説明

無線通信装置

【課題】簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善する無線通信装置を提供する。
【解決手段】送信信号を出力させる送信アンプ24と、送信信号を送信すると共に通信対象からの返信信号を受信する複数のアンテナ18と、各アンテナ18に対応して送信アンプ24からの送信信号とそのアンテナ18による受信信号とを分離する複数の送受信分離部26と、複数のアンテナ18によりそれぞれ受信された受信信号を合成する受信信号合成部28と、所定のアンテナ18に対応して送信アンプ24と送受信分離部26との間の信号伝達経路に設けられた第1の移相部44と、その送受信分離部26と受信信号合成部28との間の信号伝達経路に設けられた第2の移相部46とを、備えたものであることから、特別な構成を設けることなくアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側からの回り込み信号を抑制するためのキャンセル回路を有する無線通信装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
送信用アンテナから所定の送信信号を送信する送信部と、その送信信号に応じて返信される返信信号を受信用アンテナにより受信する受信部とを、有する無線通信装置が知られている。例えば、所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムの無線タグ通信装置(質問器)がそれである。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
ところで、通常、上記無線タグ通信装置は、上記無線タグに向けて所定の送信信号(質問波)をアンテナから送信すると共に、その送信信号を受信した無線タグから返信される返信信号(応答波)をアンテナにより受信することでその無線タグとの間で情報の通信を行うが、その受信された返信信号に送信側からの強い回り込み信号(直接波)が混入して全体の受信信号強度が増大する場合がある。これにより、増幅器の許容入力強度を超えてしまうことから、受信信号を十分に増幅することができず、結果として無線タグからの返信信号成分を十分増幅することができないため、SN比(signal-to-noise ratio)が低下するという不具合があった。そこで、斯かる送信側からの回り込み信号を除去する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された情報通信装置がそれである。この技術によれば、サーキュレータと受信部との間に減衰器を設け、その減衰器により受信信号と回り込み信号との加算信号の強度を減衰させて復調部に入力させることで、受信信号と加算される不要信号の影響を簡単な構成により回避することができるとされている。また、例えば特許文献2に記載された移動体識別装置では、送信信号を減衰器及び移相器を介して受信信号と加算し、回り込み信号を抑圧する技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−203466号公報
【特許文献2】特開平10−62518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したような受信部に減衰器を設ける技術では、送信側からの回り込み信号を抑制すると共に無線タグからの返信信号も抑制してしまうため、SN比を改善する効果は期待できないものであった。また、送信信号を減衰器及び移相器を介して受信信号と加算する技術では、そのための信号経路を新たに用意しなければならず、斯かる回り込み信号を抑制するための構成により装置が複雑になるという弊害があった。このため、簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善する無線通信装置の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善する無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、所定の送信信号を出力させる送信信号出力部と、その送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信する複数のアンテナと、各アンテナに対応して前記送信信号出力部から出力される送信信号とそのアンテナにより受信された受信信号とを分離する複数の送受信分離部と、前記複数のアンテナによりそれぞれ受信された受信信号を合成する受信信号合成部とを備え、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナにより前記通信対象との間で情報の通信を行う無線通信装置であって、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナに対応して前記送信信号出力部と送受信分離部との間の信号伝達経路に設けられた第1の移相部と、その送受信分離部と受信信号合成部との間の信号伝達経路に設けられた第2の移相部とを、備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、所定の送信信号を出力させる送信信号出力部と、その送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信する複数のアンテナと、各アンテナに対応して前記送信信号出力部から出力される送信信号とそのアンテナにより受信された受信信号とを分離する複数の送受信分離部と、前記複数のアンテナによりそれぞれ受信された受信信号を合成する受信信号合成部と、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナに対応して前記送信信号出力部と送受信分離部との間の信号伝達経路に設けられた第1の移相部と、その送受信分離部と受信信号合成部との間の信号伝達経路に設けられた第2の移相部とを、備えたものであることから、前記第1の移相部及び第2の移相部それぞれの移相量を適宜設定することで、特別な構成を設けることなく前記複数のアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。すなわち、簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善する無線通信装置を提供することができる。
【0009】
ここで、好適には、所定のアンテナに対応して設けられた前記第1の移相部及び第2の移相部それぞれにおける移相量は等しいものである。このようにすれば、送信指向性及び受信指向性を整合させつつ、前記複数のアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制するために、前記第1の移相部及び第2の移相部それぞれの移相量を適宜設定することができる。
【0010】
また、好適には、前記送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信するn個のアンテナを備えたものであり、それらn個のアンテナのうちk番目のアンテナに備えられた前記第1の移相部及び第2の移相部の移相量は、(k−1)×360/2nで表される値である。このようにすれば、前記複数のアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、好適には、前記移相部としてディレイラインを備えたものである。このようにすれば、前記複数のアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を実用的且つ簡単な構成により抑制することができる。
