説明

無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】基地局と無線局の位置に応じて、同時に同一周波数を使用する基地局または無線局を動的に選択することで周波数利用効率を向上させる方法を提供する。
【解決手段】制御局は、各タイムスロットにおける通信要求に基づいて、基地局毎に基地局と通信相手の無線局からなる通信ペア候補を選択し、当該通信ペア候補の中から、基地局および無線局の位置情報に基づいて互いに干渉とならない通信ペアを確定し、スケジュール情報として生成するスケジュール情報生成手段を備え、スケジュール情報を用いて各タイムスロットごとに割り当てられた通信ペアの基地局と無線局との間で通信する構成であり、スケジュール情報生成手段は、選択された全ての通信ペアが同時に通信を行った場合に、各通信ペアの受信側におけるSINRの推定値が閾値を上回るまで、一部の通信ペアを除外しながら演算を繰り返してタイムスロットに割り当てる通信ペアを確定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御局、複数の基地局および複数の無線局によって構成される無線通信システムにおいて、同一の周波数帯域を再利用する無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信インタフェースを備えている情報端末の普及や、大容量の無線通信サービスへの要望から、無線通信システムを介するインターネットトラヒックが増加しつつある。既存の無線通信システムでは、今後さらに増加するトラフィックを収容することができないと考えられるため、将来的にはより広帯域な無線通信システムの導入が必要である。
【0003】
一方、無線通信システムに利用可能な周波数帯域は有限である。また、同一の周波数帯域を異なる無線通信システムに割り当てることは困難である。したがって、将来的な無線通信システムでは、周波数利用効率をさらに改善して、使用可能な周波数帯域を有効活用する必要性がある。
【0004】
周波数利用効率を向上させるために、FFR(Fractional Frequency Reuse)と呼ばれる周波数再利用の方法が検討されている。FFRは、複数の通信セルで構成される無線通信システムに適用される周波数再利用の方法であって、それぞれの通信セルでは、無線フレームを用いて基地局と無線局との間で通信を行う。また、当該無線フレームは、無線通信システム全体で同期している。FFRでは、無線フレームをさらに時分割して複数のゾーン(たとえば、第1ゾーン、第2ゾーン)を構成し、それぞれのゾーンを基地局と端末との間の距離に対応づけて、基地局はそれぞれのゾーンで異なる端末と通信を行う。このとき、第1ゾーンを基地局から遠い端末との通信に使用する場合、当該ゾーンでは、各通信セルに互いに異なる周波数のうちいずれか1つが割り当てられる。また、第2ゾーンでは、各通信セルに同一の周波数が割り当てられる。第1ゾーンでは、当該無線通信システムが利用できる帯域を分割して、それぞれを各通信セルに割り当てるため、各通信セルの通信容量は小さくなる。一方、第2ゾーンでは、各通信セルが同一の周波数を使用するため、各通信セルは当該無線通信システムが利用できる全帯域を用いて通信を行うことができる。
【0005】
ここで、各ゾーンにおいて分割して使用する周波数の数を周波数リユースファクタ(以下、FRF)とする。すなわち、各通信セルでは、セルの中心付近に位置する端末は、FRFの小さいリユースパターンの第2ゾーンに割り当てることで周波数利用効率の改善を図る。セルのエッジに位置する端末は、FRFの大きいリユースパターンの第1ゾーンに割り当てることで近隣のセルからの干渉波を軽減する。
【0006】
図5は、従来のFFRの概要を示す(非特許文献1)。
図5(1) において、3つの基地局91−1〜91−3と6つの無線局92−1〜92−6を想定する。無線局92−1〜92−2は基地局91−1の管理領域に位置しており、無線局92−3〜92−4は基地局91−2の管理領域に位置しており、無線局92−5〜92−6は基地局91−3の管理領域に位置している。無線局92−1、92−3、92−5はセルの中心に位置しており、無線局92−2、92−4、92−6はセルエッジに位置している。
【0007】
図5(2) において、無線フレームは、FRF=3の第1ゾーンとFRF=1の第2ゾーンとに固定的に分割される。FRF=1の第2ゾーンでは全基地局91−1〜91−3が同一周波数を同一時間に用いるが、FRF=3の第1ゾーンでは各基地局91−1〜91−3は隣接基地局とは異なる周波数帯域を用いる。
【0008】
基地局91−1は、FRF=1の第2ゾーンにセル中心に位置する無線局92−1を割り当て、FRF=3の第1ゾーンにセルエッジに位置する無線局92−2を割り当てる。基地局91−2は、FRF=1の第2ゾーンにセル中心に位置する無線局92−3を割り当て、FRF=3の第1ゾーンにセルエッジに位置する無線局92−4が割り当てる。基地局91−3は、FRF=1の第2ゾーンにセル中心に位置する無線局92−5を割り当て、FRF=3の第1ゾーンにセルエッジに位置する無線局92−6を割り当てる。
