説明

無線通信システム及び無線基地局及び無線通信制御方法

【課題】無線移動局と無線基地局とを含む無線通信システム及び無線基地局及び無線通信制御方法に関し、ハンドオーバ処理時のパケットデータの連続性を保証する。
【解決手段】複数の分散配置された無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信システム、無線基地局、無線通信制御方法であって、無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、無線移動局宛てのパケットデータを、移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して論理パスを介して転送する。移動先無線基地局は、転送されたパケットデータに付加したヘッダの転送順序情報により、移動元無線基地局からのパケットデータの転送順序を判定してそのパケットデータを保持し、ハンドオーバ処理完了時に、ヘッダを削除したパケットデータを無線移動局へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分散配置された無線基地局と、移動可能の無線移動局とを含み、無線移動局は、各種のデータをパケット化したパケットデータを無線基地局との間で伝送する無線通信システム及び無線基地局及び無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線基地局を、それぞれのサービスエリアが一部重なるように分散配置し、上位局とネットワークを介して接続し、無線移動局が移動しながら或いは停止した状態で、他の無線移動局或いは固定の電話端末等の端末装置や大量データを取り扱うホスト装置等との間で通信する無線通信システムは、既に各種の形態が提案され、且つ実用化されている。例えば、LTE(Long Term Evolution)に代表される次世代無線通信システムは、各種データをパケット化して高速伝送を可能とするものである。又無線移動局は、移動しながら無線通信を継続する場合に、現在通信中の無線基地局から、移動先となる無線基地局に切替えるハンドオーバ処理が必要となる。このハンドオーバ処理は、例えば、現在通信中の受信レベルや受信誤り率等の受信品質が所定値以下に低下したことを検出した時に開始し、現在通信中の無線基地局から所望の受信品質が得られる移動先の無線基地局に切替えることにより、この移動先の無線基地局との間で、無線移動局は通信を継続することができる。
【0003】
又パケット化したデータを伝送する無線通信システムに於いては、パケット番号等を付加して、パケットの連続性を確認可能とする方式が一般的である。又GPRS(General Packet Radio Service)と、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)とのシステム間のパケット伝送を可能とすると共に、それらのシステム間のハンドオーバ処理を可能とし、且つデータの中にシーケンス番号を埋め込み、パケットの連続性を確認可能とする手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
又単一又は複数のアクセスゲートウェイとネットワークを介して複数の無線基地局が接続される。アクセスゲートウェイ配下の各無線基地局は、相互に論理パスにより接続され、無線移動局の移動によりハンドオーバ処理が必要になった時、アクセスゲートウェイからのデータを、現在通信中の無線基地局から移動先の無線基地局に論理パスを介して、RLC−SDU(Radio Link Control−Service Data Unit)単位に転送し、移動先の無線基地局は、このデータを一時的に保持し、ハンドオーバ処理完了により、保持していたデータを順次無線移動局へ送信するシステムが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2003−523137号公報
【特許文献2】特開2006−203265号公報
【特許文献3】特表2004−517580号公報
【特許文献4】特表2003−523138号公報
【特許文献5】特表2003−530764号公報
【非特許文献1】3GPP TR25.912 v7.0.0(2006−06)(3rd Generation Partnership Project;Techincal Specification Group Radio Access Network;Feasibility study for evolved Universal Terrestrial Radio Access(UTRA) and Universal Terrestrial Radio Access Network(UTRAN) 9.4.2.2 Solution for intra−LTE−Access Mobility Support for UEs in LTE_ACTIVE)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクセスゲートウェイ等の上位装置と、無線移動局等の下位装置との間のパケットデータの連続性については、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤに付与されるデータシーケンス番号を監視することにより、脱落や順序逆転の有無を判定することができる。又TCP(Transmission Control Protocol)レイヤに於ける再送処理等を適用することにより、パケットデータの連続性を保証することができる。
