説明

無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式

【課題】音声信号に周波数分割多重する制御監視信号が多くても、周波数分割多重信号のレベルの増大を回避することができるようにする。
【解決手段】通話卓もしくは基地局に設けられている送信系では、複数の制御監視信号が異なる周波数f1,f2,f3,f4で発生され、夫々ゲート回路41,42,43,44により、タイミングが異なる期間毎に繰り返し抽出される。これらゲート回路41,42,43,44される制御監視信号の間欠信号CW1’,CW2’,CW3’,CW4’は夫々ゲート回路51,52,53,54に供給され、送信が必要な制御監視信号がかかるケート回路を通過して加算器6に供給され、加算される。従って、加算器6からの出力信号は送信が必要な周波数が異なる制御監視信号が時分割多重された信号となる。かかる時分割多重信号は加算器9に供給され、音声信号Aに周波数分割多重されて、送信機10から送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムなどに用いられる無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式に係り、特に、オペレータが使用する通話卓からの制御信号を、この通話卓から離れた場所にある回線接続装置から中継器を介して基地局に伝送し、また、基地局からの監視信号を中継器,回線接続装置を介して通話卓に伝送する無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯無線機や車載無線機などの移動体による移動体通信システムなどの無線通信システムでは、基地局を介して移動体間の通信が行なわれる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7はかかる無線通信システムの一従来例を示すシステム構成図であって、1001,1002,……,100nは基地局、1011,1012,……,101nは中継器、102は中継接続装置、1031,1032,……,103nは通話卓である。
【0004】
同図において、各基地局1001,1002,……,100nが異なるエリア毎に設けられており、夫々の基地局1001,1002,……,100nは、中継器1011,22,……,2nを介して、回線接続装置102に接続されている。また、この回線接続装置102には、基地局1001,1002,……,100n毎の通話卓1031,1032,……,103nが接続されている。
【0005】
なお、以下では、基地局1001,1002,……,100nを総称するときには、基地局100i(但し、i=1,2,……,n)という、基地局100iに該当する中継器,通話卓を夫々中継器101i,通話卓103iという。
【0006】
同じエリア内の移動体間の無線通信(通話)の場合には、図示しない移動体からの音声信号(即ち、通話信号)は基地局100iを介して他の図示しない移動体に送信され、あるいは、異なるエリア内の移動体間の無線通信の場合には、回線接続装置102が2つの夫々のエリアの基地局100i,100j(但し、j≠iであって、j=1,2,……,n)間を接続し、一方の移動体からの音声信号を基地局100iで受信し、この基地局100i中継器1i,回線接続装置102,中継器101jを介して基地局100jに供給し、この基地局100jから他方の移動体に送信する。
【0007】
また、かかる無線通信システムにおいては、移動体と通話卓103iとの間でも通話が行なわれる。このときには、移動体からの問合せなどのための音声信号がそのエリアの基地局100iで受信され、この基地局100iから中継器101i,回線接続装置102を介して該当する通話卓103iに供給され、通話卓103iからの問合せに対する応答などのための音声信号が回線接続装置102及び中継器101iを介して基地局100iに供給され、問合せなどがあった移動局に送信する。
【0008】
通話卓103iは、また、回線接続装置102及び該当する中継器101iを介して該当する基地局100iに制御信号を供給することにより、この基地局100iを制御し、基地局100iに異常事態などが発生したときなどでは、基地局100iがかかる事態をかかる該当する通話卓103iに通知するために、この基地局100iから中継器101i及び回線接続装置102を介してこの通話卓103iに監視信号を供給するこれにより、通話卓103iは該当する基地局100iを監視している。
【0009】
