説明

無線通信端末、送信制御方法、およびプログラム

【課題】中継された緊急情報を、中継先の車両において正しく受信することができる確率を高めることができる無線通信端末20を提供する。
【解決手段】本発明の無線通信端末20は、他の無線通信端末20から緊急情報を受信した場合に、その後の一定期間をWarning Time期間とし、Warning Time期間中に緊急情報を送信する場合にはWarning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間の算出に用いられる乱数よりも多い個数の乱数を用いてランダム時間を算出し、Warning Time期間中に緊急情報以外のデータを送信する場合にはWarning Time外におけるデータ送信時のランダム時間に追加期間を加えた時間分送信を待機する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも乱数に応じたランダムな時間分待機してから電波を送信することによりCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)を実現する無線通信システムに用いられる無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
車両間で無線による通信を行うことにより、事故や渋滞等の情報を、近くの車両を介して、離れた位置にいる車両へ順次伝達し、危険の回避や渋滞の緩和に役立てる技術の開発が進められている。このような無線通信技術は、無線LANの技術を基にして、例えばIEEE802.11pとして標準化作業が進められている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
IEEE802.11pでは、CSMA/CA方式により、各端末の送信権が制御されている。具体的には、無線チャネルにおいてキャリアセンスを行い、無線チャネルが使用中であれば、空き状態になるまで送信を待機する。そして、無線チャネルが空き状態になった場合に、所定期間(IFS:Inter Frame Space)待機し、その後、乱数に応じたランダムな待ち時間分さらに待機し、それでも無線チャネルが空き状態である場合に電波の送信を行う。
【0004】
現状のIEEE802.11pでは、乱数は0〜3の4つの整数値の中からランダムに1つ選ばれ、選ばれた数値に所定の期間を乗じた期間が、ランダムな待ち時間となる。そのため、3台程度までの無線通信端末が存在する環境では、各端末は、送信タイミングが一致して送信データが衝突する確率を低くすることができる。なお、IEEE802.11pでは、数百メートル程度の通信距離が想定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE802.11p D1.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、路上で事故が発生すると、その周辺に渋滞が発生し、事故現場の半径数百メートル以内には、百台以上の車両が密集する場合も少なくない。そのような場面で、事故車両が事故発生を示す緊急情報を発信した場合、その周辺に存在する百台以上の車両が緊急情報を受信し、次の瞬間、それらの車両が一斉に緊急情報を中継するために送信動作に入ることになる。
【0007】
しかし、上記のIEEE802.11pでは、乱数の値が4通りしか設定されておらず、ほとんどの場合、4通りの値のそれぞれが2台以上の車両によって選択されることになるため、各車両のランダム時間が、他のいずれかの車両のランダム時間と同一となる。そのため、各車両が中継のために送信した緊急情報は、他の車両から中継のために送信された緊急情報と衝突してしまい、中継された緊急情報を他の車両で正しく受信できなくなってしまう。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、中継された緊急情報を、中継先の車両において正しく受信することができる確率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例えば、本発明は、無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも乱数に応じたランダムな時間分待機してから電波を送信することによりCSMA/CAを実現する無線通信システムに用いられる無線通信端末であって、
他の無線通信端末との間で前記CSMA/CA方式に従って無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を介して他の無線通信端末から緊急情報を含むデータを受信した場合に、その後の一定期間をWarning Time期間とし、
Warning Time期間中に緊急情報を含むデータを送信する場合には、Warning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間の算出に用いられる乱数よりも多い個数の緊急時用乱数を用いてランダム時間を算出し、
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも算出したランダム時間分待機してから対応するデータを前記無線通信手段に送信させる緊急時送信制御手段と
を備えることを特徴とする無線通信端末を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中継された緊急情報を、中継先の車両において正しく受信することができる確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システム10の構成を示すシステム構成図である。
【図2】無線通信端末20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】データパケットの構成の一例を示す概念図である。
【図4】各パラメータの値の一例を示す図である。
【図5】無線通信端末20の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】通常送信処理(S200)の一例を示すフローチャートである。
