幅Tを変化させる必要はなく、同じパルス幅Tの矩形波信号S2を複数回繰り返し生成してから、パルス幅Tを変化させるようにしてもよい。要は、矩形波信号S2ごとにそのパルス幅Tを制御した結果、所定時間の送信信号電力計測において、ピーク値の低減効果が得られるようにパルス幅Tを変化させればよい。この際、制御したパルス幅の出現頻度が統計的にほぼ同等であることが好ましい。
なお、後述する他の実施の形態はそれぞれ他のパラメータを矩形波信号ごとに制御するものであるが、この制御についての考え方は本実施の形態と同様である。
【0040】
次に、本実施の形態に係る無線送信機に対応する無線受信機について説明する。図9は、無線受信機の構成例を示すブロック図である。
本実施の形態に係る無線送信機からは、データ信号Dの状態「1」,「0」に対応してRFパルス信号がオンオフされて送信されるので、無線受信機ではこのオンオフ信号を検波すればよい。したがって、図9(A)に示す無線受信機は、RFパルス信号を受信する受信アンテナ101と、受信された信号を増幅するローノイズアンプ(LNA)102と、増幅された信号をダイオード検波を用いて包絡線検波するダイオード103aと、検波された信号をAD変換するADコンバータ104を有する。
【0041】
図9(A)におけるダイオード103aの代わりに図9(B)における乗算器103bを用いて、ローノイズアンプ102により増幅された信号を二乗検波を用いて包絡線検波するようにしてもよい。
なお、図9(A),(B)におけるADコンバータ104によるAD変換は、検波された信号からRFパルス信号のオンオフを判定していることになるので、ADコンバータ104の代わりにコンパレータを用いてRFパルス信号のオンオフを判定するようにしてもよい。
また、図9(A),(B)に示す無線受信機では、RF信号をそのまま包絡線検波しているが、RF信号を中間周波数にダウンコンバートしてから包絡線検波する構成にしてもよい。この場合には、ダウンコンバートを行う回路が必要になるが、RF信号を直接包絡線検波する場合に比べて包絡線検波の実現が容易になる。
【0042】
本実施の形態に係る無線送信機では、簡易な構成でパルスを生成し、搬送波を用いずに無線通信することが可能となる。したがって、本実施の形態に係る無線送信機およびそれに対応する無線受信機では、搬送波を生成する電圧制御発振器501,604やアップコンバージョンおよびダウンコンバージョンを行う乗算器502,605等が不要となるので、送受信機のハードウェア量を削減することができ、送受信機からなる無線通信システムの簡易化、製造コストおよび消費電力の低減が可能となる。特に、無線送信機については、ほぼすべてをディジタル回路で構成でき、ディジタル信号処理がメインとなるので、高周波アナログ回路を大幅に削減し、大幅な製造コストおよび消費電力の低減が可能となる。
【0043】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る無線送信機は、矩形波信号S2が生成されるタイミングを矩形波信号S2ごとに制御することにより、送信信号スペクトルを拡散し、他の無線通信システムへの干渉の影響を低減するものである。
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る無線送信機の構成を示すブロック図である。この図10では、図1に示した構成要素と同一の構成要素に対しては、図1と同一符号を用いている。図11は、この無線送信機の各部の信号波形の一例を示す図である。
【0044】
図10に示す無線送信機は、信号変換部1に供給されるクロック信号C1の周波数を制御するクロック制御回路7を有する。ここでは、パルス幅制御部3aは、矩形波信号生成部2により生成される矩形波信号S2のパルス幅Tを変化させず、一定にするものとする。
【0045】
クロック制御回路7を用いて図11(B),(C)に示すようにクロック信号C1の周波数を変化させると、信号変換部1から出力される信号S1の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングが、図11(D)に示すようにクロック信号C1の周波数に対応して変化する。矩形波信号生成部2は信号S1の状態遷移に同期して矩形波信号S2を生成するので、矩形波信号S2が生成されるタイミングが図11(E)に示すようにクロック信号C1の周波数に対応して変化することになる。したがって、クロック制御回路7は、矩形波信号S2が生成されるタイミングを矩形波信号S2ごとに制御するタイミング制御手段として作用する。
【0046】