ところで、かかる制御信号や監視信号(これらをまとめて、以下では、制御監視信号という)を供給する通話卓103i,基地局100i間での通信時、移動局と通話卓103iとの間の通信が行なわれるときがある。このような場合、通話卓103iと基地局100iとの間で音声信号と制御監視信号とが同時に伝送されることになるが、その伝送方式として、制御監視信号を直流信号とし、音声信号にこの直流信号を重畳する伝送方式や、音声信号と制御監視信号を周波数分割多重して伝送する周波数分割多重伝送方式、音声信号と制御監視信号とを時分割多重して伝送する時分割多重伝送方式とがある。
【特許文献1】特開平10−94029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、市内や市街地における伝送線路としては、2線(2W)もしくは4線(4W)が一般的であるが、近年では、市内や市街地における伝送路として、直流を重畳できないメタル回線や光ファイバなどの使用が増えてきており、直流を重畳して伝送する伝送方式は使用できなくなってきている。また、音声信号と制御監視信号とを時分割多重して伝送する時分割多重伝送方式では、制御監視信号が伝送する期間では、音声信号が欠落されることになり、通話卓103iによる基地局100iの制御項目が多い場合には、これにさらに音声信号の欠落期間が多くなって、音声信号の品質を劣化させることになる。かかる問題は、音声信号と制御監視信号を周波数分割多重して伝送する周波数分割多重伝送方式によって解消できる。
【0011】
ここで、図8により、通話卓103i,基地局100i間で行なわれる周波数分割多重伝送方式の一例について説明する。
【0012】
かかる周波数分割多重伝送方式において、例えば、2,800Hzを境界周波数FBとして、この境界周波数FBよりも低域側の周波数帯を音声信号の伝送帯域とし、境界周波数FBよりも高域側の周波数帯を制御監視信号の伝送帯域とすると、図8(a),(イ)に示すように、音声信号Aの周波数帯域(音声帯域)が300Hz〜3,400Hzである場合、この音声信号Aのこの境界周波数よFBりも高域成分をLPF(ローパスフィルタ)でカットする。そして、この高域カットされた音声信号Aに、この境界周波数FBよりも高域側の信号として、図8(a),(ロ)に示すように、制御監視信号を周波数分割多重する。ここでは、制御監視信号としては、制御・監視の種類に応じて周波数を異ならせており、図示する例では、1つの制御監視信号CW1として、周波数が2,900Hzの信号とし、他の1つの制御監視信号CW2として、周波数が3,000Hzの信号とし、さらに他の1つの制御監視信号CW3として、周波数が3,100Hzの信号とし、さらに他の1つの制御監視信号CW4として、周波数が3,200Hzの信号とする4種類の制御監視信号CWとしている。
【0013】
かかる周波数分割多重信号(図8(b),(イ))は、図7における通話卓103iから基地局100iに、あるいは基地局100iから通話卓103iに伝送され、この基地局100i、あるいは、通話卓103iにおいて、LPFなどによって音声信号Aが抽出されるとともに、図8(b),(ロ)に示すように、受信した周波数分割多重信号(図8(b),(イ))からHPF(ハイパスフィルタ)によって音声信号Aを除去し、夫々の通過帯域を持つBPF(バンドパスフィルタ)により、夫々の制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4(以下では、これらを総称して、制御監視信号CWという)が分離抽出される。
【0014】
このようにして、通話卓103iと基地局100iとの間では、制御監視信号を音声信号Aに周波数分割多重して伝送することができるのである。
【0015】
ところで、このように、音声信号Aに制御監視信号CWを周波数分割多重すると、周波数分割多重信号のレベル(振幅)が増大化する。そして、通話卓103iによる基地局100iの制御の種類は複数種あり、また、基地局100iでの通話卓103iによる監視の対象も複数種あるものであって、通話卓103iから基地局100iに送る制御信号や基地局100iから通話卓103iに送られる監視信号は複数種ある。しかも、複数のかかる制御監視信号を同時に通話卓103iから基地局100iに、あるいは基地局100iから通話卓103iに伝送する場合があり、同時に伝送する制御監視信号が多くなると、周波数分割多重信号のレベルが異常に増大化し、これの受信側では、過大入力などの状態となって、例えば、増幅器などでその飽和レベル以上となり、誤動作が生ずるという問題がある。この場合、これを防止するために、増幅器の飽和レベルを充分高くすればよいが、このためには、高価で大型の増幅器が必要となる。
