説明

無線通信システム

【課題】ネットワークにおけるスケーラビリティおよびスループットを向上可能な無線通信システムを提供する。
【解決手段】端末装置2〜4は、タイミングt1でPollフレームをアクセスポイント1から受信し、Pollフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)をそれぞれ計測する。そして、端末装置2,3は、それぞれ、受信SNR(=γ’,γ’)がしきい値γ以上であることを検知し、例えば、“6”,“8”のバックオフタイマーを設定する。その後、端末装置2は、バックオフタイマーが“6”から“0”になると、パケットPAをアクセスポイント1へ送信し、端末装置3は、無線装置2からのパケットPAを受信してパケットPBの送信を停止する。また、端末装置4は、受信SNR(=γ’)がしきい値γよりも小さいことを検知し、パケットの送信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線LANは、学校やイベント会場などのホットスポットで広く使用されている。しかし、既存の無線LANにおいては、分散的な競争に基づくCSMA(Carrier Sense Multiple Access)がチャネルアクセス方式として使用されているので、一つのセルに収納される端末の個数が急増する場合、衝突が起こり易くなり、ネットワーク全体のスループットが低下する。
【0003】
一方、移動端末の移動や電波伝搬状態の瞬時的な変動により、移動端末とアクセスポイントとの間の無線リンクの品質が常に変動し、フェージングが発生する。無線リンクの品質が低下した場合、利用可能な通信レートが低下する。そして、そのような低い通信レートを有するリンクは、ネットワーク全体のスループットに深刻な悪影響を及ぼす。
【0004】
従来、ネットワークのスケーラビリティ(=端末の数が増加しても通信特性が低下しないこと)を向上させるために、バックオフタイマーを調整することによって、各無線装置が無線通信を行っていない期間と、パケットの衝突確率とを低減させる手法が提案されている(非特許文献1)。
【0005】
この低減手法は、パケットの衝突を減らすためにコンテンションウィンドウの最大値をIEEE802.11に定められた値よりも大きい値に設定する。また、この低減手法は、各無線装置が無線通信を行っていない期間を減らすために、各無線装置が無線通信を行っていない期間を連続的に検知すると、バックオフタイマーを指数的に減らす。
【0006】
また、ネットワークのスケーラビリティを向上させるために、適応的なキャリアセンスの方法が提案されている(非特許文献2)。このキャリアセンスの方法は、チャネルの利用効率を向上させるために、キャリアセンスの閾値を上げ、より多くの端末が同時に通信を行うようにするものである。無線LANにおいては、電波の干渉範囲は、通信範囲よりも広いため、一つのリンク上で無線通信が行われる場合、そのリンクに隣接する隣接空間に位置する他の端末は、チャネルを譲らなければならない。そこで、適応的なキャリアセンスの方法においては、キャリアセンスの閾値を上げ、閾値以下の強度の電波を検知しても、その検知した電波を無視することによって、より多くの端末が無線通信を行う。そして、適応的なキャリアセンスの方法においては、パケットの衝突が起こる場合、協力的な送信によってパケット到達率が確保される。
【0007】
更に、ネットワークのスケーラビリティを向上させるために、チャネル予約の方法が提案されている(非特許文献3)。そして、このチャネル予約によって、パケットの衝突を低減している。
【0008】
更に、ネットワークのスループットを向上させるために、リンク品質の変動を考慮して、複数の端末が無線通信を行うスケジュールを決定する方法が提案されている(非特許文献4,5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Y. Kwon, Y. Fang, and H. Latchman, “A novel MAC protocol with fast collision resolution for wireless LANs,” in Proc. IEEE INFOCOM 2003, vol. 2, 2003, pp.853-862.
【非特許文献2】C. Yu, K. G. Shin, and L. Song, “Link-layer salvaging for making routing progress in mobile ad hoc networks,” in Proc. ACM MobiHoc 2005, 2005, pp.242-254.
【非特許文献3】C. R. Lin, and M. Gerla, “A synchronous multimedia multihop wireless networks,” in Proc. INFOCOM’97, 1997, Vol. 1, pp. 118-125.
【非特許文献4】X. Qin and R. Berry, “Exploiting multiuser diversity for medium access control in wireless networks,” in Proc. IEEE INFOCOM 2003, vol. 2, 2003, pp. 1084-1094.
【非特許文献5】S. Adireddy and L. Tong, “Exploiting decentralized channel state information for random access,” IEEE Trans. Inf. Theory, vol. 51, pp. 537-561, Feb. 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、非特許文献1〜3においては、パケットを送信するときのレートが制御されていないため、ネットワークのスループットを向上させることが困難であるという問題がある。
【0011】
また、非特許文献4,5に開示された方法をアクセスポイントから端末へのダウンリンクに適用することは困難である。その結果、アクセスポイントの通信範囲内に存在する端末の数が増加すると、アクセスポイントから端末への通信特性は、端末からアクセスポイントへの通信特性よりも低下する。従って、ネットワークのスケーラビリティが低下するという問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ネットワークにおけるスケーラビリティおよびスループットを向上可能な無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明によれば、無線通信システムは、第1の無線装置と、n(nは正の整数)個の第2の無線装置とを備える。n個の第2の無線装置は、第1の無線装置の通信範囲内に配置され、各々が第1の無線装置と無線通信を行う。そして、n個の第2の無線装置の各々は、第1の無線装置からパケットを受信したときの雑音パワーに対する受信信号強度の比である信号対雑音比を正規化した正規化値がしきい値以上であり、かつ、バックオフ時間が第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、パケットを第1の無線装置へ送信する。この場合、しきい値は、第1の無線装置の通信範囲内においてパケットの衝突を回避する確率が最も大きく、かつ、リンク品質が基準のリンク品質よりも良い第2の無線装置の個数が最大となるときの信号対雑音比の正規化値である。
【0014】
好ましくは、第1の無線装置は、自己にアクセスする第2の無線装置の個数に基づいてしきい値を演算し、自己の通信範囲内において無線通信が行われていない一定の空き期間を検知すると、n個の第2の無線装置のうちパケットの送信先となる第2の無線装置を示す宛先情報と、演算したしきい値とを含む制御フレームをn個の第2の無線装置へ送信する。n個の第2の無線装置の各々は、第1の無線装置から制御フレームを受信したときの信号対雑音比の正規化値を演算し、その演算した正規化値が制御フレームに含まれるしきい値以上であり、かつ、バックオフ時間が第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、データからなるパケットを第1の無線装置へ送信する。
【0015】
好ましくは、n個の第2の無線装置の各々は、制御フレームを受信したときの瞬時の信号対雑音比に対応する送信レートでパケットを第1の無線装置へ送信する。
【0016】
好ましくは、n個の第2の無線装置の各々は、演算した正規化値がしきい値以上であり、かつ、自己のバックオフ時間が経過するまでに他の第2の無線装置が第1の無線装置へパケットを送信したとき、第1の無線装置へのパケットの送信を停止するとともにバックオフ時間を再度設定し、その設定したバックオフ時間が第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、第1の無線装置へパケットを送信する。
【0017】
好ましくは、n個の第2の無線装置の各々は、演算した正規化値がしきい値よりも小さいとき、第1の無線装置から制御フレームを再度受信するまで第1の無線装置へのパケットの送信を停止する。
【0018】