【0009】
ここで、FRF=1の場合は、すべての基地局が同一の周波数を使用するため、各基地局が当該無線通信システムで利用可能な全ての周波数帯域(f1,f2,f3)を利用できることになり、各通信セルの通信容量は大きい。一方、FRF=3の場合は、当該無線通信システムで利用可能な周波数帯域(f1,f2,f3)を3分割してそれぞれの基地局に割り当てることになるため、各通信セルの通信容量は小さい。このように、FRFが小さい第2ゾーンの期間が長いほど、各通信セルの通信容量は大きくなる。なお、各基地局は、自局に帰属する無線局がセルの中心にいるか、セルのエッジにいるかを適切に判断する必要があるが、非特許文献2では、信号対干渉雑音電力比(SINR) の閾値によって各無線局が位置する領域を判断する方法が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】庄納崇 他、「WiMAX教科書」、インプレス標準教科書、 pp.107-108
【非特許文献2】藤井啓正 他、「Fractional Frequency Reuseを用いるOFDMAセルラシステムの特性解析 通信容量およびアウテージレート」、無線通信システム研究会 RCS2007-161 2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のFFRでは、予め無線フレームは固定的に複数のゾーンに分割されており、各ゾーンにおけるリユースパターンは予め固定的に設定されるものである。特に、第1ゾーンにおいて各通信セルに割り当てられる周波数は、基地局からの電波の届く距離である通信セルのサービスエリアに基づいて、通信セル間で互いに干渉が生じないように、定められる。しかし、本来、最適なリユースパターンは無線局の配置等によって異なるため、無線局の配置等に応じて動的に最適なリユースパターンを選択することが望ましい。例えば、図5に示すように基地局91−1と通信する無線局92−2の場合を考えると、基地局91−3と距離が近いために基地局91−3からの干渉波は大きいが、基地局91−2とは距離が遠いために基地局91−2からは干渉波によって通信品質が劣化しない場合がある。この場合は、予め設定されたリユースパターン(FRF=1または3)ではなく、基地局91−1と基地局91−2は、同一周波数を同時に使用するリユースパターンで通信することが望ましい。すなわち、実際に通信を行う無線局に着目すると、従来の固定的な設定によると、互いに干渉が生じない地理的関係にある無線局間でも異なる周波数を用いていることにより、低い周波数利用効率となっている。
【0012】
このような場合における周波数利用効率を改善するために、無線局の位置に応じてリユースパターンを動的に制御することで、すなわち同時に同一周波数を使用する基地局または無線局を動的に選択することで、周波数利用効率をさらに向上させることが考えられる。しかし、互いに通信を行う基地局と無線局の組を通信ペアと呼ぶとき、互いに干渉が生じない通信ペアを通信前に特定した上で、それぞれの通信ペアに対して周波数の割り当て等を行う必要がある。
【0013】
本発明は、基地局と無線局の位置に応じて、同時に同一周波数を使用する基地局または無線局を動的に選択することで、システム全体として周波数利用効率を向上させることができる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、制御局、複数の基地局、および複数の無線局から構成され、当該基地局と当該無線局とがタイムスロットに区切られた無線フレームを用いて通信を行う無線通信システムにおいて、制御局は、各タイムスロットにおける基地局または無線局からの通信要求に基づいて、基地局毎に基地局と通信相手の無線局からなる通信ペア候補を選択し、当該通信ペア候補の中から、基地局および無線局の位置情報に基づいて互いに干渉とならない通信ペアを確定し、スケジュール情報として生成するスケジュール情報生成手段を備え、当該スケジュール情報を基地局および無線局に通知する構成であり、基地局および無線局は、制御局から通知されたスケジュール情報を用いて各タイムスロットごとに割り当てられた通信ペアの基地局と無線局との間で通信する構成であり、スケジュール情報生成手段は、選択された全ての通信ペアが同時に通信を行った場合に、各通信ペアの受信側におけるSINRの推定値が閾値を上回るまで、一部の通信ペアを除外しながら演算を繰り返してタイムスロットに割り当てる通信ペアを確定する。
【0015】
第1の発明の無線通信システムにおいて、スケジュール情報生成手段は、除外された通信ペアを次のタイムスロットにおける通信ペア候補として選択する。
【0016】