【図7】Warning Time期間中の通常データ送信処理(S300)の一例を示すフローチャートである。
【図8】緊急情報中継処理(S400)の一例を示すフローチャートである。
【図9】各車両に搭載された無線通信端末20の動作を説明するための概念図である。
【図10】無線通信端末20の機能を実現するコンピュータ40の構成の一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システム10の構成を示すシステム構成図である。無線通信システム10は、複数の車両のそれぞれに搭載された無線通信端末20を備える。
【0014】
図1において、符号14は、事故を起こした車両11に搭載されている無線通信端末20であって、緊急事態を示す緊急情報を発信する無線通信端末20の通信可能範囲の境界を示している。また、符号15は、車両11から車両13までの距離よりも、車両13との距離が短い車両12の中で、車両13からの距離が最も長い車両12(図1の例では車両12−5)に搭載されている無線通信端末20の通信可能範囲の境界を示している。
【0015】
また、符号16は、車両11から車両13までの距離よりも車両13との距離が短いそれぞれの車両12に搭載されている無線通信端末20によって中継された緊急情報が、所定以上の電波強度で届く領域を示している。車両13は、領域16内に位置しており、車両11から、車両11に搭載された無線通信端末20からの電波を所定以上の強度で受信することができない距離に位置している。
【0016】
図1に示す場面において、車両11に搭載されている無線通信端末20から発信された緊急情報を、それぞれの車両12に搭載されている無線通信端末20が中継のために一斉に送信するとすれば、送信された緊急情報は、無線チャネル上で衝突してしまい、車両13は、緊急情報を正しく受信できない。
【0017】
たとえ、乱数を使うことで各無線通信端末20が送信タイミングをずらしたとしても、従来のIEEE802.11pでは、乱数は4つの値しかとらないため、ほとんどの場合、各無線通信端末20のランダム時間が他のいずれかの無線通信端末20のランダム時間と同一となり、中継のために送信された緊急情報は、無線チャネル上で衝突してしまう。本実施形態の無線通信端末20は、そのような問題を解決することを目的とする。
【0018】
図2は、それぞれの車両に搭載される無線通信端末20の機能構成の一例を示すブロック図である。無線通信端末20は、無線通信部21、緊急時送信制御部22、通常時送信制御部23、緊急事態検出部24、緊急情報作成部25、およびアプリケーション処理部26を有する。
【0019】
まず、緊急事態が発生していない通常の状態において車両11、12、または13に搭載されている無線通信端末20の動作について説明する。
【0020】
アプリケーション処理部26は、渋滞情報、路面情報、または車両の位置情報などの車両の走行状況に関する情報を含む通常データを生成し、生成した通常データを含む、例えば図3に示したようなデータパケットを作成する。図3に示したフレームデータにおいて、ヘッダ30には宛先アドレスや送信元アドレス等が格納され、種別31には緊急情報を含むか否かを示す情報が格納され、ペイロード32にはデータ本体が格納される。
【0021】
図3に示した例において、アプリケーション処理部26は、ヘッダ30に宛先アドレスおよび送信元アドレスを、種別31に緊急情報を含まない旨を示す情報を、ペイロード32に通常データを、それぞれ格納したデータパケットを作成する。そして、アプリケーション処理部26は、作成したデータパケットおよび当該データパケットの送信要求を通常時送信制御部23へ送る。
【0022】
通常時送信制御部23は、アプリケーション処理部26からデータパケットを受け取った場合に、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させる。無線通信部21は、通常時送信制御部23からの指示に応じて、アンテナ28を介して無線チャンネル上でキャリアセンスを実行し、キャリアの有無を通常時送信制御部23に通知する。
【0023】
そして、通常時送信制御部23は、無線チャネルが空き状態である場合に所定時間(IFS)待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合、さらに、乱数に応じたランダム時間Tn分待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合にアプリケーション処理部26から受け取った緊急情報を含まないデータパケットを無線通信部21に送信させる。
【0024】
通常時送信制御部23は、ランダム時間Tnを、例えば下記の算出式(1)を用いて算出する。
【0025】
n=ts×f(CWn) ・・・(1)
ここで、tsは予め定められたタイムスロットの期間(例えば9μ秒)を示しており、f(x)は0からxまでの整数の中からランダムに1つを選び出す関数を示しており、CWnは緊急情報を含まないデータパケットあるいはWarning Time期間外に送信される緊急情報を含むデータパケットにおいて用いられる乱数の最大値(例えば3)を示している。
【0026】
そして、通常時送信制御部23は、算出したランダム時間Tn分待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合にアプリケーション処理部26から受け取った緊急情報を含まないデータパケットを無線通信部21に送信させる。無線通信部21は、通常時送信制御部23から受け取った緊急情報を含まないデータパケットに対して、符号化や誤り訂正等を施し、符号化や誤り訂正等が施されたデータパケットに応じて所定の変調を加えた電波を、アンテナ28を介して送信する。
【0027】
次に、事故を起こした車両11に搭載されている無線通信端末20の動作について説明する。
【0028】
緊急事態検出部24は、加速センサや温度センサ等のセンサ27からの情報を取得し、取得した情報に基づいて事故等の緊急事態が発生したか否かを判定する。緊急事態が発生した場合、緊急事態検出部24は、緊急事態の内容を示す情報を緊急情報作成部25に通知する。
【0029】
