説明

無線通信システム、中継装置及び中継装置のプログラム、無線端末及び無線端末のプログラム

【課題】無線端末に記憶された経路情報を用いなくても無線端末間で無線通信ができるようにする無線通信システム等を提供する。
【解決手段】送信元端末Sが無線送信パケットの送出動作P1aを行うと、中継端末Rは、無線送信パケットの受信動作P1bを行う。無線返信パケットの受信動作P2を行うべき所定時間が経過した場合、中継端末Rは、代理パケットの送出動作P3aを行う。送信元端末S及び宛先端末Dは、代理パケットの受信動作P3b、P3cを行う。送信元端末Sは、返信されるパケットの送信元を中継端末Rの端末識別子に変更する。宛先端末Dが代理パケットに対する返信パケット送信動作P4aを行い、中継端末Rは受信動作P4bを行う。中継端末Rは、自己の端末識別子を送信元にした代理返信パケットを生成して、送出動作P5aを行い、送信元端末Sは、無線送信パケットの返信パケットとして、代理返信パケットの受信動作P5bを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末間で無線通信を行う無線通信システム、中継装置及び中継装置のプログラム、無線端末及び無線端末のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線端末間で無線通信を行う無線通信システムとしては、下記の特許文献1等に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された無線通信システムは、無線アクセスポイント、無線クライアントを備える。無線クライアントが無線通信を行っていない時に、無線クライアントが使用しているSSID(Service Set Identifier)の無線パケットをモニターし、無線通信状況の良くない無線クライアントと無線アクセスポイント間の無線パケットを中継する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1のような無線通信システムでは、無線端末が移動することがあり、このため、一定の通信経路が特定できない。また、無線通信システムは、無線端末が移動することによって、ある時点では通信可能であった無線端末が、通信不能となる場合がある。
【0006】
このような事情から、従来の無線通信システムでは、無線端末によって通信相手と通信するための経路情報を保持しておくためのメモリ容量が必要であった。
【0007】
また、特許文献1に記載された技術は、アクセスポイント(宛先端末)からの電波の受信強度を測定して、中継するかどうかを決定する処理を行い、宛先端末の台数分だけ中継端末に受信強度を記憶しておく。したがって、この技術では、中継端末によって宛先端末との間の電波状態を測定する処理や、そのためのメモリ容量が必要であった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、無線端末に記憶された経路情報等を用いなくても無線端末間で無線通信ができるようにする無線通信システム、中継装置及び中継装置のプログラム、無線端末及び無線端末のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する第1の発明に係る無線通信システムは、複数の無線端末と少なくとも一つの中継装置とを含む無線通信システムであって、前記中継装置は、第1無線端末から第2無線端末にパケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、前記通信検出手段により前記第1無線端末から前記第2無線端末にパケットが送出された後の所定時間内に前記第2無線端末から返信がない場合に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する代理パケット生成手段と、前記第2無線端末からの返信があった場合に、当該第2無線端末からの返信パケットの送信元識別子を自己の識別子に変更し、当該返信パケットの送信先識別子を前記第1無線端末の識別子に変更した代理返信パケットを生成する代理返信パケット生成手段と、前記代理パケット及び前記代理返信パケットを送出する通信手段とを含み、前記第1無線端末は、前記中継装置によって前記代理パケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、前記通信検出手段により前記代理パケットを送出されたことが検出された場合に、前記送信したパケットの返信元として期待する識別子を、前記第2無線端末の識別子から前記中継装置の識別子に変更する返信元変更手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