図12は、矩形波信号S2の高次高調波成分のスペクトルを示す概念図である。この図において、(A)はクロック信号C1の周波数を固定した場合、(B)は変化させた場合をそれぞれ示している。
矩形波信号S2の高次高調波成分のスペクトルは、図12(A)に示すような多数の線スペクトルからなる。線スペクトルの間隔はデータレートで決まる。
上述したように矩形波信号S2が生成されるタイミングを変化させることは、矩形波信号S2のデータレートを変化させることに相当する。このため、矩形波信号S2の高次高調波成分のスペクトルを構成する線スペクトルの間隔が、図12(B)に実線で示すように変わる。
【0047】
したがって、クロック信号C1の周波数を矩形波信号S2ごとに制御することにより、周波数を固定した場合と比べて、時間平均した矩形波信号S2のスペクトルのピーク電力が低下する。したがって、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、送信信号スペクトルを拡散させ、単位周波数あたりの送信信号電力ピーク値を低減でき、他の無線通信システムへの干渉の影響を低減することが可能となる。
【0048】
ただし、送信機側においてクロック信号C1により矩形波信号S2が生成されるタイミングを変化させることは、受信機側においてパルス信号を検波する際のジッタにつながる。このため、送信信号スペクトルを広範囲に拡散させるため、矩形波信号S2の生成タイミングを大きく変化させると、ジッタが大きくなる虞がある。このため、ジッタがあまり大きくならない範囲で送信信号スペクトルを拡散させることが好ましい。
【0049】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る無線送信機は、2以上のパルスからなる矩形波信号を生成し、そのパルスの生成時間間隔を制御することにより、送信信号スペクトルを拡散し、他の無線通信システムへの干渉の影響を低減するものである。
図13は、本発明の第3の実施の形態に係る無線送信機の構成を示すブロック図である。この図13では、図1および図10に示した構成要素と同一の構成要素に対しては、図1および図10と同一符号を用いている。図14は、この無線送信機の各部の信号波形の一例を示す図である。
【0050】
図13に示す無線送信機は、図1に示した無線送信機の矩形波信号生成部2およびパルス幅制御部3に代えて、信号変換部1から入力される信号S1の状態遷移に同期して2つのパルスからなる矩形波信号S4を生成する矩形波信号生成部20と、矩形波信号生成部20により生成されるパルスのパルス幅T1を制御するパルス幅制御部3aと、矩形波信号生成部20により生成されるパルスの生成時間間隔T2を矩形波信号S4ごとに制御する生成時間間隔制御部8とを用いるものである。
【0051】
矩形波信号生成部20は更に、縦続接続された第1および第2の矩形波信号生成回路2a,2bから構成される。
第1の矩形波信号生成回路2aは、図1における矩形波信号生成部2と同等のものであり、遅延回路21aと排他的論理和回路22aとから構成され、信号変換部1から入力される信号S1の状態遷移に同期して、図14(A)に示すようなパルス幅T1の矩形波信号S3を生成する。矩形波信号S3のパルス幅T1が遅延回路21aの遅延量で決まることは、上述したとおりである。信号S1はデータ信号Dの状態「1」のビットに対応して状態遷移するので、第1の矩形波信号生成回路2aからはデータ信号Dの状態「1」のビットに対応して矩形波信号S3が出力される。
【0052】
第2の矩形波信号生成回路2bは、遅延回路21bと排他的論理和回路22bとから構成される。遅延回路21bは、第1の矩形波信号生成回路2aから入力される矩形波信号S3を時間T2遅延させて出力する。排他的論理和回路22bは、矩形波信号S3と遅延回路21bの出力信号(時間T2遅延した矩形波信号S3)との排他的論理和を演算する。パルス幅T1の矩形波信号S3と時間T2遅延した矩形波信号S3との排他的論理和を演算することにより、図14(B)に示すように、パルス幅T1の2つのパルスがT2の時間間隔で生成される。第2の矩形波信号生成回路2bからは、データ信号Dの状態「1」のビットに対応して2つのパルスが出力されることになる。これらのパルスを矩形波信号S4と呼ぶ。
【0053】
パルス幅制御部3aは、遅延回路21aの遅延量を一定の値に固定する。遅延回路21aの遅延量により矩形波信号S3のパルス幅T1が決まるので、本実施の形態ではパルス幅T1が一定の値に固定される。
生成時間間隔制御部8は、遅延回路21bの遅延量を制御する。遅延回路21bの遅延量により矩形波信号S4を構成する2つのパルスの生成時間間隔T2が決まるので、遅延量の変化に合わせて生成時間間隔T2が変化する。
