説明

無線通信システム、通信装置及び無線通信方法

【課題】複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用したサービスを行う場合に、隣接するセルの境界近辺でユーザ同士が干渉し合う状況にあっても、無線品質の劣化の影響を減少させることができる無線通信システム、通信装置及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】無線通信におけるタイムスロットを割り当てるタイムスロット割当部14と、無線通信を実行時に通信データの種別を検出するデータ種別検出部16と、特定種別データを検出した際、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するタイムスロットパターン設定部17と、決定されたタイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行する通信制御部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、RTP(Real time Transport Protocol)パケットの伝送に際し、無線品質を確保するために無線リソースを制御する無線通信システム、通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RTPパケットを無線通信システムで伝送する場合の無線リソース割り当て方法として、例えば、時分割多重接続(Time Division Multiple Access:TDMA)システムにおけるタイムスロット(Timeslot)割り当て方法が知られている。
図5は、通信フレーム構成例を示す説明図である。図5に示すように、1フレームを、例えば、4タイムスロットで構成する場合、送信(下り)と受信(上り)においてタイムスロット1をユーザXにタイムスロット3をユーザYに割り当てる。
【0003】
通常、TDMAシステムにおいて、一度割り当てたタイムスロットは、無線品質に不都合が無ければ基本的にその呼が終話するまで、割り当てられたタイムスロットで固定される。
なお、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)システムにおいては、盗聴防止及び干渉波回避を目的として、多くの場合、周波数を変化させる周波数ホッピングが用いられる。このように、周波数ホッピング・スペクトル拡散(Frequency Hopping Spread Spectrum:FHSS)方式により信号を送受信するものとして、例えば、「送受信装置」(特許文献1参照)が知られている。
【0004】
ところで、前述した無線通信システムでは、複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用してサービスをする場合、セルが重複する部分では干渉が生じてしまう。
図6は、複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用する場合の干渉の発生について示し、(a)はセルの重複状態の説明図、(b)はユーザ同士における干渉発生の説明図である。図6に示すように、複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用したサービスを行う場合、各基地局のセル(A〜D)が重複する部分((a)破線参照)、即ち、セルA〜セルDのエッジ周辺で端末の密度が高い箇所では、同じ周波数/タイムスロットを使用するユーザ(端末)同士が近隣に存在するため、ユーザ同士が干渉し合うことになる。
【0005】
つまり、隣接するユーザ同士、例えば、セルBとセルDにおいて、セルBの周波数1(f1)ではタイムスロット2,3が、セルDの周波数1(f1)ではタイムスロット1,3,4が、それぞれ割り当てられ使用されているため、セルBとセルDにおいては、周波数1(f1)のタイムスロット3同士が干渉し合い互いに妨害してしまうことになる((b)☆印参照)。
同様に、セルBとセルDにおいて、周波数2(f2)ではタイムスロット2同士が、周波数3(f3)ではタイムスロット4同士が、周波数4(f4)ではタイムスロット1,4同士が干渉し合い、互いに妨害してしまうことになる((b)☆印参照)。
【0006】
このような場合、タイムスロット同士の衝突を回避する必要がある。
図7は、タイムスロット同士の衝突を回避する方法の一例を示す説明図である。図7に示すように、セルBとセルDにおいて、周波数1(f1)のタイムスロット3がそれぞれ割り当てられ使用されており、周波数2(f2)のタイムスロット2がそれぞれ割り当てられ使用されている場合、タイムスロット同士の衝突を回避するため、通常、次のように対応する。
【0007】
セルBとセルDにおいて、周波数1(f1)のタイムスロット3同士が干渉し合い互いに妨害してしまうので、セルDの周波数2(f2)のタイムスロット2を周波数1(f1)のタイムスロット1に移動させ、また、周波数2(f2)のタイムスロット2同士が干渉し合い互いに妨害してしまうので、セルDの周波数2(f2)のタイムスロット2を周波数1(f1)のタイムスロット1に移動させる。
つまり、タイムスロット同士が互いに妨害し合う影響で無線品質が劣化してしまうのを回避するため、干渉し合うタイムスロットの一方を、無線品質の良い周波数や他のタイムスロットへと移動させるチャネル切り替えを行う。
【0008】
このチャネル切り替えの具体例を説明する。例えば、セルBの周波数1(f1)のタイムスロット3を使用しているユーザAが、隣接するセルDの境界近辺に存在し(図6(a)参照)、接続先の基地局(Base Station:BS)が遠方にあるため大きな送信出力で通信しているとする。ユーザAの近くにはユーザBが存在し、このユーザBは、無線状況等の条件からセルDの基地局と接続していると共に、RTPを使用してVoIP(Voice over Internet Protocol)で通信しているとする。
【0009】