第1の発明に係る無線通信システムであって、第2の発明は、前記中継装置は、前記通信手段から前記代理パケットを送出した結果として、前記第2無線端末との間の無線通信が不能であった場合に、前記第2無線端末が通信不可端末であることを記憶する通信不可端末記憶手段を更に備え、前記代理パケット生成手段は、前記通信不可端末記憶部に記憶されている前記第2無線端末宛ての前記代理パケットを生成しないことを特徴とする。
【0011】
第2の発明に係る無線通信システムであって、第3の発明は、前記中継装置は、前記通信不可端末記憶部に記憶された通信不可端末の情報を定期的に消去することを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決する第4の発明に係る中継装置は、複数の無線端末と無線通信可能な中継装置であって、第1無線端末から第2無線端末にパケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、前記通信検出手段により前記第1無線端末から前記第2無線端末にパケットが送出された後の所定時間内に前記第2無線端末から返信がない場合に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する代理パケット生成手段と、前記第2無線端末からの返信があった場合に、当該第2無線端末からの返信パケットの送信元識別子を自己の識別子に変更し、当該返信パケットの送信先識別子を前記第1無線端末の識別子に変更した代理返信パケットを生成する代理返信パケット生成手段と、前記代理パケット及び前記代理返信パケットを送出する通信手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決する第5の発明に係る中継装置のプログラムは、複数の無線端末と無線通信可能な中継装置のプログラムであって、前記中継装置のコンピュータを、第1無線端末から第2無線端末にパケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、前記通信検出手段により前記第1無線端末から前記第2無線端末にパケットが送出された後の所定時間内に前記第2無線端末から返信がない場合に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する代理パケット生成手段と、前記第2無線端末からの返信があった場合に、当該第2無線端末からの返信パケットの送信元識別子を自己の識別子に変更し、当該返信パケットの送信先識別子を前記第1無線端末の識別子に変更した代理返信パケットを生成する代理返信パケット生成手段と、前記代理パケット及び前記代理返信パケットを送出する通信手段として機能させることを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決する第6の発明に係る無線端末は、少なくとも一つの中継装置と無線通信可能な無線端末であって、前記中継装置との間でパケットを授受可能な通信手段と、前記通信手段により無線送信パケットを送信した後に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットが前記中継装置により送出されたことを検出する通信検出手段と、前記通信検出手段により前記代理パケットを送出されたことが検出された場合に、前記送信したパケットの返信元として期待する識別子を、前記第2無線端末の識別子から前記中継装置の識別子に変更する返信元変更手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決する第7の発明に係る無線端末のプログラムは、少なくとも一つの中継装置と無線通信可能な無線端末のプログラムであって、前記無線端末のコンピュータを、前記中継装置との間でパケットを授受可能な通信手段と、前記通信手段により無線送信パケットを送信した後に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットが前記中継装置により送出されたことを検出する通信検出手段と、前記通信検出手段により前記代理パケットを送出されたことが検出された場合に、前記送信したパケットの返信元として期待する識別子を、前記第2無線端末の識別子から前記中継装置の識別子に変更する返信元変更手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中継装置によって、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを送信するので、無線端末に記憶された経路情報等を用いなくても無線端末間で無線通信ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態として示す無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態として示す無線通信システムにおける送信元無線端末10の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態として示す無線通信システムにおける中継無線端末の