説明

無線通信システム、ハンドオフポイント修正装置およびハンドオフポイント修正方法

【課題】予め移動経路上の電波状況を測定しておく必要がなく、ハンドオフポイントを適切なものに修正する無線通信システムを得る。
【解決手段】ハンドオフポイントを含む情報を無線ゾーン120,140内に配信する複数の無線基地局12,14と、無線基地局12,14と無線通信しながら無線ゾーン内を移動し、他の無線ゾーンに移る際に、隣接基地局情報に基づいてハンドオフをする移動局と、システム内の無線回線の管理をする無線回線管理局とを含む無線通信システムであって、移動局13,15は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら、無線ゾーン120,140内に敷設された路線19上を移動し、無線基地局12,14は、チューニング信号を受信し、チューニング信号の情報と受信レベルとを無線回線管理局11に送信し、無線回線管理局11は、チューニング信号の情報と受信レベルとからハンドオフポイントを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路や道路等の路線沿いに複数設置された無線基地局と該無線基地局の無線ゾーン内にて路線上を移動する移動局とを含む無線通信システム、無線基地局と無線回線管理局とを含み所定のアルゴリズムに基づいて移動局に指示するハンドオフポイントを修正するハンドオフポイント修正装置、およびハンドオフポイントを修正するハンドオフポイント修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一方で線路や道路等の路線に沿って無線基地局を複数設置しておき、他方で路線上を移動する移動体に移動局を搭載しておき、無線基地局と移動局との間で無線通信を行う無線通信システムが存在する。このような無線通信システムにおいては、移動局の移動に伴い通信相手の無線基地局が変わる際、通信相手の無線基地局を変更する動作であるハンドオフが行われる。このハンドオフを実行する位置であるハンドオフポイントは、高速なハンドオフ動作を実現するために必要に応じて調整(修正)される必要がある。すなわち、高速なハンドオフ動作を実現するためにハンドオフポイントは、移動局の移動経路に沿って進行方向の前後に所定の距離移動されてより適切な位置にチューニングされる必要がある。
【0003】
従来、移動局の通話チャネル切替装置として、最良点で通話チャネルを切り替える(ハンドオフする)目的で、走行する道路上の電波状況を予め調べておき、このデータに基づいてハンドオフポイントを決定して、上記移動局はこの決定されたハンドオフポイントに達したときハンドオフを実行するという装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−341470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の技術によれば、ハンドオフポイントを決定するために、予め移動経路上の電波状況を詳細に測定しておく必要がある。しかしながら、このようなシステムにおいては、移動経路は一般に長距離にわたって延びており無線基地局の数も多数である。そのため、測定ポイントも多数有りデータ収集の作業は容易でない。加えて、データを収集した後に、例えば建築物が建設されたり別の電波干渉元が現れたりすることによる電波状況に変化があった場合でも、これに即応することができないばかりか、再度データ収集を行うには、さらに大幅な費用がかかるので改善が求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、予め移動経路上の電波状況を測定しておく必要がなく、自動的にハンドオフポイントを適切なものに修正することができ、システム運用に際して低コスト化を図ることができる無線通信システム、ハンドオフポイント修正装置およびハンドオフポイント修正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る無線通信システムは、ハンドオフポイントを含む隣接基地局情報を無線ゾーン内に配信する複数の無線基地局と、無線基地局と無線通信しながら無線ゾーン内を移動するとともに、隣接する他の無線ゾーンに移る際に、隣接基地局情報に基づいてハンドオフをする移動局と、システム内の無線回線の管理をする無線回線管理局とを含む無線通信システムであって、移動局は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら、無線ゾーン内に敷設された路線上を移動し、無線基地局は、チューニング信号を受信し、チューニング信号の情報と信号の受信レベルとを無線回線管理局に送信し、無線回線管理局は、チューニング信号の情報と信号の受信レベルとからハンドオフポイントを修正することを特徴とする。
