説明

無線通信システム

【課題】複数周波数を用いた同報通信を行なう際に、送信局が受信局からの誤りパケット情報を迅速に受信することができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】複数の受信局1−2、1−3、1−4へ同一の送信データをそれぞれ送信する送信局1−1を含む無線通信システムであって、送信局は、送信データを複数に分割して、当該分割した送信データをそれぞれ異なる周波数F1,F2,F3を用いて複数の受信局へそれぞれ並行して送信し、受信局は、送信局から送信された送信データに対する誤り応答パケットを返送し、この際の誤り応答パケットは、複数の異なる周波数毎に当該周波数を用いて送信された送信データに対する誤りパケット応答情報を時分割で送信局に返送する方法と、複数の異なる周波数を用いてそれぞれ送信された複数の送信データに対応する複数の誤りパケット応答情報を、複数の異なる周波数の内の一つを用いて送信局に返送する方法の少なくとも一方の方法で返送される無線通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信局から複数の受信局に同一の送信データを複数の異なる周波数の信号に分割し並行して送信する無線通信システムに関し、特に、一つの受信局が単一の周波数の誤りパケット応答信号を送信局に返送する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多くの形態の無線通信機が開発され製造され使用されているが、このような無線通信機においては、チャネルを複数用意して利用することで、通信効率を向上させる技術が知られている。この通信チャネルは、例えば周波数を異ならせることで異なるチャネルを設定することができ、同時に異なる信号を送信しても混信することなく分離して送信することができる。
【0003】
特許文献1は、無線LAN(Local Area Network)の技術により、同一の送信データを複数のチャネルを介して複数の受信装置に送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−252937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、無線LAN(Local Area Network)の技術により、同一の送信データを複数のチャネルを介して送信局から複数の受信局に送信する技術を開示してはいるが、送信データのパケットの誤りパケット情報を、受信局から送信局にどのように送ったら効率的であるかについては、何らの記載もない。
【0006】
すなわち、無線通信システムにおいては、送信局から複数の受信局に同報通信を行う際に、送信データをさらに複数の異なる周波数の信号に分割して同時に送信すれば送信速度が向上する。しかし、この際に、複数の受信局が送信に対して複数の異なる周波数でパケット情報を受け取った周波数で各々送信局に誤りパケット情報を送り返すと、信号の衝突により信号待ちが発生するため処理時間の遅延を招くこととなる。
【0007】
本発明は、複数周波数を用いた同報通信を行なう際に、送信局が受信局からの誤りパケット情報を迅速に受信することができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決する一実施形態は、
複数の受信局(1−2、1−3、1−4)と、前記複数の受信局へ同一の送信データをそれぞれ送信する送信局(1−1)からなる無線通信システムであって、
前記送信局は、前記送信データを複数に分割して、当該分割した送信データをそれぞれ異なる周波数を用いて前記複数の受信局へそれぞれ並行して送信し、
前記各受信局は、前記送信局から送信された送信データに対する誤り応答パケットを返送し、
前記誤り応答パケットは、前記複数の異なる周波数(F1,F2,F3,…)毎に当該周波数を用いて送信された送信データに対する誤りパケット応答情報を時分割で送信局に返送する方法と、前記複数の異なる周波数を用いてそれぞれ送信された複数の送信データに対応する複数の誤りパケット応答情報を、前記複数の異なる周波数の内の一つを用いて前記送信局に返送する方法の少なくとも一方の方法で返送されることを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0009】
送信局が複数の受信局に複数の周波数F1,F2,F3で分割した同報通信(同じ内容の通信を複数の受信局に同時に行なう通信)を行う際に、各受信局は、複数の周波数F1,F2,F3で送信信号を受けたとしても、受信局からの誤りパケット情報を送信局に送信する場合は、第1受信局は第1周波数F1、第2受信局は第2周波数F2、第3受信局は第3周波数F3のように受信局に専用の周波数で誤りパケット情報を返信する。これにより、送信局では、受信局からの誤りパケット情報を迅速に受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの一例を示す説明図。
【図2】当該通信システムに含まれる無線通信機の構成の一例を示すブロック図。
【図3】当該通信システムで扱われるフレーム信号のフォーマットを示す説明図。
【図4】当該通信システムにおける同時通信のための動作シーケンスの一例を示す説明図。
【図5】当該通信システムにおける送信周波数の特徴を有している同時通信のための動作シーケンスの一例を示す説明図。
【図6】当該通信システムにおける、誤りパケット応答チャネルのフレームフォーマットの構成の一例を示す説明図。
【図7】当該通信システムにおける送信周波数F1による同時通信のための動作シーケンスの一例を示す説明図。
【図8】当該通信システムにおける送信周波数F2よる同時通信のための動作シーケンスの一例を示す説明図。