好ましくは、第1の無線装置は、自己にアクセスする第2の無線装置の個数に基づいてしきい値を演算し、自己の通信範囲内において無線通信が行われていない一定の空き期間を検知すると、n個の第2の無線装置のうちパケットの送信先となる第2の無線装置を示す宛先情報と、演算したしきい値とを含む第1の制御フレームをn個の第2の無線装置へ送信し、n個の第2の無線装置のいずれかからパケットの送信要求を示す第2の制御フレームを受信すると、データからなるパケットを送信する。n個の第2の無線装置の各々は、第1の無線装置から第1の制御フレームを受信したときの正規化値を演算し、その演算した正規化値が第1の制御フレームに含まれるしきい値以上であり、かつ、第1の無線装置が自己宛てのパケットを保持しており、更に、バックオフ時間が第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、第2の制御フレームを第1の無線装置へ送信するとともに、第1の無線装置からパケットを受信する。
【0019】
好ましくは、第1の無線装置は、第2の制御フレームを受信したときの瞬時の信号対雑音比に対応する送信レートでパケットを送信する。
【0020】
好ましくは、n個の第2の無線装置の各々は、演算した正規化値がしきい値以上であり、かつ、自己のバックオフ時間が経過するまでに他の第2の無線装置が第1の無線装置へ第2の制御フレームを送信したとき、第1の無線装置への第2の制御フレームの送信を停止するとともにバックオフ時間を再度設定し、その設定したバックオフ時間が第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、第1の無線装置へ第2の制御フレームを送信するとともに第1の無線装置からパケットを受信する。
【0021】
好ましくは、n個の第2の無線装置の各々は、演算した正規化値がしきい値よりも小さいとき、第1の無線装置から第1の制御フレームを再度受信するまで第1の無線装置への第2の制御フレームの送信を停止する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、n個の第2の無線装置の各々は、パケットの衝突を回避しながら、基準のリンク品質(=しきい値からなる信号対雑音比の正規化値を有するリンクのリンク品質)以上のリンク品質を有するリンクを用いてパケットを第1の無線装置へ送信する。つまり、しきい値以上の正規化値を有する第2の無線装置は、第1の無線装置の通信範囲内に存在する端末装置の数が増加しても、パケットの衝突を回避しながら、基準のリンク品質以上のリンク品質でパケットを第1の無線装置へ送信する。
【0023】
従って、この発明によれば、端末装置の数が増えても、通信特性を低下させないというスケーラビリティを向上できるとともに、スループットを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態による無線通信システムの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すアクセスポイントの構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示す端末装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】Pollフレームの構成図である。
【図5】受信SNRと送信レートとの関係を示す図である。
【図6】端末装置からアクセスポイントへパケットを送信する方法を説明するための図である。
【図7】アクセスポイントから端末装置へパケットを送信する方法を説明するための図である。
【図8】アップリンクにおける動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】ダウンリンクにおける動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】アップリンクにおけるスループットと端末装置の個数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態による無線通信システムの構成を示す概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による無線通信システム10は、アクセスポイント1と、端末装置2〜4とを備える。
【0027】
アクセスポイント1および端末装置2〜4は、無線通信空間に配置される。端末装置2〜4の各々は、静止している端末装置、または移動可能な端末装置からなる。そして、端末装置2〜4は、アクセスポイントの通信範囲内に配置される。
【0028】
アクセスポイント1および端末装置2〜4は、同じ周波数チャネルを用いて後述する方法によって相互に無線通信を行う。
【0029】
図2は、図1に示すアクセスポイント1の構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して、アクセスポイント1は、アンテナ11と、送受信手段12と、制御手段13と、バッファ14と、通信手段15とを含む。
【0030】
アンテナ11は、パケット、Replyフレーム、PollフレームおよびACKフレームのいずれかを送受信手段12から受け、その受けたパケット、Replyフレーム、PollフレームおよびACKフレームのいずれかを端末装置2〜4へ送信する。
【0031】
また、アンテナ11は、Requestフレーム、CTSフレーム、パケットおよびACKフレームのいずれかを端末装置2〜4から受信し、その受信したRequestフレーム、CTSフレーム、パケットおよびACKフレームのいずれかを送受信手段12へ出力する。
【0032】
送受信手段12は、ReplyフレームまたはPollフレームを制御手段13から受け、その受けたReplyフレームまたはPollフレームをアンテナ11を介して端末装置2〜4へ送信する。
【0033】
また、送受信手段12は、ACKフレームを通信手段15から受け、その受けたACKフレームをアンテナ11を介して端末装置2〜4へ送信する。
【0034】
更に、送受信手段12は、Requestフレームをアンテナ11から受けると、その受けたRequestフレームを制御手段13へ出力する。
【0035】
更に、送受信手段12は、パケットまたはACKフレームをアンテナ11から受けると、その受けたパケットまたはACKフレームを通信手段15へ出力する。
【0036】
更に、送受信手段12は、アンテナ11がCTSフレームを受信したときの雑音パワーに対する受信信号強度の比である信号対雑音比を検出し、その検出した信号対雑音比に対応する通信レートを後述する方法によって検出する。そして、送受信手段12は、CTSフレームをアンテナ11から受けると、その受けたCTSフレームに含まれるMAC(Media Access Control)アドレスを宛先とするパケットをバッファ14から取り出す。そうすると、送受信手段12は、その取り出したパケットを信号対雑音比に対応する通信レートでCTSフレームの送信元(端末装置2〜4のいずれか)へ送信する。
【0037】
更に、送受信手段12は、アンテナ11を介してACKフレームを端末装置(端末装置2〜4のいずれか)から受信した後、一定期間(=Nスロット、Nは正の整数)、CTSフレームを端末装置(端末装置2〜4のいずれか)から受信しないとき、またはACKフレームを端末装置(端末装置2〜4のいずれか)へ送信してから一定期間(=Nスロット)、端末装置(端末装置2〜4のいずれか)からパケットを受信しないとき、Pollフレームの送信要求を生成して制御手段13へ出力する。
【0038】
制御手段13は、送受信手段12からRequestフレームを受けると、その受けたRequestフレームに含まれるMACアドレスを取り出す。そして、制御手段13は、その取り出したMACアドレスによって指定された端末装置(端末装置2〜4のいずれか)に参加IDを割り当てる。この参加IDは、1,2,3,・・・の整数値からなる。
【0039】
制御手段13は、参加IDを割り当てると、MACアドレスと参加IDとを対応付けて管理する。
【0040】
その後、制御手段13は、参加IDを含むReplyフレームを生成し、その生成したReplyフレームをRequestフレームの送信元(端末装置2〜4のいずれか)へ送受信手段12およびアンテナ11を介して送信する。
【0041】
また、制御手段13は、Requestフレームを送受信手段12から受ける度に、アクセスポイント1へアクセスする端末装置の数を“1”だけインクリメントする。そして、制御手段13は、最終的に、アクセスポイント1へアクセスする端末装置の総数M(Mは正の整数)を取得する。
【0042】
そうすると、制御手段13は、その取得した総数Mに基づいて、しきい値γを後述する方法によって演算する。このしきい値γについて、後に詳細に説明する。その後、制御手段13は、バッファ14を参照して、端末装置2〜4宛てのパケットの有無を検索する。そして、制御手段13は、端末装置2〜4宛てのパケットの有無を示すビット値と、しきい値γとを含むPollフレームを生成し、その生成したPollフレームを送受信手段12およびアンテナ11を介して端末装置2〜4へ送信する。
【0043】
更に、制御手段13は、送受信手段12からのPollフレームの送信要求に応じて、Pollフレームを再度生成し、その生成したPollフレームを送受信手段12およびアンテナ11を介して端末装置2〜4へ送信する。
