説明

無線通信共存システム及び方法

【課題】一方がTVWSを初めとした高出力強度の無線信号を発信する高出力デバイスと、低出力強度の無線信号を送受信する低出力デバイスとの間で互いに干渉することなく共存する。
【解決手段】高出力デバイス11から広域無線通信範囲10内に高信号強度の無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、広域無線通信範囲10内に位置し、当該広域無線通信範囲10よりも狭い狭域無線通信範囲20において低出力デバイス21により低信号強度の無線信号により通信可能な狭域無線通信システムと共存させる際に低出力デバイス21により、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて狭域無線通信範囲20内における無線通信の継続を行い、或いは狭域無線通信範囲20内の無線通信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高出力デバイスから無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、低出力デバイスにより無線通信可能な狭域無線通信システムと共存させる上で好適な無線通信共存システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりTV White Space(TVWS)を利用した無線通信システムの標準化が進められており、特に近年においては異なるIEEE802標準がTVWSにおいて共存するための手法の標準化(IEEE802.11規格)も進められている。このため、これら異なるIEEE802標準の通信システムを同じ周波数帯においていかに共存させるかが特に重要になり、特に最近における無線通信機会の飛躍的な増大に伴い、その重要性はより増している。
【0003】
特にこのTV White Space(TVWS)信号は、一般に高信号強度の無線信号で構成され、例えば基地局、放送局、その他端末等で構成される高出力デバイスから送信される。このため、図11に示すように、TVWS信号を高出力デバイス71から送信した場合には、当該TVWS信号を広域に亘って送信することが可能となる。その結果、このTVWS信号による無線通信範囲72は、より広域なものとなる。
【0004】
このような無線通信範囲72内において、TVWSとは異なる無線信号を送受信する低出力デバイス81が存在する場合がある。この低出力デバイス81が送受信する無線信号は、TVWSのそれと比較して低強度のものとなっている。このため、低出力デバイス81による無線通信範囲82は、上述した無線通信範囲72と比較して狭いものとなっている。このような低出力デバイス81並びにこれにより形成される無線通信範囲82は、無線通信範囲72において複数個に亘り存在する場合もある。
【0005】
このとき、この図11に示すような各デバイスの配置の場合、高出力デバイス71は、低出力デバイス81から送信される低出力強度の無線信号を受信することができないが、低出力デバイス81は、高出力デバイス71からの高出力強度の無線信号を常に受信できる状態となっている。
【0006】
このとき、低出力デバイス81は、通信相手の他のデバイスからの無線信号を受信する場合に、高出力デバイス71からのTVWS信号を初めとした高出力強度の無線信号が送信される場合に干渉が生じてしまう。
【0007】
従来において、この干渉を防止するための技術が各種提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、あくまで図11のようなTVWS信号が送信される無線通信範囲72と、低出力デバイス81による無線通信範囲82とが並存する場合において、この低出力デバイス81側における通信干渉を防止する技術については提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−529549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、一方がTVWSを初めとした高出力強度の無線信号を発信する高出力デバイスと、低出力強度の無線信号を送受信する低出力デバイスとの間で互いに干渉することなく共存可能な無線通信共存システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために、低出力デバイスにより、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて上記狭域無線通信範囲内における無線通信の開始又は継続を行い、或いは上記狭域無線通信範囲内の無線通信を停止することにより、高出力デバイスとの間で通信干渉を防止して互いのシステムを共存させることが可能な無線通信共存方法を発明した。
【0011】
請求項1記載の無線通信共存システムは、高出力デバイスから広域無線通信範囲内に高信号強度の無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、上記広域無線通信範囲内に位置し、当該広域無線通信範囲よりも狭い狭域無線通信範囲において低出力デバイスにより低信号強度の無線信号により通信可能な狭域無線通信システムとを備え、上記低出力デバイスは、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて、上記狭域無線通信範囲内における無線通信を継続して行い、或いは上記狭域無線通信範囲内の無線通信を停止することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の無線通信共存システムは、請求項1記載の発明において、上記広域無線通信システムにおいて高出力デバイスから送信される高信号強度の無線信号は、IEEE802.11規格に基づくTVWS(Television