【0008】
また、この発明に係るハンドオフポイント修正装置は、無線ゾーン内に敷設された路線上を移動する移動局に対して、ハンドオフポイントを含む隣接基地局情報を配信して、移動局が隣接する他の無線ゾーンに移る際に、隣接基地局情報に基づいてハンドオフをさせる装置であって、移動局は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら路線上を移動するものであり、移動局からのチューニング信号および信号の受信レベルを受信して、これに基づいてハンドオフポイントを修正することを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明に係るハンドオフポイント修正方法は、無線ゾーン内に敷設された路線上を移動する移動局に対して、ハンドオフポイントを含む隣接基地局情報を配信することにより、移動局が隣接する他の無線ゾーンに移る際に、隣接基地局情報に基づいてハンドオフをする方法であって、移動局を、少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら路線上を移動するようにして、チューニング信号を信号の受信レベルとともに受信して、チューニング信号と受信レベルとに基づいてハンドオフポイントを修正することを特徴とする。
【0010】
ここで「移動体」とは、電車、自動車、船舶等の乗り物はもとより、人間や動物等移動する物であればすべて含む。また、「路線」とは、線路や道路はもとより、移動体がある道筋にそって進むときの「道筋」のことを指し、極端な例では、物理的に何らの案内がなくても移動体が常に同じ道筋を通って移動するものであれば、その「道筋」も含む。
【発明の効果】
【0011】
移動局は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら無線ゾーン内に敷設された路線上を移動しており、ハンドオフポイントに達するとハンドオフ動作を行う。無線基地局は、移動局のハンドオフ要求に通常の応答動作をするとともに、移動局の発信するチューニング信号を常に受信しており、例えば、ハンドオフポイントにおけるチューニング信号の情報とチューニング信号の受信レベルとを無線回線管理局に送信する。無線回線管理局は、チューニング信号の情報と受信レベルとからハンドオフポイントの修正方向と修正距離を算出し、これを無線基地局に伝達する。無線基地局は、これを移動局に指示する。移動局はチューニング信号を発信しながらこの指示のハンドオフポイントにてハンドオフを行う。そして、この動作が繰り返される。そのため、ハンドオフポイントは徐々に適切な位置に修正されて行き、やがて最適な位置に収束する。そのため、予め移動経路上の電波状況を測定しておく必要がなく、自動的にハンドオフポイントを適切なものに修正することができ、システム運用に際して低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる無線通信システム、ハンドオフポイント修正装置およびハンドオフポイント修正方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は本実施の形態の無線通信システムを上方から見た図である。図2は図1の構成をより解り易く図示する本実施の形態の無線通信システムの斜視図である。図3は本実施の形態の無線通信システムの各機器の内部構成を図1及び図2と対応させながら示す機能構成図である。図1乃至3において、第1の無線基地局12と第2の無線基地局14は、線路19に沿って設置された多数の無線基地局のうち隣接する2つの無線基地局である。他の無線基地局は省略している。第1の無線基地局12と第2の無線基地局14は、図示しない他の無線基地局とともに無線回線管理局11と無線回線により接続されている。第1の無線基地局12の無線ゾーン120および第2の無線基地局14の無線ゾーン140は、図1に示されるように、夫々無線基地局12および無線基地局14を中心とする円形を成している。この2つの無線ゾーン120,140は、その一部が重なっている。そして、2つの無線ゾーン120,140を通って線路19が敷設されている。
【0014】
