説明

無線通信装置および省電力制御方法

【課題】効果的に消費電力を抑えることが可能な無線通信装置および省電力制御方法を提供すること。
【解決手段】本願の開示する無線通信装置は、利用者の操作に応じてユーザインタフェースから供給される入力情報を処理するアプリケーションを実行するアプリケーション用プロセッサ(2)と、前記アプリケーション用プロセッサ(2)が休止した状態において前記ユーザインタフェースに関する処理を代行する通信用プロセッサ(1)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用プロセッサとアプリケーション用プロセッサを有する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アプリケーションの多様化に対応し、通信用プロセッサとアプリケーション用プロセッサを有する2プロセッサ構成の携帯電話機が増加している。一方で、スマートフォンなど、高機能なアプリケーションを搭載する機種が増加しており、これらの機種は、高速なアプリケーション用プロセッサで動作させているため、高機能アプリケーションの多用により電池の消耗が早まる傾向にある。
【0003】
また、携帯電話機の消費電力を抑えるためには、アプリケーション用プロセッサを省電力状態(休止状態)に移行させることが最も効果的ではあるが、キー入力,画面表示などのユーザインタフェースによる動作はアプリケーション用プロセッサにて制御される。さらに、従来の携帯電話機は、VoIP(Voice over Internet Protocol)による音声通話を提供するLTE(Long Term Evolution)網に在圏している場合には、VoIPに関する処理を実行するためにアプリケーション用プロセッサによる制御が行われる。これらの状況から、従来の携帯電話機は、アプリケーション用プロセッサのすべての機能を休止させることが困難である。
【0004】
一方で、従来の携帯電話機における省電力制御としては、たとえば、デジタル放送において緊急通報を受信した場合に低消費電力化を図る技術が開示されている。この技術では、携帯電話機における受信機が緊急警報信号を受信した場合に、所定の回路への電源供給を停止し(省電力状態に移行し)、段階的に、使用禁止とする機能を増加させている。最終的には、電話の発着信機能と、電子メールの編集および送受信機能だけを、使用可能な状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−243793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術文献記載の従来の携帯電話機は、省電力状態に移行するために、緊急通報を受信するまで常時デジタル放送を受信しておく必要があり、省電力状態に移行する前に大幅に電池を消耗することとなるため現実的ではない。たとえば、従来の携帯電話機は、省電力状態移行後に音声通話を行う場合に、デジタル放送の常時受信の影響で電池が消耗し、たとえば、救援要請や安否確認等の重要な処理が行えない状況が発生する可能性がある、という問題があった。また、上記先行技術文献記載の従来の携帯電話機における省電力制御は、アプリケーション用プロセッサのすべての機能を停止させるものではないため、効果的に消費電力を抑えるという観点においてさらなる改善の余地がある。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、通信用プロセッサとアプリケーション用プロセッサを有する場合に、より効果的に消費電力を抑えることが可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する無線通信装置は、一つの態様において、利用者の操作に応じてユーザインタフェースから供給される入力情報を処理するアプリケーションを実行する第一のプロセッサと、前記第一のプロセッサが休止した状態において前記ユーザインタフェースに関する処理を代行する第二のプロセッサと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する無線通信装置の一つの態様によれば、通信用プロセッサとアプリケーション用プロセッサを有する場合において、より効果的に消費電力を抑えることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、携帯電話機の構成例を示す図である。
