無線通信端末
【課題】他の装置が使用するアプリケーションに関する情報を適切に受信しつつ消費電力を低減する。
【解決手段】移動可能な無線通信端末STA1が、他の無線通信装置STA2との間にMAC層レベルのアソシエーションを確立するMAC層制御部20と、アソシエーションの確立前または確立過程において、他の無線通信装置STA2が使用可能なアプリケーションに関する第1情報AIを示す情報要素IEを含んだMACフレームFを他の無線通信装置STA2から受信する受信部10と、自機STA1が使用可能なアプリケーションに関する第2情報501,502,503を記憶する記憶部50と、第1情報AIと第2情報501,502,503とが一致した場合にはアソシエーションの確立を実行し、第1情報AIと第2情報501,502,503とが一致しない場合にはアソシエーションの確立を中止する判断部40とを備える。
【解決手段】移動可能な無線通信端末STA1が、他の無線通信装置STA2との間にMAC層レベルのアソシエーションを確立するMAC層制御部20と、アソシエーションの確立前または確立過程において、他の無線通信装置STA2が使用可能なアプリケーションに関する第1情報AIを示す情報要素IEを含んだMACフレームFを他の無線通信装置STA2から受信する受信部10と、自機STA1が使用可能なアプリケーションに関する第2情報501,502,503を記憶する記憶部50と、第1情報AIと第2情報501,502,503とが一致した場合にはアソシエーションの確立を実行し、第1情報AIと第2情報501,502,503とが一致しない場合にはアソシエーションの確立を中止する判断部40とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表される多機能携帯電話が普及している。今後、多機能携帯電話の販売量はさらに大きく伸びるものと予測されている。一般的に、多機能携帯電話は近接無線通信用のインターフェース(無線LANまたはブルートゥース(登録商標)を利用した通信インターフェース)を有しており、多機能携帯電話の魅力の一因となっている。
【0003】
携帯電話以外の携帯型機器においても、無線LANまたはブルートゥースを利用した通信が可能となりつつある。例えば、非特許文献1に開示されているように、任天堂株式会社のゲーム機器で実行可能なすれ違い通信(StreetPass Communication)では、互いに接近している移動可能なゲーム機器同士で通信が可能である。すなわち、基地局を介さずに端末間での直接的な通信が可能である。以下、端末間での直接的な通信を「端末間通信」と呼ぶ。すれ違い通信には、IEEE 802.11(非特許文献2)が使用される。
【0004】
図1を参照して、従来技術における端末間通信の接続開始手順を説明する。無線通信端末は、無線通信可能な他の装置(無線通信端末、アクセスポイント又はその他の装置)を発見するためのスキャニングを実行する(ステップS101)。スキャニングにより他の装置を発見した無線通信端末は、他の装置との間で認証(authentication)およびアソシエーション確立を実行する(ステップS102)。アソシエーションの確立後、無線通信端末は、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)により他の装置からIPアドレスを取得し(ステップS103)、他の装置との間にTCPコネクションを確立するためにSYNセグメントを送信する(ステップS104)。SYNセグメントを受信した他の装置は、無線通信端末にSYN/ACKセグメントを送信する。無線通信装置は、受信したSYN/ACKセグメントが示すポート番号に基づいて他の装置が使用するアプリケーションを特定し、特定されたアプリケーションと無線通信端末自身が使用するアプリケーションとが一致するか否かを判定する(ステップS105)。アプリケーションが一致した場合には(ステップS105:YES)、受信したSYN/ACKセグメントに対してACKセグメントを送信してTCPコネクションを確立し(ステップS106)、アプリケーション層での通信を開始する(ステップS107)。他方、アプリケーションが一致しなかった場合には(ステップS105:NO)、SYN/ACKセグメントに対してFINセグメント(またはRSTセグメント)を送信し、TCPコネクションを確立せずに接続を終了する(ステップS108)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】andriasang.com、"Nintendo Brings New Services to 3DS"、[online]、[平成23年3月17日検索]、インターネット(URL:http://www.andriasang.com/e/blog/2010/09/30/3ds_services/)
【非特許文献2】IEEE Computer Society、"IEEE Std 802.11.TM-2007"、IEEE Standard for Information technology、Telecommunications and information exchange between systems、Local and metropolitan area networks、Specific requirements、Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications、2007年6月12日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TCPコネクション確立試行の段階で他の装置が使用するアプリケーションを特定する従来の技術では、アプリケーションが一致しないためアプリケーション層での通信が不可能な場合であっても、他の装置との間でMAC層からトランスポート層までの接続処理が発生する。そのため、無線通信端末の消費電力が過大となる。以上の課題は、移動中にすれ違う他の多数の無線通信端末の各々に対して端末間通信を試行する無線通信端末において特に顕著となる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、他の装置が使用するアプリケーションに関する情報を適切に受信して消費電力を低減することが可能な無線通信端末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線通信端末は、移動可能であり、他の無線通信装置との間にMAC層レベルのアソシエーションを確立するMAC層制御部と、前記アソシエーションの確立前または確立過程において、前記他の無線通信装置が使用可能なアプリケーションに関する第1情報を示す情報要素を含んだMACフレームを前記他の無線通信装置から受信する受信部と、自機が使用可能なアプリケーションに関する第2情報を記憶する記憶部と、前記第1情報と前記第2情報とが一致した場合には前記アソシエーションの確立を実行し、前記第1情報と前記第2情報とが一致しない場合には前記アソシエーションの確立を中止する判断部とを備える。
本明細書において、「(第1情報と第2情報との)一致」とは、第1情報が示す内容と第2情報が示す内容とが完全に同一であることのみを意味するものではなく、例えば、第1情報と第2情報との少なくともいずれか一方が複数の内容を含む場合、第1情報に含まれる特定の内容と第2情報に含まれる特定の内容とが同一であること、すなわち第1情報と第2情報とが部分的に一致することをも包括する概念である。
【0009】
以上の構成によれば、MAC層レベルのアソシエーションの確立前または確立過程においてアプリケーションに関する情報の一致が判断されるため、一致判断のために認証、アソシエーション確立以降の接続処理が必要な構成と比較して、無線通信端末の処理負荷が低減される。したがって、無線通信端末の消費電力を低減することが可能である。また、アプリケーションに関する情報が不一致の場合にはアソシエーションの確立前または確立過程において通信が終了することから、他の無線通信装置にてアプリケーションが起動されることも抑制される。したがって、他の無線通信装置の消費電力もが低減され得る。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記MACフレームは、通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームのいずれかである。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立前または確立過程において用いられるマネジメントフレームがアプリケーションに関する情報(第1情報)を有するから、新たな型のフレームを設けることなく上述した一致の判断を実現することが可能となる。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを特定する情報を含む。また、より好適な態様において、前記アプリケーションを特定する情報は、前記アプリケーションに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置が使用可能なアプリケーションを特定することが可能となる。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションにて使用されるパラメータを特定する情報を含む。また、より好適な態様において、前記パラメータを特定する情報は、前記パラメータに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置のアプリケーションにて使用されるパラメータを特定することが可能となる。
【0013】
本発明の好適な態様において、前記パラメータを特定する情報は、前記他の無線通信装置のユーザが前記アプリケーションにて使用するユーザ識別子である。前記ユーザ識別子は、前記他の無線通信装置のユーザの電子署名に関する情報でもよい。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置のユーザが希望する通信相手であるか否かを判断することができる。
【0014】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末と無線通信を開始すべき時刻を含む。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置が無線通信を開始すべき時刻を把握可能である。したがって、無線通信の再開がより円滑に行われる。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末との無線通信を実行する通信間隔を含む。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置との通信間隔を把握可能である。したがって、間欠的な無線通信がより円滑に行われる。
【0016】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置と前記無線通信端末との間で発生する通信データ量に関する情報を含む。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置との間で発生する通信データ量を把握可能である。したがって、大容量データの送受信による消費電力の増大を避けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の端末間通信の接続開始手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信端末の構成を示すブロック図である。
【図3】端末間通信可能な2つの無線通信端末が接近している状態を示す概略図である。
【図4】本発明の端末間通信の接続開始手順を示すフローチャートである。
【図5】一般的なMACフレームのフォーマットを示す図である。
【図6】IEEE 802.11に規定されるMACヘッダの基本フォーマットを示す図である。
【図7】マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分のフォーマットを示す図である。
