説明

無線通信装置

【課題】 簡単な操作により、ユーザが所望の無線通信装置間の無線接続や切断を実現することが可能な無線通信装置を提供すること。
【解決手段】 UWBのような、測距機能を有する近距離無線通信方法を用いて無線通信を行う無線通信装置であり、距離情報を用いて無線接続の確立・切断制御を行う。例えば、通信可能範囲内の他の無線装置との距離を測定し、予め定めた距離以内に存在する無線通信装置が見つかったらその無線通信装置との無線接続を確立する。また、無線接続中の無線通信装置が所定距離以遠に遠ざかったら接続を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関し、特に、他の無線通信装置との間の無線接続及び切断の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速な無線通信技術の開発が進められており、UWB(Ultra-Wideband)はその一つとして知られている。UWBの特徴は、約1Gbps程度の近距離高速無線通信と、低消費電力であり、現在広く用いられている無線LANと比較すると、転送速度が約10倍であり、また伝送電力は約1/30程度で済むと考えられている。
【0003】
このようなことからUWBは所謂「ホームネットワーク」を実現する手段として期待されている。例えば、ワイヤレスUSB(Universal Serial Bus)規格は、現在は有線通信の規格であるUSBを、UWBをベースとして無線化しようとする規格である。また、UWBは超極細パルスを高い時間精度で検出可能であるため、送受信の時間差を利用したUWBデバイス間の測距精度が非常に高いという特徴を有している。
【0004】
無線通信を利用することによって、これまでケーブルなどを用いて有線接続していた機器間の接続の自由度が増し、ユーザの利便性が向上する。その反面、無線通信では、機器間の接続が目に見えないため、どの機器とどの機器が接続されているのかをユーザが認識しにくくなる。また、無線通信が可能な範囲内に無線通信可能な機器が複数存在している場合も考えられるが、それぞれの機器の持つ固有のIDやIPアドレスといった固有パラメータを使用して無線接続する場合、それらを入力する手間や入力方法が煩雑である。特に、デジタルカメラなどの小型装置では、限られた数の、かつ小さいボタンやキーを用いてパラメータを入力しなくてはならず、ユーザの使い勝手は良くない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−118577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、現在、煩雑なキー操作等を行わずに、所望の無線通信装置同士の無線接続や切断を行うための技術が求められている。例えば、特許文献1には、認証モード時には発信する電波の電力を小さくするとともに、他の無線通信装置が発信する電波の到達範囲内に入ったことを自動的或いはユーザが確認して、無線接続を行う方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、通信可能な範囲内に複数の他の無線通信機器が存在している場合、どの機器と通信を行うことができるのかをユーザが知ることは簡単ではない。また、電波の到達する範囲も機器を使用する状況や場所によって一定でないこともあり、接続できている相手機器をユーザが明確に知ることができないという問題がある。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な操作により、所望の無線通信装置間の無線接続や切断を実現することが可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線通信装置は、例えば、測距機能を有する近距離無線通信方法を用いて無線通信を行う無線通信装置であって、無線通信可能な範囲内に存在する通信可能な他の無線通信装置との距離を、測距機能を用いて測定する測距手段と、測定した距離を用いて、他の無線通信装置から、無線接続を確立すべき1つを決定する決定手段と、決定された他の無線通信装置との無線接続を確立する無線制御手段と、無線接続を用いてデータ通信を行うデータ通信手段とを有し、測距手段が、無線接続を確立した他の無線通信装置との距離を測定し、無線制御手段が、無線接続を確立した他の無線通信装置との距離が予め定めた条件を満たした場合に、無線接続を切断することを特徴とする。そして、このような構成を採用することにより、上記の目的を達成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザが簡単な操作で無線接続やその切断をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における無線通信装置で用いられる無線通信部100の主要な構成要素を示すブロック図である。図1に示す無線通信部100は、無線通信装置に内蔵されたものであっても、無線通信装置から取り外し可能なものであってもよい。また、本実施形態における無線通信装置には、パーソナルコンピュータ(PC)、プリンタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ付き携帯電話、テレビジョン受像機等の装置を用いることができる。
【0012】
本実施形態における無線通信部100は、測距機能を有する近距離無線通信方法を用いて無線通信を行う。測距機能を有する近距離無線通信方法は、どのような方法であってもよいが、本実施形態では、IEEE 802.15.3aで検討されているUWB(Ultra Wide Band)を用いることとする。もちろん、UWBを採用したワイヤレスUSB規格を用いることも可能である。
【0013】
本実施形態における無線通信部100は、測距及びデータ通信を行うためのアンテナ1と、UWBによる測距を行うための測距受信部3、測距送信部4を有する。また、他の無線通信装置からのデータを受信するためのデータ受信部5と、他の無線通信装置にデータを送信するためのデータ送信部6とを有する。アンテナ切り替え制御部2は、測距時とデータ通信時とで、アンテナ1と送受信部3〜6との接続を切り替える。無線制御部7は、無線通信装置全体を制御する。なお、無線制御部7は、測定した距離を用いて、無線接続を確立すべき相手機器を決定する決定手段として機能する。
【0014】
図8は、本実施形態における無線通信装置の一例であるプリンタ8の主要な構成要素を示すブロック図である。
プリンタ制御部80は、プリンタ8の動作を制御する。プリンタ制御部80は、CPU(Central Processing Unit)と、当該CPUで実行可能な制御プログラムを格納する記憶装置(不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ等)と、当該CPUのワークエリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)とを備える。
【0015】
表示部81は、通常LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイなどのディスプレイ装置である。表示部81は、プリンタ8の動作状態やユーザへのメッセージ、デジタルカメラ9から送信された画像データなどを、プリンタ制御部80の制御に従って表示する。
