無線通信装置、及び限界送信出力取得方法
【課題】 無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させること。
【解決手段】 装着されたコンピュータ20から電源の供給を受けて動作するPCカード端末装置1であって、送信パワー制御部10は、第1限界送信出力を決定し、当該PCカード端末装置1の送信出力を、前記第1限界送信出力まで上昇させ、第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第1送信出力上昇手段による上昇の度合いよりも小さい度合いで上昇させる、ことを特徴とする。
【解決手段】 装着されたコンピュータ20から電源の供給を受けて動作するPCカード端末装置1であって、送信パワー制御部10は、第1限界送信出力を決定し、当該PCカード端末装置1の送信出力を、前記第1限界送信出力まで上昇させ、第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第1送信出力上昇手段による上昇の度合いよりも小さい度合いで上昇させる、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置、及び限界送信出力取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信装置には、ノートパソコンなどのホスト機器に装着され、ホスト機器の無線通信に利用されるようになっているカードタイプのものがある。
【0003】
このようなカードタイプ無線通信装置は電源を持たず、ホスト機器から供給される電力を利用して動作する。ホスト機器は、規格化された電圧値(例えばPC Card Standardでは3.3V±0.3V)で電力を供給する。このときホスト機器から無線通信装置に対して入力される電流(無線通信装置の消費電流)は、無線通信装置の送信出力が大きくなればなるほど大きくなる。ただしホスト機器には、無線通信装置に入力する電流が所定電流値以上に大きくなると、上記規格化された電圧値を保つことができず、無線通信装置に供給する電力の電圧値が下がってしまうものがある。
【0004】
なお、特許文献1には、正弦波コンバータの出力電圧を最終目標値まで緩やかに上昇させることで、当該正弦波コンバータに突入電流が流れることがないようにする技術が記載されている。突入電流とは、装置の消費電流が急激に上昇した場合に一時的に流れる多大な入力電流のことをいう。なお、突入電流は一時的なものであり、消費電流が急激に上昇してしばらく経過すると、入力電流は安定する。この安定した入力電流は定常電流と呼ばれる。
【特許文献1】特開平11−98845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の無線通信装置においては、通信の多重化が進み復調復号の際に必要な受信電力が大きくなっていることに起因してその送信出力が大きくなる傾向がある。送信出力が大きくなると上述のように消費電流が大きくなり、送信出力を上限まで急増させたときの突入電流が上記所定電流値を超えてしまうことがある。そうすると、上述のように無線通信装置に供給される電力の電圧値が下がり、無線通信装置の動作が不安定となったり電圧降下によるリセットが発生したりして通信が継続できなくなってしまう。
【0006】
これに対応して、上記特許文献1に記載の技術のように、無線通信装置の送信出力を最終目標値まで緩やかに上昇させることで、当該無線通信装置に突入電流が流れることがないようにすることも考えられる。
【0007】
しかしながら、このように突入電流が流れない程度のスピードで送信出力を上昇させることにすると、無線通信装置の送信出力を大きく上げるための送信出力上昇処理が完了するまでに多大な時間が必要となってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的の一つは、無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることを可能にする無線通信装置、及び限界送信出力取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための無線通信装置は、装着されたホスト機器から電源の供給を受けて動作する無線通信装置であって、第1限界送信出力を決定する第1限界送信出力決定手段と、当該無線通信装置の送信出力を、前記第1限界送信出力まで上昇させる第1送信出力上昇手段と、前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第1送信出力上昇手段による上昇の度合いよりも小さい度合いで上昇させる第2送信出力上昇手段と、を含むことを特徴とする。また、このような無線通信装置において、前記第1限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第1限界送信出力として決定する、こととしてもよい。
【0010】
本発明によれば、まず突入電流が所定範囲に入る範囲で第1限界送信出力まで送信出力を上昇させ、その後小さい度合いで送信出力を上昇させることができる。このため、無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【0011】
また、上記無線通信装置において、第1限界送信出力よりも大きい第2限界送信出力を決定する第2限界送信出力決定手段、をさらに含み、前記第2送信出力上昇手段は、前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第2限界送信出力まで上昇させる、こととしてもよい。また、このような無線通信装置において、前記第2限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた後の定常電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、前記第2限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第2限界送信出力として決定する、こととしてもよい。
【0012】
さらに、上記無線通信装置において、前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、前記第1限界送信出力を決定し、当該無線通信装置が無線信号を送信する際の送信出力を取得する送信出力取得手段、をさらに含み、前記第1送信出力上昇手段は、当該無線通信装置の送信出力を、前記取得される送信出力について決定される第1限界送信出力まで上昇させる、こととしてもよい。また、このような無線通信装置において、前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を、前記上昇させる前の送信出力についての第1限界送信出力として決定する、こととしてもよい。
【0013】
本発明によれば、上昇前の送信出力ごとに第1限界送信出力を決定しているので、上昇前の送信出力がどのような値であっても、無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【0014】
また、本発明に係る限界送信出力決定方法は、回路の消費電流について、該回路の出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る上昇後送信出力を取得する上昇後送信出力取得ステップと、前記取得した上昇後送信出力を第1限界送信出力として決定する第1限界送信出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施形態1]
本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態にかかるPCカード端末装置1のシステム構成図である。同図に示すように、PCカード端末装置1は、機能的に、カードバスコネクタ2、電源回路部3、ベースバンド部4、記憶部5、送信部6、デュプレクサー7、アンテナ8、受信部9、送信パワー制御部10、電流測定制御部11、消費電流測定部12を含んで構成される無線通信装置である。
【0017】
PCカード端末装置1は、カードバスコネクタ2において、ホスト機器であるコンピュータ20のカードスロット21に装着され、後述するようにコンピュータ20から電源の供給を受けるとともに、信号の送受信を行う。PCカード端末装置1は、コンピュータ20と、図示しない基地局装置との間で行われる信号の送受信を中継する。
【0018】
電源回路部3は、カードバスコネクタ2を介してコンピュータ20から電源の供給を受ける。そして電源回路部3は、PCカード端末装置1の各部に対して電源を供給する。
【0019】
ベースバンド部4は、通信信号の変復調処理など、通信に係る処理を行う。また、ベースバンド部4は、PCカード端末装置1各部を制御する処理も行う。
【0020】
記憶部5は、ベースバンド部4、送信パワー制御部10、及び電流測定制御部11のワークメモリとして動作する。また、この記憶部5は、ベースバンド部4、送信パワー制御部10、及び電流測定制御部11によって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。特に、記憶部5は、後述するように、第1限界パワー、第2限界パワー、スペック電流、及び最大パワーも記憶している。第1限界パワー、第2限界パワー、及び最大パワーは、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶される。
【0021】