第1の発明の無線通信システムにおいて、スケジュール情報生成手段は、SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアに対して所定の周波数を割り当て、除外された通信ペアに対してさらに別の周波数を割り当ててSINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定し、これを繰り返すことにより各周波数ごとにSINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定してスケジュール情報として生成する。
【0017】
第1の発明の無線通信システムにおいて、スケジュール情報生成手段は、通信ペアの受信側におけるSINRを推定するときに、酸素吸収による無線通信の減衰を考慮してSINRを推定する。
【0018】
第2の発明は、制御局、複数の基地局、および複数の無線局から構成され、当該基地局と当該無線局とがタイムスロットに区切られた無線フレームを用いて通信を行う無線通信方法において、制御局は、スケジュール情報生成手段で、各タイムスロットにおける基地局または無線局からの通信要求に基づいて、基地局毎に基地局と通信相手の無線局からなる通信ペア候補を選択し、当該通信ペア候補の中から、基地局および無線局の位置情報に基づいて互いに干渉とならない通信ペアを確定し、スケジュール情報として生成し、当該スケジュール情報を基地局および無線局に通知し、基地局および無線局は、制御局から通知されたスケジュール情報を用いて各タイムスロットごとに割り当てられた通信ペアの基地局と無線局との間で通信し、スケジュール情報生成手段は、選択された全ての通信ペアが同時に通信を行った場合に、各通信ペアの受信側におけるSINRの推定値が閾値を上回るまで、一部の通信ペアを除外しながら演算を繰り返してタイムスロットに割り当てる通信ペアを確定する。
【0019】
第2の発明の無線通信方法において、スケジュール情報生成手段は、除外された通信ペアを次のタイムスロットにおける通信ペア候補として選択する。
【0020】
第2の発明の無線通信方法において、スケジュール情報生成手段は、SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアに対して所定の周波数を割り当て、除外された通信ペアに対してさらに別の周波数を割り当ててSINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定し、これを繰り返すことにより各周波数ごとにSINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定してスケジュール情報として生成する。
【0021】
第2の発明の無線通信方法において、スケジュール情報生成手段は、通信ペアの受信側におけるSINRを推定するときに、酸素吸収による無線通信の減衰を考慮してSINRを推定する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、同時に同一周波数を使用する通信ペア(基地局と無線局)の受信側でのSINRの推定値を計算し、SINRの推定値が閾値を上回る(互いに干渉が生じない関係にある)通信ペアが同時に通信を行うようにすることで、無線通信システムの周波数利用効率を向上させることができ、また各通信ペアに割り当てる周波数帯域を大きくすることができる。また、同時通信の通信ペアから除外された通信ペアに対して異なる周波数を割り当て、SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定する処理を繰り返すことにより、必要な周波数の数を求めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の無線通信システムの実施例を示す図である。
【図2】本発明における無線局装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明における基地局装置および制御局装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明におけるスケジュール情報の生成処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】従来のFFRの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の無線通信システムでは、全ての通信セルが同期した共通のタイムスロットを用いて通信を行う。このとき、同時に通信を行う通信ペアは複数存在し、それぞれの通信は互いに干渉しない地理的関係にある。すなわち、FFRとは異なり、無線フレームを複数のゾーンに分割することは行わず、タイムスロットのそれぞれで、互いに干渉が生じることなく同時に通信可能な複数の通信ペアを割り当てて通信を行う。
【0025】
