説明

無線通信システム及び無線通信端末局

【課題】メッシュネットワークにおいて、端末局が、所望の基地局の配下に組み入れられることが可能な技術を提供する。
【解決手段】無線通信システムは、基地局1(1a.1b)及び端末局2(2a,2b,2c)によりメッシュネットワークを構築する無線通信システムである。端末局2は、(a)メッシュネットワークにおける複数の通信経路の中から候補通信経路を取得し、(b)候補通信経路に属する基地局1である候補基地局1から、当該候補基地局1の座標位置を特定する基地局位置情報を受信する。そして、端末局2は、自局の座標位置を特定する端末局位置情報と基地局位置情報とに基づいて、自局と候補基地局1との間の距離を算出し、当該距離に基づいて自局の通信経路を構築すべき基地局1を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及び無線通信端末局に関するものであり、特に、メッシュネットワークの構築に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小電力で無線ネットワークを構築する手段として、特許文献1に開示されているようにメッシュネットワークもしくはアドホックネットワークと呼ばれる方式が提案されている。このメッシュネットワークでは、基地局(無線局)のみならず、端末局が、中継という形で参画(参入)してメッシュ状のネットワークを構築する。メッシュネットワークの特徴として、多段階の中継(ホップ)を行うマルチホップ技術を採用していることが挙げられるが、基地局までの中継数(ホップ数)が大きいと全体のスループットが低下することから、それを抑制すべくホップ数はなるべく小さくされている。
【0003】
なお、電力、ガス及びガスなどの使用量を自動検針して通信するスマートメータにおいては、メッシュネットワークのマルチホップの中継通信機能を活用して、サービスエリア内をカバーすることが検討されている。
【0004】
メッシュネットワークに話を戻すと、端末局は、メッシュネットワークに新規参入する際には、ルーチングプロトコルに従って自局の通信経路を決定する。このルーチングプロトコルについては様々な提案がなされているが、いずれのプロトコルにおいても、フラッディングと呼ばれるブロードキャストなどが行われることにより、端末局の通信経路が取得される。ここで、複数の通信経路が取得された場合には、端末局は、ホップ数および受信レベルなどに関する評価関数を用いて、それらの中から自局の通信に最適な通信経路を自動的に選択する。そして、端末局は、選択した通信経路を介してネットワークに参入することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−186565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、一般にセル状に展開されるネットワークを構築する無線通信システムにおいては、基地局に収容される端末局の数を考慮して置局設計が行われている。しかしながら、端末局を、設計で想定していた所望の基地局(上位装置)の配下に組み入れるように設置しても、上述した評価関数の要素の一つであるホップ数に関して、所望の基地局よりも別の基地局の方がたまたま少ない場合には、当該別の基地局が属する通信経路を選択してしまうことがあった。その結果、端末局を、所望の基地局の配下に組み入れることができない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、メッシュネットワークにおいて、端末局が、所望の基地局の配下に組み入れられることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線通信システムは、基地局及び端末局によりメッシュネットワークを構築する無線通信システムであって、前記端末局は、自局の座標位置を特定する端末局位置情報が予め保持された位置情報保持部を備える。前記端末局は、(a)前記メッシュネットワークにおける複数の通信経路のうち、自局の通信経路の候補である候補通信経路を取得し、(b)前記候補通信経路に属する前記基地局である候補基地局から、当該候補基地局の座標位置を特定する基地局位置情報を受信する。そして、前記端末局は、(c)前記端末局位置情報と前記基地局位置情報とに基づいて自局と各前記候補基地局との間の距離を算出し、当該距離に基づいて、前記候補基地局の中から自局の前記通信経路を構築すべき基地局を選択する。
【0009】