White Space)信号であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の無線通信共存方法は、高出力デバイスから広域無線通信範囲内に高信号強度の無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、上記広域無線通信範囲内に位置し、当該広域無線通信範囲よりも狭い狭域無線通信範囲において低出力デバイスにより低信号強度の無線信号により通信可能な狭域無線通信システムと共存させる無線通信共存方法において、上記低出力デバイスにより、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて、上記狭域無線通信範囲内における無線通信を継続して行い、或いは上記狭域無線通信範囲内の無線通信を停止することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の無線通信共存方法は、請求項3記載の発明において、IEEE802.11規格に基づくTVWS(Television White Space)信号からなる高信号強度の無線信号を上記広域無線通信システムにおいて高出力デバイスから送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明を適用した共存通信システムにおいて、低出力デバイスは、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて狭域無線通信範囲内における無線通信を継続して行い、或いは狭域無線通信範囲内の無線通信を停止する。これにより、低出力デバイスは、特に高出力デバイスとの間で通信干渉を生じることなく、他のデバイスとの間で無線通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した共存通信システムの構成図である。
【図2】通信干渉が生じるメカニズムについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明を適用した無線通信共存システムは、IEEE802標準が実装され、TV White Space(TVWS)において互いに共存処理を行うことが可能なシステムである。但し、本発明を適用した通信システムは、これに限定されるものではなく、TVWS以外の空間においても、他のいかなるシステム間の共存処理において適用してもよい。
【0019】
本発明を適用した共存通信システム1は、図1に示すように、高出力デバイス11から広域無線通信範囲10内に高信号強度の無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、広域無線通信範囲10内に位置し、当該広域無線通信範囲10よりも狭い狭域無線通信範囲20において低出力デバイス21により低信号強度の無線信号により通信可能な狭域無線通信システムとを備えている。
【0020】
高出力デバイス11は、PC(パーソナルコンピュータ)、各種携帯通信端末等のデバイスで構成されていてもよいが、基地局、制御局等であってもよい。この高出力デバイス11は、TVWS信号を始めとした高信号強度の無線信号を発信する。このため、高出力デバイス11から発信される無線信号は、広範囲に亘る低出力デバイス21に到達することになる。換言すれば、高出力デバイス11から発信される無線信号は、高信号強度であることから、広域無線通信範囲10は広くなる。
【0021】
低出力デバイス21は、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ(PC)等を初めとした各種端末である。この低出力デバイス21は、TVWS信号以外の低出力強度の無線信号を他の低出力デバイス21との間で送受信する。即ち、低出力デバイス21から発信される無線信号は、低信号強度であることから、狭域無線通信範囲20は、より狭くなる。
【0022】
このような低出力デバイス21は、高出力デバイス11から発信される高信号強度の無線信号を受信することができる反面、図1に示すような配置の場合には、高出力デバイス11は、低出力デバイス21から発信される低信号強度の無線信号を受信することができない。
【0023】
このため、低出力デバイス21がこの狭域無線通信範囲20内にある他のデバイスと通信を行う場合において、この高出力デバイス11からTVWS信号を初めとした高出力強度の無線信号が送信される場合に干渉が生じてしまう。
【0024】
従って、本発明では、低出力デバイス21側において、この高出力デバイス11との間での通信干渉が生じないようにし、互いのシステムが共存することができるようにするための処理動作を実行する。
【0025】
かかる処理動作を行う場合に、先ず低出力デバイス21は、高出力デバイス11からの無線信号を受信できているか否かの判断を行う。この判断の過程では、先ず受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出する。
【0026】
低出力デバイス21は、かかる無線信号の強度と、そのSN比の検出結果に基づいて、以下の表1に示すような判定を行うようにしてもよい。
【0027】
【表1】

【0028】
ちなみに、この表1において信号強度、SN比が高いか低いかの判断は、例えば信号強度、SN比それぞれについて予め閾値を設定し、その閾値を超えるか否かで判断するようにしてもよい。
【0029】
検出した無線信号の信号強度が高い場合で、かつSN比も高い場合、高品質な信号を受信した旨を判定する。これは、低出力デバイス21は、高出力デバイス11からの無線信号に基づく通信干渉が生じることなく、他の低出力デバイス21から高品質な無線信号を受信できたことを意味する。かかる場合において、低出力デバイス21は、特に高出力デバイス11からの無線信号を受信している状況に無いため、無線通信を継続して行う。
