説明

無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】通信の信頼性を向上するとともに、消費電力を低減化させる無線通信システムおよび無線通信方法を提供する。
【解決手段】同一移動体に送信部と受信部を備えて信号を送受信する無線通信システムにおいて、上記送信部と受信部はそれぞれ周波数をホッピングしながら送受信するように構成され、上記受信部は、移動体の移動速度を計測する速度計と、移動体の移動速度によってホッピング速度を決めこの決めたホッピング速度で送信部からの信号を受信する受信制御部を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に係り、自動車等の同一移動体内に搭載された送信部と受信部により通信を行う、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
妨害電波が多かったりフェージングの影響が強い環境下において、無線装置間で確実な通信を行う方法として、周波数ホッピング方式が従来より存在する。周波数ホッピング方式は、通信する2台の無線装置が同時に使用するチャネルを時々刻々変化させて、さまざまなチャネルを利用することによって、特定のチャネルや周波数に依存する妨害やフェージングの影響を回避するものである。
【0003】
例えば、bluetoothにおいては、72個のチャネルを用い、マスター無線装置があるチャネルAで送信して同時にスレーブ無線装置がチャネルAでこれを受信し、その後、スレーブ無線装置が同一チャネルで受信確認を返信送信して同時にマスター無線装置がこれを受信する。その後、チャネルをAからBに切り替え、マスター無線装置とスレーブ無線装置の間で、同様の通信を行い、さらにその後チャネルを切り替える、というように、順番にチャネルを切り替えながら通信させる方式が採用されている。
【0004】
また、携帯電話の通信における周波数ホッピング方式が、特許文献1に示されている。特許文献1では、移動局又は基地局が移動局の移動速度に基き、移動局および基地局との間で周波数ホッピングを行うか否かを判断し、移動局の移動速度が遅い場合には周波数ホッピングを行い、移動局の移動速度が速い場合には周波数ホッピングを行わず、高速移動する移動局に対して、ハンドオフ(基地局切換え)時に必要とされる情報を軽減する周波数ホッピング方式が示されている。
【0005】
すなわち、特許文献1では、高速移動を行う移動局では、フェージング(電波の受信レベルの変動)の影響を強く受けて周波数ホッピングの効果が十分得られないので、この周波数ホッピングをやめて、ハンドオフ時に必要とされる情報の軽減化を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−308153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したような、周波数ホッピング方式は、単一のチャネルを用いる単純な方式と比較して、妨害電波やフェージングへの耐性を大幅に向上させることができる。しかしながら、特許文献1に示される携帯電話の周波数ホッピング方式を、自動車内の無線通信システムに採用するのは困難である。
【0008】
自動車内の無線通信システムとは、たとえば、パワーウインドウ(PW)のように、車内に設けたスイッチ信号或いはセンサ信号等とそれらの信号を受け取る制御ユニット間で通信するシステムであり、操作スイッチと各制御ユニットおよび電動部の間の電線を省くことができる。操作スイッチは内蔵の小型電池で動作し、各電動部は駆動モータ(アクチュエータ)を内蔵し、自動車のバッテリーで駆動される。
【0009】
特許文献1では、無線通信電力が大きいので妨害電波(雑音電波)の影響は少ないが、自動車内の無線通信では、小電力通信のため外部の雑音電波の影響を受けやすく、通信の信頼性を確保する上で、周波数ホッピング方式を継続する必要がある。しかし、この周波数ホッピング方式は、ホッピング時に無線装置同士を同期させるため、消費電力が増大するという問題がある。
【0010】
自動車内の無線通信システムにおいては、操作スイッチの電池は自動車のライフタイムに渡る寿命(10年程度)が求められ、また、電池そのものの小型・低価格化も求められるため、消費電力をいかに削減するかは重要な課題である。さらに、電池ではなく車両バッテリから有線で電力供給されるスイッチやスイッチ信号を受け取る受信側の制御ユニットにおいても、車両バッテリの消費電力削減は燃費向上の為にも重要な課題である。
【0011】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑み、通信の信頼性を向上するとともに、消費電力を低減化させる無線通信システムおよび無線通信方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、同一移動体に送信部と受信部を備えて信号を送受信する無線通信システムにおいて、