【図2】図2は、省電力制御方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、省電力制御方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、省電力制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する無線通信装置および省電力制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例では、無線通信装置の一例として携帯電話機について説明を行うが、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本願の開示する無線通信装置の一例である携帯電話機の構成例を示す図である。図1において、本実施例の携帯電話機は、通信用プロセッサ1とアプリケーション用プロセッサ2と共有メモリ3と無線部4と電源5と電源制御部6とアンテナ9を有する。また、通信用プロセッサ1,アプリケーション用プロセッサ2,共有メモリ3の間の信号のやり取りは、システムバス7を介して行われる。なお、共有メモリ3は、通信用プロセッサ1とアプリケーション用プロセッサ2の共有メモリであり、たとえば、不揮発性メモリの一例であるNAND型フラッシュメモリ等である。
【0013】
また、図1において、本実施例の携帯電話機は、さらに、汎用ポート8に接続された、LCD(Liquid Crystal Display)31,操作部(KEY)32,LCD33,マイク(MIC)34,スピーカ(SP)35等を有する。また、通信用プロセッサ1には、USIM(Universal Subscriber Identity Module)41が接続されている。なお、本実施例では、一例として、2画面構成の携帯電話機を想定し、たとえば、画面の大きい方のLCD33をメインLCDとし、画面の小さい方のLCD31をサブLCDとする。また、操作部(KEY)32は、たとえば、利用者からの操作を検知し、当該検知した操作に応じた入力信号を供給するものである。
【0014】
また、図1において、通信用プロセッサ1は、通信制御部11とUSIM制御部12と簡易アプリケーション実行部13とHMI(Human Machine Interface)制御部14を有する。なお、携帯電話機が通信用プロセッサ1とアプリケーション用プロセッサ2を同時に動作させる動作モードである通常モード(後述する本実施例の省電力モード以外)で動作している場合、簡易アプリケーション実行部13およびHMI制御部14は使用されなくてよい。たとえば、当該場合の簡易アプリケーション実行部13およびHMI制御部14は休止状態となる。
【0015】
また、図1において、アプリケーション用プロセッサ2は、緊急通報受信処理部21と省電力モード制御部22とメモリ23とアプリケーション実行部24とVoIP処理部25とHMI制御部26を有する。なお、アプリケーション実行部24は、複数のアプリケーションを同時に実行可能とする(マルチタスク)。また、メモリ23は、アプリケーション用プロセッサ2にて管理されるメモリであり、不揮発性メモリの一例であるNAND型フラッシュメモリ等である。また、メモリ23は、アプリケーション用プロセッサ2の内部に実装してもよいし、外部に実装してもよい。また、メモリ23は、SDカード等の可搬媒体であってもよい。
【0016】
なお、上記本実施例の携帯電話機の構成例は、説明の便宜上、本実施例の処理にかかわる構成を列挙したものであり、携帯電話機のすべての機能を表現したものではない。
【0017】
上記のように構成される本実施例の携帯電話機は、たとえば、緊急通報受信時に、「通常モード」から、アプリケーション用プロセッサ2の動作を休止させて動作を制限する「省電力モード」へ移行し、以降、通信用プロセッサ1の制御で最低限の動作を行う。なお、上記「最低限の動作」とは、一例として「音声通話」のことを指すこととするが、これ以外に、たとえば、SMS(Short Message Service)の編集処理および送受信処理,電話帳検索等を含めることとしてもよい。また、本実施例では、上記緊急通報の一例として、「エリアメール」を一斉配信するCBS(Cell Broadcast Service)と呼ばれる技術を利用する。CBSは、3GPP(Third Generation Partnership Project)において標準化され、規格上は全角600文字程度の情報を配信できるものであり、緊急通報以外の用途にも利用される。
【0018】
また、本実施例の携帯電話機は、省電力モードに移行する際に、LTE網などのVoIPによる音声通話に対応した通信網に在圏している場合には、LTE網から3G/2G網へ網移行を行ってもよい。これにより、VoIPに関する処理を実行するアプリケーション用プロセッサ2などのハードウェア資源の動作を休止させることが可能となる。
【0019】
このような動作を行うことにより、本実施例の携帯電話機は、緊急通報受信時に、ゲームなど緊急性の低いアプリケーションの実行を制限することができ、電池の消費を必要最小限に抑えることが可能となる。また、緊急性の低いアプリケーションの動作による電池の消耗を回避することができるため、緊急時の救援要請や安否確認のための電池残量確保が可能となる。また、省電力モードに移行する場合には、LTE網から3G/2G網へ網移行を行うことにより、アプリケーション用プロセッサ2の動作を休止させた状態でも音声通話を行うことが可能となる。なお、本実施例では、CBSによる緊急通報の受信を契機に省電力モードへ移行することとしたが、これに限らず、たとえば、ユーザによる操作部32へのキー入力操作(省電力モードへの移行命令)を契機に省電力モードへ移行することとしてもよい。また、緊急通報以外の信号の受信を契機として省電力モードへ移行することとしてもよい。たとえば、利用者によるボタン等の所定の操作を検出したことを契機として省電力モードへ移行してもよい。
