説明

無線通信網の品質評価システム、通信品質の改善措置対象エリアの抽出方法及びプログラム

【課題】顧客満足度の向上という観点で、通信品質の改善措置の必要性を提示する無線通信網の品質評価システムを提供すること。
【解決手段】無線通信網の品質評価システムは、無線通信サービスを提供する個々の無線エリアについて、線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積Sと、該無線エリアの面積Sとの比から、品質劣化面積率(S/S)を求める手段と、前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量Lを推定する手段と、前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標Cを出力する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信網の品質評価システム、通信品質の改善措置対象エリアの抽出方法及びプログラムに関し、特に、複数の無線エリアの中から、通信品質の改善措置を施す必要がある無線エリアを抽出するための無線通信網の品質評価システム、その方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信網の運用保守では、通信事業者は、高品質な通信サービスを提供するため、以下の方法により通信品質の把握に努めている。
【0003】
まず、網側通信装置から通信品質に関する指標を取得し、その指標を予め定められた閾値と比較することによって通信品質の劣化を検出する方法がある。通信網に対するこのような通信品質の指標の一例が非特許文献1に記載されている。非特許文献1では、3GPP(3rd Generation Partnership Program)の仕様に基づく移動通信網の無線基地局制御装置(RNC)において、無線セル毎に定期的に取得すべき通信品質の指標として、無線アクセスベアラの確立試行回数に対する確立失敗回数の割合、無線アクセスベアラの確立成功回数に対する異常解放回数の割合などが規定されており、これらの指標が所定の閾値より大きな場合に品質劣化が生じたとみなす。
【0004】
網側通信装置から取得した通信品質の指標を用いる通信品質の劣化の検出方法では、移動端末と無線基地局制御装置の間の有線・無線リンクを介して送受信される制御トラフィックを利用する。そのため、例えば移動端末が無線セル内の電波の不感地に位置し、無線基地局との間の無線リンクの品質が悪い場合には制御トラフィックの送受信が不安定となるため、移動端末で生じている通信品質の劣化を網側では検出しにくい。また、通信品質の劣化が局所的である場合も、影響が通信品質の指標に現れにくいため網側では検出しにくい。
【0005】
そこで、このように網側で検出しにくい通信品質の劣化、すなわち電波の不感地や弱電界を検出する方法が特許文献1に記載されている。特許文献1では、下り共通パイロットチャネル(Common Pilot Channel)の受信信号電力等の電波環境データを網羅的に収集した電波環境データベースを用いる探索方法が開示されている。また、特許文献1には、別の実施形態として、電波伝搬シミュレータによる電波品質の推定結果を用いる構成が開示されている。特許文献2は、電界強度分布のシミュレーションを行って、基地局の設置パターンの優劣を決定する方法を開示する文献である。
【0006】
これらの測定結果および推定結果は通信品質の一端を表す指標ではあるが、通信サービスの加入者が現状の通信品質に対して実際にどの程度の満足(不満)を抱いているかを、これらの指標のみから直接把握することは難しい。そこで、通信事業者は、加入者から寄せられた通信品質に対する苦情を収集することにより、提供している通信サービスに対して顕在化した不満を把握している。
【0007】
以上のような方法により通信品質の劣化が検出された場合、通信事業者は、その劣化の原因が通信装置の故障であるならば即座に装置交換などの回復措置を行う。一方、電波品質の劣化など故障によらない原因である場合には、定期的な設備計画の中で対処する。設備計画では、品質改善が必要な無線エリアに対して優先順位付けを行い、優先度の高いものから改善措置を実施していくように計画を立案する。
【0008】
このような設備計画の段階で、サービスエリアに優先順位付けを行い無線エリアの配置計画を自動的に立案する方法の一例が特許文献3に記載されている。特許文献1に記載された方法では、まずサービスエリアのマーケティング特性、すなわち人口密度と土地利用の種別の組み合わせに対してユーザが予め優先順位を付けておく。次に、通信サービスを提供するエリアをマーケティング特性に応じて細分化し、細分化されたエリアに対して優先度付けを行う。最後に、細分化されたエリアのうち優先順位が高いエリアの無線カバレッジを最大化する最小限の基地局の配置を、電波伝搬シミュレータを用いて計算する。以上の方法によれば、最小限の基地局でより多くの収益をもたらし得るエリアを優先的にカバーすることができる。
【0009】
特許文献4には、無線エリア内の定点に配置したモニタ端末から観測データを収集するための構成例が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−303788号公報
【特許文献2】特開平08−317458号公報