緊急情報作成部25は、緊急事態検出部24から緊急事態の内容を示す情報が通知された場合に、例えば図3に示したようなデータパケットを作成し、作成したデータパケットおよび当該データパケットの送信要求を緊急時送信制御部22へ送る。図3に示した例において、緊急情報作成部25は、ヘッダ30に宛先としてブロードキャストを示すアドレスを、種別31に緊急情報を含む旨を示す情報を、ペイロード32に緊急情報の内容を示すデータ本体を、それぞれ格納したデータパケットを作成する。
【0030】
緊急時送信制御部22は、緊急情報作成部25からデータパケットを受け取った場合に、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させる。無線通信部21は、緊急時送信制御部22からの指示に応じて、アンテナ28を介して無線チャンネル上でキャリアセンスを実行し、キャリアの有無を緊急時送信制御部22に通知する。
【0031】
そして、緊急時送信制御部22は、無線チャネルが空き状態である場合に所定時間(IFS)待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合、さらに、乱数に応じたランダム時間Tnを例えば前述の算出式(1)を用いて算出する。
【0032】
そして、緊急時送信制御部22は、算出したランダム時間Tn分待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合に緊急情報作成部25から受け取ったデータパケットを無線通信部21に送信させる。そして、緊急時送信制御部22は、その後の所定時間がWarning Time期間であることを通常時送信制御部23に通知する。
【0033】
無線通信部21は、緊急時送信制御部22から受け取った緊急情報を含むデータパケットに対して、符号化や誤り訂正等を施し、符号化や誤り訂正等が施されたデータパケットに応じて所定の変調を加えた電波を、アンテナ28を介して送信する。
【0034】
通常時送信制御部23は、Warning Time期間中にアプリケーション処理部26から緊急情報を含まないデータパケットを受け取った場合、あるいは、アプリケーション処理部26から受け取った緊急情報を含まないデータパケットの送信待ち時間中にWarning Time期間中である旨を緊急時送信制御部22から通知された場合に、当該データパケットを緊急時送信制御部22へ送る。
【0035】
Warning Time期間中に通常時送信制御部23から緊急情報を含まないデータパケットを受け取った場合、あるいは、アプリケーション処理部26から受け取った緊急情報を含まないデータパケットの送信待ち時間中にWarning Time期間中である旨を緊急時送信制御部22から通知された場合、緊急時送信制御部22は、下記の算出式(2)を用いて、Warning Time期間中に緊急情報を含まないデータパケットを送信する際のランダム時間Twnを算出する。
【0036】
wn=ts×{f(CWn)+ACW} ・・・(2)
ここで、ACW(Additional Contention Window)は、本実施形態においては例えば1024である。なお、ACWとしては、Warning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信する際に用いられる乱数の最大値(後述するCWw)よりも大きい値が用いられる。
【0037】
そして、緊急時送信制御部22は、算出したランダム時間Twn分待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合に通常時送信制御部23からから受け取ったデータパケットを無線通信部21に送信させる。無線通信部21は、緊急時送信制御部22から受け取った緊急情報を含まないデータパケットに対して、符号化や誤り訂正等を施し、符号化や誤り訂正等が施されたデータパケットに応じて所定の変調を加えた電波を、アンテナ28を介して送信する。
【0038】
次に、事故を起こした車両11の近傍に位置する車両12に搭載されている無線通信端末20の動作について説明する。
【0039】
無線通信部21を介して他の無線通信端末20から緊急情報を含むデータパケットを受信した場合、緊急時送信制御部22は、その後の所定時間をWarning Time期間とし、通常時送信制御部23にWarning Time期間である旨を通知する。そして、緊急時送信制御部22は、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させる。無線通信部21は、緊急時送信制御部22からの指示に応じて、アンテナ28を介して無線チャンネル上でキャリアセンスを実行し、キャリアの有無を緊急時送信制御部22に通知する。
【0040】
そして、緊急時送信制御部22は、無線チャネルが空き状態である場合に所定時間(IFS)待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合、さらに、乱数に応じたランダム時間Tw分待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合に、受信した緊急情報を含むデータパケットを無線通信部21に送信させる。無線通信部21は、緊急時送信制御部22から受け取った緊急情報を含むデータパケットに対して、符号化や誤り訂正等を施し、符号化や誤り訂正等が施されたデータパケットに応じて所定の変調を加えた電波を、アンテナ28を介して送信する。
【0041】
ここで、緊急時送信制御部22は、下記の算出式(3)を用いて、Warning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信する際のランダム時間Twを算出する。
【0042】
w=ts×f(CWw) ・・・(3)
ここで、CWwはWarning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信する際に用いられる乱数の最大値(例えば1023)を示している。
【0043】
そして、通常時送信制御部23は、Warning Time期間中にアプリケーション処理部26から緊急情報を含まないデータパケットを受け取った場合、あるいは、アプリケーション処理部26から受け取った緊急情報を含まないデータパケットの送信待ち時間中にWarning Time期間中である旨を緊急時送信制御部22から通知された場合に、当該データパケットを緊急時送信制御部22へ送る。
