説明

無線送受信装置、及び無線送受信装置の送信電力計測方法

【課題】無線通信装置が自装置の送信電力を計測するための回路規模を削減する。
【解決手段】無線送信部11は、送信キャリアを含む送信信号を生成する。無線受信部14は、送信キャリアと実質的に同一周波数の受信キャリアを含む受信信号の周波数ダウンコンバートを行うダウンコンバータ140を含む。送受分離回路12は、無線送信部11と結合されるポートP1、無線受信部14と結合されるポートP2、アンテナ13と結合されるポートP3を有する。送受分離回路12は、ポートP1に入力される送信信号をポートP3に出力し、ポートP3に入力される受信信号をポートP2に出力する。また、送信電力制御部16は、ポートP1からポートP2に漏洩する送信信号の漏洩成分をダウンコンバータ140においてダウンコンバートすることで得られる低周波信号に基づいて、送信信号の送信電力に関する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信装置に関し、特に、パッシブ型RFID(Radio Frequency Identification)のリーダ装置のように、送受信に同一のキャリア周波数を使用するTDD(Time Division Duplex)方式の無線送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブ型のRFIDシステムでは、無線タグはリーダ装置から送信される無線波を電力として動作する。例えば、パッシブ型の無線タグは、リーダから送信された無変調のキャリアを反射する際に無線タグ固有の識別情報に基づいてインピーダンスを変化させることで、ASK変調された反射波を生成する。この変調された反射波はバックスキャッタ信号と呼ばれる。リーダは、無線タグからの応答としてバックスキャッタ信号を受信する。このように、パッシブ型のRFIDシステムは、送受信に同一のキャリア周波数を使用するTDD(Time Division Duplex)方式を採用している。加えて、パッシブ型のRFIDシステムにおけるリーダは、無線タグが無線信号を送信する間も、バックスキャッタ信号の生成必要な無変調のキャリアを継続的に送信している。
【0003】
ところで、無線通信に利用可能な周波数帯域やその最大電力は、各国の法律等によって規制されている。また、無線通信装置の送信電力を抑制することは消費電力の低下に寄与する。したがって、一般的な無線通信装置は、送信電力を計測する回路及びこの計測結果に基づいて送信電力に関する制御を行う機構を有する(例えば特許文献1〜7を参照)。なお、送信電力に関する制御には様々なものがある。送信電力に関する制御の具体例は、(a)送信電力が許容範囲にあることを送信電力の計測値によって確認すること、(b)送信電力が所望値に近づくように送信信号の利得を調整すること、(c)送信電力の異常を検知した場合に送信出力を停止すること、等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−332918号公報
【特許文献2】特開2004−80290号公報
【特許文献3】特開平10−285058号公報
【特許文献4】特開平10−22757号公報
【特許文献5】特開平4−372227号公報
【特許文献6】特開昭63−138807号公報
【特許文献7】特開昭61−163729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜7に開示されているような従来の無線通信装置では、自装置の送信電力を計測するための回路が、通信相手から受信した無線信号を復調するための受信回路と別個に設けられているため、回路構成が冗長であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、無線送信部、無線受信部、送受分離回路および送信電力制御部を有する無線通信装置である。前記無線送信部は、送信キャリアを含む送信信号を生成する。前記無線受信部は、前記送信キャリアと実質的に同一周波数の受信キャリアを含む受信信号の周波数ダウンコンバートを行う周波数変換回路を含む。前記送受分離回路は、前記無線送信部に結合される第1のポート、前記無線受信部に結合される第2のポート、及びアンテナに結合される第3のポートを有する。前記送受分離回路は、前記第1のポートに入力される前記送信信号を前記第3のポートに出力し、前記第3のポートに入力される前記受信信号を前記第2のポートに出力する。また、前記送信電力制御部は、前記第1のポートから前記第2のポートに漏洩する前記送信信号の漏洩成分を前記周波数変換回路に供給してダウンコンバートすることで得られる低周波信号に基づいて、前記送信信号の送信電力に関する制御を行う。