【0020】
つづいて、本実施例の携帯電話機の処理を図面に従って詳細に説明する。図2〜図4は、本実施例の携帯電話機の処理、すなわち、本実施例の省電力制御方法を示すフローチャートである。詳細には、図2においては初期設定および通常モード時の携帯電話機の動作が示され、図3には通常モードから省電力モードへの移行動作が示され、図4には省電力モードから通常モードへの移行動作が示されている。なお、以下の処理において、本実施例の携帯電話機は、通常モードにて動作中、通信用プロセッサ1が現在の在圏通信網(LTE網または3G/2G網)を適宜アプリケーション用プロセッサ2に向けて通知することを前提とする。
【0021】
図2において、携帯電話機は、まず、本実施例の省電力制御方法を実現するための初期設定を行う。たとえば、アプリケーション用プロセッサ2の省電力モード制御部22が、所定のアプリケーションを起動して、HMI制御部26経由で、初期設定用の画面を汎用ポート8に接続されたLCD33に表示する(S1)。LCD33上には、初期設定用の画面として、緊急通報受信時における省電力モードへの移行処理を「有効」にするか「無効」にするかを選択するための画面が表示される。これにより、緊急時のライフラインとなりうる携帯電話機における重要な設定を、ユーザに促すことが可能となる。なお、デフォルト値としては、たとえば、メモリ23に「有効」が記憶されているものとする。
【0022】
つぎに、初期設定用の画面に対する応答として、ユーザによる操作部32へのキー入力操作が行われた場合、省電力モード制御部22は、入力情報(「有効」または「無効」)を、汎用ポート8を経由して受信する(S2)。そして、受信した入力情報が「有効」の場合には(S3,Yes)、省電力モード制御部22は、デフォルト値としてメモリ23に記憶された「有効」を維持する(S4)。一方、受信した入力情報が「無効」の場合には(S3,No)、省電力モード制御部22は、メモリ23に「無効」を登録する(S5)。なお、S1〜S5の初期設定は、必要に応じて実装を省略することが可能である。この場合、緊急通報受信時には、無条件で省電力モードへの移行が開始される。また、「緊急通報受信時における省電力モードへの移行処理を「有効」にする処理および「無効」にする処理」については、初期設定時以外においても適宜実行可能である。
【0023】
上記の初期設定を行うと、本実施例の携帯電話機は、通信用プロセッサ1とアプリケーション用プロセッサ2の両方を動作させる動作モードである通常モード(省電力モード以外)にて動作を開始する(S11)。通常モードで動作中の携帯電話機は、LTE網などのVoIPによる音声通話に対応した通信網に在圏している場合、VoIP処理部25が所定のアプリケーションを起動してVoIPに関する処理を実行する。本実施例の携帯電話機は、VoIPによる音声通話が可能であることを前提とする。
【0024】
その後、アンテナ9,無線部4,通信用プロセッサ1を介してアプリケーション用プロセッサ2の緊急通報受信処理部21がCBSによる緊急通報を受信した場合(S12)、省電力モード制御部22は、省電力モードへ移行するかどうかを判断する。たとえば、省電力モード制御部22は、メモリ23から、省電力モードへの移行に関する「有効」/「無効」の設定を読み出し、「無効」が記憶されている場合には(S13,No)、省電力モードへ移行せずに本実施例の省電力制御方法を終了する。すなわち、通常モードでの動作を維持する。一方、メモリ23に「有効」が記憶されている場合には(S13,Yes)、図3の処理、すなわち、通常モードから省電力モードへ移行するための処理を開始する。
【0025】
なお、上記S1〜S5の初期設定が省略された場合、省電力モード制御部22は、S13の判断処理を行わずに、無条件で省電力モードへ移行するための処理を開始する。また、省電力モード制御部22は、ユーザによる操作部32への入力操作(省電力モードへの移行命令)を契機に、省電力モードへ移行するための処理を開始することとしてもよい。さらに、省電力モード制御部22は、バッテリの残量が所定値未満であることを検知したタイミングで、省電力モードへ移行するための処理を開始することとしてもよい。また、緊急通報受信処理部21は、S12の処理でCBSによる緊急通報を受信した場合、所定のアプリケーションを起動し、その緊急通報の内容を、HMI制御部26を介して、汎用ポート8に接続されたLDC33に表示する。
【0026】