【0016】
プリンタエンジン部82は、カットシートなどの記録媒体に対してプリントを実行する機構部分である。記録媒体の搬送機構に加え、プリントヘッドやインクタンク(プリンタ8がインクジェットプリンタの場合)又はプロセスカートリッジ(プリンタ8がレーザープリンタの場合)等が含まれる。
操作部83はユーザがプリンタ8に指示を与えるために用いられ、ボタンやキー、タッチパネルなどが一般に用いられる。
【0017】
プリンタ制御部80は、無線通信部100の動作も制御できる。但し、他の無線通信装置との無線接続の確立並びに切断に係る処理は、主に無線通信部100が行い、確立や切断といったイベントを無線制御部7からプリンタ制御部80に通知する。プリンタ制御部80は、このイベントに応答して、例えばデータ通信の準備を行ったり、プリント動作の制御を行ったりする。
【0018】
なお、図8においては、説明及び理解を簡単にするため、プリンタ8がプリント機能のみを有する場合について説明したが、スキャナ機能、ファックス機能等をさらに有するプリンタであってもよいことは言うまでもない。
【0019】
図9は、本実施形態における無線通信装置の一例であるデジタルカメラ9の主要な構成要素を示すブロック図である。
カメラ制御部90は、デジタルカメラ9の動作を制御する。カメラ制御部90は、CPUと、当該CPUで実行可能な制御プログラムを格納する記憶装置(不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ等)と、当該CPUのワークエリアとして用いられるRAMとを備える。
【0020】
表示部91は、通常LCDや有機ELディスプレイなどのディスプレイ装置である。表示部91は、デジタルカメラ9の動作状態やユーザへのメッセージ、記録部92が記憶媒体から読み出した撮影画像データ、プリンタ8から送信された情報(測距結果等)等を、カメラ制御部90の制御に従って表示する。なお、表示部91の一部として、スピーカーなどの音声出力装置が設けられていても良い。
【0021】
記録部92は、デジタルカメラ9の撮影画像データを、メモリカード等の取り外し可能な記憶媒体や、デジタルカメラ9の内蔵メモリ等の記憶媒体に対して記録する。また、記憶媒体に記録されている画像データを読み出す。
【0022】
画像処理部93は、撮像部94から出力されるアナログデータに対してA/D変換を行い、ホワイトバランス処理や色補間処理など、所謂現像処理と呼ばれる一連の画層処理を行う。また、画像処理部93は、記録部92への記録前に、撮影画像データの圧縮符号化処理を必要に応じて行う。
【0023】
撮像部94は、撮影レンズ、メカニカルシャッター、絞り、オートフォーカス(AF)レンズ駆動モータ、撮像素子等を有する。撮像素子は、CCDセンサ、CMOSイメージセンサ等から構成される。撮像部94は、カメラ制御部90の制御に従い、撮像素子に被写体を結像させ、撮像素子を露光し、撮影画像をアナログデータとして出力する。
【0024】
操作部95はユーザがデジタルカメラ9に指示を与えるために用いられ、ボタンやキー、タッチパネルなどが一般に用いられる。
【0025】
カメラ制御部90は、無線通信部100の動作も制御できる。但し、他の無線通信装置との無線接続の確立並びに切断に係る処理は、主に無線通信部100が行い、確立や切断といったイベントを無線制御部7からカメラ制御部90に通知する。カメラ制御部90は、このイベントに応答して、例えばデータ通信の準備を行ったり、メッセージ表示の制御を行ったりする。
なお、デジタルカメラ10も、本実施形態における無線通信装置の一例であり、デジタルカメラ9と同等の構成を有するものとする。
【0026】
図2は、プリンタ8と、プリンタ8との通信可能範囲12内に存在する、デジタルカメラ9、10とを模式的に示した図である。
ここでは、デジタルカメラ9、10のうちの1台と、プリンタ8とを無線接続し、ダイレクトプリントをする場合を考える。なお、本実施形態では、デジタルカメラ等の撮像装置と、プリンタとの間で直接通信を行い、撮像装置側の画像データをプリンタにプリントさせる機能を「ダイレクトプリント」と呼ぶ。ダイレクトプリントを実現する技術には、Pictbridge(CIPA DC-001-2003)規格等が知られている。
【0027】
図2に示す例では、プリンタ8がホストとして動作し、デジタルカメラ9、10がデバイスとして動作するものとする。また、プリンタ8とデジタルカメラ9、10は、あらかじめUWBによる無線通信が可能な機器として相互に認識している機器同士であるとする。さらに、UWBの機能を用いた通信相手との距離の測定(測距)は、プリンタ8が行い、測距結果を利用して、デジタルカメラ9、10と無線接続する又はしないを決定することとする。以下、UWBによる無線通信が可能であり、プリンタ8のようにホストとして動作する機器を「UWBホスト」と呼ぶ。また、UWBによる無線通信が可能であり、デジタルカメラ9、10のようにデバイスとして動作する機器を「UWBデバイス」と呼ぶ。
【0028】
また、プリンタ8とデジタルカメラ9、10による、ダイレクトプリントのための無線通信を可能とする距離(接続エリア11の広さ)の設定は、プリンタ8が行う。この接続エリア11は、UWBによる無線通信が可能な距離(UWB通信可能範囲12)内において、ユーザが任意の距離に設定することができる。
【0029】
本実施形態における無線通信装置は、無線通信可能範囲内に存在するUWBデバイスとの距離情報に基づいて、他の無線通信装置との間の無線接続及び切断の制御を行うことを特徴とする。距離情報をどのように用い、どのような接続・切断制御を行うかは特に制限がないが、ここでは以下のような制御を例として説明する。この接続・切断制御は、無線制御部7により実行される。
【0030】
(1)接続制御
(1−a)所定距離内に近づいたUWBデバイスと接続を行う。
(1−b)所定時間内に所定距離以上接近したUWBデバイスと接続を行う。
(1−c)所定距離以内に、所定時間内に所定回数以上接近したUWBデバイスと接続を行う。
(1−a’)所定の動作状態で、所定距離よりも近づいたUWBデバイスと接続を行う。
【0031】
(2)切断制御
(2−a)接続中のUWBデバイスが所定距離以上離れたら切断する。
(2−b)接続中のUWBデバイスが所定時間内に所定距離以上離れたら切断する。
(2−c)接続中のUWBデバイスが、所定距離から、所定時間内に所定回数以上離れたら切断する。
(2−a’)接続中のUWBデバイスが所定の動作状態になり、かつ所定距離以上離れたら切断する。
【0032】
これらの接続制御と切断制御とは任意の組み合わせが可能であるが、以下では説明及び理解を容易にするため、以下の例1〜例4について具体的に説明する。
接続制御 切断制御
<例1> (1−a) (2−a)
<例2> (1−b) (2−b)
<例3> (1−c) (2−c)
<例4> (1−a’) (2−a’)
【0033】
<例1>