【0054】
図14(B)に示す矩形波信号S4の信号スペクトルは、矩形波信号S4を構成する2つのパルスのパルス幅T1と生成時間間隔T2で決まる周波数成分からなる。生成時間間隔T2を矩形波信号S4ごとに制御することにより、生成時間間隔を固定した場合と比べて、矩形波信号S4の信号スペクトルが広帯域に拡散される。その理由は次のように考えればよい。
矩形波信号S4を構成する2つのパルスのうち2つ目のパルスに着目すると、2つのパルスの生成時間間隔T2を変化させる操作は、第2の実施の形態で行った矩形波信号が生成されるタイミングを変化させる操作を2つ目のパルスのみに適用しているとみなすことができる。したがって、本実施の形態においても第2の実施形態と同様の作用により、送信信号スペクトルを拡散させ、単位周波数あたりの送信信号電力ピーク値を低減でき、他の無線通信システムへの干渉の影響を低減することが可能となる。
【0055】
次に、矩形波信号生成部20、パルス幅制御部3aおよび生成間隔制御部8の構成例について説明する。図15は、その構成例を示す回路図である。
図1における遅延回路21と同様に、遅延回路21a,21bは図15(A)に示すようなDFF51a,51bで実現することができる。
【0056】
遅延回路21aをDFF51aで実現する場合には、供給されるクロック信号C2aの周波数によって遅延量が決まり、矩形波信号S3のパルス幅T1が決まる。したがって、パルス幅制御部3aとしてクロック制御回路61aを用い、クロック信号C2aの周波数を調整することにより、矩形波信号S3のパルス幅T1を調整することができる。本実施の形態では、クロック信号C2aの周波数を固定し、矩形波信号S3のパルス幅T1を固定する。なお、必要に応じてクロック信号C2aの周波数を変化させることにより、矩形波信号S2のパルス幅Tを変化させることも可能である。
【0057】
遅延回路21bをDFF51bで実現する場合には、供給されるクロック信号C2bの周波数によって遅延量が決まり、矩形波信号S4を構成する2つのパルスの生成時間間隔T2が決まる。したがって、生成間隔制御部8としてクロック制御回路61bを用い、クロック信号C2bの周波数を変化させることにより、2つのパルスの生成時間間隔T2を変化させることができる。
【0058】
遅延回路21a,21bはまた、インバータ回路を複数段つなげても実現できる。図15(B)には、インバータ回路52a,55aを2段つなげて遅延回路21aを実現し、インバータ回路52b,55bを2段つなげて遅延回路21bを実現する例が示されている。
図15(B)に示す例では、インバータ回路52a,55a,52b,55bの出力端子がMOSスイッチ53a,56a,53b,56bおよび容量54a,57a,54b,57bを介して接地されている。MOSスイッチ53a,56aのゲート端子電圧V1によってインバータ回路52a,55aの出力のRC時定数が決まり、MOSスイッチ53b,56bのゲート端子電圧V2によってインバータ回路52b,55bの出力のRC時定数が決まり、それぞれの遅延量が決まる。
【0059】
したがって、パルス幅制御部3aとして電圧制御回路62aを用い、MOSスイッチ53a,56aのゲート端子電圧V1を調整とすることにより、矩形波信号S3のパルス幅T1を調整することができる。本実施の形態では、ゲート端子電圧V1を固定し、矩形波信号S3のパルス幅T1を固定する。なお、必要に応じてゲート端子電圧V1を変化させることにより、矩形波信号S2のパルス幅Tを変化させることも可能である。
また、生成間隔制御部8として電圧制御回路62bを用い、MOSスイッチ53b,56bのゲート端子電圧V2を変化させることにより、2つのパルスの生成時間間隔T2を変化させることができる。
【0060】
なお、矩形波信号生成部20、パルス幅制御部3aおよび生成間隔制御部8は、図15に示した構成には限定されない。
【0061】
本実施の形態では、図13に示したように矩形波信号生成部20に縦続接続された2つの矩形波信号生成回路2a,2bを設け、データ信号Dの状態「1」のビットに対応して2つのパルスからなる矩形波信号S4を出力できるようにした。同様に、矩形波信号生成部に縦続接続された3つ以上の矩形波信号生成回路を設け、データ信号Dの状態「1」のビットに対応して3つ以上のパルスからなる矩形波信号を出力できるようにしてもよい。この場合には、生成時間間隔制御部8を用いて、2段目以降の矩形波信号生成回路に対し遅延回路の遅延量を制御する。2段目以降の遅延量をすべて同じ値にしてもよいし、それぞれ異なる値にしてもよい。