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態として示す無線通信システムにおいて、無線端末間で通信可能な状態における動作を示し、(a)は無線端末の配置例であり、(b)は送信元端末の動作を示すシーケンス図であり、(c)は宛先端末の動作を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の第1実施形態として示す無線通信システムにおいて、無線端末間で通信不能な状態における動作を示し、(a)は無線端末及び中継端末の配置例であり、(b)は送信元端末の動作を示すシーケンス図であり、(c)は中継端末の動作を示すシーケンス図であり、(d)は宛先端末の動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第1実施形態として示す無線通信システムにおいて、複数の中継端末が存在するときの動作を示し、(a)は無線端末及び中継端末の配置例であり、(b)は送信元端末の動作を示すシーケンス図であり、(c)、(d)は中継端末の動作を示すシーケンス図であり、(e)は宛先端末の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第2実施形態として示す無線通信システムにおいて、2つの無線端末と無関係端末を含むときの動作を示し、(a)は無線端末及び無関係端末の配置例であり、(b)は送信元端末の動作を示すシーケンス図であり、(c)は宛先端末の動作を示すシーケンス図であり、(d)は無関係端末の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態として示す無線通信システムは、例えば図1に示すように構成される。この無線通信システムは、無線コントローラ1と複数の無線端末2a〜2d、3,4,5を含む。
【0020】
この無線通信システムは、工場や、事務所又は住宅等の内部に設置された温度、湿度、塵、人の有無情報を検出する無線センサを含むエネルギー管理システムや、衛生管理システムに適用される。また、この無線通信システムは、煙検知センサや窓ガラス破壊センサ、カメラ等を含む防犯・防災システムに適用される。更に、この無線通信システムは、照明スイッチ、調光機器、照明機器等を含む照明制御システムにも適用される。
【0021】
本実施形態における無線通信システムは、無線コントローラ1と、無線端末としての窓センサ2a、煙センサ2b、人感センサ2c、電力センサ2d、照明リモコン3、照明器具4、ブザー5とを含む。
【0022】
無線コントローラ1及び無線端末は、所定の無線通信プロトコルに従って動作することによって、無線通信が可能である。無線コントローラ1は、無線通信を行う場合に、内部の無線通信I/Fを動作させることによって、所定の無線通信範囲内に存在する無線端末と通信可能である。また、無線端末は、無線通信を行う場合に、内部の無線通信I/Fを動作させることによって、所定の無線通信範囲内に存在する無線コントローラ1又は他の無線端末と通信可能である。
【0023】
この無線通信システムは、窓センサ2a、煙センサ2b、人感センサ2c、電力センサ2d、照明器具4が無線コントローラ1と無線通信可能に配置されている。照明リモコン3は、電力センサ2dを介して照明器具4と通信可能となっている。ブザー5は、人感センサ2cを介して無線コントローラ1と通信可能となっている。
【0024】
この無線通信システムは、例えばユーザによって照明リモコン3が操作されたことに応じて、電力センサ2dを介して照明リモコン3と照明器具4とが無線通信を行って照明器具4を点灯又は消灯させる。任意の系統で使用する電力量を計測する電力センサ2dは、計測した電力情報を無線コントローラ1に供給する。無線コントローラ1は、電力情報に基づいて、任意の系統で使用された電力量に基づいて監視・制御等を行うことができる。これにより、無線通信システムは、照明制御システムとして機能する。
【0025】
また、この無線通信システムは、無線コントローラ1から窓センサ2aに対して無線通信によって警戒状態となるよう設定がされる。この状態で、窓センサ2aから窓が開けられたこと等の侵入警報が窓センサ2aから無線コントローラ1に無線通信されると、無線コントローラ1は、人感センサ2cを介して無線通信によってブザー5を警報動作させる。また、無線通信システムは、無線コントローラ1から人感センサ2cに対して無線通信によって警戒状態となるよう設定し、人感センサ2cにより人の存在を検知した時に、無線コントローラ1によって人感センサ2cを介してブザー5を動作させる。これにより、無線通信システムは、防犯システムとして機能する。
【0026】
更に、この無線通信システムは、煙センサ2bから煙検知情報が無線通信によって無線コントローラ1に供給された時に、無線コントローラ1によって、人感センサ2cを介して無線通信によってブザー5を警報動作させる。これにより、無線通信システムは、防災システムとして機能する。