図2のように、プリンタ8と無線通信可能なデジタルカメラ9、10が2台ともプリンタ8のUWB通信可能範囲12内にある場合、プリンタ8の無線通信部100が、デジタルカメラ9及びデジタルカメラ10との距離をUWBの測距機能を用いて測定する。その結果得られた距離情報と、あらかじめユーザによって設定されている接続エリア11とを比較して、デジタルカメラ9及び10のうち、接続を確立すべき1つを決定する。具体的には、接続エリア11内にあるデジタルカメラ(ここではデジタルカメラ9)との無線接続を行う。これは、接続エリア11を規定する所定距離内に近づいたUWBデバイスであるデジタルカメラ9との無線接続を確立する制御と言うこともできる。
【0034】
また、プリンタ8の無線通信部100は、無線接続したデジタルカメラ9との距離を定期的に測定し、距離情報の更新を行って、接続している機器との距離を監視する。測距を行う時間間隔は、処理負荷に応じて任意に設定可能であるが、接続エリア11を規定する距離d1が小さいほど短く設定する。定期的な距離の測定の結果、デジタルカメラ9がUWB通信可能範囲12から出たと判断される場合、プリンタ8はデジタルカメラ9との無線接続を切断する。そして、接続エリア11内に他の無線通信装置が存在しないか確認する。
【0035】
ここでは、無線接続を確立する条件となる距離d1(接続エリア11)と、無線接続を切断する条件となる距離(切断距離)d2(UWB通信可能範囲12)とが異なる(具体的には、d2>d1)であるものとした。従って、一旦接続されれば、ユーザはデジタルカメラ9をプリンタ8から距離d2の範囲内で自由に移動させることが可能である。
【0036】
この例の場合、ユーザはプリントしたい画像データを記憶したデジタルカメラ9を、接続エリア11に入るまでプリンタ8に近づけるだけでデジタルカメラ9とプリンタ8とを、例えば従来USBケーブルで接続していた様に接続することができる。そして、接続完了後は周知の方法でプリントしたい画像をデジタルカメラ9で選択し、プリント実行を指示すれば、プリンタ8から所望の画像をプリントアウトすることが可能である。また、接続を切断したい場合には、デジタルカメラ9をプリンタ8から距離d2を超える位置に移動させれば自動的に切断される。
【0037】
このように、例1によれば、接続したい機器に対して接続する機器を近づければ接続、遠ざければ切断を行う。そのため、ユーザは、パラメータ等の入力を行ったり、接続先を明示的に選択する等の操作を行ったりする必要がなく、直感的に所望の機器との接続及び切断を行うことが可能となる。
【0038】
なお、ユーザに対して、デジタルカメラ9とプリンタ8との接続状態や、また接続や切断を行うための操作(本例では、デジタルカメラ9をプリンタ8に対してどれくらい近づければ(或いは遠ざければ)良いのか)を通知することが好ましい。この通知は、例えばデジタルカメラ9が有する表示部91を利用したメッセージ表示や、スピーカーを用いた音声出力等により実現することができる。
【0039】
例えば、デジタルカメラ9がプリンタ8とUWBによる無線通信が可能な距離(UWB通信可能範囲12)内に入った場合に、図6(a)に示すようなメッセージ表示による通知を行うことができる。ここでは、デジタルカメラ9の表示部91に、無線通信が可能な距離内であること、プリンタ8との現在の距離、接続可能となるまでに必要な移動距離、接続のために行うべき次の操作を表示した例を示している。なお、本実施形態において、測距処理はプリンタ8が行うが、測距結果はデジタルカメラ9が取得するかプリンタ8が通知することにより、デジタルカメラ9が把握しているものとする。或いは、デジタルカメラ9でもプリンタ8との距離を測定するように構成しても良い。
【0040】
また、接続エリア11内にデジタルカメラ9が入り、プリンタ8との無線接続が確立されると、接続中であること、次に行われると思われる操作(ここでは無線接続の切断のための方法)を表示する(図6(b))。なお、接続が確立した時点で、表示部91が有するスピーカーからチャイムやビープ音などを発するように構成することで、ユーザは音により接続を確認することができる。
【0041】
その後、デジタルカメラ9がプリンタ8から遠ざかり、UWB通信可能範囲12から出た場合には、接続が切断され、接続できる機器が存在しないことが表示部91に表示される。接続が切断された場合にもチャイムやビープ音によりユーザに報知するように構成することができる。この際、接続開始時との区別が付くよう、音色や発音の回数(例えば接続の開始時1回、切断時2回)を変化させても良い。このように、ユーザが無線通信をする上で必要な情報や操作を通知するように構成することで、ユーザの利便性を向上することができる。
【0042】
以下の例2〜例4でも例1と同様、デジタルカメラ9においてメッセージ表示や音声出力による通知を行うことが可能である。
【0043】
なお、本例において、接続エリア11はプリンタ8を中心とした円の半径により規定した。しかし、プリンタ8に近い領域を接続エリア11から除外しても良い。例えば、図2において、プリンタ8から距離d1’(必要最低距離)未満の領域は接続エリアから除外するように構成することができる。この場合、デジタルカメラ9が、設定された必要最低距離よりもプリンタ8に近づいた場合には、やはり接続エリア11から出たものとして無線通信の切断を行うことができる。
【0044】
<例2>
本例では、図3のように、接続エリア11にデジタルカメラ9が入っている状態において、所定時間(例えば15秒)内に、デジタルカメラ9が所定距離(例えば50センチ)以上接近した場合に無線接続を行う。すなわち、距離の変化(接近)が予め定めた量よりも大きいUWBデバイスを接続先として決定する。
【0045】
また、逆に、接続エリア11にデジタルカメラ9が入っている状態において、所定時間(例えば15秒)内に、デジタルカメラ9が所定距離(70センチ)以上遠ざかった場合に無線接続を切断する。
【0046】
本例によっても、例1と同様、ユーザは直感的な操作によって容易に所望の機器との接続を行うことが可能となる。さらに、本例によれば、距離変化が大きい場合には、ユーザが接続及び切断の意図を持って距離を変化させているものと判断する。これにより、例1に比べ、誤接続や誤切断する確率を低減させることが可能となる。
【0047】
<例3>
本例では、図4に示すように、ユーザがあらかじめ設定した接続エリア11にデジタルカメラ9が出入りする回数により、無線接続及び切断を行う。すなわち、測定された距離が、予め定めた距離以遠から予め定めた距離以内となった回数が所定回数に達したUWBデバイスを接続先として決定する。
【0048】
例えば、接続エリア11に例えば5回出入りした場合に無線接続を行う。また、さらに接続エリア11に例えば3回(合計8回)出入りすると、プリンタ8はデジタルカメラ9との無線接続を切断する。そして、接続エリア11内に他の無線通信可能な機器がないかどうかを探索する。
【0049】
本例によっても、例1と同様、ユーザは直感的な操作によって容易に所望の機器との接続を行うことが可能となる。さらに、本例によれば、接続エリアの出入り回数に基づいて接続、切断を決定するので、ユーザが接続及び切断の意図を持ってカメラを移動させている可能性が高くなる。これにより、例1に比べ、誤接続や誤切断する確率を低減させることが可能となる。
【0050】