送信部6は、ベースバンド部4の指示に従い、ベースバンド部4から出力された信号を周波数変換し、デュプレクサー7に出力する。
【0022】
PCカード端末装置1は時分割復信方式による通信を行う。このために、デュプレクサー7は、ベースバンド部4の指示に従い、上り(コンピュータ20から基地局装置への送信)と下り(基地局装置からコンピュータ20への送信)のタイムスロットを切り替える。上りのタイムスロットでは、送信部6から入力される信号をアンテナ8に出力し、下りのタイムスロットでは、アンテナ8から入力される信号を受信部9に出力する。
【0023】
アンテナ8は、デュプレクサー7から出力される上り信号を無線区間に送出するとともに、自身に到来した下り信号を受信し、デュプレクサー7に出力する。
【0024】
受信部9は、ベースバンド部4の指示に従い、デュプレクサー7から入力される信号を周波数変換し、ベースバンド部4に入力する。
【0025】
送信パワー制御部10は、後述する送信電力制御処理により送信部6が信号を送信する際の送信パワー(送信出力)を制御する。また、送信パワーを適切に決定するための限界パワー決定処理も行う。
【0026】
電流測定制御部11は、消費電流測定部12によりPCカード端末装置1の消費電流を取得する。消費電流測定部12は電流計であり、電流測定制御部11の指示に従いPCカード端末装置1の消費電流を測定し、結果を電流測定制御部11に出力する。
【0027】
なお、電流測定制御部11は、消費電流測定部12の測定した消費電流に基づき、突入電流と定常電流を取得する。突入電流とは、装置の消費電流が急激に上昇した場合に一時的に流れる多大な入力電流のことである。例えば、送信部6の送信パワーが急激に上昇すると消費電流が急激に上昇し、大きな突入電流が発生する。ただし、この突入電流は一時的なものであり、消費電流が急激に上昇してしばらく経過すると、入力電流は安定する。定常電流は、この安定した入力電流のことである。
【0028】
また、電流測定制御部11は、コンピュータ20の供給できる最大パワーを取得し、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶させる。
【0029】
カードバスーUSBブリッジ13は、ベースバンド部4とコンピュータ20との間で行われる信号の送受信のインターフェイス変換装置である。
【0030】
図2は、送信パワーを0から一気に上昇させた場合の上昇後送信パワーと、電流測定制御部11が取得するPCカード端末装置1の消費電流と、の関係を示す図である。同図では、点線30が定常電流、実線31が突入電流を示している。
【0031】
図2に示すように、上昇後送信パワーが同じであれば、定常電流より突入電流の方が大きい。ここで、PCカード端末装置1にはスペック電流と呼ばれるものが存在し、消費電流がこのスペック電流を超えるとPCカード端末装置1の動作が不安定になったり、最悪の場合破壊されたりする。図2では、1Aがこのスペック電流の電流値である。図2では、送信パワーが21dBmのときに、突入電流がスペック電流となる。そこで従来は、突入電流がこのスペック電流を超えないようにするため、送信パワーが21dBmを上回らないようにしているが、本実施の形態ではより高い送信パワーを得られるようにしている。以下、このための限界パワー決定処理について詳細に説明する。
【0032】
図3は時間と消費電流の関係を示す図である。まず、同図を参照しながら、限界パワー決定処理の概要を説明する。
【0033】
送信パワー制御部10は、まず、1ステップずつのゆっくりした上昇度合い(PCカード通信装置1における最低上昇度合い)で送信パワーを上げる。このようにして送信パワーを1ステップずつ上げていくと、図3に示すように、定常電流がI1,I2・・・と上昇していく。送信パワー制御部10は、この定常電流が記憶部5に記憶されるスペック電流ILを上回ると、1ステップ前の送信パワーを第2限界パワーとして決定する(図3では、Inに対応する送信パワーが第2限界パワーとなる)。すなわち、第2限界パワーは、送信パワーを1ステップずつ上昇させた場合の最大可能送信パワー(定常電流の電流値がスペック電流ILを上回らない範囲の最大送信パワー)である。
【0034】
次に、送信パワー制御部10は、送信パワー0から急激な上昇度合い(最低上昇度合いよりも大きい度合い)で送信パワーを上げる。この場合、突入電流がK1,K2・・・と上昇していく。送信パワー制御部10は、この突入電流が記憶部5に記憶されるスペック電流ILから規定値以内となった場合、そのときの送信パワーを第1限界パワーとして決定する(図3では、K2に対応する送信パワーが第1限界パワーとなる)。すなわち、第1限界パワーは、送信パワーを0から急上昇させた場合の最大可能送信パワー(突入電流の電流値がスペック電流ILから規定値以内となる範囲の最大送信パワー)である。
【0035】
以下、このような限界パワー決定処理の詳細について、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0036】
図4及び図5は、限界パワー決定処理のフロー図である。これらの図に示すように、限界パワー決定処理は、PCカード端末装置1がカードスロット21に挿入され、その電源がONになると開始される。処理が開始されると、ベースバンド部4は、初めてコンピュータ20に挿入されたか否かを判定する(S100)。初めて挿入された場合、コンピュータ20においてドライバのインストール処理が行われる。ベースバンド部4はこの処理が行われているか否かを検出することにより、PCカード端末装置1が初めてコンピュータ20に挿入されたか否かを判定する。
【0037】
初めて挿入されたのではない場合には、ベースバンド部4は処理を終了する。初めて挿入された場合には、ベースバンド部4は、限界パワーの決定処理を開始するよう、送信パワー制御部10に指示する。
【0038】
送信パワー制御部10は、まず、1ステップずつのゆっくりした上昇度合いで送信パワーを上げた場合に、定常電流がスペック電流を超えない範囲で最大となる限界送信パワー(第2限界パワー)を決定するための処理を行う。
【0039】
具体的には、送信パワー制御部10は、まず送信パワーを最小パワーに設定し、信号を送信する(S101)。なお、限界パワー決定処理で送信する信号はダミー信号であり、実際にはアンテナ8から送出しなくともよい。送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの定常電流の電流値を記憶部5に記憶する(S102)。
【0040】
次に、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の定常電流がスペック電流を下回っているか否かを判断する(S103)。S103の判断において下回っていると判断する場合、送信パワー制御部10は、送信パワーが最大パワーと等しいか否かを判断する(S104)。一方、S103の判断において上回っていると判断する場合には、現在の送信パワーより1ステップ下げた送信パワーを第2限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S107)。
【0041】
S104の判断において送信パワーが最大パワーと等しくないと判断する場合、送信パワー制御部10は送信パワーを1ステップ上昇させる(S105)。送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの定常電流の電流値を記憶部5に記憶する(S106)。そして、処理をS103に戻す。
【0042】
一方、S104の判断において送信パワーが最大パワーと等しいと判断する場合、送信パワー制御部10は現在の送信パワー(すなわち最大パワー)を第2限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S108)。つまり、この場合、送信パワーを最大パワーにしても定常電流がスペック電流を超えないことが明らかとなったので、送信パワー制御部10は、最大パワーを第2限界パワーとしている。
【0043】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第2限界パワーを決定している。次に、送信パワー制御部10は、急激な上昇度合いで送信パワーを上げた場合に、突入電流がスペック電流を超えない範囲で最大となる限界送信パワー(第1限界パワー)を決定するための処理を行う。本実施形態では特に、送信パワー0から送信パワーを上昇させた場合について、第1限界パワーを決定する。
【0044】
S108では、送信パワー制御部10は送信を一時中断し、処理を停止する。すなわち、送信パワーを一旦0に戻す。そして、送信パワー制御部10は、送信パワーを第2限界パワーの80%に設定し、信号の送信を行う(S110)。このとき、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶する(S111)。
【0045】
次に、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流とスペック電流の差が規定値以内であるか否かを判断する(S112)。規定値以内である場合、現在の送信パワーを第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S120)。すなわち、第2限界パワーと異なり、第1限界パワーは規定値以内であればスペック電流を上回っていても構わない。このため、S112及びS120に示す処理のように、突入電流がスペック電流を上回っているか否かに関わらず、突入電流とスペック電流の差が規定値以内であれば、現在の送信パワーを第2限界パワーとして記憶することとしている。