【0044】
Warning Time期間中に通常時送信制御部23から緊急情報を含まないデータパケットを受け取った場合、あるいは、アプリケーション処理部26から受け取った緊急情報を含まないデータパケットの送信待ち時間中にWarning Time期間中である旨を緊急時送信制御部22から通知された場合、緊急時送信制御部22は、前述の算出式(2)を用いて、Warning Time期間中に緊急情報を含まないデータパケットを送信する際のランダム時間Twnを算出する。
【0045】
そして、緊急時送信制御部22は、算出したランダム時間Twn分待機し、その間も無線チャネルが空き状態である場合に通常時送信制御部23からから受け取ったデータパケットを無線通信部21に送信させる。無線通信部21は、緊急時送信制御部22から受け取った緊急情報を含まないデータパケットに対して、符号化や誤り訂正等を施し、符号化や誤り訂正等が施されたデータパケットに応じて所定の変調を加えた電波を、アンテナ28を介して送信する。
【0046】
ここで、ランダム時間の算出に用いられる各パラメータの値をまとめると、例えば図4のようになる。図4に示すように、緊急情報の有無にかかわらず、Warning Time期間外のランダム時間Tnはts×0〜ts×3である。また、Warning Time期間中においては、緊急情報を含まないデータパケットのランダム時間Twnはts×1024〜ts×1027であり、緊急情報を含むデータパケットのランダム時間Twはts×0〜ts×1023である。
【0047】
このように、Warning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信する場合(即ち緊急情報を含むデータパケットを中継する場合)、緊急時送信制御部22は、CW(Contention Window)の値を、緊急情報を含まないデータパケットを送信する場合のCW(図4の例では3)よりも大きな値(図4の例では1023)とする。これにより、百台以上の車両12に搭載されたそれぞれの無線通信端末20が、車両11の無線通信端末20から発信された緊急情報を含むデータパケットをほとんど同時に受信した場合であっても、緊急情報を含むデータパケットを衝突することなく効率よく無線チャネル上に送出することができる。
【0048】
また、緊急時送信制御部22は、Warning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信する場合には0〜1023の中から選択した乱数を用いてランダム時間Twを算出し、Warning Time期間中に緊急情報を含まないデータパケットを送信する場合には0〜3の中から選択した乱数に1024を加えた値を用いてランダム時間Twnを算出する。これにより、Warning Time期間中において、緊急情報を含まないデータパケットが最も早く送信されるタイミング(即ち乱数として0が選択された場合)は、緊急情報を含むデータパケットが最も遅く送信されるタイミング(即ち乱数として1023が選択された場合)よりも後となる。
【0049】
これにより、緊急情報を含むデータパケットは、緊急情報を含まないデータパケットよりも先に送信される。従って、無線通信端末20は、緊急情報を含むデータパケットを、緊急情報を含まないデータパケットよりも優先して送信することができる。また、Warning Time期間中に乱数値0〜1023を取り合う無線通信端末20は、Warning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信する無線通信端末20に限られるため、緊急情報を含むデータパケットの送信タイミングが同一になる確率をさらに低くすることができる。
【0050】
図5は、無線通信端末20の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、搭載されている車両のエンジンが始動する等の所定のタイミングで、無線通信端末20は、本フローチャートに示す動作を開始する。
【0051】
まず、緊急事態検出部24は、センサ27からの情報を取得し、取得した情報に基づいて事故等の緊急事態が発生したか否かを判定する(S100)。緊急事態が発生した場合(S100:Yes)、緊急事態検出部24は、緊急事態の内容を示す情報を緊急情報作成部25に通知する。
【0052】
次に、緊急情報作成部25は、緊急情報を含むデータパケットを作成し、作成したデータパケットを緊急時送信制御部22へ送る(S101)。そして、緊急時送信制御部22は、後述する通常送信処理を実行して、緊急情報を含むデータパケットを無線通信部21に送信させる(S200)。
【0053】
次に、緊急時送信制御部22は、通常時送信制御部23にWarning Time期間である旨を通知し、Warning Time期間をカウントするためのWTタイマをスタートさせる(S102)。そして、緊急時送信制御部22は、緊急情報を含まないデータパケットの送信をアプリケーション処理部26から要求されたか否かを判定する(S103)。
【0054】
データパケットの送信をアプリケーション処理部26から要求されていない場合(S103:No)、緊急時送信制御部22は、ステップS104に示す処理を実行する。一方、データパケットの送信をアプリケーション処理部26から要求された場合(S103:Yes)、緊急時送信制御部22は、後述するWarning Time期間中の通常データ送信処理を実行し(S300)、WTタイマが終了したか否かを判定する(S104)。
【0055】
WTタイマが終了していない場合(S104:No)、緊急時送信制御部22は、再びステップS103に示した処理を実行する。一方、WTタイマが終了した場合(S104:Yes)、緊急事態検出部24は、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0056】