なお、所定時間内に所定回数出入りしたことを条件として接続、切断を行うようにしても良い。この場合、時間を短めに設定することで、所定回数の出入りがユーザの意図によるものである可能性がさらに高くなり、誤接続や誤切断の可能性がさらに低減される。
【0051】
<例4>
本例は、例1の条件に対し、さらにデジタルカメラ9の状態を加味して接続及び切断を行う。具体的には図5に示すように、デジタルカメラ9が予め決められた特定の動作状態や操作状態で接続エリアに入ってきた場合に、接続を行う。
【0052】
この場合、まず、デジタルカメラ9との距離情報を更新しているプリンタ8が、デジタルカメラ9が接続エリア11に入った場合に一旦無線接続を確立する。そして、デジタルカメラ9の動作モードやボタン押下状態を取得し、所定の条件を満たしたらそのまま無線接続を維持するように構成することができる。或いは、デジタルカメラ9が接続エリア11に入ったら、無線接続の前手順において、デジタルカメラ9に対して動作モードやボタン押下状態を問い合わせ、所定の条件を満たしている場合のみ接続を確立するようにしても良い。また、接続エリア11に入ったデジタルカメラ9に対し、所定の条件を満たしている場合のみ応答するように要求するコマンドを送信し、通常の時間内に応答があった場合にのみ接続を確立するように構成することもできる。
【0053】
本例において、確立された無線接続は、デジタルカメラ9が、予め定められた、無線接続を確立する判定を行う状態と異なる動作モードや操作状態に合致した場合に切断される。プリンタ8は無線接続確立後も、デジタルカメラ9との距離を継続して測定する。そして、デジタルカメラ9が接続エリア11から出たことが検出された場合には、デジタルカメラ9の動作モードや操作状態を取得する。例えば、図5に示したように、動作モードが再生モードで、かつ操作状態がシャッターボタンの押下状態である場合には、接続されている無線通信を切断する。
【0054】
なお、デジタルカメラ9の状態を、デジタルカメラ9が接続エリア内に入った時点から継続して取得し、デジタルカメラ9が接続エリア11から出た時点で直近に取得した状態に基づいて切断要否を判断するように構成しても良い。
また、測距に使用する通信チャネルを利用してデジタルカメラ9の状態取得が可能であれば、デジタルカメラ9の状態取得のために無線接続を確立する必要はない。
【0055】
図7は、本実施形態におけるプリンタ8の処理手順を説明するフローチャートである。図7のフローチャートで説明する処理は、プリンタ制御部80が制御プログラムを実行してプリンタ8の各部を制御することによって実現される。
【0056】
ここでは、以下の条件で無線接続の確立及び切断を行う場合について例示する。
・再生モードのデジタルカメラが接続エリア11に入ったら無線接続を確立する。
・印刷処理中に、接続中のデジタルカメラがUWB通信可能範囲12から出たら無線接続を切断する。
・印刷処理前又は印刷処理終了後に、接続中のデジタルカメラが接続エリア11から出たら無線接続を切断する。
・印刷処理前又は印刷処理終了後に、接続中のデジタルカメラが撮影モードに切り替わったら無線接続を切断する。
【0057】
ステップS1及びステップS2のループでは、無線通信部100により、UWBによる無線通信が可能な距離内(UWB通信可能範囲12)に、UWBデバイスが存在しているかどうかを定期的にサーチする。UWBデバイスとは、UWBによる無線通信が可能な機器として相互に認識している機器を意味する。
【0058】
ステップS2において、UWB通信可能範囲12にUWBデバイスが存在していなければ、ステップS1に戻って定期的なサーチを繰返し行う。一方、UWBデバイスが存在していれば無線通信部100により、そのUWBデバイスとの距離の測定をUWBの測距機能を用いて開始する(ステップS3)。ここでは、UWBデバイスとしてデジタルカメラ9が存在しているものとする。
【0059】
測距の結果得られた距離情報を用いて、無線通信部100の無線制御部7が、デジタルカメラ9との距離がUWBによる無線接続を確立する接続エリア11内であるかどうかを判定する(ステップS4)。測距結果が接続エリア11内の距離でなければ、ステップS3に戻って測距処理を繰り返す。
【0060】
接続エリア11内に相当する測距結果であった場合には、無線制御部7は、デジタルカメラ9の動作モードが撮影モードであるか再生モードであるかを判別する(ステップS5)。そして、撮影モードであった場合には、UWBによる無線接続(データ通信)は行わないものとし、ステップS1に戻る。
【0061】
なお、UWB通信可能範囲12内に存在するUWBデバイスについては、プリンタ制御部80内の記憶装置(図示せず)にIDなどの固有情報を含んだリストを生成して管理するものとする。そして、プリンタ制御部80は、無線通信部100を用い、リスト中の個々のUWBデバイスに対し、接続条件を満たすものが検出されるまで、順次ステップS3〜ステップS5の測距処理を実行する。
【0062】
一方、デジタルカメラ9のモードが再生モードであった場合、無線制御部7はデジタルカメラ9を無線接続を確立すべき相手機器として決定する。そして、デジタルカメラ9と無線接続を確立してUWBによる通信を開始する(ステップS6)。この時点で、UWBによる通信が可能になったデジタルカメラ9では、カメラ制御部90が無線制御部7からの通知を受け、例えば図6(b)に示したメッセージを表示した後、印刷指示メニュー(図示せず)を表示部91に表示させる。メニュー画面やメッセージ表示用のデータは、デジタルカメラ9の有する、図示しない記憶装置に予め記憶されているものとする。
【0063】
印刷指示メニューは、例えばデジタルカメラ9の記録部92に装着されている記憶媒体に格納された画像データの一覧表示領域と、一覧表示で選択された印刷対象の画像データに対する印刷サイズ、印刷枚数を指定する領域とを有する。そして、デジタルカメラ9のユーザは、操作部95を操作し、印刷指示メニューの一覧表示領域から印刷したい画像データを少なくとも1つ選択する。そして、選択した画像データについての印刷パラメータ(サイズ、枚数など)を指定し、印刷実行を指示する。
プリンタ8は、デジタルカメラ9からの印刷実行指示有無をチェックし(ステップS7)、指示がなければステップS14へ移行する。
【0064】
印刷実行指示が受信された場合、デジタルカメラ9とプリンタ8とは、Pictbridge規格等に従ってダイレクトプリント処理を開始する(ステップS8)。この際、有線接続であるか、無線接続であるかについて、デジタルカメラ9及びプリンタ8の印刷アプリケーションでは意識する必要がない。従来の有線接続によるダイレクトプリント処理と同様にコマンド及びデータのやりとりを相互に行いながら印刷処理を進めていくことができる。なお、無線制御部7が、印刷用のデータ通信(画像データの伝送など)と、測距用の通信とを、予め定められた時間内に処理可能なように、アンテナ切替部2を制御する。つまり、本実施形態において、無線通信部100は、測距用の通信とデータ通信とを時分割で実施する。
【0065】