上記送信部と受信部はそれぞれ周波数をホッピングしながら送受信するように構成され、上記受信部は、移動体の移動速度を計測する速度計と、移動体の移動速度によってホッピング速度を決めこの決めたホッピング速度で送信部からの信号を受信する受信制御部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の無線通信システムおいて、上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンを格納するメモリを備え、送信部はその中から1つのチャネルをランダムで決め、この決めたチャネルで送信し、受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部での受信されるまでチャネルを変えて送信する送信制御部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の無線通信システムおいて、上記受信部の受信制御部は、現在のチャネルとホッピング速度をビーコンのパケットに格納して上記送信部に送信し、上記送信部は、受信部からの送信に基いて、受信部に同期したチャネルで送信する送信制御部を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の無線通信システムおいて、上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンを格納するメモリを備え、上記送信制御部は、先に受信したビーコンの受信時刻から上記受信部の現在のチャネルを予測してその予測チャネルで送信し、受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信することを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するため、同一移動体に送信部と受信部を備えて信号を送受信する無線通信方法において、
上記送信部と受信部はそれぞれ周波数をホッピングしながら送受信するように構成され、上記受信部は、移動体の移動速度を計測し、移動体の移動速度によってホッピング速度を決め、この決めたホッピング速度で送信部からの信号を受信することを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の無線通信方法おいて、上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンをメモリに格納し、送信部はその中から1つのチャネルをランダムで決め、この決めたチャネルで送信し受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信することを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の無線通信方法おいて、上記受信部は、現在のチャネルとホッピング速度をビーコンのパケットに格納して上記送信部に送信し、上記送信部は、受信部からの送信に基いて、受信部に同期したチャネルで送信することを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載の無線通信方法おいて、上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンをメモリに格納し、上記送信部は、先に受信したビーコンの受信時刻から上記受信部の現在のチャネルを予測してその予測チャネルで送信し、受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動体の速度によって周波数ホッピングの速度を変化させることにより、妨害波やフェージングへの耐性を大幅に向上させつつ、周波数ホッピングの速度をできるだけ低下させることによって、通信の応答性を向上し、低消費電力を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施例の無線通信システムの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施例の受信部の動作フロー図である。
【図3】本発明の第1の実施例の送信部の動作フロー図である。
【図4】本発明の第2の実施例の受信部の動作フロー図である。
【図5】本発明の第2の実施例の送信部の動作フロー図である。
【図6】本発明の第1の実施例の送信部、受信部の動作説明図である。
【図7】本発明の第2の実施例の送信部、受信部の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
移動体として自動車内の無線機器は、低消費電力が求められるため、単純な周波数ホッピング方式においてはホッピングの度に電力を消費するため実現が困難であった。周波数ホッピング方式で消費電力を削減する方法としては、周波数ホッピングの速度を低下させて(周期を長くする)ホッピングの頻度を下げることが考えられるが、その場合は、妨害電波やフェージングへの耐性が低下してしまう。
【0023】
