説明

無線通信システムにおける上り通信方法及び無線端末

【課題】無線基地局から上り信号の送信許可を得るための要求の送信タイミングを制御して、無線端末の送信電力を低減しつつ、期待するスループットを得られるようにする。
【解決手段】無線端末2は、無線基地局1から受信した下り信号に基づいて無線基地局1での上り信号の受信品質を推定し、その推定結果に基づいて、上り信号の送信許可を得るための送信要求(SI)の無線基地局1への送信タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける上り通信方法及び無線端末に関し、例えば、W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式の無線による通信を行なう無線通信システムに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
W-CDMA方式は、IMT-2000(International Mobile Telecommunications-2000)で定められた無線通信インタフェースの1つであり、代表的な無線通信方式に位置づけられている。
W-CDMA方式は、最大384kbpsの伝送速度により、音声、動画像、データ等のマルチメディアアクセスを可能にしている。
【0003】
また、近年になってW-CDMA方式の技術をベースにしたHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)及びHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)と呼ばれる無線通信方式の研究、開発が進められている。
現行のW-CDMA方式に対して、HSDPAは、基地局から端末(UE:User Equipment)への方向である下り方向への高速なダウンリンクパケット伝送を行なうための技術であり、HSUPAは、その逆方向である上り方向への高速なアップリンクパケット伝送を行なうための技術である。HSDPAは3GPPリリース5(3rd Generation Partnership Project Release 5)で、HSUPAは3GPPリリース6でそれぞれ標準化が行なわれている。
【0004】
図4はW-CDMAの通信を示す概念図で、この図4に示すように、基地局100と1又は複数の端末(UE:User Equipment)200との間で、W-CDMA方式による無線通信が行なわれる。
そして、上りリンクでは、ユーザ情報を伝送するチャネルであるDPDCH(Dedicated Physical Data Channel)と、制御情報を伝送するチャネルであるDPCCH(Dedicated Physical Control Channel)とが、それぞれ、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調の同相成分(I軸)と直交成分(Q軸)にマッピングされて基地局100へ送信される(実線矢印A1参照)。
【0005】
また、下りリンクでは、DPDCHとDPCCHとは、時分割多重されてUE200へ送信される(点線矢印A2参照)。なお、これらのリンクは、UE200毎に個別に割り当てられる個別チャネルであり、他のUE200とは排他的な伝送が行なわれる。
次に、図5にHSDPAの通信概念を示す。この図5に示すように、基地局100からUE200への下り伝送時にHSDPAによる通信を行なう。
【0006】
即ち、UE200は、それぞれ、基地局100からパイロットチャネル(CPICH:Common Pilot Channel)により送信されるパイロット信号(基地局100とUE200との間で既知の信号)(符号A5参照)を受信して、UE200毎に、当該パイロット信号を基に下りリンクの伝搬環境、即ち、受信品質(受信電界強度:SIR)を測定し、その測定結果を基に下りリンクの受信品質情報たるCQI(Channel Quality Indicator)を算出し、当該CQIをHS-DPCCH(High Speed Dedicated Physical ControlChannel)により基地局100へ通知する(実線矢印A3参照)。
【0007】
基地局100は、UE200から通知された下りリンクの受信品質情報(CQI)に基づいて、伝搬環境の良好な、予め決めた台数分のUE200を優先的に選択するスケジューリングを行なう。このスケジューリングによって、或るUE200が選択されたとすると、基地局100は、当該UE200へスケジューリング情報(変調の種類や伝送量等が含まれる)をHS-SCCH(High Speed Shared Control Channel)により通知する(点線矢印A4参照)。そして、UE200は、受信したスケジューリング情報に基づいて、自端末200の機能を設定する。
【0008】
その後、基地局100は、UE200へユーザ情報をHS-PDSCH(High Speed Physical Downlink Shared Channel)と呼ばれる無線チャネルで伝送する(点線矢印A4参照)。このユーザ情報を伝送するHS-PDSCHは、各UE200が使用できる共通チャネルであり、時分割した1つのタイムスロットを、1つのUE200又は複数のUE200がシェアして使用するもので、最大14.4Mbpsの高速下りアクセスを可能にする。
【0009】
次に、図6にHSUPAの通信概念を示す。この図6に示すように、UE200から基地局200への上り伝送時にHSUPAによる通信を行なう。
即ち、UE200は、基地局100へ上りデータ伝送要求としてSI(Scheduling Information)を送信する(実線矢印A6参照)。
基地局100は、UE200から送られてきた複数のSIを集計し、UE200の通信品質や上りデータの優先度等に基づいて、上り伝送を行なうUE200の送信タイミングを決めるスケジューリングを行ない、UE200へ上り伝送許可として“Grant”を送信する(点線矢印A7参照)。なお、“Grant”には、“absolute grant”と“relative grant”の2種類があり、“absolute grant”は、一定間隔を置いて上り伝送レートなどを通知するのに用いられ、“relative grant”は、“absolute grant”で通知した内容の更新情報を通知するのに用いられる。
【0010】
UE200は、基地局100からの“Grant”を受信することにより上り伝送を許可された端末200から順番に、E-DCH(Enhanced Dedicated Channel)と呼ばれる個別チャネルによって、ユーザ情報を基地局100へ伝送する(実線矢印A8参照)ことで、高速上りアクセスを可能にする。なお、E-DCHの伝送速度は、およそ2〜5Mbpsとなることが検討されている。
【0011】
ところで、HSDPAでは、適応符号化変調方式を採用しており、例えば、QPSK変調方式と16値QAM変調方式とを基地局100とUE200との間の無線環境に応じて適応的に切り替えることを特徴としている。また、上記適応変調方式を実現するために、UE200は基地局100に対して受信環境を報告するための前記CQIが定義されており、CQIテーブルには例えばCQI=1〜30に応じて伝送速度の異なるフォーマットが定義されている。
【0012】
そして、UE200は、受信環境を測定し、その環境下でCQIを送信する1スロット前以内から3スロット間でHS-PDSCHを受信したと仮定した場合に、HS-PDSCHのBLER(Block Error Rate)=0.1を越えない最大のCQIまたはそれよりも小さいCQIを基地局100に報告する。
