説明

無線通信装置、無線通信システム

【課題】分割多重方式を利用した通信システムにおいて特定の装置間における通信品質の悪化が、他の装置間の通信品質に悪影響を与えることを防ぐ。
【解決手段】複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線通信装置であって、未送信データを格納する送信キュー領域と、通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、評価結果に応じて定められる特定の通信先に対する送信データを再送するための再送補助通信スロットとを設定し、送信キュー領域に格納された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に係り、特に、無線通信におけるデータ再送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワークの典型的な構成例として、スター型ネットワークがあげられる。図7は、中央に位置する装置A500aが、装置B500b、装置C500c、装置D500dと無線通信を行なうスター型ネットワークの構成を示している。以下では、装置A500aから装置B500b、装置C500c、装置D500dに対して、時分割多重方式(TDMA)によりデータを送信する場合を例に説明する。
【0003】
時分割多重方式では、一定の通信周期を通信スロットと呼ばれる短い時間に分割し、それらを各装置(ノード)間の通信に割り当てることによって、装置間の通信を多重化する。
【0004】
図8は、図7に示した無線ネットワークにおける通信スロットの割り当て例を示す図である。本図において「A→B」は、装置A500aから装置B500bへのデータ送信に用いる通信スロットを示している。「A→C」「A→D」についても同様である。
【0005】
ところで、通信経路が有線通信に比べて不安定である無線通信において、通信信頼性の確保のために有効な手法の1つにデータの再送があげられる。データ再送は、通信に失敗した送信データを、再送用に設けられた通信スロットを利用して再度送信する処理である。本図の例では、「A→B」「A→C」「A→D」の通信スロットに加え、データ再送用の通信スロットである再送スロット「Retry」が用意されている。
【0006】
再送スロット「Retry」は、装置A→装置B、装置A→装置C、装置A→装置Dの通信に失敗した場合に、再度データを送信する場合に用いられ、装置A→装置B、装置A→装置C、装置A→装置Dで共有される。
【0007】
一般に、再送スロットの割り当て数は、再送も考慮した上で一定の通信品質を保つことができるように、各装置間における通信のエラー率を基にして決定される。通信状況がよい、すなわち、エラー率が低いときは再送スロット数を減らし、逆に、通信状況が悪い、すなわち、エラー率が高いときには再送スロット数を増やすことによって通信品質を確保する。
【0008】
通信に成功したかどうかの判定は、例えば、受信側装置が送信側装置に対して到達確認(ACK)を送信することで行なわれる。この場合、送信側装置は、データ送信後に直ちに受信可能な状態にし、受信側装置からのACKを待つ。そして、所定時間内にACKを受信すると、通信に成功したものと判定する。一方、所定時間内にACKを受信できなかった場合には、通信エラーが発生したと判定し、送信側装置は、再送スロットを用いてデータ再送を行なう。なお、図8においては、ACKの処理は、各通信スロット内で実施されるものとし、図示を省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−263511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、再送スロットの割り当て数は、その通信環境に応じて目標とするデータ到達率を確保することができるように設定される。設定方法としては、例えば、無線ネットワーク運用の前に環境調査を行ない、エラー率を見積もった上で再送スロット数を事前に設定することや、実際に運用を行ないながらエラー率に応じた再送スロット数の設定を動的に行なう手法が用いられている。
【0011】
通常、通信エラー率は一定ではなく、外部からのノイズの影響や障害物の有無等の様々な要因で変化する。また、装置間に障害物やノイズ源が出現したこと等による通信エラーの増加は、その障害物やノイズ源が取り除かれるまで継続することになる。
【0012】
未送信データの管理は、送信キューを用いて管理されるが、ある特定の装置間における通信状況が悪化し、高い頻度で通信エラーとなると、送信キューには、特定装置宛の再送データが多く蓄積されることになり、他の装置宛の再送データを圧迫する場合がある。
【0013】
図9は、装置A500aから装置D500dへの通信状況が悪化している場合の装置A500aの送信キューと通信スロットの様子を模式的に示す図である。本図において、×が付された通信スロットは、通信が失敗した通信スロットを示しており、A装置→D装置の通信はすべて失敗し、A装置→B装置の通信、A装置→C装置の通信はそれぞれ1回失敗したとする。ここでは、いずれの再送データとも再送スロット「Retry」においても送信できなかったものとして、時刻Tにおいて送信キューに未送信データとして残っている状態を示している。
【0014】
本図に示すように、送信キューは、A装置→D装置の再送データで多く占められており、A装置→B装置のデータ再送、A装置→C装置のデータ再送に悪影響を及ぼしている。また、送信キューの大きさは有限であるため送信キューの容量を超えた再送データは所定の規則にしたがって破棄される。このため、特定の装置間の再送データによって、他の装置間の送信データが破棄されてしまう可能性がある。