【0062】
なお、第1から第3までの実施の形態は組み合わせて実施してもよい。例えば第1と第2の実施の形態を組み合わせ、矩形波信号S2のパルス幅Tを矩形波信号S2ごとに制御するとともに、矩形波信号S2が生成されるタイミングを矩形波信号S2ごとに制御することによっても、送信信号スペクトルを広帯域に拡散させ、単位周波数あたりの送信信号電力ピーク値を低減でき、他の無線通信システムへの干渉の影響を低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば近距離の微弱無線通信に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線送信機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す無線送信機の各部の信号波形の一例を示す図である。
【図3】矩形波信号生成部から出力される矩形波信号のスペクトルを示す図である。
【図4】図1における矩形波信号生成部の遅延回路およびパルス幅制御部の構成例を示す回路図である。
【図5】矩形波信号および矩形波信号に含まれる高調波信号成分を示す概念図である。
【図6】矩形波信号生成部から出力される矩形波信号の3次高調波成分を送信する場合の信号波形を示す概念図である。
【図7】異なる3つの矩形波信号の信号波形を示す概念図である。
【図8】図7に示す3つの矩形波信号の信号スペクトルを示す概念図である。
【図9】図1に示す無線送信機に対応する無線受信機の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る無線送信機の構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示す無線送信機の各部の信号波形の一例を示す図である。
【図12】矩形波信号生成部から出力される矩形波信号の高次高調波成分のスペクトルを示す概念図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る無線送信機の構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す無線送信機の各部の信号波形の一例を示す図である。
【図15】矩形波信号生成部、パルス幅制御部および生成間隔制御部の構成例を示す回路図である。
【図16】搬送波を用いる従来の無線通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
1…信号変換部、2,20…矩形波信号生成部、2a,2b…矩形波信号生成回路、3,3a…パルス幅制御部、4…送信アンテナ、7…クロック制御回路、8…生成間隔制御部、11…AND回路、12…DFF(Dフリップフロップ回路)、13…インバータ回路、21,21a,21b…遅延回路、22,22a,22b…排他的論理和回路、51,51a,51b…DFF(Dフリップフロップ回路)、52,52a,52b,55,55a,55b…インバータ回路、53,53a,53b,56,56a,56b…CMOSスイッチ、54,54a,54b,57,57a,57b…容量、61,61a,61b…クロック制御回路、62,62a,62b…電圧制御回路、101…受信アンテナ、102…ローノイズアンプ、103a…ダイオード、103b…乗算器、104…ADコンバータ、C1,C2,C2a,C2b…クロック信号、D…データ信号、S1…信号変換部の出力信号、S2〜S4…矩形波信号、V,V1,V2…ゲート端子電圧。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信方法であって、
前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成するステップと、
前記矩形波信号のパルス幅を前記矩形波信号ごとに制御するステップと、
前記矩形波信号によりアンテナを駆動し送信信号を出力するステップと
を備えることを特徴とする無線送信方法。
【請求項2】
入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信方法であって、
前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成するステップと、
前記矩形波信号が生成されるタイミングを前記矩形波信号ごとに制御するステップと、
前記矩形波信号によりアンテナを駆動し送信信号を出力するステップと
を備えることを特徴とする無線送信方法。
【請求項3】