プリンタ8の無線通信部100は、無線接続中のUWBデバイス(デジタルカメラ9)との距離を、UWBによる測距機能により定期的に計測する(ステップS9)。そして、印刷処理中は、デジタルカメラ9がUWB通信可能範囲12内に位置するかどうかを判断する(ステップS10)。測距の結果、デジタルカメラ9がUWB通信可能範囲12外に移動したと判断される場合、無線制御部7が接続を切断するとともに、切断の通知を受けたプリンタ制御部80が、エンジン部82で実行中の印刷処理も中止する(ステップS11)。デジタルカメラ9がUWB通信可能範囲12内に位置すると判断される場合には、印刷処理が終了したか(より正確には、印刷処理のために必要な通信処理が終了したか)どうかを判定する(ステップS12)。印刷処理が継続していればステップS10に戻る。印刷処理が終了したならばステップS13へ進む。
【0066】
デジタルカメラ9がUWB通信可能範囲12を出ることなく印刷が終了した場合には、測距結果から、デジタルカメラ9が接続エリア11内に位置するかどうかを判断する(ステップS13)。そして、接続エリアの外にデジタルカメラ9が移動した場合には接続が切断され(ステップS14)、プリンタ8はUWBデバイスのサーチ(ステップS1)へ戻る。また印刷終了後もデジタルカメラ9が接続エリア11内に位置する場合、無線接続を保持する(ステップS15)。そして、ステップS16で、デジタルカメラ9の動作モードをチェックする。動作モードが再生モードのままであれば、ステップS7に戻って再度印刷実行指示の有無を確認する。一方、デジタルカメラ9の動作モードが撮影モードに変化した場合には、無線接続を切断し(ステップS17)、ステップS1へ戻る。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、無線通信装置間での無線接続確立、切断を、無線通信方法が有する測距機能で測定した機器間の距離又はその変化に基づいて行う。そのため、ユーザが無線通信装置を所望の相手先機器と所定の位置関係を満たすように移動させるだけで、無線接続を希望する機器の指定や、接続、切断の指示を行わなくても、接続、切断が可能となる。
【0068】
なお、本実施形態では、測距機能を有する無線通信方法の一例としてUWBを用いた場合について説明した。しかし、上述した無線接続の確立、切断制御は、将来的に実現される無線通信方法を含め、測距機能を有する任意の無線通信方法を用いる無線通信装置に対して適用可能である。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、第1の実施形態の変形例である第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分については、説明を省略することもある。
図10は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
第1の実施形態では、UWBホスト(プリンタ8)が、1台のUWBデバイス(デジタルカメラ9)と接続を確立し、一旦接続を確立した後はUWBデバイスが切断条件を満たすまでは1対1の通信を行いながら処理(プリント)を行うものであった。
これに対し、本実施形態では、1台のUWBホストが、複数のUWBデバイスと順次無線通信を行いながら処理を行う点で異なる。
【0070】
本実施形態では、テレビジョン受像機(以下、テレビ)18をUWBホストとし、UWBの接続認証が可能な範囲(接続エリア)11内に4台のUWBデバイスが存在する環境を想定する。ここで、4台のUWBデバイスは、例えば、デジタルカメラ19〜22とする。そして、テレビ18と各デジタルカメラ19〜22との距離を測定し、その距離情報に基づいて接続順を決定する。その後、本実施形態では、テレビ18とデジタルカメラ19〜22とを接続順に従って順次無線接続し、4台のデジタルカメラから連続して画像をテレビ18に送信してテレビ18でスライドショー表示を行う。なお、デジタルカメラ19〜22も、本実施形態における無線通信装置の一例であり、デジタルカメラ9と同等の構成を有するものとする。
【0071】
図14は、本実施形態における無線通信装置の一例であるテレビ18の主要な構成要素を示すブロック図である。
テレビ制御部25は、テレビ18の動作を制御する。テレビ制御部25は、CPUと、当該CPUで実行可能な制御プログラムを格納する記憶装置(不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ等)と、当該CPUのワークエリアとして用いられるRAMとを備える。
【0072】
表示部26は、通常LCDやプラズマディスプレイパネル、SEDなどのディスプレイ装置か、CRTである。表示部26は、チューナー部27が受信したテレビジョン信号やテレビ18の動作状態、オンスクリーンディスプレイ、メニュー画面、ユーザへのメッセージ、デジタルカメラ19〜22から送信された画像データなどを表示する。表示はテレビ制御部25の制御に従って行う。
【0073】
チューナー部27は、所謂テレビチューナーであり、地上波アナログ/デジタル放送や衛星アナログ/デジタル放送などの放送波を例えば図示しないアンテナを通じて受信する。本実施形態では、受信した映像及び音声信号の復号化処理など、受信信号から表示部26に表示可能な信号(或いはデータ)を生成するまでの処理をチューナー部27が行うものとする。
【0074】
操作部28は、ユーザがテレビ18に指示を与えるために用いられ、ボタンやキー、タッチパネルなどが一般に用いられる。本実施形態では、操作部28はテレビ18の本体に設けられたものだけでなく、リモコンに設けられたものを含む。
【0075】
テレビ制御部25は、無線通信部100の動作も制御できる。但し、他の無線通信装置との無線接続の確立並びに切断に係る処理は、主に無線通信部100が行い、確立や切断といったイベントを無線制御部7からテレビ制御部25に通知する。テレビ制御部25は、このイベントに応答して、例えばデータ通信の準備を行ったり、スライドショー動作の制御を行ったりする。
【0076】
本実施形態では、テレビ18がUWBホスト、デジタルカメラ19〜22がUWBデバイスである。そして、テレビ18とデジタルカメラ19〜22とは予めUWBによる無線通信が可能な機器として相互に認識している。また、UWBが有する測距機能を用いたテレビ−デジタルカメラ間の測距は、テレビ18が行い、測距によって得た距離情報を利用してデジタルカメラ19〜22との無線接続の確立、切断を決定する。
【0077】
また、UWBホストとUWBデバイスとが無線通信可能になる距離(UWB接続エリア11)の設定は、ユーザが、例えばリモコンを用いて、UWBホストであるテレビ18のメニュー画面やオンスクリーンディスプレイを操作することで行うものとする。このUWB接続エリア11はUWBによる無線通信が可能な距離(UWB通信可能範囲12)内においてユーザが任意の距離に設定することができる。
【0078】
図10のようにテレビ18と無線通信可能なデジタルカメラ19〜22が4台ともUWB通信可能範囲12内にある場合、テレビ18がデジタルカメラ19〜22の各々との距離をUWBの測距機能を用いて測定する。テレビ18による4台のデジタルカメラ19〜22との機器間の距離の測定は、テレビ18が測距用電波の出力を制御して、ある所定の範囲内をサーチすることにより段階的に行われる。
【0079】