線路19上に移動体である第1の列車17と第2の列車18が移動している。第1の列車17は第1の移動局13を搭載している。第2の列車18は第2の移動局15を搭載している。第1の移動局13は現在第1の無線基地局12と通信しながら無線ゾーン120内を移動中であり、これから無線ゾーン140に進入しようとしている。一方、第2の移動局15は現在第2の無線基地局14と通信しながら無線ゾーン140内を移動中であり、これから無線ゾーン120に進入ようとしている。無線ゾーン120から無線ゾーン140へ移動する際のハンドオフポイントは、現在ポイントP0である。逆に無線ゾーン140から無線ゾーン120へ移動する際のハンドオフポイントも、同様にポイントP0となっている。
【0015】
図3に基づき各局の構成を説明する。なお、図3においては本実施の形態の特徴に関係のある構成のみを示している。無線回線管理局11は、システム運用に際して必要な情報を無線基地局に対して送信する基地局制御情報送信部11aと、各無線基地局の配置状態を始め各種局情報を記憶する基地局配置情報格納部11bとを有している。
【0016】
また、第1の無線基地局12は、ビーコン送信部12a、チューニング信号受信部12bおよびチューニング信号受信状態送信部12cを有している。ビーコン送信部12aは、システム運用に際して必要な情報である全ての隣接する無線基地局分の隣接基地局情報を、ビーコンに載せて無線ゾーン120内に定期的に配信する。ここで、隣接基地局情報とは、路線ID(“東海道線/上り”等、路線識別子と方向をペアにしたID)、隣接する無線基地局へのハンドオフポイント、および隣接する無線基地局と通信するために必要な情報を含んでいる。この情報は、予め無線回線管理局11の基地局制御情報送信部11aから送信されて第1の無線基地局12の図示しない記憶部に蓄えられている。
【0017】
チューニング信号受信部12bは、移動局から送信されてくるチューニング信号を受信し、その受信レベルが予め設定された第1の閾値を超えた時点で移動局にACKを返す。チューニング信号受信状態送信部12cは、ACKとは無関係に受信レベル閾値以下でも移動局からのチューニング信号を受信し、このチューニング信号内の情報にチューニング信号の受信レベルを加えて無線回線管理局11に送信する。第2の無線基地局14も同じ構成の、ビーコン送信部14a、チューニング信号受信部14bおよびチューニング信号受信状態送信部14cを有している。
【0018】
第1の移動局13は、位置情報取得部13aとチューニング信号送信部13bとを有している。位置情報取得部13aは、例えばGPS等の位置観測装置であり自局位置情報を正確に得るために搭載している。チューニング信号送信部13bは、隣接する無線基地局へのハンドオフポイントに到達した時点で、現在の位置座標、移動局の識別子、路線ID(方向も含む)を内包したチューニング信号を無線基地局に向けて送信する。第2の移動局15も同じ構成の、位置情報取得部15aとチューニング信号送信部15bとを有している。なお、無線回線管理局11、第1の無線基地局12および第2の無線基地局14は、ハンドオフポイントを修正するハンドオフポイント修正装置を構成している。
【0019】
次に動作を説明する。第1の無線基地局12のビーコン送信部12aは、システム運用に際して必要な情報である全ての隣接する無線基地局分の隣接基地局情報を、ビーコンに載せて無線ゾーン120内に定期的に配信している。隣接基地局情報の内容は、上記の通りである。
【0020】
第1の移動局13は、第1の無線基地局12から送信されてくるビーコンを受信しながら線路19上を移動している。このようにして第1の無線基地局12と通信している第1の移動局13はこのビーコンより、次にハンドオフすべき無線基地局である第2の無線基地局14とそのハンドオフポイントP0を認識する。そして、第1の移動局13は、予め設定されている自路線のIDと、現在通信中の第1の無線基地局12より送られるビーコン内で合致する路線IDに対応した隣接する無線基地局へのハンドオフポイントに到達した時点で、第2の無線基地局14に対してハンドオフの動作を行う。すなわち、第1の移動局13は、GPS等の位置情報取得部13aより取得した自移動体の位置がビーコンにより通知されたハンドオフポイントP0に到着したとき、第2の無線基地局14に対してハンドオフの動作を行う。このハンドオフの動作はチューニング信号の送信を含んでいる。第1の移動局13は、第2の無線基地局14に対して、“現在の位置座標”、“路線ID(方向も含む)”、“移動体の識別子”を含むチューニング信号を送信する。そして、第2の無線基地局14からACKが帰ってくるまで、一定周期でチューニング信号の送信を続けながら移動する。
【0021】
第2の無線基地局14は、チューニング信号受信部12bを介してチューニング信号を受信し、その受信レベルが予め設定された第1の閾値に達した時点で第1の移動局13にACKを返す。なお、チューニング信号の受信レベルは、第1の移動局13がハンドオフポイントP0にてハンドオフをした際に第1の閾値未満であっても、第1の移動局13が第2の無線基地局14に近づく方向に移動しているので、徐々に大きくなり、やがて第1の閾値に達する。
