説明

無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】基地局が備える複数アンテナのそれぞれの通信品質に関する情報に基づき、無線通信を行うエリア、当該エリアに対して適用するアンテナ、当該アンテナに適用するアンテナ制御方式を設定することで、様々な設置状況に適応可能な基地局を提供する。
【解決手段】無線通信装置(基地局)100は、複数のアンテナ120のそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部210と、アンテナ品質情報取得部210で取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部220とを備え、RFユニット110とベースバンドユニット150とが光ファイバー230で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置(基地局)、複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う第1の無線通信装置(基地局)と該第1の無線通信装置と無線接続される第2の無線通信装置(端末)とを備える無線通信システム、および、複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信においては、MIMO(Multiple Input Multiple Output) やAAS (Adaptive Antenna System)といった、複数のアンテナを用いて通信容量を増大させる技術が盛んに取り入れられてきている。また、ユーザ当りの通信容量を増大させる上では、マイクロセルやピコセルと呼ばれる小エリアで基地局の運用を行うことが有効であることや、ビル屋上といった基地局の設置場所の確保が困難になりつつあることから、コンクリート柱に懸架する方式での基地局の設置など、より自由度の高い設置条件での基地局の運用が求められるようになっている。
また、基地局の構成においては、ベースバンド部およびRF部を光ファイバで接続する方式を採用することが一般的になってきており、これも基地局の設置の自由度を向上させることに貢献している。
また、PHSのようにマイクロセルによってネットワークを形成する場合には、多数のセルのカバーエリアが重複する状況が考えられ、重複したカバーエリアが相互に干渉することによる性能劣化を最小限に留めることが、パフォーマンスを向上させる上で非常に重要である。
【0003】
無線通信における基地局の設置や運用に関する改善策を提案する従来技術として、以下のものが挙げられる。
(1)隣接する複数のセクターを集中管理することによって最適なMIMOの運用を可能にする方法(例えば特許文献1参照;以下、従来技術1という)。
(2)セルラーシステム内に新しい基地局を追加する際に、自局の位置を検出するとともに周辺基地局の状況を把握して、自律的にセルエリアの形成を行う方法(例えば特許文献2参照;以下、従来技術2という)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−134844号公報
【特許文献2】特開2003−319445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術1および従来技術2は、何れも、セルラーシステムにおいて、隣接セルとの干渉を最小限に留めるための、無線リソーススケジューリングやエリア形成を自律的に行うものである。したがって、これら従来技術1および従来技術2は、従来型のマクロセルのような計画的に配置された基地局においては効果があると考えられるが、PHSのマイクロセルのようにランダムに配置された基地局においては、相当数の基地局のカバーエリアが重複するため、従来技術1および従来技術2を適用した場合には、効率的ではない状況に陥ることが予想される。
【0006】
本発明は、無線通信装置が備える複数アンテナのそれぞれの通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリア、当該エリアに対して適用するアンテナおよび当該アンテナに適用するアンテナ制御方式を設定することにより、様々な設置状況に適応可能にする技術(無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1の無線通信装置は、複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置であって、前記複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部と、前記アンテナ品質情報取得部で取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項2の無線通信装置は、複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置であって、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部と、前記アンテナ品質情報取得部で取得した前記受信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項3の無線通信装置は、ベースバンドユニットと、該ベースバンドユニットに接続された、複数のアンテナを有する第1のRFユニットと、前記ベースバンドユニットに接続され、前記第1のRFユニットとは所定距離だけ離間して配置された第2のRFユニットとを備え、前記第1のRFユニットおよび前記第2のRFユニットを用いて、複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置であって、前記複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部と、前記アンテナ品質情報取得部で取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の無線通信装置は、前記アンテナ制御部は、前記エリアの設定により重複したエリアが生じた場合、当該重複したエリアに対して適用するアンテナが複数のアンテナである場合には、当該複数のアンテナに対するアンテナ制御方式として、アダプティブアレーアンテナ方式またはMIMO(Multi Input Multi Output)方式を適用することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5の無線通信装置は、前記複数のアンテナはセクターアンテナであることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の請求項6の無線通信システムは、複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う第1の無線通信装置と、該第1の無線通信装置と無線接続される第2の無線通信装置とを備える無線通信システムであって、前記第2の無線通信装置は、前記第1の無線通信装置から送信された信号を受信する受信部と、該受信部で受信した信号の品質に関する情報を検出する検出部と、該検出部で検出した前記品質に関する情報を前記第1の無線通信装置に送信する送信部とを備え、前記第1の無線通信装置は、前記第2の無線通信装置から送信された前記品質に関する情報を取得する品質情報取得部と、該品質情報取得部で取得した前記品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7の無線通信システムは、前記アンテナ制御部は、前記エリアの設定により重複したエリアが生じた場合、当該重複したエリアに対して適用するアンテナが複数のアンテナである場合には、当該複数のアンテナに対するアンテナ制御方式として、アダプティブアレーアンテナ方式またはMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式を適用することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8の無線通信システムは、前記複数のアンテナはセクターアンテナであることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の請求項9の無線通信方法は、複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置における無線通信方法であって、前記複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得ステップと、前記アンテナ品質情報取得ステップで取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線通信装置が備える複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得し、取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するから、無線通信装置(例えば基地局)の設置当初(運用開始時)は勿論、無線通信装置(例えば基地局)の運用中に周囲の無線通信装置(例えば基地局)の設置状況が変化した場合などにおいても、当該設置状況に適応する設定を行うことができる。したがって、様々な設置状況に適応可能にする技術(無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
近年、基地局のアーキテクチャとして、ベースバンドユニットとRFユニットとを分離して、両者を光ファイバーで接続する構成が一般的になってきており、そのインターフェースとしてCPRI(Common Public Radio Interface)やOBSAI(Open Base Station Standard Initiative)といった規格が標準化されている。図1は光インターフェースを使用した場合の代表的な基地局構成例を示している。光ファイバーを用いて、図1のようなベースバンドユニットとRFユニットとを分離した構成とすることにより、RF部をベースバンドユニットから数km離れた所に設置することが可能になり、より高い自由度で基地局を設置することが可能になる。
【0019】
図1は本発明の無線通信方法を適用する第1実施形態の無線通信装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の無線通信装置(無線基地局;以下、基地局ともいう)100は、RFユニット110と、ベースバンドユニット150とを備えており、RFユニット110は、アンテナ120と、送受信部130と、O/E変換部140とを有しており、ベースバンドユニット150は、O/E変換部160と、物理層170と、MAC層180と、ネットワークインターフェース190と、制御部200とを有しており、制御部200は、アンテナ品質情報取得部(品質情報取得部)210と、アンテナ制御部220とを含んでいる。RFユニット110と、ベースバンドユニット150とは、光ファイバ230を介して接続されている。