【図8】ビーコンフレームFMBのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図9】プローブレスポンスフレームFMRのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図10】実施例1のアプリケーション特定の様子を示す図である。
【図11】実施例1のアプリケーション特定の様子を示す図である。
【図12】実施例2のパラメータ特定の様子を示す図である。
【図13】実施例3のユーザ識別子の一致判定の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
【0019】
<無線通信端末の構成>
図2は、本発明の実施の形態に係る無線通信端末STAの構成を示すブロック図である。無線通信端末STAは、受信部10と、通信制御部20と、アプリケーション通信部30と、判断部40と、記憶部50と、送信部60とを備える。受信部10は無線受信を行うための受信回路であり、送信部60は無線送信を行うための送信回路である。受信部10および送信部60はIEEE 802.11bに準拠した無線インターフェースを含む。通信制御部20、アプリケーション通信部30、および判断部40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。記憶部50は、自機が使用可能なアプリケーションに関する情報を書換え可能に記憶する記憶媒体(例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM))である。
【0020】
アプリケーション通信部30は、端末間通信にて実行されるアプリケーション間通信を実行する機能を有する。すなわち、端末間通信を実行する際、アプリケーション通信部30は端末間通信時に使用されるアプリケーションに従ってデータ信号を生成して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、アプリケーション通信部30から供給されたデータ信号をTCPセグメント→IPパケット→MACフレームFの順に変換して送信部60に供給する。送信部60はMACフレームFを無線通信信号に変換して送信する。一方、受信部10は他の無線通信端末STAが送信した無線通信信号を受信してMACフレームFに変換して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、供給された無線通信信号をMACフレームF→IPパケット→TCPセグメントの順に変換した後、TCPセグメントからデータ信号を生成してアプリケーション通信部30に供給する。
【0021】
また、通信制御部20はMAC層制御部としても機能する。通信制御部20は、自機(無線通信端末STA1)に接近した他の無線通信端末STA2との間でマネジメントフレームFM(後述)を互いに送受信して、MAC層レベルのアソシエーションを確立する機能を有する。すなわち、通信制御部20は、MAC層の機能を実行するMLME(MAC sublayer management entity)である。
【0022】
<アソシエーション確立要否判断の概略>
図3は、端末間通信が可能な2つの無線通信端末STA1,STA2が接近している状態を示す。無線通信端末STA1,STA2の一方または両方が移動しており、無線通信端末STA1の無線通信可能圏RA1に無線通信端末STA2があり、無線通信端末STA2の無線通信可能圏RA2に無線通信端末STA1がある。すなわち、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とは相互に無線通信可能な位置に存在する。
【0023】
図4を参照して、本発明の端末間通信の接続開始手順を説明する。無線通信端末STA1は、無線通信可能な他の装置を発見するためのスキャニングを実行する(ステップS201)。スキャニングの具体的な方式としては、非特許文献2のSubclause 11.1.3に規定されるように、無線通信端末STA1がプローブリクエストフレームFMQを送信し、そのプローブリクエストフレームFMQを受信した他の無線通信端末STA2が返信するプローブレスポンスフレームFMRを受信して端末の発見を行うActive Scanning方式と、他の無線通信端末STAが随時に送信するビーコンフレームFMBを受信して端末の発見を行うPassive Scanning方式とが存在するが、両方式とも端末間通信が可能な他の無線通信端末STAが送信するマネジメントフレームFMを受信してスキャニングを実行する点については共通である。以下では、ビーコンフレームFMBを使用するPassive Scanning方式を例示して説明するが、本発明の構成としてActive Scanning方式も採用可能なことは当然に理解される。
【0024】
無線通信端末STA1の近傍には無線通信端末STA2が存在するので、無線通信端末STA2が送信するビーコンフレームFMBが無線通信端末STA1の受信部10に受信される。スキャニングの過程で無線通信端末STA2を発見した無線通信端末STA1は、ビーコンフレームFMBに含まれる無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションに関する情報と、記憶部50に記憶された無線通信端末STA1が使用可能なアプリケーションに関する情報とが一致するか否かを判断する(詳細は後述される)。アプリケーションが一致すると判断すると(S202:YES)、通信制御部20は無線通信端末STA2との間で認証およびアソシエーション確立を実行する(ステップS204)。アソシエーションが確立されると、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2によって非特許文献2のSubclause 5.2.1に記述されるIBSS(Independent Basic Service Set)が形成される。アソシエーション確立後の手順(ステップS205,S206,S207)は、従来の接続開始手順のうちアプリケーション一致判断を除いたもの(ステップS103,S104,S106)と同様である。
【0025】
他方、使用可能なアプリケーションが一致しないと判断すると(S202:NO)、通信制御部20はスキャニングを中止する(ステップS203)。以上の構成によれば、MAC層での接続中(アソシエーション確立前)にアプリケーション一致の判断がなされるため、アプリケーション一致の判断のために認証、アソシエーション確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクション確立試行が必要な構成と比較して、無線通信端末STA1の処理負荷が低減される。したがって、無線通信端末STA1の消費電力を低減することが可能である。また、アプリケーションが不一致の場合にはMAC層にて通信が終了することから、他の無線通信端末STA2にてアプリケーションが起動されることも抑制される。したがって、スキャニングされた他の無線通信端末STA2の消費電力もが低減され得る。
【0026】
なお、以上の例示では、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とで使用可能なアプリケーションが一致するか否かに基づいてアソシエーション確立要否の判断を実行したが、アプリケーションにて使用されるパラメータが一致するか否かに基づいてアソシエーション確立要否の判断を実行してもよい。
【0027】
<MACフレームの構成>
無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との間で(すなわち、IBSS内で)互いに送受信されるMACフレームFのフォーマットについて以下に詳述する。図5は、一般的なMACフレームFのフォーマットを示す図である。MACフレームFはMAC層のPDU(Protocol Data Unit)であり、MACヘッダ部分とフレームボディ部分とFCS(Frame Check Sequence)部分とを含むビット列である。FCS部分にはMACフレームFの誤り制御信号が格納される。
【0028】
MACフレームFのフレームボディ部分(ペイロード)には送信データが格納される。具体的には、MAC層(第2層、L2)の上位層であるIP層(第3層、L3)のPDUであるIPパケットが格納される。IPパケットはヘッダ部分とデータ部分(ペイロード)とを含み、ヘッダ部分は宛先IPアドレスと送信元IPアドレスとを含む。また、IPパケットのデータ部分にはIP層の上位層であるトランスポート層(第4層、L4)のPDUであるTCPセグメント(又はUDPセグメント。以下同様)が格納される。TCPセグメントはヘッダ部分とデータ部分(ペイロード)とを含み、ヘッダ部分はプログラム(アプリケーション)を特定するポート番号(宛先ポート番号および送信元ポート番号)とを含む。TCPセグメントのデータ部分にはトランスポート層の上位層であるアプリケーション層のデータ、すなわち端末間通信で使用されるアプリケーションのデータが格納される。
【0029】
MACヘッダ部分には、MACフレームFの伝送制御に関与するパラメータが格納される。図6は、IEEE 802.11(非特許文献2のSubclause 7.1.2参照)に規定される無線LANのMACヘッダの基本フォーマットを示す図である。無線LANのMACヘッダは、フレーム制御、デュレーション/ID、アドレス1、アドレス2、アドレス3、シーケンス制御、アドレス4、およびQoS制御の各フィールドを備える。各アドレスフィールド(アドレス1〜アドレス4)には、用途に応じた任意のアドレス(例えば送信元MACアドレス)が格納されるように規定される。
【0030】
無線LANで用いられるMACフレームFは、マネジメントフレームFM(非特許文献2のSubclause 7.2.3参照)、制御フレーム(非特許文献2のSubclause 7.2.1参照)、およびデータフレーム(非特許文献2のSubclause 7.2.2参照)に大別される。このうち、マネジメントフレームFMは以下のフレームを含む(非特許文献のSubclause 7.1.3.1.2参照)。
・通信相手の発見(スキャニング)に使用されるビーコンフレームFMB、プローブリクエストフレームFMQ、およびプローブレスポンスフレームFMR
・通信相手の認証に使用される認証要求フレームおよび認証応答フレーム
・通信相手とのアソシエーション確立の際に使用されるアソシエーション要求フレームおよびアソシエーション応答フレーム
マネジメントフレームFMは、MAC層レベルでの通信制御において通信制御部20にて生成され送信部60から送信される。また、他の無線通信端末STAが送信したマネジメントフレームFMは、受信部10で受信され通信制御部20にて処理される。
【0031】
図7は、マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分のフォーマットを示す図である(非特許文献2のSubclause 7.2.3参照)。マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分は、アドレス1として宛先MACアドレスを、アドレス2として送信元MACアドレスを、アドレス3としてBSS(Basic Service Set)IDを含み、アドレス4フィールドおよびQoS制御フィールドを含まない。
【0032】
マネジメントフレームFMは、MAC層の無線通信制御のためのパラメータを示す複数の情報要素IE(Information Element)をフレームボディ部分に含む。図8は、本発明にて新たに提案されるビーコンフレームFMBのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。従来のビーコンフレームFMBは、非特許文献2のSubclause 7.2.3.1に規定されるように複数の情報要素IE(Timestamp、QoS Capability、及びその他の要素)を含む。本発明に係るビーコンフレームFMBは、新たな情報要素IEとしてアプリケーション関連情報AIをさらに含む。
【0033】
また、図9は、本発明にて新たに提案されるプローブレスポンスフレームFMRのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。従来のプローブレスポンスフレームのフォーマットは非特許文献2のSubclause 7.2.3.9に規定される。本発明のプローブレスポンスフレームFMRは、新たな情報要素IEとしてアプリケーション関連情報AIを含む。