【0022】
また、第2の無線基地局14のチューニング信号受信状態送信部12cは、上述のACKとは無関係に受信レベルが第1の閾値以下の場合でも、第1の移動局13からのチューニング信号を受信した際に、このチューニング信号内の情報とチューニング信号の受信レベルとを、チューニング信号受信状態情報として無線回線管理局11に送信する。
【0023】
無線回線管理局11は、各無線基地局から送信されるチューニング信号受信状態情報を元に各無線基地局の出力レベルおよびハンドオフポイントを修正し、基地局制御情報送信部11aを介して各無線基地局に送信する。なお、このとき行われるハンドオフポイントの修正は、以下の2つのルールによるアルゴリズムに基づいて行われる。
【0024】
ルール1:無線基地局から発せられたチューニング信号の受信レベルが第1の閾値、つまり“チューニング信号受信レベル閾値”未満の場合、この第1の閾値を満たす位置までハンドオフポイントを移動する(荒調整動作)。
ルール2:無線基地局から発せられたチューニング信号の受信レベルが第1の閾値、つまり“チューニング信号受信レベル閾値”以上の場合であって、且つ第1の閾値より大きい第2の閾値を超えている場合、所定の距離(システム毎に決められた値であって、例えば1単位分として30m)だけ、新たに通信を始めた無線基地局に対して受信レベルが小さくなる方向、つまり、新たに通信を始めた無線基地局に対して遠ざかる方向、すなわち、移動体の進行方向に対して現在のハンドオフポイントより手前の方向にハンドオフポイントを移動する(微調整動作)。
【0025】
なお、上記ルール2においては、第2の閾値を超える値に比例した移動距離だけ、受信レベルが小さくなる方向にハンドオフポイントを移動させるようにしてもよい。例えば、第2の閾値を超える値が3単位分に相当するときには、30mの3倍で90m移動させてもよい。このように修正することでハンドオフポイントを適切な位置に短時間で収束させることができる。
【0026】
そして、無線回線管理局11は、上記2つのルールを繰り返すことにより、ハンドオフポイントを適正な位置へ収束させる。また、無線回線管理局11は、この新たなハンドオフポイントの座標をカバーするのに必要十分な無線基地局毎の出力を計算する。そして、基地局制御情報送信部11aは、第1の無線基地局12及び第2の無線基地局14に対して新しいハンドオフポイントP1とそれぞれの無線基地局の適正な出力を通知する。通知された第1の無線基地局12及び第2の無線基地局14はこの情報にもとづき、ビーコンの内容および出力レベルを変更する。
【0027】
なお、ここでは、説明にあたり第1の移動局13がハンドオフした際のチューニング信号の受信レベルが、第1の閾値未満であったとする。この場合上述のルール1が適用されて、ハンドオフポイントは、図1および図2のP0からP1に移動する。
【0028】
無線回線管理局11から第1の無線基地局12及び第2の無線基地局14への新しいハンドオフポイントP1とそれに対応した適正な出力が通知されることにより、次回からは無線ゾーン120から無線ゾーン140へ移動する移動局13の出すチューニング信号の開始地点はP1となり、第2の無線基地局14における受信レベルは“チューニング信号受信レベル閾値”以上となる。この動作によりハンドオフポイントの概略のチューニングがなされる。
【0029】
この状態で第2の移動局15が新しいハンドオフポイントP1を通過するとき、前回と同様の動きで、第2の移動局15から第1の無線基地局12に対しチューニング信号が送信され、同様の手順で第1の無線基地局12から無線回線管理局11にチューニング信号とその受信レベルが通知される。
【0030】
この時点で、無線回線管理局11は新しいハンドオフポイントP1の無線ゾーン120および無線ゾーン140でのチューニング信号の受信レベルを確認することができる。ここでは、説明にあたり、第1の無線基地局12から発せられたチューニング信号の受信レベルが第2の閾値以上であったとする。この場合上述のルール2が適用されて、ハンドオフポイントは1単位(例えば30m)だけ第2の無線基地局14側に移動される。つまり、ハンドオフポイントは、図1および図2のP1からP2に移動する。
【0031】
そして、無線回線管理局11は、この新たなハンドオフポイントP2の座標をカバーするのに必要十分な無線基地局毎の出力を計算する。この新たなハンドオフポイントP2と無線基地局の出力を、基地局制御情報送信部11aを通じて、第1の無線基地局12および第2の無線基地局14に通知する。第1の無線基地局12および第2の無線基地局14は、この情報にもとづき、ビーコンの内容および出力レベルを変更する。