【0046】
一方、S112において規定値以内でないと判断する場合、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流がスペック電流を下回っているか否かを判断する(S113)。S113の判断において下回っていると判断する場合、送信パワー制御部10は、送信パワーが最大パワーを下回っているか否かを判断する(S114)。
【0047】
S103の判断において最新の突入電流がスペック電流を下回っていないと判断する場合には、送信を一時中断し、処理を停止する(S115)。すなわち送信パワーを一旦0に戻す。そして、送信パワーを現在の送信パワーより1ステップ下げた送信パワーに設定し、信号を送信する(S116)。
【0048】
一方、S114の判断において送信パワーが最大パワーを下回っていると判断する場合には、送信を一時中断し、処理を停止する(S118)。すなわち送信パワーを一旦0に戻す。そして、送信パワーを現在の送信パワーより1ステップ上げた送信パワーに設定し、信号を送信する(S119)。
【0049】
S116又はS119において信号を送信したら、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶し(S117)、S112の処理に戻る。
【0050】
S114の判断において送信パワーが最大パワーを下回っていないと判断する場合には、現在の送信パワーを第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S120)。これは送信パワーが最大パワーを下回っていないにも関わらず、突入電流がスペック電流より相当程度(上記規定値以上)下回っている場合であるので、結果的には最大パワーを第1限界パワーとして設定することになる。
【0051】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワーを決定している。
【0052】
次に、送信パワー制御部10が、以上のようにして決定した第1限界パワー及び第2限界パワーを利用して送信電力制御を行う送信電力制御処理の説明を行う。
【0053】
図6は、送信電力制御処理のフロー図である。同図に示すように、送信パワー制御部10は、PCカード端末装置1から送信された信号を受信する基地局装置から送信パワー増加要求を受けると、この送信電力制御処理を開始する。
【0054】
この送信パワー増加要求には、送信パワーの要求値である要求パワーが含められる。そこで、送信パワー制御部10は、まず、要求パワーが第1限界パワーを上回っているか否かを判断する(S151)。上回っていない場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する(S156)。つまり、この場合には、いきなり送信パワーを要求パワーに設定したとしても突入電流がスペック電流を上回ることはないので、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する。
【0055】
一方、S151において上回っていると判断される場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを第1限界パワーに設定する(S152)。すなわち、第1限界パワーまで送信パワーを急上昇させる。そして、送信パワー制御部10は、送信パワーが要求パワー以上になるか(S154)、送信パワーが第2限界パワーとなるか(S155)、のいずれかが満たされるまで、送信パワーを1ステップずつの上昇度合いで上げる(S153)。送信パワーが要求パワー以上又は第2限界パワーとなった場合には、処理を終了する。
【0056】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワー及び第2限界パワーを利用する送信電力制御を行っている。
【0057】
以上説明したように、PCカード端末装置1は、まず、突入電流がスペック電流値に応じた所定範囲に入る範囲となるよう予め決定されている第1限界パワーまで送信出力を一気に上昇させ、その後第2限界パワーまで、最低上昇度合いで送信出力を上昇させることができる。このため、PCカード端末装置1の消費電流をスペック電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、その送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【0058】
[実施形態2]
本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0059】
第2の実施形態に係るPCカード端末装置1のシステム構成は、図1により説明した第1の実施形態に係るものと同様である。第2の実施形態では、送信電力制御処理及び限界パワー決定処理が第1の実施形態とは異なっている。具体的には、第1の実施形態では送信パワー0から送信パワーを上昇させた場合の第1限界パワーのみを決定していたが、第2の実施形態では任意の送信パワーから送信パワーを上昇させた場合の第1限界パワーを決定している。このために、第2の実施形態では、記憶部5は、コンピュータ20ごとに、現送信パワーと、第1限界パワーと、を対応付けて記憶する第1限界パワー記憶テーブルを記憶している。以下、本実施の形態に係る限界パワー決定処理について説明する。
【0060】
図7は時間と消費電流の関係を示す図である。まず、同図を参照しながら、限界パワー決定処理の概要を説明する。
【0061】
まず、送信パワー制御部10は、消費電流がB1となる最小送信パワーから定常電流がI1となる送信パワーまで、急激な上昇度合いで送信パワーを上昇させる。この場合、突入電流はK1−1となる。次に、送信パワー制御部10は、消費電流がB1となる最小送信パワーから定常電流がI2となる送信パワーまで、急激な上昇度合いで送信パワーを上昇させる。この場合、突入電流はK1−2となる。ここで、K1−1はスペック電流ILとの差が規定値以上あるが、K1−2はスペック電流ILとの差が規定値以内である。そこで、送信パワー制御部10は、定常電流がI2となる送信パワーを、消費電流がB1となる送信パワーに対応する第1限界パワーとして決定する。
【0062】
次に、送信パワー制御部10は、消費電流がB2となる送信パワーから急激な上昇度合いで送信パワーを上昇させることにより、同様に、消費電流がB1となる送信パワーに対応する第1限界パワーを決定する。送信パワー制御部10は、このような処理を上昇前の送信パワーごとに繰り返し、各上昇前送信パワーに対応する第1限界パワーを決定している。
【0063】
以下、このような限界パワー決定処理の詳細について、図8を参照しながら説明する。
【0064】
図8は、限界パワー決定処理のフロー図である。同図に示すように、S100からS108までの処理は、図4において説明した第1の実施形態における処理と同様である。
【0065】
S201以降において、送信パワー制御部10は、急激な上昇度合いで送信パワーを上げた場合に、突入電流がスペック電流を超えない範囲で最大となる限界送信パワー(第1限界パワー)を決定するための処理を、上昇前の送信パワーごとに行う。
【0066】
S201では、送信パワー制御部10は変数Nの記憶領域を確保し、所定値10を代入する(S201)。そして、送信パワー制御部10は、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%、上昇後送信パワーを第2限界パワーの80%に設定し、信号を送信する(S202)。このとき、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶する(S203)。
【0067】
次に、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流とスペック電流の差が規定値以内であるか否かを判断する(S204)。規定値以内である場合、上昇後送信パワーを、上昇前送信パワーが第2限界パワーのN%の時の第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて第1限界パワー記憶テーブルに記憶する(S205)。そして、上昇前送信パワーが最大パワーを下回っているか否かを判断し(S206)、下回っていない場合には処理を終了する。
【0068】
S206の判断において、下回っていると判断する場合には、変数Nの値に10を加算し(S214)、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%に設定するとともに(S215)、上昇後送信パワーを前回と同じ値に設定し、信号を送信する(S216)。
【0069】
S204の判断において、規定値以内でないと判断する場合には、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流がスペック電流を下回っているか否かを判断する(S207)。S207の判断において下回っていると判断する場合、送信パワー制御部10は、上昇後送信パワーが最大パワーを下回っているか否かを判断する(S208)。
【0070】
S207の判断において最新の突入電流がスペック電流を下回っていないと判断する場合には、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%に設定するとともに(S209)、上昇後送信パワーを前回より1ステップ下げた値に設定し、信号を送信する(S210)。
