説明

無線通信システム及び無線通信端末

【課題】漏洩伝送路を介した無線通信システムにおいて、良好な無線通信を安定的して行うことができ、通信エリアを延ばすことができるようにする。
【解決手段】本発明の無線通信システムは、基地局と、基地局から延設されるものであって、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路と、各漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得るものであって、各漏洩伝送路から電波が輻射される輻射方向に対向する輻射角度で、電波を放射又は捕捉するアンテナ部を有する無線通信端末とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及び無線通信端末に関し、特に、漏洩伝送路を介して基地局と無線通信端末とが通信を行う無線通信システム及びこの無線通信システムの無線通信端末に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信端末が漏洩伝送路を介してデータ通信を行う無線通信システムが研究、開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1にも、このような無線通信システムに関する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術は、図15に示すように、固定側漏洩同軸ケーブル81及び移動体側漏洩同軸ケーブル84はそれぞれ、一端に送(受)信機82及び85が接続されており、他端に終端抵抗器83及び86が接続されている。そして、固定側漏洩同軸ケーブル81と移動体側漏洩同軸ケーブル84とについて、送(受)信機と終端抵抗器との位置が長手方向に見て相互に反対側にあるように平行に対応させた状態で、固定側漏洩同軸ケーブル81の長手方向に沿って、移動体側漏洩同軸ケーブル84を移動させる。このようにすることで、移動体側漏洩同軸ケーブル84と固定側漏洩同軸ケーブル81との電波輻射方向が平行でかつ反対向きとなるから、両者の電磁結合効率を高め、省電力で能率的な通信を行うことができる。
【特許文献1】特開2007−97026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、基地局と終端抵抗器とが接続する漏洩伝送路から漏れる電波は、基地局に近いほど強く、終端方向に向かうにつれて基地局からの距離が延びるため弱くなる。
【0005】
従って、特許文献1に記載されているように、基地局(例えば図15の送(受)信機82)から単一の漏洩同軸ケーブルが一方向に延設されている場合、安定性のある通信を確保するためには通信エリアを広く延ばすことができないという問題が生じ得る。
【0006】
そのため、良好な無線通信を安定的して行うことができ、通信エリアを延ばすことができる無線通信システム及び移動体が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明の無線通信システムは、(1)基地局と、(2)基地局から延設されるものであって、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路と、(3)各漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得るものであって、各漏洩伝送路から電波が輻射される輻射方向に対向する輻射角度で、電波を放射又は捕捉するアンテナ部を有する無線通信端末とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の無線通信端末は、基地局から延設され、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得る無線通信端末において、(1)各漏洩伝送路から電波が輻射される輻射方向に対向する輻射角度で、電波を放射又は捕捉するアンテナ部を備えることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明の無線通信端末は、基地局から延設され、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得る無線通信端末において、(1)複数の漏洩伝送路のうち、ある漏洩伝送路に沿って基地局に近づく方向に移動する際に、当該漏洩伝送路の電波輻射方向に対向する輻射角度をもつ端末側漏洩伝送路と、別の漏洩伝送路に沿って基地局から離れる方向に移動する際に、当該別の漏洩伝送路の電波輻射方向に対向する輻射角度をもつ端末側漏洩伝送路とを有するアンテナ部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な無線通信を安定的して行うことができ、通信エリアを延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明の無線通信システム及び無線通信端末の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1及び図2は、第1の実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1及び図2において、第1の実施形態の無線通信システム10−1は、移動体1、基地局(AP:Access Point)5、2本の漏洩伝送路6(6−1及び6−2)、漏洩伝送路6(6−1及び6−2)に接続する終端器7(7−1及び7−2)、を有して構成される。