つぎに、図3において、省電力モード制御部22は、現在のRAT(Radio Access Technology)選択状態をメモリ23から読み出し、所定のアプリケーションを起動して、読み出したRAT選択状態を共有メモリ3に記憶する(S21)。なお、RAT選択状態は、ユーザによる操作部32へのキー入力操作により適宜設定可能であり、たとえば、「LTE網」,「3G網/2G網」,「Auto」等の設定が可能である。RAT選択状態として「LTE網」が設定されている場合には、複数の網で音声通話が可能な状態であってもLTE網優先で音声通話が行われる。RAT選択状態として「3G網/2G網」が設定されている場合には、複数の網で音声通話が可能な状態であっても3G網/2G網優先で音声通話が行われる。RAT選択状態として「Auto」が記憶されている場合は、音声通話を行う網を通信用プロセッサ1にて適宜判断する。
【0027】
つぎに、省電力モード制御部22は、通信用プロセッサ1側から適宜通知される現在の在圏通信網を確認する(S22)。たとえば、現在の在圏通信網がLTE網などのCS(Circuit Switch:回線交換)サービスを提供しない網または音声サービスとしてVoIPを提供している網であった場合(S22,Yes)、省電力モード制御部22は、以下の処理を行う。たとえば、省電力モード制御部22は、ユーザ設定としてメモリ23に記憶された現在のRAT選択状態を強制的に「3G網/2G網」へと変更し(S23)、所定のアプリケーションを起動して在圏通信網を3G/2G網へ移行させるための制御を行う。すなわち、ここでは、アプリケーション用プロセッサ2のアプリケーション実行部24にて実行中のVoIPに関するアプリケーションを終了する。一方、現在の在圏通信網が3G網または2G網の場合には(S22,No)、省電力モード制御部22は、通信網を移行させる制御を行わず、現在の通信網を維持する。
【0028】
つぎに、省電力モード制御部22は、たとえば、メモリ23に記憶されている電話帳データ,発信履歴,着信履歴等を読み出し、所定のアプリケーションを起動して、読み出したデータを共有メモリ3に記憶する処理を行う(S31)。これにより、省電力モードに移行してアプリケーション用プロセッサ2が休止状態になった場合であっても、後述する簡易アプリケーションによる電話帳検索等が可能となる。
【0029】
つぎに、省電力モード制御部22は、アプリケーション実行部24で起動されているすべてのアプリケーションの動作を停止させる(S32)。一方、通信用プロセッサ1では、簡易アプリケーション実行部13が、前述した「最低限の動作」である、たとえば、音声通話,SMS,電話帳検索、および電源制御等、を実行可能な簡易アプリケーション(シングルタスク)を起動する(S32)。これにより、省電力モードに移行してアプリケーション用プロセッサ2が休止状態になった場合であっても、音声通信,SMS,電話帳検索等を実行することができる。なお、本実施例においては、上記「最低限の動作」として必ずしもSMS,電話帳検索等を含める必要はない。たとえば、電話帳検索を含めない場合には、S31の処理を省略することができる。また、簡易アプリケーション実行部13は、簡易アプリケーションを共有メモリ3からロードして実行してもよいし、また、USIM制御部12を介してUSIM41からロードして実行することとしてもよい。USIM41から簡易アプリケーションをロードする場合、簡易アプリケーション実行部13は、USIMを入れ替えることにより、通信事業者に固有の設計(通信事業者の電話番号表示等)を簡易アプリケーションに反映することが可能となる。また、通信事業者は、本実施例に係る簡易アプリケーションを格納しないUSIM41を利用者に発行することにより、上述の簡易アプリケーションの機能を利用者に提供しないことも可能である。また、通信事業者は、利用者との契約内容に応じて、USIM41に格納する簡易アプリケーションの内容またはその制御情報を異ならせることにより、利用者に提供する簡易アプリケーションの機能を異ならせる(たとえば、音声通話、SMS、電話帳検索、および電源制御等のうちの一部または全部の機能の利用を制限する)ことも可能である。
【0030】
つぎに、簡易アプリケーション実行部13は、アプリケーション用プロセッサ2を省電力モードに移行させる(S33)。たとえば、I2Cバス等を介して、電源制御部6に対し、アプリケーション用プロセッサ2に対する電源供給を停止するように指示をだす。電源制御部6は、この指示に従って電源5を制御し、アプリケーション用プロセッサ2に対する電源供給を停止させる(S33)。これにより、アプリケーション用プロセッサ2による消費電力を0にすることができる。なお、電源制御部6は、アプリケーション用プロセッサ2への動作クロックの供給を停止させることにより、アプリケーションプロセッサ2における消費電力を抑制してもよい。また、簡易アプリケーション実行部13は、電源制御部6に対する指示と同時に、HMI制御部14を介して、消費電力の比較的大きいLCD33の動作を停止させ(S33)、省電力モード中の表示処理をサブのLCD31で代用する。なお、省電力モードへ移行後は、通信用プロセッサ1の簡易アプリケーション実行部13が、HMI制御部14を介して、LCD31,マイク34,スピーカ35の制御を行うことになる。また、操作部32から供給される入力信号についても、簡易アプリケーション実行部13が対応する。これにより、アプリケーション用プロセッサ2が休止状態の場合であっても、通信用プロセッサ1においてユーザインタフェースに関する制御を継続することができる。