ステップS100において、緊急事態が発生していない場合(S100:No)、緊急時送信制御部22は、無線通信部21を介して他の無線通信端末20から緊急情報を含むデータパケットを受信したか否かを判定する(S105)。緊急情報を含むデータパケットを受信していない場合(S105:No)、緊急事態検出部24は、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0057】
緊急情報を含むデータパケットを受信した場合(S105:Yes)、緊急時送信制御部22は、後述する緊急情報中継処理を実行し(S400)、緊急事態検出部24は、再びステップS100に示した処理を実行する。
【0058】
図6は、通常送信処理(S200)の一例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、緊急時送信制御部22は、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させ(S201)、無線チャネル上に他の無線通信端末20からのキャリアが検出されたか否かを判定する(S202)。無線チャネル上にキャリアが検出されていない場合(S202:No)、緊急時送信制御部22は、IFSタイマをスタートさせる(S203)。
【0060】
次に、緊急時送信制御部22は、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させ(S204)、無線チャネル上に他の無線通信端末20からのキャリアが検出されたか否かを判定する(S205)。無線チャネル上にキャリアが検出された場合(S205:Yes)、緊急時送信制御部22は、再びステップS201に示した処理を実行する。
【0061】
無線チャネル上にキャリアが検出されていない場合(S205:No)、緊急時送信制御部22は、IFSタイマが終了したか否かを判定する(S206)。IFSタイマが終了していない場合(S206:No)、緊急時送信制御部22は、再びステップS204に示した処理を実行する。
【0062】
IFSタイマが終了した場合(S206:Yes)、緊急時送信制御部22は、通常データ送信時の乱数f(CWn)を算出し(S207)、算出した乱数f(CWn)にスロット期間tsを乗じてランダム時間Tnを算出する(S208)。そして、緊急時送信制御部22は、算出したランダム時間TnをカウントするためのTnタイマをスタートさせる(S209)。
【0063】
次に、緊急時送信制御部22は、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させ(S210)、無線チャネル上にキャリアが検出されたか否かを判定する(S211)。無線チャネル上にキャリアが検出されなかった場合(S211:No)、緊急時送信制御部22は、ステップS215に示す処理を実行する。
【0064】
無線チャネル上にキャリアが検出された場合(S211:Yes)、緊急時送信制御部22は、Tnタイマを一時停止させ(S212)、ステップS201からS206に示した処理を実行する(S213)。そして、緊急時送信制御部22は、Tnタイマによるカウントを再開させ(S214)、Tnタイマが終了したか否かを判定する(S215)。
【0065】
nタイマが終了していない場合(S215:No)、緊急時送信制御部22は、再びステップS210に示した処理を実行する。一方、Tnタイマが終了した場合(S215:Yes)、緊急時送信制御部22は、緊急情報を含むデータパケットを無線通信部21に送信させ(S216)、本フローチャートに示した通常送信処理を終了する。
【0066】
ここで、図9を参照して、図6に示した通常送信処理について説明を加える。図9に示すように、車両11に搭載された無線通信端末20は、時刻t0において緊急事態を検出し、緊急情報を含むデータパケットを作成する。
【0067】
そして、車両11の無線通信端末20は、IFSタイマによってカウントされている間、無線チャネル上のキャリアを監視し、無線チャネル上にキャリアが存在しなければ、乱数f(CWn)を算出し、それを用いてランダム時間Tnを算出する。図9では、乱数f(CWn)の演算結果として2が算出された例を示している。なお、図9において、IFS期間直後の2つの箱は、それぞれ1つのtsの期間を表わしている。
【0068】
IFSタイマが終了してからTnタイマが終了するまでの間に無線チャネル上にキャリアが存在しなければ、車両11の無線通信端末20は、Tnタイマが終了した時刻t1おいて、緊急情報を含むデータパケットの送信を開始する。そして、車両11の無線通信端末20は、緊急情報を含むデータパケットの送信が完了した時刻t2において、その後の所定期間をWarning Time期間に設定する。
【0069】
次に、Warning Time期間中の通常データ送信処理(S300)について、図7を用いて説明する。
【0070】
まず、緊急時送信制御部22は、通常データ送信時の乱数f(CWn)を算出し(S301)、算出した乱数f(CWn)にACWを加え、スロット期間tsを乗じてランダム時間Twnを算出する(S302)。そして、緊急時送信制御部22は、算出したランダム時間TwnをカウントするためのTwnタイマをスタートさせる(S303)。
【0071】
そして、緊急時送信制御部22は、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させ(S304)、無線チャネル上にキャリアが検出されたか否かを判定する(S305)。無線チャネル上にキャリアが検出されなかった場合(S305:No)、緊急時送信制御部22は、ステップS309に示し処理を実行する。
【0072】
無線チャネル上にキャリアが検出された場合(S305:Yes)、緊急時送信制御部22は、Twnタイマを一時停止させ(S306)、図6のステップS201からS206に示した処理を実行する(S307)。そして、緊急時送信制御部22は、Twnタイマによるカウントを再開させ(S308)、Twnタイマが終了したか否かを判定する(S309)。
【0073】
wnタイマが終了していない場合(S309:No)、緊急時送信制御部22は、再びステップS304に示した処理を実行する。一方、Twnタイマが終了した場合(S309:Yes)、緊急時送信制御部22は、緊急情報を含まないデータパケットを無線通信部21に送信させ(S310)、本フローチャートに示した通常送信処理を終了する。