図8は、タイムスロット同士が干渉し合う場合のチャネル切り替えの具体例の説明図である。図8に示すように、セルBの周波数1(f1)ではタイムスロット2,3が使用されており、セルDの周波数1(f1)ではタイムスロット3,4が使用されている。このような状況において、ユーザAの出力がユーザBにとって妨害波となってしまう場合、通常、ユーザBは、無線状況を示す表示、例えば、受信レベル検出(Received Signal Strength Indicator:RSSI)等を所定のフレーム数について統計処理し、無線状況が悪化したと判断する閾値を超えると、別の無線リソースに移動することとなる。
【特許文献1】特開平07−177059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ユーザAの出力がユーザBにとって妨害波となってしまう状況の発生から、RSSI等の統計処理を行って無線状況が悪化したと判断する迄の間、ユーザBは妨害を受け続けることになるため、エラーが発生しパケットが欠落する虞があり、最悪の場合、ユーザBの通信音声が途切れてしまうことになる。
また、他の無線リソースへ移動させるチャネル切り替えによる対応は、基地局の他の無線リソースが空いていれば、チャネルを切り替えて干渉波を回避することもできるが、無線リソースが他のユーザの使用により埋まっていると、チャネル切り替えができず接続が切断されてしまうこともある。
【0011】
この発明の目的は、複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用したサービスを行う場合に、隣接するセルの境界近辺でユーザ同士が干渉し合う状況にあっても、無線品質の劣化の影響を減少させることができる無線通信システム、通信装置及び無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、この発明に係る無線通信システムは、第1の通信装置と第2の通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて時分割多元接続方式による無線通信を実行する無線通信システムであって、前記無線通信におけるタイムスロットを割り当てるタイムスロット割当部と、前記タイムスロット割当部で割り当てられたタイムスロットで前記無線通信を実行しているときに、通信データの種別を検出するデータ種別検出部と、前記データ種別検出部で特定種別のデータが検出された場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するタイムスロットパターン設定部と、前記タイムスロットパターン設定部で設定された前記タイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行する通信制御部とを備えることを特徴としている。
【0013】
また、この発明において、前記タイムスロットパターン設定部は、前記データ種別検出部で特定種別のデータが検出された場合には、所定数分連続した複数の前記通信フレームについて、同じ周波数内で、互いに異なるタイムスロットの割り当てを設定することが好ましい。
【0014】
また、この発明において、前記所定数は、前記通信フレームにおけるタイムスロット数であることが好ましい。
また、この発明において、前記第1の通信装置は、複数の前記タイムスロットの割り当てパターンを予め記憶する記憶部と、前記タイムスロットパターン設定部とを備え、前記タイムスロットパターン設定部は、複数の前記第2の通信装置に対して、前記記憶部に記憶された複数のタイムスロットの割り当てパターンの内、割り当てられるパターンが互いに異なるパターンになるように決定することが好ましい。
【0015】
また、この発明において、前記記憶部は、周波数リソースに応じて複数の前記タイムスロットの割り当てパターンを予め記憶し、前記タイムスロットパターン設定部は、前記第2の通信装置に対して、当該第2の通信装置が使用している周波数リソースに応じて、前記記憶部に記憶された前記パターンの内、前記複数の通信フレームにおけるタイムスロットの割り当てパターンを決定することが好ましい。
また、この発明において、前記特定種別のデータは、音声データであることが好ましい。
【0016】
上記目的を達成するため、この発明に係る通信装置は、相手側通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて時分割多元接続方式による無線通信を実行する通信装置であって、前記無線通信におけるタイムスロットを割り当てるタイムスロット割当部と、前記タイムスロット割当部で割り当てられたタイムスロットで前記無線通信を実行しているときに、通信データの種別を検出するデータ種別検出部と、前記データ種別検出部で特定種別のデータが検出された場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するタイムスロットパターン設定部と、前記タイムスロットパターン設定部で設定された前記タイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行する通信制御部とを備えることを特徴としている。
【0017】
上記目的を達成するため、この発明に係る無線通信方法は、第1の通信装置と第2の通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて時分割多元接続方式による無線通信を実行する無線通信方法であって、前記無線通信におけるタイムスロットを割り当てるステップと、前記割り当てられたタイムスロットで前記無線通信を実行しているときのデータが、特定種別のデータである場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するステップと、前記決定された前記タイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行するステップとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用したサービスを行う場合に、隣接するセルの境界近辺でユーザ同士が干渉し合う状況にあっても、無線品質の劣化の影響を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る基地局の回路構成を示すブロック図である。図1に示すように、基地局(第1の通信装置)10は、無線通信部11、制御部12、及びネットワークインタフェース(I/F)13を有し、制御部12は、タイムスロット割当部14、記憶部15、データ種別検出部16、タイムスロットパターン設定部17、及び通信制御部18を有している。