【0015】
再送スロットの数は、特定の装置間の通信状況が悪化した状態でも目標とするデータ到達率を確保できるように設定されるが、エラー率を見積もった上で再送スロット数を事前に設定しておく方法では、特定の装置間における通信状況が当初の想定よりも悪化すると、再送スロット数が不足することになり、他の装置間の通信品質に悪影響を与えるのに加え、目標とするデータ到達率を確保することができなくなる。
【0016】
これに対し、エラー率に応じた再送スロット数の設定を動的に行なう方法では、特定の装置間の通信状況の悪化に対応して再送スロット数を増やすことが可能となる。しかしながら、割り当て可能な再送スロットの数には上限があり、特定の装置間の通信状況の悪化が他の装置間の通信品質に悪影響を与えることを十分に防ぐことはできない。
【0017】
そこで、本発明は、時分割多重方式を利用した通信システムにおいて特定の装置間における通信品質の悪化が、他の装置間の通信品質に悪影響を与えることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である無線通信装置は、複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線通信装置であって、未送信データを格納する送信キュー領域と、通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、前記評価結果に応じて定められる特定の通信先に対する送信データを再送するための再送補助通信スロットとを設定し、前記送信キュー領域に格納された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
ここで、前記通信状況評価部は、通信先毎の通信エラー率を評価し、前記通信スロット制御部は、通信エラー率が所定の基準値を超えた通信先に対する再送データを前記再送補助通信スロットに振り分け、その他の再送データを前記再送通信スロットに振り分けることができる。
【0020】
あるいは、前記通信状況評価部は、通信先毎の前記送信キュー領域に格納されている再送データ数を評価し、前記通信スロット制御部は、前記再送データ数が所定の基準値を超えた通信先に対する再送データを前記再送補助通信スロットに振り分け、その他の再送データを前記再送通信スロットに振り分けるようにしてもよい。
【0021】
また、前記通信スロット制御は、あらかじめ定められた条件を満たす場合には、前記再送補助通信スロットを、前記通信スロットあるいは前記再送通信スロットとして用いることができる。
【0022】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である無線通信システムは、複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線送信装置と、前記無線送信装置からデータを受信する無線受信装置とを含む無線通信システムであって、前記無線送信装置は、未送信データを格納する送信キュー領域と、通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、前記評価結果に応じて定められる特定の通信先に対する送信データを再送するための再送補助通信スロットとを設定し、前記送信キュー領域に記憶された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部とを備え、前記無線受信装置は、前記通信スロットのうち、自身に割り当てられた通信スロットと、前記再送通信スロットとに対しては常時受信機能を稼働し、前記再送補助通信スロットに対しては、自身が前記特定の通信先となった場合に受信機能を稼働することを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明の第3の態様である無線通信装置は、未送信データを格納する送信キュー領域と、通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、前記評価結果に応じて定められる特定の通信先に対するデータを再送するための再送補助通信スロットを設定し、前記送信キュー領域に格納された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部とを備え、複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線送信装置からデータを受信する無線通信装置であって、前記通信スロットのうち、自身に割り当てられた通信スロットと、前記再送通信スロットとに対しては常時受信機能を稼働し、前記再送補助通信スロットに対しては、自身が前記特定の通信先となった場合に受信機能を稼働することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、分割多重方式を利用した通信システムにおいて特定の装置間における通信品質の悪化が、他の装置間の通信品質に悪影響を与えることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における通信スロットの割り当て方法について説明する図である。
【図3】本実施形態における無線通信装置の処理動作を説明するフローチャートである。
【図4】本実施形態における送信キューと再送補助スロット用送信キューと通信スロットの様子を模式的に示す図である。