【0007】
本発明の第2の態様は、無線通信装置の送信電力計測方法である。当該方法は、以下に示す2つのステップ(a)及び(b)を含む。
(a) (i)送信信号の変調処理を行う無線送信部、(ii)前記送信信号に含まれる送信キャリアと実質的に同一周波数の受信キャリアを含む受信信号の周波数ダウンコンバートを行う無線受信部、および(iii)前記送信信号の送信と前記受信信号の受信に供用されるアンテナ、の間に配置された送受分離回路を介して、前記無線送信部側から前記無線受信部側に漏洩する前記送信信号の漏洩成分を前記無線受信部に供給して周波数ダウンコンバートすること、および
(b)前記漏洩成分の周波数ダウンコンバートによって得られた低周波信号に基づいて、前記送信信号の送信電力に関する計測値を取得すること。
【0008】
上述した本発明の各態様によれば、無線受信部内の周波数ダウンコンバートを行うブロックを用いて無線送信部の送信電力の計測、送信電力の制御を行うことができる。よって、無線送信部から送信される送信信号のダウンコンバートを行う回路を別途設ける必要がなく、自装置の送信電力を計測するための回路規模を削減することができる。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明の各態様によれば、自装置の送信電力を計測するための回路規模を削減することが可能な無線通信装置および送信電力計測方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】送信電力制御の一例を示すフローチャートである。
【図3】発明の実施の形態2にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】発明の実施の形態3にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】発明の実施の形態4にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0012】
<発明の実施の形態1>
本実施の形態にかかる無線通信装置1は、パッシブ型の無線タグからデータ読み出しを行うRFIDリーダ、又は無線タグへのデータ書き込みも行うRFIDリーダ/ライタに適用可能である。無線タグからデータを読み出す場合、無線通信装置1は、リードコマンドを含む変調信号を送信する。また、リードコマンドに応答して行われる無線タグの送信期間において、無線通信装置1は、無線タグによるバックスキャッタ信号の生成に必要な無変調信号を送信と、無線タグからのバックスキャッタ信号の受信を行う。
【0013】
図1は、無線通信装置1の構成例を示すブロック図である。図1の構成例は、送受信ともにダイレクトコンバージョン方式を採用している。つまり、ローカル発振器15の発振周波数FLOと送信信号及び受信信号のキャリア周波数FRF は同一である。
【0014】
図1において、デジタル信号処理回路10は、無線タグとの間の通信制御、後述する無線送信部11に供給される送信シンボル列(デジタル送信ベースバンド信号)の生成、および無線受信部14から供給されるデジタル化された受信信号の解析を行う。デジタル送信ベースバンド信号の生成処理は、(i)コマンドや無線タグへの書き込みデータ(ライタの場合)を含む送信データ列の取得、(ii)送信データ列の冗長符号化、(iii)NRZ(Non Return Zero)符号又はマンチェスタ符号等によるライン符号化、(iv)プリアンブルおよび符号化後の送信データ列をシンボル列に変換するマッピング等を含む。なお、冗長符号化、ライン符号化、マッピングは、通信品質の確保、および通信規格への適合等のために必要に応じて行えばよい。また、デジタル信号処理回路10における受信信号の解析は、復調、逆インタリービング、復号化を行って無線タグからの送信データ(識別情報)を復元することを含む。
【0015】
デジタル信号処理回路10は、例えば、マイクロコントローラ及びDSP(Digital Signal Processor)等の組み合わせによって構成される。また、デジタル信号処理回路10は、一般的に、ベースバンドIC(Integrated circuit)、ベースバンドユニット等と呼ばれる1チップICとして構成される場合もある。