【0034】
同様にして、他のマネジメントフレームFMもフレームボディ部分に新たな情報要素IEとしてアプリケーション関連情報AIを含む。すなわち、本発明のマネジメントフレームFMの各々は、既存の情報要素IEに加え、新たな情報要素IEであるアプリケーション関連情報AIを含む。なお、アプリケーション関連情報AIが配置される箇所はフレームボディ部分の任意の箇所であり、図8および図9に示された箇所に限定されるものでないことは当然に理解される。
【0035】
<アソシエーション確立の要否判断の実施例>
アプリケーション関連情報AIは、無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションに関する任意の情報である。以下、アプリケーション関連情報AIの具体的な内容を実施例とともに説明する。
【0036】
<実施例1 − ポート番号>
図10および図11に、実施例1におけるアプリケーション特定の様子を示す。実施例1では、TCPセグメントのポート番号にてアプリケーションが特定される。
【0037】
無線通信端末STA1の記憶部50には、無線通信端末STA2が送信するTCPセグメントに示される宛先ポート番号(無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションに対応づけられている)と、無線通信端末STA1が使用可能なアプリケーションとの対応関係を示すテーブル501が記憶されている。
【0038】
一般的に、宛先ポート番号を含むTCPセグメントは上位層に透過的に転送されるためMAC層の通信制御には関与しないが、本実施例では、無線通信端末STA2が送信するTCPセグメントに含まれる宛先ポート番号がビーコンフレームFMB内の情報要素IEであるアプリケーション関連情報AIにも格納され、無線通信端末STA1におけるMAC層の通信制御(アソシエーション確立を実行すべきか否かの判断)に利用される。具体的には以下の通りである。
【0039】
無線通信端末STA1がスキャニングを開始する(図4のステップS201)。無線通信端末STA2が送信したビーコンフレームFMBを受信部10が受信して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AIを抽出して判断部40に供給する。判断部40は、アプリケーション関連情報AIが示すTCPセグメントの宛先ポート番号49153がテーブル501に記憶されているか否かを判断する(図10、ステップS202)。テーブル501にはゲームDを示す宛先ポート番号49153が記憶されている(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル501の情報と一致する)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を実行すべきと判断し(ステップS202:YES)、通信制御部20に認証およびアソシエーション確立を指示する(ステップS204)。無線通信端末STA2とのアソシエーション確立後、無線通信端末STA1は無線通信端末STA2からIPアドレスを取得し、TCPコネクションを確立してアプリケーション層の通信(すなわち、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2が使用可能なゲームDに関する通信)を実行する(ステップS204〜S208)。
【0040】
他方、図11を参照して、ポート番号が一致しない場合を考える。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AI(宛先ポート番号49155)を抽出して判断部40に供給する。判断部40は、アプリケーション関連情報AIが示すTCPセグメントの宛先ポート番号49155がテーブル501に記憶されているか否かを判断する(ステップS202)。テーブル501には宛先ポート番号49155が記憶されていない(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル501の情報と一致しない)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を中止すべきと判断し(ステップS202:NO)、通信制御部20にスキャニングの中止を指示する(ステップS204)。
【0041】
以上の実施例では、無線通信端末STA2のTCPセグメントに含まれる宛先ポート番号がアプリケーション関連情報AIにも格納されたが、無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションと対応づけられた送信元ポート番号がアプリケーション関連情報AIに格納されてもよい。その場合、無線通信端末STA1のテーブル501は、送信元ポート番号と無線通信端末STA1が使用可能なアプリケーションの対応とを対応づけるものとなることは当然に理解される。
【0042】
以上のようにして、無線通信端末STA2のTCPセグメントに含まれるポート番号がMAC層の通信制御に活用される。無線通信端末STA1は、アソシエーションの確立前に無線通信端末STA2にて使用可能なアプリケーションを特定することが可能であるから、アプリケーションが一致しない場合にはスキャニングを中止することで、後続するアソシエーションの確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクションの確立といった接続処理を実行しなくて済む。これらの接続処理は、接続確立を要求する側だけでなく接続確立が要求される側においても実行されるから、以上の構成によれば、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2の消費電力が削減される。
【0043】
<実施例2 − IPアドレス>
図12を参照して、アプリケーションにて使用されるパラメータを、IPアドレスを用いて特定する様子を説明する。無線通信端末STA1の記憶部50には、無線通信端末STA2が送信するIPパケットに含まれる宛先IPアドレス(無線通信端末STA2のアプリケーションにて使用されるパラメータに対応)と、無線通信端末STA1のアプリケーションにて使用されるパラメータとの対応関係を示すテーブル502が記憶されている。本実施例においては、使用されるアプリケーションはロールプレイングゲームであり、IPアドレスにて特定されるパラメータは無線通信端末STAのユーザが操作するキャラクターの所在位置である場合が想定される。パラメータが一致する(すなわち、各ユーザが操作するキャラクターの所在位置が無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とで一致する)場合にのみ端末間通信が実行され、アプリケーション内にて必要な情報が交換される(例えば、無線通信端末STA1で実行されるゲーム内に無線通信端末STA2のユーザに対応するキャラクターが登場する)ことが想定され得る。
【0044】
一般的に、宛先IPアドレスを含むIPパケットは上位層に透過的に転送されるためMAC層の通信制御には関与しないが、本実施例では、IPパケットに含まれる宛先IPアドレスがビーコンフレームFMB内の情報要素IEであるアプリケーション関連情報AIに格納され、MAC層の通信制御(アソシエーション確立を実行すべきか否かの判断)に利用される。一般的なクライアント−サーバ型の通信においては、IPアドレスはIP層(多数のノードを含む1つのIPアドレス空間)における一意な論理的位置を示すので自由に設定することは困難であるが、本発明の端末間通信のようなアドホック通信においては、1つのIPアドレス空間(例えば、1つのIBSS)内には相互に無線通信を行う少数(例えば2台)の無線通信端末STAが存在するに過ぎないので、IPアドレスを比較的自由に設定することが可能である。そのため、本実施例では、アプリケーションで使用されるパラメータを特定する値としてIPアドレスを用いる。具体的には以下の通りである。
【0045】
無線通信端末STA1がスキャニングを開始する(ステップS201)。無線通信端末STA2が送信したビーコンフレームFMBを受信部10が受信して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AI(宛先IPアドレス192.168.1.5)を抽出して判断部40に供給する。判断部40は、アプリケーション関連情報AIが示すIPパケットの宛先IPアドレス192.168.1.5が、テーブル502に記憶されているか否かを判断する(図12、ステップS202)。テーブル502には宛先IPアドレス192.168.1.5が記憶されていない(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル502の情報と一致しない)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を中止すべきと判断し(ステップS202:NO)、通信制御部20にスキャニングの中止を指示する(ステップS204)。
【0046】
以上の実施例では、無線通信端末STA2のIPパケットに含まれる宛先IPアドレスがアプリケーション関連情報AIに格納されたが、無線通信端末STA2のアプリケーションにて使用されるパラメータと対応づけられた送信元IPアドレスがアプリケーション関連情報AIに格納されてもよい。その場合、無線通信端末STA1のテーブル502は、送信元IPアドレスと無線通信端末STA1のアプリケーションにて使用されるパラメータとを対応づけるものとなることは当然に理解される。
【0047】
IPアドレスが、無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションと、そのアプリケーションにて使用されるパラメータとの双方を特定してもよい。例えば、宛先IPアドレスの上位24ビット(実施例2では192.168.1)がアプリケーションを特定し、宛先IPアドレスの下位8ビットがパラメータを特定してもよい。また、実施例1と組み合わせて、TCPセグメントのポート番号がアプリケーションを特定し、IPアドレスがパラメータを特定する構成も採用され得る。
【0048】
以上のように、無線通信端末STA2のIPパケットが含むIPアドレスが無線通信端末STA1におけるMAC層の通信制御に利用される。IPアドレスが一致しない場合にはスキャニングを中止するので、後続するアソシエーションの確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクションの確立といった接続処理の実行が省略される。したがって、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2の消費電力が削減される。
【0049】
<実施例3 − ユーザ識別子>
図13を参照して、アプリケーション関連情報AIとしてマネジメントフレームFM(ビーコンフレームFMB)に格納されたユーザ識別子を用いて無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とのアソシエーション確立要否を判断する様子を示す。
【0050】
本実施例では、無線通信端末STA1のユーザがゲームDに関するSNS(Social Networking Service)に加入しており、そのSNS内のメンバーのうち特定のユーザのみとゲームDに関する端末間通信を実行することを前提とする。無線通信端末STA1の記憶部50には、無線通信端末STA2が送信するユーザ識別子と、無線通信端末STA1のユーザが端末間通信を希望するユーザの名前との対応関係を示すテーブル503が記憶されている。テーブル503は、無線通信端末STA1のユーザがSNSのウェブサイトから事前にダウンロードしたデータによって構成されることが可能である。
【0051】