【0020】
RFユニット110は、所定の通信方式で送信するデータ信号を高周波信号に変換してアンテナ120から送信したり、アンテナ120から入力された高周波信号をデータ信号に変換したりするものである。
アンテナ120としては、1つのRFユニットに対して少なくとも1つのアンテナを用いるが、本実施形態では、後に説明するように、複数のアンテナを使用可能な場合には複数のアンテナ(アンテナ120−1,アンテナ120−2,・・)を用いる。その場合、本実施形態の無線通信装置100は、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う。
送受信部130は、アンテナ120を介して他の無線通信装置(端末や他の基地局)から信号を受信したり、アンテナ120を介して他の無線通信装置(端末や他の基地局)に信号を送信したりするものである。なお、他の無線通信装置である端末としては、無線通信装置(基地局)100から送信された信号を受信する受信部と、該受信部で受信した信号の品質に関する情報を検出する検出部と、該検出部で検出した前記品質に関する情報を無線通信装置(基地局)100に送信する送信部とを備える端末を用いるものとする。
O/E変換部140およびO/E変換部160は、受信した信号(電気信号)を光信号に変換するものである。
ベースバンドユニット150は、変調前の信号および変調後の信号であるベースバンド信号の処理を行うユニットである。
物理層170およびMAC層180は、各種無線プロトコルに準拠した処理を行うものである。無線通信システムが例えばLTE(Long Term Evolution )の場合、物理層170およびMAC層180は、3GPP(3rd Generation Partnership)の規格書TS36.201やTS36.321において規定されている処理を実行する。
ネットワークインターフェース190は、MAC層以上の処理を実行し、ベースバンドユニット150とIP網240とを接続するものである。
【0021】
制御部200は、ベースバンドユニット150の、O/E変換部160、物理層170、MAC層180およびネットワークインターフェース190の各種制御を行うものである。
アンテナ品質情報取得部210は、複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質(送信品質、受信品質)に関する情報を取得するものである。「複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質(送信品質、受信品質)に関する情報」としては、(a)基地局から端末へ参照信号を送信し、該参照信号を端末が受信したときの電力、(b)端末から送信された信号を基地局が受信したときの電力、(c)複数のアンテナの内の一部のアンテナから送信した信号を他のアンテナが受信したときの電力、何れかを用いるものとする。
アンテナ制御部220は、アンテナ品質情報取得部210で取得した通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するものである。
【0022】
基地局の基本的な設置例について説明する。図2(a),(b)はそれぞれ、セクターアンテナを使用した2本アンテナ基地局の設置例およびオムニアンテナを使用した2本アンテナ基地局の設置例を示す図である。図2(a)の設置例は、別セクターとして運用するものであり、それぞれのセクターアンテナの利得を持った方向を反対向きにして設置しており、2本のセクターアンテナ(セクターアンテナ1,セクターアンテナ2)はそれぞれ、RFケーブルを介して基地局装置に接続されている。図2(b)の設置例は、同一セクターとして運用するものであり、それぞれのオムニアンテナの利得を持った方向を反対向きにして設置しており、2本のオムニアンテナ(オムニアンテナ1,オムニアンテナ2)はそれぞれ、RFケーブルを介して基地局装置に接続されている。
【0023】
図3(a),(b)はそれぞれ、図2(a),(b)の基地局の設置例におけるカバーエリアを説明するための図である。図2(a)のように基地局を設置した場合、セクターアンテナの指向性から、カバーエリアは図3(a)のような形状になり、図2(b)のように基地局を設置した場合、オムニアンテナの指向性から、カバーエリアは図3(b)のような形状になると考えられる。セクターアンテナの場合、図3(a)のようにそれぞれのセクターアンテナがカバーするエリアは空間的に別れるため、それぞれのセクターアンテナを別のセクターとして運用することが理想的である。また、オムニアンテナの場合、図3(b)のように2つのオムニアンテナがカバーするエリアがほぼ重なっているため、1セクターとして運用し、2本アンテナを用いたMIMOSAやAASといった技術を適用することが望まれる。
【0024】
本実施形態では、様々なアンテナの配置状況を無線通信装置(基地局)100が自律的に判断して、それぞれのアンテナの設置状況に応じた最適なセクター構成で運用するように構成している。本実施形態において、アンテナの配置状況を基地局が判断する方法としては、例えば下記方法の何れかを用いる。