【0016】
無線送信部11は、送信シンボル列(送信ベースバンド信号)によって変調された送信キャリアを含む送信信号(変調信号)又は無変調の送信キャリアを含む送信信号(無変調信号)を生成する。生成された送信信号は、送受分離回路12を介してアンテナ13に供給され、無線タグに向けて送出される。無線送信部11は、D/A変換機能、変調機能、アップコンバート機能、及び増幅機能を有する。なお、図1の例は、ダイレクトコンバージョン方式を採用しているため、ローカル発振信号の変調とアップコンバートは同時に行われる。
【0017】
可変利得デジタルアンプ110は、デジタル送信ベースバンド信号の振幅レベルを調整する。D/Aコンバータ(DAC)111は、送信ベースバンド信号をアナログ信号に変換する。可変利得アナログアンプ112は、DAC111の出力信号の振幅を調整する。変調器113は、ローカル発振器15から供給される送信キャリア(周波数FRF)を送信ベースバンド信号で変調してRF帯域の送信信号を生成する。なお、送信ベースバンド信号が無信号であれば、無変調の送信キャリアを含む送信ベースバンド信号が生成される。パワーアンプ114は、RF帯域の送信信号を増幅して送受分離回路12に供給する。
【0018】
なお、図1に示す無線送信部11の構成は一例に過ぎず、これ以外にも様々な送信機アーキテクチャが既に存在している。当業者であれば、図1の構成例と公知技術を利用することによって、D/A変換機能、変調機能、アップコンバート機能、及び増幅機能を有する無線送信部11を適宜構成可能である。
【0019】
送受分離回路12は、送信信号と受信信号を分離する機能を有する。具体的には、送受分離回路12は、無線送信部11から第1ポートP1に入力される送信信号を、アンテナ13が接続された第3ポートP3に出力する。また、送受分離回路12は、アンテナ13から第3ポートP3に入力される無線タグからの受信信号(バックスキャッタ信号)を、無線受信部14が接続された第2ポートP2に出力する。
【0020】
なお、上述したように、パッシブ型のRFIDリーダ(リーダ/ライタ)では、送信キャリアと受信キャリアの周波数が同一であるうえ、無変調信号の送信と無線タグからのバックスキャッタ信号の受信を同時に並行して行わなければならない。このため、FDD(Frequency Division Duplex)システムで使用されるような送信側と受信側に通過帯域の異なるバンドパスフィルタが配置されたデュプレクサを送受分離回路12として使用することは困難である。また、通常のTDDシステムで利用されるような共用アンテナの接続先を無線送信部と無線受信部の間で時間的に切り替える高周波スイッチを送受分離回路12として使用することも困難である。そこで、パッシブ型のRFIDリーダ(リーダ/ライタ)に適用される送受分離回路12には、例えば、方向性結合器またはサーキュレータを使用するとよい。
【0021】
無線受信部14は、無線タグからアンテナ13に到達した受信信号(バックスキャッタ信号)を周波数ダウンコンバートした後に、これをデジタル信号に変換する。図1の例では、無線受信部14は、ダウンコンバータ140、フィルタ回路141、及びA/Dコンバータ(ADC)142を有する。ダウンコンバータ140は、受信信号をベースバンド帯域にダウンコンバートする。フィルタ回路141は、ローパスフィルタ(LPF)とハイパスフィルタ(HPF)を含む。このうちLPFは、高周波成分を除去しベースバンド帯域を選択するフィルタである。一方、HPFは、0Hz近傍を遮断するフィルタであり、ダウンコンバータ140での自己ミキシングに起因するDCオフセットを除去する。ADC142は、フィルタ回路141通過後のアナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0022】
ところで、本実施の形態の無線受信部14は、無線タグから受信した受信信号の周波数ダウンコンバート及びA/D変換に加えて、無線送信部11側から無線受信部14側に送受分離回路12を介して漏洩してくる送信信号の漏洩成分の周波数ダウンコンバート及びA/D変換も行う。この、送信信号の漏洩成分をダウンコンバートして得られる低周波信号を以下では「送信リーク信号」と呼ぶ。無線受信部14によってデジタル化された送信リーク信号は、後述する送信電力制御部16に供給される。