【図9】当該通信システムにおける、誤りパケット応答チャネルのフレームフォーマットの他の構成の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る無線通信機1は、図1に示すように、スペクトル管理サーバ2と通信を行ないつつ、送信モードにおいて送信機1−1として機能し、受信モードにおいて第1受信機1−2、第2受信機1−3、第3受信機1−4…として機能する他の無線通信機1へ、送信データを無線通信で伝送する。
【0012】
まず、図1の送信局1−1、および第1〜第3受信局1−2,1−3,1−4の無線機の構成を図2を用いて説明する。ここで、送信局1−1はスペクトル管理サーバ2との通信機能を有している点のみ各受信局とは異なるため、図2ではスペクトル管理サーバ2との通信機能の図示、説明を省略し、送信局1−1、第1〜第3受信局1−2,1−3,1−4共通の構成として説明する。
【0013】
無線通信機1は、全体の動作を制御するべく各構成に接続される制御部11と、画像や文字を表示する表示部12と、オペレータの操作のための操作部13と、文字情報や写真情報等をパケット化し、また、パケットを文字情報や写真情報等に変換するパケット処理部14と、送信データをチャネル数に応じて分割し、分割された送信データを組み立てる分割・組立部15と、分割された送信データからチャネルを生成するフレーム処理部16と、フレーム処理部16の誤りを検出する誤り検出部17と、誤り検出に基づいて自動再送処理を行う自動再送制御部18と、送信データを送受信する複数のデータ送受信部19,20,21から構成される。また、データ送受信部19内の構成要素である各処理部は、制御部11からの制御情報に基づき動作するもので、誤り訂正部22と、変復調部23と、無線部24を有している。
【0014】
また、この実施形態の無線通信機1は、以下の説明では半二重通信を前提としている。半二重通信は、双方向通信において、同時に双方からデータを送信したり受信したりすることができず、時間を区切って片方向からの送信しかできない通信方式である。双方向にデータをやり取りするため、データ送受信部19は、制御部11からの指示により、時分割で送信モード/受信モードに処理を切替えて動作することにより、通信の向きを切り替える機能を有している。
【0015】
分割・組立部15は、送信モードでは、電子メール、電子ファイル等のデータ(a2)をn等分する処理を行い分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)を出力し、受信モードでは、分割されたデータ(d2−1)(d2−2)・・・(d2−n)を1つのデータに組み立てデータを出力する。ここで、上記分割数は、制御部11からの制御情報により指示される。この実施形態の説明では、分割数を3とし、3つの周波数を利用して並列に伝送する構成として説明を行う。
【0016】
フレーム処理部16は、送信モードでは、分割されたデータ(d2−1)(d2−2)(d2−3)および制御信号を入力し、図3に示すフレームフォーマット構成を有する各チャネルを生成する。ここでは、3分割されたデータ(d2−1)(d2−2)(d2−3)のそれぞれに対し別々に、図4に後述する動作シーケンスに従って図3(a)〜(e)に示す5種類のチャネルが順次生成され、3系統のチャネル列(e2−1)(e2−2)(e2−3)が同時に出力される。
【0017】
操作部13および制御部11からの制御信号は、上位層に位置する電子メール等のアプリケーションで扱われる情報であり、メッセージ番号(電子メール等の通信単位に付与される番号)、電子メール等の送信データサイズ、同報通信の宛先数、送信元IPアドレス、1つまたは複数の送信先IPアドレスを含む。
【0018】
また、操作部13および制御部11からの制御信号は、前述の通り、データ送受信部19の仕様(動作)を設定するための情報であり、送信モード/受信モード切替え制御情報、送信データの分割数、変復調方式種別情報、データブロックサイズ、パケットサイズ、利用周波数情報(周波数と数)が含まれる。ここで、電子メール、電子ファイル等の分割されたデータ(d2−1)(d2−2)(d2−3)は、パケット単位に区切られ、誤り検出部17は、そのパケットを入力し、誤り検出符号を付加し、誤り検出符号が付加されたパケットとしてフレーム処理部16に返す。データブロックは、複数のパケットから構成され、データブロック送信毎に自動再送制御(ARQ)が実行される。データブロックサイズ、パケットサイズは、制御部11で管理、記憶されており、図示しない制御パネルや、制御用PCから入力、設定できる構成としてもよい。また、利用周波数情報(周波数と数)は前述の通り、スペクトル管理サーバ2から指示され、制御部11で管理し記憶する。
【0019】
次に図3に示す各チャネルのフレームフォーマット構成について説明する。まず、同図(a)〜(e)のチャネル共通部分について説明する。同期情報d11、d21、d31、d41、d51は、各チャネルの開始点を検出するための同期パターンである。なお、これに対し、受信信号の復調のための同期パターンは変復調部23で挿入される。設定情報d12、d22、d32、d42、d52は、制御チャネル種別情報(回線設定/初送データ/再送データ/誤りパケット請求/誤りパケット応答/回線解除の識別情報)、データパケットd24に対する変復調方式種別情報(BPSK/QPSK/16QAM等の識別情報)を含む。データパケットd24以外の制御情報に対しては適用する変復調方式は固定であり、制御情報はデータパケットと比較し重要度が高いために、例えば、最もノイズ耐性の強いBPSKが用いられる。また、データパケットd24以外の制御情報に対しても、誤り検出部17により誤り検出符号が付加された後、各チャネルのフレームに詰められる。
【0020】