【0071】
一方、S208の判断において上昇後送信パワーが最大パワーを下回っていると判断する場合には、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%に設定するとともに(S212)、上昇後送信パワーを前回より1ステップ上げた値に設定し、信号を送信する(S213)。
【0072】
S210、S213、又はS216において信号を送信したら、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶し(S211)、S204の処理に戻る。
【0073】
S208の判断において上昇後送信パワーが最大パワーを下回っていないと判断する場合には、上昇後送信パワーを、上昇前送信パワーが第2限界パワーのN%の時の第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて第1限界パワー記憶テーブルに記憶する(S205)。これは上昇後送信パワーが最大パワーを下回っていないにも関わらず、突入電流がスペック電流より相当程度(上記規定値以上)下回っている場合であるので、結果的には最大パワーを上昇前送信パワーが第2限界パワーのN%の時の第1限界パワーとして設定することになる。
【0074】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワー記憶テーブルを生成している。なお、図9はこのようにして生成された第1限界パワー記憶テーブルの例である。同図に示すように、第1限界パワー記憶テーブルでは、「現送信パワー(上昇前送信パワー)」と「第1限界パワー」とが対応付けて記憶される。また、この第1限界パワー記憶テーブルは、コンピュータ20ごとに記憶されることになる。
【0075】
次に、送信パワー制御部10が、以上のようにして生成した第1限界パワー記憶テーブルを利用して送信電力制御を行う送信電力制御処理の説明を行う。
【0076】
図10は、送信電力制御処理のフロー図である。同図に示すように、送信パワー制御部10は、PCカード端末装置1から送信された信号を受信する基地局装置から送信パワー増加要求を受けると、この送信電力制御処理を開始する。
【0077】
送信パワー制御部10は、まず、電流測定制御部11により、現在の送信パワーを取得する(S251)。次に、現在の送信パワーに対する第1限界パワーを第1限界パワー記憶テーブルから読み出す(S252)。
【0078】
次に、送信パワー制御部10は、送信パワー増加要求に含まれる要求パワーが第1限界パワーを上回っているか否かを判断する(S253)。上回っていない場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する(S256)。つまり、この場合には、いきなり送信パワーを要求パワーに設定したとしても突入電流がスペック電流を上回ることはないので、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する。
【0079】
一方、S253において上回っていると判断される場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを第1限界パワーに設定する(S252)。すなわち、第1限界パワーまで送信パワーを急上昇させる。そして、送信パワー制御部10は、送信パワーが要求パワー以上になるまで(S255)、S252からの処理を繰り返す。送信パワーが要求パワー以上となった場合には、処理を終了する。
【0080】
この繰り返し処理を、図11を参照しながら、より詳細に説明する。
【0081】
図11は、送信電力制御処理の具体的な例において、時間と送信パワーの関係を示す図である。同図では、PCカード端末装置1は、初期状態として2dBmの送信パワーで送信している。電波伝播状況が悪化すると、PCカード端末装置1は、基地局装置から送信パワーを上げるよう送信パワー増加要求を受ける。ここでは、24dBmの要求パワーとするよう、送信パワー増加要求を受けたものとする。
【0082】
すると、PCカード端末装置1は、まず、2dBmに対応付けて記憶される第1限界パワー16dBmを読み出し、16dBmまで送信パワーを上昇させる。次に、16dBmに対応付けて記憶される第1限界パワー19.5dBmを読み出し、19.5dBmまで送信パワーを上昇させる。この処理を、送信パワーが要求パワー以上になるまで繰り返す。ただし、PCカード端末装置1の最大パワーが22dBmであるので、実際には送信パワーが要求パワー以上になることはなく、最大で22dBmとなる。
【0083】
その後電波伝播状況が改善すると、別途の送信電力処理により送信パワーが下がる。そして、再度電波伝播状況が悪化すると、そのときの送信パワーから、上記処理を繰り返すことになる。
【0084】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワー記憶テーブルを利用する送信電力制御を行っている。
【0085】
以上説明したように、PCカード端末装置1は、上昇前の送信出力ごとに第1限界パワー(第1限界送信出力)を記憶しているので、上昇前の送信出力がどのような値であっても、無線通信装置の消費電流をスペック電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における送信パワーと消費電流の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における時間と消費電流の関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における時間と消費電流の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る第1限界パワー記憶テーブルを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における時間と送信パワーの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 PCカード端末装置、2 カードバスコネクタ、3 電源回路部、4 ベースバンド部、5 記憶部、6 送信部、7 デュプレクサー、8 アンテナ、9 受信部、10 送信パワー制御部、11 電流測定制御部、12 消費電流測定部、13 カードバスーUSBブリッジ、20 コンピュータ、21 カードスロット。
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置、及び限界送信出力取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信装置には、ノートパソコンなどのホスト機器に装着され、ホスト機器の無線通信に利用されるようになっているカードタイプのものがある。
【0003】
このようなカードタイプ無線通信装置は電源を持たず、ホスト機器から供給される電力を利用して動作する。ホスト機器は、規格化された電圧値(例えばPC Card Standardでは3.3V±0.3V)で電力を供給する。このときホスト機器から無線通信装置に対して入力される電流(無線通信装置の消費電流)は、無線通信装置の送信出力が大きくなればなるほど大きくなる。ただしホスト機器には、無線通信装置に入力する電流が所定電流値以上に大きくなると、上記規格化された電圧値を保つことができず、無線通信装置に供給する電力の電圧値が下がってしまうものがある。
【0004】
なお、特許文献1には、正弦波コンバータの出力電圧を最終目標値まで緩やかに上昇させることで、当該正弦波コンバータに突入電流が流れることがないようにする技術が記載されている。突入電流とは、装置の消費電流が急激に上昇した場合に一時的に流れる多大な入力電流のことをいう。なお、突入電流は一時的なものであり、消費電流が急激に上昇してしばらく経過すると、入力電流は安定する。この安定した入力電流は定常電流と呼ばれる。
【特許文献1】特開平11−98845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の無線通信装置においては、通信の多重化が進み復調復号の際に必要な受信電力が大きくなっていることに起因してその送信出力が大きくなる傾向がある。送信出力が大きくなると上述のように消費電流が大きくなり、送信出力を上限まで急増させたときの突入電流が上記所定電流値を超えてしまうことがある。そうすると、上述のように無線通信装置に供給される電力の電圧値が下がり、無線通信装置の動作が不安定となったり電圧降下によるリセットが発生したりして通信が継続できなくなってしまう。
【0006】
これに対応して、上記特許文献1に記載の技術のように、無線通信装置の送信出力を最終目標値まで緩やかに上昇させることで、当該無線通信装置に突入電流が流れることがないようにすることも考えられる。
【0007】