本発明実施例では、自動車の速度によって周波数ホッピングの速度(周期)を変化させることを特徴とする無線通信システムおよび無線通信方法を提供するものである。実験により、自動車内の通信における妨害波の発生源は、主に自動車の外の建物内で利用されている無線装置であることが判明している。また、フェージングは自動車内の反射だけでなく、自動車の外の環境に依存していることが判明している。すなわち、自動車の速度が速い場合は、チャネルを変更しなくても、妨害ノイズのチャネルやフェージング条件が時々刻々変化し妨害ノイズを受けにくくなる。その一方で、自動車の速度が遅い場合、例えば停止している場合は、特定のチャネルが強く妨害ノイズを受け易くなる。
【0024】
以下、実施例を図面を用いて説明する。図1に、実施例として無線による通信システムの内部構成を示す。
【0025】
1は送信部、2は受信部であり、いずれも送信・受信の両機能をもつ無線機で構成され、移動体としての自動車内に搭載される。本実施例では、送信部1は、自動車のパワーウィンドウ(PW)の操作部を構成し、受信部2は操作部の操作に基いて駆動されるパワーウィンドウの駆動部を構成する。
【0026】
送信部1において、101は、送信部1の中央演算処理装置(CPU)で、送信処理のプログラムが記憶されたメモリROM102と共に、送信部1全体を制御する送信制御部を構成する。パワーウィンドウの操作用のデータは、送信部1の送信制御部101で生成され、操作スイッチ(SW)103が操作される度に、RF部104からアンテナ105を介してパケット通信により操作信号が送信(発信)される。106は送信部1全体に電力を供給する内蔵電池である。
【0027】
受信部2において、201は、受信部2の中央演算処理装置(CPU)で、受信処理のプログラムが記憶されたメモリROM202と共に、受信部2全体を制御する受信制御部を構成する。206は自動車の移動速度を計測する速度計であり、出力は受信制御部201に入力される。207はCPU201からの指令で駆動されるアクチュエータで、具体的にはパワーウインドウの駆動モータである。208は、上記電池106より容量の大きい、一般に自動車に搭載されている一般的なバッテリで、受信部2に電力を供給する。
【0028】
受信部2では、アンテナ205を介してRF部204によって、送信部1から送信されたパケットが受信され、CPU201によって処理される。CPU201は、タイマー機能を内蔵しており、チャネル変更指令を適時RF部204に送って、ホッピングでチャネルを変更して受信状態にする。また、速度計206から入力された移動体の移動速度に基づいて周波数のホッピング速度を決め、この決めたホッピング速度で送信部からの信号を受信する。
【0029】
なお、送信部1は、速度計やアクチュエータは内蔵しておらず、できるだけ少ない消費電力となるように操作信号の送信に特化され、電池寿命として例えば10年程度を確保できるように構成される。
【0030】
以下、周波数ホッピングの方式により送受信を行う、いくつかの実施バリエーションについて説明する。
[第1の実施例]
本実施例では、送信部1と受信部2とが、共通に周波数ホッピングする共通のチャネルパターンをメモリROM102、202に記憶している。
【0031】
受信部2の動作フローを図2に示す。この動作プログラムは、図1のメモリROM202に格納されている。図2の処理301でホッピングパターンの配列を決める。ここでは、メモリROM202から読みだして、Ch(チャネル)11、Ch16、Ch21としている。
【0032】
次いで、処理302で速度計206から自動車の現在の速度を読み取り、自動車の移動速度に対してホッピング速度(周期t)を決める。具体的には、自動車の時速10km以下では周期(t)を10ms、時速40km以下では周期(t)を20ms、それ以上では周期(t)を30msとする。
【0033】
処理303では、送信部1から送信されたパケットを最初のチャネルCh11で時間tだけ受信する。次いで処理304で、2番目のチャネルCh16で時間tだけ受信する。また、次の処理305で、3番目のチャネルCh21で時間tだけ受信する。いずれの処理でも、送信部1から送信されたパケットの受信に成功すると、送信部1に確認応答パケットを送信しながらこの処理を繰り返す。上記のパケットの受信時間tは、自動車の移動速度により変化する上記したホッピング速度(周期)である。
【0034】
送信部1の動作フローを図3に示す。この動作プログラムは、図1のメモリROM102に格納されている。フローチャートで、処理401でホッピングパターンの配列を決める。ここでは、メモリROM102から読みだして、Ch(チャネル)11、Ch16、Ch21としている。
【0035】
次いで、処理402で操作スイッチ103が押されるのを待ち、スイッチ103が押されると次に処理403に進み、処理403では、最初に送信すべきチャネルを決める。この最初のチャネルは、メモリROM102から読みだしたチャネルの中から乱数を用いて決められる。処理404では決められた最初のチャネルCh(X)でパケットを送信する。この送信で受信に成功すると処理402に戻る。
【0036】
処理404の送信で受信に失敗する(受信部2から確認応答パケットの返信がない)と、処理405で2番目のチャネルCh(X+1)で送信する。この送信で受信に成功すると402に戻る。処理405の送信で受信に失敗すると、処理406で3番目のチャネルCh(X+2)で送信する。送信で受信に成功すると処理402に戻り、失敗した場合は処理404に戻って最初のチャネルCh(X)から繰り返す。