【0012】
また、好適には、各アンテナとそれらアンテナに対応する送受信分離部との間の信号伝達経路をそれぞれ個別に開閉する回路切換部を備え、その回路切換部において前記アンテナへの接続及び終端抵抗へ接続の何れか一方の接続を選択可能としたものである。このようにすれば、所謂ダイバーシティアンテナを備えた無線通信装置において、そのダイバーシティアンテナを構成する複数のアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、好適には、前記第1の移相部及び第2の移相部が設けられたアンテナとは異なるアンテナに対応して、そのアンテナに対応する送受信分離部よりもそのアンテナ側の信号伝達経路に第3の移相部を備えたものである。このようにすれば、前記複数のアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を更に効果的に抑制することができる。
【0014】
また、好適には、前記送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信する2つのアンテナを備えたものであり、それら2つのアンテナ相互間の距離が前記通信対象との間の通信に用いられる電波の波長の1/4となるように配設されたものである。このようにすれば、前記送信信号の送信指向性を2つのアンテナが並んだ方向に向けることができる。
【0015】
また、好適には、前記移相部として90°ハイブリッドカプラを備えたものである。このようにすれば、前記2つのアンテナ同士で送信側からの回り込み信号を実用的且つ簡単な構成により抑制することができる。
【0016】
また、好適には、前記無線通信装置は、通信対象である無線タグに向けて前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナにより所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグから返信される返信信号を前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナにより受信することで前記無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置である。このようにすれば、送信側からの回り込み信号がSN比に影響を与え易い無線タグ通信装置において、簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善することができる。
【0017】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の無線通信装置が好適に適用される無線タグ通信システム10を説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の無線通信装置の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、例えば、所定の通信領域内における物品の管理等に用いられるものであり、上記無線タグ14は、好適には、管理対象である物品に貼られる等してその物品と一体的に設けられている。
【0019】
図2は、上記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、本実施例の無線タグ通信装置12は、上記無線タグ14に対する情報の読み書きや、その無線タグ14の方向乃至は位置検出等を実行するためにその無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、送信データをディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号に基づいてその無線タグ14からの応答データを読み出す等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、上記質問波Fcの送信及び応答波Frの受信に共用される複数(図2では3つ)のアンテナ18a、18b、18c(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ18と称する)と、それら複数のアンテナ18から上記質問波Fcを送信するための送信処理を行うと共に、それら複数のアンテナ18により受信される受信信号の受信処理を行う送受信回路20とを、備えて構成されている。
【0020】
上記送受信回路20は、前記質問波Fcの搬送波に対応する所定の周波数信号を出力させる搬送波出力部22と、その搬送波出力部22から出力された周波数信号を上記DSP16から供給される送信データで変調して出力させる送信アンプ24と、上記各アンテナ18に対応してその送信アンプ24から出力される送信信号と各アンテナ18により受信された受信信号とを分離する複数(図2では3つ)の送受信分離部26a、26b、26c(以下、特に区別しない場合には単に送受信分離部26と称する)と、上記複数のアンテナ18によりそれぞれ受信されて各送受信分離部26を介して供給される受信信号を合成する受信信号合成部28と、その受信信号合成部28から供給される合成信号を直交復調する直交復調部30と、その直交復調部30から出力される同相成分(I相信号)を増幅するI相増幅部32と、そのI相増幅部32から出力される信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるI相フィルタ34と、そのI相フィルタ34から出力される信号をディジタル信号に変換して前記DSP16へ供給するI相A/D変換部36と、上記直交復調部30から出力される直交成分(Q相信号)を増幅するQ相増幅部38と、そのQ相増幅部38から出力される信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させるQ相フィルタ40と、そのQ相フィルタ40から出力される信号をディジタル信号に変換して前記DSP16へ供給するQ相A/D変換部42とを、備えている。ここで、上記送受信分離部26としては、よく知られたサーキュレータやカプラ等が好適に用いられる。
【0021】
また、前記送受信回路20は、前記複数のアンテナ18のうち少なくとも1つのアンテナ18(図2ではアンテナ18b及び18c)に対応して前記送信アンプ24と送受信分離部26b及び26cとの間の信号伝達経路に設けられた第1の移相部44b、44c(以下、特に区別しない場合には単に第1の移相部44と称する)と、それら送受信分離部26b及び26cと受信信号合成部28との間の信号伝達経路に設けられた第2の移相部46b、46c(以下、特に区別しない場合には単に第2の移相部46と称する)とを、備えている。これら第1の移相部44及び第2の移相部46の構成及び作用については、図4等を用いて後述する。
【0022】
前記DSP16は、中央演算処理装置であるCPU、読出専用メモリであるROM、及び随時書込読出メモリであるRAM等から成り、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータであり、前記無線タグ14との間の情報の通信制御やその無線タグ14の方向検出制御等を行うための制御機能として、送信データ出力部50及び受信信号処理部52を機能的に備えている。
【0023】
上記送信データ出力部50は、前記無線タグ14への送信データとして例えば所定のコマンドビット列(送信ビット列)を生成し、その生成されたコマンドビット列をFSK方式等により符号化して前記送信アンプ24へ供給する。この送信データ出力部50により出力された送信データは、その送信アンプ24において前記搬送波出力部22から出力される搬送波を変調し、前記第1の移相部44及び送受信分離部26等を介して各アンテナ18から送信信号として前記無線タグ14へ向けて送信される。このように、本実施例においては、この送信データ出力部50及び前記送信アンプ24が、前記無線タグ14へ向けて所定の送信信号を出力させる送信信号出力部として機能する。