【0032】
上記の動作を継続的に行うことにより、ハンドオフポイント、無線基地局の出力は適正な値に収束する。また、周辺の電波状況の変化にも追従し、常に適正なハンドオフポイントと無線基地局の出力にチューニングされる。
【0033】
上述のように、本実施の形態においては、移動局13、15は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら、無線ゾーン120、140内に敷設された路線19上を移動し、無線基地局12、14は、チューニング信号を受信し、このチューニング信号の情報と当該信号の受信レベルとを無線回線管理局11に送信し、無線回線管理局11は、チューニング信号の情報と当該信号の受信レベルとからハンドオフポイントを修正するので、予め移動経路19上の電波状況を測定しておく必要がなく、自動的にハンドオフポイントを適切なものに修正することができ、システム運用に際して低コスト化を図ることができる。
【0034】
また、無線回線管理局11は、ハンドオフポイントにおけるチューニング信号の受信レベルが第1の閾値未満の場合、受信レベルが第1の閾値となる位置までハンドオフポイントを移動させるので、新たに通信の相手となる無線基地局に対して、ハンドオフポイントが遠いときに、近づける方向に容易に修正することができる。
【0035】
さらに、無線回線管理局11は、ハンドオフポイントにおけるチューニング信号の受信レベルが第1の閾値以上で、且つ第2の閾値を超えている場合、受信レベルが小さくなる方向にハンドオフポイントを所定の距離だけ移動させるので、新たに通信の相手となる無線基地局に対して、ハンドオフポイントが近付きすぎている場合に、遠ざける方向に容易に修正することができる。
【0036】
実施の形態2.
本実施の形態においては、無線回線管理局の動作に関して、無線基地局から発せられたチューニング信号の受信レベルが第1の閾値、つまり“通常のチューニング信号受信レベル閾値”未満の場合、実施の形態1と同様の動作をする。しかしながら、無線基地局から発せられたチューニング信号の受信レベルが第1の閾値以上の場合に、実施の形態1のルール2に替えて以下の動作をする。
【0037】
無線回線管理局は、ハンドオフポイントを修正したい両無線基地局に対し、夫々移動体の進行方向に対して現在のハンドオフポイントより手前の方向に所定量だけハンドオフポイントを移動するとともに、第1の閾値を現在の値より所定量だけ大きなものとする。つまり、“高精度測定時のチューニング信号受信レベル閾値”とする。この様子を図4に示す。
【0038】
この動作により、修正された無線基地局の無線ゾーン内の移動局は、上り/下りともに変更前よりも進行方向手前からチューニング信号の発信を開始することとなる。また第1の閾値が、変更前より大きな値に設定されているため、無線基地局からACKが返ってくる座標位置が進行方向でさらに先に進んだ位置となる。そのため、ACKが返ってくる座標位置まで、複数回連続してチューニング信号が発信されることとなる。このとき無線回線管理局は、各ポイントにおいて、両無線基地局の受信レベルを取得することができる。そして、無線回線管理局は高精細に各ポイントでの両無線基地局の受信レベルが取得できるため、この情報より、図4のような、無線基地局毎の位置座標と受信強度の関係を表す受信レベル曲線が得られ、この両受信レベル曲線の交点を求めて、この点を新たなハンドオフポイントとする。
【0039】
上述のように、本実施の形態においては、無線回線管理局は、ハンドオフポイントにおけるチューニング信号の受信レベルが第1の閾値以上の場合、ハンドオフポイントを挟む両無線基地局に対して、ハンドオフポイントを夫々移動局の進行方向手前側に所定の距離だけ移動させるように修正するとともに、両無線基地局の第1の閾値を所定量大きくする。これにより無線回線管理局は、複数回連続してチューニング信号を受信することができ、この情報から、両無線基地局毎の受信レベル曲線を求め、この両受信レベル曲線の交点を新たなハンドオフポイントとするので、ハンドオフポイントを高精度に決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる無線通信システム、ハンドオフポイント修正装置およびハンドオフポイント修正方法は、線路や道路等の路線沿いに複数設置された無線基地局と、この無線基地局の無線ゾーン内にて路線上を移動する移動局とを含む無線通信システムに適しており、移動局が異なる無線ゾーンに移動するとき、ハンドオフを行う無線通信システムに最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態1の無線通信システムを上方から見た図である。