【0074】
なお、本実施形態では、無線チャネルが空き状態になる前にランダム時間Twnを算出するが、他の形態として、無線チャネルが空き状態か否かを判定している間、あるいは、無線チャネルが空き状態になった後にランダム時間Twnを算出してもよい。
【0075】
ここで、図9を参照して、図7に示した、Warning Time期間中の通常データ送信処理について説明を加える。なお、図9に示した例では、車両11の無線通信端末20は、時刻t0〜時刻t2までの間に、アプリケーション処理部26からデータパケットの送信要求を受信しているものと仮定する。車両11の無線通信端末20は、時刻t2からIFSタイマをスタートさせて無線チャネル上のキャリアの有無を監視する。
【0076】
IFS期間において無線チャネル上にキャリアが存在しなければ、車両11の無線通信端末20は、Warning Time期間中に緊急情報を含まないデータパケットを送信するための乱数f(CWn)を算出し、ACWを加えてtsを乗じた値をランダム時間Twnとして算出する。図9では、車両11の無線通信端末20が乱数f(CWn)として0を算出し、ACWとして1024を加えてts×1024がランダム時間Twnとして算出された例を示している。
【0077】
車両11の無線通信端末20は、無線チャネル上にキャリアが検出された場合(図9の時刻t4〜t5や時刻t7〜t8の期間)に、Twnタイマを一時停止させ、無線チャネル上にキャリアが検出されなくなった場合に、IFSタイマ期間経過後にTwnタイマによるカウントを再開させる。そして、Twnタイマによるカウントが終了した場合(図9の時刻t11)に、車両11の無線通信端末20は、緊急情報を含まないデータパケットの送信を開始する。
【0078】
次に、緊急情報中継処理(S400)について、図8を用いて説明する。
【0079】
まず、緊急時送信制御部22は、通常時送信制御部23にWarning Time期間である旨を通知し、Warning Time期間をカウントするためのWTタイマをスタートさせる(S401)。そして、緊急時送信制御部22は、緊急情報送信時の乱数f(CWw)を算出し(S402)、算出した乱数f(CWw)にスロット期間tsを乗じてランダム時間Twを算出する(S403)。
【0080】
なお、本実施形態では、無線チャネルが空き状態になる前にランダム時間Twを算出するが、他の形態として、無線チャネルが空き状態か否かを判定している間、あるいは、無線チャネルが空き状態になった後にランダム時間Twを算出してもよい。
【0081】
次に、緊急時送信制御部22は、算出したランダム時間TwをカウントするためのTwタイマをスタートさせる(S404)。そして、緊急時送信制御部22は、無線チャネルのキャリアセンスを無線通信部21に実行させ(S405)、無線チャネル上にキャリアが検出されたか否かを判定する(S406)。無線チャネル上にキャリアが検出されなかった場合(S406:No)、緊急時送信制御部22は、ステップS410に示す処理を実行する。
【0082】
無線チャネル上にキャリアが検出された場合(S406:Yes)、緊急時送信制御部22は、Twタイマを一時停止させ(S407)、図6のステップS201からS206に示した処理を実行する(S408)。そして、緊急時送信制御部22は、Twタイマによるカウントを再開させ(S409)、Twタイマが終了したか否かを判定する(S410)。Twタイマが終了していない場合(S410:No)、緊急時送信制御部22は、WTタイマが終了したか否かを判定する(S414)。
【0083】
WTタイマが終了していない場合(S414:No)、緊急時送信制御部22は、再びステップS405に示した処理を実行する。一方、WTタイマが終了した場合(S414:Yes)、緊急時送信制御部22は、送信待ちの緊急情報を含むデータパケットを破棄し(S415)、本フローチャートに示した緊急情報中継処理を終了する。
【0084】
ステップS410において、Twタイマが終了した場合(S410:Yes)、緊急時送信制御部22は、緊急情報を含むデータパケットの送信を無線通信部21に指示し、無線通信部21は、緊急情報を含むデータパケットを送信する(S411)。そして、緊急時送信制御部22は、緊急情報を含まないデータパケットの送信をアプリケーション処理部26から要求されたか否かを判定する(S412)。
【0085】
データパケットの送信をアプリケーション処理部26から要求されていない場合(S412:No)、緊急時送信制御部22は、ステップS413に示す処理を実行する。一方、データパケットの送信をアプリケーション処理部26から要求された場合(S412:Yes)、緊急時送信制御部22は、図7を用いて説明したWarning Time期間中の通常データ送信処理を実行し(S300)、WTタイマが終了したか否かを判定する(S413)。
【0086】
WTタイマが終了していない場合(S413:No)、緊急時送信制御部22は、再びステップS412に示した処理を実行する。一方、WTタイマが終了した場合(S413)、緊急事態検出部24は、本フローチャートに示した緊急情報中継処理を終了する。
【0087】
ここで、図9を参照して、図8に示した緊急情報中継処理について説明を加える。車両11の無線通信端末20の通信可能範囲内に存在する車両12−1〜3に搭載されている無線通信端末20は、時刻t1〜時刻t2において、車両11の無線通信端末20から送信された緊急情報を受信し、緊急情報の受信が完了した時刻t2において、その後の所定期間をWarning Time期間に設定する。そして、車両12−1〜3の無線通信端末20は、時刻t2からIFSタイマをスタートさせて無線チャネル上のキャリアの有無を監視する。
【0088】
IFS期間において無線チャネル上にキャリアが存在しなければ、車両12−1〜3の各無線通信端末20は、Warning Time期間中に緊急情報を含むデータパケットを送信するための乱数f(CWw)を算出する。図9の例では、車両12−1の無線通信端末20はf(CWw)として3を、車両12−2の無線通信端末20はf(CWw)として1023を、車両12−3の無線通信端末20はf(CWw)として500を、それぞれ算出したものと仮定する。車両12−1〜3の各無線通信端末20は、ts×3、ts×1023、ts×500を、ランダム時間Twとしてそれぞれ算出する。