【0044】
バッファ14は、通信手段15からパケットを受け、その受けたパケットを一定時間保持する。
【0045】
通信手段15は、外部のインターネットに接続されている。そして、通信手段15は、インターネットからパケットを受け、その受けたパケットをバッファ14へ格納する。
【0046】
また、通信手段15は、端末装置(端末装置2〜4のいずれか)からのパケットを送受信手段12から受け、その受けたパケットをインターネットへ送信するとともに、ACKフレームを生成して送受信手段12へ出力する。
【0047】
図3は、図1に示す端末装置2の構成を示す機能ブロック図である。図3を参照して、端末装置2は、アンテナ21と、送受信手段22と、バッファ23と、通信手段24とを含む。
【0048】
アンテナ21は、Requestフレーム、CTSフレーム、パケットおよびACKフレームのいずれかを送受信手段22から受け、その受けたRequestフレーム、CTSフレーム、パケットおよびACKフレームのいずれかをアクセスポイント1へ送信する。
【0049】
また、アンテナ21は、Replyフレーム、Pollフレーム、パケットおよびACKフレームのいずれかをアクセスポイント1から受信し、その受信したReplyフレーム、Pollフレーム、パケットおよびACKフレームのいずれかを送受信手段22へ出力する。
【0050】
送受信手段22は、アクセスポイント1へアクセスするとき、端末装置2のMACアドレスを含むRequestフレームを生成し、その生成したRequestフレームをアンテナ21を介してアクセスポイント1へ送信する。
【0051】
また、送受信手段22は、Replyフレームをアンテナ21から受けると、その受けたReplyフレームに含まれる参加IDを取り出し、その取り出した参加IDを端末装置2のアクセスポイント1における識別子として管理する。
【0052】
更に、送受信手段22は、アンテナ21がPollフレームを受信したときの信号対雑音比、またはアンテナ21がACKフレームを受信したときの信号対雑音比を検出する。そして、送受信手段22は、Pollフレームをアンテナ21から受けると、その受けたPollフレームを管理するとともに、Pollフレームに含まれるしきい値γを取り出す。そうすると、送受信手段22は、その検出した信号対雑音比、しきい値γ、およびPollフレームに基づいて、後述する方法によって、バッファ23からパケットを取り出してアクセスポイント1へ送信する。
【0053】
更に、送受信手段22は、その検出した信号対雑音比、しきい値γ、およびPollフレームに基づいて、後述する方法によって、CTSフレームをアクセスポイント1へ送信する。
【0054】
更に、送受信手段22は、アンテナ21を介してアクセスポイント1からパケットを受信し、その受信したパケットを通信手段24へ出力する。
【0055】
更に、送受信手段22は、ACKフレームを通信手段24から受け、その受けたACKフレームをアンテナ21を介してアクセスポイント1へ送信する。
【0056】
バッファ23は、通信手段24からパケットを受け、その受けたパケットを一定時間保持する。
【0057】
通信手段24は、上位層のアプリケーションからパケットを受け、その受けたパケットをバッファ23に格納する。
【0058】
また、通信手段24は、送受信手段22からパケットを受け、その受けたパケットを上位層のアプリケーションへ出力するとともに、ACKフレームを生成して送受信手段22へ出力する。
【0059】
なお、図1に示す端末装置3,4の各々も、図3に示す端末装置2と同じ構成からなる。
【0060】
アクセスポイント1におけるしきい値γの算出方法について説明する。アクセスポイント1の通信範囲内に存在する端末装置の総数をMとし、コンテンションウィンドウの最大値をNとする。
【0061】
この最大値Nは、無線通信システム10において、予め設計された値であり、アクセスポイント1の制御手段13は、最大値Nを予め保持している。また、アクセスポイント1の制御手段13は、アクセスポイント1にアクセスする端末装置の数を上述した方法によってカウントし、総数Mを取得する。
【0062】
アクセスポイント1の通信範囲内に配置されたM個の端末装置のうち、i(i=1〜Mの整数)番目の端末装置と、アクセスポイント1との間のリンクの瞬時の信号対雑音比SNR(Signal to Noise Ratio)をγ’とし、その平均値を/γ’とする。なお、この明細書においては、/Aは、Aの平均値を意味する。また、平均値/γ’は、例えば、1秒間における瞬時のγ’を平均することにより求められる。
【0063】
そして、γ=γ’/(/γ’)を正規化SNRと定義する。レイーレイフェージング(Rayleigh fading)の場合、全てのリンクの正規化SNRの分布は、f(γ)=exp(−γ)となり、同じである。
【0064】
その結果、アクセスポイント1の制御手段13は、次の式(1)〜(4)に従ってしきい値γを算出する。
【0065】
【数1】

【0066】
【数2】

【0067】
【数3】

【0068】
【数4】

【0069】
なお、式(1)におけるmは、m=1〜Mの整数である。また、式(1)におけるCは、M個の端末装置からm個の端末装置を抽出し、m個の端末装置からなる端末装置集合を構築する場合における異なる端末装置集合の数を意味する。例えば、C10=12×11×10/(3×2×1)=220である。
【0070】
式(1)のP(γ)は、M個の端末装置のうち、m個の端末装置における正規化SNR(=γ)がしきい値γよりも大きくなる確率である。即ち、P(γ)は、m個の端末装置におけるリンク品質が基準のリンク品質(=しきい値γからなる正規化SNRを有するリンクのリンク品質)よりも良くなる確率である。
【0071】
また、式(2)のP(γ)は、パケットの衝突が発生しない確率である。端末装置の個数mが1個である場合、パケットの衝突は発生しないので、P(γ)=1となる(式(2)の上段参照)。そして、端末装置の個数mが2以上である場合、パケットの衝突が発生しない確率P(γ)は、式(2)の下段によって表わされる。
【0072】
更に、式(3)のP(γ)は、パケットの衝突を回避しながらリンク品質が基準のリンク品質よりも良いリンクを有する端末装置との間で無線通信を行うことが可能な確率である。
【0073】
そして、式(4)において、式(3)のP(γ)が最大になるようにγを決定するのであるから、しきい値γは、パケットの衝突を回避する確率が最も大きく、かつ、リンク品質が基準のリンク品質(=しきい値γからなる正規化SNRを有するリンクのリンク品質)よりも良い端末装置の個数が最大となるときの正規化SNRである。
【0074】
このように、アクセスポイント1は、自己の通信範囲内に存在する端末装置2〜4の個数Mに基づいてしきい値γを演算する。
【0075】
従って、アクセスポイント1と端末装置2〜4との間の通信環境の実情に沿ってしきい値γを決定できる。
【0076】
図4は、Pollフレームの構成図である。図4を参照して、Pollフレームは、送信先(DST)と、送信元(SRC)と、しきい値γと、ビットマップBMとを含む。
【0077】
送信先(DST)は、Pollフレームの送信先からなる。Pollフレームは、アクセスポイント1の通信範囲内に存在する全ての端末装置へ送信されるので、送信先(DST)は、ブロードキャストアドレス=0xffffffffffffからなる。
【0078】
送信元(SRC)は、Pollフレームの送信元のMACアドレスからなる。Pollフレームは、アクセスポイント1によって送信されるので、送信元(SRC)は、アクセスポイント1のMACアドレスからなる。
【0079】
しきい値γは、上述した方法によって算出されたしきい値からなる。ビットマップBMは、アクセスポイント1から端末装置2〜4へのパケットの有無、即ち、ダウンリンクにおいて各端末装置2〜4へ送信すべきパケットの有無を示すビット値からなる。
【0080】
図4においては、ビットマップBMは、3行×16列のマップからなる。そして、第1行第1列のマス目、第1行第2列のマス目、・・・、第1行第16列のマス目、第2行第1列のマス目、第2行第2列のマス目、・・・、第2行第16列のマス目、第3行第1列のマス目、第3行第2列のマス目、・・・、第3行第16列のマス目は、それぞれ、参加ID=1〜48に対応付けられている。
【0081】
また、第1行第1列のマス目、第1行第2列のマス目、・・・、第1行第16列のマス目、第2行第1列のマス目、第2行第2列のマス目、・・・、第2行第16列のマス目、第3行第1列のマス目、第3行第2列のマス目、・・・、第3行第16列のマス目は、それぞれ、参加ID=1〜48が付与された端末装置へ送信すべきパケットをアクセスポイントが保持していれば、“1”が格納され、参加ID=1〜48が付与された端末装置へ送信すべきパケットをアクセスポイント1が保持していなければ、“0”が格納される。
【0082】
図4に示す例においては、第1行第1列のマス目、第1行第2列のマス目および第1行第3列のマス目は、“1”が格納され、第1行第4列のマス目〜第3行第16列のマス目は、“0”が格納されているので、アクセスポイント1は、参加ID=1〜3が付与された端末装置へ送信すべきパケットを保持し、参加ID=4〜48が付与された端末装置へ送信すべきパケットを保持していないことを表している。