【0006】
しかし、前述の非特許文献1に示されているシステムに於いては、ハンドオーバ処理に於いて、一時的ではあるが、移動元の無線基地局から移動先の無線基地局に論理パスを介してパケットデータを転送して保持させ、ハンドオーバ処理完了により、移動先の無線基地局から無線移動局に、保持していたパケットデータを順次送信することになるが、移動元の無線基地局から移動先の無線基地局へ転送したパケットデータの連続性は保証されていない。即ち、このシステムでは、上位装置と無線移動局との間のパケットデータの連続性を保証するが、無線基地局間に於けるRLC SDU単位で転送されるパケットデータの連続性は保証できない。従って、移動先の無線基地局に於いては、論理パスを介して転送されたパケットデータが、先頭パケットであるか否かを認識できないと共に、途中のパケットの消失についても認識できない問題がある。
【0007】
本発明は、前述の問題点を解決するもので、ハンドオーバ処理時のパケットデータの連続性を保証するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信システムは、複数の分散配置された無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信システムに於いて、前記無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、前記無線移動局宛てのパケットデータを、前記無線移動局の移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して転送する手段を備え、前記移動先無線基地局は、前記ヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定する手段と、ハンドオーバ処理完了時に前記ヘッダを削除した前記パケットデータを前記無線移動局へ送信する手段とを備えている。
【0009】
又前記無線移動局の移動に伴うハンドオーバ処理開始により、前記無線移動局宛てのパケットデータに、前記転送順序情報を含むヘッダを付加して、前記移動元無線基地局と前記移動先無線基地局との間の論理パスを介して転送する手段と、ハンドオーバ処理完了まで前記論理パスを介して転送された前記パケットデータを保持する手段と、該手段により保持したパケットデータを、ハンドオーバ処理完了時に前記ヘッダを削除して前記無線移動局へ送信する手段とを備えている。
【0010】
又前記無線移動局の移動先となる前記移動先無線基地局は、前記移動元無線基地局から転送されるパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により正常性を判定し、正常でない判定結果により、前記移動元無線基地局に再送要求を送出する手段を備えている。
【0011】
本発明の無線基地局は、無線移動局との間で無線によりパケットデータの送受信を行う無線基地局に於いて、前記無線移動局の移動に伴うハンドオーバ処理の開始により、前記無線移動局宛てのパケットデータに転送順序情報を含むヘッダを付加して、前記無線移動局の移動先となる無線基地局へ論理パスを介して転送する手段と、前記ハンドオーバ処理の開始に伴って前記無線移動局の移動元の無線基地局から転送されるパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定する手段と、前記パケットデータをハンドオーバ処理の完了まで保持し、前記ハンドオーバ処理の完了により、前記ヘッダを削除して前記無線移動局へ送信する手段とを備えている。
【0012】
又前記パケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報による転送順序の異常判定により、前記無線移動局の移動元の無線基地局へ前記論理パスを介して再送要求を送出する手段を備えている。
【0013】