【0016】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、音声信号に周波数分割多重する制御監視信号が多くても、周波数分割多重信号のレベルの増大を回避することができるようにした無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、移動体との無線通信を行なう基地局と、該基地局の制御や監視を行なうとともに、該基地局を介して移動体との間で音声信号の通信を行なう通話卓とを備え、該基地局と該通話卓との間で該基地局の制御や監視のための複数の制御監視信号の通信を行なう無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式であって、
複数の制御監視信号を時分割多重し、かつ該音声信号に周波数分割多重して、該基地局と該通話卓との間で通信を行なう
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、複数の制御監視信号は、互いに周波数を異ならせて、時分割多重され、さらに、音声信号に周波数分割多重で送信されるものであるから、同時に送信する制御監視信号が複数であっても、夫々のタイミングでは、常に1つの制御監視信号が音声信号に周波数分割多重されるものであり、音声信号に制御監視信号が周波数分割多重された制御監視多重信号のレベルが過大になることがなく、多数の制御監視信号を取り扱うことができるし、従来の周波数分割多重方式の場合の送信系の構成に比べ、時分割多重のための簡単な構成の回路を付加するだけのものであり、回路構成も複雑化することなく、コスト的にも、安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図1は本発明による無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式の一実施形態を示すブロック構成図であって、同図(a)は図7での通話卓103iや基地局100iの送信系を、同図(b)は図7で基地局100iや通話卓103iでの受信系を夫々示し、1はクロック発生器、2はゲート信号生成器、31,32,33,34は発振器、41,42,43,44はゲート回路、51,52,53,54は送出許可ゲート回路、6は加算器、7は変調器、8はLPF、9は加算器、10は送信機、11は受信機、12はHPF、13はLPF、141,142,143,144はBPF、15は復調器である。
【0021】
なお、ここでは、送受信される制御監視信号を4種類として説明するが、これに限らず、任意数の種類の制御監視信号に対しても、適用可能である。
【0022】
まず、図2に示す図1(a)における各部の信号を示す波形図を用いて、図1(a)に示す送信系について説明する。
【0023】
図1での通話卓103iや基地局100iの送信系では、図1(a)に示すように、発振器31,32,33,34から夫々周波数f1,f2,f3,f4の連続波が発生され、夫々ゲート回路41,42,43,44に供給される。ここでは、図2(b)に周波数f1の連続波が、同図(c)に周波数f2の連続波が夫々示されている。
【0024】
一方、クロック発生器1からは図2(a)に示す一定の周期TCKのクロックCKが発生し、ゲート信号生成器2に供給される。ここで、図2(a)では、クロックCKの順次の周期TCKが制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4に順に繰り返し割り当てられており、t(1)で示す1周期TCKの期間(期間t(1)という。他の期間についても同様)を制御監視信号CW1への割り当て期間とし、期間t(2)を制御監視信号CW2への割り当て期間とし、期間t(3)を制御監視信号CW3への割り当て期間とし、期間t(4)を制御監視信号CW4への割り当て期間とする。
【0025】
ゲート信号生成器2では、供給されたクロックCKから、割り当て期間毎に該当する制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4毎のゲート信号G1,G2,G3,G4を順次、かつ繰り返し生成する。生成されたゲート信号G1はゲート回路41に、ゲート信号G2はゲート回路42に、ゲート信号G3はゲート回路43に、ゲート信号G4はゲート回路44に夫々供給される。ゲート回路41に供給されるゲート信号G1を図2(b)に、また、ゲート回路42に供給されるゲート信号G2を図2(c)に夫々、図2(a)に示すクロックCKのタイミングに合わせて示している。