【特許文献3】特開2003−309868号公報
【特許文献4】特許第3557426号公報
【非特許文献1】3GPP TS 32.403 V5.9.0(2004−12) “Telecommunication management; Performance Management(PM); Performance measurements−UMTS and combined UMTS/GSM(Release5)”,pp.19〜pp26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した技術では、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを的確に判断することができないという問題点がある。例えば、特許文献1の不感地帯検知システムでは、電波環境データと地図データを用いて電波不感地帯を抽出した後、利用状況データを用いて予め算出した効果定量化式に電波不感地帯の属性データを入力することにより、通信品質の改善措置(不感地対策)を採った場合の効果を算出し、通信品質の改善措置(不感地対策)の優先順位付けを行うとしている。
【0012】
具体的には、特許文献1の段落0047には、電波環境データの平均値や最悪値による判定や不感地率による判定が開示されているが、これらの判定方式では、不感地の狭い(少ない)エリアは抽出されにくい。また仮に、これらの判定で不感地であると判断された場合であっても、基本的には収益によって優先順位が決定付けられるため、不感地の狭い(少ない)エリアは上位に優先され難いと考えられる。このため、狭い範囲であるが電波状態が良くなく、しかもその場所の通信ニーズが高いような場所を含むエリアへの対策が遅れてしまう可能性があるという問題点がある。
【0013】
この点については、マーケティング仕様を満たし、かつ、基地局配置の最適化・基地局数の最小化を目指す特許文献3も同様であり、狭い範囲であるが電波状態が良くなく、しかもその場所の通信ニーズが高い場所を含むエリアに対する対策が後回しにされる可能性がある。
【0014】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、カバレッジ率の向上や収益を重んじるのではなく、顧客満足を向上させるという観点で、無線通信サービスを提供している無線エリアに対して通信品質の改善措置を施すべきか否かの判断基準を提示する無線通信網の品質評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の視点によれば、無線通信サービスを提供する個々の無線エリアについて、無線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積と、該無線エリアの面積との比から、品質劣化面積率を求める手段と、前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量を推定する手段と、前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標を出力する手段と、を備える無線通信網の品質評価システムが提供される。
【0016】
本発明の第2の視点によれば、無線通信サービスを提供する個々の無線エリアのうち、通信品質の改善措置を施す必要がある無線エリアを抽出する方法が提供される。この方法(通信品質の改善措置対象エリアの抽出方法)は、前記個々の無線エリアについて、無線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積と、該無線エリアの面積との比から、品質劣化面積率を求めるステップと、前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量を推定するステップと、前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標を出力するステップと、により実現される。
【0017】
本発明の第3の視点によれば、上記した無線通信網の品質評価システムを構成するコンピュータに実行させるプログラムが提供される。このプログラムは、前記コンピュータに、無線通信サービスを提供する個々の無線エリアについて、無線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積と、該無線エリアの面積との比から、品質劣化面積率を求める処理と、前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量を推定する処理と、前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標を出力する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、顧客満足を向上させるという観点で、無線エリアに対する通信品質の改善措置の必要性を判断する資料を提供することができる。その理由は、上記した品質劣化面積率及びトラフィック量、つまり、面と量という2つの観点で、通信品質の改善措置の必要性を検討する構成を採用したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[発明の概要]