【0027】
つぎに、上述の無線通信システムにおいて、無線コントローラ及び無線端末の内部構成を、図2及び図3を参照して説明する。この説明は、無線パケットを送出する送信元の無線コントローラ1及び無線端末2a〜2d、3,4,5を図2の送信元無線端末10(第1無線端末)として説明する。また、無線パケットを中継する無線コントローラ1及び無線端末2a〜2d、3,4,5を図3の中継無線端末20として説明する。
【0028】
なお、無線コントローラ1及び無線端末2a〜2d、3,4,5が以下に説明する送信元無線端末10の機能と中継無線端末20の機能の双方を備えていても良いことは勿論である。また、後述の送信元無線端末10及び中継無線端末20の機能を有しない無線端末も無線通信システムに含まれていても良い。この無線端末は、記憶部や通信I/F回路、CPU等を含み、無線パケットの受信、送出、中継が可能なものである。
【0029】
送信元無線端末10は、図2に示すように、演算部11、記憶部12、送信部13、受信部14を含む。演算部11は、代理処理検出部11a、返信元変更部11bを含む。この送信元無線端末10は、記憶部や通信I/F回路、CPU及びプログラムを含むコンピュータであり、CPUがプログラムを実行する。これにより、送信元無線端末10のプログラムは、送信元無線端末10のコンピュータを、後述するように代理処理を検出して、代理パケットを受信する手段として機能させる。
【0030】
送信部13及び受信部14は、無線通信I/F回路等からなる。受信部14は、無線コントローラ1又は他の無線端末2a〜2d、3,4,5から送信された無線パケットを受信する。また、送信部13は、無線コントローラ1又は他の無線端末2a〜2d、3,4,5に対して、送信元識別子として自己の端末識別子を含む無線パケットを送信する。
【0031】
記憶部12には、送信情報、自己の端末識別子、通信相手の端末識別子等が記憶されている。この送信情報とは、送信元無線端末10から通信相手の無線端末に送信したい情報である。例えば照明リモコン3である場合には、送信情報は操作情報であり、センサである場合には、送信情報はセンサ計測値である。
【0032】
演算部11は、無線パケットを送信する時に、記憶部12から送信情報、自己の端末識別子及び通信相手の端末識別子を読み出す。演算部11は、ヘッダ部の送信元に自己の端末識別子を格納し、ヘッダ部の宛先となる通信相手の端末識別子を含み、データ部に送信情報を含む無線送信パケットを生成する。この無線送信パケットは、送信部13に供給され、送信部13によって無線電波として送出される。
【0033】
送信元無線端末10により送出された無線送信パケットは、送信元無線端末10の無線通信範囲に通信相手の無線端末が存在する場合には、当該無線端末によって直接受信される。その後、無線送信パケットを受信した無線端末は、送信元無線端末10に無線返信パケットを返信する。この無線返信パケットは例えばACKである。
【0034】
送信元無線端末10に返信された無線返信パケットは、受信部14によって受信される。送信元無線端末10は、受信部14により無線返信パケットを受信する時、当該無線返信パケットの送信元が、無線送信パケットの宛先とした通信相手の端末識別子であることを確認する。これにより、送信元無線端末10は、通信相手の無線端末との間で、センサ信号や制御コマンド等の情報の授受が可能となる。
【0035】
しかし、送信元無線端末10の通信相手が送信元無線端末10の無線通信範囲に存在しない場合には、無線送信パケットは、後述の中継無線端末20により中継されて、通信相手の無線端末(第2無線端末)に送信される。その後、送信元無線端末10は、中継無線端末20から通信相手の無線端末から返信されたパケットを受信する。この場合のために、送信元無線端末10は、演算部11に、代理処理検出部11a及び返信元変更部11bを有する。
【0036】
代理処理検出部11aは、後述の中継無線端末20によって代理パケットが送出されたことを検出する(通信検出手段)。中継無線端末20は、送信元無線端末10の無線通信範囲に存在している。このため、送信元無線端末10は、中継無線端末20が送信元無線端末10に代理して代理パケットを通信相手の無線端末に送信した場合、当該代理パケットを受信部14で受信できる。この時に、代理処理検出部11aは、受信した無線パケットの送信元識別子が中継無線端末20の端末識別子である、中継無線端末20が代理して生成したパケットであることの情報を検出する。これにより、送信元無線端末10は、先に送信した無線送信パケットが中継無線端末20により代理(中継)されたことを検出できる。
【0037】
返信元変更部11bは、代理処理検出部11aによって代理パケットを送出されたことが検出された場合に、送信した無線送信パケットの返信元として期待する端末識別子を、通信相手の無線端末の識別子から中継無線端末20の識別子に変更する(返信元変更手段)。すなわち、先に送信した無線送信パケットの返信パケットを、通信相手の無線端末の無線識別子である無線返信パケットではなく、中継無線端末20から送信された中継無線端末20の端末識別子が格納された代理返信パケットに変更する。