【0026】
ゲート回路41では、ゲート信号生成器2からゲート信号G1が供給される毎に、このゲート信号G1の信号期間(即ち、クロックCKの期間t(1))に、発振器31からの周波数f1の連続波が抽出され、4TCKの周期毎に信号期間TCKずつ間欠的に周波数f1の間欠信号CW1’が得られて送出許可ゲート回路51に供給される。ゲート回路42では、ゲート信号生成器2からゲート信号G1に続くゲート信号G2が供給される毎に、このゲート信号G2の信号期間(即ち、クロックCKの期間t(2))に、発振器32からの周波数f2の連続波が抽出され、4TCKの周期毎に信号期間TCKずつ間欠信号CW1’に続くタイミングで間欠的に周波数f2の間欠信号CW2’が得られて送出許可ゲート回路52に供給され、ゲート回路43では、ゲート信号生成器2からゲート信号G2に続くゲート信号G3が供給される毎に、ゲート信号G3の信号期間(即ち、クロックCKの期間t(3))に、発振器33からの周波数f3の連続波が抽出され、4TCKの周期毎に信号期間TCKずつ間欠信号CW2’に続くタイミングで間欠的に周波数f3の間欠信号CW3’が得られて送出許可ゲート回路53に供給され、ゲート回路44では、ゲート信号生成器2からゲート信号G3に続くゲート信号G4が供給される毎に、このゲート信号G4の信号期間(即ち、クロックCKの期間t(4))に、発振器34からの周波数f4の連続波が抽出され、4TCKの周期毎に信号期間TCKずつ間欠信号CW3’に続くタイミングで間欠的に周波数f4の間欠信号CW4’が得られて送出許可ゲート回路54に供給される。このようにして、ゲート回路31,32,33,34から順に間欠信号CW1’,CW2’,CW3’,CW4’が出力され、夫々送出許可ゲート回路51,52,53,54に供給される。
【0027】
ここで、ゲート回路41から出力される間欠信号CW1’を図2(b)に、ゲート回路42から出力される間欠信号CW2’を図2(c)に夫々示している。
【0028】
送出許可ゲート回路51,52,……,54は、通常、閉じており、このときには、これら送出許可ゲート回路51,52,……,54からは、制御監視信号CW1,CW2,……,CW4は出力されないが、送出許可信号SP1,SP2,SP3,SP4が供給されると、これら送出許可ゲート回路51,52,53,54が開き、供給される間欠信号CW1’,CW2’,CW3’,CW4’が、制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4として、出力される。
【0029】
ここで、送出許可ゲート回路51に供給される送出許可信号SP1を図2(b)に、送出許可ゲート回路52に供給される送出許可信号SP2を図2(c)に夫々示している。
【0030】
かかる送出許可信号SP1,SP2,SP3,SP4は夫々、制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4を送信するときに供給されるものであって、制御監視信号CW1を送信するときには、その送信期間、送出許可ゲート回路51に送出許可信号SP1が供給され、制御監視信号CW2を送信するときには、その送信期間、送出許可ゲート回路52に送出許可信号SP2が供給され、制御監視信号CW3を送信するときには、その送信期間、送出許可ゲート回路53に送出許可信号SP3が供給され、制御監視信号CW4を送信するときには、その送信期間、送出許可ゲート回路54に送出許可信号SP4が供給される。
【0031】
ここで、送出許可ゲート回路51から出力される制御監視信号CW1を図2(b)に、送出許可ゲート回路52から出力される制御監視信号CW2を図2(c)に夫々示している。
【0032】
加算器6から出力される信号(以下、多重制御監視信号CWという)は、周波数がf1,f2,f3,f4と異なる制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4が時分割多重されたものであって、加算器9に供給される。この多重制御監視信号CWを図2(d)に示す。
【0033】
一方、この送信系が通信卓103i(図7)の送信系である場合には、入力されて変調器7で変調された音声信号Aが、カットオフ周波数がfCUT(図8)のLPF8に供給されて帯域制限された後、加算器9に供給されて加算器6からの多重制御監視信号CWと加算される。また、この送信系が基地局100i(図7)の送信系である場合には、受信した音声信号Aが、カットオフ周波数がfCUT(図8)のLPF8に供給されて帯域制限された後、加算器9に供給されて加算器6からの多重制御監視信号CWと加算される。加算器9の出力信号は、音声信号Aに多重制御監視信号CWが、この音声信号Aよりも高域側で、周波数分割多重された信号であり、送信機10から送信される。