アソシエーション確立要否の判断は以下のように実行される。無線通信端末STA1がスキャニングを開始する(ステップS201)。無線通信端末STA2が送信したビーコンフレームFMBを、受信部10が受信して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AI(ユーザ識別子31045)を抽出して判断部40に供給する。判断部40は、ユーザ識別子31045がテーブル503に記憶されているか否かを判断する(図13、ステップS202)。テーブル503にはユーザ識別子31045が記憶されていない(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル501の情報と一致しない)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を中止すべきと判断し(ステップS202:NO)、通信制御部20にスキャニングの中止を指示する(ステップS204)。
【0052】
以上のように、無線通信端末STA2のユーザ識別子がMAC層の通信制御に活用される。スキャニングにより発見された無線通信端末STA2のユーザが端末間通信を希望するユーザではない場合にはスキャニングを中止するので、後続するアソシエーションの確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクションの確立といった接続処理の実行が省略される。したがって、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2の消費電力が削減される。
【0053】
<変形例>
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0054】
(1)変形例1
以上の各形態においては、Passive Scanning方式でのビーコンフレームFMBが含むアプリケーション関連情報AIに基づいてアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断したが、Active Scanning方式でのプローブリクエストフレームFMQ又はプローブレスポンスフレームFMRが含むアプリケーション関連情報AIに基づいてアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断してもよい。
【0055】
(2)変形例2
以上の各形態においては、スキャニング中にアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断したが、認証中またはアソシエーションの確立過程においてアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断してもよい。認証中に一致を判断する場合には、マネジメントフレームFMである認証要求フレームまたは認証応答フレームが含むアプリケーション関連情報AIを使用して一致の判断をすればよい。また、アソシエーションの確立過程において一致を判断する場合には、マネジメントフレームFMであるアソシエーション要求フレームまたはアソシエーション応答フレームが含むアプリケーション関連情報AIを使用して一致の判断をすればよい。
【0056】
(3)変形例3
以上の各形態においては、アプリケーションを特定する情報として、アプリケーションに関連づけられたポート番号およびIPアドレスを例示し、アプリケーションにて使用されるパラメータを特定する情報として、パラメータに関連づけられたIPアドレスおよびユーザ識別子を例示したが、任意の情報がアプリケーション又はパラメータを特定する情報として用いられ得る。例えば、アプリケーション又はパラメータと関連づけられた情報がIPヘッダ又はTCPヘッダのオプションフィールドに格納され、その情報がアプリケーション関連情報AIとしてマネジメントフレームFMのデータ部分に格納される構成が採用され得る。すなわち、アプリケーション関連情報AIに格納されるのは、そのアプリケーション関連情報AIを送信する無線通信端末STAのアプリケーション又はアプリケーションにて使用されるパラメータを特定し得る任意の情報である。
【0057】
(4)変形例4
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIに格納されるポート番号又はIPアドレスは、そのマネジメントフレームFM内にカプセル化されたTCPセグメントに含まれるポート番号又はそのマネジメントフレームFM内にカプセル化されたIPパケットに含まれるIPアドレスに限定されない。例えば、スキャニングを実行する無線通信端末STA1に送信すべきポート番号又はIPアドレスを無線通信端末STA2の記憶部50に予め記憶しておき、マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIに格納してもよい。送信すべきポート番号又はIPアドレスとは、例えば無線通信端末STA2がスリープ状態に移行した際に起動されていたアプリケーションを示すポート番号又はスリープ状態に移行した際のパラメータ(例えば、ゲーム内の所在位置)を示すIPアドレスである。
【0058】
(5)変形例5
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIに格納されるユーザ識別子として、無線通信端末STAのユーザの電子署名に関する情報を用いてもよい。例えば、無線通信端末STAのユーザの公開鍵データの全部または一部をアプリケーション関連情報AIに格納してユーザ識別に用いてもよい。具体的には、端末間通信を実行した際に通信相手となったユーザの公開鍵データ(マネジメントフレームFMに格納されている)を記憶部50に記憶しておき、次回以降の端末間通信において、過去に端末間通信をしたことのあるユーザであるか否かを識別してもよい。
【0059】
(6)変形例6
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIが、無線通信端末STA2が無線通信端末STA1と無線通信を開始すべき時刻を含んでもよい。例えば、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とで使用されるアプリケーションが一定期間(例えば5分)内での獲得点数を争うゲームGである場合において、再度の無線通信を行って獲得点数情報を交換すべき時刻をアプリケーション関連情報AIが示してもよい。以上の場合、再度の無線通信を実施すべき時刻が既知となることにより円滑に無線通信を再開することが可能となる。なお、無線通信を開始すべき時刻とは、絶対時刻であってもよいし、マネジメントフレームFMの受信時からの相対時刻であってもよい。
【0060】
(7)変形例7
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIアプリケーション関連情報AIが、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とが無線通信すべき通信間隔の情報を含んでもよい。例えば、変形例6のゲームGにおいて、ゲームの途中においても無線通信を定期的に実施して獲得点数を定期的(例えば1分おき)に交換する場合、無線通信を実施すべき間隔をアプリケーション関連情報AIが示してもよい。以上の場合、無線通信を実施すべき通信間隔が既知となることにより間欠的な無線通信が円滑に実行され得る。
【0061】
(8)変形例8
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIが、無線通信端末STA2と無線通信端末STA1との間で発生する無線通信データ量に関する情報を含んでもよい。例えば、楽音情報等の大容量データを送受信することが必要なアプリケーションが無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とに使用される場合において、他の無線通信端末STA2と自機(無線通信端末STA1)との間で発生する通信データ量をアプリケーション関連情報AIが示してもよい。以上の場合、通信データ量を事前に知ることができるので、大容量データの送受信による消費電力の増大を避けることが可能である。なお、通信データ量とは、そのアプリケーションを用いた一度の無線通信において発生する最大のデータ量でもよく、平均データ量でもよい。また、そのアプリケーションを用いた場合に発生する単位時間当たりのデータ量でもよい。
【0062】
(9)変形例9
無線通信端末において、CPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【0063】
(10)変形例10
前記の実施の形態は、IEEE 802.11に準拠しているが、本発明は、IEEE 802.15.1に準拠したブルートゥース(登録商標)による通信もカバーする。
【0064】
(11)変形例11
前述の実施の形態は、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との直接的な端末間通信を行う構成であったが、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との間にアクセスポイントが介在する端末間通信についても適用可能である。
【0065】
(12)変形例12
前述の実施の形態は、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との直接的な端末間通信を行う構成であったが、無線通信端末STA1とアクセスポイントとの間の通信についても適用可能である。例えば、アクセスポイントが特定のアプリケーションとの無線通信のみを許可する場合に、アクセスポイントに許可されるアプリケーションを特定する情報(例えば、ポート番号)をマネジメントフレームFMに格納してアクセスポイントから送信することにより、そのアプリケーションを有さない無線通信端末STA1がそのアクセスポイントにアソシエーションを確立しようとすることを抑制できる。したがって、無線通信端末STA1の消費電力が低減される。
【0066】
前記の実施の形態および変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
AI……アプリケーション関連情報、F……フレーム、FM……マネジメントフレーム、FMB……ビーコンフレーム、FMQ……プローブリクエストフレーム、FMR……プローブレスポンスフレーム、IE……情報要素、RA……無線通信可能圏、STA1,STA2……無線通信端末。10……受信部、20……通信制御部、30……アプリケーション通信部、40……判断部、50……記憶部、60……送信部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表される多機能携帯電話が普及している。今後、多機能携帯電話の販売量はさらに大きく伸びるものと予測されている。一般的に、多機能携帯電話は近接無線通信用のインターフェース(無線LANまたはブルートゥース(登録商標)を利用した通信インターフェース)を有しており、多機能携帯電話の魅力の一因となっている。
【0003】
携帯電話以外の携帯型機器においても、無線LANまたはブルートゥースを利用した通信が可能となりつつある。例えば、非特許文献1に開示されているように、任天堂株式会社のゲーム機器で実行可能なすれ違い通信(StreetPass Communication)では、互いに接近している移動可能なゲーム機器同士で通信が可能である。すなわち、基地局を介さずに端末間での直接的な通信が可能である。以下、端末間での直接的な通信を「端末間通信」と呼ぶ。すれ違い通信には、IEEE 802.11(非特許文献2)が使用される。
【0004】