【0023】
送信電力制御部16は、無線受信部14によってデジタル化された送信リーク信号の電力レベルを検出する。送信電力制御部16において計測される送信リーク信号のエネルギーレベルは、無線送信部11による送信信号の送信電力の大きさを反映している。つまり、無線送信部11による送信電力が大きくなるにつれて送信電力制御部16において計測される送信リーク信号の電力レベルも大きくなる。
【0024】
送信電力制御部16は、送信リーク信号の電力レベルの計測結果に基づいて、無線送信部11による送信電力を制御する。送信電力の制御は様々に行うことができる。例えば、送信電力制御部16は、送信電力が許容範囲にあることを送信電力の計測値によって確認してもよい。また、送信電力制御部16は、送信リーク信号の電力レベルを指標として、送信電力が所望値に近づくように送信信号の利得を調整してもよい。この場合、送信信号の利得調整は、アンテナ13から放射される送信信号の電力レベルと送信リーク信号の電力レベルとの対応関係に基づいて行えばよい。この対応関係は、無線通信装置1の初期キャリブレーションにおいて予め求めておけばよい。また、送信電力制御部16は、送信リーク信号の電力レベルによって送信電力異常を検知した場合に、送信電力を低減させてもよい。
【0025】
なお、送信電力制御部16による送信リーク信号の電力レベルの計測は、無線タグからのバックスキャッタ信号が存在しない期間に行う必要がある。このため、送信リーク信号の電力レベルの計測は、無線タグに対するリードコマンド等を含む変調信号の送信を停止した後に、無変調信号を送信しながら行うとよい。しかし、無変調信号を送信しながら送信リーク信号の電力レベルの計測を行う場合、以下に述べる問題がある。すなわち、ダイレクトコンバージョン方式の無線受信部14は、DCオフセット除去のために受信信号の経路上に配置されたHPF(フィルタ回路141)を有する。一方で、ダイレクトコンバージョンでベースバンド帯域に変換された送信リーク信号(無変調信号の漏洩成分)のエネルギーの殆ど全てはDC付近(0Hz付近)に存在する。このため、フィルタ回路141内のHPFによって送信リーク信号が遮断されてしまい、ADC142での送信リーク信号の検出が困難となる。
【0026】
上記の問題に対処するため、送信電力制御部16は、送信リーク信号の電力レベル計測を行う場合に、HPFをバイパスするようフィルタ回路141を制御するとよい。また、図1の無線受信部14とは別の受信機構成では、DCオフセット除去のためにデジタルフィルタが使用される場合もある。この場合、送信電力制御部16は、DCオフセットキャンセルためのフィルタ係数更新を停止して所定値に収束させるようデジタルフィルタを制御するとよい。このようにすれば、無線受信部14におけるDCオフセット除去を一時的に停止させることができ、無変調送信信号の漏洩成分(送信リーク成分)の計測に無線受信部14を兼用することができる。
【0027】
続いて以下では、送信電力制御部16による送信電力制御の具体例について図2を用いて説明する。図2のフローチャートは、送信リーク成分の電力レベルの計測値を指標として無線送信部111内のアンプの利得を調整する例を示している。
【0028】
ステップS11において、送信電力制御部16は、無線タグ対するコマンドを含む変調信号の送信を抑止するよう、デジタル信号処理回路10及び無線送信部11に指示する。ステップS12では、送信電力制御部16は、フィルタ回路141内のHPFのバイパスを稼働させる。ステップS12では、送信電力制御部16は、無変調信号を送信するよう、デジタル信号処理回路10及び無線送信部11に指示する。
【0029】
ステップS13〜S15は、送信リーク成分の電力レベル計測値を用いた利得制御の手順を示している。ステップS13では、送信リーク信号の電力レベルを計測する。ステップS14では、送信リーク信号の電力レベル計測値が目標範囲内にあるか否かを判定する。送信リーク信号の電力レベル計測値が目標範囲外である場合(S14でNO)、送信電力制御部16は、無線送信部11内のアンプの利得を変更する。なお、図1の例では、送信電力制御部16が可変利得アナログアンプ112の利得を制御しているが、これに代えて又はこれと組み合わせて、可変利得デジタルアンプ110を制御してもよいし、RFパワーアンプ114を制御してもよい。
【0030】