図11は、図10に示す環境において、テレビ18が、距離と機器の固有の情報を取得する際に段階的にサーチする所定の範囲の例を模式的に示した図である。
図11に示すように、UWB接続エリア11を、UWBホストからの距離範囲によって複数の領域(サブ接続エリア(1)〜(4))に分割し、サブ接続エリア単位で段階的なサーチを行う。
【0080】
まず初めに、テレビ18は、接続エリア(1)の範囲内にUWBにより無線通信可能な機器があるかないかをサーチする。具体的には、UWBによる測距用電波を、テレビ18に最も近いサブ接続エリア(1)の範囲内に届く程度の出力(低出力)で送信して、サーチを行う。サーチの結果、サブ接続エリア(1)内に無線通信が可能な機器(デジタルカメラ19)が見つかると、テレビ18はその機器(デジタルカメラ19)との(データ通信のための)無線接続を確立する。そして、UWBによる無線データ通信を行い、機器の持つ固有の機器情報を取得する。
【0081】
機器情報を取得した後、テレビ18はデジタルカメラ19との間の無線接続を切断する。その後さらにサブ接続エリア(2)の範囲内にUWBにより無線通信可能な機器があるかないかをサーチする。サーチの結果、サブ接続エリア(2)内に無線通信が可能な機器(デジタルカメラ20)が見つかると、テレビ18はその機器との無線接続を確立し、UWBによる無線データ通信を行い、機器の持つ固有の機器情報を取得する。
【0082】
このようにテレビ18は少しずつUWBによる測距用電波の出力を(強くなるように)制御してサーチする範囲をサブ接続エリア(1)からサブ接続エリア(4)へ順次拡大する。そして、サーチ範囲の拡大によって新たに見つかった通信が可能な機器との無線接続の確立、機器情報の取得及び無線接続の切断を繰り返し、UWB接続エリア11内に存在するすべてのUWBデバイスの機器情報と距離情報を取得する。
【0083】
テレビ18がUWBによる測距を行った結果、同じ或いは近い距離に複数のデジタルカメラがあった場合には、距離情報以外の情報により順位付けを行う。距離情報以外の情報としては、それらデジタルカメラの接近速度や、機器情報(例えば最後に操作した時間など)を用いることができる。
【0084】
このように行われた測距の結果得られた距離情報とUWBによる通信が可能な機器の持つ機器固有の機器情報から、テレビ18はUWBによる接続の順番を決めるリスト(接続優先リスト)を作成する。そして、あらかじめユーザによって設定されている優先順位に、例えば近くに位置する機器から順に、UWBによる無線接続を確立し、データ通信を行う。
【0085】
図11の例では、無線通信部100が、テレビ18との距離が最も近いデジタルカメラ19とUWBによる無線接続を行い、無線接続の確立をテレビ制御部25に通知する。それに応じてテレビ制御部25は、デジタルカメラ19に対して画像データの送信を要求する。そして、デジタルカメラ19から受信した画像データを図示しない記憶装置に格納し、必要に応じて表示部26に適した解像度に変換し、表示部26にスライドショー表示させる。スライドショーの表示に関しては、リモコンからの指示に応じて早送りや巻き戻しなど、各種の表示処理を実行するように構成することもできる。
【0086】
デジタルカメラ19の画像をスライドショー表示している間、接続優先リストで接続順位が2番目以降になった残り3台のデジタルカメラ20、21、22は、UWB接続エリア11の範囲内にある限り、接続待ちの状態にある。そして、テレビ18とデジタルカメラ19とのUWBによる無線通信が終了するか、通信が途切れた場合に、接続優先リストの順番に従い順次テレビ18との無線接続が確立される。
【0087】
接続優先リストは、通信が終了したり通信が中断したりして接続されている機器が変更になった場合や、接続の順番待ちをしている間の距離変化を反映するよう、通信終了時や通信中断時のようなタイミングにおいてテレビ制御部25が随時更新する。これにより、常に最新の接続順位をリストに保持することを可能にしている。
【0088】
このように、本実施形態では、UWBによる接続認証が可能な範囲内に複数のUWBデバイスがある場合、各機器との距離を測定し、測定結果を用いて接続順位を決め、機器の持つ固有の機器情報と組み合わせて接続優先リストを作成する。そして、接続優先リストに基づいて複数の機器と順次無線接続をすることで、複数ある無線通信装置との通信を何度も指示する手間なく、連続して接続することが可能になり、ユーザの利便性が向上する。また、距離情報を用いることで、無線接続を行う順番をユーザが把握しやすい。そのため、ユーザは複数のデジタルカメラの画像をスライドショーしたい場合、希望する順番にテレビ18からの距離を調整して配置するだけで、意図したカメラの順番で画像を表示することが可能になる効果がある。
【0089】
図12は、図11を用いて説明した接続制御処理の過程で、テレビ18の表示部26やデジタルカメラ19〜22の表示部91に表示可能な情報の例を示す図である。
【0090】
第1の実施形態で説明したように、本実施形態においても、無線通信装置の表示部には、接続相手に関する情報や、接続状態に関する情報、距離情報、機器の動作状態などについてメッセージ表示や音声出力を行うことが可能である。
【0091】
図12では、デジタルカメラ19がテレビ18に最も近く、接続優先順位1番となり、テレビ18とUWBでの無線接続を確立している状態である。このとき、デジタルカメラ19の表示部91には、無線通信が可能な距離内であること、接続相手がテレビ18(TH55)であること、またテレビ18との現在の距離、接続状況(接続中)、可能な操作についての情報が表示される。
【0092】
また、テレビ18と距離がデジタルカメラ19に比べて遠く、接続優先順位が2番目以降になった他の残り3台のデジタルカメラ20、21、22は、UWB接続エリア11内において、UWB接続待ちの状態を保持する。このとき、例えばデジタルカメラ20の表示部には無線通信が可能な距離内であること、テレビ18との現在の距離、接続順番、次に行うべき操作が表示される。
【0093】
このように、ユーザが無線通信をする上で必要な情報や操作を無線通信装置に表示することによりユーザの利便性を向上することができる。無線通信装置が表示部を持たない場合など、音声による通知を行っても良い。一方で、UWB接続エリア11内にある4台のデジタルカメラ19〜22との機器間の距離と機器固有の機器情報に基づいて作成された接続優先リストは、UWBホストとなっているテレビ18に保持され更新される。
【0094】
また、図12に示すように、ユーザの操作または接続機器が代わった場合などのある所定の機会において、この接続優先リストはテレビ18の画面に表示することができる。この優先順位リストには、接続中の機器名やIDといった機器固有の機器情報、接続待ち機器の順番、次にユーザが行うべき操作が表示内容として含まれる。このように接続優先リストを表示可能にし、ユーザに知らせることによって、ユーザが次に行うべき操作を簡単に知ることができる。そして、ユーザがリアルタイムに複数ある機器の接続情報をまとめて得ることができることで操作の際の利便性を向上することができるという効果がある。
【0095】