初めに、回線設定チャネル(図3(a))は、同期情報d11、設定情報d12、送信データサイズd13、送信元IPアドレスd14、宛先数d15、第1送信先IPアドレスd16、第2送信先IPアドレスd17、および第3送信先IPアドレスd18から構成される。ここで、この実施形態では、送信元IPアドレスd14、第1送信先IPアドレスd16、第2送信先IPアドレスd17、第3送信先IPアドレスd18は、それぞれ図1における送信局1−1、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4のアドレスに対応する。また、宛先数d15は3が設定される。
【0021】
次に、データチャネル、再送データチャネル(図3(b))は、同期情報d21、設定情報d22、データブロック情報d23、データパケットd24から構成される。データブロック情報d23には、データブロックサイズ、最終データブロック識別情報、パケットサイズ、メッセージ番号、データブロック番号、データブロック当りのパケット数が含まれる。データパケットd24には、データブロック当りのパケット数分のパケットが詰められる。
【0022】
次に、誤りパケット請求チャネル(図3(c))は、同期情報d31、設定情報d32、誤りパケット請求情報d33から構成される。誤りパケット請求情報d33には、応答を要求する受信局指定情報、データブロック番号、メッセージ番号が含まれる。
次に、誤りパケット応答チャネル(図3(d))は、同期情報d41、設定情報d42、誤りパケット応答情報d43から構成される。誤りパケット応答情報d43には、データブロック番号、メッセージ番号、および誤りパケット情報(データブロック番号で指定されるデータブロック内の全パケットの誤り有無情報)が含まれる。
【0023】
最後に、回線解除チャネル(図3(e))は、同期情報d51、設定情報d52から構成される。
次に、図2に示されるフレーム処理部16は、受信モードでは、各周波数毎の受信データ(チャネル列)(e2−1)(e2−2)(e2−3)から分割されたデータ(d2−1)(d2−2)(d2−3)と制御情報を抽出、出力する。
【0024】
3系統のチャネル列(e2−1)(e2−2)(e2−3)は、それぞれ別々のデータ送受信部19,20,21により処理され、無線信号(h2−1)(h2−2)(h2−3)として、送受信される。ここで、無線信号(h2−1)(h2−2)(h2−3)のキャリア周波数は、それぞれF1、F2、F3とする。これらの利用周波数は、前述の通り、制御部11からの制御情報の1つとして指示される。
【0025】
データ送受信部19,20,21はそれぞれ、誤り訂正部22、変復調部23、無線部24により構成される。以下では、データ送受信部19の内部処理に限定して説明するが、データ送受信部19,20,21でも全く同様の処理が行われる。
誤り訂正部22は、送信モードでは、チャネル列(e2−1)の情報を受けて誤り訂正符号化を行い、誤り訂正符号化後のデータ列を変復調部23に出力する。受信モードでは、変復調部23から復調後の受信データ列を受けて誤り訂正処理を行い、誤り訂正後の受信データ列(受信チャネル列)(e2−1)をフレーム処理部16に出力する。
【0026】
変復調部23は、送信モードでは、制御部11からの制御情報に含まれる変復調方式種別情報(BPSK/QPSK/16QAM等の識別情報)により指定される方式を用いて、誤り訂正符号化後のデータ列の中のデータパケットd24を変調処理し、またデータパケットd24以外の制御情報に対しては、前述の通り、BPSKで変調処理して変調信号を無線部24に出力する。受信モードでは、無線部24からの出力であるベースバンド受信信号を制御部11から指定される復調方式を用いて復調処理して復調信号を誤り検出部17に出力する。
【0027】
無線部24は、その内部構成の図示は省略するが、送信モードでは、変復調部23からの変調信号に対し、制御部11からの制御情報に含まれる利用周波数情報に基づき、送信フィルタ処理、キャリア周波数にアップコンバートする直交変調処理を行い、送受信アンテナ25を介して送信電波h2−1を受信機1−2へ送出する。受信モードでは、制御部11からの利用周波数情報に基づき、送受信アンテナ25等を介して送信機1−1から受信した電波h2−1に対しベースバンド周波数にダウンコンバートする直交復調処理、受信フィルタ処理を施し、ベースバンド受信信号を変復調部23へ出力する。ここで、無線部24内の上記各構成要素は、制御部11により指定される送信/受信周波数に基づき、周波数を切替えて送信/受信できる構成となっている。
【0028】
自動再送制御部18は、後述する図4の動作シーケンスに従って自動再送制御を行う構成要素であり、フレーム処理部16と連携して動作する。送信モードでは、誤りパケット請求チャネル(図3(c)での誤りパケット応答情報d43に含まれる情報(応答を要求した受信機指定情報、データブロック番号、メッセージ番号)を記憶して管理し、受信機からの誤りパケット応答の結果において誤りが有った場合、再送データチャネルを生成して該当パケットを受信機1−2に再送する。受信モードでは、送信機1−1からの誤りパケット請求チャネル(図3(c)を受信した場合、誤りパケット応答情報d43に含まれる情報(応答を要求された受信機指定情報、データブロック番号、メッセージ番号)に該当する受信パケットについて、誤り検出部17により誤り検出を行い、誤り検出結果を自動再送制御信号としてフレーム処理部16へ入力する。
【0029】
本実施形態では、データブロック内の全てにパケットの誤り応答を返すことを前提としている。フレーム処理部16では、自動再送制御部18からの自動再送制御信号に基づいて誤りパケット応答チャネル(図3(d))における誤りパケット応答情報d43を作成し、同期情報d41、設定情報d42と共に(e2−1)として、データ送受信部19へ入力する。また、再送に関わるデータブロック番号、メッセージ番号も記憶して管理する。半二重通信を前提としているため、誤りパケット応答チャネルを返信するに当り、送信/受信の切替が必要となるが、そのタイミングについては、以下の図4に示す動作シーケンスの説明の中で示す。
【0030】
・第1実施形態