送信リーク信号の電力レベル計測値が目標範囲に収束した場合(S14でYES)、送信電力制御部16は、フィルタ回路141内のHPFのバイパスを停止し、変調信号の送信抑止を解除する(ステップS16及びS17)。
【0031】
上述したように、送信リーク信号の電力レベル計測値を指標とする送信電力制御を行うためには、装置の出荷検査時等に初期キャリブレーションを行っておけばよい。これにより、無線送信部11、送受分離回路12、無線受信部14の特性ばらつきを補償することもできる。また、初期キャリブレーションを行っておくことにより、無線通信装置1を搭載したRFIDリーダの運用を開始した後に、無線通信装置1が自立的に送信電力の制御を行うことができる。具体的には、以下に述べる手順(1)〜(6)により初期キャリブレーションを行えばよい。
(1)送受分離回路12の第3ポートP3側のモニタ点(図1のMONITOR)に校正された電力測定器(スペクトラムアナライザ等)を接続する。
(2)フィルタ回路141内のHPFをバイパスモードとするか、DC遮断動作を停止させる。
(3)無線送信部11に無変調信号を送信させる。
(4)無変調信号の送信電力を変更しながら測定を行い、モニタ点の送信電力測定値が規定値となった時の送信リーク信号の電力測定値および利得設定値を保存する。
(5)必要な複数の送信電力値に対して上記(4)の操作を行い、送信リーク信号の電力測定値および利得設定値を取得する。
(6)無変調信号の送信電力、送信リーク信号の電力測定値、および利得設定値の対応関係を記述したルックアップテーブルを作成し、送信電力制御部16内のメモリ(不図示)に格納する。
【0032】
上述したように、本実施の形態にかかる無線通信装置1は、無線送信部11の送信電力の計測に無線受信部14を利用する。このため、無線送信部11の送信電力を計測するために必要な回路規模を抑制できる。
【0033】
なお、本実施の形態では、デジタル信号処理回路10とは別に送信電力制御部16を配置する例を示した。しかしながら、デジタル信号処理回路10と共通のベースバンドIC等に送信電力制御を行わせてもよい。このような変形例について発明の実施の形態2で述べる。
【0034】
また、本実施の形態では、ダウンコンバータ140及びADC142をバックスキャッタ信号の受信と送信リーク信号電力の計測で兼用する例を示した。しかしながら、例えば、ダウンコンバータ140のみを兼用することも可能である。このような変形例については、発明の実施の形態3で述べる。
【0035】
また、本実施の形態では、無線受信部14がダイレクトコンバージョン受信を行う場合について説明した。しかしながら、無線受信部14は、バックスキャッタ信号をIF帯域に変換するヘテロダイン受信を行ってもよい。このような変形例については、以下の発明の実施の形態4で述べる。
【0036】
<発明の実施の形態2>
図2は、本実施の形態にかかる無線通信装置2の構成例を示すブロック図である。図2のデジタル信号処理回路20は、上述したデジタル信号処理回路10と同様に、通信相手(無線タグ)との通信制御、送信シンボル列の生成、および受信されたバックスキャッタ信号の解析を行う。さらに、デジタル信号処理回路20は、ルックアップテーブル26を参照することにより、送信リーク信号の電力レベル計測を用いた送信電力制御を行う。ルックアップテーブル26には、無変調信号の送信電力と送信リーク信号の電力測定値との対応関係を記述しておけばよい。加えて、無変調信号の送信電力と利得設定値との対応関係をルックアップテーブル26に記述してもよい。
【0037】
デジタル信号処理回路20に送信電力制御を行わせることによって、送信電力制御部16に相当する回路を別途配置する必要がなくなる。このため、無線送信部11の送信電力を計測するために必要な回路規模を一層抑制できる。
【0038】
<発明の実施の形態3>
図3は、本実施の形態にかかる無線通信装置3の構成例を示すブロック図である。本実施の形態では、ダウンコンバータ140から出力される送信リーク信号をADC142を経由せずに送信電力制御部36に供給する。上述したように、送信リーク信号は、無線送信部11の送信信号の無線受信部14側への漏洩成分を周波数ダウンコンバートして得られる低周波信号である。送信電力制御部36は、送信リーク信号の電力レベルを計測し、これに応じて無線送信部11の利得制御を行う。
【0039】
図3の構成によれば、少なくともダウンコンバータ140をバックスキャッタ信号の受信と送信リーク信号電力の計測で兼用するため、無線送信部11の送信電力を計測するために必要な回路規模を抑制できる。