図13は、本実施形態におけるテレビ18の処理手順を説明するフローチャートである。図13のフローチャートで説明する処理は、テレビ制御部25が制御プログラムを実行してテレビ18の各部を制御することによって実現される。
【0096】
ステップS21〜ステップS23のループは、UWBによる無線通信の接続距離内(UWB接続エリア11)に、予めUWBによる無線通信が可能な機器として相互に認識している機器が存在しているかどうかを段階的にサーチする処理である。
【0097】
テレビ18の無線通信部100は、最小の範囲(図11ではサブ接続エリア(1))に届く出力で測距用電波を用いて測距を開始する(ステップS21)。そして、サーチの結果、新たなUWBデバイスが見つから無ければ(ステップS22、無し)、測距用電波の出力をある所定のレベル上げて(ステップS23)、より遠くのサブ接続エリアに対してサーチを行う。
【0098】
ステップS22において、UWBデバイスが新たに見つかれば、UWBデバイスとの距離の測定をUWBの測距機能を用いて行う(ステップS24)。測距の結果得られた距離情報を用いて、UWBデバイスとの距離がUWBによる無線通信を行うUWB接続エリア11内であるかどうかを判定する(ステップS25)。
【0099】
UWB接続エリア11内であった場合にはUWBによる無線接続を確立してデータ通信を行い(ステップS26)、相手先機器固有の機器情報を取得する(ステップS27)。固有情報を取得すると、無線接続を切断する。ステップS21〜ステップS27の処理は、UWB接続エリア11内にあるUWBデバイスすべてのサーチが終了するまで繰り返される。
【0100】
ステップS25において、検出されたUWBデバイスがUWB接続エリア11外となり、UWB接続エリア11内のサーチが終了すると、これまでにサーチして得られている距離情報と機器情報とを使用して接続優先リストを作成する(ステップS28)。このリストは少なくとも、予め設定された条件(例えば距離の近い順)と距離情報とに基づいて、UWB接続エリア11内にある複数のUWBデバイスの優先順位を決定するものである。なお、距離に差がない、或いは予め定めた範囲内である複数のUWBデバイスについては、機器固有情報などの他の情報を用いて優先順位を決定することは既に述べたとおりである。
【0101】
接続優先リストを作成すると、ステップS29で、テレビ制御部25は、その優先順位に基づいて、無線通信部100を用いてUWBデバイス(デジタルカメラ)との無線接続を確立する(UWBによるデータ通信が可能なように機器間の接続を行う)。
【0102】
ステップS30では、例えば操作部28からのスライドショー表示開始指示入力を受信する。これにより、テレビ制御部25は、接続中のデジタルカメラから画像データを取得し、順次表示部26に表示するスライドショー表示を開始する(ステップS31)。接続中のデジタルカメラが有する画像データの取得が終わると、テレビ制御部25は、無線接続を切断し、データ通信を終了する(ステップS32)。データ通信が終了した機器については、優先順位リストにその旨を記録する。
【0103】
接続された機器の通信が終了、或いは何らかの原因により無線通信が途切れた場合、優先順位リストを参照する(ステップS33)。そして、接続順番待ちの機器がなければ、処理を終了する。
【0104】
一方、接続順番待ちの機器が有れば、ステップS21に戻り、接続優先リストに最新の位置状態を反映させて更新するために再度測距を行う。その後、更新された優先順位リストの順番に順番待ちしている機器との通信を接続する。この際、既にデータ通信を行った機器についてはリストにその旨が記録されているので、位置が移動した場合であっても再度データ通信を行うことはない。以上の処理ステップを接続待ち機器がなくなるまで繰返し行い、連続してUWBによる通信を複数の機器と行う。
【0105】
このように、本実施形態によれば、複数の無線通信装置が通信可能な範囲に存在する場合に、少なくとも距離情報と機器固有情報とに基づいて接続の順番を決定し、その順番に従って順次接続を行う。そのため、ユーザは、複数の無線通信装置の位置を、共通の相手先無線通信装置に対して調整することにより、所望の順番で無線接続を行うことが可能となる。
【0106】
(他の実施形態)
上述の実施形態は、システム或は装置のコンピュータ(或いはCPU、MPU等)によりソフトウェア的に実現することも可能である。
【0107】
従って、上述の実施形態をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給されるコンピュータプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、上述の実施形態の機能を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【0108】
なお、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能であれば、どのような形態であってもよい。例えば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等で構成することができるが、これらに限るものではない。
【0109】
上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、記憶媒体又は有線/無線通信によりコンピュータに供給される。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記憶媒体、MO、CD、DVD等の光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリなどがある。
【0110】
有線/無線通信を用いたコンピュータプログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバを利用する方法がある。この場合、本発明を形成するコンピュータプログラムとなりうるデータファイル(プログラムファイル)をサーバに記憶しておく。プログラムファイルとしては、実行形式のものであっても、ソースコードであっても良い。
【0111】
そして、このサーバにアクセスしたクライアントコンピュータに、プログラムファイルをダウンロードすることによって供給する。この場合、プログラムファイルを複数のセグメントファイルに分割し、セグメントファイルを異なるサーバに分散して配置することも可能である。
【0112】
つまり、上述の実施形態を実現するためのプログラムファイルをクライアントコンピュータに提供するサーバ装置も本発明の一つである。
【0113】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを暗号化して格納した記憶媒体をユーザに配布し、所定の条件を満たしたユーザに、暗号化を解く鍵情報を供給し、ユーザの有するコンピュータへのインストールを可能とすることも可能である。鍵情報は、例えばインターネットを介してホームページからダウンロードさせることによって供給することができる。
【0114】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、すでにコンピュータ上で稼働するOSの機能を利用するものであってもよい。