【0031】
つぎに、S33の処理でアプリケーション用プロセッサ2を省電力モードに移行させた後、簡易アプリケーション実行部13は、HMI制御部14を介して、LCD31に省電力モードで動作中であることを表示する(S34)。なお、LCD31への表示の代替として、本実施例の携帯電話機の筐体に設けたLED等の発光素子を所定のパターンや発光色を用いて点灯させることにより、省電力モードで動作中であることを表示してもよい。これにより、ユーザは、アプリケーションの使用が制限されていることを知ることができる。以降、携帯電話機は、省電力モードとして動作し、ユーザは、音声通話,SMS,電話帳検索等の限られた機能のみが利用可能となる(S41)。
【0032】
つづいて、省電力モード移行後の携帯電話機の動作について説明する。省電力モードにて動作中に音声通話を行う場合には、簡易アプリケーション実行部13が、ユーザからの入力操作を検知した操作部32から供給される入力信号(入力情報とも称呼する)を、HMI制御部14を介して受信する。そして、簡易アプリケーション実行部13は、受信した入力情報に基づいて、通常モード時のアプリケーション用プロセッサ2において実行される発呼または着呼に関する処理と同様の指令を、通信制御部11に対して行う。これにより、省電力モード中であっても音声通話が可能となる。なお、音声通話の相手先を特定するための電話番号の入力については、数字に対応付けられた操作を所定桁数分だけ検知することにより実現される(電話番号の直接入力)。また、たとえば、共有メモリ3に記憶されている電話帳データから所望の番号を選択する操作を検知することで実現してもよい(電話番号の選択入力)。これにより、省電力モード中であっても、通常モード時と同様の検索処理が実行可能となる。また、アプリケーション用プロセッサ2のメモリ23で管理している着信履歴,発信履歴などの情報を、随時またはS31の処理タイミングで共有メモリ3へコピーまたは移動しておくことにより、これらの情報を、省電力モード中においても通常モード時と同様に利用できる。また、共有メモリ3へコピーする際に、オリジナルのデータ(電話帳、履歴等)に付加されている属性情報などの一部のデータを省略した圧縮データを、コピー対象としてもよい。たとえば、簡易アプリケーションにて使用できないデータや、緊急性の低い情報等を、コピー対象から除外することにより、省電力モード時における情報量を低減させることができる。
【0033】
つづいて、省電力モードから通常モードへ移行する動作について説明する。図4において、「通常モードへの移行」を指示する入力操作を検知した場合(S51)、簡易アプリケーション実行部13は、HMI制御部14を介して、LCD31に表示していた省電力モード表示を消す処理を行う(S52)。そして、簡易アプリケーション実行部13は、たとえば、I2Cバス等を介して、電源制御部6に対し、アプリケーション用プロセッサ2に対する電源供給を再開するように指示をだす。電源制御部6は、この指示に従って電源5を制御し、アプリケーション用プロセッサ2に対する電源供給を再開させる(S53)。なお、電源制御部6は、アプリケーション用プロセッサ2に対する動作クロック信号の供給を再開させることにより、アプリケーション用プロセッサ2を休止状態から復旧させてもよい。
【0034】
つぎに、電源供給が再開されたアプリケーション用プロセッサ2では、省電力モード制御部22が、所定のアプリケーションを起動し、通常モードに移行する処理を開始する(S54)。一方、簡易アプリケーション実行部13は、簡易アプリケーションの処理を終了させる(S54)。そして、省電力モード制御部22は、共有メモリ3から、S21の処理で記憶しておいたユーザ設定のRAT選択状態を読み出し(S55)、そのRAT選択状態をメモリ23の元の領域に記憶(再登録)する(S56)。これにより、携帯電話機は、通常モードにおいて、ユーザにより設定された通信網による音声通話が可能となる。以降、携帯電話機は、通常モードとして動作し、ユーザは、携帯電話機が搭載するすべての機能を利用することが可能となる(S61)。
【0035】
上述してきたように、本実施例の携帯電話機は、アプリケーション用プロセッサの動作を休止させた状態でかつ通信用プロセッサにおいて音声通話を実現する「省電力モード」への移行を可能とした。これにより、効果的に消費電力を抑えることが可能となる。
【0036】
なお、本実施例では、アプリケーション用プロセッサ2にメモリ23を設けることとしたが、これに限らず、アプリケーション用プロセッサ2にメモリ23を設けずに、メモリ23の領域を共有メモリ3に持たせることとしてもよい。
【0037】
また、本実施例では、通信用プロセッサ1において動作させる簡易アプリケーションをUSIM41から取得する場合を一例としたが、利用可能なICカード(Integrated Circuit card)はこれに限らない。たとえば、利用可能なICカードとして、SIM(Subscriber Identity Module Card),UIM(User Identity Module card),UICC(Universal Integrated Circuit Card)等がある。