【図2】図1の構成をより解り易く図示する本実施の形態の無線通信システムの斜視図である。
【図3】実施の形態1の無線通信システムの各機器の内部構成を図1及び図2と対応させながら示す機能構成図である。
【図4】実施の形態2の無線通信システムの動作を説明する受信レベル曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
11 無線回線管理局
11a 基地局制御情報送信部
11b 基地局配置情報格納部
12 第1の無線基地局
12a,14a ビーコン送信部
12b,14b チューニング信号受信部
12c,14c チューニング信号受信状態送信部
13 第1の移動局
13a,15a 位置情報取得部
13b,15b チューニング信号送信部
14 第2の無線基地局
15 第2の移動局
19 路線
120 無線ゾーン
140 無線ゾーン
P0,P1,P2 ハンドオフポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドオフポイントを含む隣接基地局情報を無線ゾーン内に配信する複数の無線基地局と、前記無線基地局と無線通信しながら前記無線ゾーン内を移動するとともに、隣接する他の無線ゾーンに移る際に、前記隣接基地局情報に基づいてハンドオフをする移動局と、システム内の無線回線の管理をする無線回線管理局とを含む無線通信システムであって、
前記移動局は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら、前記無線ゾーン内に敷設された路線上を移動し、
前記無線基地局は、前記チューニング信号を受信し、当該チューニング信号の情報と該信号の受信レベルとを前記無線回線管理局に送信し、
前記無線回線管理局は、前記チューニング信号の情報と該信号の受信レベルとから前記ハンドオフポイントを修正することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線回線管理局は、前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが第1の閾値未満の場合、前記受信レベルが第1の閾値となる位置まで前記ハンドオフポイントを移動させるように修正することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線回線管理局は、前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第1の閾値以上で、且つ第2の閾値を超えている場合、前記受信レベルが小さくなる方向に前記ハンドオフポイントを所定の距離だけ移動させるように修正することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線回線管理局は、前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第2の閾値を超えている場合、該第2の閾値を超える値に比例した移動距離だけ、前記受信レベルが小さくなる方向に前記ハンドオフポイントを移動させるように修正することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線回線管理局は、前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第1の閾値以上の場合、前記ハンドオフポイントを挟む両無線基地局に対して、前記ハンドオフポイントを夫々前記移動局の進行方向手前側に所定の距離だけ移動させるように修正するとともに、両無線基地局の前記第1の閾値を所定量大きくすることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記ハンドオフポイントの修正は、前記無線基地局の出力レベルの調整によって行われることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記移動局は、前記自局位置情報を得る手段としてGPSを搭載していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線ゾーン内に敷設された路線上を移動する移動局に対して、ハンドオフポイントを含む隣接基地局情報を配信して、前記移動局が隣接する他の無線ゾーンに移る際に、前記隣接基地局情報に基づいてハンドオフをさせる装置であって、