【0013】
移動体1は、延設された漏洩伝送路6−1及び6−2に沿ってほぼ平行に移動するものであり、例えば、無線搬送車等の車両、移動可能ロボットなどを適用することができる。また、移動体1は、漏洩同軸ケーブル(LCX;Leaky CoaXial Cable)2、漏洩伝送路6−1及び6−2を介して基地局5と無線通信するための無線通信端末3、終端器4、を少なくとも有して構成されるものである。
【0014】
漏洩同軸ケーブル(LCX)2は、一端に無線通信端末3が接続され、他端に終端器4が接続されているものであり、1本のケーブルがU字に折り曲げられた状態で敷設されるものである。このように、漏洩同軸ケーブル2がU字に折り曲げられた状態で敷設される理由については、後述する。
【0015】
ここで、図3は、移動体1の漏洩同軸ケーブル2と漏洩伝送路6(6−1及び6−2)との関係を示す説明図である。図3は、例えば、無線搬送車等の車両を移動体1とする場合の断面図である。
【0016】
移動体1のU字の漏洩同軸ケーブル2は、線路間に敷設された漏洩伝送路6からの電波が到達できるように、移動体1の車両の底部に露出して設けられる。図3では、U字の漏洩同軸ケーブル2が、漏洩伝送路6を跨ぐ状態で移動体1車両の底部に敷設される。なお、移動体1のU字の漏洩同軸ケーブル2の敷設態様は、漏洩伝送路6の電波到達範囲内であれば、どのように敷設されてもよい。
【0017】
移動体1の無線通信端末3は、漏洩伝送路6−1及び6−2を介して基地局5と通信を行う送受信端末であり、既存のシステムで用いられるものを適用することができる。
【0018】
基地局5は、移動体1が備える無線通信端末3との間で通信を行う局装置であり、2本の漏洩伝送路6−1及び6−2のそれぞれの一端に接続されるものである。つまり、基地局5は、2本の漏洩伝送路6−1及び6−2の両方と接続するものである。このように、複数の漏洩伝送路6−1及び6−2に基地局5が接続することにより、1台の基地局5が漏洩伝送路6−1及び6−2を介して無線通信する通信エリアを拡大することができる。勿論、基地局5は3本以上の漏洩伝送路と接続するようにしてもよい。
【0019】
各漏洩伝送路6−1及び6−2は、上記のように一端には共通の基地局5が接続され、他端には終端器7−1及び7−2が接続されるものである。各漏洩伝送路6−1及び6−2は、例えば漏洩同軸ケーブル(LCX)や、漏洩導波管など既存のシステムに使用される漏洩伝送路を適用することができる。
【0020】
また、2本の漏洩伝送路6−1及び6−2は、基本的にはそれぞれ同種類の漏洩伝送路を用いるが、使用態様によっては異なる種類の漏洩伝送路を適用してもよい。さらに、各漏洩伝送路6−1及び6−2は、移動体1が備える漏洩同軸ケーブル(LCX)2と同種類のものであってもよいし、又は異なるものであってもよい。
【0021】
第1の実施形態において、基地局5に接続する2本の漏洩伝送路6−1及び6−2は、基地局5から反対方向に水平に延設されるものとして説明する。なお、各漏洩伝送路6−1及び6−2が反対方向に水平に延設される場合に限らず、ある漏洩伝送路に対して垂直方向に別の漏洩伝送路を延設したり、又はある漏洩伝送路に対して所定の角度をもって別の漏洩伝送路を延設したりしてもよい。
【0022】
ここで、一般に、基地局5に接続する漏洩伝送路6から輻射される電波は、基地局5から見て、ある角度方向に輻射するという特性がある。従って、図1及び図2のように、2本の漏洩伝送路6−1及び6−2を反対方向に水平に延設した場合、各漏洩伝送路6−1及び6−2から輻射される電波は、基地局5を境にして、異なる方向に輻射される。すなわち、各漏洩伝送路6−1及び6−2から輻射される電波の輻射方向は、基地局5を境にして異なることとなる。
【0023】
そのため、例えば特許文献1に記載技術のように、移動体側漏洩同軸ケーブルが漏洩伝送路6に平行な状態で敷設されている場合、2本の漏洩伝送路を基地局からそれぞれ延設した際、移動体側漏洩同軸ケーブルの電波輻射方向が基地局に接続した漏洩伝送路の電波輻射方向と対向しない区間が生じ、良好な通信ができないこととなり得る。
【0024】
図4は、移動体1の漏洩同軸ケーブル8が漏洩伝送路6(6−1及び6−2)に平行に敷設されている場合に、移動体1が漏洩伝送路6−1及び6−2に沿って移動したときの電波の輻射方向の変化を示す図である。
【0025】
図4において、基地局5に接続された一方の漏洩伝送路6−1と他方の漏洩伝送路2からなる固定側漏洩伝送路において、一方の漏洩伝送路6−1に沿って基地局5に近づく方向に移動体1が移動する場合、移動体1の漏洩同軸ケーブル8からの電波輻射方向は漏洩伝送路6−1からの電波輻射方向と対向するから、この区間での移動体1の漏洩同軸ケーブル8と漏洩伝送路6−1の指向性はあう。その後、基地局5を通り越し、他方の漏洩伝送路6−2に沿って基地局5から離れていく方向に移動体1が移動する場合、移動体1の漏洩同軸ケーブル8からの電波輻射方向は漏洩伝送路6−2からの電波輻射方向と非対向となり、この区間での移動体1の漏洩同軸ケーブル8と漏洩伝送路6−2の指向性はあわない。