第1実施形態は、送信局から複数の受信局へ同報通信を行う際に複数の周波数を用いた並列送信を行い、受信局から送信局へ自動再送制御のための誤りパケット応答を送信する具体例を特定しており、利用周波数毎に各受信局が時分割で誤りパケット応答情報を送信局に応答する方法を特定する。図4は、当該通信システムにおける同時通信のための動作シーケンスの一例を示す説明図である。
【0031】
図4は、それぞれ3つの周波数(F1、F2、F3)で通信が行なわれる3つの動作シーケンスSK1、SK2、SK3を示すが、それぞれが、図2における無線信号h2−1、h2−2、h2−3による通信に対応している。これら3つの動作シーケンスSK1、SK2、SK3は全く同じ動作を行うため、以下では、周波数F1での動作シーケンスSK1のみについて説明する。
【0032】
送信局1−1、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4は、それぞれ図1の無線通信ネットワークの構成での送信局1−1、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4に対応する。
通信開始において、まず、送信局1−1の制御部11およびデータ送受信部19等は、各受信局に対し、回線設定チャネルを送信する(ステップS1)。回線設定チャネルには前述の通り、送信元IPアドレス、宛先数、送信先IPアドレスが含まれており、無線通信ネットワーク内の全ての受信局は回線設定チャネルを受信し、自分宛の送信先IPアドレスが含まれていれば、送信対象であることを認識してその後の通信を継続し、含まれていなければ、その後の通信は無視する。この例では、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4が、送信局1−1からの送信対象(宛先)となる。
【0033】
次に、送信局1−1からデータチャネルが各受信局に送信される(ステップS2)。データチャネルには、1データブロック分のデータパケットを含んでいる。1データブロック分のデータパケットの送信が終了する毎に、以下の自動再送制御動作シーケンス(ステップS3)〜(ステップS7)が実行される。
【0034】
送信局1−1は、送信したデータパケットが伝送誤りが無く正確に送信できているかを確認するため、各受信局に誤りパケット請求チャネルを送信する(ステップS3)。半二重通信である(送信局と受信局は同じ周波数F1を使用して送信する)ため、各受信局は誤りパケット請求チャネルを受信すると、誤りパケット応答チャネルを返すために送信状態に切り替わるが、但し、受信モード状態は維持する。
【0035】
誤りパケット応答時には、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4は同じ周波数(当該誤りパケット応答に対応するデータチャネルや誤りパケット請求チャネルと同じ周波数であるF1)を使用するため、誤りパケット応答チャネルを時分割で送信局に送信する必要がある。そのタイミングを以下に説明する。
第1受信局1−2は、ステップS3での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1後にパケット応答チャネルを送信周波数F1で送信局に送信する(ステップS4)。T1は誤りパケット請求チャネル受信完了から受信局1が誤りパケット応答を送信開始するまでの時間であり、上述の受信から送信状態への切替え、およびパケット応答チャネル生成のためのデータ処理に要する時間である。パケット応答チャネルの送信が終了すると、第1受信局1−2は、再び受信状態に戻る。
【0036】
送信局1−1は、ステップS3での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1〜T1+T2間(図4のA時点とB時点の間)に誤りパケット応答を受信した場合(ステップS4)、第1受信局1−2からの応答と認識する。T2は誤りパケット応答の伝送に要する時間であり、受信局からのデータ送出時間(T2t)に加え、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン(T2m)を含んでいる。
【0037】
第2受信局1−3は、ステップS3での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1+T2後にパケット応答チャネルを送信局1−1に送信する(ステップS5)。パケット応答チャネルの送信が終了すると、第2受信局1−3は、再び受信状態に戻る。
送信局1−1は、ステップS3での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1+T2〜T1+T2×2間(図4のB時点とC時点の間)に誤りパケット応答を受信した場合、第2受信局1−3からの応答と認識する(ステップS5)。
【0038】
第3受信局1−4は、ステップS3での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1+T2×2後にパケット応答チャネルを送信局に送信する(ステップS6)。パケット応答チャネルの送信が終了すると、第3受信局1−4は、再び受信状態に戻る。
送信局1−1は、ステップS3での誤りパケット請求チャネル(ステップS3)送信完了からT1+T×2〜T1+T2×3間(図4のC時点とD時点の間)に誤りパケット応答を受信した場合、第3受信局1−4からの応答と認識する(ステップS6)。
【0039】
次に、送信局1−1は、各受信局からの誤りパケット応答がパケット誤り有りを示している場合、再送データチャネルにより該当するデータブロックを再送する(ステップS7)。ここで、送信局1−1は、全受信局に対して再送し、各受信局では、再送を要求した(誤り有りと応答した)パケットが送られてきた場合のみ受信データを有効にし、再送要求していない受信データは無視する。
【0040】