また、上記と別構成として、本発明に係る無線通信システムは、基地局及び端末局によりメッシュネットワークを構築する無線通信システムであって、前記端末局は、(a)前記メッシュネットワークにおける複数の通信経路のうち、自局の通信経路の候補である候補通信経路を取得し、当該候補通信経路を介して前記メッシュネットワークに仮参入し、(b)前記(a)の後、前記メッシュネットワークの上位ネットワークから、自局の座標位置を特定する端末局位置情報と、前記候補通信経路に属する前記基地局である候補基地局の座標位置を特定する基地局位置情報とを受信する。そして、前記端末局は、(c)前記端末局位置情報と前記基地局位置情報とに基づいて自局と各前記候補基地局との間の距離を算出し、当該距離に基づいて、前記候補基地局の中から自局の前記通信経路を構築すべき基地局を選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基地局と、端末局との間の距離に基づいて、端末局の通信経路を構築すべき基地局が選択される。したがって、端末局を、セル設計において意図していた所望の基地局の配下に組み入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る無線通信システムの基地局及び端末局のそれぞれの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る無線通信システムの動作を示す概略図である。
【図3】実施の形態1に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態3に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】対比通信システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
まず、本実施の形態1に係る無線通信システムについて説明する前に、それと対比される無線通信システム(以下、「対比通信システム」と呼ぶ)について説明する。
【0013】
図6は、対比通信システムを示す概略図である。この図6に示されるように、対比通信システムは、互いに無線通信を行うことが可能な複数の基地局1a,1b及び複数の端末局2a,2b,2c(複数の無線通信端末局)を備える。基地局1a,1bの構成は実質的に同じであり、端末局2a,2b,2cの構成は実質的に同じである。そこで、以下の説明において、基地局1a,1bを区別しない場合にはそれぞれを「基地局1」と記し、端末局2a,2b,2cを区別しない場合にはそれぞれを「端末局2」と記す。図6に示されるように、基地局1a,1bは、これらを統括する上位ネットワーク3と接続されている。
【0014】
対比通信システムにおいては、基地局1のみならず端末局2も他の端末局を中継可能となっている。したがって、複数の基地局1a,1b及び複数の端末局2a,2b,2cは、メッシュネットワークを構築可能となっている。このメッシュネットワークの構築、つまり、端末局2の通信経路の構築は、自律的に行われる。これにより、端末局2は、ゲートウェイとなる基地局1を中心に相互接続される。
【0015】
各基地局1の周囲には、端末局2を収容すべき範囲がサービスエリア4として設計で定められており、基地局1により収容される端末局2の数を考慮して、端末局2がサービスエリア4に振り分けられて設置される。この図6に示される例では、端末局2a,2bは、基地局1aのサービスエリア4a内に設置されていることから、基地局1aに収容されるべきものとなっている。同様に、端末局2cは、基地局1bのサービスエリア4b内に設置されていることから、基地局1bに収容されるべきものとなっている。
【0016】
以下、サービスエリア4a,4bの一部が互いに重複するぐらいに、基地局1a,1bは互いに近接しているものとして説明する。また、端末局2は、例えば、電力、ガス、水道の使用量を自動検針して、その使用量を通信するスマートメータに備えられているものとする。このような端末局2は、移動されることなく固定位置に設置されることになる。
【0017】
次に、端末局2が、ブラインドでメッシュネットワークに参入しようとする際の動作について説明する。この動作においてまず、端末局2は、フラッディングと呼ばれるブロードキャストパケットの送出を行う。その後、それを受信した基地局1及び他の端末局2が同様にブロードキャストを繰り返す。この動作により、端末局2は、自局の通信経路の候補を取得する。以下、端末局2の通信経路の候補を「候補通信経路」と呼ぶこともあり、候補通信経路に属する基地局1を「候補基地局1」と呼ぶこともある。
【0018】
なお、フラッディングにおけるブロードキャストパケットは、端末局2からある程度の距離までしか届かないことから、候補基地局1としては、端末局2周辺に位置する基地局1が取得されることになる。
【0019】
さて、上述のフラッディングなどが行われたことによって、複数の候補通信経路が取得された場合には、端末局2は、各候補通信経路のホップ数(通信経路上の端末局2の数)及び受信レベルなどに関する評価関数を用いて、複数の候補通信経路の中から自局の通信に最適な通信経路を選択する。このような選択を行う端末局2においては、なるべくホップ数が小さい通信経路が選択される。その後、端末局2は、選択した通信経路を介してネットワークに参入する。
【0020】
次に、以上のようなネットワーク参入において生じる問題について、図6に示される端末局2aを例にして説明する。ただし、この説明において、上述のフラッディングを行った結果、端末局2aは、基地局1a,1bが属する通信経路を候補通信経路として取得したものとする。また、端末局2aと、基地局1aとの間は、見通し外で互いに直接通信できないほど受信レベルが低下しているものとする。
【0021】