【0089】
次に、車両12−1の無線通信端末20は、IFS期間およびts×3の期間が終了した時刻t4において、緊急情報を含むデータパケットを送信する。車両11の無線通信端末20の通信可能範囲内に位置していないが、車両12−1〜3の無線通信端末20の通信可能範囲内に位置している車両13の無線通信端末20は、車両12−1の無線通信端末20から送信された緊急情報を含むデータパケットを時刻t4〜t5において受信する。
【0090】
その後、時刻t7においてランダム時間Twが終了した車両12−3の無線通信端末20は、時刻t7〜t8において緊急情報を含むデータパケットを送信し、時刻t9においてランダム時間Twが終了した車両12−2の無線通信端末20は、時刻t9〜t10において緊急情報を含むデータパケットを送信する。
【0091】
このように、車両11の無線通信端末20から発信された緊急情報を含むデータパケットを受信した車両12−1〜3の無線通信端末20は、データパケットの衝突が発生しないタイミングで緊急情報を含むデータパケットを中継するために送信できる可能性を高めることができる。これにより、車両11の無線通信端末20の通信可能範囲内に位置していない車両13の無線通信端末20は、緊急情報を含むデータパケットを確実に受信することができる可能性が高まる。
【0092】
また、Warning Time期間中において、緊急情報を含まないデータパケットの送信開始時刻は、図9において車両11の無線通信端末20の動作が示すように、最も早くてもts×1024の期間が経過した時刻t11の後であるため、緊急情報を含むデータパケットが最も遅く送信される時刻t9〜t10の期間よりも後である。そのため、Warning Time期間中において、緊急情報を含むデータパケットは、緊急情報を含まないデータパケットよりも確実に先に送信される。
【0093】
図10は、無線通信端末20の機能を実現するコンピュータ40の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)41、RAM(Random Access Memory)42、ROM(Read Only Memory)43、無線機44、および入出力インターフェイス(I/F)45を備える。
【0094】
CPU41は、ROM43に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM43は、コンピュータ40の起動時にCPU41によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ40のハードウェアに依存するプログラム、CPU41によって実行されるその他のプログラム等を格納する。
【0095】
無線機44は、アンテナ28を介して受信した電波を復調し、復号化や誤り訂正等を行い、復号化や誤り訂正等が施されたデータをCPU41に提供する。また、無線機44は、CPU41が生成したデータに、符号化や誤り訂正等を施し、符号化や誤り訂正等が施されたデータに応じて所定の変調を加えた電波をアンテナ28を介して送信する。
【0096】
入出力インターフェイス45は、センサ27からの信号を受信してCPU41へ送る。また、入出力インターフェイス45は、キーパッド等の入力装置やLCD等の出力装置を制御し、入力装置から取得したデータをCPU41へ送ると共に、CPU41が生成したデータを出力装置へ送る。
【0097】
また、入出力インターフェイス45は、他の装置からプログラムまたはデータを取得し、RAM42を介してCPU41に提供する。CPU41は、入出力インターフェイス45を介して取得したプログラムをRAM42上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。コンピュータ40のCPU41は、RAM42上にロードされたプログラムを実行することにより、無線通信部21、緊急時送信制御部22、通常時送信制御部23、緊急事態検出部24、緊急情報作成部25、およびアプリケーション処理部26の各機能を実現する。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0099】
上記説明から明らかなように、本実施形態の無線通信端末20によれば、中継された緊急情報を、中継先の車両において正しく受信することができる確率を高めることができる。
【0100】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0101】
例えば、上記した実施形態において、無線通信端末20は、車両に搭載され、車両に関する緊急情報を送信するようにしたが、本発明はこれに限られない。例えば、無線通信端末20は、無線通信機能を有する装置であれば、車両以外の船舶や航空機、ロボット等の移動体に搭載されていてもよく、固定的に設置されている路側機に搭載されていてもよい。
【0102】
また、上記した実施形態では、緊急情報を送信する場合を例に説明したが、本発明の適用対象となる情報は緊急情報に限定されず、緊急情報以外の情報を送信する際にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
10・・・無線通信システム、11・・・車両、12・・・車両、13・・・車両、14・・・境界、15・・・境界、16・・・領域、20・・・無線通信端末、21・・・無線通信部、22・・・緊急時送信制御部、23・・・通常時送信制御部、24・・・緊急事態検出部、25・・・緊急情報作成部、26・・・アプリケーション処理部、27・・・センサ、28・・・アンテナ、30・・・ヘッダ、31・・・種別、32・・・ペイロード、40・・・コンピュータ、41・・・CPU、42・・・RAM、43・・・ROM、44・・・無線機、45・・・入出力インターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも乱数に応じたランダムな時間分待機してから電波を送信することによりCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)を実現する無線通信システムに用いられる無線通信端末であって、