送信局1−1は、データブロックを再送後、誤りパケット請求チャネルを全受信局に対して送信し(ステップS8)、その後の動作シーケンスは、ステップS4〜ステップS6で示した内容と同じであるため、図示は省略している。
また、図示していないが、ステップS4、ステップS5、ステップS6での誤りパケット応答受信でパケット誤りが無い場合、送信局1−1は、次のデータブロック情報を持つデータチャネルを送信し、その後、自動再送制御の動作シーケンスであるステップS3〜ステップS6を実行する。
【0041】
上記したステップS2のデータチャネルの送信またはステップS7の再送データチャネルの送信と、ステップS3〜ステップS6の自動再送制御の動作シーケンスを全てのデータブロックを送信終了まで繰り返し、終了後は送信局1−1が全受信局に対し回線解除チャネルを送信し通信を終了する(ステップS9)。
【0042】
このように図4の各周波数における動作シーケンスに示すように、1データブロック送信当りの自動再送制(ARQ)(但し、再送は含まず)に要する伝送時間T_ARQは、
T_ARQ=T1+T2×受信局数
=T1+(T2t+T2m)×受信局数
=T1+(T2t+T2m)×3 ・・・ (式1)
(式1)において、前述の通り、T2には誤りパケット応答の送出時間T2tと受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン、T2mが含まれる。
【0043】
第1実施形態で示した動作によれば、(式1)に示すように、同報通信での受信局数に比例した量のマージン(T2m×受信局数)が必要となり、1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間T_ARQを増加させ、さらにデータブロック数に比例して影響するため、トータルでのデータ伝送時間を増大させてしまう。これは、一つの受信局から送信される誤りパケット応答の信号が、異なる複数の周波数F1,F2,F3の信号としてばらばらに送信局へ送信されることに起因している。
【0044】
・第2実施形態
第2実施形態は、送信局が複数の受信局に複数の周波数(F1,F2,F3,…)に分割した同報通信(同じ内容の通信を複数の受信局に同時に行なう通信)を行う際に、各受信局が複数の周波数(F1,F2,F3,…)で送信信号を受けたとしても、受信局からの誤りパケット情報を送信局に送信する場合は、第1受信局1−2は第1周波数F1、第2受信局1−2は第2周波数F2、第3受信局1−4は第3周波数F3のように、受信局に専用の周波数で誤りパケット情報を返信することを特定している。これにより、1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間T_ARQを短縮できるため、送信局では、受信局からの誤りパケット情報を迅速に受信することができる。図5は、当該通信システムにおける送信周波数の特徴を有している同時通信のための動作シーケンスの一例を示す説明図である。
【0045】
図5は、周波数F1、周波数F2、周波数F3の動作シーケンスを同時に示しており、これら3つのシーケンスは同時に並行して実行される。通信開始において、送信局1−1の制御部11およびデータ送受信部19等は、各受信局1−2、1−3、1−4に対し、周波数F1、周波数F2、周波数F3の各信号により同時に、回線設定チャネルを送信する(ステップS11)。回線設定チャネルには前述の通り、送信元IPアドレス、宛先数、送信先IPアドレスが含まれており、無線通信ネットワーク内の全ての受信局は回線設定チャネルを受信し、自分宛の送信先IPアドレスが含まれていれば、送信対象であることを認識してその後の通信を継続し、含まれていなければ、その後の通信は無視する。次に、送信局1−1から各受信局1−2、1−3、1−4に対し、データチャネルが周波数F1、周波数F2、周波数F3の各信号により同時に送信される(ステップS12)。データチャネルには、1データブロック分のデータパケットを含んでいる。1データブロック分のデータパケットの送信が終了する毎に、以下の自動再送制御動作シーケンス(ステップS13)〜(ステップS17)が実行される。さらに、送信局1−1は、各受信局1−2、1−3、1−4に対し、誤りパケット請求チャネルを周波数F1、周波数F2、周波数F3の各信号により同時に送信される(ステップS13)。
【0046】
これに対して、第1受信局1−2は、ステップS13での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1後に、送信周波数F1によるパケット応答チャネルを送信局1−1に送信する(ステップS14)。また、第2受信局1−3は、ステップS13での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1後に、送信周波数F2によるパケット応答チャネルを送信局1−1に送信する(ステップS14)。また、第3受信局1−4は、ステップS13での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1後に、送信周波数F3によるパケット応答チャネルを送信局1−1に送信する(ステップS14)。
【0047】
このように、本実施形態で注目すべきは、第1受信局1−2は周波数F1を用いた誤りパケット応答チャネルのみ、第2受信局1−3は周波数F2を用いた誤りパケット応答チャネルのみ、第3受信局1−4は周波数F3を用いた誤りパケット応答チャネルのみをそれぞれ送信することである。これにより、後述するように、送信機1−1は、第1受信局1−2は周波数F1のみ、第2受信局1−3は周波数F2のみ、第3受信局1−4は周波数F3のみにより、誤りパケット応答チャネルを受信するため、後述するように受信時間は短縮される。
【0048】