【0037】
ここで送信に成功するとは、相手側(受信部2)から確認応答パケットの返信を受信するなどによって判断する。
【0038】
次に、図6を用いて上記した送信部1と受信部2の送受信動作を説明する。図6において、(1)は移動体の移動速度、(2)は送信部のSW操作による送信チャネル、(3)は受信部の受信チャネル、(4)は外部で発生しているノイズを示し、前記したホッピングのチャネルCh11、Ch16、Ch21をそれぞれ、A、B、Cとして表している。また、移動体は最初高速で移動し、途中から低速に変わる場合を表している。
【0039】
受信部2は(3)に示すように、決められたホッピングパターンの配列のA、B、Cの順に周期tでホッピングしてチャネルを変えながら受信状態となっている。送信部1は(2)に示すように、パワーウインドウの操作スイッチ103が押されたとき、乱数で決められたチャネルC、Bの順序でホッピングしながらパケットを送信すると仮定する。送信部1の送信チャネルのホッピング周期は、受信部2の受信チャネルのホッピング周期tより小さく、移動体の速度に依存しないで一定周期(例えば1ms)に設定されている。
【0040】
最初のスイッチ103の操作では外部のノイズがないとすると、図示のように送信部1と受信部2のチャネルBで一致したとき、受信部2から確認応答パケット(OK)が返信され、送受信が成功する。従って、受信部2のアクチュエータ207が駆動されて、パワーウインドウの窓がオープンする。
【0041】
このように、ノイズが発生していない条件では、送信部1で操作スイッチ103が押されてから、受信部2でのホッピングの最初の1チャネル(上記ではチャネルB)で短時間で送受信に成功するので、通信の応答性が向上するとともに、送信部1での送信時間が短く消費電力が少なくて済む。
【0042】
次に、操作スイッチ103の2回目の操作について説明する。このタイミングでは外部ノイズとしてチャネルBの周波数のノイズが発生していると仮定する。操作スイッチ103の2回目の操作では、乱数で決められたチャネルA、B、Cの順序でホッピングしながらパケットが送信されるとする。図示のように2回目の操作後に、送信部1と受信部2がチャネルBで一致するタイミングがある。しかし、チャネルBの周波数のノイズによって、チャネルBのパケットの受信が妨害される。
【0043】
送信部1は、続けてチャネルA、B、Cの順序でホッピングしながらパケット送信する。送信部1と受信部2のチャネルがCで一致するタイミングがあり、このタイミングでの外部ノイズはチャネルBの周波数であるため、チャネルCでの送受信の障害とはならない。従って、このタイミングのチャネルCで受信部2から確認応答パケット(OK)が返信され、送受信が成功する。そして、受信部2のアクチュエータ207が駆動されて、パワーウインドウの窓がオープンする。
【0044】
このように、外部ノイズが発生している条件でも、送信部1で操作スイッチ103が押されてから、外部ノイズのチャネルとは異なる最初のチャネル(上記ではチャネルC)で短時間で送受信に成功するので、通信の応答性が向上するとともに、送信部1での送信時間が短く消費電力が少なくて済む。この場合、外部ノイズのない場合と比べて受信部2で1チャネルだけ遅れて送受信に成功する。
【0045】
また、移動体が低速に移動中は外部ノイズの影響が大きくなって、送受信が妨害されやすくなる。本実施例では、図6(1)に示すように、途中から移動体速度が低下したとき、受信部2での速度を上げてホッピングを行う。具体的には例えば、移動体時速が10km以下に低下した場合、ホッピング速度(周期t)を10msに変えて受信状態で待機する。したがって、高速ホッピングにより、外部ノイズの影響を少なくすることができる。
【0046】
この制御は、速度計206から入力された移動体の移動速度に基づいて、CPU201によって周波数のホッピング速度を決め、チャネル変更指令として適時RF部204に送って受信状態の制御がなされる。
【0047】
本実施例では、送信部1と受信部の2台の無線機の時刻を同期しておく必要はない。そのため、操作スイッチ103が押されてから、送信部1でのパケット送信動作が始まるので、スイッチの操作を待っている間は、CPU101をスリープ状態にすることで、消費電力をきわめて小さくすることができる。また、送信部1のパケット送信開始から、受信部が早いタイミングで受信に成功するので、送信部1でのパケットの送信時間が短くて済み、消費電力が少なくて済む。さらに、自動車の速度によってホッピング速度が変化するために、妨害波やフェージングへの耐性を大幅に向上させつつ、通信の応答性を向上、低消費電力を実現することが可能になる。
【0048】
このように、本実施例は制御が簡単であり、特に通信回数の少ない(ボタンが押されることが少ない)装置に適している。なお、ここにあげた具体的な数値、チャネル数や自動車の速度やホッピング速度は例であって、その数値に限定されるものではない。
【0049】
なお、本実施例では、送信部が乱数で選択したチャネルと、そのときに受信部が受信しているチャネルが一致していないと、その送信は無駄になるが、次のチャネル一致タイムングで受信される。