【0026】
図5及び図6は、移動体1の漏洩同軸ケーブルの受信レベルを説明する説明図である。なお、図5及び図6では、説明便宜上、移動体1が漏洩伝送路6と平行する漏洩同軸ケーブル8を備えた場合の受信レベルの変化を示す。
【0027】
図5は、漏洩伝送路6からの電波輻射方向に対して、漏洩同軸ケーブル8の電波輻射方向が対向する場合を示す図である。また、図6は、漏洩伝送路6からの電波輻射方向に対して、漏洩同軸ケーブル8の電波輻射方向が対向しない場合を示す図である。
【0028】
図5(A)及び図6(A)を参照すると、図5(A)のように漏洩同軸ケーブル8の電波輻射方向が漏洩伝送路6の電波輻射方向と対向する場合、漏洩伝送路6に平行に移動体1が移動するときでも、移動体1における受信レベルは比較的高く、かつ、受信レベルの変動幅は比較的少ない。これに対して、図6(A)のように漏洩同軸ケーブル8の電波輻射方向が漏洩伝送路6の電波輻射方向と対向しない場合、移動体1における受信レベルは比較的低く、かつ、受信レベルの変動幅は比較的大きくなる。
【0029】
従って、図4において、漏洩伝送路6−1を介する区間では、移動体1の漏洩同軸ケーブル8の電波輻射方向が漏洩伝送路6−1の電波輻射方向と対向するので、良好な通信が可能であるが、漏洩伝送路6−2を介する区間では、移動体1の漏洩同軸ケーブル8の電波輻射方向が漏洩伝送路6−2の電波輻射方向と対向しないので、通信損失が大きくなり得る。
【0030】
そこで、第1の実施形態では、図1及び図2に示すように、移動体1の無線通信端末3に接続する漏洩同軸ケーブル2は、1本の漏洩同軸ケーブルをU字に折り曲げて敷設するものとする。このように、漏洩同軸ケーブル2をU字に折り曲げて敷設すると、漏洩伝送路6に平行な2つの長手部分ができる。
【0031】
そのため、図1に示す漏洩伝送路6−1の区間では、無線通信端末3に近い一方の長手部分である漏洩同軸ケーブル2の電波輻射方向が漏洩伝送路6−1の電波輻射方向と対向するので移動体1の無線通信端末3と基地局5は良好な通信を行うことができ、図2に示す漏洩伝送路6−2の区間では、終端器4に近い他方の長手部分である漏洩同軸ケーブル2の電波輻射方向が漏洩伝送路6−2の電波輻射方向と対向するので移動体1の無線通信端末3と基地局5は良好な通信を行うことができる。
【0032】
なお、図1及び図2では、基地局5に接続する漏洩伝送路6−1及び6−2はそれぞれ水平に反対方向に延設する場合を例示し、この場合には、移動体1の漏洩同軸ケーブル2をU字に折り曲げることで対応できたが、別の構成として、例えば、基地局5に接続する2本の漏洩伝送路が垂直に延設する場合には、移動体1の漏洩同軸ケーブルをL字に折り曲げて敷設することで対応できる。
【0033】
すなわち、基地局5からの漏洩伝送路の延設形態に応じて、移動体1の漏洩同軸ケーブル2を敷設する形状を適宜変えるようにしてもよい。
【0034】
第1の実施形態によれば、基地局5から複数の漏洩伝送路6を延設することにより、漏洩伝送路6を介した無線通信の通信エリアを拡大させることができる。
【0035】
また、第1の実施形態によれば、基地局5が接続する漏洩伝送路6の延設形態に合わせて、移動体1の漏洩同軸ケーブル2の形状を調整して設けることにより、基地局5から複数の漏洩伝送路6が延設された場合でも、漏洩伝送路6の電波輻射方向を合わせることができるので、良好な通信を行うことができる。
【0036】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の無線通信システム及び無線通信端末の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0037】
上述した第1の実施形態の無線通信システムでは、基地局から複数の漏洩伝送路が延設されており、かつ、移動体にU字に折り曲げた漏洩同軸ケーブルを設けるものであった。
【0038】
これに対して、第2の実施形態の無線通信システムは、基地局から複数の漏洩伝送路が延設する場合に、移動体のアンテナ部分である漏洩同軸ケーブル部分の態様が第1の実施形態と異なる。
【0039】
図7及び図8は、第2の実施形態の無線通信システム10−2の構成を示すブロック図である。第2の実施形態の無線通信システム10−2においても、第1の実施形態と同一の名称を使用している構成要素の機能は第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0040】
図7及び図8において、第1の実施形態と同様に、基地局5は2本の漏洩伝送路6−1及び6−2と接続するものであり、各漏洩伝送路6−1及び6−2は基地局5を境にして反対方向に水平に延設されているものとする。
【0041】
また、漏洩伝送路6−1及び6−2に沿って平行に移動する移動体1は、漏洩同軸ケーブル21及び22、無線通信端末3、終端器4、コネクタ51及び52、同軸ケーブル53、を少なくとも有して構成される。
【0042】