また、ここで、第2実施形態における各誤りパケット応答チャネルは、そのフレームフォーマットを図6に示すように、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4が受信した全周波数(F1、F2、F3)でのデータチャネル(受信パケット)の誤りパケット情報d61、d62、d63を集約した形態となっている。
【0049】
また、T1は、第1実施形態と同様に、ステップS13の誤りパケット請求チャネル受信完了から第1受信局が誤りパケット応答を送信開始するまでの時間であり、受信から送信状態への切替え、およびパケット応答チャネル生成のためのデータ処理に要する時間である。パケット応答チャネルの送信(ステップS14)が終了すると、第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4は、それぞれ再び受信状態に戻る。
【0050】
送信局1−1は、ステップS13での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1〜T1+T2’間(図5のG時点とH時点の間)に第1受信局1−2、第2受信局1−3、第3受信局1−4からの誤りパケット応答をそれぞれ受信する。T2’は誤りパケット応答に要する伝送時間であり、受信局からのデータ送出時間T2t’に加え、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージンT2mを含んでいる。
【0051】
また、以降の再送データチャネルの送信等の処理(ステップS15〜ステップS17)等の処理は、第1実施形態と同様である。
このように、第2実施形態では、各受信局1−2、1−3、1−4毎に誤りパケット応答チャネル送信用に1つ周波数を割り当て、全周波数での受信データに対する誤りパケット応答情報を集約して伝送することにより、1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間T_ARQ’は、(式2)となる。
【0052】
T_ARQ'=T1+T2'
=T1+(T2t’+T2m) ・・・ (式2)
ここで、上述の通り、T2’は誤りパケット応答に要する通信時間であり、受信局からの送出時間(T2t’)と、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン(T2m)を含んでいる。
【0053】
1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間を表す(式2)を第1実施形態での(式1)を比較すると、(式1)では同報通信での受信局数に比例した量のマージン(T2m×受信局数=T2m×3)が必要となるのに対し、(式2)では受信局数に拘らずマージンは一定(T2m)となる。
【0054】
また、(式2)のT2t’については、図6のフレームフォーマット構成に示す通り、同期、および設定情報は1つ分で済むため、第1実施形態における(T2t×受信局数=T2t×3)より短い時間となる。したがって、第2実施形態での1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間は、T_ARQ’(第2実施形態)<T_ARQ(第1実施形態) となり短縮することができる。
【0055】
このように第2実施形態では、送信局1−1から受信局1−2、1−3、1−4への送信信号の周波数が周波数F1,F2,F3のように複数の周波数を用いている一方、各受信局1−2、1−3、1−4から送信局1−1への誤りパケット応答信号が、それぞれ、第1受信局1−2が周波数F1のみ、第2受信局1−3が周波数F2のみ、第3受信局1−4が周波数F3のみとなっているため、第1実施形態における信号待ち時間が無くなるため迅速な受信処理を可能とするものである。
【0056】
なお、上記第2実施形態の説明では、利用周波数の数が、受信局数と同じであることを前提条件としたが、次の第3実施形態のように利用周波数の数が受信局数未満の場合においても、利用周波数の数が2以上で、2つ以上の受信局において複数の周波数での受信データに対する誤りパケット応答情報を集約して同時伝送できる場合は、マージン(T2m)への時間配分が低減できるため、ARQに要する伝送時間は、第1実施形態と比較して短縮可能である。
【0057】
・第3実施形態
第3実施形態は、複数の受信局1−2、1−3、1−4の全てに誤りパケット応答用の専用の周波数を割り当てることは行わず、複数の受信局1−2、1−3、1−4の中の一部の受信局、例えば、第1受信局1−2と第2受信局1−3にのみ、専用の周波数F1、F2を割り当てる場合を特定する。すなわち、ここでは、利用周波数の数が2つ(周波数はF1、F2)、受信局の数が3つの場合を例にとって、以下に説明する。
【0058】
図7は周波数F1、図8は周波数F2での動作シーケンスを示し、これら2つのシーケンスは、同時に並行して実行される。ここでは、自動再送制御部分のみの動作シーケンスについて説明する。
図7に示す周波数F1の動作シーケンスにおいて、通信開始において、送信局1−1の制御部11およびデータ送受信部19等は、各受信局1−2、1−3、1−4に対し、周波数F1の信号により同時に、回線設定チャネルを送信する(ステップS21)。次に、送信局1−1から各受信局1−2、1−3、1−4に対し、データチャネルが周波数F1の信号により同時に送信される(ステップS22)。次に、送信局1−1から各受信局1−2、1−3、1−4に対し、周波数F1の信号により誤りパケット請求チャネルを各受信局に対し送信する(ステップS23)。
【0059】
第1受信局1−2は、ステップS23での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1後にパケット応答チャネルを送信局に送信する(ステップS24)。ここでの誤りパケット応答チャネルは、そのフレームフォーマットを図9に示すように、第1受信局1−2が受信した全周波数F1、F2でのデータチャネル(受信パケット)の誤りパケット情報d71、d72を集約した形態となっている。