【0038】
これにより、送信元無線端末10は、後述する中継無線端末20によって無線送信パケットが中継されても、当該中継無線端末20から、通信相手の無線端末が返信したパケットを受信可能となる。
【0039】
中継無線端末20は、図3に示すように、演算部21、記憶部22、送信部23、受信部24を含む。演算部21は、他通信検出部21a、代理パケット生成部21b、代理返信パケット生成部21cを含む。この中継無線端末20は、記憶部や通信I/F回路、CPU及びプログラムを含むコンピュータであり、CPUがプログラムを実行する。これにより、中継無線端末20のプログラムは、中継無線端末20のコンピュータを、後述するように他通信を検出して、代理パケットの送信及び代理返信パケットの生成・送信する手段として機能させる。
【0040】
送信部23及び受信部24は、無線通信I/F回路等からなる。受信部24は、送信元無線端末10から送信された無線送信パケットを受信する。送信部23は、通信相手の無線端末に対して、送信元識別子として自己の端末識別子を含む代理パケットを送信する。また、送信部23は、送信元無線端末10に対して、送信元識別子として自己の端末識別子を含む代理返信パケットを送信する。
【0041】
記憶部22には、自己の端末識別子等が記憶されている。
【0042】
演算部21の他通信検出部21aは、無線通信範囲に存在する送信元無線端末10から送出された無線送信パケットを、受信部24を介して取得する。これにより、他通信検出部21aは、送信元無線端末10(第1無線端末)から通信相手の無線端末(第2無線端末)に無線送信パケットが送出されたことを検出する(通信検出手段)。
【0043】
代理パケット生成部21bは、他通信検出部21aにより送信元無線端末10から通信相手の無線端末に無線送信パケットが送出された後の所定時間内に通信相手の無線端末から送信元無線端末10に返信があるかを監視する。この所定時間は、無線送信パケットを受信した通信相手の無線端末が無線返信パケットを返信する標準的な時間以上であって、当該無線送信パケットが通信相手の無線端末に受信されていないと判断できる時間であり、予め設定されている。
【0044】
代理パケット生成部21bは、無線送信パケットの検出時から所定時間に亘って無線返信パケットが検出できない場合には、代理パケットを生成する。このとき、代理パケット生成部21bは、無線送信パケットの送信元識別子を自己(中継無線端末20)の識別子とし、自己が代理して生成した無線パケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する。そして、この代理パケットは、送信部23によって送出される。
【0045】
中継無線端末20は、代理パケットが通信相手の無線端末により受信され、当該通信相手の無線端末から無線返信パケットを受信した場合には、代理返信パケット生成部21cによって代理返信パケットを生成する。このとき、代理返信パケット生成部21cは、ヘッダ部の送信元を自己の端末識別子とし、データ部を無線返信パケットに含まれたデータ部と同じにする。そして、この代理返信パケットは、送信部23によって送出される。
【0046】
このように構成された無線通信システムにおいて、具体的な無線端末の動作について説明する。例えば、一般的な住宅において無線通信システムを導入した場合、30m〜40mを無線通信範囲とした無線方式を採用することによって、必要なホップ数(中継無線端末20の数)は0台又は1台となる。ホップ数が0の場合の動作を図4に示し、ホップ数が1台の場合の動作を図5に示す。
【0047】
図4(a)に示すように、送信元無線端末10としての送信元端末(S:第1無線端末、)と、通信相手の無線端末に相当する宛先端末(D:第2無線端末)とが、互いの無線通信範囲に存在する場合には、中継無線端末20なしで通信可能となる。
【0048】
図4(b)のように、送信元端末(S)が無線送信パケットの送出動作P1aを行ったことに応じて、宛先端末(D)は、無線送信パケットの受信動作P1bを行うことができる。その後、図4(c)のように、宛先端末(D)が無線返信パケット(ACK)の送出動作P2aを行ったことに応じて、送信元端末(S)は、無線返信パケットの受信動作P2bを行うことができる。
【0049】
図5(a)に示すように、宛先端末(D)と送信元端末(S)とが直接通信できない場合、宛先端末(D)と送信元端末(S)との間に存在する中継無線端末20としての中継端末(R)が中継を行う。
【0050】