漏洩同軸ケーブル21は、一端には無線通信端末3が接続されており、他端にはコネクタ51を介して同軸ケーブル53が接続されている。また、漏洩同軸ケーブル22は、一端にはコネクタ52を介して同軸ケーブル53が接続されており、他端には終端器4が接続されている。
【0043】
また、漏洩同軸ケーブル21と漏洩同軸ケーブル22とは同軸ケーブル53を介して接続されている。さらに、漏洩同軸ケーブル21及び漏洩同軸ケーブル22はそれぞれ、漏洩伝送路6−1及び6−2に対して平行に設けられるものである。
【0044】
つまり、第1の実施形態では、移動体1の漏洩同軸ケーブルをU字に折り曲げて設けたのに対し、第2の実施形態では、同軸ケーブル53を介して、漏洩同軸ケーブル21及び漏洩同軸ケーブル22を、漏洩伝送路6−1及び6−2に平行に設けるようにする。
【0045】
これにより、第1の実施形態と同様に、漏洩伝送路6−1及び6−2の電波輻射方向に漏洩同軸ケーブル21又は漏洩同軸ケーブル22の電波輻射方向を対向させることができるので良好な通信を行うことができる。また、漏洩伝送路6の延設形態に応じて移動体1の漏洩同軸ケーブルの敷設形態を設定する必要があるが、同軸ケーブル53を介することで、移動体1の漏洩同軸ケーブルの設置態様を、より自由度をもって簡単に設定することができる。
【0046】
(C)第3の実施形態
続いて、本発明の無線通信システム及び無線通信端末の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
上述した第1の実施形態の無線通信システム10−1は、基地局5から複数の漏洩伝送路が延設されており、かつ、移動体にU字に折り曲げた漏洩同軸ケーブルを設けるものであった。
【0048】
これに対して、第3の実施形態の無線通信システム10−3は、基地局から複数の漏洩伝送路が延設する場合に、移動体において、無線通信端末のアンテナ部分として、無線通信端末から複数の漏洩同軸ケーブルを反対方向に水平に設けて漏洩伝送路とほぼ平行になるように設けたものである。
【0049】
図9及び図10は、第3の実施形態の無線通信システム10−3の構成を示すブロック図である。第3の実施形態の無線通信システム10−3において、第1の実施形態の名称を使用している構成要素の機能は第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0050】
図9及び図10において、第1の実施形態と同様に、基地局5は2本の漏洩伝送路6−1及び6−2と接続するものであり、各漏洩伝送路6−1及び6−2は基地局5を境にして反対方向に水平に延設されているものとする。
【0051】
また、漏洩伝送路6−1及び6−2に沿ってほぼ平行に移動する移動体1は、漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24、無線通信端末3、終端器41及び終端器42、を少なくとも有して構成される。
【0052】
移動体1において、無線通信端末3は、漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24と接続するものである。無線通信端末3は、2本の漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブルの受信電波を調整する合成器31(例えば、合成ダイバーシティなど)を備える。これにより、2本の漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24の受信電波を合成することができるので、受信レベルの揺れを少なくすることができる。なお、合成器31の技術として、種々の既存技術を広く適用することができる。
【0053】
漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24は、一端には無線通信端末3が接続されており、他端には終端器41及び終端器42が接続されている。また、漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24は、反対方向に水平に設けられており、漏洩伝送路6−1及び6−2に平行に設けられている。
【0054】
第3の実施形態によれば、移動体1の無線通信端末3に、2本の漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24を反対方向に水平に設置するようにするため、移動体1の一方の漏洩同軸ケーブルが一方の漏洩伝送路6の電波輻射方向と対向し、移動体1が基地局5を通過後は、移動体1の他方の漏洩同軸ケーブルが他方の漏洩伝送路6の電波輻射方向と対向するから、良好な通信を行なうことができる。
【0055】
なお、第3の実施形態において、漏洩同軸ケーブル23及び漏洩同軸ケーブル24のそれぞれが、第2の実施形態のように、同軸ケーブルを介して反対方向に平行に設置されたアンテナ構造をとるものを適用してもよい。
【0056】
(D)第4の実施形態
次に、本発明の無線通信システム及び無線通信端末の第4の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0057】
上述した第1の実施形態の無線通信システム10−1は、基地局5から複数の漏洩伝送路が延設されており、かつ、移動体1にU字に折り曲げた漏洩同軸ケーブル2を設けるものであった。