【0034】
図3は図1(a)に示す送信系から送信される多重制御監視信号CWと音声信号との各期間毎の周波数分割多重信号(以下、制御監視多重信号という)を示す概略スペクトル図である。
【0035】
同図において、ここでは、一例として、図8の従来例と同様、音声信号Aの周波数帯域を300Hz〜2,800Hzとし、各制御監視信号CW1〜CW4の周波数f1〜f4を夫々、
1=2,900Hz f2=3,000Hz
3=3,100Hz f4=3,200Hz
とする。また、図2(a)での各期間t(1)〜t(4)毎の制御監視多重信号を示しているが、ここでは、制御監視信号CW1,CW2が送信され、制御監視信号CW3,CW4は送信されないものとしている。
【0036】
そこで、制御監視信号CW1,CW2が送信されるとき、音声信号Aも送信されるものとすると、その期間t(1)では、この音声信号Aにf1=2,900Hzの制御監視信号CW1が周波数多重されて送信され、次の期間t(2)では、音声信号Aにf2=3,000Hzの制御監視信号CW2が周波数多重されて送信される。次の2つの期間t(3),t(4)では、これらに割り当てられた制御監視信号CW3,CW4は送信されないが、これらも送信されるとすると、期間t(3)にf3=3,100Hzの制御監視信号CW3が、期間t(4)にf4=3,200Hzの制御監視信号CW4が夫々音声信号Aに周波数分割多重されて送信される。
【0037】
このようにして、この実施形態では、制御監視信号は、音声信号が送信されるときには、この音声信号に周波数分割多重で送信されるものであるが、同時に送信する制御監視信号が複数であっても、夫々のタイミングでは、常に1つの制御監視信号が音声信号に周波数分割多重されるものであり、音声信号に制御監視信号が周波数分割多重された制御監視多重信号のレベルが過大になることがない。従って、多数の制御監視信号を取り扱うことができる。また、図8に示す従来の周波数分割多重方式の場合の送信系の構成に比べ、時分割多重のための簡単な構成の回路を付加するだけのものであり、回路構成も複雑化することなく、コスト的にも、安価に構成することができる。
【0038】
次に、図1(b)に示す図7での基地局100iや通話卓103iに設けられる受信系について説明する。
【0039】
図1(a)に示す送信系からの送信信号は受信機11で受信され、HPF12とLPF13とに供給される。この受信信号が音声信号Aあるいは制御監視多重信号であるときには、LPF13によって音声信号Aが抽出され、この受信系が基地局100iに設けられているものであるときには、所定の処理がなされて移動体に送信され、また、この受信系が通話卓103iに設けられているものであるときには、復調器15で復調される。
【0040】
また、受信機11からの受信信号が多重制御監視信号CWであるとき、あるいは制御監視多重信号であるときには、HPF12によって多重制御監視信号CWが抽出されてBPF141〜144に供給され、多重制御監視信号CWでの時分割多重化された制御監視信号がBPF141〜144のうちのいずれか該当するものから抽出されて出力される。
【0041】
ここで、BPF141,142,143,144は夫々、制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4を分離抽出するものであって、BPF141は、通過帯域の中心周波数がf1(上記の例では、2,900Hz)であって、制御監視信号CW1を分離抽出するものであり、BPF142は、通過帯域の中心周波数がf2(上記の例では、3,000Hz)であって、制御監視信号CW2を分離抽出するものであり、BPF143は、通過帯域の中心周波数がf3(上記の例では、3,100Hz)であって、制御監視信号CW3を分離抽出するものであり、BPF144は、通過帯域の中心周波数がf4(上記の例では、3,200Hz)であって、制御監視信号CW4を分離抽出するものである。
【0042】
図4は図1(a)に示す送信系からの送信信号が図3に示す制御監視多重信号であるときの受信系の制御監視信号の分離抽出動作を示す図であり、対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0043】