本発明の無線通信制御方法は、複数の分散配置された無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信制御方法に於いて、前記無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、前記無線移動局宛てのパケットデータを、前記無線移動局の移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して転送し、前記移動先無線基地局は、前記ヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定し、ハンドオーバ処理完了時に前記ヘッダを削除した前記パケットデータを、前記無線移動局へ送信する過程を含むものである。
【0014】
又前記無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する前記移動元無線基地局は、前記無線移動局宛てのパケットデータを、前記無線移動局の移動先無線基地局へ、転送順序を含むヘッダを付加して論理パスを介して転送する過程と、前記移動先無線基地局は、前記移動元無線基地局から転送されたパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により正常性を判定する過程と、該判定の結果、正常でない場合に、前記移動元無線基地局に再送要求を送出する過程と、ハンドオーバ処理完了により、前記ヘッダを削除した前記パケットデータを前記無線移動局へ送信する過程とを含むものである。
【発明の効果】
【0015】
無線移動局の移動に伴うハンドオーバ処理開始による無線移動局宛てのパケットデータに、移動元無線基地局から移動先無線基地局へ転送順序情報を含むヘッダを付加して転送することにより、無線移動局宛てのパケットデータを、一時的に無線基地局間で転送する過程に於ける連続性を確認することが可能となる利点がある。又転送時にのみ付加するヘッダは、転送順序を示す簡単な構成であり、転送帯域に及ぼす影響及び転送処理に及ぼす影響は無視できる程度のものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の無線通信システムは、複数の分散配置された無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信システムであって、無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、無線移動局宛てのパケットデータを、移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して転送する手段を備え、移動先無線基地局は、パケットデータに付加したヘッダの転送順序情報により、移動元無線基地局からのパケットデータの転送順序の正常性を判定する手段と、ハンドオーバ処理完了時に、ヘッダを削除したパケットデータを無線移動局へ送信する手段とを備えている。
【0017】
本発明の無線基地局は、無線移動局との間で無線によりパケットデータの送受信を行う無線基地局であって、無線移動局の移動に伴うハンドオーバ処理の開始により、無線移動局宛てのパケットデータに転送順序情報を含むヘッダを付加して、無線移動局の移動先となる無線基地局へ論理パスを介して転送する手段と、ハンドオーバ処理の開始に伴って無線移動局の移動元の無線基地局から転送されるパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定する手段と、パケットデータをハンドオーバ処理の完了まで保持し、ハンドオーバ処理の完了により、転送順序情報を含むヘッダを削除して無線移動局へ送信する手段とを備えている。
【0018】
本発明の無線通信制御方法は、複数の分散配置された無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信制御方法であって、無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、無線移動局宛てのパケットデータを、無線移動局の移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して転送する過程と、移動先無線基地局は、ヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定し、ハンドオーバ処理完了時に、ヘッダを削除したパケットデータを、無線移動局へ送信する過程とを含むものである。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1の無線通信システムの概要を示すもので、1−1〜1−nはアクセスゲートウェイ(aGW:access Gate Way)、2はネットワーク、3−1〜3−mは無線基地局(eNB:enhanced Node B)、4は無線移動局(UE:User Equipment)、5は論理パスを示す。アクセスゲートウェイ1−1〜1−nに対してネットワーク2を介してそれぞれ複数の無線基地局3−1〜3−mが接続される。又無線基地局3−1〜3−mの相互間は、上位のアクセスゲートウェイ1−1〜1−nを介した物理パスで相互に接続される構成となるが、図示のように、論理パス5により相互間が接続されて、パケットデータや制御情報等の転送が可能となる。