前記移動局は少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら前記路線上を移動するものであり、前記移動局からの前記チューニング信号および該信号の受信レベルを受信して、これに基づいて前記ハンドオフポイントを修正することを特徴とするハンドオフポイント修正装置。
【請求項9】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが第1の閾値未満の場合、前記受信レベルが第1の閾値となる位置まで前記ハンドオフポイントを移動させることを特徴とする請求項8に記載のハンドオフポイト修正装置。
【請求項10】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第1の閾値以上で、且つ第2の閾値を超えている場合、前記受信レベルが小さくなる方向に前記ハンドオフポイントを所定の距離だけ移動させることを特徴とする請求項8に記載のハンドオフポイント修正装置。
【請求項11】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第2の閾値を超えている場合、該第2の閾値を超える値に比例した移動距離だけ、前記受信レベルが小さくなる方向に前記ハンドオフポイントを移動させることを特徴とする請求項10に記載のハンドオフポイト修正装置。
【請求項12】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第1の閾値以上の場合、前記ハンドオフポイントを挟む両無線基地局に対して、前記ハンドオフポイントを夫々前記移動局の進行方向手前側に所定の距離だけ移動させ、且つ両無線基地局の前記第1の閾値を所定量大きくすることを特徴とする請求項8に記載のハンドオフポイト修正装置。
【請求項13】
前記ハンドオフポイントの修正を、前記無線基地局の出力レベルの調整によって行うことを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載のハンドオフポイント修正装置。
【請求項14】
前記無線ゾーン内に敷設された路線上を移動する移動局に対して、ハンドオフポイントを含む隣接基地局情報を配信することにより、前記移動局が隣接する他の無線ゾーンに移る際に、前記隣接基地局情報に基づいてハンドオフをする方法であって、
前記移動局を、少なくとも自局位置情報を含むチューニング信号を発信しながら前記路線上を移動するようにして、
前記チューニング信号を該信号の受信レベルとともに受信して、前記チューニング信号と前記受信レベルとに基づいて前記ハンドオフポイントを修正する
ことを特徴とするハンドオフポイント修正方法。
【請求項15】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが第1の閾値未満の場合、前記受信レベルが第1の閾値となる位置まで前記ハンドオフポイントを移動させることを特徴とする請求項14に記載のハンドオフポイント修正方法。
【請求項16】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第1の閾値以上で、且つ第2の閾値を超えている場合、前記受信レベルが小さくなる方向に前記ハンドオフポイントを所定の距離だけ移動させることを特徴とする請求項14に記載のハンドオフポイント修正方法。
【請求項17】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第2の閾値を超えている場合、該第2の閾値を超える値に比例した移動距離だけ、前記受信レベルが小さくなる方向に前記ハンドオフポイントを移動させることを特徴とする請求項16に記載のハンドオフポイト修正方法。
【請求項18】
前記ハンドオフポイントにおける前記チューニング信号の前記受信レベルが前記第1の閾値以上の場合、前記ハンドオフポイントを挟む両無線基地局に対して、前記ハンドオフポイントを夫々前記移動局の進行方向手前側に所定の距離だけ移動させ、同時に両無線基地局の前記第1の閾値を所定量大きくすることを特徴とすることを特徴とする請求項14に記載のハンドオフポイント修正方法。
【請求項19】
前記ハンドオフポイントの修正を、前記無線基地局の出力レベルの調整によって行うことを特徴とする請求項14から18のいずれか1項に記載のハンドオフポイント修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−121559(P2006−121559A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309330(P2004−309330)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】