本発明では、同時に通信する通信ペアを決めるために、各基地局とこれと通信する無線局との間の距離と、他の基地局および無線局との間の距離とをGPS等から取得した位置情報に基づいて算出し、当該距離と、送信電力、アンテナゲイン、伝搬損失から各受信局におけるSINRを算出して、当該SINRが閾値を超えるか否かにより、同時に通信可能な通信ペアを決定する。このとき、選択した通信ペアの全てについてのSINRが閾値以上になるまで、一部の通信ペアを除外する処理を繰り返すことによって、同時に通信可能な通信ペアを決定する。
【0026】
図1は、本発明の無線通信システムの実施例を示す。
図1において、無線局1−1〜1−2は基地局2−1の管理領域に位置し、無線局1−3〜1−4は基地局2−2の管理領域に位置し、無線局1−5〜1−6は基地局2−3の管理領域に位置している。制御局3は、各基地局2−1〜2−3に接続され、各基地局2−1〜2−3と無線局1−1〜1−6の位置情報に基づいて、通信ペアの決定、スケジューリング等を行い、各基地局および無線局へスケジュール情報を通知する。以下、その手順について説明する。
【0027】
無線局1−1〜1−6は、自局の位置情報をGPS等で把握し、その情報を座標値として、自局を管理する基地局2−1〜2−3へ通知する。基地局2−1〜2−3は通知された無線局の位置情報を制御局3に通知する。このとき、基地局2−1〜2−3も自局の位置情報をGPS等により把握し、その位置情報も併せて制御局3に通知する。このようにして、制御局3は、無線局1−1〜1−6と基地局2−1〜2−3の位置情報を把握する。
【0028】
位置情報は、x座標値およびy座標値等の平面的な位置情報に限らず、高さ方向の位置情報としてz座標値が与えられていてもよい。制御局3は把握した位置情報に基づいて、各基地局2−1〜2−3と各無線局1−1〜1−6のスケジュール情報を作成し、スケジュール情報を基地局2−1〜2−3へ通知する。基地局2−1〜2−3は、スケジュール情報を把握し、さらに自局が管理する無線局1−1〜1−6に対して、スケジュール情報を通知する。このとき、基地局2−1〜2−3は自局に関連する情報のみを無線局1−1〜1−6に通知してもよい。このように、基地局2−1〜2−3と無線局1−1〜1−6は、スケジュール情報を把握して、スケジュール情報に従って通信を実施する。
【0029】
図1に示す構成では、スケジュール情報はタイムスロットごとに設定されている。タイムスロット1では、基地局2−1と無線局1−1とのダウンリンクの通信、基地局2−2と無線局1−3とのダウンリンクの通信、基地局2−3と無線局1−5とのダウンリンク通信の3つの通信ペアが同時に同一周波数を用いるように設定される。
【0030】
タイムスロット2では、基地局2−1と無線局1−2のダウンリンクの通信、基地局2−2と無線局1−4のダウンリンクの通信の2つの通信ペアが同時に同一周波数を用いるように設定される。ここでは、タイムスロット1と異なり、基地局2−3による周波数の再利用を許容していない。これは、無線局1−4が基地局2−3との距離が近く、互いに干渉となるためである。
【0031】
タイムスロット3では、無線局1−2と基地局2−1のアップリンクの通信、基地局2−3と無線局1−6のダウンリンク通信の2つの通信ペアが同時に同一周波数を用いるように設定される。このように位置情報を考慮することにより、ダウンリンクの通信とアップリンクの通信とが同一周波数を使用することも可能となる。
【0032】
タイムスロット4では、無線局1−3と基地局2−2のアップリンクの通信、無線局1−5と基地局2−3のアップリンクの通信の2つの通信ペアが同時に同一周波数を用いるように設定される。
【0033】
図2は、本発明における無線局装置の構成例を示す。
図2において、10は無線局装置、11はアンテナ、12は送受信部、13は通信制御部、14はインタフェース部、15は位置情報把握部、16はスケジュール情報保持部、17はデータバッファ部を示す。
【0034】
無線局装置10は、無線回線を介した信号をアンテナ11で受信し、送受信部12にて帯域外信号のフィルタリング、ローノイズアンプによる信号増幅、RF周波数からベースバンド帯への周波数変換、アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換等の処理を行い、さらにデジタル化されたベースバンド信号は、タイミング検出、物理レイヤに関するヘッダ情報の終端、復調処理、誤り訂正などの一連の信号処理が施される。送受信部12から出力される復調処理等がされた信号は通信制御部13に入力される。
【0035】
受信した信号がデータパケットである場合は、通信制御部13はその信号をインタフェース部14に出力する。インタフェース部14では、無線通信用の一般的なパケットフォーマットからフォーマット変換して外部に出力する。受信した信号が、基地局が報知するスケジュール情報に関するものであれば、その情報をスケジュール情報保持部16に出力し、スケジュール情報保持部16はこれを保存する。なお、スケジュール情報は基地局から周期的に送信されるものであり、図1に示すスケジュール情報のように自局が送受信するタイムスロットを把握することができるものである。通信制御部13は、スケジュール情報保持部16を参照して、自局がデータパケットを受信するタイムスロットを把握し、そのタイムスロットに従って、送受信部12の受信処理タイミングを制御してもよい。ただし、無線局装置10におけるデータパケットの受信処理タイミングは、それを送信する基地局がスケジュール情報によって制御するので、無線局装置10では必ずしも受信処理タイミングに応じた受信処理を行わず、受動的な受信処理であってもよい。