【0020】
又アクセスゲートウェイ1−1〜1−nと無線基地局3−1〜3−mを介して無線移動局4との間で送受信するパケットデータは、従来例と同様にシーケンス番号等が付加されている。例えば、アクセスゲートウェイ1−1から無線基地局3−1を介して無線移動局4へ送信するパケットデータは、無線移動局4のアドレス情報を含むと共にシーケンス番号を含むものであり、無線移動局4は、パケットデータの転送順序を確認することができる。又無線移動局4の移動により無線基地局3−1から無線基地局3−2に対するハンドオーバ処理を開始する場合、移動元の無線基地局3−1は、ハンドオーバ処理開始から完了までの間のアクセスゲートウェイ1−1からのパケットデータを、論理パス5を介して移動先の無線基地局3−2に転送する。この移動先の無線基地局3−2は、そのパケットデータをハンドオーバ処理完了まで保持し、ハンドオーバ処理完了により、保持していたパケットデータを無線移動局4へ送信し、且つそれ以後のアクセスゲートウェイ1−1からのパケットデータを無線移動局4へ送信する。このようなハンドオーバ処理は、従来例及び現在検討中のシステムに於いて実施される。
【0021】
前述のハンドオーバ処理時に、論理パス5を介して移動元の無線基地局3−1から移動先の無線基地局3−2へ転送するパケットデータは、アクセスゲートウェイ1−1と無線移動局4との間で伝送しているパケットデータの途中のものである場合が一般的である。そこで、論理パス5を介して転送するパケットデータに、転送順序情報を含むヘッダを付加するものである。その為に、無線基地局3−1〜3−mは、ハンドオーバ処理開始により、無線移動局4宛てのパケットデータに転送順序情報を含むヘッダを付加する手段と、無線移動局4の移動先となる無線基地局へ論理パスを介して転送する手段と、移動先となる無線基地局は、転送されたパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により、転送順序が正しいかどうか(正常な転送順序であるか否か)を判定する手段と、ハンドオーバ処理完了により、ヘッダを削除して無線移動局4へ送信する手段とを備えている。
【0022】
この場合のパケットデータの転送順序情報を含むヘッダは、論理パスを介して移動元の無線基地局から移動先の無線基地局へ転送する順序の正常性を判定できる比較的簡単な構成で済むから、論理パスの転送帯域に及ぼす影響は無視できる程度のものとなる。又移動先の無線基地局は、ヘッダの転送順序情報により、転送パケットデータが、先頭、途中の順序及び最後尾であるか否か等を容易に判定することができ、転送順序が正しくない(正常でない)場合、移動元の無線基地局へ再送要求を行うことができる。従って、ハンドオーバ処理完了時に、無線移動局4へ、ハンドオーバ処理開始からのパケットデータの転送順序を維持して送信することができる。
【0023】
図2は、本発明の実施例1の無線基地局の要部説明図であり、パケットデータの送信と受信との機能をまとめて示すもので、11はアンテナ、12は前置増幅器(MHA;Mast Head Amplifier)、13は電力増幅器(TPA;Transmit Power Amplifeir)、14は送受信制御部、15は制御処理部、16は送受信部(TRX;Transmitter Receiver)、17はベースバンド処理部(BB;Base Band Unit)、18はインタフェース部(IF)、19はハイウェイインタフェース部(HWIF;High Way Interfase)、20は共通メモリ(CM;Common Memory)、21は呼制御プロセッサ(CPU;Call Processing Unit)、22はデータベース(DB;Data Base Unit)を示す。
【0024】
アンテナ11により、図1に示す無線移動局4との間でパケットデータの送受信を行うものであり、アンテナ11と前置増幅器12と電力増幅器13と送受信部16とを含む構成は、前述のように送信機能と受信機能とをまとめて示すもので、既に知られている各種の無線送受信手段を適用することができる。又ハイウェイインタフェース部19により、上位のアクセスゲートウェイとの間でパケットデータの送受信及び論理パス5によるパケットデータの送受信を行うものである。又呼制御プロセッサ21は、各部を制御するものであり、送受信制御部14のベースバンド処理部17との間の制御情報等は、インタフェース部18を介して行う場合を示す。なお、呼制御プロセッサ21とベースバンド処理部17との間に制御情報を転送する信号線を設けた構成とすることも可能である。又上位のアクセスゲートウェイから無線移動局に対して送信するパケットデータは、ハイウェイインタフェース部19からインタフェース部18を介してベースバンド処理部17に転送され、送受信部16と電力増幅器13と前置増幅器12とを介してアンテナ11から無線移動局へ送信される。又無線移動局からのパケットデータは、前述と逆の経路でアクセスゲートウェイへ送信される。