同図において、受信機11で受信されてHPF12で分離抽出された制御監視多重信号での期間t(1)では、BPF141によってこの制御監視多重信号から制御監視信号CW1が分離抽出され、期間t(2)では、BPF142によってこの制御監視多重信号から制御監視信号CW2が分離抽出される。期間t(3),t(4)では、制御監視信号が受信されないので、BPF143,144から制御監視信号が抽出されないが、期間t(3)に制御監視信号CW3が受信されたときには、BPF143からこの制御監視信号CW3が分離抽出され、期間t(4)に制御監視信号CW4が受信されたときには、BPF144からこの制御監視信号CW4が分離抽出される。
【0044】
BPF141,142,143,144で検出された制御監視信号CW1,CW2,CW3,CW4は図示しない制御監視信号期間検出装置に供給され、夫々の制御監視信号の信号期間が検出される。
【0045】
図5はかかる制御監視信号期間検出装置の一具体例を示すブロック構成図であって、16は信号検出部、17は信号期間検出部、181,182はタイマ、19はアンドゲートである。ここでは、任意の制御監視信号を信号CWiとする。
【0046】
また、図6は図5における各部の信号を示す波形図であって、図5に対応する信号には同一符号をつけている。
【0047】
図5及び図6において、図1(b)のBPF14i(BPF141,142,143,144のいずれか)で検出された制御監視信号CWiは、信号検出部16に供給され、全波整流,平滑,レベル比較などの信号処理により、期間t(i)毎の制御監視信号CWiの信号期間を検出し、この信号期間を“L”(ローレベル)で表わす検出信号SDを出力する。この検出信号SDは信号期間検出部17に供給される。信号期間検出部17は、例えば、セット・リセット型のフリップフロップからなり、検出信号SDの立下りエッジ(検出信号SDの始端)でセットされることにより、Q端子の出力が“L”となり、アンドケート19からのリセットパルスPRによってリセットされて、Q端子の出力が“H”(ハイレベル)となる。
【0048】
そこで、信号検出部16から図2(a)におけるクロックCKの周期TCKの4倍の期間T0毎に検出信号SDが順次出力されると、後述するように、この場合には、アンドゲート19からリセットパルスPRが発生せず、信号期間検出部17は検出信号SDの立下りエッジ毎にセットされて、信号期間検出部17のQ端子の出力は“L”のままに保持される。
【0049】
信号検出部16から出力される検出信号SDは、また、タイマ181,182に供給される。これらタイマ181,182は検出信号SDの上記立下りエッジ毎にリセットされ、そのタイミングから時間計測を行なうが、この時間計測動作はタイマ181とタイマ182とが交互に行なう。即ち、いま、信号検出部16から最初の検出信号SDが出力されると、タイマ181,182のいずれか一方、例えば、タイマ181にこの検出信号SDが供給されて、その立下りエッジにより、このタイマ181がリセットされて時間計測を開始する。このときまでは、タイマ182には、検出信号SDが供給されないようになっているが、タイマ181がリセットされて時間計測を開始すると、信号検出部16から次に出力される検出信号SDがタイマ182に供給可能となり、タイマ181には、この検出信号SDが供給されない状態となる。このようにして、信号検出部16から出力される検出信号SDはタイマ181,182に交互に供給され、これにより、タイマ181,182は交互に時間計測動作を行なう。
【0050】
ここで、制御監視信号CWiの1周期をT0(但し、図2に示す制御監視信号CW1〜CW4の場合、T0=4・TCK)とすると、タイマ181,182は夫々、リセットによる時間計測動作の開始から、
0≦T<T0+TCK
を満足する時間経過すると、タイミングパルスPTを出力する。このタイミングパルスPTは、信号検出部16から次に出力される検出信号SDの信号期間内にある。
【0051】
タイマ181,182から出力されるタイミングパルスPTは、信号検出部16から出力される検出信号SDとともに、アンドゲート19に供給される。このアンドゲート19は、信号検出部16から検出信号SDが出力されたか否かを、従って、制御監視信号CWiが受信されているか否かを検出するためのものであって、タイミングパルスPTがアンドゲート19に供給されたときに信号検出部16から“L”の検出信号SDが供給されるときには、検出信号SDがある、即ち、制御監視信号CWiが受信されているとして、アンドゲート19からこのタイミングパルスPTを出力されないが、タイミングパルスPTがアンドゲート19に供給されたときに信号検出部16から“L”の検出信号SDが供給されないときには、検出信号SDがない、即ち、制御監視信号CWiが受信されなくなったとして、アンドゲート19はこのタイミングパルスPTを、リセットパルスPRとして、出力する。このリセットパルスPRにより、信号期間検出部17がリセットされ、そのQ端子の出力が“H”となる。