図5(b)のように、送信元端末(S)が無線送信パケットの送出動作P1aを行うと、中継端末(R)は、無線送信パケットの受信動作P1bを行うことができる(図5(c))。その後、無線返信パケットの受信動作P2を行うべき所定時間が経過した場合、中継端末(R)は、代理パケットの送出動作P3aを行う(図5(c))。これに応じて、送信元端末(S)及び宛先端末(D)は、代理パケットの受信動作P3b、P3cを行うことができる(図5(b)、(d))。送信元端末(S)は、代理パケットを受信したことに応じて、返信されるパケットの送信元として期待する端末識別子を、宛先端末(D)の端末識別子から中継端末(R)の端末識別子に変更する。宛先端末(D)が代理パケットを受信したことに応じて、無線返信パケットの送出動作P4aを行うと(図5(d))、中継端末(R)は、無線返信パケットの受信動作P4bを行うことができる(図5(c))。中継端末(R)は、無線返信パケットを用いて、自己の端末識別子を送信元にした代理返信パケットを生成して、送出動作P5aを行う(図5(c))。これにより、送信元端末(S)は、無線送信パケットの返信パケットとして、代理返信パケットの受信動作P5bを行うことができる(図5(b))。
【0051】
以上のように、この無線通信システムによれば、無線端末に記憶された経路情報を用いなくても無線端末間で無線通信ができる。例えば一般の住宅などは、無線端末の無線通信能力からすると、リピート(中継)回数は通常1回である。このため、中継端末(R)が送信元端末(S)から宛先端末(D)への通信が不良であった場合に、中継端末(R)によって代理の通信を行い、代理されたことを検出した送信元端末(S)が
からの返信を待ち受ける。本実施形態によれば、送信元端末(S)でも、中継端末(R)でも、ルーティングテーブルそのものを持つ必要が無いため、無線端末のメモリ容量を抑制でき、安価なシステムを構築できる。
【0052】
ここで、既存の技術として、アクセスポイント(宛先端末)からの電波の受信強度を測定して、中継するかどうかを決定する処理を行い、宛先端末の台数分だけ中継端末に受信強度を記憶しておくものがある。これに対し、本実施形態の無線通信システムによれば、中継端末(R)によって宛先端末(D)からの電波の受信強度を測定して、宛先端末(D)との間で送受信されるパケットを中継するかどうかを決定する処理が不要となる。また、この無線通信システムは中継端末(R)に、宛先端末(D)との受信強度を格納するメモリも必要ない。更に、複数の宛先端末(D)がある場合には、台数分の受信強度格納メモリが必要となるが、この無線通信システムによれば、当該受信強度のためのメモリ量の必要がない。したがって、この無線通信システムによれば、安価なシステムを構築できる。
【0053】
なお、この無線通信システムにおいては、図6(a)に示すように、複数の中継端末(R1)、中継端末(R2)が存在することもある。中継端末(R1)及び中継端末(R2)は宛先端末(D)及び送信元端末(S)の双方と無線通信可能である。
【0054】
この場合、送信元端末(S)によって無線送信パケットの送出動作P1aがされると(図6(b))、中継端末(R1)及び中継端末(R2)は当該無線送信パケットの受信動作P1b、P1cを行う(図6(c)、(d))。その後、送信元端末(S)は、宛先端末(D)からの無線返信パケットの受信(D→S)を待つが、宛先端末(D)は送信元端末(S)からの無線送信パケットを受信していないために、宛先端末(D)からの無線返信パケットは届かない。そして、無線返信パケットの受信動作P2を行うべき所定時間が経過すると、中継端末(R1)は、代理パケット(R→D)の送出動作P3aを行う(図6(c))。一方、中継端末(R2)は、中継端末(R1)との間でパケット送信タイミングをずらすために、当該タイミングでは代理パケット(R→D)を送信しない。
【0055】
これに応じて、送信元端末(S)及び宛先端末(D)は、代理パケットの受信動作P3b、P3cを行うことができる(図6(b)、(e))。送信元端末(S)は、代理パケットを受信したことに応じて、無線返信パケットの送信元として期待する端末識別子を、宛先端末(D)の端末識別子から、中継端末(R1)の端末識別子に変更する。
【0056】
次に、宛先端末(D)が代理パケットを受信したことに応じて、無線返信パケットの送出動作P4aを行うと(図6(e))、無線送信パケットは、中継端末(R1)と中継端末(R2)の双方で受信動作P4c、P4bされる(図6(c)、(d))。このとき、中継端末(R2)は、宛先端末(D)から無線返信パケット(D→R)を受信したので、代理パケット(R→D)を送信しないことを判断する。このように、中継端末(R2)は、送信元端末(S)から送信された無線返信パケットを受信した後の期間Tにおいて、自身が代理パケットを送信する順番まで待ち、代理パケットを受信したので、代理パケットを送信する動作をしないと判断する。
【0057】
その後、中継端末(R1)は、代理返信パケットを生成して送信動作P5aを行い、送信元端末(S)は、中継端末(R1)から送信された代理返信パケットの受信動作P5bを行うことができる。
【0058】