【0020】
この基地局10は、通信装置として、ネットワークを構成する携帯端末装置(端末)等の他の通信装置(第2の通信装置)と共に無線通信システムを構成しており、他の通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて、TDMA方式による無線通信を実行する。
【0021】
無線通信部11は、アンテナ11aを有しており、このアンテナ11aを介して、他の通信装置との無線通信を行う。制御部12は、無線通信部11からの入力情報に基づき、タイムスロット割当部14、記憶部15、データ種別検出部16、タイムスロットパターン決定部17、及び通信制御部18の各動作を制御してそれぞれの機能要素を実現し、通信制御情報をネットワークI/F13へ出力する。ネットワークI/F13は、パケットを送受信するパケット送受信部であり、基地局と無線通信ネットワーク(図示しない)を接続し、制御部12から出力された通信制御情報を伝送信号として無線通信ネットワークへ送出する。
【0022】
タイムスロット割当部14は、無線通信におけるタイムスロットの割り当てを行い、記憶部15は、複数のタイムスロットの割り当てパターンを予め記憶しており、この割り当てパターンは、例えば、周波数リソースに応じてそれぞれが異なって設けられている。データ種別検出部16は、タイムスロット割当部14で割り当てられたタイムスロットで無線通信を実行しているときに、通信データの種別、即ち、通信データがVoIPや動画ストリーミング等の何れであるかを検出する。
【0023】
タイムスロットパターン設定部17は、データ種別検出部16で特定種別のデータ、即ち、音声データが検出された場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なるタイムスロットの割り当てを設定し、この設定に基づいて、複数の通信フレームにおけるタイムスロットの割り当てパターンを決定する。ここで、所定数は、通信フレームにおけるタイムスロット数とする。このタイムスロットの割り当てに際しては、一部の通信フレーム間ではなく、所定数分連続した複数の通信フレームのそれぞれの間で、互いに異なるタイムスロットを割り当てても良い。
【0024】
また、タイムスロットパターン設定部17は、複数の他の通信装置に対して設定するパターンを、記憶部15に記憶された複数のタイムスロットの割り当てパターンの内、他の通信装置それぞれで互いに異なるパターンになるように選択して決定し、或いは、他の通信装置が使用している周波数リソースに応じて、記憶部15に記憶されたパターンの内、複数の通信フレームにおけるタイムスロットの割り当てパターンを選択し決定する。
例えば、1ユーザ端末に対して複数の周波数を割り当てた通信(マルチキャリア通信)を実行している場合には、割り当てた複数の周波数の内の各周波数に対し、各周波数毎に異なるタイムスロットの割り当てパターンとなるように、割り当てパターンを決定する。
【0025】
通信制御部18は、タイムスロットパターン設定部17で決定されたタイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行する。
次に、この発明に係る基地局10において行われるタイムスロット割り当てによる無線通信方法を説明する。
図2は、図1の基地局による無線通信方法を具体的に示し、(a)はセルBの周波数1のフレーム構成説明図であり、(b)はタイムスロットをホッピングした状態のセルDの周波数1のフレーム構成説明図である。
【0026】
図2に示すように、例えば、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いてTDMAによる無線通信を行っている場合において、セルBとセルDが隣接しており(図6(a)参照)、セルBの周波数1(f1)でタイムスロット2,3が使用されている。このセルBの周波数1(f1)でタイムスロット3を使用しているユーザの近隣に、セルDの周波数1(f1)でタイムスロット3を使用しているユーザが存在することにより、周波数1(f1)のタイムスロット3同士が干渉し合い、セルBの周波数のタイムスロット3と同じ周波数のタイムスロット3を使用しているセルDのユーザに妨害を与えているとする。
【0027】
このとき、セルDのユーザが音声データであるVoIPで通信中である場合、このままでは、通信中の音声が途切れて通話の中断が起こり得る。
そこで、タイムスロットをホッピングする。つまり、タイムスロットパターン設定部17は、データ種別検出部16で特定種別のデータ、即ち、音声データが検出された場合、所定数(通信フレームにおけるタイムスロット数、例えば4の場合を図示)分連続した複数の通信フレームについて、例えば、順番にタイムスロット3、タイムスロット1、タイムスロット4、タイムスロット2と、異なるタイムスロット(タイムスロット1〜4)を割り当てる。
【0028】
そして、この設定に基づき、複数(例えば4個)の通信フレームにおけるタイムスロットの割り当てパターンを決定する。
この結果、影響を受けるタイムスロット3を、複数(例えば、4の場合を図示)の通信フレームに一回とする((b)参照)ことができるので、通話(音声)における影響は殆ど表れない。