図1を参照して、従来技術における端末間通信の接続開始手順を説明する。無線通信端末は、無線通信可能な他の装置(無線通信端末、アクセスポイント又はその他の装置)を発見するためのスキャニングを実行する(ステップS101)。スキャニングにより他の装置を発見した無線通信端末は、他の装置との間で認証(authentication)およびアソシエーション確立を実行する(ステップS102)。アソシエーションの確立後、無線通信端末は、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)により他の装置からIPアドレスを取得し(ステップS103)、他の装置との間にTCPコネクションを確立するためにSYNセグメントを送信する(ステップS104)。SYNセグメントを受信した他の装置は、無線通信端末にSYN/ACKセグメントを送信する。無線通信装置は、受信したSYN/ACKセグメントが示すポート番号に基づいて他の装置が使用するアプリケーションを特定し、特定されたアプリケーションと無線通信端末自身が使用するアプリケーションとが一致するか否かを判定する(ステップS105)。アプリケーションが一致した場合には(ステップS105:YES)、受信したSYN/ACKセグメントに対してACKセグメントを送信してTCPコネクションを確立し(ステップS106)、アプリケーション層での通信を開始する(ステップS107)。他方、アプリケーションが一致しなかった場合には(ステップS105:NO)、SYN/ACKセグメントに対してFINセグメント(またはRSTセグメント)を送信し、TCPコネクションを確立せずに接続を終了する(ステップS108)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】andriasang.com、"Nintendo Brings New Services to 3DS"、[online]、[平成23年3月17日検索]、インターネット(URL:http://www.andriasang.com/e/blog/2010/09/30/3ds_services/)
【非特許文献2】IEEE Computer Society、"IEEE Std 802.11.TM-2007"、IEEE Standard for Information technology、Telecommunications and information exchange between systems、Local and metropolitan area networks、Specific requirements、Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications、2007年6月12日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TCPコネクション確立試行の段階で他の装置が使用するアプリケーションを特定する従来の技術では、アプリケーションが一致しないためアプリケーション層での通信が不可能な場合であっても、他の装置との間でMAC層からトランスポート層までの接続処理が発生する。そのため、無線通信端末の消費電力が過大となる。以上の課題は、移動中にすれ違う他の多数の無線通信端末の各々に対して端末間通信を試行する無線通信端末において特に顕著となる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、他の装置が使用するアプリケーションに関する情報を適切に受信して消費電力を低減することが可能な無線通信端末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線通信端末は、移動可能であり、他の無線通信装置との間にMAC層レベルのアソシエーションを確立するMAC層制御部と、前記アソシエーションの確立前または確立過程において、前記他の無線通信装置が使用可能なアプリケーションに関する第1情報を示す情報要素を含んだMACフレームを前記他の無線通信装置から受信する受信部と、自機が使用可能なアプリケーションに関する第2情報を記憶する記憶部と、前記第1情報と前記第2情報とが一致した場合には前記アソシエーションの確立を実行し、前記第1情報と前記第2情報とが一致しない場合には前記アソシエーションの確立を中止する判断部とを備える。
本明細書において、「(第1情報と第2情報との)一致」とは、第1情報が示す内容と第2情報が示す内容とが完全に同一であることのみを意味するものではなく、例えば、第1情報と第2情報との少なくともいずれか一方が複数の内容を含む場合、第1情報に含まれる特定の内容と第2情報に含まれる特定の内容とが同一であること、すなわち第1情報と第2情報とが部分的に一致することをも包括する概念である。
【0009】
以上の構成によれば、MAC層レベルのアソシエーションの確立前または確立過程においてアプリケーションに関する情報の一致が判断されるため、一致判断のために認証、アソシエーション確立以降の接続処理が必要な構成と比較して、無線通信端末の処理負荷が低減される。したがって、無線通信端末の消費電力を低減することが可能である。また、アプリケーションに関する情報が不一致の場合にはアソシエーションの確立前または確立過程において通信が終了することから、他の無線通信装置にてアプリケーションが起動されることも抑制される。したがって、他の無線通信装置の消費電力もが低減され得る。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記MACフレームは、通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームのいずれかである。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立前または確立過程において用いられるマネジメントフレームがアプリケーションに関する情報(第1情報)を有するから、新たな型のフレームを設けることなく上述した一致の判断を実現することが可能となる。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを特定する情報を含む。また、より好適な態様において、前記アプリケーションを特定する情報は、前記アプリケーションに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置が使用可能なアプリケーションを特定することが可能となる。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションにて使用されるパラメータを特定する情報を含む。また、より好適な態様において、前記パラメータを特定する情報は、前記パラメータに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置のアプリケーションにて使用されるパラメータを特定することが可能となる。
【0013】
本発明の好適な態様において、前記パラメータを特定する情報は、前記他の無線通信装置のユーザが前記アプリケーションにて使用するユーザ識別子である。前記ユーザ識別子は、前記他の無線通信装置のユーザの電子署名に関する情報でもよい。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置のユーザが希望する通信相手であるか否かを判断することができる。
【0014】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末と無線通信を開始すべき時刻を含む。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置が無線通信を開始すべき時刻を把握可能である。したがって、無線通信の再開がより円滑に行われる。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末との無線通信を実行する通信間隔を含む。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置との通信間隔を把握可能である。したがって、間欠的な無線通信がより円滑に行われる。
【0016】
本発明の好適な態様において、前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置と前記無線通信端末との間で発生する通信データ量に関する情報を含む。
以上の構成によれば、アソシエーションの確立が完了しなくても、他の無線通信装置との間で発生する通信データ量を把握可能である。したがって、大容量データの送受信による消費電力の増大を避けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の端末間通信の接続開始手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信端末の構成を示すブロック図である。
【図3】端末間通信可能な2つの無線通信端末が接近している状態を示す概略図である。
【図4】本発明の端末間通信の接続開始手順を示すフローチャートである。
【図5】一般的なMACフレームのフォーマットを示す図である。
【図6】IEEE 802.11に規定されるMACヘッダの基本フォーマットを示す図である。
【図7】マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分のフォーマットを示す図である。
【図8】ビーコンフレームFMBのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図9】プローブレスポンスフレームFMRのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。
【図10】実施例1のアプリケーション特定の様子を示す図である。
【図11】実施例1のアプリケーション特定の様子を示す図である。
【図12】実施例2のパラメータ特定の様子を示す図である。
【図13】実施例3のユーザ識別子の一致判定の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
【0019】
<無線通信端末の構成>
図2は、本発明の実施の形態に係る無線通信端末STAの構成を示すブロック図である。無線通信端末STAは、受信部10と、通信制御部20と、アプリケーション通信部30と、判断部40と、記憶部50と、送信部60とを備える。受信部10は無線受信を行うための受信回路であり、送信部60は無線送信を行うための送信回路である。受信部10および送信部60はIEEE 802.11bに準拠した無線インターフェースを含む。通信制御部20、アプリケーション通信部30、および判断部40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。記憶部50は、自機が使用可能なアプリケーションに関する情報を書換え可能に記憶する記憶媒体(例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM))である。
【0020】
アプリケーション通信部30は、端末間通信にて実行されるアプリケーション間通信を実行する機能を有する。すなわち、端末間通信を実行する際、アプリケーション通信部30は端末間通信時に使用されるアプリケーションに従ってデータ信号を生成して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、アプリケーション通信部30から供給されたデータ信号をTCPセグメント→IPパケット→MACフレームFの順に変換して送信部60に供給する。送信部60はMACフレームFを無線通信信号に変換して送信する。一方、受信部10は他の無線通信端末STAが送信した無線通信信号を受信してMACフレームFに変換して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、供給された無線通信信号をMACフレームF→IPパケット→TCPセグメントの順に変換した後、TCPセグメントからデータ信号を生成してアプリケーション通信部30に供給する。
【0021】
また、通信制御部20はMAC層制御部としても機能する。通信制御部20は、自機(無線通信端末STA1)に接近した他の無線通信端末STA2との間でマネジメントフレームFM(後述)を互いに送受信して、MAC層レベルのアソシエーションを確立する機能を有する。すなわち、通信制御部20は、MAC層の機能を実行するMLME(MAC sublayer management entity)である。
【0022】
<アソシエーション確立要否判断の概略>
図3は、端末間通信が可能な2つの無線通信端末STA1,STA2が接近している状態を示す。無線通信端末STA1,STA2の一方または両方が移動しており、無線通信端末STA1の無線通信可能圏RA1に無線通信端末STA2があり、無線通信端末STA2の無線通信可能圏RA2に無線通信端末STA1がある。すなわち、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とは相互に無線通信可能な位置に存在する。