この無線通信システムによれば、中継端末が複数存在する場合であっても、双方の中継端末から送信されたパケットが衝突することはなく、確実に通信を行うことができる。また、この無線通信システムでは、複数の中継端末で無駄に送信をすることがないので、通信帯域を有効に活用できる。
【0059】
[第2実施形態]
つぎに、第2実施形態に係る無線通信システムついて説明する。なお、上述の第1実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0060】
第2実施形態として示す無線通信システムは、中継端末(R)が通信不可である無線端末宛の代理パケットを生成しないものである。
【0061】
中継無線端末20は、送信部23から代理パケットを送出した結果として、通信相手の無線端末との間の無線通信が不能であった場合に、当該無線端末が通信不可端末であることを記憶部22に記憶させる(通信不可端末記憶手段)。そして、代理パケット生成部21bは、記憶部22に通信不可として記憶されている通信相手の無線端末宛てには代理パケットを生成しない。すなわち、代理パケット生成部21bは、送信元無線端末10から通信相手の無線端末に無線送信パケットが送出された後の所定時間内に通信相手の無線端末から返信がないと検出した場合であっても、代理パケットを生成しない。
【0062】
具体的には、無線通信システムにおいて、図7(a)のように送信元端末(S)と宛先端末(D)とが相互に無線通信可能であり、送信元端末(S)とは無線通信可能であるが宛先端末(D)とは無線通信ができない無関係端末(A)が存在することもある。
【0063】
この場合、送信元端末(S)が無線送信パケットの送出動作P1aを行うと(図7(b))、宛先端末(D)による受信動作P1bのみならず(図7(c))、無関係端末(A)による受信動作P1cが行われてしまう(図7(d))。宛先端末(D)は、送信元端末(S)に無線返信パケットの送出動作P2aを行い(図7(c))、送信元端末(S)は、無線返信パケットの受信動作P2bを行う(図7(b))。
【0064】
一方、無関係端末(A)は、中継無線端末20として機能しようとして、無線送信パケットの受信後の所定時間に亘る待機動作P2cにおいて無線返信パケットを受信できない。この場合、無関係端末(A)は、宛先端末(D)を宛先とした代理パケットの送信動作P3を行う(図7(d))。しかし、宛先端末(D)は無関係端末(A)の無線通信範囲には存在しないために、無関係端末(A)による無線返信パケットの受信動作P4は行われない(図7(d))。したがって、無関係端末(A)は、宛先端末(D)を、通信相手の無線端末として記憶部22に記憶させることができる。このために、宛先端末(D)を通信不可の無線端末として登録した後に、送信元端末(S)から無線送信パケットが送信されても、代理パケットを送信することが無く、不要な代理パケットが送信されることを回避できる。
【0065】
また、この無線通信システムにおいて、記憶部22に記憶された通信不可端末の情報を定期的に消去することが望ましい。これにより、例えば照明リモコン3のように移動する無線端末が無線通信システムに含まれる場合に、配置変更等に対応することができる。例えば、送信元無線端末10の場所が移動して中継無線端末20によって中継可能となったにも拘わらず、通信不可とすることを回避できる。
【0066】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 無線コントローラ
2a 窓センサ
2b 煙センサ
2c 人感センサ
2d 電力センサ
3 照明リモコン
4 照明器具
5 ブザー
10 送信元無線端末
11 演算部
11a 代理処理検出部
11b 返信元変更部
12 記憶部
13 送信部
14 受信部
20 中継無線端末
21 演算部
21a 他通信検出部
21b 代理パケット生成部
21c 代理返信パケット生成部
22 記憶部
23 送信部
24 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末と少なくとも一つの中継装置とを含む無線通信システムであって、
前記中継装置は、
第1無線端末から第2無線端末にパケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、
前記通信検出手段により前記第1無線端末から前記第2無線端末にパケットが送出された後の所定時間内に前記第2無線端末から返信がない場合に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する代理パケット生成手段と、
前記第2無線端末からの返信があった場合に、当該第2無線端末からの返信パケットの送信元識別子を自己の識別子に変更し、当該返信パケットの送信先識別子を前記第1無線端末の識別子に変更した代理返信パケットを生成する代理返信パケット生成手段と、
前記代理パケット及び前記代理返信パケットを送出する通信手段とを含み、
前記第1無線端末は、