図3は、ホッピングの割り当てパターンの一例を示す説明図である。図3に示すように、規定値に対応するパターンとして、例えば、同じ周波数内で、順番にタイムスロット(タイムスロット1〜4)を割り当てたホッピングパターンを準備しておく。
【0029】
このホッピングパターンは、タイムスロットの割り当てが、(1)タイムスロット3、タイムスロット1、タイムスロット2、タイムスロット4、(2)タイムスロット2、タイムスロット4、タイムスロット1、タイムスロット3、(3)タイムスロット1、タイムスロット3、タイムスロット4、タイムスロット2、(4)タイムスロット4、タイムスロット2、タイムスロット3、タイムスロット1となっている。
【0030】
このように、タイムスロットパターン設定部17が選択するホッピングパターンを準備しておき、基地局が自局の無線リソース(周波数リソース)の利用状況により(1)から(4)迄のパターンのどれを使用するかを決定する。なお、図3のホッピングパターンは、タイムスロットを無作為に配置したパターンでも良いが、例えば、パターン(1)を1フレーム毎にずらした4パターンとしても良い。
また、特定種別のデータがVoIP等であって、パケットが発生する時間が無線区間の1フレーム時間より長い場合、例えば、VoIPパケットは20msに1回発生し、1フレームは5msの場合、を考慮して、1つのタイムスロットを複数のユーザ(端末)で順番に使用する(例えば、3ユーザでホッピングパターン(1)を共有する)ような割り当てでも良い。
【0031】
図4は、図1の基地局による無線通信方法の処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すように、先ず、無線通信端末(端末)から通信開始の要求がある(ステップS101)と、基地局は、端末に対して使用周波数とタイムスロットの割り当てを行う(ステップS102)。その後、基地局は、割り当てられたタイムスロットで通信を開始し(ステップS103)、無線通信を実行している時のデータが特定種別のデータ、即ち、通信内容がRTPであることが判明する(ステップS104)と、タイムスロットの割り当てパターン(ホッピングパターン)を決定する(ステップS105)。このタイムスロットの割り当てパターンは、例えば、順番にタイムスロット3、タイムスロット1、タイムスロット4、タイムスロット2とする(図2参照)。つまり、連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定する。
【0032】
タイムスロットの割り当てパターンを決定すると、割り当てパターンに基づくタイムスロットのホッピングを開始するように、基地局がタイムスロットの割り当て直しを行った(ステップS106)後、基地局は、端末との間でタイムスロットのホッピングを行って通信を継続する(ステップS107)。
上記処理により、基地局が、タイムスロットの割り当てパターンを決定して(ステップS105)から、タイムスロットの割り当て直しを行い、端末との間でタイムスロットのホッピングによる通信を継続する(ステップS107)迄の間は、喩え無線品質が劣化することはあっても通信が途切れてしまうことはない。
【0033】
これに対し、タイムスロットのホッピングを行わない従来の無線通信においては、基地局と端末との間で通信を開始した後、例えば、無線品質が悪化した場合、端末において現在の通信状況を数通信フレーム分モニタしてチャネル切り替えを要求し、要求後、チャネル切り替えを実施して妨害を除去していた。このため、例えば、無線品質が悪化してからチャネル切り替えを要求しチャネル切り替えを実施する迄の間は、無線品質が劣化するため音声が途切れてしまう虞があった。
【0034】
つまり、通常のデータ通信は、固定スロットによって通信しているため、VoIPの呼をタイムスロットのホッピングを行うことで、複数ユーザ間における通信干渉(衝突)による無線品質の劣化の影響を減少させることができる。干渉回避のためには、チャネル切り替え、即ち、ホッピングのための割り当て直しの動作は発生するが、他の空きリソースが無い等の場合に切断されることが無くなる。上述した例の場合、4フレームに1回は衝突してパケットをロスする可能性があるが、残りの3フレームの無線品質は良好であるため、パケットを正常に受信することができる。
【0035】
このように、この実施の形態に係る無線通信システム、すなわち、複数の基地局が同時に複数のキャリアを使用してサービスするシステムでは、VoIPや動画ストリーミングのためにRTP/UDP(User Datagram Protocol)を使用してサーバ側から端末にパケットを送信する場合、混雑したエリアでは、周波数ホッピングによる妨害抑制効果に加えて、時間ダイバーシティ効果を狙ったタイムスロットのホッピングを実施することで、無線品質を向上させることができる。
【0036】
なお、上述した実施例において説明した内容は、時分割多元接続(TDMA)−時分割複信(Time Division Duplex:TDD)のシステムだけでなく、WiMAX(Worldwide interoperability for Microwave Access)のようなOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)通信においても適用することができる。
【0037】
つまり、OFDMA通信においても、予め確保されるQoS(Quality of Service)レベルに従って、必要な場合にはタイムスロットをホッピングさせるように基地局のスケジューラを制御することにより、隣接するセルから受ける影響を少なくすることができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態により説明したが、この実施の形態に限定されるものではない。従って、本発明の趣旨を逸脱することなく変更態様として実施するものも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施の形態に係る基地局の回路構成を示すブロック図である。
