説明

無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】従来よりも使用条件を緩和して利便性を高めることができる無線通信システムおよび無線通信方法を提供する。
【解決手段】無線通信システムは、無線ホスト20と、無線ホスト20と超広帯域の無線通信を行う無線クライアント30と、を有して構成されている。そして、無線クライアント30は、自身に交流電源が接続された場合に、無線ホスト20に向けて、交流電源が接続されたことを知らせるAC接続情報を送信し、無線ホスト20は、無線クライアント30からAC接続情報を受信した場合に、自身に交流電源が接続されていなくても無線クライアント30と無線通信を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ホストと超広帯域(UWB)の無線通信を行う無線クライアントを有して構成された無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線ホストと超広帯域の無線通信を行う無線クライアントを有して構成された無線通信システムが広く知られている。例えば、特許文献1には、無線ホストであるメインコンピュータと、無線クライアントである通信プロトコルHUBを備えた無線通信システムが開示されている。
【特許文献1】特表2003−508952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、国内電波法の規制により、超広帯域の無線通信を行うためには無線ホストと無線クライアントの双方に交流電源を接続する必要があった。このため、交流電源の確保が困難な場所(例えば、屋外や、交流電源の数が限られている場所)では無線通信を行えない場合があり、使用条件が著しく制約されるといった問題点があった。
【0004】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、従来よりも使用条件を緩和して利便性を高めることができる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明は、無線ホストと、前記無線ホストと超広帯域の無線通信を行う無線クライアントと、を有して構成された無線通信システムであって、前記無線クライアントは、自身に交流電源が接続された場合に、前記無線ホストに向けて、交流電源が接続されたことを知らせるAC接続情報を送信し、前記無線ホストは、前記無線クライアントから前記AC接続情報を受信した場合に、自身に交流電源が接続されていなくても前記無線クライアントと前記無線通信を開始することを特徴とする、無線通信システムである。
【0006】
(2)本発明はまた、前記無線ホストは、交流電源および直流電源の双方で駆動可能であることを特徴とする、前記(1)に記載の無線通信システムである。
【0007】
(3)本発明はまた、前記無線ホストは、パーソナルコンピュータであり、前記無線クライアントは、前記パーソナルコンピュータの周辺機器が複数接続可能な無線HUB、または単体の無線機器であることを特徴とする、前記(2)に記載の無線通信システムである。
【0008】
(4)本発明はまた、無線ホストと、前記無線ホストと超広帯域の無線通信を行う無線クライアントと、を有して構成された無線通信システムで実行される無線通信方法であって、前記無線クライアントは、自身に交流電源が接続された場合に、前記無線ホストに向けて、交流電源が接続されたことを知らせるAC接続情報を送信し、前記無線ホストは、前記無線クライアントから前記AC接続情報を受信した場合に、自身に交流電源が接続されていなくても前記無線クライアントと前記無線通信を開始することを特徴とする、無線通信方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る無線通信システムおよび無線通信方法によれば、従来よりも使用条件を緩和して利便性を高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る無線通信システム10について詳細に説明する。
【0011】
<全体構成>
最初に、無線通信システム10の全体構成について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る無線通信システム10の全体構成を示したブロック図である。
【0013】
この無線通信システム10は、無線ホスト20と、この無線ホスト20と超広帯域の無線通信(UWB無線通信)を行う無線クライアント30と、を有して構成されている。なお、本実施形態では、無線ホスト20として、交流電源および直流電源(バッテリや電池)の双方で駆動可能なノート型のパーソナルコンピュータを適用し、無線クライアント30として、複数のUSBポートを備えたUSB無線HUBを適用する。ここで、UWB(Ultra Wide Band)とは、数GHzの帯域を利用した超広帯域の無線方式であり、UWB無線通信自体は公知の技術である。
【0014】
<無線ホスト>
次に、無線ホスト20について説明する。
【0015】