【0115】
さらに、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、その一部をコンピュータに装着される拡張ボード等のファームウェアで構成してもよいし、拡張ボード等が備えるCPUで実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の第1の実施形態における無線通信装置で用いられる無線通信部100の主要な構成要素を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における接続・切断制御の第1の例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における接続・切断制御の第2の例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における接続・切断制御の第3の例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における接続・切断制御の第4の例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態において、デジタルカメラの位置に応じて表示されるメッセージの例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における無線通信装置の一例であるプリンタ8の処理手順を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態における無線通信装置の一例であるプリンタ8の主要な構成要素を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における無線通信装置の一例であるデジタルカメラ9の主要な構成要素を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【図11】図10に示す環境において、テレビ18が、距離と機器の固有の情報を取得する際に段階的にサーチする所定の範囲の例を模式的に示した図である。
【図12】図11を用いて説明した接続制御処理の過程で、テレビ18の表示部21やデジタルカメラ9〜12の表示部91に表示可能な情報の例を示す図である。
【図13】第2の実施形態におけるテレビ18の処理手順を説明するフローチャートである。
【図14】第2の実施形態における無線通信装置の一例であるテレビ18の主要な構成要素を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距機能を有する近距離無線通信方法を用いて無線通信を行う無線通信装置であって、
無線通信可能な範囲内に存在する通信可能な他の無線通信装置との距離を、前記測距機能を用いて測定する測距手段と、
前記測定した距離を用いて、前記他の無線通信装置から、無線接続を確立すべき1つを決定する決定手段と、
前記決定された他の無線通信装置との無線接続を確立する無線制御手段と、
前記無線接続を用いてデータ通信を行うデータ通信手段とを有し、
前記測距手段が、前記無線接続を確立した他の無線通信装置との距離を測定し、前記無線制御手段が、前記無線接続を確立した他の無線通信装置との距離が予め定めた条件を満たした場合に、前記無線接続を切断することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記決定手段が、前記測定された距離が予め定めた距離以内で、かつ最も近い無線通信装置を、前記無線接続を確立すべき1つとして決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記決定手段が、前記測定された距離が予め定めた距離以内で、かつ予め定められた時間内に予め定められた距離以上接近する無線通信装置を、前記無線接続を確立すべき1つとして決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記決定手段が、前記測定された距離が予め定めた距離以遠から当該予め定めた距離以内となった回数が予め定められた回数に達した無線通信装置を、前記無線接続を確立すべき1つとして決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
さらに、前記他の無線通信装置の状態を取得する状態取得手段を有し、
前記決定手段が、前記測定された距離が予め定めた距離以内であり、かつ前記状態取得手段が取得した状態が予め定めた第1の状態である無線通信装置を、前記無線接続を確立すべき1つとして決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記無線制御手段が、前記無線接続を確立した他の無線通信装置の距離が、予め定めた切断距離以上となった場合に、前記無線接続を切断することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記無線制御手段が、前記無線接続を確立した他の無線通信装置の距離が予め定めた距離以内で、かつ予め定められた時間内に予め定められた距離以上遠ざかった場合に、前記無線接続を切断することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記無線制御手段が、前記測定された距離が予め定めた距離以遠から当該予め定めた距離以内となった回数が予め定められた回数に達した場合に、前記無線接続を切断することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項9】
さらに、前記他の無線通信装置の状態を取得する状態取得手段を有し、
前記無線制御手段が、前記測定された距離が予め定めた距離以遠であり、かつ前記状態取得手段が取得した状態が予め定めた第2の状態である場合に、前記無線接続を切断することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項10】
さらに、無線通信可能な範囲内に存在する、通信可能な他の無線通信装置が複数存在する場合に、前記複数の無線通信装置の各々と、接続の優先順位とを対応付けたリストを生成するリスト生成手段を有し、
前記無線制御手段が、前記リスト中の前記優先順位に従って順次前記複数の無線通信装置と無線接続を確立することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項11】
さらに、前記複数の無線通信装置の各々から固有情報を取得する固有情報取得手段を有し、
前記リスト生成手段が、前記複数の無線通信装置の各々の距離と前記固有情報のうち少なくとも前記距離を用いて前記優先順位を決定することを特徴とする請求項10に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−158447(P2007−158447A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346975(P2005−346975)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】