端末局2aは、上述と同様にして候補通信経路(候補基地局1)を取得すると、それらの中から、上述の評価関数を用いて最適な通信経路(基地局1)を選択する。ここで、評価関数の一つの要素であるホップ数に着目する。端末局2aは、基地局1aとの関係において見通し外通信となっていることから、端末局2bを介して基地局1aと通信することから、端末局2aと基地局1aとの間の通信経路のホップ数は「1」となる。一方、端末局2aは、中継局を介さずに基地局1bと直接通信することから、端末局2aと基地局1bとの間の通信経路のホップ数は「0」となる。
【0022】
そうすると、ホップ数に関して、基地局1aが属する通信経路よりも基地局1bが属する通信経路のほうが少ないことから、対比通信システムにおいては、基地局1bが属する通信経路が選択されてしまうことがある。つまり、対比通信システムでは、端末局2aは、基地局1aの配下に収容されるべきであるにもかかわらず、実際には基地局1bの配下に収容されてしまうことがある。
【0023】
そこで、本実施の形態に係る無線通信システムでは、ホップ数などにかかわらず、端末局2を、所望の基地局1の配下に組み入れることが可能となっている。以下、このような無線通信システムについて説明する。なお、以下においては、上述の対比通信システムと同様の構成要素については同じ符号を付すものとし、対比通信システムと異なる部分を中心に説明する。
【0024】
本実施の形態に係る無線通信システムは、対比通信システムと同様、基地局1及び端末局2によりメッシュネットワークを構築する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムが備える基地局1及び端末局2のそれぞれの構成を示す機能ブロック図である。基地局1及び端末局2のハードウェアの構成は正確には異なるが、機能ブロックとしては同じものとなっている。
【0026】
図1に示されるように、端末局2は、送受信用アンテナ11と、送受信部12と、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部装置21との接続に用いられる外部インタフェース13と、位置情報保持部15と、これらを統括的に制御する制御部14とを備える。
【0027】
送受信部12は、制御部14からのデータに基づいて搬送波を変調し、それによって得られた無線信号を、送受信用アンテナ11を介して外部に送信する。また、送受信部12は、送受信用アンテナ11で受信した無線信号に含まれるデータを取得する復調を行い、それによって取得したデータを制御部14に出力する。
【0028】
端末局2の位置情報保持部15には、当該端末局2が設置された際に入力された、当該端末局2の座標位置を特定する端末局位置情報が保持されている。同様に、基地局1の位置情報保持部15には、当該基地局1が設置された際に入力された、当該基地局1の座標位置を特定する基地局位置情報が保持されている。これら位置情報は、経度緯度の座標そのもので示されてもよいし、距離計算が容易となる平面直角座標で示されてもよい。なお、基地局1及び端末局2は固定の場所に設置されていることから、正確な位置情報を、事前に位置情報保持部15に書き込むことが可能である。
【0029】
本実施の形態に係る端末局2は、自局の通信経路を選択する際の第一優先として、端末局位置情報及び基地局位置情報に基づいて自局と候補基地局1との間の距離を算出し、当該距離が近い基地局1(上位装置)とアクセスする。この動作によって、後述するように、図1に示したサービスエリア4内に位置する端末局2は、そのサービスエリア4に対応する基地局1とアクセスするようになることから、基地局1における実際の収容数を、セル設計時に想定していた収容数に近づけることが可能となる。
【0030】
図2は、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、端末局2がメッシュネットワークに新規参入する際の動作を示す概略図であり、図3は、その動作を示すフローチャートである。図2においては、基地局1及び端末局2のそれぞれの位置情報が、平面直角座標系での座標(x,y)で示されている。以下、図2及び図3を用いて、端末局2がネットワークに新規参入する際の動作を、端末局2aを例にして説明する。
【0031】
ネットワーク参入が開始すると、ステップs1において、端末局2aは、通常のプロトコルを用いて、メッシュネットワークにおける複数の通信経路の中から自局の通信経路の候補(候補通信経路)を探索する。具体的には、端末局2aは、上述と同様に、フラッディングと呼ばれるブロードキャストパケットの送出を行う。その後、それを受信した基地局1及び他の端末局2が同様にブロードキャストを繰り返す。
【0032】
この動作により、端末局2aは候補通信経路を取得する。ここでは、端末局2aは、上述の候補通信経路として、基地局1aが属する通信経路(端末局2a、端末局2b及び基地局1aを通る通信経路)と、基地局1bが属する通信経路(端末局2及び基地局1bと通る通信経路)とを取得したものとする。
【0033】