【0083】
なお、ビットマップBMは、3行×16列以外のマップからなっていてもよい。
【0084】
図5は、受信SNRと送信レートとの関係を示す図である。受信SNR=γ’が閾値γと閾値γ01との間に存在する場合、1Mbpsの送信レートが割り当てられる。また、受信SNR=γ’が閾値γ01と閾値γ02との間に存在する場合、2Mbpsの送信レートが割り当てられる。更に、受信SNR=γ’が閾値γ02と閾値γ03との間に存在する場合、5.5Mbpsの送信レートが割り当てられる。更に、受信SNR=γ’が閾値γ03よりも大きい場合、11Mbpsの送信レートが割り当てられる。
【0085】
端末装置2〜4の送受信手段22は、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を保持している。そして、端末装置2〜4の送受信手段22は、アップリンクにおいて、PollフレームまたはACKフレームを受信したときの瞬時の受信SNR=γ’を計測し、その計測した受信SNR=γ’に対応する送信レートを図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して検出する。
【0086】
また、アクセスポイント1の送受信手段12は、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を保持している。そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、ダウンリンクにおいて、CTSフレームまたはパケットを受信したときの瞬時の受信SNR=γ’を計測し、その計測した受信SNR=γ’に対応する送信レートを図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して検出する。
【0087】
端末装置2〜4からアクセスポイント1へパケットを送信する方法について説明する。図6は、端末装置2〜4からアクセスポイント1へパケットを送信する方法を説明するための図である。
【0088】
アクセスポイント1の制御手段13は、上述した方法によってしきい値γを算出する。そして、アクセスポイント1の制御手段13は、バッファ14を参照して端末装置2〜4へ送信すべきパケットを保持していることを検知する。
【0089】
そうすると、アクセスポイント1の制御手段13は、DST=0xffffffffffff、SRC=MACadd_AP、しきい値γ、および端末装置2〜4へ送信すべきパケットを保持していることを示すビットマップBM=1,1,1,0,・・・,0を含むPollフレームを生成し、その生成したPollフレームを送受信手段12およびアンテナ11を介して端末装置2〜4へ送信する。この場合、ビットマップBMの第1行第1列のマス目、第1行第2列のマス目、および第1行第3列のマス目は、それぞれ、端末装置2〜4の参加IDに対応付けられているものとする。また、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、参加ID=1〜3をReplyフレームから取り出して保持しているものとする。
【0090】
端末装置2〜4の送受信手段22は、アクセスポイント1から送信されたPollフレームをタイミングt1で受信し、それぞれ、Pollフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を計測する。そして、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、その計測した受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新する。その後、端末装置2〜4の送受信手段22は、その更新した平均値/γ’,/γ’,/γ’を用いてそれぞれ正規化SNR(=γ,γ,γ)を求める。
【0091】
そうすると、端末装置2〜4の送受信手段22は、Pollフレームからしきい値γを取り出し、正規化SNR(=γ,γ,γ)をしきい値γと比較する。この場合、γ>γ,γ>γ,γ<γであるとする。
【0092】
端末装置4の送受信手段22は、γ<γであるので、次のチャネル取得競争に参加しない。
【0093】
一方、端末装置2,3の送受信手段22は、γ>γ,γ>γであるので、次のチャネル取得競争に参加し、それぞれ、バックオフタイマーを0〜Nの間の一様な乱数から選択した6,8に設定する。
【0094】
そして、端末装置2の送受信手段22は、タイミングt1の後、DIFS(Distributed Inter Frame Spacing)が経過すると、バックオフタイマーが“6”から“0”になるのを計測する。また、端末装置2の送受信手段22は、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0095】
端末装置3の送受信手段22も、同様に、タイミングt1の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“8”から“0”になるのを計測するとともに、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0096】
端末装置2の送受信手段22は、タイミングt2で、自己におけるバックオフタイマーが“0”になったことを検知し、パケットPAを送信レートrでアクセスポイント1へ送信する。
【0097】
そして、端末装置3の送受信手段22は、端末装置2から送信されたパケットPAを7番目のスロットで受信し、チャネルが使用状態であることを検知する。従って、端末装置3の送受信手段22は、パケットPBを送信しない。その結果、パケットPAとパケットPBとの衝突を回避できる。
【0098】
その後、アクセスポイント1の送受信手段12は、アンテナ11を介してパケットPAを端末装置2から受信し、その受信したパケットPAを通信手段15へ出力する。
【0099】
アクセスポイント1の通信手段15は、送受信手段12からパケットPAを受け、パケットPAを受理する。
【0100】
その後、アクセスポイント1の通信手段15は、SIFS(Short Inter Frame Spacing)が経過すると、タイミングt3でACKフレームを生成し、その生成したACKフレームを送受信手段12へ出力する。そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、通信手段15から受けたACKフレームをアンテナ11を介して端末装置2へ送信する。
【0101】
この場合、端末装置2〜4の全てがACKフレームを受信できるものとする。
【0102】
端末装置2〜4の送受信手段22は、タイミングt4でACKフレームを受信し、ACKフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)をそれぞれ計測する。そして、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、その計測した受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新するとともに、正規化SNR(=γ,γ,γ)を求める。
【0103】
そうすると、端末装置2〜4の送受信手段22は、タイミングt1で受信したPollフレームから取り出したしきい値γと、正規化SNR(=γ,γ,γ)とを比較する。この場合も、γ>γ,γ>γ,γ<γであるとする。
【0104】
端末装置4の送受信手段22は、γ<γであるので、次のチャネル取得競争に参加しない。
【0105】
一方、端末装置2,3の送受信手段22は、γ>γ,γ>γであるので、次のチャネル取得競争に参加し、それぞれ、バックオフタイマーを0〜Nの間の一様な乱数から選択した5,3に設定する。
【0106】
そして、端末装置3の送受信手段22は、タイミングt4の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“3”から“0”になるのを計測する。また、端末装置3の送受信手段22は、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0107】
端末装置2の送受信手段22も、同様に、タイミングt4の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“5”から“0”になるのを計測するとともに、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0108】
端末装置3の送受信手段22は、タイミングt5で、自己におけるバックオフタイマーが“0”になったことを検知し、パケットPBを送信レートrでアクセスポイント1へ送信する。
【0109】
そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、アンテナ11を介してパケットPBを端末装置3から受信し、その受信したパケットPBを通信手段15へ出力する。
【0110】
アクセスポイント1の通信手段15は、送受信手段12からパケットPBを受け、パケットPBを受理する。
【0111】