【図5】送信キューの別構成を示す図である。
【図6】受信側装置の通信スロットに対する受信機能のON/OFF制御について説明する図である。
【図7】スター型ネットワークの構成を示す図である。
【図8】通信スロットを説明するための図である。
【図9】装置Aから装置Dへの通信状況が悪化している場合の装置Aの送信キューと通信スロットの様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る無線通信装置100の構成を示すブロック図である。なお、無線通信装置100は、図7に示したように、複数台の装置とスター型ネットワークを構成している。
【0027】
このとき、無線通信装置100は、図7における装置Aとして機能し、他の装置B、装置C、装置Dに対して、時分割多重方式(TDMA)によりデータを送信するものとする。無線通信装置100は、例えば、情報処理装置、フィールド機器、ルーター、ハブ等の各種装置に組み込まれ、それぞれの機器に応じたデータの通信を行なう。
【0028】
本図に示すように無線通信装置100は、通信制御部110、記憶部120、無線通信部130を備えている。これらは、CPU、メモリ、通信I/F装置等を用いて構成することができる。無線通信部130は、所定のプロトコルによる無線通信を行なう。記憶部120には、未送信データを格納する送信キュー領域121が形成される。
【0029】
通信制御部110は、無線通信部130を用いた無線通信処理を制御する。具体的には、送信キュー領域121に格納された通信先毎の送信データを、送信データに対応した通信スロットに振り分け、無線通信部130を介して出力する。このとき、通信制御部110は、通信先毎の通信状況を評価し、通信状況の評価結果を考慮して通信スロットの振り分けを行なう。
【0030】
この処理を行なうため、通信制御部110は、通信スロットに関する制御を行なう通信スロット制御部111と、通信先毎の通信状況を評価して、特定の装置間において通信状況が悪化したかどうかの判定を行なう通信状況評価部112とを備えている。
【0031】
通信状況評価部112は、通信先毎の通信状況として、例えば、通信先毎のエラー率を計測する。この場合、エラー率が所定の基準値を超えた通信先について、通信状況が悪化したと判定することができる。あるいは、送信キュー領域121に格納されている送信データ数を通信先毎に計測するようにしてもよい。この場合、送信キュー領域121に格納されている送信データ数が所定の基準値を超えた通信先について、通信状況が悪化したと判定することができる。
【0032】
ここで、本実施形態における通信スロットの割り当て方法について図2を参照して説明する。本図に示すように、本実施形態では、再送用の通信スロットとして、従来の再送スロット「Retry」に加え、再送補助スロット「AuxRetry」を割り当てている。このため、送信キュー領域121には、従来の送信キューと、再送補助スロット用の送信キューとを用意しておく。
【0033】
再送補助スロットは、従来の再送スロットとは異なり、通信状況が悪化した装置宛のデータ再送を行なうための通信スロットである。このような通信スロットを導入することにより、特定装置間の通信状況の悪化が、他の装置間の通信に悪影響を与えることを防ぐことができ、ネットワーク全体のパフォーマンス低下を回避できるようになる。
【0034】
再送補助スロット「AuxRetry」は、通信のエラー率等がネットワーク構築時に想定した値の範囲内に収まっている間は使用しない。この場合、再送データは、再送スロットを利用して再送される。
【0035】
そして、ある特定の装置間のエラー率が上昇し、所定の基準値を超えたり、従来の再送スロット「Retry」が、特定の装置宛の送信データで埋まってきたとき等に、再送補助スロット「AuxRetry」を特定の装置間の通信に使用する。これにより、従来の再送スロット「Retry」に、他の装置間の再送データを割り振ることができるため、特定の装置間における通信品質の悪化が、他の装置間の通信品質に悪影響を与えることが回避される。
【0036】
なお、図7における受信側の装置である装置B、装置C、装置Dも無線通信装置100と同様の構成とすることができる。ただし、受信専用の装置として構成する場合は、送信キュー領域121、通信状況評価部112は不要となる。
【0037】
図3は、本実施形態における無線通信装置100の処理動作を説明するフローチャートである。まず、通信開始に先立ち、通信スロットに再送スロットを割り当てる(S101)。再送スロットの割り当ては、従来と同様に行なうことができ、目標とするデータ到達率を確保することができるような数を設定する。そして、再送スロットを有効化する(S102)。
【0038】
次に、補助再送スロットの割り当てを行なう(S103)。この段階では、補助再送スロットの有効化は不要である。
【0039】
そして、通信スロットを用いた時分割多重方式の通信を開始する(S104)。ここでは、装置B、装置C、装置Dに対してデータを送信するものとする。
【0040】
通信状況評価部112は、通信先毎の通信状況を評価し、特定の装置間の通信状況が悪化したかどうかを判定する(S105)。この判定は、上述のように、エラー率が所定の基準値を超えたかどうか、あるいは、送信キュー領域121に格納されている送信データ数が所定の基準値を超えたかどうか等を基準に行なうことができる。
【0041】
その結果、特定の装置間の通信状況が悪化していない場合(S105:No)は、従来通り、通信に失敗した送信データは、再送スロットに振り分けて再送する(S106)。