【0060】
また、T1は、第1実施形態、第2実施形態と同様に、ステップS23の誤りパケット請求チャネル受信完了から各受信局が誤りパケット応答を送信開始するまでの時間であり、受信から送信状態への切替え、およびパケット応答チャネル生成のためのデータ処理に要する時間である。ステップS24のパケット応答チャネルの送信が終了すると、第1受信局1−2は、再び受信状態に戻る。
【0061】
送信局1−1は、ステップS23での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1〜T1+T2”間(図7のJ時点とK時点の間)に第2受信局1−3からの誤りパケット応答を受信する(ステップS24)。T2”は誤りパケット応答に要する伝送時間であり、受信局からのデータ送出時間(T2t”)に加え、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン(T2m)を含んでいる。
【0062】
次に、第3受信局1−4は、ステップS23での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1+T2”後にパケット応答チャネルを送信局に送信する(ステップS25)。ここでの誤りパケット応答チャネルのフレームフォーマットは図3(d)に示すものと同じであり、第3受信局1−4が受信した周波数F1でのデータチャネル(受信パケット)の誤りパケット情報を含んでいる。ステップS25のパケット応答チャネルの送信が終了すると、第3受信局1−4は、再び受信状態に戻る。
【0063】
送信局1−1は、ステップS23での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1+T2”〜T1+T2”+T2間(図7のJ時点とK時点の間)に第3受信局1−4からの誤りパケット応答を受信する(ステップS25)。T2は誤りパケット応答に要する伝送時間であり、受信局からのデータ送出時間(T2t)に加え、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン(T2m)を含んでいる。
【0064】
また、以降の再送データチャネルの送信等の処理(ステップS26〜ステップS28)等の処理は、第1実施形態および第2実施形態と同様である。
同様に、図8に示す周波数F2の動作シーケンスにおいて、通信開始において、送信局1−1の制御部11およびデータ送受信部19等は、各受信局1−2、1−3、1−4に対し、周波数F2の信号により同時に、回線設定チャネルを送信する(ステップS31)。次に、送信局1−1から各受信局1−2、1−3、1−4に対し、データチャネルが周波数F1の信号により同時に送信される(ステップS32)。次に、送信局1−1から各受信局1−2、1−3、1−4に対し、周波数F2信号により誤りパケット請求チャネルを各受信局に対し送信する(ステップS33)。
【0065】
第2受信局1−3は、ステップS33での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1後にパケット応答チャネルを送信局に送信する(ステップS34)。ここでの誤りパケット応答チャネルは、そのフレームフォーマットを図9に示すように、第2受信局1−3が受信した全周波数F1、F2でのデータチャネル(受信パケット)の誤りパケット情報d71、d72を集約した形態となっている。
【0066】
また、T1は、第1実施形態、第2実施形態と同様に、ステップS33の誤りパケット請求チャネル受信完了から各受信局が誤りパケット応答を送信開始するまでの時間であり、受信から送信状態への切替え、およびパケット応答チャネル生成のためのデータ処理に要する時間である。ステップS34のパケット応答チャネルの送信が終了すると、第2受信局1−3は、再び受信状態に戻る。
【0067】
送信局1−1は、ステップS33での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1〜T1+T2”間(図8のJ時点とK時点の間)に第2受信局1−3からの誤りパケット応答を受信する(ステップS34)。
次に、第3受信局1−4は、ステップS34での誤りパケット請求チャネルを受信完了からT1+T2”後にパケット応答チャネルを送信局に送信する(ステップS35)。ここでの誤りパケット応答チャネルのフレームフォーマットは図3(d)示すものと同じであり、第3受信局1−4が受信した周波数F2でのデータチャネル(受信パケット)の誤りパケット情報を含んでいる。ステップS35のパケット応答チャネルの送信が終了すると、第3受信局1−4は、再び受信状態に戻る。
【0068】
送信局1−1は、ステップS37での誤りパケット請求チャネル送信完了からT1+T2”〜T1+T2”+T2間(図8のJ時点とK時点の間)に第3受信局1−4からの誤りパケット応答を受信する(ステップS35)。T2は誤りパケット応答に要する伝送時間であり、受信局からのデータ送出時間(T2t)に加え、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン(T2m)を含んでいる。
【0069】
また、以降の再送データチャネルの送信等の処理(ステップS26〜ステップS28)等の処理は、第1実施形態および第2実施形態と同様である。
上述したように第3実施形態では、第1受信局1−2、第2受信局1−3に対しては、受信局毎に誤りパケット応答チャネル送信用に1つ周波数を、周波数F1、周波数F2のように割り当てることで、全周波数での受信データに対する誤りパケット応答情報を集約して伝送する第2実施形態の方法を適用するが、第3受信局1−4に対しては、利用周波数毎に各受信局が時分割で誤りパケット応答情報を送信局に応答する第1実施形態の方法を適用する。これにより、1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間T_ARQ”は、(式3)となる。