【0040】
<発明の実施の形態4>
図4は、本実施の形態にかかる無線通信装置3の構成例を示すブロック図である。図4に示す無線受信部44は、ヘテロダイン受信機であり、無線タグからのバックスキャッタ信号をIF帯域へダウンコンバートする。
【0041】
無線受信部44が有するバンドパスフィルタ(BPF)442は、イメージ信号を除去するためのフィルタである。ダウンコンバータ440は、受信キャリア周波数FRFから中間周波数FIF分だけずれたローカル信号をローカル発振器45から受信し、バックスキャッタ信号のダウンコンバートを行う。ダウンコンバート後のIF信号は、IF帯域を選択するためのBPF441を介してADC142に送られる。
【0042】
なお、ヘテロダイン方式の場合、無変調送信キャリアに由来する送信リーク信号の主要なエネルギーはDC以外に存在する。このため、送信リーク信号の電力レベルを計測する際にBPF441のバイパスを行う必要はない。
【0043】
なお、図4の無線通信装置4は、発明の実施の形態2にかかる無線通信装置2の変形例として示した。しかしながら、本実施の形態は、発明の実施の形態1又は3と組み合わせることも可能である。つまり、発明の実施の形態1及び3で説明した無線通信装置1及び3の構成において、無線受信部14をヘテロダイン受信機に置き換えてもよい。
【0044】
また、上述した発明の実施の形態1〜4では、本発明の好適な適用先の1つであるパッシブ型のRFIDリーダ(リーダ/ライタ)に関して説明したが、本発明の適用先はパッシブ型RFIDシステムに限られないことは勿論である。さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、2、3、4 無線通信装置
10 デジタル信号処理回路
11 無線送信部
12 送受分離回路
13 アンテナ
14 無線受信部
15 ローカル発振器
16 送信電力制御部
20 デジタル信号処理回路
26 ルックアップテーブル(LUT)
36 送信電力制御部
44 無線受信部
45 ローカル発振器
110 可変利得デジタルアンプ
111 D/Aコンバータ(DAC)
112 可変利得アナログアンプ
113 変調器
114 RFパワーアンプ
140 ダウンコンバータ
141 フィルタ回路
142 A/Dコンバータ(ADC)
440 ダウンコンバータ
441 バンドパスフィルタ(チャネル選択)
442 バンドパスフィルタ(イメージ除去)
P1 第1ポート
P2 第2ポート
P3 第3ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信キャリアを含む送信信号を生成する無線送信部と、
前記送信キャリアと実質的に同一周波数の受信キャリアを含む受信信号の周波数ダウンコンバートを行う周波数変換回路を含む無線受信部と、
前記無線送信部に結合される第1のポート、前記無線受信部に結合される第2のポート、及びアンテナに結合される第3のポートを有し、前記第1のポートに入力される前記送信信号を前記第3のポートに出力し、前記第3のポートに入力される前記受信信号を前記第2のポートに出力する送受分離回路と、
前記第1のポートから前記第2のポートに漏洩する前記送信信号の漏洩成分を前記周波数変換回路に供給してダウンコンバートすることで得られる低周波信号に基づいて、前記送信信号の送信電力に関する制御を行う送信電力制御部と、
を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記無線受信部は、
前記ダウンコンバート後の受信信号のA/D変換を行うA/D変換回路と、
前記周波数変換回路及び前記A/D変換回路の間に配置され、前記周波数変換回路の出力に含まれる直流成分を除去するハイパスフィルタと、をさらに備え、
前記送信電力制御部は、前記送信電力に関する制御の実行時に前記ハイパスフィルタによる前記直流成分の除去を停止させるか前記ハイパスフィルタを迂回することにより、前記A/D変換回路による前記低周波信号の直流成分の検出を可能とする、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記受信信号は、無線タグが前記送信信号の反射波を変調することによって生成されるバックスキャッタ信号であり、
前記漏洩成分に基づく前記送信電力に関する制御は、前記バックスキャッタ信号の非受信時に選択的に行われる、