図1は、本発明の無線通信網の品質評価システムの基本原理を説明するための図である。本発明に係る無線通信網の品質評価システムは、評価対象のエリア各地の受信電界強度等の無線品質指標に基づいて、少なくとも、該エリア内部に設けられた小領域(無線エリア)毎に、内部で無線品質が劣化しているエリアの面積率(品質劣化面積S/無線エリア面積S)を求める無線品質評価部(品質劣化面積率算出部)102と、運用情報に基づいて、無線エリア内部で発生する通信のトラフィック量Lを推定するトラフィック量推定部113と、前記品質劣化面積率(S/S)と、トラフィック量Lとに基づいて、前記小領域(無線エリア)に対する通信品質の改善措置が必要であるか否かを判断するための指標を出力する判定部115と、を備える。
【0021】
前記通信品質の改善措置が必要であるか否かを判断するための指標は、例えば、前記品質劣化面積率とトラフィック量との積や、和、あるいは、両者を所定の評価指標算出式に代入することによって求めることができる。このようにして算出された指標は、評価対象のエリア(評価エリア)内に含まれる小領域(無線エリア)に対する通信品質の改善措置の優先度の指標として用いることができる。また、指標が所定の閾値を超えるか否かにより、該当する小領域(無線エリア)において、通信品質の改善措置が必要であるか否かを2値で表したり、あるいは、A(至急改善措置要)〜E(改善措置不要)というように、いくつかの段階に層別し、改善措置の必要性を表わしてもよい。
【0022】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態の無線通信網の品質評価システムの構成を示す図である。
【0023】
図2を参照すると、本実施形態に係る無線通信網の品質評価システム100は、評価エリアや解析条件を入力する入力部101と、評価エリアの内部または周辺に配置された無線基地局から評価エリアに到来する電波の受信電界強度を推定する受信電界強度推定部103と、評価エリアの個々の無線エリアについて、無線品質が劣化している場所の割合を表した品質劣化面積率を求める無線品質評価部102と、無線エリア内部で発生する品質劣化の通信トラフィックの量を推定するトラフィック量推定部113と、品質劣化面積率とトラフィック量とに基づいて無線エリア内部で生じている品質劣化のトラフィック規模を表した優先度(指標)を算出する優先度算出部106と、優先度(指標)に基づいて、評価エリア内部の無線エリアのうち優先度が高いものを抽出する対策優先エリア抽出部109と、評価結果を表示する表示部110とを備えている。
【0024】
エリア設計情報データベース(エリア設計情報DB)111には、無線通信サービスの提供エリアにおける無線基地局の配置情報や送信電力などの無線通信網の設計情報が格納されている。
【0025】
受信電界強度推定部103は、エリア設計情報取得部112を介して、エリア設計情報DB111から評価エリアの内部又は周辺に配置された無線基地局に関する情報を取得し、評価対象エリアの受信電界強度の分布を推定する。受信電界強度推定部103における受信電界強度の分布を推定には、必要に応じて、特許文献2に記載のシミュレーション技術を用いることができる。
【0026】
運用情報データベース(運用情報DB)108には、無線通信サービスの提供エリアにおける無線基地局の配下の無線セル毎に、単位時間当たりの通信の試行回数や失敗回数等の情報が格納されている。
【0027】
トラフィック量推定部113は、トラフィック情報取得部107を介して、運用情報DB108から無線エリア内部で発生する通信のトラフィック量に関する情報を取得し、無線エリア内部で発生するトラフィック量を推定する。このトラフィック量として、品質劣化に起因すると考えられる類型に属する通信トラフィックの量を推定するようにしてもよい。
【0028】
無線品質評価部102は、入力部101で得られた情報に従い、受信電界強度推定部103の推定結果を用いて、内部で無線品質が劣化しているエリアの面積率(品質劣化面積S/無線エリア面積S)を求める。
【0029】
優先度算出部106は、上記した判定部115に相当し、無線品質評価部102により算出された品質劣化面積率(S/S)と、トラフィック量推定部113の推定結果と合わせて品質改善措置の優先度の指標を計算する。
【0030】
対策優先エリア抽出部109は、優先度算出部106により計算された指標に基づいて、優先度が高い無線エリアを抽出し、全体の評価結果として、表示部110に出力する。
【0031】
次に、本実施形態に係る無線通信網の品質評価システムの動作について図面を参照して詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る無線通信網の品質評価システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0032】
図3を参照すると、まず、品質改善の担当者等が、入力部101を介して評価エリアと解析条件を指定する(ステップS101)。解析条件とは、例えば、品質評価の対象とする期間、優先度の出力単位となる無線エリアの領域指定等である。
【0033】
上記入力が完了すると、無線品質評価部102は、ステップS101の入力結果を受けて、まず、受信電界強度推定部103により評価エリア内部の受信電界強度を推定し(ステップS102)、次に、評価エリア内部の無線エリア毎に内部の面積Sを算出する(ステップS103)。