【0036】
逆に、外部よりデータパケットが入力された際には、インタフェース部14、通信制御部13を介してデータバッファ部17に入力される。このとき、通信制御部13からの指示に従いヘッダ情報を付加し、さらに誤り検出符号などを付加して無線パケットが生成される。この無線パケットが無線局装置10から送信されるときは、通信制御部13は無線パケットを送受信部12に入力し、送受信部12で各種変調処理を施されてベースバンド信号が生成され、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換、周波数変換、帯域外信号のフィルタリング、信号増幅などを行い、アンテナ11より送信される。ここで、送受信部12における前記無線パケットの送信処理のタイミングは、通信制御部13によって制御される。通信制御部13は、スケジュール情報保持部16を参照して、自局がデータパケットを送信するタイムスロットを把握し、このタイムスロットによって送受信部12による送信処理タイミングを制御する。
【0037】
位置情報把握部15は、GPS等によって構成されており、自局の位置情報を座標値によって把握することができる。通信制御部13は、この位置情報を送受信部12に出力し、アンテナ11を介して基地局へ送信する。無線局が移動局である場合は、無線局の移動速度や移動する頻度に応じて位置情報を適宜基地局へ送信する必要があるが、固定局である場合は通信開始の際に1回だけ通知してもよい。通知のタイミングは、基地局から通知されるスケジュール情報によって動的に制御されてもよいし、予め固定的に位置情報通知のためタイムスロットが割り当てられていてもよい。
【0038】
図3は、本発明における基地局装置および制御局の構成例を示す。
図3において、20−1〜20−mは基地局装置、21はアンテナ、22は送受信部、23は通信制御部、24はインタフェース部、25は位置情報把握部、26はスケジュール情報保持部、27はデータバッファ部を示す。30は制御局装置、31はインタフェース部、32は位置情報管理部、33はスケジュール情報生成部、34は通信要求情報把握部を示す。
【0039】
基地局装置20は、無線局装置10の機能と重複するところが大きいので、ここでは無線局装置10との差分を中心に説明する。インタフェース部24は、制御局30と情報交換する機能を有しており、制御局30から受信するスケジュール情報は通信制御部23を介してスケジュール情報保持部26に入力される。通信制御部23は、スケジュール情報保持部26に保存されたスケジュール情報を参照して、基地局と無線局の通信タイミングを制御する。また、通信制御部23は、自局が管理する無線局からその無線局の位置情報を受信した場合は、その情報を位置情報把握部25に出力する。位置情報把握部25は、無線局の位置情報を把握すると共に、GPS等を利用して自局の位置情報を把握する。通信制御部23は、これらの位置情報を、インタフェース部24を介して、制御局30に通知する。さらに、通信制御部23は、データバッファ部27に蓄積されているデータパケットや無線局からの帯域要求等から、通信リソースが要求される無線局の情報を把握し、この情報をインタフェース部24を介して、制御局30に通知する。
【0040】
制御局30は、インタフェース部31を介して、基地局20が出力する基地局およびその配下の無線局の位置情報と、通信リソースを要求する無線局の情報を把握する。位置情報は位置情報管理部32に保存され、通信リソースを要求する無線局の情報は通信要求情報把握部34に保存される。スケジュール情報生成部33は、位置情報管理部32と通信要求情報把握部34の情報を参照して、各基地局のスケジュール情報を生成する。以下に、制御局における通信ペアの生成方法等について、具体的に説明する。
【0041】
図4は、本発明におけるスケジュール情報の生成処理手順の一例を示す。
図4において、制御局のスケジュール情報生成部33は、タイムスロット毎に同一周波数を使用する複数の通信ペアを以下の手順に従って決定する。まず、同一タイムスロットで同一周波数を用いて通信する複数の通信ペア候補(送信局と受信局)を選択する(S11)。1基地局につき1つの無線局との通信ペアが候補として選択され、通信ペアの候補数は基地局数と同数である。基地局と無線局から構成される通信ペアでは、いずれか一方が送信局で他方が受信局として選択される。そのため、通信ペア候補の選択では基地局毎にその通信先の無線局を選択し、いずれが送信局となるかを選択する必要がある。ここでの選択は、通信要求情報把握部34に保存されている通信リソースが要求される無線局の情報を参照し、通信の優先度が高い無線局が選択される。たとえば、制御局は、基地局ごとに通信要求が通知された順番を当該通信要求を通知した基地局または無線局と関連付けて保持しておき、早く通信要求を通知した基地局または無線局ほど優先的に選択する。または、それぞれの通信要求にアプリケーションと関連付けられた優先度が付けられていた場合には、当該優先度が高く、かつ、早く通知された通信要求ほど優先的に選択する。このようにして、各基地局と通信ペアを構成する無線局を選択する。