その後、アクセスポイント1の通信手段15は、SIFSが経過すると、タイミングt6でACKフレームを生成し、その生成したACKフレームを送受信手段12へ出力する。そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、通信手段15から受けたACKフレームをアンテナ11を介して端末装置3へ送信する。
【0112】
そうすると、端末装置2〜4の送受信手段22は、タイミングt7でACKフレームを受信し、ACKフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)をそれぞれ計測する。
【0113】
その後、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、その計測した受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新するとともに、正規化SNR(=γ,γ,γ)を求める。
【0114】
端末装置2〜4のうち、1回目のPollフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて求められた正規化SNR(=γ,γ,γ)がしきい値γよりも大きい端末装置2,3は、それぞれ、パケットPA,PBを既にアクセスポイント1へ送信している。
【0115】
その結果、タイミングt7以降、アクセスポイント1へパケットを送信する端末装置は存在しない。
【0116】
従って、アクセスポイント1の送受信手段12は、タイミングt7以降、DIFSが経過すると、N×スロットを計測する。そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、N×スロットが経過すると、Pollフレームを再度生成するように制御手段13へ要求し、制御手段13は、タイミングt8で、再度、Pollフレームを生成して端末装置2〜4へ送信する。
【0117】
端末装置2〜4の送受信手段22は、タイミングt9でPollフレームを受信し、Pollフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)をそれぞれ計測する。そして、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、その計測した受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新するとともに、正規化SNR(γ,γ,γ)を求める。
【0118】
そうすると、端末装置2〜4の送受信手段22は、2回目に受信したPollフレームからしきい値γを取り出し、正規化SNR(=γ,γ,γ)をしきい値γと比較する。
【0119】
この場合、γ<γ,γ>γ,γ>γであるとする。
【0120】
端末装置2の送受信手段22は、γ<γであるので、次のチャネル取得競争に参加しない。
【0121】
一方、端末装置3,4の送受信手段22は、γ>γ,γ>γであるので、次のチャネル取得競争に参加し、それぞれ、バックオフタイマーを0〜Nの間の一様な乱数から選択した6,3に設定する。
【0122】
そして、端末装置3の送受信手段22は、タイミングt9の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“6”から“0”になるのを計測する。また、端末装置3の送受信手段22は、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0123】
端末装置4の送受信手段22も、同様に、タイミングt9の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“3”から“0”になるのを計測するとともに、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0124】
端末装置4の送受信手段22は、タイミングt10で、自己におけるバックオフタイマーが“0”になったことを検知し、パケットPCを送信レートrでアクセスポイント1へ送信する。
【0125】
そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、アンテナ11を介してパケットPCを端末装置4から受信し、その受信したパケットPCを通信手段15へ出力する。
【0126】
アクセスポイント1の通信手段15は、送受信手段12からパケットPCを受け、パケットPCを受理する。
【0127】
上述したように、タイミングt1〜t7の間においては、しきい値γよりも大きい正規化SNR(=γ)を有する端末装置2,3だけがアクセスポイント1へパケットを送信する。このしきい値γは、上述したように、パケットの衝突を回避する確率が最も大きく、かつ、リンク品質が基準のリンク品質(=しきい値γからなる正規化SNRを有するリンクのリンク品質)よりも良い端末装置の個数が最大となるときの正規化SNRである。
【0128】
また、タイミングt1〜t7の間においては、端末装置2,3は、バックオフタイマーを用いてパケットPA,PBの衝突を回避する。
【0129】
更に、1回目のPollフレームを受信したときの受信SNRを用いて求めた正規化SNRがしきい値γよりも小さい端末装置4は、次のPollフレームを受信するまでパケットをアクセスポイント1へ送信できない。
【0130】
その結果、しきい値γよりも大きい正規化SNR(=γ)を有する端末装置2,3は、パケットの衝突を回避しながら、基準のリンク品質よりも良いリンク品質を有するリンクを用いてパケットをアクセスポイント1へ送信する。つまり、しきい値γよりも大きい正規化SNR(=γ)を有する端末装置2,3は、アクセスポイント1の通信範囲内に存在する端末装置の数が増加しても、パケットの衝突を回避しながら、基準のリンク品質(=γ)よりも良いリンク品質でパケットをアクセスポイント1へ送信する。
【0131】
従って、この発明によれば、端末装置の数が増えても、アップリンクにおいて、通信特性を低下させないというスケーラビリティを向上できるとともに、スループットを向上できる。
【0132】
また、上述したように、端末装置2は、Pollフレームを受信したときの受信SNRに対応する送信レートrでパケットPAをアクセスポイント1へ送信し、端末装置3は、ACKフレームを受信したときの受信SNRに対応する送信レートrでパケットPBをアクセスポイント1へ送信する。
【0133】
即ち、端末装置2,3の各々は、基準のリンク品質(=しきい値γからなる正規化SNRを有するリンクのリンク品質)以上のリンク品質において、実際のリンク品質(=計測した受信SNRを有するリンクのリンク品質)に応じた送信レートでパケットを送信する(端末装置2は、送信レートrでパケットPAを送信し、端末装置3は、送信レートrでパケットPBを送信する)。
【0134】
従って、実際のリンク品質が高い程、送信レートr,rが大きくなり、スループットを向上できる。
【0135】
更に、端末装置3は、タイミングt2で開始される第7番目のスロットにおいて無線装置2からパケットPAを受信したとき、自己のパケットPBをアクセスポイント1へ送信せず、タイミングt4以降、バックオフタイマーを再度設定し、自己のバックオフタイマーが最初に“0”になったとき、パケットPBをアクセスポイント1へ送信する。
【0136】
従って、パケットPAと、パケットPBとの衝突を回避できる。
【0137】
更に、端末装置4は、計測した受信SNR(=γ’)がしきい値γよりも小さいとき、Pollフレームを再度受信するまで、パケットPCをアクセスポイント1へ送信しない。
【0138】
従って、リンク品質が低い端末装置4による無線通信を排除してスケーラビリティおよびスループットを高くできる。
【0139】
アップリンクにおける異常対策について説明する。
【0140】
(1)全てのリンクの正規化SNRがしきい値γよりも小さい場合、全ての端末装置は、アクセスポイント1へパケットを送信できない。その結果、アクセスポイント1がPollフレームまたはACKフレームを送信した後、チャネルは、N×スロットの間、アイドル状態になる。そこで、アクセスポイント1は、N×スロットが経過すると、再度、Pollフレームを端末装置2〜4へ送信する。
【0141】
(2)2個以上の端末装置が同時にパケットを送信した場合、アクセスポイント1は、パケットを正しく受信できず、チャネルは、アイドル状態になる。そこで、アクセスポイント1は、N×スロットが経過すると、再度、Pollフレームを端末装置2〜4へ送信する。
【0142】
(3)端末装置2〜4がアクセスポイント1へパケットを送信する途中で、チャネル状況が変わってしまい、アクセスポイント1は、パケットを正しく受信できず、チャネルは、アイドル状態になる。そこで、アクセスポイント1は、N×スロットが経過すると、再度、Pollフレームを端末装置2〜4へ送信する。
【0143】
次に、アクセスポイント1から端末装置2〜4へパケットを送信する方法について説明する。図7は、アクセスポイント1から端末装置2〜4へパケットを送信する方法を説明するための図である。
【0144】
アクセスポイント1は、それぞれ、端末装置2〜4へ送信するパケットPA,PB,PCをバッファ14に格納している。
【0145】