しかしながら、このように突入電流が流れない程度のスピードで送信出力を上昇させることにすると、無線通信装置の送信出力を大きく上げるための送信出力上昇処理が完了するまでに多大な時間が必要となってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的の一つは、無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることを可能にする無線通信装置、及び限界送信出力取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための無線通信装置は、装着されたホスト機器から電源の供給を受けて動作する無線通信装置であって、第1限界送信出力を決定する第1限界送信出力決定手段と、当該無線通信装置の送信出力を、前記第1限界送信出力まで上昇させる第1送信出力上昇手段と、前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第1送信出力上昇手段による上昇の度合いよりも小さい度合いで上昇させる第2送信出力上昇手段と、を含むことを特徴とする。また、このような無線通信装置において、前記第1限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第1限界送信出力として決定する、こととしてもよい。
【0010】
本発明によれば、まず突入電流が所定範囲に入る範囲で第1限界送信出力まで送信出力を上昇させ、その後小さい度合いで送信出力を上昇させることができる。このため、無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【0011】
また、上記無線通信装置において、第1限界送信出力よりも大きい第2限界送信出力を決定する第2限界送信出力決定手段、をさらに含み、前記第2送信出力上昇手段は、前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第2限界送信出力まで上昇させる、こととしてもよい。また、このような無線通信装置において、前記第2限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた後の定常電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、前記第2限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第2限界送信出力として決定する、こととしてもよい。
【0012】
さらに、上記無線通信装置において、前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、前記第1限界送信出力を決定し、当該無線通信装置が無線信号を送信する際の送信出力を取得する送信出力取得手段、をさらに含み、前記第1送信出力上昇手段は、当該無線通信装置の送信出力を、前記取得される送信出力について決定される第1限界送信出力まで上昇させる、こととしてもよい。また、このような無線通信装置において、前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を、前記上昇させる前の送信出力についての第1限界送信出力として決定する、こととしてもよい。
【0013】
本発明によれば、上昇前の送信出力ごとに第1限界送信出力を決定しているので、上昇前の送信出力がどのような値であっても、無線通信装置の消費電流を所定電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【0014】
また、本発明に係る限界送信出力決定方法は、回路の消費電流について、該回路の出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る上昇後送信出力を取得する上昇後送信出力取得ステップと、前記取得した上昇後送信出力を第1限界送信出力として決定する第1限界送信出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施形態1]
本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態にかかるPCカード端末装置1のシステム構成図である。同図に示すように、PCカード端末装置1は、機能的に、カードバスコネクタ2、電源回路部3、ベースバンド部4、記憶部5、送信部6、デュプレクサー7、アンテナ8、受信部9、送信パワー制御部10、電流測定制御部11、消費電流測定部12を含んで構成される無線通信装置である。
【0017】
PCカード端末装置1は、カードバスコネクタ2において、ホスト機器であるコンピュータ20のカードスロット21に装着され、後述するようにコンピュータ20から電源の供給を受けるとともに、信号の送受信を行う。PCカード端末装置1は、コンピュータ20と、図示しない基地局装置との間で行われる信号の送受信を中継する。
【0018】
電源回路部3は、カードバスコネクタ2を介してコンピュータ20から電源の供給を受ける。そして電源回路部3は、PCカード端末装置1の各部に対して電源を供給する。
【0019】
ベースバンド部4は、通信信号の変復調処理など、通信に係る処理を行う。また、ベースバンド部4は、PCカード端末装置1各部を制御する処理も行う。
【0020】
記憶部5は、ベースバンド部4、送信パワー制御部10、及び電流測定制御部11のワークメモリとして動作する。また、この記憶部5は、ベースバンド部4、送信パワー制御部10、及び電流測定制御部11によって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。特に、記憶部5は、後述するように、第1限界パワー、第2限界パワー、スペック電流、及び最大パワーも記憶している。第1限界パワー、第2限界パワー、及び最大パワーは、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶される。
【0021】
送信部6は、ベースバンド部4の指示に従い、ベースバンド部4から出力された信号を周波数変換し、デュプレクサー7に出力する。
【0022】
PCカード端末装置1は時分割復信方式による通信を行う。このために、デュプレクサー7は、ベースバンド部4の指示に従い、上り(コンピュータ20から基地局装置への送信)と下り(基地局装置からコンピュータ20への送信)のタイムスロットを切り替える。上りのタイムスロットでは、送信部6から入力される信号をアンテナ8に出力し、下りのタイムスロットでは、アンテナ8から入力される信号を受信部9に出力する。
【0023】
アンテナ8は、デュプレクサー7から出力される上り信号を無線区間に送出するとともに、自身に到来した下り信号を受信し、デュプレクサー7に出力する。
【0024】
受信部9は、ベースバンド部4の指示に従い、デュプレクサー7から入力される信号を周波数変換し、ベースバンド部4に入力する。
【0025】
送信パワー制御部10は、後述する送信電力制御処理により送信部6が信号を送信する際の送信パワー(送信出力)を制御する。また、送信パワーを適切に決定するための限界パワー決定処理も行う。
【0026】
電流測定制御部11は、消費電流測定部12によりPCカード端末装置1の消費電流を取得する。消費電流測定部12は電流計であり、電流測定制御部11の指示に従いPCカード端末装置1の消費電流を測定し、結果を電流測定制御部11に出力する。
【0027】
なお、電流測定制御部11は、消費電流測定部12の測定した消費電流に基づき、突入電流と定常電流を取得する。突入電流とは、装置の消費電流が急激に上昇した場合に一時的に流れる多大な入力電流のことである。例えば、送信部6の送信パワーが急激に上昇すると消費電流が急激に上昇し、大きな突入電流が発生する。ただし、この突入電流は一時的なものであり、消費電流が急激に上昇してしばらく経過すると、入力電流は安定する。定常電流は、この安定した入力電流のことである。
【0028】
また、電流測定制御部11は、コンピュータ20の供給できる最大パワーを取得し、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶させる。
【0029】
カードバスーUSBブリッジ13は、ベースバンド部4とコンピュータ20との間で行われる信号の送受信のインターフェイス変換装置である。
【0030】
図2は、送信パワーを0から一気に上昇させた場合の上昇後送信パワーと、電流測定制御部11が取得するPCカード端末装置1の消費電流と、の関係を示す図である。同図では、点線30が定常電流、実線31が突入電流を示している。
【0031】
図2に示すように、上昇後送信パワーが同じであれば、定常電流より突入電流の方が大きい。ここで、PCカード端末装置1にはスペック電流と呼ばれるものが存在し、消費電流がこのスペック電流を超えるとPCカード端末装置1の動作が不安定になったり、最悪の場合破壊されたりする。図2では、1Aがこのスペック電流の電流値である。図2では、送信パワーが21dBmのときに、突入電流がスペック電流となる。そこで従来は、突入電流がこのスペック電流を超えないようにするため、送信パワーが21dBmを上回らないようにしているが、本実施の形態ではより高い送信パワーを得られるようにしている。以下、このための限界パワー決定処理について詳細に説明する。
【0032】
図3は時間と消費電流の関係を示す図である。まず、同図を参照しながら、限界パワー決定処理の概要を説明する。
【0033】
送信パワー制御部10は、まず、1ステップずつのゆっくりした上昇度合い(PCカード通信装置1における最低上昇度合い)で送信パワーを上げる。このようにして送信パワーを1ステップずつ上げていくと、図3に示すように、定常電流がI1,I2・・・と上昇していく。送信パワー制御部10は、この定常電流が記憶部5に記憶されるスペック電流ILを上回ると、1ステップ前の送信パワーを第2限界パワーとして決定する(図3では、Inに対応する送信パワーが第2限界パワーとなる)。すなわち、第2限界パワーは、送信パワーを1ステップずつ上昇させた場合の最大可能送信パワー(定常電流の電流値がスペック電流ILを上回らない範囲の最大送信パワー)である。
【0034】