一方、HSUPAでは、基地局100が自局配下のトータルの上り干渉量(受信電力)を監視し、受信電力を閾値と比較することにより、上り送信要求のあるUE200に対して、E-AGCH(最大レートの絶対値指定コマンド)を用いて絶対値でUE200に送信レートを指示し、あるいは、E-RGCH(最大レートの相対値指定コマンド)を用いて、送信レートの増加、維持、減少を指示する。UE200は、上り送信データがある場合、基地局100にSI(スケジューリング要求)を送信する。
【0013】
なお、HSUPAを含むW-CDMAに関する物理チャネル、トランスポートチャネルに関する最新の資料として下記非特許文献1がある。また、HSUPAの物理レイヤに関する最新の資料として下記非特許文献2がある。
【非特許文献1】3GPP TR 25.211 Release 7 (V7.0.0)(2006-03)
【非特許文献2】3GPP TR 25.808 Release 6 (V6.0.0)(2005-03)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
次に、図7に、上記SI(スケジューリング要求)の送信機能を具備するUE200の要部構成例を示す。この図7に示すUE200は、例えば、受信機201,HS-SCCH復調処理部202,HS-SCCH復号処理部203,HS-PDSCH復調処理部204,CQI報告値算出部205,HS-PDSCH復号処理部206,HS-PDSCH CRC演算部207,下りレイヤ2(L2)データ処理部208,下り受信タイミング監視/上り送信タイミング管理部209,CQI/ACK/NACKスケジューリング処理部210,HS-DPCCH符号化処理部211,HS-DPCCH変調処理部212,上りレイヤ2(L2)データ処理部213,上りスケジューリング要求処理部214,E-DCH符号化処理部215,E-DCH変調処理部216及び送信機217をそなえて構成されている。
【0015】
かかる構成を有するUE200では、受信アンテナ(図示省略)で受信された信号が受信機201に入力され、当該受信機201において、パス検出や逆拡散処理等が行なわれて、CPICH、HS-SCCH、HS-PDSCHの各チャネルが分離される。
そのうちのCPICH(パイロット信号)は、CQI報告値算出部205に入力されてCQI報告値の算出に用いられる。即ち、当該受信パイロット信号を基に下りリンクの受信SIRが測定され、その測定結果を基に下りリンクのCQIが算出される。当該CQIは、CQI/ACK/NACKスケジューリング処理部(以下、単に「スケジューラ」ともいう)210,HS-DPCCH符号化処理部211,HS-DPCCH変調処理部212及び送信機217を経由することにより、符号化処理、変調処理及び無線送信処理を施されて、HS-DPCCHにより基地局100へ通知される。なお、受信パイロット信号は、HS-SCCH及びHS-PDSCHのチャネル推定値を求めるのにも用いられる。
【0016】
また、受信機201で分離されたHS-SCCHは、HS-SCCH復調処理部202にて、前記受信パイロット信号に基づいて得られるチャネル推定値を用いてチャネル補償された上で復調され、HS-SCCH復号処理部203にて復号される。その復号結果は、HS-PDSCHの復号に必要な情報(符号化方式、符号化率など)を含むためHS-PDSCH復号処理部206に入力される。
【0017】
また、受信機201で分離されたHS-PDSCHは、HS-PDSCH復調処理部204にて、チャネル推定値を用いてチャネル補償された上で復調され、さらに、HS-PDSCH復号処理部206にて、HS-SCCH復号処理部203からの前記復号結果を用いて復号され、HS-PDSCH CRC演算部207にて、CRC演算されてエラーチェックされる。
その結果、エラーの無い(CRC演算結果がOKである)復号データは、下りのレイヤ2の受信データとして下りL2データ処理部208に入力されて、所要のL2のデータ処理を施される。また、上記CRC演算結果は、スケジューラ210に入力され、CRC演算結果がOKであればACK情報が、NGであればNACK情報がそれぞれ前記CQI報告値とともにスケジューリングされて、HS-DPCCH符号化処理部211,HS-DPCCH変調処理部212及び送信機217を経由することにより、符号化処理、変調処理及び無線送信処理を施されて、HS-DPCCHにより基地局100へ通知される。
【0018】
一方、上りリンクについては、上りL2データ処理部213にて、基地局100へ送信すべき上りL2データが存在すると、上りスケジューリング要求処理部214にて、上りSIが生成され、E-DCH符号化処理部215,E-DCH変調処理部216及び送信機217を経由することにより、符号化処理、変調処理及び無線送信処理を施されて、E-DCHにより基地局100へ送信される。
【0019】
なお、送信機217によるHS-DPCCH及びE-DCHの送信タイミングは、下り受信タイミング監視/上り送信タイミング管理部(以下、単に「タイミング管理部」ともいう)209からの送信タイミング信号に基づいて管理される。即ち、タイミング管理部209は、受信機201でのフレーム同期処理により特定される受信タイミング(フレームタイミング)を基に、HS-DPCCH及びE-DCHの送信タイミング(送信スロット)を管理し、当該送信タイミングに従って送信機217による送信タイミングが規定のタイミングとなるように制御するのである。
【0020】
次に、UE200の基地局100からの距離等の環境の相違による上り送信電力対スループット特性について、図8を用いて説明する。なお、この図8において、100aは基地局100の形成する無線エリア(セル)を表し、200−1は基地局100から離れた場所(セル境界付近:location A)に位置するUEを表し、200−2は基地局100に近い場所(location B)に位置するUEを表している。
【0021】
そして、例えば、定例的に、UE200−1とUE200−2とで同じデータ量をそれぞれ送信する場合、UE200−2については、基地局100までの距離が近いため、E-DCHの送信電力が低くても充分なスループットが得られる。
ところが、UE200−1については、基地局100までの距離が遠いため、高いスループットで基地局100に上りデータを送信するためには、E-DCHの送信電力を高くする必要がある。そのため、UE200−1は多くの電力を消費し、なおかつ、UE200−1周辺の無線通信機器に対して高い干渉波を発生させてしまうことになる。
【0022】
既述のように、HSUPA通信では、上りデータ送信を要求するUE200は、基地局100へ上りデータ伝送要求としてSIを送信し、基地局100は、UE200から送られた複数のSIを集計し、UEの通信品質や上りデータの優先度等に基づいて、上り伝送を行なうUE200の送信タイミングを決めるスケジューリングを行なうため、本来、システムスループット効率の高い通信方式である。
【0023】
しかしながら、通常のHSUPA通信において、基地局100は、受信品質の悪い環境にあるUE200に対しても、他に送信要求のあるUE200が存在しなければ、上り送信を許可し、通信を開始してしまう。悪いケースを考えると、受信品質の悪い環境下で通信を開始し、その後さらに受信品質が劣化し、データ送信が結局完了しないまま通信を終了させてしまう場合もある。そのため、UE200の消費電力効率の劣化や、他の無線通信機器への干渉を招くことになる。
【0024】
本発明は、上記の課題に鑑み創案されたもので、無線基地局から上り信号の送信許可を得るための要求の送信タイミングを制御して、無線端末の送信電力を低減しつつ、期待するスループットを得られるようにし、また、他の無線通信機器への干渉を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するために、本発明では、下記の無線通信システムにおける上り通信方法及び無線端末を用いることを特徴としている。即ち、