無線ホスト20は、CPUやメモリなどを有する制御部21と、UWB無線通信の制御を行う無線通信部22と、を備えている。制御部21は、無線通信部22などを制御するCPUや、OSや各種のアプリケーション、デバイスドライバなどを記憶するためのメモリなどを備えており、後述する制御部21の各処理は、メモリに予め記憶(インストール)されたデバイスドライバ(制御プログラム)によって実現される。無線通信部22は、アンテナ22aによって受信した無線信号を制御部21が解析可能なデータに変換する処理や、制御部21が生成するデータをUWB無線通信のプロトコルに従って無線信号に変換して外部に送信する処理などを行うデバイスであり、制御プログラムやロジック回路によって構成される。
【0016】
<無線クライアント>
次に、無線クライアント30について説明する。
【0017】
無線クライアント30は、CPUやメモリなどを備える制御部31と、UWB無線通信の制御を行う無線通信部32と、交流電源(AC電源)の接続状況を検出するための電源検出部33と、無線クライアント30に接続される各種デバイス35との有線通信を制御するための有線通信部34と、を備えている。
【0018】
制御部31は、無線通信部32、電源検出部33、および有線通信部34などの制御を行うCPUや、OSや各種のアプリケーション、デバイスドライバなどを記憶するためのメモリなどを備えており、後述する制御部31の各処理は、メモリに予め記憶(インストール)されたデバイスドライバ(制御プログラム)によって実現される。無線制御部32は、アンテナ32aによって受信した無線信号を制御部31が解析可能なデータに変換する処理や、制御部31が生成するデータをUWB無線通信のプロトコルに従って無線信号に変換して外部に送信する処理を行うデバイスであり、制御プログラムやロジック回路によって構成される。電源検出部33は、無線クライアント30に交流電源(AC電源)が接続された否か(外部の交流電源から電力が供給されたか否か)を検出することが可能であり、無線クライアント30に交流電源が接続された場合に制御部31に対して電源検出信号を出力するように構成している。この電源検出部33は、制御プログラムやロジック回路によって構成される。有線通信部34は、無線クライアント30が有する複数のUSBポート(図示省略)に接続される各種デバイス(例えば、マウス、キーボード、プリンタなど)とのUSB通信を制御するデバイスであり、制御プログラムやロジック回路によって構成される。
【0019】
<無線通信システムの通信シーケンス>
次に、図2を用いて、無線通信システム10の通信シーケンスについて詳細に説明する。なお、同図は、無線ホスト20と無線クライアント30との間の通信手順の一例を示したシーケンスチャートである。
【0020】
同図のステップS1以前の状態では、無線ホスト20と無線クライアント30のどちらにも交流電源が接続されておらず、無線ホスト20と無線クライアント30はUWB無線通信を開始することができない状態にある。この状態では、無線クライアント30の制御部31は、電源検出部33から電源検出信号が入力されるのを待っている状態となっている。一方、無線ホスト20の制御部21は、無線通信部22が無線クライアント30からAC接続情報を受信するのを待っている状態となっている。
【0021】
このような状態において、無線クライアント30の電源検出部33が交流電源の接続を検出し(ステップS1)、制御部31に電源検出信号を出力した場合(ステップS2)、制御部31は無線クライアント30が交流電源の接続を確認したことを示すAC接続情報を生成するとともに(ステップS3)、無線通信部32に対して、AC接続情報の送信を指示する(ステップS4)。AC接続情報の送信を指示された無線通信部32は、AC接続情報をUWB無線通信のプロトコルに従って無線信号に変換した後、変換後の無線信号をアンテナ32aから無線ホスト20に向けて送信する(ステップS5)。
【0022】
一方、無線ホスト20の無線通信部22は、アンテナ22aを介して無線クライアント30からAC接続情報の無線信号を受信した場合に(ステップS6)、受信した無線信号を制御部21が解析可能なAC接続情報のデータに変換した後、制御部21にAC接続情報を送信する(ステップS7)。AC接続情報を受信した制御部21は、AC接続情報が無線クライアント30から送信されたものであるか否かを判定した後、無線クライアント30から送信されたものであると確認した場合に(ステップS8)、無線ホスト20に交流電源が接続されているか否かにかかわらず、無線通信部22に対してUWB無線通信の開始を指示する(ステップS9)。UWB無線通信の開始を指示された無線通信部22は、UWB無線通信の開始を示す情報をUWB無線通信のプロトコルに従って無線信号に変換した後、変換後の無線信号をアンテナ22aから無線クライアント30に向けて送信する(ステップS10)。以降、無線ホスト20と無線クライアント30はUWB無線通信のセッションを確立してUWB無線通信のプロトコルに基づいた通信を開始する。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信システム(無線通信方法)10は、無線ホスト(例えば、無線ホスト20)と、前記無線ホストと超広帯域の無線通信を行う無線クライアント(例えば、無線クライアント30)と、を有して構成された無線通信システムであって、前記無線クライアントは、自身に交流電源が接続された場合に、前記無線ホストに向けて、交流電源が接続されたことを知らせるAC接続情報を送信し、前記無線ホストは、前記無線クライアントから前記AC接続情報を受信した場合に、自身に交流電源が接続されていなくても前記無線クライアントと前記無線通信を開始することを特徴とする、無線通信システム(無線通信方法)である。
【0024】