【0023】
図4を参照して、本発明の端末間通信の接続開始手順を説明する。無線通信端末STA1は、無線通信可能な他の装置を発見するためのスキャニングを実行する(ステップS201)。スキャニングの具体的な方式としては、非特許文献2のSubclause 11.1.3に規定されるように、無線通信端末STA1がプローブリクエストフレームFMQを送信し、そのプローブリクエストフレームFMQを受信した他の無線通信端末STA2が返信するプローブレスポンスフレームFMRを受信して端末の発見を行うActive Scanning方式と、他の無線通信端末STAが随時に送信するビーコンフレームFMBを受信して端末の発見を行うPassive Scanning方式とが存在するが、両方式とも端末間通信が可能な他の無線通信端末STAが送信するマネジメントフレームFMを受信してスキャニングを実行する点については共通である。以下では、ビーコンフレームFMBを使用するPassive Scanning方式を例示して説明するが、本発明の構成としてActive Scanning方式も採用可能なことは当然に理解される。
【0024】
無線通信端末STA1の近傍には無線通信端末STA2が存在するので、無線通信端末STA2が送信するビーコンフレームFMBが無線通信端末STA1の受信部10に受信される。スキャニングの過程で無線通信端末STA2を発見した無線通信端末STA1は、ビーコンフレームFMBに含まれる無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションに関する情報と、記憶部50に記憶された無線通信端末STA1が使用可能なアプリケーションに関する情報とが一致するか否かを判断する(詳細は後述される)。アプリケーションが一致すると判断すると(S202:YES)、通信制御部20は無線通信端末STA2との間で認証およびアソシエーション確立を実行する(ステップS204)。アソシエーションが確立されると、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2によって非特許文献2のSubclause 5.2.1に記述されるIBSS(Independent Basic Service Set)が形成される。アソシエーション確立後の手順(ステップS205,S206,S207)は、従来の接続開始手順のうちアプリケーション一致判断を除いたもの(ステップS103,S104,S106)と同様である。
【0025】
他方、使用可能なアプリケーションが一致しないと判断すると(S202:NO)、通信制御部20はスキャニングを中止する(ステップS203)。以上の構成によれば、MAC層での接続中(アソシエーション確立前)にアプリケーション一致の判断がなされるため、アプリケーション一致の判断のために認証、アソシエーション確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクション確立試行が必要な構成と比較して、無線通信端末STA1の処理負荷が低減される。したがって、無線通信端末STA1の消費電力を低減することが可能である。また、アプリケーションが不一致の場合にはMAC層にて通信が終了することから、他の無線通信端末STA2にてアプリケーションが起動されることも抑制される。したがって、スキャニングされた他の無線通信端末STA2の消費電力もが低減され得る。
【0026】
なお、以上の例示では、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とで使用可能なアプリケーションが一致するか否かに基づいてアソシエーション確立要否の判断を実行したが、アプリケーションにて使用されるパラメータが一致するか否かに基づいてアソシエーション確立要否の判断を実行してもよい。
【0027】
<MACフレームの構成>
無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との間で(すなわち、IBSS内で)互いに送受信されるMACフレームFのフォーマットについて以下に詳述する。図5は、一般的なMACフレームFのフォーマットを示す図である。MACフレームFはMAC層のPDU(Protocol Data Unit)であり、MACヘッダ部分とフレームボディ部分とFCS(Frame Check Sequence)部分とを含むビット列である。FCS部分にはMACフレームFの誤り制御信号が格納される。
【0028】
MACフレームFのフレームボディ部分(ペイロード)には送信データが格納される。具体的には、MAC層(第2層、L2)の上位層であるIP層(第3層、L3)のPDUであるIPパケットが格納される。IPパケットはヘッダ部分とデータ部分(ペイロード)とを含み、ヘッダ部分は宛先IPアドレスと送信元IPアドレスとを含む。また、IPパケットのデータ部分にはIP層の上位層であるトランスポート層(第4層、L4)のPDUであるTCPセグメント(又はUDPセグメント。以下同様)が格納される。TCPセグメントはヘッダ部分とデータ部分(ペイロード)とを含み、ヘッダ部分はプログラム(アプリケーション)を特定するポート番号(宛先ポート番号および送信元ポート番号)とを含む。TCPセグメントのデータ部分にはトランスポート層の上位層であるアプリケーション層のデータ、すなわち端末間通信で使用されるアプリケーションのデータが格納される。
【0029】
MACヘッダ部分には、MACフレームFの伝送制御に関与するパラメータが格納される。図6は、IEEE 802.11(非特許文献2のSubclause 7.1.2参照)に規定される無線LANのMACヘッダの基本フォーマットを示す図である。無線LANのMACヘッダは、フレーム制御、デュレーション/ID、アドレス1、アドレス2、アドレス3、シーケンス制御、アドレス4、およびQoS制御の各フィールドを備える。各アドレスフィールド(アドレス1〜アドレス4)には、用途に応じた任意のアドレス(例えば送信元MACアドレス)が格納されるように規定される。
【0030】
無線LANで用いられるMACフレームFは、マネジメントフレームFM(非特許文献2のSubclause 7.2.3参照)、制御フレーム(非特許文献2のSubclause 7.2.1参照)、およびデータフレーム(非特許文献2のSubclause 7.2.2参照)に大別される。このうち、マネジメントフレームFMは以下のフレームを含む(非特許文献のSubclause 7.1.3.1.2参照)。
・通信相手の発見(スキャニング)に使用されるビーコンフレームFMB、プローブリクエストフレームFMQ、およびプローブレスポンスフレームFMR
・通信相手の認証に使用される認証要求フレームおよび認証応答フレーム
・通信相手とのアソシエーション確立の際に使用されるアソシエーション要求フレームおよびアソシエーション応答フレーム
マネジメントフレームFMは、MAC層レベルでの通信制御において通信制御部20にて生成され送信部60から送信される。また、他の無線通信端末STAが送信したマネジメントフレームFMは、受信部10で受信され通信制御部20にて処理される。
【0031】
図7は、マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分のフォーマットを示す図である(非特許文献2のSubclause 7.2.3参照)。マネジメントフレームFMのMACヘッダ部分は、アドレス1として宛先MACアドレスを、アドレス2として送信元MACアドレスを、アドレス3としてBSS(Basic Service Set)IDを含み、アドレス4フィールドおよびQoS制御フィールドを含まない。
【0032】
マネジメントフレームFMは、MAC層の無線通信制御のためのパラメータを示す複数の情報要素IE(Information Element)をフレームボディ部分に含む。図8は、本発明にて新たに提案されるビーコンフレームFMBのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。従来のビーコンフレームFMBは、非特許文献2のSubclause 7.2.3.1に規定されるように複数の情報要素IE(Timestamp、QoS Capability、及びその他の要素)を含む。本発明に係るビーコンフレームFMBは、新たな情報要素IEとしてアプリケーション関連情報AIをさらに含む。
【0033】
また、図9は、本発明にて新たに提案されるプローブレスポンスフレームFMRのフレームボディ部分のフォーマットを示す図である。従来のプローブレスポンスフレームのフォーマットは非特許文献2のSubclause 7.2.3.9に規定される。本発明のプローブレスポンスフレームFMRは、新たな情報要素IEとしてアプリケーション関連情報AIを含む。
【0034】
同様にして、他のマネジメントフレームFMもフレームボディ部分に新たな情報要素IEとしてアプリケーション関連情報AIを含む。すなわち、本発明のマネジメントフレームFMの各々は、既存の情報要素IEに加え、新たな情報要素IEであるアプリケーション関連情報AIを含む。なお、アプリケーション関連情報AIが配置される箇所はフレームボディ部分の任意の箇所であり、図8および図9に示された箇所に限定されるものでないことは当然に理解される。
【0035】
<アソシエーション確立の要否判断の実施例>
アプリケーション関連情報AIは、無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションに関する任意の情報である。以下、アプリケーション関連情報AIの具体的な内容を実施例とともに説明する。
【0036】
<実施例1 − ポート番号>
図10および図11に、実施例1におけるアプリケーション特定の様子を示す。実施例1では、TCPセグメントのポート番号にてアプリケーションが特定される。
【0037】
無線通信端末STA1の記憶部50には、無線通信端末STA2が送信するTCPセグメントに示される宛先ポート番号(無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションに対応づけられている)と、無線通信端末STA1が使用可能なアプリケーションとの対応関係を示すテーブル501が記憶されている。
【0038】
一般的に、宛先ポート番号を含むTCPセグメントは上位層に透過的に転送されるためMAC層の通信制御には関与しないが、本実施例では、無線通信端末STA2が送信するTCPセグメントに含まれる宛先ポート番号がビーコンフレームFMB内の情報要素IEであるアプリケーション関連情報AIにも格納され、無線通信端末STA1におけるMAC層の通信制御(アソシエーション確立を実行すべきか否かの判断)に利用される。具体的には以下の通りである。
【0039】
無線通信端末STA1がスキャニングを開始する(図4のステップS201)。無線通信端末STA2が送信したビーコンフレームFMBを受信部10が受信して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AIを抽出して判断部40に供給する。判断部40は、アプリケーション関連情報AIが示すTCPセグメントの宛先ポート番号49153がテーブル501に記憶されているか否かを判断する(図10、ステップS202)。テーブル501にはゲームDを示す宛先ポート番号49153が記憶されている(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル501の情報と一致する)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を実行すべきと判断し(ステップS202:YES)、通信制御部20に認証およびアソシエーション確立を指示する(ステップS204)。無線通信端末STA2とのアソシエーション確立後、無線通信端末STA1は無線通信端末STA2からIPアドレスを取得し、TCPコネクションを確立してアプリケーション層の通信(すなわち、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2が使用可能なゲームDに関する通信)を実行する(ステップS204〜S208)。
【0040】