【0025】
ハンドオーバ処理開始により、移動元の無線基地局は、アクセスゲートウェイから受信したパケットデータを、無線移動局へ送信しないで、呼制御プロセッサ21の制御により、ベースバンド処理部17に於いて、前述のヘッダを付加して、移動先の無線基地局との間の論理パスによって転送する。移動先の無線基地局に於いては、論理パスを介してハイウェイインタフェース部19により受信し、インタフェース部18を介してベースバンド処理部17に転送し、ヘッダにより転送順序が正しいかどうか(正常性)を確認する。このようなヘッダによるパケットデータの転送順序の判断処理は、呼制御プロセッサ21により行うことができる。そして、正常性を確認した場合、ヘッダを削除して、例えば、共通メモリ20によりハンドオーバ処理完了まで保持させる。又パケットデータの消失等により転送順序が正しくない(正常でない)場合、呼制御プロセッサ21の制御により、移動元の無線基地局に対して再送要求を行うことができる。又ハンドオーバ処理完了時には、呼制御プロセッサ21は、共通メモリ20から順次読み出したパケットデータをベースバンド処理部17に転送し、無線移動局への送信を開始する。
【0026】
ハンドオーバ処理開始時に、無線基地局に於ける転送順序情報を含むヘッダを付加して転送する手段及びハンドオーバ処理完了時に、ヘッダを削除したパケットデータを無線移動局へ送信する手段は、呼制御プロセッサ21とベースバンド処理部17との機能及び送受信部16等の機能によって実現することができる。又転送順序情報を受信判定し、転送順序の正常性を判定する手段及び再送要求を行う手段は、呼制御プロセッサ21の処理機能により実現することができる。
【0027】
図3は、パケットデータの転送の概要の説明図であり、送信先及び送信元のアドレス情報を含むPDCP(Packet Data Convergence Protocol)ヘッダと、データとを含むパケットデータを、非ハンドオーバ処理時(左側)及びハンドオーバ処理時(右側)とについての概要を示すものである。非ハンドオーバ処理時は、RLC SDU(Radio Link Control Service Data Unit)データは、RLCレイヤに於いては、分割したデータと、各データにそれぞれ付加した送信先及び送信元のアドレス情報を含むヘッダとからなるRLC PDU(Radio Link Control Packet Data Unit)として、無線移動局へ送信する。
【0028】
又ハンドオーバ処理時は、移動元の無線基地局のRLCレイヤと移動先の無線基地局のRLCレイヤとを示し、移動元の無線基地局は、RLC SDUデータに、RLC FW(Radio Link Control Forwarding)ヘッダを付加して、前述の論理パスにより移動先の無線基地局へ転送する。このRLC FWヘッダは、前述のように、ハンドオーバ処理時にパケットデータに付加して、論理パスを介して転送するパケットデータの順序を認識可能とするものである。又移動先の無線基地局は、このRLCFWヘッダにより、論理パスを介して転送されたパケットデータの順序を認識することが可能であり、ハンドオーバ処理完了時には、このRLC FWヘッダを削除して、非ハンドオーバ処理時と同様にRLC PDUデータとして無線移動局へ送信する。
【0029】
図4は、本発明の実施例1のシーケンスチャートを示し、UE(User Equipment)は無線移動局、S−eNB(Source eNB)は移動元となる無線基地局、T−eNB(Target eNB)は移動先となる無線基地局、aGWはアクセスゲートウェイを示す。アクセスゲートウェイaGWから移動元の無線基地局S−eNBにパケットデータ(Packet data)を送信し(1)、その移動元の無線基地局S−eNBは、無線移動局UEにパケットデータ(Packet data)を送信する(2)。この場合のパケットデータは、図3に示す非ハンドオーバ処理時のRLCレイヤとして示すようにして伝送される。
【0030】
又アクセスゲートウェイaGWから移動元の無線基地局S−eNBにハンドオーバ処理の条件を通知し(Provision of area restrictions)、無線移動局UEと移動元の無線基地局S−eNBとの間の通信品質等の測定結果(Measurement control)に基づいて、移動元の無線基地局S−eNBはハンドオーバ処理開始を決定すると(HO Decision)、移動先の無線基地局T−eNBに対してハンドオーバ処理要求を行う(HO Request)。移動先の無線基地局T−eNBは、このハンドオーバ処理要求により、リソース確保の可能性等の判定処理(Admission Control)を行い、要求受付可能であれば、移動元の無線基地局S−eNBに対してハンドオーバ処理応答(HO Response)を送出する。それにより、移動元の無線基地局S−eNBは、無線移動局UEに対してハンドオーバ処理開始のコマンド(HO Command)を送出する。