次に、送信パワー制御部10は、送信パワー0から急激な上昇度合い(最低上昇度合いよりも大きい度合い)で送信パワーを上げる。この場合、突入電流がK1,K2・・・と上昇していく。送信パワー制御部10は、この突入電流が記憶部5に記憶されるスペック電流ILから規定値以内となった場合、そのときの送信パワーを第1限界パワーとして決定する(図3では、K2に対応する送信パワーが第1限界パワーとなる)。すなわち、第1限界パワーは、送信パワーを0から急上昇させた場合の最大可能送信パワー(突入電流の電流値がスペック電流ILから規定値以内となる範囲の最大送信パワー)である。
【0035】
以下、このような限界パワー決定処理の詳細について、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0036】
図4及び図5は、限界パワー決定処理のフロー図である。これらの図に示すように、限界パワー決定処理は、PCカード端末装置1がカードスロット21に挿入され、その電源がONになると開始される。処理が開始されると、ベースバンド部4は、初めてコンピュータ20に挿入されたか否かを判定する(S100)。初めて挿入された場合、コンピュータ20においてドライバのインストール処理が行われる。ベースバンド部4はこの処理が行われているか否かを検出することにより、PCカード端末装置1が初めてコンピュータ20に挿入されたか否かを判定する。
【0037】
初めて挿入されたのではない場合には、ベースバンド部4は処理を終了する。初めて挿入された場合には、ベースバンド部4は、限界パワーの決定処理を開始するよう、送信パワー制御部10に指示する。
【0038】
送信パワー制御部10は、まず、1ステップずつのゆっくりした上昇度合いで送信パワーを上げた場合に、定常電流がスペック電流を超えない範囲で最大となる限界送信パワー(第2限界パワー)を決定するための処理を行う。
【0039】
具体的には、送信パワー制御部10は、まず送信パワーを最小パワーに設定し、信号を送信する(S101)。なお、限界パワー決定処理で送信する信号はダミー信号であり、実際にはアンテナ8から送出しなくともよい。送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの定常電流の電流値を記憶部5に記憶する(S102)。
【0040】
次に、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の定常電流がスペック電流を下回っているか否かを判断する(S103)。S103の判断において下回っていると判断する場合、送信パワー制御部10は、送信パワーが最大パワーと等しいか否かを判断する(S104)。一方、S103の判断において上回っていると判断する場合には、現在の送信パワーより1ステップ下げた送信パワーを第2限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S107)。
【0041】
S104の判断において送信パワーが最大パワーと等しくないと判断する場合、送信パワー制御部10は送信パワーを1ステップ上昇させる(S105)。送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの定常電流の電流値を記憶部5に記憶する(S106)。そして、処理をS103に戻す。
【0042】
一方、S104の判断において送信パワーが最大パワーと等しいと判断する場合、送信パワー制御部10は現在の送信パワー(すなわち最大パワー)を第2限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S108)。つまり、この場合、送信パワーを最大パワーにしても定常電流がスペック電流を超えないことが明らかとなったので、送信パワー制御部10は、最大パワーを第2限界パワーとしている。
【0043】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第2限界パワーを決定している。次に、送信パワー制御部10は、急激な上昇度合いで送信パワーを上げた場合に、突入電流がスペック電流を超えない範囲で最大となる限界送信パワー(第1限界パワー)を決定するための処理を行う。本実施形態では特に、送信パワー0から送信パワーを上昇させた場合について、第1限界パワーを決定する。
【0044】
S108では、送信パワー制御部10は送信を一時中断し、処理を停止する。すなわち、送信パワーを一旦0に戻す。そして、送信パワー制御部10は、送信パワーを第2限界パワーの80%に設定し、信号の送信を行う(S110)。このとき、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶する(S111)。
【0045】
次に、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流とスペック電流の差が規定値以内であるか否かを判断する(S112)。規定値以内である場合、現在の送信パワーを第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S120)。すなわち、第2限界パワーと異なり、第1限界パワーは規定値以内であればスペック電流を上回っていても構わない。このため、S112及びS120に示す処理のように、突入電流がスペック電流を上回っているか否かに関わらず、突入電流とスペック電流の差が規定値以内であれば、現在の送信パワーを第2限界パワーとして記憶することとしている。
【0046】
一方、S112において規定値以内でないと判断する場合、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流がスペック電流を下回っているか否かを判断する(S113)。S113の判断において下回っていると判断する場合、送信パワー制御部10は、送信パワーが最大パワーを下回っているか否かを判断する(S114)。
【0047】
S103の判断において最新の突入電流がスペック電流を下回っていないと判断する場合には、送信を一時中断し、処理を停止する(S115)。すなわち送信パワーを一旦0に戻す。そして、送信パワーを現在の送信パワーより1ステップ下げた送信パワーに設定し、信号を送信する(S116)。
【0048】
一方、S114の判断において送信パワーが最大パワーを下回っていると判断する場合には、送信を一時中断し、処理を停止する(S118)。すなわち送信パワーを一旦0に戻す。そして、送信パワーを現在の送信パワーより1ステップ上げた送信パワーに設定し、信号を送信する(S119)。
【0049】
S116又はS119において信号を送信したら、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶し(S117)、S112の処理に戻る。
【0050】
S114の判断において送信パワーが最大パワーを下回っていないと判断する場合には、現在の送信パワーを第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて記憶部5に記憶する(S120)。これは送信パワーが最大パワーを下回っていないにも関わらず、突入電流がスペック電流より相当程度(上記規定値以上)下回っている場合であるので、結果的には最大パワーを第1限界パワーとして設定することになる。
【0051】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワーを決定している。
【0052】
次に、送信パワー制御部10が、以上のようにして決定した第1限界パワー及び第2限界パワーを利用して送信電力制御を行う送信電力制御処理の説明を行う。
【0053】
図6は、送信電力制御処理のフロー図である。同図に示すように、送信パワー制御部10は、PCカード端末装置1から送信された信号を受信する基地局装置から送信パワー増加要求を受けると、この送信電力制御処理を開始する。
【0054】
この送信パワー増加要求には、送信パワーの要求値である要求パワーが含められる。そこで、送信パワー制御部10は、まず、要求パワーが第1限界パワーを上回っているか否かを判断する(S151)。上回っていない場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する(S156)。つまり、この場合には、いきなり送信パワーを要求パワーに設定したとしても突入電流がスペック電流を上回ることはないので、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する。
【0055】
一方、S151において上回っていると判断される場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを第1限界パワーに設定する(S152)。すなわち、第1限界パワーまで送信パワーを急上昇させる。そして、送信パワー制御部10は、送信パワーが要求パワー以上になるか(S154)、送信パワーが第2限界パワーとなるか(S155)、のいずれかが満たされるまで、送信パワーを1ステップずつの上昇度合いで上げる(S153)。送信パワーが要求パワー以上又は第2限界パワーとなった場合には、処理を終了する。
【0056】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワー及び第2限界パワーを利用する送信電力制御を行っている。
【0057】