他方、図11を参照して、ポート番号が一致しない場合を考える。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AI(宛先ポート番号49155)を抽出して判断部40に供給する。判断部40は、アプリケーション関連情報AIが示すTCPセグメントの宛先ポート番号49155がテーブル501に記憶されているか否かを判断する(ステップS202)。テーブル501には宛先ポート番号49155が記憶されていない(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル501の情報と一致しない)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を中止すべきと判断し(ステップS202:NO)、通信制御部20にスキャニングの中止を指示する(ステップS204)。
【0041】
以上の実施例では、無線通信端末STA2のTCPセグメントに含まれる宛先ポート番号がアプリケーション関連情報AIにも格納されたが、無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションと対応づけられた送信元ポート番号がアプリケーション関連情報AIに格納されてもよい。その場合、無線通信端末STA1のテーブル501は、送信元ポート番号と無線通信端末STA1が使用可能なアプリケーションの対応とを対応づけるものとなることは当然に理解される。
【0042】
以上のようにして、無線通信端末STA2のTCPセグメントに含まれるポート番号がMAC層の通信制御に活用される。無線通信端末STA1は、アソシエーションの確立前に無線通信端末STA2にて使用可能なアプリケーションを特定することが可能であるから、アプリケーションが一致しない場合にはスキャニングを中止することで、後続するアソシエーションの確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクションの確立といった接続処理を実行しなくて済む。これらの接続処理は、接続確立を要求する側だけでなく接続確立が要求される側においても実行されるから、以上の構成によれば、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2の消費電力が削減される。
【0043】
<実施例2 − IPアドレス>
図12を参照して、アプリケーションにて使用されるパラメータを、IPアドレスを用いて特定する様子を説明する。無線通信端末STA1の記憶部50には、無線通信端末STA2が送信するIPパケットに含まれる宛先IPアドレス(無線通信端末STA2のアプリケーションにて使用されるパラメータに対応)と、無線通信端末STA1のアプリケーションにて使用されるパラメータとの対応関係を示すテーブル502が記憶されている。本実施例においては、使用されるアプリケーションはロールプレイングゲームであり、IPアドレスにて特定されるパラメータは無線通信端末STAのユーザが操作するキャラクターの所在位置である場合が想定される。パラメータが一致する(すなわち、各ユーザが操作するキャラクターの所在位置が無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とで一致する)場合にのみ端末間通信が実行され、アプリケーション内にて必要な情報が交換される(例えば、無線通信端末STA1で実行されるゲーム内に無線通信端末STA2のユーザに対応するキャラクターが登場する)ことが想定され得る。
【0044】
一般的に、宛先IPアドレスを含むIPパケットは上位層に透過的に転送されるためMAC層の通信制御には関与しないが、本実施例では、IPパケットに含まれる宛先IPアドレスがビーコンフレームFMB内の情報要素IEであるアプリケーション関連情報AIに格納され、MAC層の通信制御(アソシエーション確立を実行すべきか否かの判断)に利用される。一般的なクライアント−サーバ型の通信においては、IPアドレスはIP層(多数のノードを含む1つのIPアドレス空間)における一意な論理的位置を示すので自由に設定することは困難であるが、本発明の端末間通信のようなアドホック通信においては、1つのIPアドレス空間(例えば、1つのIBSS)内には相互に無線通信を行う少数(例えば2台)の無線通信端末STAが存在するに過ぎないので、IPアドレスを比較的自由に設定することが可能である。そのため、本実施例では、アプリケーションで使用されるパラメータを特定する値としてIPアドレスを用いる。具体的には以下の通りである。
【0045】
無線通信端末STA1がスキャニングを開始する(ステップS201)。無線通信端末STA2が送信したビーコンフレームFMBを受信部10が受信して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AI(宛先IPアドレス192.168.1.5)を抽出して判断部40に供給する。判断部40は、アプリケーション関連情報AIが示すIPパケットの宛先IPアドレス192.168.1.5が、テーブル502に記憶されているか否かを判断する(図12、ステップS202)。テーブル502には宛先IPアドレス192.168.1.5が記憶されていない(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル502の情報と一致しない)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を中止すべきと判断し(ステップS202:NO)、通信制御部20にスキャニングの中止を指示する(ステップS204)。
【0046】
以上の実施例では、無線通信端末STA2のIPパケットに含まれる宛先IPアドレスがアプリケーション関連情報AIに格納されたが、無線通信端末STA2のアプリケーションにて使用されるパラメータと対応づけられた送信元IPアドレスがアプリケーション関連情報AIに格納されてもよい。その場合、無線通信端末STA1のテーブル502は、送信元IPアドレスと無線通信端末STA1のアプリケーションにて使用されるパラメータとを対応づけるものとなることは当然に理解される。
【0047】
IPアドレスが、無線通信端末STA2が使用可能なアプリケーションと、そのアプリケーションにて使用されるパラメータとの双方を特定してもよい。例えば、宛先IPアドレスの上位24ビット(実施例2では192.168.1)がアプリケーションを特定し、宛先IPアドレスの下位8ビットがパラメータを特定してもよい。また、実施例1と組み合わせて、TCPセグメントのポート番号がアプリケーションを特定し、IPアドレスがパラメータを特定する構成も採用され得る。
【0048】
以上のように、無線通信端末STA2のIPパケットが含むIPアドレスが無線通信端末STA1におけるMAC層の通信制御に利用される。IPアドレスが一致しない場合にはスキャニングを中止するので、後続するアソシエーションの確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクションの確立といった接続処理の実行が省略される。したがって、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2の消費電力が削減される。
【0049】
<実施例3 − ユーザ識別子>
図13を参照して、アプリケーション関連情報AIとしてマネジメントフレームFM(ビーコンフレームFMB)に格納されたユーザ識別子を用いて無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とのアソシエーション確立要否を判断する様子を示す。
【0050】
本実施例では、無線通信端末STA1のユーザがゲームDに関するSNS(Social Networking Service)に加入しており、そのSNS内のメンバーのうち特定のユーザのみとゲームDに関する端末間通信を実行することを前提とする。無線通信端末STA1の記憶部50には、無線通信端末STA2が送信するユーザ識別子と、無線通信端末STA1のユーザが端末間通信を希望するユーザの名前との対応関係を示すテーブル503が記憶されている。テーブル503は、無線通信端末STA1のユーザがSNSのウェブサイトから事前にダウンロードしたデータによって構成されることが可能である。
【0051】
アソシエーション確立要否の判断は以下のように実行される。無線通信端末STA1がスキャニングを開始する(ステップS201)。無線通信端末STA2が送信したビーコンフレームFMBを、受信部10が受信して通信制御部20に供給する。通信制御部20は、受信したビーコンフレームFMBからアプリケーション関連情報AI(ユーザ識別子31045)を抽出して判断部40に供給する。判断部40は、ユーザ識別子31045がテーブル503に記憶されているか否かを判断する(図13、ステップS202)。テーブル503にはユーザ識別子31045が記憶されていない(すなわち、アプリケーション関連情報AIがテーブル501の情報と一致しない)ので、判断部40は、無線通信端末STA2に対するアソシエーションの確立を中止すべきと判断し(ステップS202:NO)、通信制御部20にスキャニングの中止を指示する(ステップS204)。
【0052】
以上のように、無線通信端末STA2のユーザ識別子がMAC層の通信制御に活用される。スキャニングにより発見された無線通信端末STA2のユーザが端末間通信を希望するユーザではない場合にはスキャニングを中止するので、後続するアソシエーションの確立、IPアドレスの取得、およびTCPコネクションの確立といった接続処理の実行が省略される。したがって、無線通信端末STA1および無線通信端末STA2の消費電力が削減される。
【0053】
<変形例>
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0054】
(1)変形例1
以上の各形態においては、Passive Scanning方式でのビーコンフレームFMBが含むアプリケーション関連情報AIに基づいてアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断したが、Active Scanning方式でのプローブリクエストフレームFMQ又はプローブレスポンスフレームFMRが含むアプリケーション関連情報AIに基づいてアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断してもよい。
【0055】
(2)変形例2
以上の各形態においては、スキャニング中にアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断したが、認証中またはアソシエーションの確立過程においてアプリケーション(又はパラメータ)の一致を判断してもよい。認証中に一致を判断する場合には、マネジメントフレームFMである認証要求フレームまたは認証応答フレームが含むアプリケーション関連情報AIを使用して一致の判断をすればよい。また、アソシエーションの確立過程において一致を判断する場合には、マネジメントフレームFMであるアソシエーション要求フレームまたはアソシエーション応答フレームが含むアプリケーション関連情報AIを使用して一致の判断をすればよい。
【0056】
(3)変形例3
以上の各形態においては、アプリケーションを特定する情報として、アプリケーションに関連づけられたポート番号およびIPアドレスを例示し、アプリケーションにて使用されるパラメータを特定する情報として、パラメータに関連づけられたIPアドレスおよびユーザ識別子を例示したが、任意の情報がアプリケーション又はパラメータを特定する情報として用いられ得る。例えば、アプリケーション又はパラメータと関連づけられた情報がIPヘッダ又はTCPヘッダのオプションフィールドに格納され、その情報がアプリケーション関連情報AIとしてマネジメントフレームFMのデータ部分に格納される構成が採用され得る。すなわち、アプリケーション関連情報AIに格納されるのは、そのアプリケーション関連情報AIを送信する無線通信端末STAのアプリケーション又はアプリケーションにて使用されるパラメータを特定し得る任意の情報である。
【0057】
(4)変形例4