【0042】
続いて、スケジュール情報生成部33が位置情報管理部32から、各通信ペアを構成する送信局および受信局の位置情報を取得し、通信ペア毎に、該通信ペアの受信局と送信局との間の距離R、さらに該通信ペアの受信局と他の通信ペアk(kは1〜n−1の整数、nは全通信ペア(全基地局)数)の送信局との距離δk を計算する(S12)。位置情報管理部32には、図1に示すように各基地局および無線局の位置情報が保存されているため、これらの情報から距離R,δk を計算することができる。
【0043】
続いて、前記距離R,δk に基づいて、各通信ペアの受信局でのSINRを推定する(S13)。通信ペアの受信局におけるSINRは次式で導出できる。
s =Ptx s・Gtxant s・Grxant・L(R)
i(k)=Ptx i(k)・Gtxant i(k)・Grxant・L(δk)
SINR=Ps /(N+Σk i(k)) k=1〜n−1
【0044】
s は、通信ペアの受信局が該通信ペアの送信局から受信する信号波電力を示す。Ptx sは該通信ペアの送信局の送信電力を示し、Gtxant s は該通信ペアの送信局のアンテナ利得を示し、Grxant は該通信ペアの受信局のアンテナ利得を示す。
【0045】
i(k)は、通信ペアの受信局が他の通信ペアkの送信局から受信する干渉波電力を示す。他の通信ペアがn−1個ある場合、それぞれについてPi(k)を計算する。Ptx i(k) は他の通信ペアの送信局の送信電力を示し、Gtxant i(k)は他の通信ペアの送信局のアンテナ利得を示す。
【0046】
基地局または無線局ごとに送信電力やアンテナ利得が異なるシステムであれば、スケジュール情報生成部33はそれぞれの送信電力やアンテナ利得の情報が与えられている必要があるが、全ての無線局または基地局で送信電力やアンテナ利得が同一のシステムであれば、スケジュール情報生成部33は単一の送信電力およびアンテナ利得の値を予め有していればよい。
【0047】
L(R) は、該通信ペアの受信局と送信局間の距離Rから計算する伝搬損失である。
L(δk) は、該通信ペアの受信局と他の通信ペアkの送信局間の距離δk から計算する伝搬損失である。見通し通信が前提の通信システムであれば、距離Rまたはδk から自由空間伝搬損失を計算することによってL(R) またはL(δk) を推定できる。見通し通信が前提でない通信システムに本発明を適用する場合は、周辺の建物の高さや密度、使用周波数帯域等を考慮し、適切な伝搬モデルによってL(R) またはL(δk) 推定することも可能である。
【0048】
また、ミリ波帯では、酸素吸収による伝搬損失が大きいことが知られている。たとえば、マイクロ波での酸素吸収による減衰は0.0061dB/km であるのに対して、ミリ波では15dB/km である。酸素吸収による減衰は送受信局間の距離に比例するため、信号波を送信する基地局より遠方に位置する基地局からの干渉波は、酸素吸収の影響によって大きく減衰する。したがって、酸素吸収による影響を考慮した場合、隣接する基地局の全てまたは一部が同一周波数を同時に使用できる可能性が大きくなる。
【0049】
本発明の無線通信システムでミリ波帯の周波数を用いる場合、無線局の位置から酸素吸収の影響を考慮して、同時に同一周波数を使用する基地局または無線局を動的に選択することもできる。この場合、Nを該通信ペアの受信局における熱雑音として、上式を次のように置き換えることができる。
s =Ptx s・Gtxant s・Grxant・L(R)・α(R)
i(k)=Ptx i(k)・Gtxant i(k)・Grxant・L(δk)・α(δk)
SINR=Ps /(N+Σk i(k)) k=1〜n−1
【0050】
α(R) は該通信ペアの受信局と送信局間の距離Rから計算する酸素吸収による減衰量であり、α(δk) は該通信ペアの受信局と他の通信ペアの送信局間の距離δk から計算する酸素吸収による減衰量である。60GHzにおける酸素吸収による減衰は1kmあたり15dBであることが知られているので、α(R) =10^(-0.0015R)として計算可能である。
【0051】
上式によって各通信ペアの受信局でのSINRを推定した(S13)後は、全ての通信ペアのSINRが所定の閾値以上であるか否かを判断する(S14)。SINRの閾値は、最も多値数が小さい変調方式(例えばQPSK1/2等)を復調可能な閾値等に設定することができる。全ての通信ペアのSINRが閾値以上であれば(S14でYes )、同一タイムスロットで同一周波数を用いる候補として選択されている通信ペアを、そのタイムスロットに割り当てるスケジュール情報として確定する(S15)。