(1)本発明の無線通信システムにおける上り通信方法は、無線基地局と、当該無線基地局と無線による通信を行なう無線端末とをそなえた無線通信システムにおいて、該無線端末は、該無線基地局から受信した下り信号に基づいて該無線基地局での上り信号の受信品質を推定する上り受信品質推定ステップと、前記上り受信品質推定ステップによる推定結果に基づいて、上り信号の送信許可を得るための送信要求の該無線基地局への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御ステップとを有することを特徴としている。
【0026】
(2)また、本発明の無線通信システムにおける無線端末は、無線基地局と、当該無線基地局と無線による通信を行なう無線端末とをそなえた無線通信システムにおける端末であって、該無線基地局への上り信号の送信許可を得るための送信要求を該無線基地局へ送信しうる送信手段と、該無線基地局から受信した下り信号に基づいて該無線基地局での上り信号の受信品質を推定する上り受信品質推定手段と、前記上り受信品質推定手段による推定結果に基づいて、該送信手段を制御して前記送信要求の該無線基地局への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御手段とをそなえたことを特徴としている。
【0027】
(3)ここで、該上り送信タイミング制御手段は、前記推定結果が所定の上り品質閾値以上の場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記上り品質閾値未満の場合に前記送信要求の送信を待機させるように該送信手段を制御してもよい。
(4)また、該上り送信タイミング制御手段は、現在の上り送信電力値を監視する送信電力値監視部と、該送信電力値監視部による監視結果が所定の送信電力閾値未満か否かを判定する送信電力判定部とをそなえ、該送信電力判定部にて前記監視結果が前記送信電力値未満である場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記送信電力閾値未満の場合に前記送信要求の送信を待機させるように該送信手段を制御してもよい。
【0028】
(5)さらに、該上り送信タイミング制御手段は、前記送信要求を待機させた場合の待機時間を監視する待機時間監視部と、該待機時間監視部により監視された待機時間が所定時間を経過したか否かを判定する待機時間判定部とをそなえ、該待機時間判定部にて前記待機時間が前記所定時間を経過したと判定されると前記送信要求を送信させるように該送信手段を制御してもよい。
【0029】
(6)また、該上り送信タイミング制御手段は、バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部と、該バッテリー監視部による監視結果が所定のバッテリー閾値以上か否かを判定するバッテリー残量判定部とをそなえ、該バッテリー残量判定部にて前記監視結果が前記バッテリー閾値以上であると判定された場合に、前記送信要求を送信させるように該送信手段を制御してもよい。
【0030】
(7)さらに、該上り送信タイミング制御手段は、バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部をそなえ、前記バッテリー残量が少ないほど、前記送信要求が送信されにくくなる方向に前記推定結果を制御するように構成してもよい。
(8)また、該上り送信タイミング制御手段は、ユーザによる前記送信タイミングに関する入力情報を受け付ける入力部をそなえ、該入力部により入力された前記入力情報に基づいて前記送信タイミングを制御してもよい。
【発明の効果】
【0031】
上記本発明によれば、少なくとも下記に示すいずれかの効果ないし利点が得られる。
(1)無線端末は、無線基地局(以下、単に「基地局」ともいう)から受信した下り信号に基づいて当該基地局での上り信号の受信品質を推定し、その推定結果に基づいて、上り信号の送信許可を得るための送信要求の当該基地局への送信タイミングを制御するので、基地局での受信環境が悪いと推定される場合には、上り信号の送信要求の送信を待機し、基地局の受信環境が良いと推定される場合に送信要求を送信することができる。したがって、無線端末の送信電力を低く抑えることができ、かつ、期待するスループットを得ることができる。また、他の無線通信機器への干渉を低くすることも可能である。
【0032】
(2)現在の上り信号の送信電力を監視し、その監視結果に応じて上り送信要求の可否を決定することができるので、無線端末の消費電力を低減することが可能となる。
(3)上り信号の待機時間が所定時間経過すると、送信要求を行なうと決定することができるので、いつまでも送信要求が送信されずに通信が開始されないといった事態を回避することが可能となる。
【0033】
(4)入力部によるユーザからの送信要求の送信タイミングに関する入力情報に基づいて前記送信タイミングを制御することができるので、ユーザの都合(意思)によって適宜に送信要求の送信タイミングを変更することが可能となり、ユーザの利便性を向上することが可能となる。
(5)無線端末のバッテリー残量を監視して、バッテリー残量が少ないほど上り送信要求が送信されにくくすることができるので、無線端末の消費電力をさらに低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることはいうまでもない。
〔A〕概要説明
図1は本発明の一実施形態に係る移動通信システムの構成を模式的に示す図で、この図1に示す移動通信システムは、無線基地局(BTS:Base Transceiver Station)1と、このBTS1が形成する無線エリア(セル)1aにおいて当該BTS1と無線による通信を行なう携帯電話などの無線(ユーザ)端末(UE)としての移動局(MS:Mobile Station)2とをそなえて構成され、本例では、BTS1からMS(UEと表記することもある)2への下りリンクの通信はHSDPAにより行ない、MS2からBTS1への上りリンクの通信はHSUPAにより行なうことを前提とする。なお、BTS1及びMS2の数は、いずれも1台以上存在してよい。
【0035】
ここで、UE2からBTS1への上りリンク(E-DCH)の送信データ(以下、上り送信データあるいは上りデータともいう)のBTS1での受信品質は、定例的にUE2との間の距離やUE2の近くの建物などによるマルチパス環境などの影響により、劣化する傾向にある。同様に、下りリンクのデータのUE2での受信品質もBTS1との間の距離やマルチパス環境などの影響により劣化する傾向にある。そのため、例えば、下りリンクのHS-PDSCHの受信品質を示すCQI報告値により、上りリンク(E-DCH)のデータ(ユーザ情報)をUE2から送信した場合のBTS1での受信品質を推定することが可能である。
【0036】
そこで、例えば図1中に示すように、セル境界などのBTS1から離れた場所(location)Cに位置するUE2は、下りリンクの受信環境を示すCQIを参照し、CQIが低い場合には、上り送信データをメモリ等に格納(保持)し、上りデータスケジューリング要求(SI)の送信は待機し、BTS1から近い位置(location)DのようなCQIが高い場所に移動したときに、上りデータスケジューリング要求(SI)を送信し、前記メモリに格納した上り送信データの送信要求を行なうようにする。
【0037】
このように、UE2にBTS1へ送信すべき上り送信データがある場合、当該UE2がCQIに基づいてE-DCH送信時のBTS1の受信環境を推定し、BTS1の受信環境が悪いと判断した場合は、上り送信データをメモリ等に格納してSI送信を待機し、BTS1の受信環境が良いと推定される場合に、SI送信することで、UE2の送信電力を低く抑えることができ、かつ、期待するスループットが得ることができる。また、他の無線通信機器への干渉を低減することが可能である。