(1)端末からのフィードバックに基づいて基地局が判定を行う方法。すなわち、基地局が送信するパイロットチャネル等の参照信号に基づいて、各基地局のそれぞれのアンテナからの信号電力を端末において測定し、測定した信号電力に関する情報を端末から基地局へとフィードバックする。基地局は、複数の端末からフィードバックされた情報を収集し、それらの情報に基づいて、「どのアンテナと、どのアンテナのカバーエリアとが重複しているか」を判定する。
(2)端末が送信する参照信号の受信電力を基地局のそれぞれのアンテナにおいて測定して、測定した受信電力に基づいてアンテナの配置状況を基地局が判断する方法。すなわち、各アンテナにおいて測定した受信電力に大きな差が見られない場合には、それらのアンテナは同一エリアをカバーしていると判定する。
(3)基地局の何れか1つのアンテナで参照信号を送信し、同一基地局の他のアンテナで前記参照信号の受信電力を測定することにより、それぞれのアンテナの指向性を判定する方法。この場合、参照信号の到来のタイミングによる距離の推定、もしくは、GPSによる位置情報等を併用してもよい。
【0025】
次に、上記方法(1)の判定を用いた場合の本発明の無線通信装置(基地局)の設定を図4のフローチャートに基づいて説明する。この図4のフローチャートは、当該基地局の電源投入時および一定期間経過毎(例えば1ヶ月毎)に起動され、さらに、基地局やアンテナ等の構成変更時にも起動されるものとする。ここで、NA を基地局のアンテナ本数とし、NS をその基地局が運用するセクター数とする。
【0026】
図4のフローチャートにおいて、まず、ステップS11では、NS をデフォルト値に設定する。ここで、NS は基地局のアンテナ本数より大きくなり得ないため、NS ≦NA の条件下で設定される。次のステップS12では、各アンテナのカバー領域のオーバーラップ状況(重複状況)を測定する。この測定は、上述した3つの方法の何れかを用いて行う。その結果、次のステップS13において、それぞれのアンテナのカバーエリアに基づいて、アンテナのグループ分けがなされることになる。
【0027】
図5は本発明の無線通信装置(基地局)におけるアンテナのグループ分けの一例を説明するための図である。この例は、基地局のアンテナ本数NA をNA =4とし、それぞれのアンテナの番号を1〜4で表したときに、図4のステップS13で求めたカバーエリアの例を示している。図5において、AおよびBはそれぞれカバーするエリアの区分を示しており、つまり、アンテナ1およびアンテナ4は同一エリアAをカバーしており、アンテナ2およびアンテナ3は同一エリアBをカバーしていることを意味している。この例においては、エリアを2つに分けて考えることができるため、基地局が運用するセクター数NS は、NS =2となり、1番目のセクターにはアンテナ1およびアンテナ4が割り当てられ、2番目のセクターにはアンテナ2およびアンテナ3が割り当てられるため、それぞれのセクターにおいて、2本アンテナでのMIMO技術もしくはAAS技術を適用することが可能である。
【0028】
図4のステップS14では、ステップS13のグループ分けに基づいて、基地局が運用するセクター数NS およびそれぞれのセクターに属するアンテナ本数を決定する。次のステップS15では、以上により求めたセクターおよびアンテナ本数の関係に基づいて、各セクターに適用するアンテナ技術を選択するとともに選択したアンテナ技術に関するパラメータを基地局内で設定し、この設定の完了後に通常の運用モードに移行する。その後、ステップS16を実行する。ステップS16では、タイマー(図示せず)で一定時間をカウントする。タイマーが一定時間をカウントする毎(一定時間が経過する毎)にステップS12に戻って、アンテナ構成等の見直しを行うため、アンテナ等の設置状況の変化に対して適応的に対応することが可能になる。
【0029】
次に、図4のフローチャートにより設定された基地局の設置例を図6により説明する。図6は光ファイバーを使用した場合の本発明の無線通信装置(基地局)の設置例を示しており、この設置例の場合、ベースバンドユニット150は2系統の光入出力を有しているため、2個のRFユニットを接続することが可能であることを前提としている。
図6において、1個目のRFユニットであるRFユニット110−1は、ベースバンドユニット150の近傍に設置され、短い光ファイバー230−1によりベースバンドユニット150に接続されているが、2個目のRFユニットであるRFユニット110−2はベースバンドユニット150の遠隔地に設置され、長い光ファイバー230−2によりベースバンドユニット150に接続されている。RFユニット110−1にはRFケーブル250を介してセクタアンテナ120−1およびセクタアンテナ120−2が接続されており、RFユニット110−2にはRFケーブル250を介してセクタアンテナ120−3およびセクタアンテナ120−4が接続されている。
【0030】
図7は図6の設置例に示す基地局の各アンテナのカバーエリアを説明するための図である。図7に示すように、セクタアンテナ120−2とセクタアンテナ120−3とは、カバーエリアが重なり合うようにして設置されている。本発明では、図7に示すような各アンテナの設置状況において、セクターA,セクターB,セクターCの3つのセクターに分けて運用することを基地局が自律的に決定し、セクターBについては、セクタアンテナ120−2およびセクタアンテナ120−3の2本のセクターアンテナを使用したMIMO等によるサービスを提供することを可能にしている。