[第2の実施例]
本実施例では、通信回数が比較的多い装置により適した例について示す。受信部2の動作フローを図5に示す。この動作プログラムは、図1のメモリROM202に格納されている。
【0050】
図5の処理501、処理502は、図2の処理301、302と同じである。処理503は、受信部2からビーコンパケットを送信(発信)する処理である。ビーコンのパケットには、そのデータとして現在の時刻およびホッピング速度が含まれる。処理504〜506は、図2の処理303〜305と同じである。そして処理504〜506を一定時間だけ繰り返す。たとえばその一定時間が、0.6秒であれば、ホッピング速度(周期)t=10msの場合60回、t=20msの場合30回、t=30msの場合20回繰り返す。その後、処理502に戻って、上記動作を繰り返す。
【0051】
送信側の動作フローを図5に示す。この動作プログラムは、図1のメモリROM102に格納されている。図5の処理601は図3の処理401と同じである。処理602では受信部2で発信したビーコンの受信を行う。処理603では、操作スイッチ103の操作を監視しながら、先のビーコン受信で得たホッピング速度に基く次のビーコン時間まで待つ。スイッチ103が操作されない状態で、次のビーコン時間になると、ふたたび処理602に戻ってビーコンを受信する。送信部1のタイマーと受信部2のタイマーは必ずしも正確に一致していないので、そのずれを見込んで処理602に早めに戻って修正を行う。
【0052】
スイッチ103が押された場合は、処理604にて、ビーコン情報と時刻から受信部2の現在のチャネルを予測して求め、これをXとする。処理605〜607は図3の処理404〜407と同様である。すなわち、図3の処理でチャネルXを乱数で求めたのに対して、図5の処理604では、チャネルXを直前に受信したビーコンの情報から予測して求めている。それ以外の処理は図3の処理と同様である。
【0053】
ビーコンの受信が必ずしも正確にできなかったり、タイマーのずれなどによって、ビーコン情報から予測した送信部1のチャネルXと受信部2のチャネルが一致しないことが考えられる。そのため、処理605の後に、処理606、607とチャネルを変更しながら通信し、さらにそれを繰り返すことによって、このずれによる影響を少なくすることができる。
【0054】
本実施例では、送信部1と受信部2が時刻の同期を維持することになるので、図3の動作と比較するとやや消費電力は大きくなる。しかしながら、チャネルのずれによる通信失敗を少なくすることができるので、送信部1でのパケット送信時間が短くて済みその分素早い応答が得られるとともに、消費電力が抑えられる。また、パケット送信時間が短くて済むので、他の機器に対する妨害を減らすことができる。
【0055】
ビーコンそのものは、ホッピング速度によらず一定間隔で送信されるため、ホッピング速度の変更に対しても、時刻同期を維持することは容易となっている。これによって、自動車の速度によってホッピング速度が変化するために、妨害波やフェージングへの耐性を大幅に向上させつつ、通信の応答性を向上させ、低消費電力を実現することが可能になる。
【0056】
次に、図7を用いて本実施例の送信部1と受信部2の送受信動作を説明する。図7において、(1)は送信部1のSW操作による送信チャネル、(2)は受信部2の受信チャネル、(3)は外部で発生しているノイズを示し、前記したホッピングのチャネルCh11、Ch16、Ch21をそれぞれ、A、B、Cとして表している。
【0057】
受信部2は(2)に示すように、決められたホッピングパターンの配列のA、B、Cの順に周期tのホッピングでチャネルを変えながら受信状態を維持している。また、受信部2は一定タイミングでビーコンを発信している。送信部1は上記ビーコンを受信(R)し、受信部2の受信チャネルのホッピング情報を取込んでいる。ビーコンを受信から時間T後に操作スイッチ103が押されるとする。送信部1は操作スイッチ103が操作されたタイミング(ビーコンを受信から時間T後)の受信部2のチャネル(B)を把握している。従って、送信部1は操作スイッチ103の操作により、チャネルBのパケットを送信し、一方、このタイミングで受信部2は、チャネルBの受信状態にあるので、送信部1からのパケットを即受信し、送受信に成功する。このとき、送信部1は最初のチャネルBのパケット送信で終了し、消費電力は極めて少なくて済む。
【0058】
次に、操作スイッチ103の2回目の操作について説明する。このタイミングでは外部ノイズとしてチャネルCの周波数のノイズが発生していると仮定する。操作スイッチ103を操作すると、操作時の受信部2のチャネルCと同一チャネルの最初のパケットが送信部1から送信される。受信部2はチャネルが同じなので受信可能な状態であるが、チャネルCの周波数の外部ノイズCにより妨害される。
【0059】
送信部1は、最初のパケットのチャネルCに続けてA,B、Cの順序でホッピングしながらパケット送信する。送信部1と受信部2のチャネルがAで一致するタイミングがあり、このタイミングでの外部ノイズはチャネルCの周波数であるため、チャネルAでの送受信の障害とはならない。従って、このタイミングのチャネルAで受信部2から確認応答パケット(OK)が返信され、送受信が成功する。そして、受信部2のアクチュエータ207が駆動されて、パワーウインドウの窓がオープンする。