【0038】
なお、従来技術では、UEにBTSへ送信すべき上りデータがある場合、位置CのようにBTS1から離れた位置にあり、BTS1に対してE-DCHを大きな電力で送信しなければならない環境下でも、BTS1にSIを送信していた。
以下、上記のようなSI送信待機制御機能を具備するUE2の実現例について説明する。
【0039】
〔B〕UE2の説明
図2は上記UE2の要部構成に着目したブロック図で、この図2に示すUE2は、例えば、受信機21、HS-SCCH復調処理部22、HS-SCCH復号処理部23、HS-PDSCH復調処理部24、CQI報告値算出部25、HS-PDSCH復号処理部26、HS-PDSCH CRC演算部27、下りL2(レイヤ2)データ処理部28、下り受信タイミング監視/上り送信タイミング管理部29、CQI/ACK/NACKスケジューリング処理部30、HS-DPCCH符号化処理部31、HS-DPCCH変調処理部32、上りL2データ処理部33、上りE-DCH受信環境推定部34、メモリ(上りデータ格納部)35、上りL2データ送信要求判断部36、上りスケジューリング要求処理部37、E-DCH符号化処理部38、E-DCH変調処理部39及び送信機40をそなえて構成される。
【0040】
ここで、上りE-DCH受信環境推定部34、上りデータ格納部35及び上りL2データ送信要求判断部36を除く上記各部21〜33,37〜40は、それぞれ、図7により前述した各部201〜217と同等の機能を具備するものである。
即ち、受信機21は、受信アンテナ(図示省略)で受信された信号を基にパス検出や逆拡散処理等を行ない、当該受信信号からCPICH、HS-SCCH、HS-PDSCHの各チャネル(信号)を分離するものであり、HS-SCCH復調処理部22は、上記受信CPICH(パイロット信号)から求められる下りリンクのチャネル推定値に基づいて上記受信HS-SCCHをチャネル補償した上で送信側(BTS1)での変調方式(QPSKなどの多値変調方式。以下、同じ。)に対応した復調方式で復調するものであり、HS-SCCH復号処理部23は、このHS-SCCH復調処理部22で復調された信号を送信側での符号化方式(畳込み符号化やターボ符号化などの誤り訂正符号化方式。以下、同じ。)に対応した復号方式で復号するものである。なお、その復号結果には、HS-PDSCHの復調に必要な情報(符号化方式、符号化率など)が含まれるため、HS-PDSCH復号処理部26に供給される。
【0041】
CQI報告値算出部25は、前記受信パイロット信号に基づいてCQI報告値(以下、単に「CQI」と表記することもある)を算出するもので、例えば、当該受信パイロット信号を基に下りリンクの受信SIRを測定し、その測定結果を基に下りリンクのCQI報告値を算出できるようになっている。なお、算出されたCQIは、CQI/ACK/NACKスケジューリング処理部29と上りE-DCH受信環境推定部34とにそれぞれ提供される。
【0042】
HS-PDSCH復調処理部24は、受信機21でチャネル分離された受信HS-PDSCHを、チャネル推定値を用いてチャネル補償した上で、送信側(BTS1)での変調方式に対応した復調方式で復調するものであり、HS-PDSCH復号処理部26は、その復調信号をHS-SCCH復号処理部23からの前記復号結果を用いて復号するものである。HS-PDSCH CRC演算部27は、その復号結果をCRC演算してエラーチェックするもので、エラーの無い(CRC演算結果がOKである)復号データが、下りのレイヤ2の受信データとして下りL2データ処理部28へ出力されるようになっている。なお、CRC演算結果は、スケジューラ30に入力され、上記CQI報告値算出部25で算出されたCQI報告値とともにBTS1へのACK情報又はNACK情報の送信タイミングがスケジューリングされる。
【0043】
下りL2データ処理部28は、上記CRC演算結果がOKとなった復号データ(下りL2データ)について所要のレイヤ2の処理を施すものである。
下り受信タイミング監視/上り送信タイミング管理部(以下、単に「タイミング管理部」という)29は、タイミング管理部29は、受信機21でのフレーム同期処理により特定される受信タイミング(フレームタイミング)を基に、上りリンクのチャネル(HS-DPCCH及びE-DCH)の送信タイミング(送信スロット)を管理し、当該送信タイミングに従って送信機40による送信タイミングが規定のタイミングとなるように制御するものである。
【0044】
CQI/ACK/NACKスケジューリング処理部(以下、単に「スケジューラ」という)30は、CQI報告値算出部25で算出されたCQI報告値及び前記CRC演算結果に応じたACK/NACK情報のBTS1への送信タイミングをスケジューリングするものであり、HS-DPCCH符号化処理部31は、当該スケジューラ30でスケジューリングされHS-DPCCHにて送信すべき情報を所要の符号化方式(誤り訂正符号化方式)で符号化するものであり、HS-DPCCH変調処理部32は、その符号化情報を所要の変調方式で変調するものである。
【0045】
上りL2データ処理部33は、BTS1へ送信すべきレイヤ2の上りデータを生成、処理するものであり、上りL2データスケジューリング要求処理部37は、後述する上りL2データ送信要求判断部(以下、単に「送信要求判断部」という)36で上りスケジューリング要求(SI)をBTS1に対して行なうと判断された場合に上りBTS1へE-DCHにて送信すべき上りスケジューリング要求(SI)を生成、処理するものである。
【0046】
E-DCH符号化処理部38は、上記上りスケジューリング要求処理部37からのSIをE-DCHの情報として所要の符号化方式で符号化するものであり、E-DCH変調処理部39は、その符号化情報を所要の変調方式で変調するものである。
送信機40は、HS-DPCCH変調処理部32及びE-DCH変調処理部39でそれぞれ得られたHS-DPCCH及びE-DCHの変調信号について、DA(Digital to Analog)変換、無線周波数(RF)への周波数変換(アップコンバート)等の所要の無線送信処理を施して、上りリンクの各チャネルの信号をタイミング管理部29からの送信タイミング信号に従って送信アンテナ(図示省略)からBTS1に向けて送信するものである。
【0047】
つまり、上記の上りスケジューリング要求処理部37、E-DCH符号化処理部38、E-DCH変調処理部39及び送信機40は、BTS1への上り信号の送信許可(“Grant”)を得るための送信要求(SI)をBTS1へ送信しうる送信手段としての機能を果たしている。
そして、上りE-DCH受信環境推定部(上り受信品質推定手段)34は、BTS1から受信した下りリンクの信号に基づいてBTS1での上りリンクの信号の受信品質を推定するもので、本例では、CQI報告値算出部25で算出された下りリンクのCQI報告値を基に上りリンク(E-DCH)のBTS1での受信環境(品質)を推定するようになっている。例えば、CQIと少なくともHS-PDSCHのUE(MS)2での受信スループット(kbps)とを対応付けた下記表1を基にE-DPDCH(論理チャネルであるE-DCHに対する物理チャネル)の送信スループット、つまり、E-DPDCHのBTS1での受信環境(品質)を推定することができる。
【0048】
即ち、CQI報告値は、BTS1が送信するCQI報告値に対応したHS-PDSCHのトランスポートブロックサイズに対して、UE2が90%(ブロックエラーレート(BLER)=0.1)の受信スループットを保証する値であり(下記表1参照)、上りリンクのE-DPDCHと下りリンクのHS-PDSCHの通信環境は相関性が高いものと推定できるので、UE2の上りリンクのE-DPDCHの送信スループットも下りリンクのHS-PDSCHの受信スループットと同等であると推定できる(最終的に、下記表1から対応するCQIを推定できることになる)からである。