【0031】
ここで、図7の例における各アンテナの設置状況を推定する方法について図8によって説明する。図7の例においては、全エリア内には端末a,端末b,端末cという3つの端末が存在し、端末aはセクターAのエリア内に位置し、端末bはセクターBのエリア内に位置し、端末cはセクターCのエリア内に位置している。このとき、1つの端末に注目すると、図8に示すように、端末aは、RFユニット110−1およびRFユニット110−2からの下り参照信号を受信することにより、セクタアンテナ120−1、セクタアンテナ120−2、セクタアンテナ120−3、セクタアンテナ120−4のそれぞれから送信される参照信号の受信電力を独立的に算出することが可能である。また、得られた受信電力および対応するアンテナ番号を、図8に示すように、「端末aからのレポート」として、上り信号を使用してRFユニット110−1に対応する基地局へフィードバックすることができるように構成されている場合には、基地局において端末側の受信電力情報を得ることが可能になる。
【0032】
上述したような方法によって得られた「各端末における受信電力」の例を図9により説明する。図9においては、−100dBmを閾値に設定して、−100dBm以上の受信レベルで受信できる場合に端末がエリア内に存在すると判断するようにすれば、図中の斜線を付けた部分が「端末がエリア内に存在する状況」に該当することになる。つまり、端末aはセクタアンテナ120−1のエリア内に存在し、端末bはセクタアンテナ120−2およびセクタアンテナ120−3のエリア内に存在し、端末cはセクタアンテナ120−4のエリア内に存在していると判断することができる。よって、この図9の例から判断すると、セクタアンテナ120−2のカバーエリアとセクタアンテナ120−3のカバーエリアとは重なっている可能性が高いことが分かる。以上のような情報をさらに多くの端末から収集して、統計的に処理することによって、アンテナの設置状況を判定することができるようになる。
【0033】
なお、図6に示す設置例は、1つのベースバンドユニット150に2つのRFユニット(RFユニット110−1,RFユニット110−2)を接続した例であるが、さらに多数のRFユニットを1つのベースバンドユニットに接続して構成してもよい。
また、複数のベースバンドユニットによって1つのRFユニットを共用する構成とすることも可能である。その場合、図10の構成例に示すように、RFユニット110−2は、ベースバンドユニット150−1およびベースバンドユニット150−2によって共用されるため、RFユニット110−2はカバーエリアに応じてどちらのベースバンドユニット(セル)にも属することが可能である。
【0034】
以上説明したように、第1実施形態によれば、無線通信装置(基地局)100が備える複数のアンテナ(セクタアンテナ120−1、セクタアンテナ120−2、・・)のそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得し、取得した通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するから、無線通信装置(基地局)100の設置当初(運用開始時)は勿論、無線通信装置(基地局)100の運用中に周囲の無線通信装置(ば基地局)の設置状況が変化した場合などにおいても、当該設置状況に適応する設定を行うことができる。したがって、様々な設置状況に適応可能な技術(無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法)を提供することができる。特に、アンテナのカバーエリアが重複した場合にアダプティブアレーアンテナ方式やMIMO方式等のマルチアンテナ技術を適用して周波数利用効率を改善させることができるので、基地局をランダムに配置するマイクロセル配置に適用した場合に有効である。
【0035】
なお、図4のフローチャートは1つの基地局のカバーエリアが重複した場合のアンテナ等の設定を示しているが、同様の設定を複数の基地局において実施することにより、複数の基地局のカバーエリアが重複した場合にも、当該状況を把握して、カバーエリアが重複しているアンテナを組み合わせてマルチアンテナ技術を適用することにより、周波数利用効率を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の無線通信方法を適用する第1実施形態の無線通信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、セクターアンテナを使用した2本アンテナ基地局の設置例およびオムニアンテナを使用した2本アンテナ基地局の設置例を示す図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、図2(a),(b)の基地局の設置例におけるカバーエリアを説明するための図である。
【図4】本発明の無線通信装置(基地局)の設定を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の無線通信装置(基地局)におけるアンテナのグループ分けの一例を説明するための図である。
【図6】図4のフローチャートにより設定された基地局の設置例を説明するための図である。
【図7】図6の設置例に示す基地局の各アンテナのカバーエリアを説明するための図である。