【0031】
この状態に於けるアクセスゲートウェイaGWから移動元の無線基地局S−eNBに対して、無線移動局UE宛のパケットデータ(Packet data)を送出すると(3)、移動元の無線基地局S−eNBは、転送順序の情報を含む図3に示すRLC FWヘッダを付加した転送データ(Deliver user data)として、移動先の無線基地局T−eNBへ、図1に示す論理パス5を介して転送する(4)。又無線移動局UEは、移動先の無線基地局T−eNBとの間で同期をとり(L1/L2 signalling)、同期がとれると、移動先の無線基地局T−eNBへハンドオーバ処理完了(HO Complete)を通知する。それにより、移動先の無線基地局T−eNBは、アクセスゲートウェイaGWへハンドオーバ処理完了(HO Complete)を通知し、アクセスゲートウェイaGWからの肯定応答(HO Complete ACK)を受信すると、移動元の無線基地局S−eNBへリソース解放通知(Release Resource)を送出する。これは、無線移動局UEからのハンドオーバ処理完了通知を受信した時に送出することもできる。
【0032】
移動元の無線基地局S−eNBは、無線移動局UEとの無線通信の為のリソースを解放する(Release resources@source side)。アクセスゲートウェイaGWは、無線移動局UEの位置を更新し、又移動先の無線基地局T−eNBは、移動元の無線基地局S−eNBから論理パスを介して転送されたパケットデータを、無線移動局UEに送信し(5)、又アクセスゲートウェイaGWはパケットデータを受信した移動先の無線基地局T−eNBへ送信し(6)、無線基地局T−eNBは、受信したパケットデータを無線移動局UEへ送信する(7)。
【0033】
図5は、プロトコルスタックの説明図であり、(A)は無線移動局UEと無線基地局eNBとアクセスゲートウェイaGWとの間のユーザプレーンのプロトコルスタック(フレームプロトコル)を示し、(B)は移動元無線基地局Source eNBと移動先無線基地局Target eNBとの間のユーザプレーンのプロトコルスタック(フレームプロトコル)を示す。無線移動局UEとアクセスゲートウェイaGWとの間は、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)層、又無線移動局UEと無線基地局eNBとの間は、RLC(Radio Link Control)層、MAC(Medium Access Control)層、PHY(Physical layer層からなり、無線基地局eNBとアクセスゲートウェイaGWとの間は、GTP−U/UDP)層、IP層、Ether(登録商標)層、PHY層からなる場合を示す。又図5の(B)は、論理パスにより相互間を接続した場合について示し、それぞれUser Data層、GTP−U/UDP層、IP層、Ether(登録商標)層、PHY層からなる場合を示す。
【0034】
図6は、本発明の実施例1の要部フローチャートを示し、Source eNB(移動元無線基地局)がU−Plane(ユーザプレーン)データを受信すると、HO(ハンドオーバ処理)実施中か否かを判定し、実施中でない場合は、UE(無線移動局)へデータを送信する。又HO(ハンドオーバ処理)実施中の場合、図3に示すように、RLC FWヘッダを付与して、Target eNB(移動先無線基地局)へ転送する。この場合、前述のように移動元の無線基地局と移動先の無線基地局との間の論理パスを介して転送すると共に、パケットデータに、シーケンス番号等による転送順序情報を含むRLC FWヘッダを付加する。それにより、Target eNB(移動先無線基地局)は、パケットデータの転送順序の正常性を判定し、且つハンドオーバ処理完了までそのパケットデータを保持し、ハンドオーバ処理完了時には、RLC FWヘッダを削除したパケットデータをUE(無線移動局)へ送信する。又転送順序の正常性判定のステップ及び転送順序が正しくない場合の再送要求のステップは特に図示していないが、ハンドオーバ処理完了までに実施することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1の概要説明図である。
【図2】本発明の実施例1の無線基地局の要部説明図である。
【図3】本発明の実施例1のパケットデータの転送の概要説明図である。
【図4】本発明の実施例1のシーケンスチャートである。
【図5】プロトコルスタックの説明図である。
【図6】本発明の実施例1の要部フローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1−1〜1−n アクセスゲートウェイ(aGW)
2 ネットワーク
3〜1〜3〜m 無線基地局(eNB)
4 無線移動局(UE)
5 論理パス
14 送受信制御部
15 制御処理部
16 送受信部(TRX)