【0049】
なお、前記CQIは、時間的に平均化処理した値を前記判定基準の基礎として用いてもよい。この場合、上りE-DCH受信環境推定部34に、CQI報告値算出部25で算出されたCQIを時間的に平均化処理する平均化処理機能部341(図2参照)を具備すればよい。
【0050】
【表1】

【0051】
つまり、本例の上りE-DCH受信環境推定部34は、下り信号の受信品質情報であるCQIをBTS1での上り信号の受信品質の推定結果として求めるCQI推定部342(図2参照)としての機能を具備し、さらに、このCQI推定部342が、下り信号の受信データ速度(受信スループット)から送信可能な上り信号の送信データ速度(送信スループット)を推定する上り送信データ速度推定部と、この上り送信データ速度推定部により推定された送信データ速度を上記表1により対応するCQIに変換する変換部としての機能を具備していることになる。なお、上記表1は例えばテーブル形式のデータとしてE-DCH受信環境推定部34の図示しない内蔵メモリ等に保持される。
【0052】
送信要求判断部36は、上りL2データ処理部33からの上り送信データが存在する場合に、少なくとも上りE-DCH受信環境推定部34による推定結果に基づいて、BTS1に対して上りスケジューリング要求(SI)(以下、上り送信要求ともいう)を行なうか否かを判断(決定)するもので、例えば、上りE-DCH受信環境推定部34にてE-DCHの送信スループットが所定の閾値(例えば、200kbps)以下であると推定された場合(つまり、表1でCQI=1〜5の場合)に、下記表2に示すように、上り送信要求を行なわないと決定し、それ以外の場合(表1でCQI=6〜30の場合)は上り送信要求を行なうと決定する。なお、前記閾値は、例えば、正常に通信を完了できるスループットであるか否かという観点から定義、設定される。
【0053】
【表2】

【0054】
上りデータ格納部(信号保持部)35は、上記送信要求判断部36にて上り送信要求を行なわない(待機させる)と決定された場合の上り送信データを一時的に保持しておくものである。
つまり、本例の上りデータ格納部35及び送信要求判断部36は、上りE-DCH受信環境推定部34による推定結果に基づいて、前記送信手段としての各処理部37〜39及び送信機40を制御して上りSIのBTS1への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御手段としての機能を果たしている。
【0055】
ただし、本例の送信要求判断部36は、下記の機能部を選択的、追加的に具備することもできる(図2参照)。
(1)上りリンク(DPDCH)の送信電力を監視し、その監視結果を前記判定基準(上り送信要求の可否の決定基準)の要素として加える(例えば、送信電力が最大電力でない場合に上り送信要求を行なうと決定する)上り送信電力監視機能部361
(2)上りデータ格納部35に格納された上りデータの格納時間を監視し、その監視結果を前記判定基準の要素として加える(例えば、格納時間が所定時間(送信制限時間)を経過した場合に、上り送信要求を行なうと決定する)タイマ機能部362
(3)UE2のユーザからの上り送信要求に関する判定条件(例えば、上り送信要求の待機可否や前記送信制限時間などの上り送信要求の送信タイミングに関する入力情報)を受け付け、前記判定基準の要素として加えるユーザインタフェース機能部(入力部)363
(4)UE2のバッテリー残量を監視して、その監視結果を前記判定基準の要素として加える(例えば、バッテリー残量が少ないほど上り送信要求が送信されにくくする)バッテリーモニタ機能部364
以下、上述のごとく構成された本実施形態のUE2の動作について詳述する。
【0056】
(B1)全体動作説明
即ち、上記構成を有するUE2では、受信アンテナで受信された信号が受信機21に入力され、当該受信機21において、パス検出や逆拡散処理等が行なわれて、CPICH、HS-SCCH、HS-PDSCHの各チャネルが分離される。
そのうちのCPICH(パイロット信号)は、CQI報告値算出部25に入力されてCQI報告値の算出に用いられる。即ち、当該受信パイロット信号を基に下りリンクの受信SIRが測定され、その測定結果を基に下りリンクのCQIが算出される。当該CQIは、スケジューラ30,HS-DPCCH符号化処理部31,HS-DPCCH変調処理部32及び送信機40を経由することにより、符号化処理、変調処理及び無線送信処理を施されて、HS-DPCCHによりBTS1へ通知される。
【0057】
また、受信機21で分離されたHS-SCCHは、HS-SCCH復調処理部22にて、前記受信パイロット信号に基づいて得られるチャネル推定値を用いてHS-SCCHのチャネル補償された上で復調され、HS-SCCH復号処理部23にて復号される。その復号結果は、HS-PDSCHの復号に必要な情報(符号化方式、符号化率など)を含むためHS-PDSCH復号処理部26に入力される。
【0058】
また、受信機21で分離されたHS-PDSCHは、HS-PDSCH復調処理部24にて、チャネル推定値を用いてチャネル補償された上で復調され、さらに、HS-PDSCH復号処理部26にて、HS-SCCH復号処理部23からの前記復号結果を用いて復号され、HS-PDSCH CRC演算部27にて、CRC演算されてエラーチェックされる。
その結果、エラーの無い(CRC演算結果がOKである)復号データは、下りのレイヤ2の受信データとして下りL2データ処理部28に入力されて、所要のL2のデータ処理を施される。また、上記CRC演算結果は、スケジューラ30と上りE-DCH受信環境推定部34とにそれぞれ入力される。
【0059】
スケジューラ30では、CRC演算結果がOKであればACK情報を、NGであればNACK情報をそれぞれ前記CQI報告値とともにスケジューリングする。スケジューリング後の情報は、HS-DPCCH符号化処理部31,HS-DPCCH変調処理部32及び送信機40を経由することにより、符号化処理、変調処理及び無線送信処理を施されて、HS-DPCCHによりBTS1へ通知される。
【0060】
上りE-DCH受信環境推定部34では、前記CQIを基に前記表1により前述したごとく上りE-DCHの受信環境(送信スループット)を推定する。その推定結果は、送信要求判断部36に提供される。
一方、上りリンクについては、上りL2データ処理部33にて、BTS1へ送信すべき上り送信データが存在すると、送信要求判断部36にて、少なくとも前記推定結果に基づいて、上り送信要求(SI)を送信するか待機するかが判断(決定)され、送信すると決定されれば、上りスケジューリング要求処理部37にて、上りSIが生成され、E-DCH符号化処理部38,E-DCH変調処理部39及び送信機40を経由することにより、符号化処理、変調処理及び無線送信処理を施され、タイミング管理部29からの送信タイミング信号に従って、E-DCHによりBTS1へ送信される。これに対して、SIの送信を待機すると決定された場合には、上りデータは上りデータ格納部35に保持される。
【0061】
(B2)上り送信要求判定動作説明
次に、上記送信要求判断部36による判断手法(上り送信要求の送信/待機の判定動作)について、図3に示すフローチャートを併用して説明する。
図3に示すように、送信要求判断部36は、上りL2データ処理部33から送信すべき上り送信データの有無を監視しており(ステップS1のNoルート)、上り送信データが存在すれば(ステップS1でYesであれば)、その上り送信データのデータ量を測定し(ステップS2)、当該上り送信データが送信待機してもよいデータか否かを判定する(ステップS3)。
【0062】