入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信方法であって、
前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して2以上のパルスからなる矩形波信号を生成するステップと、
前記矩形波信号を構成する前記パルスが生成される時間間隔を前記矩形波信号ごとに制御するステップと、
前記矩形波信号によりアンテナを駆動し送信信号を出力するステップと
を備えることを特徴とする無線送信方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の無線送信方法において、
前記矩形波信号を生成するステップは、前記ディジタル信号における2状態何れかのビットに対応して前記矩形波信号を生成することを特徴とする無線送信方法。
【請求項5】
入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信機であって、
前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成し出力する矩形波信号生成手段と、
この矩形波信号生成手段により生成される前記矩形波信号のパルス幅を前記矩形波信号ごとに制御するパルス幅制御手段と、
前記矩形波信号生成手段から入力される前記矩形波信号により駆動されるアンテナと
を備えることを特徴とする無線送信機。
【請求項6】
請求項5に記載の無線送信機において、
前記矩形波信号生成手段は、前記ディジタル信号を遅延させる遅延回路と、前記ディジタル信号の状態と前記遅延回路の出力信号の状態とが互いに同じか異なるかで出力電圧を変えることにより前記矩形波信号を生成する演算回路とを備え、
前記パルス幅制御手段は、前記遅延回路の遅延量を制御することを特徴とすることを特徴とする無線送信機。
【請求項7】
入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信機であって、
前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して矩形波信号を生成し出力する矩形波信号生成手段と、
この矩形波信号生成手段により前記矩形波信号が生成されるタイミングを前記矩形波信号ごとに制御するタイミング制御手段と、
前記矩形波信号生成手段から入力される前記矩形波信号により駆動されるアンテナと
を備えることを特徴とする無線送信機。
【請求項8】
請求項7に記載の無線送信機において、
前記ディジタル信号とクロック信号とに基づき前記ディジタル信号をこのディジタル信号における2状態何れかのビットに対応して状態遷移する信号に変換し前記矩形波信号生成手段に出力する信号変換手段を更に備え、
前記タイミング制御手段は、前記クロック信号の周波数を制御することを特徴とする無線送信機。
【請求項9】
入力されたディジタル信号を無線送信する無線送信機であって、
前記ディジタル信号の1ビットのデータに対応して2以上のパルスからなる矩形波信号を生成し出力する矩形波信号生成手段と、
前記矩形波信号を構成する前記パルスが生成される時間間隔を前記矩形波信号ごとに制御する生成間隔制御手段と、
前記矩形波信号生成手段から入力される前記矩形波信号により駆動されるアンテナと
を備えることを特徴とする無線送信機。
【請求項10】
請求項9に記載の無線送信機において、
前記矩形波信号生成手段は、縦続接続された複数の矩形波信号生成回路を備え、
前記矩形波信号生成回路は、入力信号を遅延させる遅延回路と、前記入力信号の状態と前記遅延回路の出力信号の状態とが互いに同じか異なるかで出力電圧を変えることにより前記パルスを生成する演算回路とを備え、
前記生成間隔制御手段は、2段目以降の矩形波信号生成回路に対し前記遅延回路の遅延量を制御することを特徴とする無線送信機。
【請求項11】
請求項5,6,9および10の何れか1項に記載の無線送信機において、
前記ディジタル信号をこのディジタル信号における2状態何れかのビットに対応して状態遷移する信号に変換し前記矩形波信号生成手段に出力する信号変換手段を更に備えることを特徴とする無線送信機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−115217(P2006−115217A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300539(P2004−300539)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】