アクセスポイント1の制御手段13は、端末装置2〜4からアクセスポイント1へパケットを送信する場合と同様にしてPollフレームを生成して端末装置2〜4へ送信する。この場合、Pollフレームは、アクセスポイント1が端末装置2〜4へ送信すべきパケットを保持していることを示すビットマップBMを含む(図4参照)。
【0146】
端末装置2〜4の送受信手段22は、アクセスポイント1から送信されたPollフレームをタイミングt11で受信し、それぞれ、受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を計測する。そして、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、その計測した受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新する。その後、端末装置2〜4の送受信手段22は、その更新した平均値/γ’,/γ’,/γ’を用いてそれぞれ正規化SNR(=γ,γ,γ)を求める。
【0147】
そうすると、端末装置2〜4の送受信手段22は、Pollフレームからしきい値γを取り出し、正規化SNR(=γ,γ,γ)をしきい値γと比較する。この場合、γ>γ,γ>γ,γ<γであるとする。
【0148】
また、端末装置2〜4の送受信手段22は、PollフレームのビットマップBMを参照して、アクセスポイント1が自端末宛てのパケットを保持していることを検知する。
【0149】
端末装置4の送受信手段22は、γ<γであるので、次のチャネル取得競争に参加しない。
【0150】
一方、端末装置2,3の送受信手段22は、アクセスポイント1が自端末宛てのパケットを保持しており、かつ、γ>γ,γ>γであるので、次のチャネル取得競争に参加し、それぞれ、バックオフタイマーを0〜Nの間の一様な乱数から選択した6,8に設定する。
【0151】
そして、端末装置2の送受信手段22は、タイミングt11の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“6”から“0”になるのを計測する。
【0152】
端末装置3の送受信手段22も、同様に、タイミングt11の後、DIFSが経過すると、バックオフタイマーが“8”から“0”になるのを計測する。
【0153】
端末装置2の送受信手段22は、タイミングt12で、自己におけるバックオフタイマーが“0”になったことを検知し、端末装置2のMACアドレスMACadd_2を含むCTSフレームを生成してアクセスポイント1へ送信する。
【0154】
そうすると、端末装置3の送受信手段22は、端末装置2から送信されたCTSフレームを7番目のスロットで受信し、チャネルが使用状態であることを検知する。従って、端末装置3の送受信手段22は、端末装置3のMACアドレスMACadd_3を含むCTSフレームをアクセスポイント1へ送信するのを停止する。
【0155】
アクセスポイント1の送受信手段12は、端末装置2から送信されたCTSフレームをタイミングt13で受信し、その受信したCTSフレームが端末装置2のMACアドレスMACadd_2を含むことを検知する。つまり、アクセスポイント1の送受信手段12は、端末装置2がパケットの送信を要求していることを検知する。
【0156】
また、アクセスポイント1の送受信手段12は、CTSフレームを受信したときの受信SNR(=γ’)を計測し、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、その計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0157】
そうすると、アクセスポイント1の送受信手段12は、タイミングt13からSIFSが経過したタイミングt14で、端末装置2宛てのパケットPAをバッファ14から取り出し、その取り出したパケットPAを送信レートrで端末装置2へ送信する。
【0158】
端末装置2の送受信手段22は、タイミングt15で、アクセスポイント1からパケットPAを受信し、パケットPAを受信したときの受信SNR(=γ’)を計測する。そして、端末装置2の送受信手段22は、その受信したパケットPAを通信手段24へ出力し、通信手段24は、パケットPAを受理する。
【0159】
また、端末装置3,4の送受信手段22も、タイミングt15でパケットPAを受信し、パケットPAを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’)をそれぞれ計測する。
【0160】
その後、端末装置2の通信手段24は、タイミングt15からSIFSが経過すると、ACKフレームを生成して送受信手段22へ出力し、送受信手段24は、ACKフレームをアクセスポイント1へ送信する。
【0161】
アクセスポイント1が端末装置2からのACKフレームを受信したタイミングt16からDIFSが経過すると、端末装置2〜4の送受信手段22は、それぞれ、受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新するとともに、その更新した平均値/γ’,/γ’,/γ’を用いて正規化SNR(=γ,γ,γ)を求める。
【0162】
そして、端末装置2〜4の送受信手段22は、正規化SNR(=γ,γ,γ)をしきい値γと比較する。この場合も、γ>γ,γ>γ,γ<γであるとする。
【0163】
端末装置4の送受信手段22は、γ<γであるので、次のチャネル取得競争に参加しない。また、端末装置2の送受信手段22は、γ>γであるが、アクセスポイント1からパケットPAを既に受信しているので、次のチャネル取得競争に参加しない。
【0164】
そして、端末装置3の送受信手段22は、アクセスポイント1が端末装置3宛てのパケットPBを保持しており、かつ、γ>γであるので、次のチャネル取得競争に参加し、バックオフタイマーを0〜Nの間の一様な乱数から選択した3に設定する。
【0165】
その後、端末装置3の送受信手段22は、バックオフタイマーが“3”から“0”になると、タイミングt17で、端末装置3のMACアドレスMACadd_3を含むCTSフレームを生成してアクセスポイント1へ送信する。
【0166】
アクセスポイント1の送受信手段12は、端末装置3から送信されたCTSフレームをタイミングt18で受信し、その受信したCTSフレームが端末装置3のMACアドレスMACadd_3を含むことを検知する。つまり、アクセスポイント1の送受信手段12は、端末装置3がパケットの送信を要求していることを検知する。
【0167】
また、アクセスポイント1の送受信手段12は、CTSフレームを受信したときの受信SNR(=γ’)を計測し、図5に示す受信SNRと送信レートとの関係を参照して、その計測した受信SNR(=γ’)に対応する送信レートrを検出する。
【0168】
そうすると、アクセスポイント1の送受信手段12は、タイミングt18からSIFSが経過したタイミングt19で、端末装置3宛てのパケットPBをバッファ14から取り出し、その取り出したパケットPBを送信レートrで端末装置3へ送信する。
【0169】
端末装置3の送受信手段22は、タイミングt20で、アクセスポイント1からパケットPBを受信する。そして、端末装置3の送受信手段22は、その受信したパケットPBを通信手段24へ出力し、通信手段24は、パケットPBを受理する。
【0170】
そうすると、端末装置3の通信手段24は、タイミングt20からSIFSが経過した後、ACKフレームを生成して送受信手段22へ出力し、送受信手段24は、ACKフレームをアクセスポイント1へ送信する。
【0171】
そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、端末装置3からACKフレームを受信する。
【0172】
端末装置2〜4のうち、1回目のPollフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて求められた正規化SNR(=γ,γ,γ)がしきい値γ以上である端末装置2,3は、それぞれ、パケットPA,PBを既にアクセスポイント1から受信している。
【0173】
その結果、タイミングt21以降、アクセスポイント1へパケットの送信を要求する端末装置は存在しない。
【0174】
従って、アクセスポイント1の送受信手段12は、タイミングt21以降、DIFSが経過すると、N×スロットを計測する。そして、アクセスポイント1の送受信手段12は、N×スロットが経過すると、Pollフレームを再度生成するように制御手段13へ要求し、制御手段13は、タイミングt22で、再度、Pollフレームを生成して端末装置2〜4へ送信する。
【0175】
それ以降、上述した動作を繰り返し、パケットがアクセスポイント1から端末装置2〜4へ送信される。
【0176】
上述したように、タイミングt11〜t21の間においては、しきい値γ以上である正規化SNR(=γ)を有する端末装置2,3だけがアクセスポイント1からパケットを受信する。このしきい値γは、上述したように、パケットの衝突を回避する確率が最も大きく、かつ、リンク品質が基準のリンク品質(=γ)よりも良い端末装置の個数が最大となるときの正規化SNRである。
【0177】
また、タイミングt11〜t21の間においては、端末装置2,3は、バックオフタイマーを用いてCTSフレームの衝突を回避する。
【0178】
更に、1回目のPollフレームを受信したときの受信SNRを用いて求めた正規化SNRがしきい値γよりも小さい端末装置4は、次のPollフレームを受信するまでパケットをアクセスポイント1から受信できない。