ステップs2において、端末局2aは、候補基地局1a,1bから送信された基地局位置情報をそれぞれ受信する。ここでは、端末局2aは、候補基地局1aの座標位置(3,2)を示す基地局位置情報を受信するとともに、候補基地局1bの座標位置(9,2)を示す基地局位置情報を受信する。なお、図2に示される例では、端末局2aは、候補基地局1aとの関係において見通し外通信となっていることから、候補基地局1aから端末局2bを介して、候補基地局1aの基地局位置情報を受信する。
【0034】
ステップs3において、端末局2aは、自局の位置情報保持部15に保持された端末局位置情報と、受信した基地局位置情報とに基づいて、自局と候補基地局1a,1bとの間の距離をそれぞれ算出する。端末局2aは、自局と候補基地局1aとの間の距離を算出する際には、自局の端末局位置情報が示す座標(2,5)と、候補基地局1aの基地局位置情報が示す座標(3,2)とに三平方の定理等を適用することによって、それらの間の直線距離(ここでは約3.2)を算出する。また、端末局2aは、同様に、自局と候補基地局1bとの間の直線距離(ここでは約7.6)を算出する。
【0035】
同ステップs3において、端末局2aは、算出した距離に基づいて、候補基地局1a,1bの中から自局の通信経路を構築すべき基地局1を選択する。ここでは、端末局2aは、最短の距離に対応する候補基地局1aを、自局の通信経路を構築すべき基地局1として選択する。このように、端末局2aの収容先を選択するパラメータとして、基地局1と端末局2aとの間の距離を用いれば、端末局2aが設置されたサービスエリア4aの基地局1a、つまり、セル設計において意図していた所望の基地局1aを選択することができる。
【0036】
ステップs4において、端末局2aは、選択した基地局1aが属する通信経路を介してネットワークに参入した後、通常運用を行う。この結果、端末局2aは、所望の基地局1aの配下に組み入れられることになる。
【0037】
以上のような本実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信端末局によれば、基地局1と、端末局2(無線通信端末局)との間の距離に基づいて、当該端末局2の通信経路を構築すべき基地局1が選択される。したがって、端末局2を、セル設計において意図していた所望の基地局1の配下に組み入れることができる。つまり、端末局2を収容する基地局1がどれかを把握することができるため、セル設計通りのメッシュネットワークを構築することができる。よって、基地局1の実際の収容数を、セル設計時に想定していた収容数に近づけることができる。また、不要なアクセスを削減できるため、ネットワークにおけるトラフィック量の抑制でき、その結果として、メッシュネットワークを構築するのに必要なエネルギーが高くなるのを抑制することが期待できる。
【0038】
また、例えば、図2に示される端末局2aが、サービスエリア4a,4b以外のサービスエリア4との間で通信経路を確立していたとしても、その後に基地局切り替えの必要性が発生した場合に、上記と同様の動作を行うことにより、基地局1aとの間で通信経路を確立することができる。
【0039】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る無線通信システムでは、端末局位置情報が端末局2の位置情報保持部15に保持され、基地局位置情報が基地局1から端末局2に送信されるものであった。本実施の形態2に係る無線通信システムでは、端末局位置情報及び基地局位置情報は、上位ネットワーク3から端末局2に送信されるものとなっている。以下、本実施の形態に係る無線通信システムの説明において、実施の形態1に係る無線通信システムと同様の構成要素については同じ符号を付すものとし、実施の形態1に係る無線通信システムと異なる部分を中心に説明する。
【0040】
図4は、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、端末局2がメッシュネットワークに新規参入する際の動作を示すフローチャートである。以下、図4を用いて、端末局2がネットワークに新規参入する際の動作について説明する。
【0041】
ネットワーク参入が開始すると、ステップs11において、端末局2は、上述のステップs1と同様に、通常のプロトコルを用いてフラッディングなどを行い、メッシュネットワークにおける複数の通信経路の中から候補通信経路を探索し取得する。そして、本実施の形態に係る端末局2は、取得した候補通信経路のいずれか1つを介してメッシュネットワークにブラインドで仮参入する。これにより、端末局2は、基地局1及び上位ネットワーク3と通信を行うことが可能となる。それから、端末局2は、候補通信経路に属する候補基地局1を特定する固有の基地局識別情報を、候補基地局1からそれぞれ取得する。
【0042】
ステップs12において、端末局2は、基地局1などを介して上位ネットワーク3に、当該基地局識別情報と、自局のユーザ情報とを送信する。上位ネットワーク3には、ユーザ情報に対応する端末局位置情報と、基地局識別情報に対応する基地局位置情報とが予め保持されている。上位ネットワーク3は、端末局2からのユーザ情報及び基地局識別情報を受信すると、それらに対応する端末局位置情報及び基地局位置情報を当該端末局2に送信する。こうして、同ステップs12において、端末局2は、メッシュネットワークの上位ネットワーク3から、自局の端末局位置情報と、候補基地局1の基地局位置情報とを受信する。本実施の形態では、端末局2は、受信した端末局位置情報及び基地局位置情報を、自局の位置情報保持部15に保持する。