【0052】
全ての通信ペアのSINRが閾値以上でない場合、つまり通信ペアのいずれかひとつでもSINRが閾値未満であれば(S14でNo)、同一タイムスロットで同一周波数を用いる候補として選択されている通信ペアから、一部の通信ペアを除外する(S16)。続いて、一部の通信ペアを除外して更新した通信ペア候補について、各受信局のSINRを再計算する(S13)。ここでは、同一タイムスロットで同一周波数を用いる送信局が少なくなっているので、各通信ペアの受信局でのSINRは改善する。続いて、更新された全通信ペアの受信局でのSINRが閾値以上であるかを再び判断し(S15)、全通信ペアの受信局でのSINRが閾値以上になる(S15でYes になる)まで、候補として選択されている通信ペアを更新していく。
【0053】
なお、S16で候補から除外する通信ペアは、SINRが最小の通信ペアを選択してもよいし、所定の優先度に基づいて優先度が最も低い通信ペアを選択してもよい。優先度設定の一例として、予めアプリケーションの種類により、通信の優先度を設定することができる。例えば、ビデオや音声の通信優先度を高くし、ベストエフォートの通信より先に送信されるように設定すれば、ベストエフォートの通信は先に除外対象となる。また、すべての通信ペアが同一種類のアプリケーションを使用しているとき、ランダムに除外される通信ペアを選択することも考えられる。S16で除外される通信ペアは優先的に次のタイムスロットに割当て、次のタイムスロットのS16のプロセスにおいて、通信ペア候補から除外される通信ペアとして選択されにくくなるように優先度を高く設定してもよい。
【0054】
ここで、上記の処理において除外された通信ペアは、図1に示すスケジュール情報においてタイムスロット2で割り当てができなかった基地局2−3と無線局1−6の通信をタイムスロット3で割り当てるように、次のタイムスロットに割り当てることになる。これは、各タイムスロットで使用できる周波数帯の分割数を1としたものである。
【0055】
一方、各タイムスロットで使用できる周波数帯の分割数を2以上とする場合には次のようになる。上記の処理において除外された通信ペアについて、同様に同時に通信可能な組合せを選択し、これを繰り返すことによって、全ての通信ペアに対して周波数を割り当てるために必要な周波数の数を算出する。すなわち、上記の処理を行った繰り返し数Nが、選択された全ての通信ペアが同時に通信を行うために必要な周波数の数である。制御局は、使用できる周波数帯をN分割してそれぞれの通信ペアに割り当てる。
【0056】
上述のように制御局30のスケジュール情報生成部33は、タイムスロット毎に同一周波数を使用する通信ペアおよび周波数を決定することでスケジュール情報を生成し、これを基地局20および無線局10が把握し、スケジュール情報に従って通信が実施される。
【0057】
なお、本発明では、通信ペアの受信局でのSINRを計算する際に、位置情報を使用しているが、位置情報を使用せずにSINRを推定することも原理的には可能である。受信局が他局からの受信電力Ps とPi(k)を測定し、その値を制御局へ通知する方法である。しかし、この方法では受信局が他局からの受信電力を測定するために、その他局のみが無線信号を送信する占有スロットが必要である。さらに、複数の他局からの受信電力を制御局に通知する必要があるため、無線リソースのオーバヘッドが大きい。さらに、基地局数や無線局数が大きいほど、上記の占有スロット数とオーバヘッドが大きくなるという欠点がある。この点、本発明では基本的に制御局へ通知する情報は位置情報のみであり、基地局数や無線局数が増加しても、無線リソースのオーバヘッドが大きくなるという問題はない。
【符号の説明】
【0058】
1−1〜1−6 無線局
2−1〜2−2 基地局
3 制御局
10 無線局装置
11 アンテナ
12 送受信部
13 通信制御部
14 インタフェース部
15 位置情報把握部
16 スケジュール情報保持部
17 データバッファ部
20−1〜20−m 基地局装置
21 アンテナ
22 送受信部
23 通信制御部
24 インタフェース部
25 位置情報把握部
26 スケジュール情報保持部
27 データバッファ部
30 制御局装置
31 インタフェース部
32 位置情報管理部
33 スケジュール情報生成部
34 通信要求情報把握部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御局、複数の基地局、および複数の無線局から構成され、当該基地局と当該無線局とがタイムスロットに区切られた無線フレームを用いて通信を行う無線通信システムにおいて、