【0070】
T_ARQ”=T1+T2”+T2
=T1+(T2t”+T2m)+(T2t+T2m) ・・・(式3)
1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間を表す(式3)を第1実施形態での(式1)を比較すると、(式1)でのマージン分が(T2m×受信局数=T2m×3)であるのに対し、(式3)では(T2m×2)となり、時間が短縮されることがわかる。
【0071】
また、(式3)のT2t”については、図9のフレームフォーマット構成に示す通り、同期、および設定情報は1つ分で済むため、第1実施形態にように時分割で送る場合(T2t×2)より短い時間となる。
したがって、第3実施形態での1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間は、T_ARQ”(第3実施形態)<T_ARQ(第1実施形態)となり短縮することができる。
なお、ここでは利用周波数の数が2、受信局の数が3の場合を例にとって説明したが、利用周波数が複数で受信局の数が利用周波数の数よりも大きい場合にも同様の構成により同様の効果を得ることができる。
【0072】
次に、利用周波数の数が、受信局数より大きい場合については、利用周波数の数と受信局数の組み合わせによっては、第2実施形態の説明と同様に、受信局において複数の周波数での受信データに対する誤りパケット応答情報を集約して同時伝送することにより、第1実施形態と比較して短縮できるケースがある。
【0073】
図示による説明は省略するが、例えば、利用周波数の数が6(周波数はF1、F2、F3、F4、F5、F6)、受信局数が3(第1受信局,第2受信局,第3受信局)の場合には、
周波数F1により、第1受信局での周波数F1、F2、F3での受信パケットについての誤りパケット応答の伝送を行い、
周波数F2により、第1受信局での周波数F4、F5、F6での受信パケットについての誤りパケット応答の伝送を行い、
周波数F3により、第2受信局での周波数F1、F2、F3での受信パケットについての誤りパケット応答の伝送を行い、
周波数F4により、第2受信局での周波数F4、F5、F6での受信パケットについての誤りパケット応答の伝送を行い、
周波数F5により、第3受信局での周波数F1、F2、F3での受信パケットについての誤りパケット応答の伝送を行い、
周波数F6により、第3受信局での周波数F4、F5、F6での受信パケットについての誤りパケット応答の伝送を行うことにより、
1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間T_ARQ3は、(式4)となる。
【0074】
T_ARQ3=T1+T2'
=T1+(T2t’+T2m)・・・ (式4)
ここで、T2'は誤りパケット応答に要する通信時間であり、受信局からの送出時間T2t’と、各受信局の所在位置の違いに起因する伝搬路での遅延時間の差を吸収するためのマージン(T2m)を含んでいる。
【0075】
上記(式4)は、第2実施形態での(式2)と同じ式となり、また、誤りパケット応答チャネルのフレームフォーマットは第2実施形態と同様、3つの周波数での受信パケットの誤り情報を集約している、すなわち、T2'は第2実施形態と同じ値となり、かつ、T2mも同じであるため、第2実施形態と同様に、1データブロック送信当りのARQに要する伝送時間を第1実施形態に対し短縮することができる。
【0076】
上述の通り、利用周波数の数と受信局数に応じて、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態に示した誤りパケット応答チャネルの伝送方法を適切に選択することにより、ARQに要する伝送時間を短縮することが可能となる。また、制御部11の制御下において、応答パケット処理時間が最小となるように第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の内の2つまたは3つを適宜組み合わせて実施することも可能である。
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
1…無線通信機、1−1…送信機、1−2…受信機、11…制御部、12…表示部、13…操作部、14…パケット処理部、15…分割・組立部、16…フレーム処理部、17…誤り検出部、18…自動再送制御部、19,20,21…データ送受信部、22…誤り訂正部、23…変復調部,24…無線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信局と、前記複数の受信局へ同一の送信データをそれぞれ送信する送信局からなる無線通信システムであって、
前記送信局は、前記送信データを複数に分割して、当該分割した送信データをそれぞれ異なる周波数を用いて前記複数の受信局へそれぞれ並行して送信し、
前記各受信局は、前記送信局から送信された送信データに対する誤り応答パケットを返送し、
前記誤り応答パケットは、前記複数の異なる周波数毎に当該周波数を用いて送信された送信データに対する誤りパケット応答情報を時分割で送信局に返送する方法と、前記複数の異なる周波数を用いてそれぞれ送信された複数の送信データに対応する複数の誤りパケット応答情報を、前記複数の異なる周波数の内の一つを用いて前記送信局に返送する方法の少なくとも一方の方法で返送されることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−223171(P2011−223171A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88054(P2010−88054)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】