【0179】
その結果、しきい値γ以上である正規化SNR(=γ)を有する端末装置2,3は、パケットの衝突を回避しながら、基準のリンク品質よりも良いリンク品質を有するリンクを用いてパケットをアクセスポイント1から受信する。つまり、しきい値γ以上である正規化SNR(=γ)を有する端末装置2,3は、アクセスポイント1の通信範囲内に存在する端末装置の数が増加しても、パケットの衝突を回避しながら、基準のリンク品質(=しきい値γからなる正規化SNRを有するリンクのリンク品質)よりも良いリンク品質でパケットをアクセスポイント1から受信する。
【0180】
従って、この発明によれば、端末装置の数が増えても、ダウンリンクにおいて、通信特性を低下させないというスケーラビリティを向上できるとともに、スループットを向上できる。
【0181】
その他、上述したアップリンクにおける効果と同じ効果がダウンリンクにおいても得られる。
【0182】
ダウンリンクにおける異常対策について説明する。
【0183】
(4)全てのリンクの正規化SNRがしきい値γよりも小さい場合、全ての端末装置は、アクセスポイント1へパケットの送信を要求できない。その結果、アクセスポイント1がACKフレームを受信した後、チャネルは、N×スロットの間、アイドル状態になる。そこで、アクセスポイント1は、N×スロットが経過すると、再度、Pollフレームを端末装置2〜4へ送信する。
【0184】
(5)端末装置2〜4がアクセスポイント1からのパケットを傍受できる確率は、リンク品質に依存する。ある端末装置は、パケットを正しく傍受できない場合、受信SNRを計測できず、次のPollフレームを受信するまでチャネル取得競争に参加しない。
【0185】
(6)アクセスポイント1からパケットを既に受信した端末装置は、アクセスポイント1が自己宛ての別のパケットを保持しているか否かを検知できないので、次のPollフレームを受信するまでチャネル取得競争に参加しない。
【0186】
図8は、アップリンクにおける動作を説明するためのフローチャートである。図8を参照して、アップリンクにおける動作が開始されると、アクセスポイント1は、上述した方法によってPollフレームを生成して端末装置2〜4へ送信する(ステップS1)。
【0187】
そして、端末装置2〜4は、Pollフレームを受信し、Pollフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を計測する(ステップS2)。
【0188】
その後、端末装置2〜4は、その計測した受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて平均値/γ’,/γ’,/γ’を更新し、その更新した平均値/γ’,/γ’,/γ’を用いてそれぞれ正規化SNR(=γ,γ,γ)を算出する(ステップS3)。
【0189】
そうすると、端末装置2〜4は、受信したPollフレームからしきい値γを取り出し、正規化SNR(=γ,γ,γ)をしきい値γと比較し、正規化SNR(=γ,γ,γ)の全てがしきい値γよりも小さいか否かを判定する(ステップS4)。
【0190】
ステップS4において、正規化SNR(=γ,γ,γ)の全てがしきい値γよりも小さいと判定されたとき、アクセスポイント1は、N×スロットの経過後、次のPollフレームを端末装置2〜4へ送信する(ステップS5)。そして、一連の動作は、ステップS2へ戻る。
【0191】
一方、ステップS4において、正規化SNR(=γ,γ,γ)の全てがしきい値γよりも小さくないと判定されたとき、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置のうち、バックオフタイマーが最も早く“0”になった端末装置がパケットをアクセスポイント1へ送信する(ステップS6)。
【0192】
そして、アクセスポイント1は、パケットを受信し(ステップS7)、ACKフレームを送信する(ステップS8)。
【0193】
その後、端末装置2〜4は、ACKフレームを受信し、ACKフレームを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を計測する(ステップS9)。
【0194】
そして、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置の全てがパケットを送信したか否かが判定される(ステップS10)。
【0195】
ステップS10において、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置の全てがパケットを送信していないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS3へ戻り、上述したステップS3〜ステップS10が順次実行される。この場合、ステップS3において、ステップS9において計測された受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて、平均値/γ’,/γ’,/γ’が更新され、その更新された平均値/γ’,/γ’,/γ’を用いてそれぞれ正規化SNR(=γ,γ,γ)が算出される。
【0196】
一方、ステップS10において、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置の全てがパケットを送信したと判定されたとき、一連の動作は、ステップS5へ戻り、上述したステップS5,S2〜S10が実行される。
【0197】
アクセスポイント1および端末装置2〜4は、図8に示すフローチャートを繰り返し実行してアップリンクにおける無線通信を行う。
【0198】
図9は、ダウンリンクにおける動作を説明するためのフローチャートである。図9を参照して、ダウンリンクにおける動作が開始されると、アップリンクにおけるステップS1〜S5とそれぞれ同じステップS21〜ステップS25が順次実行される。
【0199】
そして、ステップS24において、正規化SNR(=γ,γ,γ)の全てがしきい値γよりも小さくないと判定されたとき、しきい値γ以上の正規化SNRを有し、かつ、自己宛てのパケットがある端末装置のうち、バックオフタイマーが最も早く“0”になった端末装置は、自己のMACアドレスを含むCTSフレームを生成して送信する(ステップS26)。
【0200】
その後、アクセスポイント1は、CTSフレームを受信し(ステップS27)、CTSフレームを受信したときの瞬時の受信SNRを検出する。そして、アクセスポイント1は、その検出した受信SNRに対応する送信レートrを検出する。
【0201】
そうすると、アクセスポイント1は、CTSフレームに含まれるMACアドレスを宛先とするパケットを送信レートrで送信する(ステップS28)。
【0202】
端末装置2〜4は、パケットを受信し、パケットを受信したときの受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を計測する(ステップS29)。
【0203】
そして、CTSフレームを送信した端末装置は、ACKフレームを生成して送信し(ステップS30)、アクセスポイント1は、ACKフレームを受信する(ステップS31)。
【0204】
その後、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置の全てがCTSフレームを送信したか否かが判定される(ステップS32)。
【0205】
ステップS32において、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置の全てがCTSフレームを送信したと判定されたとき、一連の動作は、ステップS25へ戻り、上述したステップS25,S22〜S32が実行される。
【0206】
一方、ステップS32において、しきい値γ以上の正規化SNRを有する端末装置の全てがCTSフレームを送信していないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS23へ戻り、上述したステップS23〜ステップS32が実行される。この場合、ステップS23において、ステップS29において計測された受信SNR(=γ’,γ’,γ’)を用いて、平均値/γ’,/γ’,/γ’が更新され、その更新された平均値/γ’,/γ’,/γ’を用いてそれぞれ正規化SNR(=γ,γ,γ)が算出される。
【0207】
アクセスポイント1および端末装置2〜4は、図9に示すフローチャートを繰り返し実行してダウンリンクにおける無線通信を行う。
【0208】
アクセスポイント1および端末装置2〜4は、アップリンクおよびダウンリンクの両方において無線通信を行なうことも可能である。
【0209】
この場合、端末装置2〜4の各々は、アクセスポイント1からPollフレームを受信したとき、またはアクセスポイント1がパケットの送受信を終了した時点で、下記の2つの条件を同時に満たせば、チャネルにアクセスする。
【0210】
(Cnd1)自端末で計測した正規化SNRが前回受信したPollフレームに含まれるしきい値γよりも大きい。
【0211】
(Cnd2)Pollフレームに含まれるビットマップBMに示されているアクセスポイントから自端末へのパケットを受信していない、または自端末からアクセスポイントへパケットを送信する予定がある。