以上説明したように、PCカード端末装置1は、まず、突入電流がスペック電流値に応じた所定範囲に入る範囲となるよう予め決定されている第1限界パワーまで送信出力を一気に上昇させ、その後第2限界パワーまで、最低上昇度合いで送信出力を上昇させることができる。このため、PCカード端末装置1の消費電流をスペック電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、その送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【0058】
[実施形態2]
本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0059】
第2の実施形態に係るPCカード端末装置1のシステム構成は、図1により説明した第1の実施形態に係るものと同様である。第2の実施形態では、送信電力制御処理及び限界パワー決定処理が第1の実施形態とは異なっている。具体的には、第1の実施形態では送信パワー0から送信パワーを上昇させた場合の第1限界パワーのみを決定していたが、第2の実施形態では任意の送信パワーから送信パワーを上昇させた場合の第1限界パワーを決定している。このために、第2の実施形態では、記憶部5は、コンピュータ20ごとに、現送信パワーと、第1限界パワーと、を対応付けて記憶する第1限界パワー記憶テーブルを記憶している。以下、本実施の形態に係る限界パワー決定処理について説明する。
【0060】
図7は時間と消費電流の関係を示す図である。まず、同図を参照しながら、限界パワー決定処理の概要を説明する。
【0061】
まず、送信パワー制御部10は、消費電流がB1となる最小送信パワーから定常電流がI1となる送信パワーまで、急激な上昇度合いで送信パワーを上昇させる。この場合、突入電流はK1−1となる。次に、送信パワー制御部10は、消費電流がB1となる最小送信パワーから定常電流がI2となる送信パワーまで、急激な上昇度合いで送信パワーを上昇させる。この場合、突入電流はK1−2となる。ここで、K1−1はスペック電流ILとの差が規定値以上あるが、K1−2はスペック電流ILとの差が規定値以内である。そこで、送信パワー制御部10は、定常電流がI2となる送信パワーを、消費電流がB1となる送信パワーに対応する第1限界パワーとして決定する。
【0062】
次に、送信パワー制御部10は、消費電流がB2となる送信パワーから急激な上昇度合いで送信パワーを上昇させることにより、同様に、消費電流がB1となる送信パワーに対応する第1限界パワーを決定する。送信パワー制御部10は、このような処理を上昇前の送信パワーごとに繰り返し、各上昇前送信パワーに対応する第1限界パワーを決定している。
【0063】
以下、このような限界パワー決定処理の詳細について、図8を参照しながら説明する。
【0064】
図8は、限界パワー決定処理のフロー図である。同図に示すように、S100からS108までの処理は、図4において説明した第1の実施形態における処理と同様である。
【0065】
S201以降において、送信パワー制御部10は、急激な上昇度合いで送信パワーを上げた場合に、突入電流がスペック電流を超えない範囲で最大となる限界送信パワー(第1限界パワー)を決定するための処理を、上昇前の送信パワーごとに行う。
【0066】
S201では、送信パワー制御部10は変数Nの記憶領域を確保し、所定値10を代入する(S201)。そして、送信パワー制御部10は、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%、上昇後送信パワーを第2限界パワーの80%に設定し、信号を送信する(S202)。このとき、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶する(S203)。
【0067】
次に、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流とスペック電流の差が規定値以内であるか否かを判断する(S204)。規定値以内である場合、上昇後送信パワーを、上昇前送信パワーが第2限界パワーのN%の時の第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて第1限界パワー記憶テーブルに記憶する(S205)。そして、上昇前送信パワーが最大パワーを下回っているか否かを判断し(S206)、下回っていない場合には処理を終了する。
【0068】
S206の判断において、下回っていると判断する場合には、変数Nの値に10を加算し(S214)、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%に設定するとともに(S215)、上昇後送信パワーを前回と同じ値に設定し、信号を送信する(S216)。
【0069】
S204の判断において、規定値以内でないと判断する場合には、送信パワー制御部10は、記憶部5に記憶した最新の突入電流がスペック電流を下回っているか否かを判断する(S207)。S207の判断において下回っていると判断する場合、送信パワー制御部10は、上昇後送信パワーが最大パワーを下回っているか否かを判断する(S208)。
【0070】
S207の判断において最新の突入電流がスペック電流を下回っていないと判断する場合には、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%に設定するとともに(S209)、上昇後送信パワーを前回より1ステップ下げた値に設定し、信号を送信する(S210)。
【0071】
一方、S208の判断において上昇後送信パワーが最大パワーを下回っていると判断する場合には、上昇前送信パワーを第2限界パワーのN%に設定するとともに(S212)、上昇後送信パワーを前回より1ステップ上げた値に設定し、信号を送信する(S213)。
【0072】
S210、S213、又はS216において信号を送信したら、送信パワー制御部10は、電流測定制御部11により、このときの突入電流の電流値を記憶部5に記憶し(S211)、S204の処理に戻る。
【0073】
S208の判断において上昇後送信パワーが最大パワーを下回っていないと判断する場合には、上昇後送信パワーを、上昇前送信パワーが第2限界パワーのN%の時の第1限界パワーとして、コンピュータ20を識別するための識別情報と対応付けて第1限界パワー記憶テーブルに記憶する(S205)。これは上昇後送信パワーが最大パワーを下回っていないにも関わらず、突入電流がスペック電流より相当程度(上記規定値以上)下回っている場合であるので、結果的には最大パワーを上昇前送信パワーが第2限界パワーのN%の時の第1限界パワーとして設定することになる。
【0074】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワー記憶テーブルを生成している。なお、図9はこのようにして生成された第1限界パワー記憶テーブルの例である。同図に示すように、第1限界パワー記憶テーブルでは、「現送信パワー(上昇前送信パワー)」と「第1限界パワー」とが対応付けて記憶される。また、この第1限界パワー記憶テーブルは、コンピュータ20ごとに記憶されることになる。
【0075】
次に、送信パワー制御部10が、以上のようにして生成した第1限界パワー記憶テーブルを利用して送信電力制御を行う送信電力制御処理の説明を行う。
【0076】
図10は、送信電力制御処理のフロー図である。同図に示すように、送信パワー制御部10は、PCカード端末装置1から送信された信号を受信する基地局装置から送信パワー増加要求を受けると、この送信電力制御処理を開始する。
【0077】
送信パワー制御部10は、まず、電流測定制御部11により、現在の送信パワーを取得する(S251)。次に、現在の送信パワーに対する第1限界パワーを第1限界パワー記憶テーブルから読み出す(S252)。
【0078】
次に、送信パワー制御部10は、送信パワー増加要求に含まれる要求パワーが第1限界パワーを上回っているか否かを判断する(S253)。上回っていない場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する(S256)。つまり、この場合には、いきなり送信パワーを要求パワーに設定したとしても突入電流がスペック電流を上回ることはないので、送信パワー制御部10は、送信パワーを要求パワーに設定して信号を送信する。
【0079】
一方、S253において上回っていると判断される場合には、送信パワー制御部10は、送信パワーを第1限界パワーに設定する(S252)。すなわち、第1限界パワーまで送信パワーを急上昇させる。そして、送信パワー制御部10は、送信パワーが要求パワー以上になるまで(S255)、S252からの処理を繰り返す。送信パワーが要求パワー以上となった場合には、処理を終了する。
【0080】
この繰り返し処理を、図11を参照しながら、より詳細に説明する。
【0081】
図11は、送信電力制御処理の具体的な例において、時間と送信パワーの関係を示す図である。同図では、PCカード端末装置1は、初期状態として2dBmの送信パワーで送信している。電波伝播状況が悪化すると、PCカード端末装置1は、基地局装置から送信パワーを上げるよう送信パワー増加要求を受ける。ここでは、24dBmの要求パワーとするよう、送信パワー増加要求を受けたものとする。
【0082】
すると、PCカード端末装置1は、まず、2dBmに対応付けて記憶される第1限界パワー16dBmを読み出し、16dBmまで送信パワーを上昇させる。次に、16dBmに対応付けて記憶される第1限界パワー19.5dBmを読み出し、19.5dBmまで送信パワーを上昇させる。この処理を、送信パワーが要求パワー以上になるまで繰り返す。ただし、PCカード端末装置1の最大パワーが22dBmであるので、実際には送信パワーが要求パワー以上になることはなく、最大で22dBmとなる。