前記制御局は、各タイムスロットにおける前記基地局または前記無線局からの通信要求に基づいて、前記基地局毎に基地局と通信相手の無線局からなる通信ペア候補を選択し、当該通信ペア候補の中から、前記基地局および前記無線局の位置情報に基づいて互いに干渉とならない通信ペアを確定し、スケジュール情報として生成するスケジュール情報生成手段を備え、当該スケジュール情報を前記基地局および前記無線局に通知する構成であり、
前記基地局および前記無線局は、前記制御局から通知された前記スケジュール情報を用いて前記各タイムスロットごとに割り当てられた前記通信ペアの基地局と無線局との間で通信する構成であり、
前記スケジュール情報生成手段は、前記選択された全ての通信ペアが同時に通信を行った場合に、各通信ペアの受信側におけるSINRの推定値が閾値を上回るまで、一部の通信ペアを除外しながら演算を繰り返して前記タイムスロットに割り当てる通信ペアを確定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記スケジュール情報生成手段は、前記除外された通信ペアを次のタイムスロットにおける前記通信ペア候補として選択する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記スケジュール情報生成手段は、前記SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアに対して所定の周波数を割り当て、前記除外された通信ペアに対してさらに別の周波数を割り当てて前記SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定し、これを繰り返すことにより各周波数ごとに前記SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定してスケジュール情報として生成する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記スケジュール情報生成手段は、前記通信ペアの受信側におけるSINRを推定するときに、酸素吸収による無線通信の減衰を考慮してSINRを推定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
制御局、複数の基地局、および複数の無線局から構成され、当該基地局と当該無線局とがタイムスロットに区切られた無線フレームを用いて通信を行う無線通信方法において、
前記制御局は、スケジュール情報生成手段で、各タイムスロットにおける前記基地局または前記無線局からの通信要求に基づいて、前記基地局毎に基地局と通信相手の無線局からなる通信ペア候補を選択し、当該通信ペア候補の中から、前記基地局および前記無線局の位置情報に基づいて互いに干渉とならない通信ペアを確定し、スケジュール情報として生成し、当該スケジュール情報を前記基地局および前記無線局に通知し、
前記基地局および前記無線局は、前記制御局から通知された前記スケジュール情報を用いて前記各タイムスロットごとに割り当てられた前記通信ペアの基地局と無線局との間で通信し、
前記スケジュール情報生成手段は、前記選択された全ての通信ペアが同時に通信を行った場合に、各通信ペアの受信側におけるSINRの推定値が閾値を上回るまで、一部の通信ペアを除外しながら演算を繰り返して前記タイムスロットに割り当てる通信ペアを確定する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信方法において、
前記スケジュール情報生成手段は、前記除外された通信ペアを次のタイムスロットにおける前記通信ペア候補として選択する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
請求項5に記載の無線通信方法において、
前記スケジュール情報生成手段は、前記SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアに対して所定の周波数を割り当て、前記除外された通信ペアに対してさらに別の周波数を割り当てて前記SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定し、これを繰り返すことにより各周波数ごとに前記SINRの推定値が閾値を上回る通信ペアを確定してスケジュール情報として生成する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
請求項5に記載の無線通信方法において、
前記スケジュール情報生成手段は、前記通信ペアの受信側におけるSINRを推定するときに、酸素吸収による無線通信の減衰を考慮してSINRを推定する
ことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21603(P2013−21603A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154936(P2011−154936)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】