【0058】
これに対して、第4の実施形態の無線通信システム10−4は、基地局5から複数の漏洩伝送路が延設する場合に、移動体において、無線通信端末のアンテナ部分として、それぞれ指向性が異なる複数の指向性アンテナを設けたものである。
【0059】
図11及び図12は、第4の実施形態の無線通信システム10−4の構成を示すブロック図である。第4の実施形態の無線通信システム10−4において、第1の実施形態の名称を使用している構成要素の機能は第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0060】
図11及び図12において、第1の実施形態と同様に、基地局5は2本の漏洩伝送路6−1及び6−2と接続するものであり、各漏洩伝送路6−1及び6−2は基地局5を境にして反対方向に水平に延設されているものとする。
【0061】
また、漏洩伝送路6−1及び6−2に沿ってほぼ平行に移動する移動体1は、指向性アンテナ25及び指向性アンテナ26、無線通信端末3、を少なくとも有して構成される。
【0062】
移動体1において、無線通信端末3は、指向性アンテナ25及び指向性アンテナ26と接続するものである。無線通信端末3は、2個の指向性アンテナ25及び指向性アンテナ26の受信電波を調整する合成器31(例えば、合成ダイバーシティなど)を備える。これにより、2個の指向性アンテナ25及び指向性アンテナ26の受信電波を合成することができるので、受信レベルの揺れを少なくすることができる。なお、合成器31は、第3の実施形態と同様に種々の既存技術を広く適用することができる。
【0063】
指向性アンテナ25及び指向性アンテナ26は、それぞれ指向性が異なるアンテナ部であり、例えば、平面アンテナ、八木アンテナなどを適用することができる。
【0064】
第4の実施形態において、指向性アンテナ25は、漏洩伝送路6−1の電波輻射方向に対向する指向性を有するものであり、また指向性アンテナ26は、漏洩伝送路6−2の電波輻射方向に対向する指向性を有するものである。
【0065】
第1〜第3の実施形態では、移動体1が備えるアンテナ部分として漏洩同軸ケーブルを用いた場合を示したが、第4の実施形態では、複数の指向性アンテナを用いた場合である。そこで、指向性アンテナの指向性が、漏洩伝送路の電波輻射方向と対向する場合と対向しないの場合との受信レベルの違いについて図13及び図14を参照しながら説明する。
【0066】
図13及び図14は、移動体1の指向性アンテナ9での受信レベルを説明する説明図である。なお、図13及び図14では、説明便宜上、移動体1が1個の指向性アンテナを備えた場合の受信レベルの変化を示す。
【0067】
図13は、指向性アンテナ9の指向性が漏洩伝送路6からの電波輻射方向に対向する場合を示す図である。また、図14は、指向性アンテナ9の指向性が漏洩伝送路6からの電波輻射方向に対向しない場合を示す図である。
【0068】
図13(A)及び図14(A)を参照すると、図13(A)のように指向性アンテナ9の指向性が漏洩伝送路6の電波輻射方向と対向する場合、漏洩伝送路6に平行に移動体1が移動するときでも、移動体1における受信レベルは比較的高く、かつ、受信レベルの変動幅は比較的少ない。これに対して、図14(A)のように指向性アンテナ9の指向性が漏洩伝送路6の電波輻射方向と対向しない場合、受信レベルが比較的低く、かつ、受信レベルの変動幅は比較的大きくなる。
【0069】
従って、第4の実施形態のように、漏洩伝送路6−1及び漏洩伝送路6−2のそれぞれの電波輻射方向に対向する指向性を有する2個の指向性アンテナ25及び26を備えることにより、漏洩伝送路6−1を介する区間では移動体1の指向性アンテナ25の指向性が漏洩伝送路6−1の電波輻射方向と対向し、漏洩伝送路6−2を介する区間では移動体1の指向性アンテナ26の指向性が漏洩伝送路6−2の電波輻射方向と対向するので、良好な通信が可能となる。
【0070】
なお、図11及び図12では、2個の指向性アンテナ25及び26を備える場合を例示したが、漏洩伝搬路6−1及び6−2の延設状況や適用状況等に応じて、3個以上の指向性アンテナを備えるようにしてもよい。
【0071】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その1)。
【図2】第1の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その2)。
【図3】第1の実施形態の移動体の漏洩伝送路と漏洩伝送路との関係を示す説明図である。
【図4】従来において漏洩伝送路を有する移動体が漏洩伝送路に沿って移動した場合の電波の輻射方向の変化を示す図である。
【図5】移動体の漏洩伝送路の指向性が漏洩伝送路の電波輻射方向と対向する場合を示す図である。
【図6】移動体の漏洩伝送路の指向性が漏洩伝送路の電波輻射方向と対向しないの場合を示す図である。
【図7】第2の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その1)。
【図8】第2の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その2)。