即ち、送信要求判断部36は、ユーザが直ぐに送信を行ないたいデータ(データ量の多い電子メールなど)なのか送信を待機してもよいかのユーザによる設定情報に従って送信待機の可否を判断する。ここで、前記設定情報は、ユーザインタフェース機能部363により、例えば、UE2のディスプレイ(表示部:図示省略)に設定情報の入力を促す画面表示(「直ぐに送信しますか?(Yes/No)」等)を行なうことで、入力受付、設定が可能である。
【0063】
上記判断の結果、送信待機不可のデータ(直ぐに送信すべきデータ)であると判断されると(ステップS3でNoの場合)、送信要求判断部36は、上りスケジューリング要求処理部37に、上りSIの送信指示を行ない、これにより、上りSIが上りスケジューリング要求処理部37,E-DCH符号化処理部38,E-DCH変調処理部39及び送信機40経由で、BTS1へ送信される(ステップS4)。
【0064】
一方、前記上り送信データが送信待機可能なデータであると判断された場合(ステップS3でYesの場合)、送信要求判断部36は、当該上り送信データを上りデータ格納部35に保持した上で(ステップS5)、前記測定したデータ量を基に上り送信に必要な送信スループットを算出し(ステップS6)、その送信スループットに対応するCQIをCQI閾値(前記表2における判定基準の境界値となるCQI:上り品質閾値)として前記表1から求める(ステップS7)。
【0065】
そして、送信要求判断部36は、さらに、バッテリーモニタ機能部364により、現在のバッテリー残量が所定の閾値(バッテリー閾値)以下で残り少ないか否かを判定し(ステップS8)、残り少なければ(ステップS8でYesであれば)、前記CQI閾値を所定数(1ずつでもよいし2以上のステップ幅でもよい)だけ増加させる(ステップS9)。これは、バッテリー残量が少ない場合に、前記表2において、上り送信要求を行なわない(待機する)と判断するCQIの範囲を増やして、バッテリー残量が少ないほど、上り送信要求が送信されにくくなる(つまり、上り送信要求の送信機会が減る)方向に制御することを意味している。なお、バッテリー残量が十分ある場合は、当該CQI閾値の増加処理は実施しない(ステップS8のNoルート)。
【0066】
つまり、送信要求判断部36(バッテリーモニタ機能部364)は、バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部と、このバッテリー残量監視部による監視結果が所定のバッテリー閾値以上か否かを判定するバッテリー残量判定部としての機能を兼ね備え、当該バッテリー残量判定部にて前記監視結果が前記バッテリー閾値以上であると判定された場合に、上り送信要求を送信しうるように送信手段37〜40を制御するのである。
【0067】
次に、送信要求判断部36は、タイマ機能部362により、上りデータ格納部35に格納した上り送信データの格納時間が送信制限時間を経過している否かを判定する(ステップS10)。なお、前記送信制限時間は、例えば、ユーザインタフェース機能部363により、前記ステップS3で述べた設定情報の入力を促す画面表示に伴って待機可能時間の入力画面を表示すること等により入力受付、設定が可能である。もっとも、他のタイミングで設定してもよいし、固定にしておいてもよい。
【0068】
そして、前記格納時間が送信制限時間を経過していれば(ステップS10でYesであれば)、送信要求判断部36は、上りスケジューリング要求処理部37に、上りSIの送信指示を行ない、これにより、上りSIが上りスケジューリング要求処理部37,E-DCH符号化処理部38,E-DCH変調処理部39及び送信機40経由で、BTS1へ送信される(ステップS11)。
【0069】
つまり、送信要求判断部36(タイマ機能部362)は、上り送信要求を待機させた場合の待機時間を監視する待機時間監視部と、この待機時間監視部により監視された待機時間が所定時間(送信制限時間)を経過したか否かを判定する待機時間判定部としての機能を兼ね備え、当該待機時間判定部にて前記待機時間が前記送信制限時間を経過したと判定されると上り送信要求を送信させるように送信手段37〜40を制御するのである。
【0070】
一方、前記格納時間が送信制限時間を経過していなければ(ステップS10でNoであれば)、送信要求判断部36は、さらに、CQI報告値算出部25で算出されたCQI報告値と前記CQI閾値とを比較して、算出されたCQI報告値がCQI閾値以上か否かを判定する(ステップS12)。なお、ここでの比較対象とするCQI報告値は、平均化処理機能部341により平均化した値を用いてもよい(ステップS12a,S12b)。
【0071】
その結果、算出されたCQI報告値がCQI閾値未満であれば、送信要求判断部36は、送信制限時間の経過の有無を引き続き監視し(ステップS12のNoルート)、CQI閾値以上であれば(ステップS12でYesであれば)、さらに、上り送信電力監視機能部361により、現在の上りDPDCHの送信電力値が所定の送信電力閾値(例えば、最大電力値)になっているか否かを判定する(ステップS13)。
【0072】
その結果、現在の上りDPDCHの送信電力値が前記送信電力閾値(最大電力値)になっていれば(ステップS13でYesであれば)、送信要求判断部36は、送信制限時間の経過の有無を引き続き監視し、そうでなければ(ステップS13でNoであれば)、上りスケジューリング要求処理部37に、上りSIの送信指示を行ない、これにより、上りSIが上りスケジューリング要求処理部37,E-DCH符号化処理部38,E-DCH変調処理部39及び送信機40経由で、BTS1へ送信される(ステップS14)。
【0073】
つまり、上り送信電力監視機能部361は、現在の上り送信電力値を監視する送信電力値監視部と、この送信電力値監視部による監視結果が所定の送信電力閾値未満か否かを判定する送信電力判定部としての機能を兼ね備え、当該送信電力判定部にて前記監視結果が前記送信電力値未満である場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記送信電力閾値以上の場合に前記送信要求の送信を待機させるように送信手段37〜40を制御するのである。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、HSUPA通信において、UE2に上り送信データが存在する場合、当該UE2が上りリンク(E-DCH)送信時のBTS1の受信環境を推定し、BTS1の受信環境が悪いと判断した場合は、上り送信データをメモリ35に格納して上りSIの送信を待機し、BTS1の受信環境が良いと推定される場合に上りSIを送信するため、UE2の送信電力を低く抑えることができ、かつ、期待するスループットを得ることができる。また、他の無線通信機器への干渉を低くすることも可能である。
【0075】
さらに、上述した例では、上り送信電力監視機能部361を具備することで、上りリンク(DPDCH)の送信電力を監視し、その監視結果に応じて上り送信要求の可否を決定することができるので、UE2の消費電力を低減することが可能である。
また、タイマ機能部362を具備することで、メモリ35に格納された上り送信データの格納時間を監視し、格納時間が所定時間(送信制限時間)を経過した場合に、上り送信要求を行なうと決定することができるので、いつまでも上り送信要求が送信されずに通信が開始されないといった事態を回避することができる。
【0076】
さらに、平均化処理機能部341を具備することで、前記CQIを時間的に平均化処理して前記判定基準の基礎とすることができるので、時間的に安定したCQI値を基礎として上り送信要求の可否を決定することができ、UE2は、安定した通信環境下において上り通信を開始、実現することが可能となる。