【0034】
次に、無線品質評価部102は、無線エリア内部の電界強度が事前に定めた電界強度の閾値E0(端末で正常な受信品質が得られる最小の受信電界強度の値等)を下回る場所の面積Sを算出する(ステップS106)。
【0035】
次に、無線品質評価部102は、ステップS107では無線エリア内部における品質劣化エリアの面積率(S/S)を算出する(ステップS107)。
【0036】
トラフィック量推定部113は、トラフィック情報取得部107を介して運用情報DB108から無線エリア内部で発生する通信のトラフィック量Lを推定する(ステップS108)。
【0037】
このとき、ステップS101で指定した無線エリアと、運用情報DB108の運用情報の単位(ここでは無線セル)とが異なる場合等、運用情報DB108のデータをそのまま使えない場合には、トラフィック量推定部113は、運用情報DB108に格納されている地理的に最も近い無線エリアのトラフィック量を、無線エリアの面積比に応じて割り振るものとする。
【0038】
優先度算出部106は、無線エリア内部で生じる品質劣化のトラフィック規模Cを次式[数1]により求める(ステップS109)。この品質劣化のトラフィック規模Cを無線エリアに品質改善措置を施す際の優先度の指標とする。
【0039】
【数1】

【0040】
上式を用いて得られた指標Cにより、品質劣化面積率が低いがトラフィック量が大きい場所と、品質劣化面積率が高いがトラフィック量が小さい場所と、を比較することが可能となる。例えば、品質劣化面積率が極めて低いがトラフィック量が大きい場所の優先度が、品質劣化面積率が高いがトラフィック量が小さい場所の優先度を上回ることもありうる。これは、品質劣化のトラフィック規模Cという指標で、当該エリアにおける品質劣化の度合い、影響度、言い換えればユーザの不満の総和を、定量化しているためである。
【0041】
対策優先エリア抽出部109は、トラフィック規模Cが大きな無線エリアを優先度が高い無線エリアとみなして、優先度の高い無線エリアを抽出する(ステップS110)。
【0042】
最後に、表示部110により、以上の評価結果の出力が行われる(ステップS111)。
【0043】
図4は、上記ステップS111で、評価結果として出力される画面表示の例である。図4を参照すると、品質改善の優先順位が高い順に無線エリアをリストアップした表305と、評価エリアの図300が示されている。表305には、優先順位のほか、品質改善の優先度の指標の算出に用いられている、無線エリア内部の品質劣化のトラフィック規模(上記C)が併せて表示されている。
【0044】
評価エリアの図300には、無線エリアの境界302で区分された無線エリア303、無線基地局301の分布が表示されている。無線エリア303のうち、対策優先エリア抽出部109が抽出した無線エリアは、太線により強調表示されている。
【0045】
さらに、評価エリアの図300には、無線品質評価部102で抽出した無線品質劣化領域306の分布が重ね合わせて表示されている。
【0046】
なお、図3の例では、優先度の出力単位とする無線エリアとして、無線セルを用いた場合について表示しているが、無線エリアは表示エリア内部の閉領域であればいかなる領域でも構わない。
【0047】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、特定のエリア内で所定の受信電界強度の閾値を下回る場所、すなわち品質に問題がある場所の面積率を求め、該エリア内のトラフィック量と品質劣化面積率との積によりエリア内部の品質劣化のトラフィック規模を推定し、前記品質劣化のトラフィック規模を、前記エリアに対して品質改善措置を施す際の優先度の指標とする構成を採用している。このため、通信サービスを提供している無線エリアに対して、通信品質の改善措置を施す際の優先順位付けを的確に行うことができる。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の第2の実施形態は、顧客からの苦情により、品質劣化していると判定する閾値を変更できるようにしたものである。以下、上記した第1の実施形態と同様の要素及び動作ステップについては同一の符号を付してその相違部分を中心に説明する。
【0049】
図5は、本発明の第2の実施形態の無線通信網の品質評価システムの構成を示す図である。図5を参照すると、本実施形態に係る無線通信網の品質評価システム100は、上記した第1の実施形態の構成に、クレーム情報データベース(クレーム情報DB)105から、任意の条件に該当するクレーム情報(苦情情報)を取得し、無線品質評価部102に入力するクレーム情報取得部104を追加した構成となっている。
【0050】
クレーム情報DB105は、顧客から寄せられた苦情の発生位置、発生日時、苦情の発生原因(弱電界、端末故障、輻輳等)等の情報を格納したデータベースである。
【0051】
無線品質評価部102は、クレーム情報取得部104を介して、クレーム情報DB105から評価エリア内部で電界強度に起因するクレーム情報(苦情情報)を取得する。そして、受信電界強度の推定結果から、個々のクレーム発生地点の中で最大値を示す電界強度Emaxを求め、該電界強度Emaxを閾値として用い、電界強度がEmax未満である場所を無線品質が劣化している場所とし、品質劣化面積率(品質劣化面積S/無線エリア面積S)を求める。