【図9】第3の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その1)。
【図10】第3の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その2)。
【図11】第4の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その1)。
【図12】第4の実施形態の無線通信システムの構成を示す構成図である(その2)。
【図13】移動体の指向性アンテナの指向性が漏洩伝送路の電波輻射方向と対向する場合を示す図である。
【図14】移動体の指向性アンテナの指向性が漏洩伝送路の電波輻射方向と対向しない場合を示す図である。
【図15】従来の無線通信システムの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0073】
10−1〜10−4…無線通信システム、1…移動体、2、21、22、23、24…漏洩伝送路、25及び26…指向性アンテナ、3…無線通信端末、31…合成器、4…終端器、51及び52…コネクタ、53…同軸ケーブル、5…基地局、6−1及び6−2…漏洩伝送路、7−1及び7−2…終端器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、
上記基地局から延設されるものであって、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路と、
上記各漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得るものであって、上記各漏洩伝送路から電波が輻射される輻射方向に対向する輻射角度で、電波を放射又は捕捉するアンテナ部を有する無線通信端末と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記アンテナ部が、電波を輻射する上記複数の漏洩伝送路のそれぞれの輻射方向に対向可能なように、折り曲げられた端末側漏洩伝送路で構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記アンテナ部が、電波を輻射する上記複数の漏洩伝送路のそれぞれの輻射方向に対向する輻射角度をもつ複数の端末側漏洩伝送路を有し、これら複数の端末側漏洩伝送路がそれぞれ有線伝送路で結合されるものであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
上記アンテナ部が、電波を輻射する上記複数の漏洩伝送路のそれぞれの輻射方向に対向する輻射角度をもつものであって、それぞれ上記無線通信端末から接続される複数の端末側漏洩伝送路で構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
上記アンテナ部が、電波を輻射する上記複数の漏洩伝送路のそれぞれの輻射方向に対向する指向性をもつ複数の指向性アンテナで構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
上記無線通信端末が合成器を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
上記アンテナ部が、
上記複数の漏洩伝送路のうち、ある上記漏洩伝送路に沿って上記基地局に近づく方向に移動する際に、当該漏洩伝送路の電波輻射方向に対向する輻射角度をもつ端末側漏洩伝送路と、
別の上記漏洩伝送路に沿って上記基地局から離れる方向に移動する際に、当該別の漏洩伝送路の電波輻射方向に対向する輻射角度をもつ端末側漏洩伝送路と
を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】
基地局から延設され、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得る無線通信端末において、
上記各漏洩伝送路から電波が輻射される輻射方向に対向する輻射角度で、電波を放射又は捕捉するアンテナ部を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項9】
基地局から延設され、それぞれの長手方向に対してほぼ等しい角度で電波を輻射する複数の漏洩伝送路とほぼ平行に移動し得る無線通信端末において、
上記複数の漏洩伝送路のうち、ある上記漏洩伝送路に沿って上記基地局に近づく方向に移動する際に、当該漏洩伝送路の電波輻射方向に対向する輻射角度をもつ端末側漏洩伝送路と、別の上記漏洩伝送路に沿って上記基地局から離れる方向に移動する際に、当該別の漏洩伝送路の電波輻射方向に対向する輻射角度をもつ端末側漏洩伝送路とを有するアンテナ部を備えることを特徴とする無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−130701(P2009−130701A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304600(P2007−304600)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】