従来の無線通信システムでは、無線ホストに交流電源を接続しなければ無線通信を開始することができなかったが、本実施形態に係る無線通信システム10によれば、無線ホストに交流電源を接続しなくても、無線ホストと無線クライアントとの無線通信を開始させることができる。そのため、従来よりも使用条件を緩和して利便性を高めることができる。
【0025】
また、前記無線ホストは、交流電源および直流電源の双方で駆動可能であってもよい。
【0026】
このような構成とすれば、交流電源を使用できない環境下において直流電源(例えば、バッテリや電池)で無線ホストを駆動している場合(交流電源を接続していない場合)でも無線ホストと無線クライアントとの無線通信を開始させることができ、従来よりも使用条件を緩和し、利便性を高めることができる。
【0027】
また、前記無線ホストは、パーソナルコンピュータ(例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ)であり、前記無線クライアントは、前記パーソナルコンピュータの周辺機器(例えば、マウス、キーボード、プリンタ)が複数接続可能な無線HUB、または単体の無線機器(例えば、無線機能を有するハードディスクやプリンタ)であってもよい。
【0028】
このような構成とすれば、直流電源(例えば、バッテリや電池)でパーソナルコンピュータを動作させているときでも、パーソナルコンピュータに複数の周辺機器を無線で接続することが可能となり、より一層、利便性を高めることができる。
【0029】
なお、本発明に係る無線通信システムおよび無線通信方法は、上記実施形態で示した内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0030】
したがって、例えば、上記実施形態で示した制御部21、31、無線通信部22、32、電源検出部33が行う各処理は、制御プログラムだけで実現してもよいし、ロジック回路だけで実現してもよいし、制御プログラムとロジック回路を併用してもよい。
【0031】
また、本発明に係る「無線ホスト」は、ノート型のパーソナルコンピュータに限定されるものではなく、PDAや携帯電話などでもよい。また、本発明に係る「無線クライアント」は、無線と有線を中継する機器に限定されるものではなく、例えば、無線と無線を中継する無線子機などでもよい。さらに、本発明に係る「直流電源」は、バッテリや電池に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る無線通信システムおよび無線通信方法は、無線ホストと超広帯域(UWB)の無線通信を行う無線クライアントを有して構成された無線通信システムおよび無線通信方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示したブロック図である。
【図2】無線ホストと無線クライアントとの間の通信手順の一例を示したシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0034】
10 無線通信システム
20 無線ホスト
21、31 制御部
22、32 無線通信部
30 無線クライアント
33 電源検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ホストと、
前記無線ホストと超広帯域の無線通信を行う無線クライアントと、を有して構成された無線通信システムであって、
前記無線クライアントは、
自身に交流電源が接続された場合に、前記無線ホストに向けて、交流電源が接続されたことを知らせるAC接続情報を送信し、
前記無線ホストは、
前記無線クライアントから前記AC接続情報を受信した場合に、自身に交流電源が接続されていなくても前記無線クライアントと前記無線通信を開始することを特徴とする、
無線通信システム。
【請求項2】
前記無線ホストは、
交流電源および直流電源の双方で駆動可能であることを特徴とする、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線ホストは、
パーソナルコンピュータであり、
前記無線クライアントは、
前記パーソナルコンピュータの周辺機器が複数接続可能な無線HUB、または単体の無線機器であることを特徴とする、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線ホストと、
前記無線ホストと超広帯域の無線通信を行う無線クライアントと、を有して構成された無線通信システムで実行される無線通信方法であって、
前記無線クライアントは、
自身に交流電源が接続された場合に、前記無線ホストに向けて、交流電源が接続されたことを知らせるAC接続情報を送信し、
前記無線ホストは、
前記無線クライアントから前記AC接続情報を受信した場合に、自身に交流電源が接続されていなくても前記無線クライアントと前記無線通信を開始することを特徴とする、
無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−118904(P2010−118904A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290788(P2008−290788)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000139366)株式会社ワイ・イー・データ (39)
【Fターム(参考)】