請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記受信信号は、無線タグに送信を促すためのコマンドを含む前記送信信号を受信した前記無線タグによって送信されるバックスキャッタ信号であり、
前記漏洩成分に基づく前記送信電力に関する制御は、前記コマンドの送信が停止されている期間に行われる、
請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記A/D変換回路は、前記低周波信号をサンプリングしてデジタル値に変換し、
前記送信電力制御部は、前記デジタル値に基づいて前記送信電力に関する制御を行う、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記送信電力制御部は、デジタル信号処理回路を含み、
前記デジタル信号処理回路は、前記送信電力調整に加えて、前記送信キャリアを変調するための送信シンボル列の生成および前記A/D変換回路によってデジタル化された前記受信信号の解析を実行する、
請求項5に記載の無線通信回路。
【請求項7】
前記送受分離回路は、方向性結合器及びサーキュレータの少なくとも一方を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記送信電力に関する制御は、前記送信電力に関する計測値を取得すること、及び前記送信信号の利得を制御することの少なくとも一方を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記送信電力制御部は、前記低周波信号に関する計測値と前記送信信号の送信電力とを予め関連付けたルックアップテーブルに基づいて前記送信電力を制御する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
(a) (i)送信信号の変調処理を行う無線送信部、(ii)前記送信信号に含まれる送信キャリアと実質的に同一周波数の受信キャリアを含む受信信号の周波数ダウンコンバートを行う無線受信部、および(iii)前記送信信号の送信と前記受信信号の受信に供用されるアンテナ、の間に配置された送受分離回路を介して、前記無線送信部側から前記無線受信部側に漏洩する前記送信信号の漏洩成分を前記無線受信部に供給して周波数ダウンコンバートすること、および
(b)前記漏洩成分の周波数ダウンコンバートによって得られた低周波信号に基づいて、前記送信信号の送信電力に関する計測値を取得すること、
を備える無線送受信装置の送信電力計測方法。
【請求項11】
前記無線受信部は、
前記受信信号の前記周波数ダウンコンバートを行う周波数変換回路と、
ダウンコンバート後の前記受信信号のA/D変換を行って受信データ列を生成するA/D変換回路と、
前記周波数変換回路及び前記A/D変換回路の間に配置され、前記周波数変換回路の出力に含まれる直流成分を除去するハイパスフィルタと、をさらに備え、
前記方法は、
(c)前記送信電力に関する計測値の取得時にハイパスフィルタによる前記直流成分の除去を停止させるか前記ハイパスフィルタを迂回することにより、前記A/D変換回路による前記低周波信号の直流成分の検出を可能とすること、
をさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記受信信号は、無線タグが前記送信信号の反射波を変調することによって生成されるバックスキャッタ信号であり、
前記漏洩成分に基づく前記送信電力に関する計測値の取得は、前記バックスキャッタ信号の非受信時に選択的に行われる、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記受信信号は、無線タグに送信を促すためのコマンドを含む前記送信信号を受信した前記無線タグによって送信されるバックスキャッタ信号であり、
前記漏洩成分に基づく前記送信電力に関する計測値の取得は、前記コマンドの送信が停止されている期間に行われる、
請求項10又は11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−226298(P2010−226298A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69832(P2009−69832)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】