【図2】図1の基地局による無線通信方法を具体的に示し、(a)はセルBの周波数1のフレーム構成説明図であり、(b)はタイムスロットをホッピングした状態のセルDの周波数1のフレーム構成説明図である。
【図3】ホッピングの割り当てパターンの一例を示す説明図である。
【図4】図1の基地局による無線通信方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】通信フレーム構成例を示す説明図である。
【図6】複数の基地局が同時に広帯域周波数を使用する場合の干渉の発生について示し、(a)はセルの重複状態の説明図、(b)はユーザ同士における干渉発生の説明図である。
【図7】タイムスロット同士の衝突を回避する方法の一例を示す説明図である。
【図8】タイムスロット同士が干渉し合う場合のチャネル切り替えの具体例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 基地局
11 無線通信部
11a アンテナ
12 制御部
13 ネットワークインタフェース
14 タイムスロット割当部
15 記憶部
16 データ種別検出部
17 タイムスロットパターン設定部
18 通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置と第2の通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて時分割多元接続方式による無線通信を実行する無線通信システムであって、
前記無線通信におけるタイムスロットを割り当てるタイムスロット割当部と、
前記タイムスロット割当部で割り当てられたタイムスロットで前記無線通信を実行しているときに、通信データの種別を検出するデータ種別検出部と、
前記データ種別検出部で特定種別のデータが検出された場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するタイムスロットパターン設定部と、
前記タイムスロットパターン設定部で設定された前記タイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行する通信制御部と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記タイムスロットパターン設定部は、
前記データ種別検出部で特定種別のデータが検出された場合には、所定数分連続した複数の前記通信フレームについて、同じ周波数内で、互いに異なるタイムスロットの割り当てを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記所定数は、前記通信フレームにおけるタイムスロット数であることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の通信装置は、
複数の前記タイムスロットの割り当てパターンを予め記憶する記憶部と、
前記タイムスロットパターン設定部とを備え、
前記タイムスロットパターン設定部は、
複数の前記第2の通信装置に対して、前記記憶部に記憶された複数のタイムスロットの割り当てパターンの内、割り当てられるパターンが互いに異なるパターンになるように決定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記記憶部は、
周波数リソースに応じて複数の前記タイムスロットの割り当てパターンを予め記憶し、
前記タイムスロットパターン設定部は、
前記第2の通信装置に対して、当該第2の通信装置が使用している周波数リソースに応じて、前記記憶部に記憶された前記パターンの内、前記複数の通信フレームにおけるタイムスロットの割り当てパターンを決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記特定種別のデータは、音声データであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
相手側通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて時分割多元接続方式による無線通信を実行する通信装置であって、
前記無線通信におけるタイムスロットを割り当てるタイムスロット割当部と、
前記タイムスロット割当部で割り当てられたタイムスロットで前記無線通信を実行しているときに、通信データの種別を検出するデータ種別検出部と、
前記データ種別検出部で特定種別のデータが検出された場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するタイムスロットパターン設定部と、
前記タイムスロットパターン設定部で設定された前記タイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行する通信制御部と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項8】
第1の通信装置と第2の通信装置との間で、複数のタイムスロットを有する通信フレームを用いて時分割多元接続方式による無線通信を実行する無線通信方法であって、
前記無線通信におけるタイムスロットを割り当てるステップと、
前記割り当てられたタイムスロットで前記無線通信を実行しているときのデータが、特定種別のデータである場合には、所定数分連続した複数の通信フレームについて、同じ周波数内で、少なくとも一部の通信フレーム間では異なったタイムスロットの割り当てを設定するステップと、
前記決定された前記タイムスロットの割り当てパターンを繰り返した通信を実行するステップと
を備えることを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−267861(P2009−267861A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116360(P2008−116360)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】