【0038】
また、本実施例では、2画面構成の携帯電話機を想定したが、これに限るものではない。たとえば、1画面構成の場合には、省電力モードに移行した場合であっても、LCDを常時動作可能な状態とする。また、3画面以上の場合には、消費電力の最も小さいLCDの1画面を残して、それ以外のLCDの動作を停止させる。
【0039】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0040】
(付記1)利用者の操作に応じてユーザインタフェースから供給される入力情報を処理するアプリケーションを実行する第一のプロセッサと、
前記第一のプロセッサが休止した状態において前記ユーザインタフェースに関する処理を代行する第二のプロセッサと、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【0041】
(付記2)前記第一のプロセッサが前記アプリケーションを実行可能な状態において、前記第一のプロセッサが前記インタフェースに関する処理を実行し、前記第二のプロセッサが無線通信に関する処理を実行する、通常モードと、
前記第一のプロセッサが休止した状態において、前記第二のプロセッサが前記ユーザインタフェースに関する処理を代行し、前記第二のプロセッサが無線通信に関する処理を実行する、省電力モードと、
を備えることを特徴とする付記1に記載の無線通信装置。
【0042】
(付記3)前記省電力モードから他のモードへ移行する場合、前記ユーザインタフェースから供給される入力情報の受け口を、前記第二のプロセッサから前記第一のプロセッサへと切り替える、
ことを特徴とする付記2に記載の無線通信装置。
【0043】
(付記4)前記省電力モードにて動作中において、
前記第二のプロセッサは、利用者による発信操作または着信操作に応じて前記ユーザインタフェースから供給される入力情報を取得し、当該入力情報に基づいて通信制御を行う、
ことを特徴とする付記2または3に記載の無線通信装置。
【0044】
(付記5)前記第一のプロセッサは、連絡先に関するデータを、前記第一のプロセッサおよび前記第二のプロセッサにて共用可能な記憶領域に格納し、
前記省電力モードにて動作中において、
前記第二のプロセッサは、前記共用可能な記憶領域に格納された前記連絡先に関する情報の何れかを選択する操作に応じて前記ユーザインタフェースから供給される入力情報を取得し、当該入力情報により特定される前記連絡先に関する情報に基づいて通信制御を行う、
ことを特徴とする付記2、3または4に記載の無線通信装置。
【0045】
(付記6)前記通常モードから前記省電力モードへ移行する場合に、
現在の在圏通信網がLTE網の場合、当該現在の在圏通信網を3G/2G網へ移行させる、
ことを特徴とする付記2〜5のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【0046】
(付記7)前記通常モードから前記省電力モードに移行する場合に、
前記第二のプロセッサは、前記代行する処理を実行するための簡易アプリケーションを、前記第一のプロセッサおよび前記第二のプロセッサにて共用可能な記憶領域から読み出して実行する、
ことを特徴とする付記2〜6のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【0047】
(付記8)無線通信網において自端末を識別する情報として用いられる識別情報と前記第二のプロセッサにおいて実行可能なプログラムとを格納するICカードから情報を取得するICカード通信部をさらに備え、
前記通常モードから前記省電力モードに移行する場合に、
前記第二のプロセッサは、前記ICカード通信部により取得された前記プログラムを、前記省電力モードにおいて実行する、
ことを特徴とする付記2〜7のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【0048】
(付記9)アンテナを介して緊急通報を受信した場合に、前記通常モードから前記省電力モードへ移行する、
ことを特徴とする付記2〜8のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【0049】
(付記10)前記省電力モードへの移行を指示する操作に応じて前記ユーザインタフェースから供給される入力情報を取得した場合に、前記通常モードから前記省電力モードへ移行する、
ことを特徴とする付記2〜9のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【0050】
(付記11)第一のプロセッサと第二のプロセッサとを備える無線通信装置の制御方法であって、
前記第一のプロセッサが、利用者の操作に応じてユーザインタフェースから供給される入力情報を処理するアプリケーションを実行可能な状態から休止状態に移行し、