【0042】
一方、特定の装置間の通信状況が悪化した場合(S105:Yes)は、その装置宛の通信に失敗した送信データは、再送補助スロット用送信キューに格納し、再送補助スロットに振り分けて再送するようにする(S107)。他の装置宛の通信に失敗した送信データは、従来通り再送スロットに振り分ける。なお、再送補助スロットに振り分ける装置は複数あってもよい。
【0043】
例えば、当初通信エラー率を10%と見積もってネットワーク設計を行なった場合に、特定の装置間で通信状況が悪化し、エラー率が30%まで上昇したとする。この場合、想定を超えた20%に相当する再送データは再送補助スロットに振り分けられることになり、従来の再送スロットを圧迫することなくデータ通信が可能となる。
【0044】
以上に示した(S105)以降の処理を、通信が終了するまで繰り返す(S108)。なお、通信状況が悪化して、再送補助スロットに振り分けて再送するようにした場合であっても、その後、特定の装置間の通信状況が復旧した場合には、再送補助スロットに振り分けずに、再送スロットに振り分けるようにする。
【0045】
図4は、装置Aから装置Dへの通信状況が悪化している場合の送信キューと再送補助スロット用送信キューと通信スロットの様子を模式的に示す図である。図9と同様に、A装置→D装置の通信はすべて失敗し、A装置→B装置の通信、A装置→C装置の通信はそれぞれ1回失敗したとする。ここでは、いずれの再送データとも再送スロット「Retry」においても送信できなかったものとして、時刻Tにおいて送信キューおよび再送補助スロット用送信キューに未送信データとして残っている状態を示している。
【0046】
本図に示すように、A装置→D装置の通信状況が悪化した場合であっても、送信キューに残っているA装置→B装置の再送データ、A装置→C装置の再送データは、従来の再送スロットを用いて再送することができるようになる。
【0047】
なお、本例では、従来の送信キューと再送補助スロット用送信キューとを別個に設けるようにしているが、図5に示すように、従来の送信キューに、再送に対応するか、再送補助に対応するかの識別フラグを設けて、両者を区別するようにしてもよい。
(第1変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。まず、第1の変形例について説明する。上記の実施形態では、特定の装置間の通信状況が悪化した場合に再送補助スロットを用いてデータ再送を行なうようにしていた。
【0048】
再送補助スロットを使用するか否かの判断は送信側の装置が行なうため、受信側の装置は、通信状況にかかわらず、常に再送補助スロットを監視しなければならず、受信機能をON状態にしておくことが必要となる。バッテリ等の限られた電源にて動作する無線通信装置の場合、受信機能のON/OFFによる消費電力の差は、その運用可能時間に大きな影響を与えるため、受信機能は可能な限りOFF状態とすることが望ましい。
【0049】
そこで、第1変形例では、通信前において、受信側装置の再送補助スロットはその配置場所だけを予約しておき、再送補助スロットを使用しない間は、未使用のアイドル状態に設定し、再送補助スロットとしての機能を停止しておく。このような設定により、通常の通信状況においては、再送補助スロットに対しては受信機能をOFFにすることができる。これによって、受信側装置の消費電力削減を図ることができるようになる。
【0050】
図6は、受信側装置の通信スロットに対する受信機能のON/OFF制御について説明する図である。本図の例では、受信側装置である装置Bは、自身に割り当てられた「A→B」の通信スロットと、再送スロット「Retry」を常時の受信対象としている。そして、再送補助スロット「AuxRetry」に対しては、通常時はアイドル状態に設定し、再送補助スロット使用時のみ受信対象とすることで、消費電力化を実現するようにしている。受信側装置である装置C、装置Dにおいても同様の制御を行なっている。
【0051】
なお、受信側装置で、再送補助スロット「AuxRetry」を受信対象とする仕組みとしては、例えば、別途設けられた無線ネットワーク管理システムが通信状況に基づいて受信側装置を制御する方法、送信側装置が通信状況に基づいて受信装置を制御する方法があげられる。また、受信側装置自身が受信状況に基づいて判定するようにしてもよい。この場合は、例えば、一定間隔でデータを受信していた規則性が乱れた場合等に、通信状況が悪化したものと判定して、再送補助スロット「AuxRetry」を受信対象とするようにする。
【0052】
また、再送補助スロット「AuxRetry」を受信対象とした後に、通信状況が復旧した場合には、再度、再送補助スロット「AuxRetry」を受信対象外として、消費電力削減を図るようにしてもよい。この場合の仕組も、例えば、別途設けられた無線ネットワーク管理システムが通信状況に基づいて受信装置を制御する方法、送信側装置が通信状況に基づいて受信装置を制御する方法があげられる。また、受信側装置自身が、再送補助スロット「AuxRetry」で再送データが送られてこなくなったこと等に基づいて判定するようにしてもよい。
(第2変形例)
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。第2変形例では、再送補助スロット「AuxRetry」を通常の再送スロット「Retry」としても使用することで、データの到達性能を向上させる。
【0053】