また、ユーザインタフェース機能部363を具備することで、UE2のユーザからの上り送信要求に関する判定条件(例えば、上り送信要求の待機可否や前記送信制限時間など)を受け付け、前記判定基準の要素として加えることができるので、ユーザの都合(意思)によって適宜に上り送信要求の送信タイミングを変更することが可能となり、ユーザの利便性を向上することが可能となる。
【0077】
さらに、バッテリーモニタ機能部364を具備することで、UE2のバッテリー残量を監視して、例えば、バッテリー残量が少ないほど上り送信要求が送信されにくくすることができるので、UE2の消費電力をさらに低減することが可能である。
なお、上述した例では、図3において、送信待機が可能なデータか否かの判定(ステップS3)、バッテリー残量が残り少ないか否かの判定(ステップS8)、上り送信データのメモリ35への格納時間が送信制限時間を経過したか否かの判定(ステップS10)、および、上りDPDCHの送信電力値の閾値判定(ステップS13)をすべて行なっているが、いずれか1又は複数の判定を省略してもよい。
【0078】
〔C〕付記
(付記1)
無線基地局と、当該無線基地局と無線による通信を行なう無線端末とをそなえた無線通信システムにおいて、
該無線端末は、
該無線基地局から受信した下り信号に基づいて該無線基地局での上り信号の受信品質を推定する上り受信品質推定ステップと、
前記上り受信品質推定ステップによる推定結果に基づいて、上り信号の送信許可を得るための送信要求の該無線基地局への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御ステップとを有することを特徴とする、無線通信システムにおける上り通信方法。
【0079】
(付記2)
前記上り送信タイミング制御ステップにおいて、
前記推定結果が所定の上り品質閾値以上の場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記上り品質閾値未満の場合に前記送信要求の送信を待機させることを特徴とする、付記1記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
【0080】
(付記3)
前記上り送信タイミング制御ステップにおいて、
現在の上り送信電力値を監視し、その監視結果が所定の送信電力閾値未満の場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記送信電力閾値未満の場合に前記送信要求の送信を待機させることを特徴とする、付記1又は2に記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
【0081】
(付記4)
前記上り送信タイミング制御ステップにおいて、
前記送信要求を待機させた場合の待機時間を監視し、当該待機時間が所定時間を経過すると前記送信要求を送信させることを特徴とする、付記2又は3に記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
【0082】
(付記5)
前記上り送信タイミング制御ステップにおいて、
バッテリー残量を監視し、その監視結果が所定のバッテリー閾値以上の場合に、前記送信要求を送信させることを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
【0083】
(付記6)
前記上り送信タイミング制御ステップにおいて、
バッテリー残量を監視し、前記バッテリー残量が少ないほど、前記送信要求が送信されにくくなる方向に前記推定結果を制御することを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
【0084】
(付記7)
前記上り送信タイミング制御ステップにおいて、
ユーザによる前記送信タイミングに関する入力情報に基づいて前記送信タイミングを制御することを特徴とする、付記1記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
(付記8)
前記上り受信品質推定ステップにおいて、
前記受信品質の推定結果を平均化することを特徴とする、付記1〜7のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける上り通信方法。
【0085】
(付記9)
無線基地局と、当該無線基地局と無線による通信を行なう無線端末とをそなえた無線通信システムにおける前記無線端末であって、
該無線基地局への上り信号の送信許可を得るための送信要求を該無線基地局へ送信しうる送信手段と、
該無線基地局から受信した下り信号に基づいて該無線基地局での上り信号の受信品質を推定する上り受信品質推定手段と、
前記上り受信品質推定手段による推定結果に基づいて、該送信手段を制御して前記送信要求の該無線基地局への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御手段とをそなえたことを特徴とする、無線通信システムにおける無線端末。
【0086】
(付記10)
該上り送信タイミング制御手段が、
前記推定結果が所定の上り品質閾値以上の場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記上り品質閾値未満の場合に前記送信要求の送信を待機させるように該送信手段を制御することを特徴とする、付記9記載の無線通信システムにおける無線端末。
【0087】
(付記11)
該上り送信タイミング制御手段が、
現在の上り送信電力値を監視する送信電力値監視部と、
該送信電力値監視部による監視結果が所定の送信電力閾値未満か否かを判定する送信電力判定部とをそなえ、
該送信電力判定部にて前記監視結果が前記送信電力値未満である場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記送信電力閾値以上の場合に前記送信要求の送信を待機させるように該送信手段を制御することを特徴とする、付記9又は10に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【0088】
(付記12)
該上り送信タイミング制御手段が、
前記送信要求を待機させる場合の前記上り信号を保持する信号保持部をそなえたことを特徴とする、付記10又は11に記載の無線通信システムにおける無線端末。
(付記13)
該上り送信タイミング制御手段が、
前記送信要求を待機させた場合の待機時間を監視する待機時間監視部と、
該待機時間監視部により監視された待機時間が所定時間を経過したか否かを判定する待機時間判定部とをそなえ、
該待機時間判定部にて前記待機時間が前記所定時間を経過したと判定されると前記送信要求を送信させるように該送信手段を制御することを特徴とする、付記10〜12のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【0089】
(付記14)
該上り送信タイミング制御手段が、
バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部と、
該バッテリー監視部による監視結果が所定のバッテリー閾値以上か否かを判定するバッテリー残量判定部とをそなえ、
該バッテリー残量判定部にて前記監視結果が前記バッテリー閾値以上であると判定された場合に、前記送信要求を送信させるように該送信手段を制御することを特徴とする、付記9〜13のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【0090】
(付記15)
該上り送信タイミング制御手段が、
バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部をそなえ、
前記バッテリー残量が少ないほど、前記送信要求が送信されにくくなる方向に前記推定結果を制御するように構成されたことを特徴とする、付記9〜13のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【0091】