【0212】
そして、アクセスポイント1および端末装置2〜4は、上述した図8に示すフローチャートに従ってアップリンクにおける動作を実行し、上述した図9に示すフローチャートに従ってダウンリンクにおける動作を実行する。
【0213】
図10は、アップリンクにおけるスループットと端末装置の個数との関係を示す図である。
【0214】
図10において、縦軸は、スループットを表し、横軸は、端末装置の個数を表す。また、曲線k1は、この発明による通信方式を用いた場合のスループットと端末装置の個数との関係を示し、曲線k2は、通信の順番が予め決定されている場合のスループットと端末装置の個数との関係を示し、曲線k3は、CSMA/CA方式を用いた場合のスループットと端末装置の個数との関係を示す。
【0215】
図10に示すように、スループットは、この発明による通信方式を用いた場合、端末装置の個数の増加に対して向上し、10個以上の端末装置の個数に対してほぼ一定になる(曲線k1参照)。
【0216】
また、スループットは、通信の順番が予め決定されている場合またはCSMA/CA方式を用いた場合、端末装置の個数の増加に対して減少する(曲線k2,k3参照)。
【0217】
従って、この発明による通信方式を用いることによって、端末装置の個数が増加しても高いスループットを実現できることが解った。
【0218】
上記においては、アップリンクにおける無線通信、ダウンリンクにおける無線通信、およびアップリンクおよびダウンリンクにおける無線通信について説明したが、この発明は、アップリンクにおける無線通信を行なう無線通信システム、ダウンリンクにおける無線通信を行なう無線通信システム、およびアップリンクおよびダウンリンクにおける無線通信を行なう無線通信システムのいずれかであればよい。
【0219】
なお、この発明の実施の形態においては、アクセスポイント1は、「第1の無線装置」を構成し、端末装置2〜4は、「n(nは正の整数)個の第2の無線装置」を構成する。
【0220】
また、この発明の実施の形態においては、N×スロットは、「一定の空き期間」を構成する。
【0221】
更に、この発明の実施の形態においては、Pollフレームは、「制御フレーム」または「第1の制御フレーム」を構成する。
【0222】
更に、この発明の実施の形態においては、CTSフレームは、「第2の制御フレーム」を構成する。
【0223】
更に、この発明の実施の形態においては、Pollフレームに含まれるビットマップBMは、「宛先情報」を構成する。
【0224】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0225】
この発明は、ネットワークにおけるスケーラビリティおよびスループットを向上可能な無線通信システムに適用される。
【符号の説明】
【0226】
1 アクセスポイント、2〜4 端末装置、10 無線通信システム、11,21 アンテナ、12,22 送受信手段、13 制御手段、14,23 バッファ、15,24 通信手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線装置と、
前記第1の無線装置の通信範囲内に配置され、各々が前記第1の無線装置と無線通信を行うn(nは正の整数)個の第2の無線装置とを備え、
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記第1の無線装置からパケットを受信したときの雑音パワーに対する受信信号強度の比である信号対雑音比を正規化した正規化値がしきい値以上であり、かつ、バックオフ時間が前記第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、パケットを前記第1の無線装置へ送信し、
前記しきい値は、前記第1の無線装置の通信範囲内においてパケットの衝突を回避する確率が最も大きく、かつ、リンク品質が基準のリンク品質よりも良い第2の無線装置の個数が最大となるときの前記正規化値である、無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の無線装置は、自己にアクセスする前記第2の無線装置の個数に基づいて前記しきい値を演算し、自己の通信範囲内において無線通信が行われていない一定の空き期間を検知すると、前記n個の第2の無線装置のうちパケットの送信先となる第2の無線装置を示す宛先情報と、前記演算したしきい値とを含む制御フレームを前記n個の第2の無線装置へ送信し、
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記第1の無線装置から前記制御フレームを受信したときの前記正規化値を演算し、その演算した正規化値が前記制御フレームに含まれる前記しきい値以上であり、かつ、バックオフ時間が前記第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、データからなるパケットを前記第1の無線装置へ送信する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記制御フレームを受信したときの瞬時の前記信号対雑音比に対応する送信レートで前記パケットを前記第1の無線装置へ送信する、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記演算した正規化値が前記しきい値以上であり、かつ、自己のバックオフ時間が経過するまでに他の第2の無線装置が前記第1の無線装置へパケットを送信したとき、前記第1の無線装置へのパケットの送信を停止するとともにバックオフ時間を再度設定し、その設定したバックオフ時間が前記第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、前記第1の無線装置へパケットを送信する、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記演算した正規化値が前記しきい値よりも小さいとき、前記第1の無線装置から前記制御フレームを再度受信するまで前記第1の無線装置へのパケットの送信を停止する、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1の無線装置は、自己にアクセスする前記第2の無線装置の個数に基づいて前記しきい値を演算し、自己の通信範囲内において無線通信が行われていない一定の空き期間を検知すると、前記n個の第2の無線装置のうちパケットの送信先となる第2の無線装置を示す宛先情報と、前記演算したしきい値とを含む第1の制御フレームを前記n個の第2の無線装置へ送信し、前記n個の第2の無線装置のいずれかからパケットの送信要求を示す第2の制御フレームを受信すると、データからなるパケットを送信し、
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記第1の無線装置から前記第1の制御フレームを受信したときの前記正規化値を演算し、その演算した正規化値が前記第1の制御フレームに含まれる前記しきい値以上であり、かつ、前記第1の無線装置が自己宛てのパケットを保持しており、更に、バックオフ時間が前記第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、前記第2の制御フレームを前記第1の無線装置へ送信するとともに、前記第1の無線装置からパケットを受信する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記第1の無線装置は、前記第2の制御フレームを受信したときの瞬時の前記信号対雑音比に対応する送信レートで前記パケットを送信する、請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記演算した正規化値が前記しきい値以上であり、かつ、自己のバックオフ時間が経過するまでに他の第2の無線装置が前記第1の無線装置へ前記第2の制御フレームを送信したとき、前記第1の無線装置への前記第2の制御フレームの送信を停止するとともにバックオフ時間を再度設定し、その設定したバックオフ時間が前記第1の無線装置の通信範囲内に存在する第2の無線装置の中で最初に経過したとき、前記第1の無線装置へ前記第2の制御フレームを送信するとともに前記第1の無線装置からパケットを受信する、請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記n個の第2の無線装置の各々は、前記演算した正規化値が前記しきい値よりも小さいとき、前記第1の無線装置から前記第1の制御フレームを再度受信するまで前記第1の無線装置への前記第2の制御フレームの送信を停止する、請求項6に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−278737(P2010−278737A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128947(P2009−128947)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「高レスポンスマルチホップ自律無線通信システムの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】