17 ベースバンド処理部(BB)
18 インタフェース部(IF)
19 ハイウェイインタフェース部(HWIF)
20 共通メモリ(CM)
21 呼制御プロセッサ(CPU)
22 データベース(DB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信システムに於いて、
前記無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、前記無線移動局宛てのパケットデータを、前記無線移動局の移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して転送する手段を備え、
前記移動先無線基地局は、前記ヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定する手段と、ハンドオーバ処理完了時に前記ヘッダを削除した前記パケットデータを前記無線移動局へ送信する手段とを備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記ハンドオーバ処理開始により前記無線移動局宛てのパケットデータに前記転送順序情報を含むヘッダを付加して前記移動元無線基地局と前記移動先無線基地局との間の論理パスを介して転送する手段と、ハンドオーバ処理完了まで前記論理パスを介して転送された前記パケットデータを保持する手段と、該保持したパケットデータを、ハンドオーバ処理完了時に前記ヘッダを削除して前記無線移動局へ送信する手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記移動先無線基地局は、前記移動元無線基地局から転送されるパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により転送順序が正しいかどうかを判定し、正しくない場合は前記移動元無線基地局に再送要求を送出する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線移動局との間でパケットデータの送受信を行う無線基地局に於いて、
前記無線移動局の移動に伴うハンドオーバ処理の開始により、前記無線移動局宛てのパケットデータに転送順序情報を含むヘッダを付加して前記無線移動局の移動先となる無線基地局へ論理パスを介して転送する手段と、
前記ハンドオーバ処理の開始に伴って前記移動元無線基地局から転送されるパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定する手段と、
前記パケットデータをハンドオーバ処理の完了まで保持し、前記ハンドオーバ処理の完了により前記ヘッダを削除して前記無線移動局へ送信する手段とを備えた
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項5】
前記パケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により転送順序が正しくないと判定した場合に前記無線移動局の移動元の無線基地局へ前記論理パスを介して再送要求を送出する手段を備えたことを特徴とする前記請求項4記載の無線基地局。
【請求項6】
無線基地局と無線移動局との間でパケットデータを送受信する無線通信制御方法に於いて、
前記無線移動局の移動に伴ってハンドオーバ処理を開始する移動元無線基地局は、前記無線移動局宛てのパケットデータを、前記無線移動局の移動先無線基地局へ、転送順序情報を含むヘッダを付加して転送し、前記移動先無線基地局は、前記ヘッダの転送順序情報により転送順序の正常性を判定し、ハンドオーバ処理完了時に前記ヘッダを削除した前記パケットデータを前記無線移動局へ送信する過程を含む
ことを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項7】
前記ハンドオーバ処理を開始する前記移動元無線基地局は、前記無線移動局宛てのパケットデータを、前記移動先無線基地局へ、転送順序を含むヘッダを付加して論理パスを介して転送する過程と、前記移動先無線基地局は、前記移動元無線基地局から転送されたパケットデータに付加されたヘッダの転送順序情報により正常性を判定する過程と、該判定結果が正常でない場合に、前記移動元無線基地局に再送要求を送出する過程と、ハンドオーバ処理完了により前記ヘッダを削除した前記パケットデータを前記無線移動局へ送信する過程とを含むことを特徴とする請求項6記載の無線通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−98757(P2008−98757A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275258(P2006−275258)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】