【0083】
その後電波伝播状況が改善すると、別途の送信電力処理により送信パワーが下がる。そして、再度電波伝播状況が悪化すると、そのときの送信パワーから、上記処理を繰り返すことになる。
【0084】
以上のようにして、送信パワー制御部10は、第1限界パワー記憶テーブルを利用する送信電力制御を行っている。
【0085】
以上説明したように、PCカード端末装置1は、上昇前の送信出力ごとに第1限界パワー(第1限界送信出力)を記憶しているので、上昇前の送信出力がどのような値であっても、無線通信装置の消費電流をスペック電流値に応じた所定範囲内に抑えつつ、送信出力を迅速に上昇させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における送信パワーと消費電流の関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における時間と消費電流の関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における時間と消費電流の関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る第1限界パワー記憶テーブルを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置の処理フロー図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るPCカード端末装置における時間と送信パワーの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 PCカード端末装置、2 カードバスコネクタ、3 電源回路部、4 ベースバンド部、5 記憶部、6 送信部、7 デュプレクサー、8 アンテナ、9 受信部、10 送信パワー制御部、11 電流測定制御部、12 消費電流測定部、13 カードバスーUSBブリッジ、20 コンピュータ、21 カードスロット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着されたホスト機器から電源の供給を受けて動作する無線通信装置であって、
第1限界送信出力を決定する第1限界送信出力決定手段と、
当該無線通信装置の送信出力を、前記第1限界送信出力まで上昇させる第1送信出力上昇手段と、
前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第1送信出力上昇手段による上昇の度合いよりも小さい度合いで上昇させる第2送信出力上昇手段と、
を含むことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記第1限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、
前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第1限界送信出力として決定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信装置において、
第1限界送信出力よりも大きい第2限界送信出力を決定する第2限界送信出力決定手段、をさらに含み、
前記第2送信出力上昇手段は、前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第2限界送信出力まで上昇させる、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置において、
前記第2限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた後の定常電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、
前記第2限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第2限界送信出力として決定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置において、
前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、前記第1限界送信出力を決定し、
当該無線通信装置が無線信号を送信する際の送信出力を取得する送信出力取得手段、をさらに含み、
前記第1送信出力上昇手段は、当該無線通信装置の送信出力を、前記取得される送信出力について決定される第1限界送信出力まで上昇させる、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信装置において、
前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、
前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を、第1限界送信出力として決定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
回路の消費電流について、該回路の出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る上昇後送信出力を取得する上昇後送信出力取得ステップと、
前記取得した上昇後送信出力を第1限界送信出力として決定する第1限界送信出力ステップと、
を含むことを特徴とする限界送信出力決定方法。
【請求項1】
装着されたホスト機器から電源の供給を受けて動作する無線通信装置であって、
第1限界送信出力を決定する第1限界送信出力決定手段と、
当該無線通信装置の送信出力を、前記第1限界送信出力まで上昇させる第1送信出力上昇手段と、
前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第1送信出力上昇手段による上昇の度合いよりも小さい度合いで上昇させる第2送信出力上昇手段と、
を含むことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記第1限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、
前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第1限界送信出力として決定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信装置において、
第1限界送信出力よりも大きい第2限界送信出力を決定する第2限界送信出力決定手段、をさらに含み、
前記第2送信出力上昇手段は、前記第1限界送信出力まで上昇した送信出力を、さらに前記第2限界送信出力まで上昇させる、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置において、
前記第2限界送信出力決定手段は、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた後の定常電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、
前記第2限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を第2限界送信出力として決定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信装置において、
前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、前記第1限界送信出力を決定し、
当該無線通信装置が無線信号を送信する際の送信出力を取得する送信出力取得手段、をさらに含み、
前記第1送信出力上昇手段は、当該無線通信装置の送信出力を、前記取得される送信出力について決定される第1限界送信出力まで上昇させる、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信装置において、
前記第1限界送信出力決定手段は、上昇させる前の送信出力ごとに、当該無線通信装置の送信出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る様に送信出力を制御する送信出力制御手段、を含み、
前記第1限界送信出力決定手段は、前記上昇後の送信出力を、第1限界送信出力として決定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
回路の消費電流について、該回路の出力を上昇させた場合に発生する突入電流が所定範囲に入る上昇後送信出力を取得する上昇後送信出力取得ステップと、
前記取得した上昇後送信出力を第1限界送信出力として決定する第1限界送信出力ステップと、
を含むことを特徴とする限界送信出力決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−13487(P2007−13487A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190636(P2005−190636)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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