【0060】
このように、外部ノイズが発生している条件でも、送信部1で操作スイッチ103が押されてから、外部ノイズのチャネルとは異なる最初のチャネル(チャネルA)で短時間で送受信に成功するので、通信の応答性が向上するとともに、送信部1での送信時間が短く消費電力が少なくて済む。この場合、外部ノイズのない場合と比べて受信部2で1チャネル分だけ遅れて送受信に成功する。
【0061】
図示省略しているが、途中から移動体速度が低下したとき、受信部2での速度を上げてホッピングを行うことは、第1の実施例と同じである。この場合、変更されたホッピングの速度情報は、その後のビーコンに含めて送信される。
【符号の説明】
【0062】
1…送信部、2…受信部、101…送信制御部、102…メモリ、201…受信制御部、202…メモリ、206…速度計、CH11、CH16、CH21、A、B、C…チャネル、t…ホッピング速度(周期)、SW…操作スイッチ、PW…アクチュエータ(パワーウインドウ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一移動体に送信部と受信部を備えて信号を送受信する無線通信システムにおいて、
上記送信部と受信部はそれぞれ周波数をホッピングしながら送受信するように構成され、上記受信部は、移動体の移動速度を計測する速度計と、移動体の移動速度によってホッピング速度を決めこの決めたホッピング速度で送信部からの信号を受信する受信制御部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムおいて、
上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンを格納するメモリを備え、送信部はその中から1つのチャネルをランダムで決め、この決めたチャネルで送信し、受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信する送信制御部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムおいて、
上記受信部の受信制御部は、現在のチャネルとホッピング速度をビーコンのパケットに格納して上記送信部に送信し、上記送信部は、受信部からの送信に基いて、受信部に同期したチャネルで送信する送信制御部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信システムおいて、
上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンを格納するメモリを備え、上記送信制御部は、先に受信したビーコンの受信時刻から上記受信部の現在のチャネルを予測してその予測チャネルで送信し、受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
同一移動体に送信部と受信部を備えて信号を送受信する無線通信方法において、
上記送信部と受信部はそれぞれ周波数をホッピングしながら送受信するように構成され、上記受信部は、移動体の移動速度を計測し、移動体の移動速度によってホッピング速度を決め、この決めたホッピング速度で送信部からの信号を受信することを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信方法おいて、
上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンをメモリに格納し、送信部はその中から1つのチャネルをランダムで決め、この決めたチャネルで送信し受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信することを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
請求項5に記載の無線通信方法おいて、
上記受信部は、現在のチャネルとホッピング速度をビーコンのパケットに格納して上記送信部に送信し、上記送信部は、受信部からの送信に基いて、受信部に同期したチャネルで送信することを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信方法おいて、
上記送信部と受信部は、ホッピングする共通のチャネルパターンをメモリに格納し、上記送信部は、先に受信したビーコンの受信時刻から上記受信部の現在のチャネルを予測してその予測チャネルで送信し、受信部での受信失敗のときその次のチャネルで送信し、受信部で受信されるまでチャネルを変えて送信することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−17110(P2013−17110A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149863(P2011−149863)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】