【0052】
なお、無線エリア内部のクレーム(苦情)が寄せられた地点に限定せずに、担当者が任意に定めた無線エリアの地点の電界強度を閾値Emaxとして用いることもできる。
【0053】
次に、本実施形態に係る無線通信網の品質評価システムの動作について図面を参照して詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る無線通信網の品質評価システムの動作を説明するためのフローチャートである。ステップS101からS103までは上記した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
ステップS103で評価対象エリアに含まれる個々の無線エリアの面積Sの算出が完了すると、無線品質評価部102は、クレーム情報取得部104を介してクレーム情報DB105から電界強度に起因するクレーム情報(苦情情報)を抽出する(ステップS104)。
【0055】
次に、無線品質評価部102は、ステップS104で抽出したクレーム情報(苦情情報)を対象に、無線エリア内部の個々のクレーム(苦情)発生地点の電界強度を受信電界強度の推定結果から求め、その中で最大値を示す電界強度Emaxを抽出する(ステップS105)。
【0056】
なお、無線エリア内部でクレームがまったく発生していない場合は、事前に定めた電界強度の値(例えば、端末で正常な受信品質が得られる最小の受信電界強度の値など)をEmaxとすればよい。
【0057】
次に、無線品質評価部102は、無線エリア内部の電界強度が前記電界強度Emaxを下回る場所の面積Sを算出する(ステップS106)。
【0058】
次に、無線品質評価部102は、ステップS107では無線エリア内部における品質劣化面積率(S/S)を算出する(ステップS107)。
【0059】
以下、上記した第1の実施形態と同様に、トラフィック量推定部113によりトラフィックトラフィック量Lの推定が行われ(ステップS108)、優先度算出部106により、上記した[数1]等を用いて、無線エリア内部で生じる品質劣化のトラフィック規模Cの算出が行われる(ステップS109)。
【0060】
対策優先エリア抽出部109は、トラフィック規模Cが大きな無線エリアを優先度が高い無線エリアとみなして、優先度の高い無線エリアを抽出する(ステップS110)。
【0061】
最後に、表示部110により、以上の評価結果の出力が行われる(ステップS111)。
【0062】
図7は、上記ステップS111で、評価結果として出力される画面表示の例である。図7を参照すると、図5で説明した表305と、評価エリアにクレームの発生地点、品質劣化エリア、基地局等描画した図300が示されている。
【0063】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、上記した第1の実施形態の効果に加えて、実際の無線エリア内で品質に問題がある場所をより正確に抽出することが可能となる。その理由は、前記受信電界強度の閾値Emaxを固定値とするのではなく、無線エリアにおけるクレーム(苦情)発生地点の受信電界強度から求め、受信電界強度推定部103の推定結果と比較する構成としたことにある。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、第2の実施形態によれば、特定のエリア内で所定の受信電界強度の閾値を下回る場所、すなわち品質に問題がある場所の面積率を求め、該エリア内のトラフィック量と品質劣化面積率との積によりエリア内部の品質劣化のトラフィック規模を推定し、前記品質劣化のトラフィック規模を、前記エリアに対して品質改善措置を施す際の優先度の指標とする構成を採用している。このため、通信サービスを提供している無線エリアに対して、通信品質の改善措置を施す際の優先順位付けを的確に行うことができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、上記した実施形態では、[数1]を例示して、指標Cを算出するものとして説明したが、[数1]の右辺の各項に適当な係数(例えば、特許文献1、3のように地域の重要性や収益等を考慮する。)を乗ずることもできる。また、[数1]に代えて、その他の数式に品質劣化面積率(S/S)と、トラフィック量Lとをそれぞれ代入して、品質改善措置の優先度の指標を計算することも可能である。
【0066】
また、上記した実施形態では、無線セルを無線エリアとして、無線エリアの優先度指標Cを求めるものとして説明したが、評価エリア内部の任意の閉領域を評価単位とすることができる。
【0067】
また、上記した実施形態では、電界強度が下回るエリアを品質劣化エリアとするものとして説明したが、その他の無線品質の指標を用いて品質劣化エリアを判定することも可能であり、その場合にも、上記した面積率とトラフィック量とから、品質改善措置の優先度の指標Cを計算することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の無線通信網の品質評価システムの基本原理を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の無線通信網の品質評価システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る無線通信網の品質評価システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態の無線通信網の品質評価システムにより評価結果として出力される画面表示の例である。