【0043】
ステップs13において、端末局2は、上位ネットワーク3から受信した端末局位置情報及び基地局位置情報に基づいて、自局と候補基地局1との間の距離を算出する。そして、端末局2は、ステップs11の仮参入から現在まで自局と接続している候補基地局1が、当該距離に関して最短となっているかを判定する。端末局2は、最短となっていると判定した場合にはステップs16に進み、最短となっていないと判定した場合にはステップs14に進む。
【0044】
ステップs14において、端末局2は、算出した距離が最短となる候補基地局1への通信経路を探索する。そして、ステップs15において、端末局2は、現在使用している通信経路を、探索した通信経路に変更する。以上のステップs13〜s15を行うことにより、端末局2は、最短の距離に対応する候補基地局1を、自局の通信経路を構築すべき基地局1として選択することになる。
【0045】
ステップs16において、端末局2は、選択した基地局1が属する通信経路を介してネットワークに参入した後、通常運用を行う。この結果、端末局2は、セル設計において意図していた所望の基地局1の配下に組み入れられることになる。
【0046】
以上のような本実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信端末局によれば、実施の形態1と同様に、基地局1と、端末局2(無線通信端末局)との間の距離に基づいて、当該端末局2の通信経路を構築する基地局1が選択されることから、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信端末局によれば、端末局位置情報及び基地局位置情報は、上位ネットワーク3から端末局2に送信される。したがって、基地局1の設置の際に、基地局1の位置情報保持部15に基地局位置情報を入力する作業や、端末局2の設置の際に、端末局2の位置情報保持部15に端末局位置情報を入力する作業を行う必要がなくなることから、基地局1及び端末局2の設置作業を簡素化することができる。
【0047】
<実施の形態3>
以上のような基地局1においては、収容する端末局2の数を増やすために、ある基地局1と同じ位置にそれとは異なる周波数チャネルを用いる別の基地局1を追加して設置する場合がある。本実施の形態3に係る無線通信システムでは、このような場合に、通信経路を構築すべき基地局1を適切に選択することが可能となっている。以下、本実施の形態に係る無線通信システムの説明において、実施の形態1に係る無線通信システムと同様の構成要素については同じ符号を付すものとし、実施の形態1に係る無線通信システムと異なる部分を中心に説明する。
【0048】
図5は、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、端末局2がメッシュネットワークに新規参入する際の動作を示すフローチャートである。以下、図5を用いて、端末局2がネットワークに新規参入する際の動作について説明する。
【0049】
ネットワーク参入が開始すると、ステップs21〜s23において、端末局2は、上述のステップs1〜s3と同様の動作を行う。上述のように複数の基地局1が同じ位置に設けられた場合には、端末局2と当該複数の基地局1との間の距離は互いに同じとなる。そうすると、端末局2は、ステップs21において距離が同じ複数の基地局1を候補基地局として取得した後、ステップs23において距離が同じ候補基地局1を自局の通信経路を構築すべき基地局1として選択する場合がある。
【0050】
このような場合に、ステップs24において、端末局2は、当該候補基地局1が収容している端末局2の数を当該候補基地局1から受信する。そして、ステップs25において、基地局1は、距離が同じ候補基地局1のうち、収容している端末局2の数が少ない候補基地局1を、自局の通信経路を構築すべき基地局1として選択する。それから、ステップs26において、端末局2は、選択した基地局1が属する通信経路を介してネットワークに参入した後、通常運用を行う。
【0051】
以上のような本実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信端末局によれば、同じ位置にある基地局1のうち、収容している端末局2の数が少ないものを、端末局2の通信経路を構築する基地局1として選択する。したがって、同じ位置にある基地局1の収容数を均等にすることができ、それら基地局1におけるトラフィック量を均一にすることができる。なお、以上の説明では本実施の形態を実施の形態1に適用した場合について説明したが、本実施の形態を実施の形態2に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1a,1b 基地局、2,2a,2b,2c 端末局、3 上位ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局及び端末局によりメッシュネットワークを構築する無線通信システムであって、