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIに格納されるポート番号又はIPアドレスは、そのマネジメントフレームFM内にカプセル化されたTCPセグメントに含まれるポート番号又はそのマネジメントフレームFM内にカプセル化されたIPパケットに含まれるIPアドレスに限定されない。例えば、スキャニングを実行する無線通信端末STA1に送信すべきポート番号又はIPアドレスを無線通信端末STA2の記憶部50に予め記憶しておき、マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIに格納してもよい。送信すべきポート番号又はIPアドレスとは、例えば無線通信端末STA2がスリープ状態に移行した際に起動されていたアプリケーションを示すポート番号又はスリープ状態に移行した際のパラメータ(例えば、ゲーム内の所在位置)を示すIPアドレスである。
【0058】
(5)変形例5
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIに格納されるユーザ識別子として、無線通信端末STAのユーザの電子署名に関する情報を用いてもよい。例えば、無線通信端末STAのユーザの公開鍵データの全部または一部をアプリケーション関連情報AIに格納してユーザ識別に用いてもよい。具体的には、端末間通信を実行した際に通信相手となったユーザの公開鍵データ(マネジメントフレームFMに格納されている)を記憶部50に記憶しておき、次回以降の端末間通信において、過去に端末間通信をしたことのあるユーザであるか否かを識別してもよい。
【0059】
(6)変形例6
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIが、無線通信端末STA2が無線通信端末STA1と無線通信を開始すべき時刻を含んでもよい。例えば、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とで使用されるアプリケーションが一定期間(例えば5分)内での獲得点数を争うゲームGである場合において、再度の無線通信を行って獲得点数情報を交換すべき時刻をアプリケーション関連情報AIが示してもよい。以上の場合、再度の無線通信を実施すべき時刻が既知となることにより円滑に無線通信を再開することが可能となる。なお、無線通信を開始すべき時刻とは、絶対時刻であってもよいし、マネジメントフレームFMの受信時からの相対時刻であってもよい。
【0060】
(7)変形例7
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIアプリケーション関連情報AIが、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とが無線通信すべき通信間隔の情報を含んでもよい。例えば、変形例6のゲームGにおいて、ゲームの途中においても無線通信を定期的に実施して獲得点数を定期的(例えば1分おき)に交換する場合、無線通信を実施すべき間隔をアプリケーション関連情報AIが示してもよい。以上の場合、無線通信を実施すべき通信間隔が既知となることにより間欠的な無線通信が円滑に実行され得る。
【0061】
(8)変形例8
マネジメントフレームFMのアプリケーション関連情報AIが、無線通信端末STA2と無線通信端末STA1との間で発生する無線通信データ量に関する情報を含んでもよい。例えば、楽音情報等の大容量データを送受信することが必要なアプリケーションが無線通信端末STA1と無線通信端末STA2とに使用される場合において、他の無線通信端末STA2と自機(無線通信端末STA1)との間で発生する通信データ量をアプリケーション関連情報AIが示してもよい。以上の場合、通信データ量を事前に知ることができるので、大容量データの送受信による消費電力の増大を避けることが可能である。なお、通信データ量とは、そのアプリケーションを用いた一度の無線通信において発生する最大のデータ量でもよく、平均データ量でもよい。また、そのアプリケーションを用いた場合に発生する単位時間当たりのデータ量でもよい。
【0062】
(9)変形例9
無線通信端末において、CPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【0063】
(10)変形例10
前記の実施の形態は、IEEE 802.11に準拠しているが、本発明は、IEEE 802.15.1に準拠したブルートゥース(登録商標)による通信もカバーする。
【0064】
(11)変形例11
前述の実施の形態は、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との直接的な端末間通信を行う構成であったが、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との間にアクセスポイントが介在する端末間通信についても適用可能である。
【0065】
(12)変形例12
前述の実施の形態は、無線通信端末STA1と無線通信端末STA2との直接的な端末間通信を行う構成であったが、無線通信端末STA1とアクセスポイントとの間の通信についても適用可能である。例えば、アクセスポイントが特定のアプリケーションとの無線通信のみを許可する場合に、アクセスポイントに許可されるアプリケーションを特定する情報(例えば、ポート番号)をマネジメントフレームFMに格納してアクセスポイントから送信することにより、そのアプリケーションを有さない無線通信端末STA1がそのアクセスポイントにアソシエーションを確立しようとすることを抑制できる。したがって、無線通信端末STA1の消費電力が低減される。
【0066】
前記の実施の形態および変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
AI……アプリケーション関連情報、F……フレーム、FM……マネジメントフレーム、FMB……ビーコンフレーム、FMQ……プローブリクエストフレーム、FMR……プローブレスポンスフレーム、IE……情報要素、RA……無線通信可能圏、STA1,STA2……無線通信端末。10……受信部、20……通信制御部、30……アプリケーション通信部、40……判断部、50……記憶部、60……送信部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線通信装置との間にMAC層レベルのアソシエーションを確立するMAC層制御部と、
前記アソシエーションの確立前または確立過程において、前記他の無線通信装置が使用可能なアプリケーションに関する第1情報を示す情報要素を含んだMACフレームを前記他の無線通信装置から受信する受信部と、
自機が使用可能なアプリケーションに関する第2情報を記憶する記憶部と、
前記第1情報と前記第2情報とが一致した場合には前記アソシエーションの確立を実行し、前記第1情報と前記第2情報とが一致しない場合には前記アソシエーションの確立を中止する判断部とを備える
移動可能な無線通信端末。
【請求項2】
前記MACフレームは、通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームのいずれかである
請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記第1情報は、前記アプリケーションを特定する情報を含む
請求項1または2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記アプリケーションを特定する情報は、前記アプリケーションに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである
請求項3に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記第1情報は、前記アプリケーションにて使用されるパラメータを特定する情報を含む
請求項1から4のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記パラメータを特定する情報は、前記パラメータに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである
請求項5に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記パラメータを特定する情報は、前記他の無線通信装置のユーザが前記アプリケーションにて使用するユーザ識別子である
請求項5に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末と無線通信を開始すべき時刻を含む
請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末との無線通信を実行する通信間隔を含む
請求項1から8のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置と前記無線通信端末との間で発生する通信データ量に関する情報を含む
請求項1から9のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項1】
他の無線通信装置との間にMAC層レベルのアソシエーションを確立するMAC層制御部と、
前記アソシエーションの確立前または確立過程において、前記他の無線通信装置が使用可能なアプリケーションに関する第1情報を示す情報要素を含んだMACフレームを前記他の無線通信装置から受信する受信部と、
自機が使用可能なアプリケーションに関する第2情報を記憶する記憶部と、
前記第1情報と前記第2情報とが一致した場合には前記アソシエーションの確立を実行し、前記第1情報と前記第2情報とが一致しない場合には前記アソシエーションの確立を中止する判断部とを備える
移動可能な無線通信端末。
【請求項2】
前記MACフレームは、通信相手の発見、通信相手の認証、または通信相手とのアソシエーションのために送信されるマネジメントフレームのいずれかである
請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記第1情報は、前記アプリケーションを特定する情報を含む
請求項1または2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記アプリケーションを特定する情報は、前記アプリケーションに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである
請求項3に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記第1情報は、前記アプリケーションにて使用されるパラメータを特定する情報を含む
請求項1から4のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記パラメータを特定する情報は、前記パラメータに対応づけられたポート番号またはIPアドレスである
請求項5に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記パラメータを特定する情報は、前記他の無線通信装置のユーザが前記アプリケーションにて使用するユーザ識別子である
請求項5に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末と無線通信を開始すべき時刻を含む
請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置が、前記無線通信端末との無線通信を実行する通信間隔を含む
請求項1から8のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記第1情報は、前記アプリケーションを使用する前記他の無線通信装置と前記無線通信端末との間で発生する通信データ量に関する情報を含む
請求項1から9のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−227648(P2012−227648A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92057(P2011−92057)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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