(付記16)
該上り送信タイミング制御手段が、
ユーザによる前記送信タイミングに関する入力情報を受け付ける入力部をそなえ、
該入力部により入力された前記入力情報に基づいて前記送信タイミングを制御することを特徴とする、付記9記載の無線通信システムにおける無線端末。
【0092】
(付記17)
該上り受信品質推定手段が、
前記受信品質の推定結果を平均化する平均化処理部をそなえたことを特徴とする、付記9〜16のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上詳述したように、本発明によれば、無線端末は、基地局での受信環境が悪いと推定される場合には、上り信号の送信要求の送信を待機し、基地局での受信環境が良いと推定される場合に送信要求を送信するように前記送信要求の送信タイミングを制御するので、無線端末の送信電力を低く抑えることができ、かつ、期待するスループットを得ることができる。また、他の無線通信機器への干渉を低くすることも可能である。したがって、無線通信技術分野において極めて有用と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動通信システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す無線端末(UE)の要部構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すUEの上り通信時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】W-CDMAの通信を示す概念図である。
【図5】HSDPAの通信を示す概念図である。
【図6】HSUPAの通信を示す概念図である。
【図7】HSUPA通信におけるSI(スケジューリング要求)の送信機能を具備するUEの要部構成例を示すブロック図である。
【図8】UEの環境による送信電力特性の概念図である。
【符号の説明】
【0095】
1 無線基地局(BTS:Base Transceiver Station)
1a 無線エリア(セル)
2 無線(ユーザ)端末〔UE:User Equipment(MS:Mobile Station)〕
21 受信機
22 HS-SCCH復調処理部
23 HS-SCCH復号処理部
24 HS-PDSCH復調処理部
25 CQI報告値算出部
26 HS-PDSCH復号処理部
27 HS-PDSCH CRC演算部
28 下りL2(レイヤ2)データ処理部
29 下り受信タイミング監視/上り送信タイミング管理部
30 CQI/ACK/NACKスケジューリング処理部
31 HS-DPCCH符号化処理部
32 HS-DPCCH変調処理部
33 上りL2データ処理部
34 上りE-DCH受信環境推定部
341 平均化処理機能部
342 CQI推定部
35 メモリ(上りデータ格納部)
36 上りL2データ送信要求判断部
361 上り送信電力監視機能部
362 タイマ機能部
363 ユーザインタフェース機能部(入力部)
364 バッテリーモニタ機能部
37 上りスケジューリング要求処理部
38 E-DCH符号化処理部
39 E-DCH変調処理部
40 送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局と、当該無線基地局と無線による通信を行なう無線端末とをそなえた無線通信システムにおいて、
該無線端末は、
該無線基地局から受信した下り信号に基づいて該無線基地局での上り信号の受信品質を推定する上り受信品質推定ステップと、
前記上り受信品質推定ステップによる推定結果に基づいて、上り信号の送信許可を得るための送信要求の該無線基地局への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御ステップとを有することを特徴とする、無線通信システムにおける上り通信方法。
【請求項2】
無線基地局と、当該無線基地局と無線による通信を行なう無線端末とをそなえた無線通信システムにおける前記無線端末であって、
該無線基地局への上り信号の送信許可を得るための送信要求を該無線基地局へ送信しうる送信手段と、
該無線基地局から受信した下り信号に基づいて該無線基地局での上り信号の受信品質を推定する上り受信品質推定手段と、
前記上り受信品質推定手段による推定結果に基づいて、該送信手段を制御して前記送信要求の該無線基地局への送信タイミングを制御する上り送信タイミング制御手段とをそなえたことを特徴とする、無線通信システムにおける無線端末。
【請求項3】
該上り送信タイミング制御手段が、
前記推定結果が所定の上り品質閾値以上の場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記上り品質閾値未満の場合に前記送信要求の送信を待機させるように該送信手段を制御することを特徴とする、請求項2記載の無線通信システムにおける無線端末。
【請求項4】
該上り送信タイミング制御手段が、
現在の上り送信電力値を監視する送信電力値監視部と、
該送信電力値監視部による監視結果が所定の送信電力閾値未満か否かを判定する送信電力判定部とをそなえ、
該送信電力判定部にて前記監視結果が前記送信電力値未満である場合に前記送信要求を送信し、前記推定結果が前記送信電力閾値以上の場合に前記送信要求の送信を待機させるように該送信手段を制御することを特徴とする、請求項2又は3に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【請求項5】
該上り送信タイミング制御手段が、
前記送信要求を待機させた場合の待機時間を監視する待機時間監視部と、
該待機時間監視部により監視された待機時間が所定時間を経過したか否かを判定する待機時間判定部とをそなえ、
該待機時間判定部にて前記待機時間が前記所定時間を経過したと判定されると前記送信要求を送信させるように該送信手段を制御することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【請求項6】
該上り送信タイミング制御手段が、
バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部と、
該バッテリー残量監視部による監視結果が所定のバッテリー閾値以上か否かを判定するバッテリー残量判定部とをそなえ、
該バッテリー残量判定部にて前記監視結果が前記バッテリー閾値以上であると判定された場合に、前記送信要求を送信させるように該送信手段を制御することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【請求項7】
該上り送信タイミング制御手段が、
バッテリー残量を監視するバッテリー残量監視部をそなえ、
前記バッテリー残量が少ないほど、前記送信要求が送信されにくくなる方向に前記推定結果を制御するように構成されたことを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の無線通信システムにおける無線端末。
【請求項8】
該上り送信タイミング制御手段が、
ユーザによる前記送信タイミングに関する入力情報を受け付ける入力部をそなえ、
該入力部により入力された前記入力情報に基づいて前記送信タイミングを制御することを特徴とする、請求項2記載の無線通信システムにおける無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−72194(P2008−72194A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246743(P2006−246743)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】