前記端末局は、自局の座標位置を特定する端末局位置情報が予め保持された位置情報保持部を備え、
前記端末局は、
(a)前記メッシュネットワークにおける複数の通信経路のうち、自局の通信経路の候補である候補通信経路を取得し、
(b)前記候補通信経路に属する前記基地局である候補基地局から、当該候補基地局の座標位置を特定する基地局位置情報を受信し、
(c)前記端末局位置情報と前記基地局位置情報とに基づいて自局と各前記候補基地局との間の距離を算出し、当該距離に基づいて、前記候補基地局の中から自局の前記通信経路を構築すべき基地局を選択する、無線通信システム。
【請求項2】
基地局及び端末局によりメッシュネットワークを構築する無線通信システムであって、
前記端末局は、
(a)前記メッシュネットワークにおける複数の通信経路のうち、自局の通信経路の候補である候補通信経路を取得し、当該候補通信経路を介して前記メッシュネットワークに仮参入し、
(b)前記(a)の後、前記メッシュネットワークの上位ネットワークから、自局の座標位置を特定する端末局位置情報と、前記候補通信経路に属する前記基地局である候補基地局の座標位置を特定する基地局位置情報とを受信し、
(c)前記端末局位置情報と前記基地局位置情報とに基づいて自局と各前記候補基地局との間の距離を算出し、当該距離に基づいて、前記候補基地局の中から自局の前記通信経路を構築すべき基地局を選択する、無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信システムであって、
前記端末局は、
前記(c)において、最短の前記距離に対応する前記候補基地局を、自局の前記通信経路を構築すべき基地局として選択する、無線通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線通信システムであって、
前記端末局は、
前記(c)において、前記距離が同じ前記候補基地局を、自局の前記通信経路を構築すべき基地局として選択した場合に、当該候補基地局が収容している端末局の数を当該候補基地局から受信し、当該端末局の数が少ない当該候補基地局を、自局の前記通信経路を構築すべき基地局として選択する、無線通信システム。
【請求項5】
基地局及び端末局との間でメッシュネットワークを構築する無線通信システムにおいて前記端末局として用いられる無線通信端末局であって、
自局の座標位置を特定する端末局位置情報が予め保持された位置情報保持部と、
前記メッシュネットワークにおける複数の通信経路のうち、自局の通信経路の候補である候補通信経路を取得する手段と、
前記候補通信経路に属する前記基地局である候補基地局から、当該候補基地局の座標位置を特定する基地局位置情報を受信する手段と、
前記端末局位置情報と前記基地局位置情報とに基づいて自局と各前記候補基地局との間の距離を算出し、当該距離に基づいて、前記候補基地局の中から自局の前記通信経路を構築すべき基地局を選択する手段と
を備える、無線通信端末局。
【請求項6】
基地局及び端末局との間でメッシュネットワークを構築する無線通信システムにおいて前記端末局として用いられる無線通信端末局であって、
前記メッシュネットワークにおける複数の通信経路のうち、自局の通信経路の候補である候補通信経路を取得し、当該候補通信経路を介して前記メッシュネットワークに仮参入する手段と、
仮参入した前記メッシュネットワークの上位ネットワークから、自局の座標位置を特定する端末局位置情報と、前記候補通信経路に属する前記基地局である候補基地局の座標位置を特定する基地局位置情報とを受信する手段と、
前記端末局位置情報と前記基地局位置情報とに基づいて自局と各前記候補基地局との間の距離を算出し、当該距離に基づいて、前記候補基地局の中から自局の前記通信経路を構築すべき基地局を選択する手段と
を備える、無線通信端末局。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の無線通信端末局であって、
最短の前記距離に対応する前記候補基地局を、自局の前記通信経路を構築すべき基地局として選択する手段を備える、無線通信端末局。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の無線通信端末局であって、
前記距離が同じ前記候補基地局を、自局の前記通信経路を構築すべき基地局として選択した場合に、当該候補基地局が収容している端末局の数を当該候補基地局から受信し、当該端末局の数が少ない当該候補基地局を、自局の前記通信経路を構築すべき基地局として選択する手段を備える、無線通信端末局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−89966(P2012−89966A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233262(P2010−233262)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】