前記第一のプロセッサが休止した状態において、前記第二のプロセッサが、前記インタフェースに関する処理を代行する、
ことを特徴とする省電力制御方法。
【符号の説明】
【0051】
1 通信用プロセッサ
2 アプリケーション用プロセッサ
3 共有メモリ
4 無線部
5 電源
6 電源制御部
7 システムバス
8 汎用ポート
9 アンテナ
11 通信制御部
12 USIM制御部
13 簡易アプリケーション実行部
14 HMI制御部
21 緊急通報受信処理部
22 省電力モード制御部
23 メモリ
24 アプリケーション実行部
25 VoIP処理部
26 HMI制御部
31 LCD
32 操作部
33 LCD
34 マイク
35 スピーカ
41 USIM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の操作に応じてユーザインタフェースから供給される入力情報を処理するアプリケーションを実行する第一のプロセッサと、
前記第一のプロセッサが休止した状態において前記ユーザインタフェースに関する処理を代行する第二のプロセッサと、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第一のプロセッサが前記アプリケーションを実行可能な状態において、前記第一のプロセッサが前記インタフェースに関する処理を実行し、前記第二のプロセッサが無線通信に関する処理を実行する、通常モードと、
前記第一のプロセッサが休止した状態において、前記第二のプロセッサが前記ユーザインタフェースに関する処理を代行し、前記第二のプロセッサが無線通信に関する処理を実行する、省電力モードと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記省電力モードから他のモードへ移行する場合、前記ユーザインタフェースから供給される入力情報の受け口を、前記第二のプロセッサから前記第一のプロセッサへと切り替える、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記省電力モードにて動作中において、
前記第二のプロセッサは、利用者による発信操作または着信操作に応じて前記ユーザインタフェースから供給される入力情報を取得し、当該入力情報に基づいて通信制御を行う、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第一のプロセッサは、連絡先に関するデータを、前記第一のプロセッサおよび前記第二のプロセッサにて共用可能な記憶領域に格納し、
前記省電力モードにて動作中において、
前記第二のプロセッサは、前記共用可能な記憶領域に格納された前記連絡先に関する情報の何れかを選択する操作に応じて前記ユーザインタフェースから供給される入力情報を取得し、当該入力情報により特定される前記連絡先に関する情報に基づいて通信制御を行う、
ことを特徴とする請求項2、3または4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記通常モードから前記省電力モードへ移行する場合に、
現在の在圏通信網がLTE網の場合、当該現在の在圏通信網を3G/2G網へ移行させる、
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記通常モードから前記省電力モードに移行する場合に、
前記第二のプロセッサは、前記代行する処理を実行するための簡易アプリケーションを、前記第一のプロセッサおよび前記第二のプロセッサにて共用可能な記憶領域から読み出して実行する、
ことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項8】
無線通信網において自端末を識別する情報として用いられる識別情報と前記第二のプロセッサにおいて実行可能なプログラムとを格納するICカードから情報を取得するICカード通信部をさらに備え、
前記通常モードから前記省電力モードに移行する場合に、
前記第二のプロセッサは、前記ICカード通信部により取得された前記プログラムを、前記省電力モードにおいて実行する、
ことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項9】
第一のプロセッサと第二のプロセッサとを備える無線通信装置の制御方法であって、
前記第一のプロセッサが、利用者の操作に応じてユーザインタフェースから供給される入力情報を処理するアプリケーションを実行可能な状態から休止状態に移行し、
前記第一のプロセッサが休止した状態において、前記第二のプロセッサが、前記インタフェースに関する処理を代行する、
ことを特徴とする省電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−195784(P2012−195784A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58489(P2011−58489)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】