他の無線通信端末との間で前記CSMA/CA方式に従って無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を介して他の無線通信端末から緊急情報を含むデータを受信した場合に、その後の一定期間をWarning Time期間とし、
Warning Time期間中に緊急情報を含むデータを送信する場合には、Warning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間の算出に用いられる乱数よりも多い個数の緊急時用乱数を用いてランダム時間を算出し、
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも算出したランダム時間分待機してから対応するデータを前記無線通信手段に送信させる緊急時送信制御手段と
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信端末であって、
前記緊急時送信制御手段は、
Warning Time期間中に緊急情報を含まないデータを送信する場合には、Warning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間に追加期間を加えた時間を、ランダム時間として算出し、無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも算出したランダム時間分待機してから対応するデータを前記無線通信手段に送信させることを特徴とする無線通信端末。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信端末であって、
前記緊急時送信制御手段は、
Warning Time期間中に緊急情報を含むデータを送信する場合には、予め定められた微小期間に前記緊急時用乱数の値を乗じてランダム時間を算出し、
前記追加期間は、
前記予め定められた微小期間に前記緊急時用乱数の最大値を乗じた期間よりも長いことを特徴とする無線通信端末。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信端末であって、
前記緊急時送信制御手段は、
無線チャネルが空き状態にならず、Warning Time期間中に前記緊急情報を含むデータを送信することができなかった場合には、当該緊急情報を破棄することを特徴とする無線通信端末。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の無線通信端末であって、
緊急事態を検出する緊急事態検出手段と、
前記緊急事態検出手段によって緊急事態が検出された場合に、検出された緊急事態に関する情報を含む緊急情報を作成する緊急情報作成手段と
をさらに備え、
前記緊急時送信制御手段は、
前記緊急情報作成手段によって作成された緊急情報を含むデータを前記無線通信手段に送信させた場合に、その後の一定期間をWarning Time期間とし、
Warning Time期間中に緊急情報を含まないデータを送信する場合には、Warning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間に追加期間を加えた時間を、ランダム時間として算出し、
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも算出したランダム時間分待機してから、緊急情報を含まないデータを前記無線通信手段に送信させることを特徴とする無線通信端末。
【請求項6】
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも乱数に応じたランダムな時間分待機してから電波を送信することによりCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)を実現する無線通信システムに用いられる無線通信端末における送信制御方法であって、
前記無線通信端末が、
他の無線通信端末から緊急情報を含むデータを受信した場合に、その後の一定期間をWarning Time期間とするステップと、
Warning Time期間中に緊急情報を含むデータを送信する場合には、Warning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間の算出に用いられる乱数よりも多い個数の緊急時用乱数を用いてランダム時間を算出するステップと、
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも算出したランダム時間分待機してから対応するデータを送信するステップと
を実行することを特徴とする送信制御方法。
【請求項7】
コンピュータを、無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも乱数に応じたランダムな時間分待機してから電波を送信することによりCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)を実現する無線通信システムに用いられる無線通信端末として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
他の無線通信端末から緊急情報を含むデータを受信した場合に、その後の一定期間をWarning Time期間として設定する機能、
Warning Time期間中に緊急情報を含むデータを送信する場合には、Warning Time期間外におけるデータ送信時のランダム時間の算出に用いられる乱数よりも多い個数の緊急時用乱数を用いてランダム時間を算出する機能、および
無線チャネルが空き状態になってから、少なくとも算出したランダム時間分待機してから対応するデータを送信する機能
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−259025(P2011−259025A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129191(P2010−129191)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】