前記中継装置によって前記代理パケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、
前記通信検出手段により前記代理パケットを送出されたことが検出された場合に、前記送信したパケットの返信元として期待する識別子を、前記第2無線端末の識別子から前記中継装置の識別子に変更する返信元変更手段とを含むこと
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記中継装置は、前記通信手段から前記代理パケットを送出した結果として、前記第2無線端末との間の無線通信が不能であった場合に、前記第2無線端末が通信不可端末であることを記憶する通信不可端末記憶手段を更に備え、
前記代理パケット生成手段は、前記通信不可端末記憶部に記憶されている前記第2無線端末宛ての前記代理パケットを生成しないこと
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記中継装置は、前記通信不可端末記憶部に記憶された通信不可端末の情報を定期的に消去することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
複数の無線端末と無線通信可能な中継装置であって、
第1無線端末から第2無線端末にパケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、
前記通信検出手段により前記第1無線端末から前記第2無線端末にパケットが送出された後の所定時間内に前記第2無線端末から返信がない場合に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する代理パケット生成手段と、
前記第2無線端末からの返信があった場合に、当該第2無線端末からの返信パケットの送信元識別子を自己の識別子に変更し、当該返信パケットの送信先識別子を前記第1無線端末の識別子に変更した代理返信パケットを生成する代理返信パケット生成手段と、
前記代理パケット及び前記代理返信パケットを送出する通信手段と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項5】
複数の無線端末と無線通信可能な中継装置のプログラムであって、
前記中継装置のコンピュータを、
第1無線端末から第2無線端末にパケットが送出されたことを検出する通信検出手段と、
前記通信検出手段により前記第1無線端末から前記第2無線端末にパケットが送出された後の所定時間内に前記第2無線端末から返信がない場合に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットを生成する代理パケット生成手段と、
前記第2無線端末からの返信があった場合に、当該第2無線端末からの返信パケットの送信元識別子を自己の識別子に変更し、当該返信パケットの送信先識別子を前記第1無線端末の識別子に変更した代理返信パケットを生成する代理返信パケット生成手段と、
前記代理パケット及び前記代理返信パケットを送出する通信手段
として機能させることを特徴とする中継装置のプログラム。
【請求項6】
少なくとも一つの中継装置と無線通信可能な無線端末であって、
前記中継装置との間でパケットを授受可能な通信手段と、
前記通信手段により無線送信パケットを送信した後に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットが前記中継装置により送出されたことを検出する通信検出手段と、
前記通信検出手段により前記代理パケットを送出されたことが検出された場合に、前記送信したパケットの返信元として期待する識別子を、前記第2無線端末の識別子から前記中継装置の識別子に変更する返信元変更手段と
を備えることを特徴とする無線端末。
【請求項7】
少なくとも一つの中継装置と無線通信可能な無線端末のプログラムであって、
前記無線端末のコンピュータを、
前記中継装置との間でパケットを授受可能な通信手段と、
前記通信手段により無線送信パケットを送信した後に、送信元識別子を自己の識別子とし、自己が代理して生成したパケットであることの情報を付加した代理パケットが前記中継装置により送出されたことを検出する通信検出手段と、
前記通信検出手段により前記代理パケットを送出されたことが検出された場合に、前記送信したパケットの返信元として期待する識別子を、前記第2無線端末の識別子から前記中継装置の識別子に変更する返信元変更手段
として機能させることを特徴とする無線端末のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−199841(P2012−199841A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63517(P2011−63517)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】