【図8】図7の例における各アンテナの設置状況を推定する方法を説明するための図である。
【図9】本発明の無線通信装置(基地局)において取得した各端末における受信電力情報を例示する図である。
【図10】本発明の無線通信装置(基地局)における他の設置例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
100 無線通信装置(基地局)
110,110−1,110−2,110−3 RFユニット
120、120−1,120−2,120−3,120−4 アンテナ(セクターアンテナ)
130 送受信部
140,160 O/E変換部
150,150−1,150−2 ベースバンドユニット
170 物理層
180 MAC層
190 ネットワークインターフェース
200 制御部
210 アンテナ品質情報取得部
220 アンテナ制御部
230,230−1,230−2,230−3,230−4 光ファイバー
250 RFケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備え、複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部と、
前記アンテナ品質情報取得部で取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
複数のアンテナを備え、複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部と、
前記アンテナ品質情報取得部で取得した前記受信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
ベースバンドユニットと、該ベースバンドユニットに接続された、複数のアンテナを有する第1のRFユニットと、前記ベースバンドユニットに接続され、前記第1のRFユニットとは所定距離だけ離間して配置された第2のRFユニットとを備え、前記第1のRFユニットおよび前記第2のRFユニットを用いて、複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得部と、
前記アンテナ品質情報取得部で取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
前記アンテナ制御部は、前記エリアの設定により重複したエリアが生じた場合、当該重複したエリアに対して適用するアンテナが複数のアンテナである場合には、当該複数のアンテナに対するアンテナ制御方式として、アダプティブアレーアンテナ方式またはMIMO(Multi Input Multi Output)方式を適用することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数のアンテナはセクターアンテナであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う第1の無線通信装置と、該第1の無線通信装置と無線接続される第2の無線通信装置とを備える無線通信システムであって、
前記第2の無線通信装置は、
前記第1の無線通信装置から送信された信号を受信する受信部と、
該受信部で受信した信号の品質に関する情報を検出する検出部と、
該検出部で検出した前記品質に関する情報を前記第1の無線通信装置に送信する送信部とを備え、
前記第1の無線通信装置は、
前記第2の無線通信装置から送信された前記品質に関する情報を取得する品質情報取得部と、
該品質情報取得部で取得した前記品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
前記アンテナ制御部は、前記エリアの設定により重複したエリアが生じた場合、当該重複したエリアに対して適用するアンテナが複数のアンテナである場合には、当該複数のアンテナに対するアンテナ制御方式として、アダプティブアレーアンテナ方式またはMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式を適用することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記複数のアンテナはセクターアンテナであることを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項9】
複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナを用いて複数のエリアで無線通信を行う無線通信装置における無線通信方法であって、
前記複数のアンテナのそれぞれにおける通信品質に関する情報を取得するアンテナ品質情報取得ステップと、
前記アンテナ品質情報取得ステップで取得した前記通信品質に関する情報に基づいて、無線通信を行うエリアと、当該エリアに対して適用するアンテナと、当該アンテナに対して適用するアンテナ制御方式とを設定するアンテナ制御ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10989(P2010−10989A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166882(P2008−166882)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】