【0030】
検出した無線信号の信号強度が高い場合で、SN比が低い場合は、実際に低出力デバイス21にとって通信を希望している無線信号を受信できていることに加え、実際に通信を希望していない無線信号も受信されていることを意味している。ここで低出力デバイス21にとって通信を希望している無線信号とは、この狭域無線通信範囲20にある他の低出力デバイス21である。また低出力デバイス21にとって通信を希望していない無線信号とは、高出力デバイス11から送信されてくる高信号強度の無線信号である。
【0031】
かかる場合には、低出力デバイス21は、通信干渉が生じている旨を判定することになる。そして、この通信干渉が生じている旨を判定した場合には、低出力デバイス21は、自らの狭域無線通信範囲20内の無線通信を停止する。その結果、通信干渉が生じるのを防止することが可能となる。
【0032】
更に検出した無線信号の信号強度が低い場合で、しかもSN比が低い場合は、低出力デバイス21にとって特に何ら信号を受信できていない状態を示している。かかる場合には、低出力デバイス21は特に無線通信を行うことなく、新たな信号を受信するまえでは、特段の動作を行わない。
【0033】
低出力デバイス21は、上述した処理を、自らに格納されたプログラムに基づいて実行することになる。
【0034】
このように本発明を適用した共存通信システム1において、低出力デバイス21は、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて狭域無線通信範囲内における無線通信を継続して行い、或いは狭域無線通信範囲20内の無線通信を停止する。これにより、低出力デバイス21は、特に高出力デバイス11との間で通信干渉を生じることなく、他のデバイスとの間で無線通信を行うことが可能となる。
【0035】
低出力デバイス11は、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出した場合に、上述した判定を他の図示しないデバイスにおいて行わせるようにしてもよい。かかる場合において、低出力デバイス11は、他の図示しないデバイスに、判定を希望する旨の要求を行い、これに対する承認の応答があった場合に、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を当該他の図示しないデバイスに送信する。次に他の図示しないデバイスは、この受信した無線信号の強度並びにそのSN比に基づいて、上述した判定を行い、判定結果を低出力デバイス11へ送信する。
【0036】
なお、広域無線通信システムにおいて高出力デバイス11から送信される高信号強度の無線信号は、IEEE802.11規格に基づくTVWS信号であることを前提としているが、これに限定されるものではなく、少なくとも低出力デバイス21よりも高信号強度の無線信号を送信し、しかもその通信範囲が狭域無線通信範囲20よりも広いものであれば、いかなる規格の信号であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 共存通信システム
10 広域無線通信範囲
11 高出力デバイス
20 狭域無線通信範囲
21 低出力デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力デバイスから広域無線通信範囲内に高信号強度の無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、
上記広域無線通信範囲内に位置し、当該広域無線通信範囲よりも狭い狭域無線通信範囲において低出力デバイスにより低信号強度の無線信号により通信可能な狭域無線通信システムとを備え、
上記低出力デバイスは、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて、上記狭域無線通信範囲内における無線通信を継続して行い、或いは上記狭域無線通信範囲内の無線通信を停止すること
を特徴とする無線通信共存システム。
【請求項2】
上記広域無線通信システムにおいて高出力デバイスから送信される高信号強度の無線信号は、IEEE802.11規格に基づくTVWS(Television White Space)信号であること
を特徴とする請求項1記載の無線通信共存システム。
【請求項3】
高出力デバイスから広域無線通信範囲内に高信号強度の無線信号を送信可能な広域無線通信システムと、上記広域無線通信範囲内に位置し、当該広域無線通信範囲よりも狭い狭域無線通信範囲において低出力デバイスにより低信号強度の無線信号により通信可能な狭域無線通信システムと共存させる無線通信共存方法において、
上記低出力デバイスにより、受信した無線信号の強度並びにそのSN比を検出し、その検出結果に基づいて、上記狭域無線通信範囲内における無線通信を継続して行い、或いは上記狭域無線通信範囲内の無線通信を停止すること
を特徴とする無線通信共存方法。
【請求項4】
IEEE802.11規格に基づくTVWS(Television White Space)信号からなる高信号強度の無線信号を上記広域無線通信システムにおいて高出力デバイスから送信すること
を特徴とする請求項3記載の無線通信共存方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−89993(P2012−89993A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233590(P2010−233590)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】