すなわち、外部から電源が供給されるなど、消費電力の問題が生じない場合には、通信状況が悪化していない状態で、再送補助スロット「AuxRetry」を通常の再送スロット「Retry」として利用する。これにより、通常時の通信において使用可能な再送スロット数が増加することになり、データ到達率や伝送遅延等においてネットワーク設計時に設定した値よりも高い信頼性で通信を行なうことが可能となる。
【0054】
第2変形例では、特定の装置間での通信状況が悪化したことを検知すると、通常の再送スロット「Retry」として利用してきた再送補助スロット「AuxRetry」を、本来の用途の通り、特定の装置間のデータ再送に用いるようにする。
(第3変形例)
次に、第3変形例について説明する。第3変形例では、再送補助スロット「AuxRetry」を通常の通信スロットとしても使用することで、一時的な通信負荷上昇に対応する。
【0055】
すなわち、通信状況が悪化していない状況で、装置間で伝送するデータ量が増えてきたとき、再送補助スロット「AuxRetry」として確保していた通信スロットを、通常のデータ通信用の通信スロットに転用する。これにより、通信スロットが効率的に使用されることになり、一時的に増加したトラフィックに、データ到達率や伝送遅延を悪化させることなく対応することができるようになる。
【符号の説明】
【0056】
100…無線通信装置、110…通信制御部、111…通信スロット制御部、112…通信状況評価部、120…記憶部、121…送信キュー領域、130…無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線通信装置であって、
未送信データを格納する送信キュー領域と、
通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、
通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、前記評価結果に応じて定められる特定の通信先に対する送信データを再送するための再送補助通信スロットとを設定し、前記送信キュー領域に格納された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記通信状況評価部は、通信先毎の通信エラー率を評価し、
前記通信スロット制御部は、通信エラー率が所定の基準値を超えた通信先に対する再送データを前記再送補助通信スロットに振り分け、その他の再送データを前記再送通信スロットに振り分けることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記通信状況評価部は、通信先毎の前記送信キュー領域に格納されている再送データ数を評価し、
前記通信スロット制御部は、前記再送データ数が所定の基準値を超えた通信先に対する再送データを前記再送補助通信スロットに振り分け、その他の再送データを前記再送通信スロットに振り分けることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通信スロット制御は、
あらかじめ定められた条件を満たす場合には、前記再送補助通信スロットを、前記通信スロットあるいは前記再送通信スロットとして用いることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線送信装置と、前記無線送信装置からデータを受信する無線受信装置とを含む無線通信システムであって、
前記無線送信装置は、
未送信データを格納する送信キュー領域と、
通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、
通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、前記評価結果に応じて定められる特定の通信先に対する送信データを再送するための再送補助通信スロットとを設定し、前記送信キュー領域に記憶された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部とを備え、
前記無線受信装置は、
前記通信スロットのうち、自身に割り当てられた通信スロットと、前記再送通信スロットとに対しては常時受信機能を稼働し、前記再送補助通信スロットに対しては、自身が前記特定の通信先となった場合に受信機能を稼働することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
未送信データを格納する送信キュー領域と、通信先毎の通信状況を評価する通信状況評価部と、通信先毎に定められた通信スロットと、データ再送用の再送通信スロットと、前記評価結果に応じて定められる特定の通信先に対するデータを再送するための再送補助通信スロットを設定し、前記送信キュー領域に格納された未送信データを所定の基準にしたがって対応する通信スロットに振り分ける通信スロット制御部とを備え、複数の通信先に対する送信データを通信スロット単位で時分割多重化して送信する無線送信装置からデータを受信する無線通信装置であって、
前記通信スロットのうち、自身に割り当てられた通信スロットと、前記再送通信スロットとに対しては常時受信機能を稼働し、前記再送補助通信スロットに対しては、自身が前記特定の通信先となった場合に受信機能を稼働することを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−4711(P2012−4711A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135973(P2010−135973)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】