【0052】
このようにして、制御監視信号CWiが受信され始めると、信号検出部16から最初に出力される検出信号SDの始端の立下りエッジにより、信号期間検出部17がセットされてそのQ端子の出力が“L”となり、その後、制御監視信号CWiが受信されなくなると、アンドゲート19からのリセットパルスPRにより、信号期間検出部17がリセットされてそのQ端子の出力が“H”となる。これにより、信号期間検出部17のQ端子からは、制御監視信号CWiの受信期間を表わす“L”の制御監視期間信号SCWが得られることになる。
【0053】
なお、図6において、信号検出部16から検出信号SDが2回出力されたときの制御監視期間信号SCWを実線で示し、信号検出部16から検出信号SDが1回出力されたときの制御監視期間信号SCWを破線で示している。
【0054】
このように、この受信系においては、図1(a)に示す送信系からの制御監視信号が時分割多重化された加算制御監視信号やこの加算制御監視信号と音声信号との制御監視多重信号が受信されると、この夫々の制御監視信号を分離抽出することができるものであり、図8に示す従来の周波数分割多重方式での受信系に対し、制御監視信号夫々を分離抽出するためのBPFなどの簡単な回路を追加するだけで済むことになり、回路構成が複雑化することもないし、コスト的にも、安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1(a)】本発明による無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式の一実施形態での送信系を示すブロック構成図である。
【図1(b)】図1(a)に示す送信系に対する受信系を示す図である。
【図2】図1(a)における各部の信号を示す波形図である。
【図3】図1(a)に示す送信系から送信される加算制御監視信号と音声信号との各期間毎の制御監視多重信号を示す概略スペクトル図である。
【図4】図1(a)に示す送信系からの送信信号が図3に示す制御監視多重信号であるときの受信系の制御監視信号の分離抽出動作を示す図である。
【図5】図1(b)に示す受信系での制御監視信号期間検出装置の一具体例を示すブロック構成図である。
【図6】図5における各部の信号を示す波形図である。
【図7】無線通信システムの一従来例を示すシステム構成図である。
【図8】図7における通話卓,基地局間で行なわれる周波数分割多重伝送方式の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 クロック発生器
2 ゲート信号生成器
1,32,33,34 発振器
1,42,43,44 ゲート回路
1,52,53,54 送出許可ゲート回路
6 加算器
7 変調器
8 LPF
9 加算器
10 送信機
11 受信機
12 HPF
13 LPF
141,142,143,144 BPF
15 復調器
16 信号検出部
17 信号期間検出部
181,182 タイマ
19 アンドゲート
1001,1002,……,100n 基地局
1011,1012,……,101n 中継器
102 中継接続装置
1031,1032,……,103n 通話卓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体との無線通信を行なう基地局と、該基地局の制御や監視を行なうとともに、該基地局を介して移動体との間で音声信号の通信を行なう通話卓とを備え、該基地局と該通話卓との間で該基地局の制御や監視のための複数の制御監視信号の通信を行なう無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式であって、
複数の制御監視信号を時分割多重し、かつ該音声信号に周波数分割多重して、該基地局と該通話卓との間で通信を行なう
ことを特徴とする無線通信システムにおける制御監視信号の伝送方式。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−81080(P2010−81080A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244660(P2008−244660)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】