【図5】本発明の第2の実施形態の無線通信網の品質評価システムの構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る無線通信網の品質評価システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態の無線通信網の品質評価システムにより評価結果として出力される画面表示の例である。
【符号の説明】
【0069】
100 品質評価システム
101 入力部
102 無線品質評価部
103 受信電界強度推定部
104 クレーム情報取得部
105 クレーム情報データベース(クレーム情報DB)
106 優先度算出部
107 トラフィック情報取得部
108 運用情報データベース(運用情報DB)
109 対策優先エリア抽出部
110 表示部
111 エリア設計情報データベース(エリア設計情報DB)
112 エリア設計情報取得部
113 トラフィック量推定部
115 判定部
300 評価エリア
301 無線基地局
302 無線エリアの境界
303 無線エリア
304 クレーム(発生位置)
305 評価結果の一覧表
306 品質劣化エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信サービスを提供する個々の無線エリアについて、無線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積と、該無線エリアの面積との比から、品質劣化面積率を求める手段と、
前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量を推定する手段と、
前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標を出力する手段と、を備える無線通信網の品質評価システム。
【請求項2】
請求項1記載の品質評価システムにおいて、
前記通信品質の改善措置を施す必要があるか否かの判断に代えて、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、前記通信品質の改善措置を施す際の優先度を算出する優先度算出手段を備える無線通信網の品質評価システム。
【請求項3】
請求項2記載の品質評価システムにおいて、
前記優先度算出手段は、前記品質劣化面積率と前記トラフィック量の積により、前記通信品質の改善措置を施す際の優先度の指標を算出する無線通信網の品質評価システム。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一に記載の品質評価システムにおいて、
前記トラフィック量は、各無線エリアにおける通信の試行回数又は失敗回数から推定される所定の類型に属する通信トラフィックの量である無線通信網の品質評価システム。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一に記載の品質評価システムにおいて、
前記品質劣化面積率を求める際の閾値は、各無線エリア内の通信に関する苦情が寄せられた地点の無線品質の指標から求める無線通信網の品質評価システム。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか一に記載の品質評価システムにおいて、
前記品質劣化面積率を求める際の閾値は、各無線エリア内の通信に関する苦情が寄せられた地点のうち、無線品質の指標が最良な地点の無線品質の指標である無線通信網の品質評価システム。
【請求項7】
無線通信サービスを提供する個々の無線エリアのうち、通信品質の改善措置を施す必要がある無線エリアを抽出する通信品質の改善措置対象エリアの抽出方法であって、
前記個々の無線エリアについて、無線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積と、該無線エリアの面積との比から、品質劣化面積率を求め、
前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量を推定し、
前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標を出力すること、を特徴とする通信品質の改善措置対象エリアの抽出方法。
【請求項8】
無線通信網の品質評価システムを構成するコンピュータに実行させるプログラムであって、
無線通信サービスを提供する個々の無線エリアについて、無線品質の指標が事前に定めた閾値を下回るエリア面積と、該無線エリアの面積との比から、品質劣化面積率を求める処理と、
前記個々の無線エリアで発生しているトラフィック量を推定する処理と、
前記個々の無線エリア毎に、品質劣化面積率と、前記トラフィック量とに基づいて、通信品質の改善措置を施す必要があるか否かを判断するための指標を出力する処理と、を前記コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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