【0024】
前記受信信号処理部52は、前記複数のアンテナ18により受信された受信信号の処理を行うことで前記無線タグ14からの応答データを読み出す。具体的には、前記直交復調部30により復調され、I相A/D変換部36及びQ相A/D変換部42等を介して入力される復調信号(I相信号及びQ相信号)をFSK方式等により復号し、その復号された信号を解釈して前記無線タグ14の変調に関する情報信号(応答データ)を読み出す。
【0025】
図3は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子54の構成を説明する図である。この図3に示すように、斯かる無線タグ回路素子54は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部56と、そのアンテナ部56に接続されて前記無線タグ通信装置12との間の情報通信処理を行うためのIC回路部58とを、備えて構成されている。そのIC回路部58は、上記アンテナ部56により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fcを整流する整流部60と、その整流部60により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部62と、上記アンテナ部56により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部70に供給するクロック抽出部64と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部66と、上記アンテナ部56に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部68と、上記整流部60、クロック抽出部64、及び変復調部68等を介して上記無線タグ回路素子58の作動を制御するための制御部70とを、機能的に含んでいる。この制御部70は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部66に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部56により受信された質問波Fcを上記変復調部68において上記メモリ部66に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Frとして上記アンテナ部56から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0026】
図4は、前記送受信回路20に備えられた第1の移相部44及び第2の移相部46の原理を説明する図である。この図4では、説明の簡略化のために2つのアンテナ18a、18bを備えた構成において、一方のアンテナ18bに対応して前記第1の移相部44及び第2の移相部46が設けられた例を示している。この図4に示すような回路を考えた場合、送信側からの回り込み信号の伝達経路には大まかに3種類の経路がある。先ず、第1の経路として考えられるのは、図4に破線矢印Aで示す前記送受信分離部26を通過して受信側へ入力される経路である。また、第2の経路として考えられるのは、図4に破線矢印Bで示す前記アンテナ18における反射により受信側へ入力される経路である。このようなアンテナ18における反射は、それらアンテナ18のインピーダンスミスマッチにより発生させられる。また、第3の経路として考えられるのは、図4に破線矢印Cで示すアンテナ18間の飛び込みにより受信側へ入力される経路、すなわち所定のアンテナ18により送信された送信信号が他のアンテナ18により受信される経路である。これら3種類の経路のうち、上記第3の経路Cにより受信側へ入力される回り込み信号の強度は、周囲の環境(例えば、周囲に配設された反射物等)により変化するが、上記第1の経路A及び第2の経路Bにより受信側へ入力される回り込み信号は、前記搬送波出力部22から出力される搬送波の周波数が固定であれば変化しない。従って、前記送信アンプ24から出力される送信信号の分岐点から前記複数のアンテナ18により受信される受信信号の合波点までの電気長をアンテナ18毎に調整することで、上記第1の経路A及び第2の経路Bを通る回り込み信号が前記受信信号合成部28における合波により減衰させられるように構成することができる。
【0027】
図4に示す第1の移相部44及び第2の移相部46は、前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路に関して、前記アンテナ18a及び送受信分離部26aに対応して設けられた経路の電気長と、アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた経路の電気長とを調整するために設けられたものであり、具体的には、よく知られたディレイライン(delay line)やLC回路における遅延回路等が好適に用いられる。また、前記第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれの移相量は、好適には、前記アンテナ18a及び送受信分離部26aに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号と、前記アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号とがその受信信号合成部28において合成される際に、それらの信号が相互に相殺されることでその受信信号合成部28から出力される信号が可及的に小さくなるような値とされる。すなわち、好適には、前記アンテナ18bに対応して設けられた第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれにおける移相量は等しいものであり、その移相量はそれぞれ90°とされる。このように、前記第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれにおける移相量を等しくするのは、送信指向性と受信指向性とを合わせるためである。斯かる構成によれば、前記アンテナ18a及び送受信分離部26aに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号に対して、前記アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号の位相が、その受信信号合成部28において180°反転したものとなり、それらの信号が受信信号合成部28において合成されることで相殺される。すなわち、上述した図4における第1の経路A及び第2の経路Bを通る回り込み信号が前記受信信号合成部28における合波により可及的に減衰させられる。
【0028】
図2に戻って、前記無線タグ通信装置12の送受信回路20に備えられた第1の移相部44及び第2の移相部46は、基本的には上述したような原理により、前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路に関して、前記アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた経路の電気長及びアンテナ18c及び送受信分離部26cに対応して設けられた経路の電気長を調整することで、送信側からの回り込み信号が前記受信信号合成部28における合波により可及的に減衰させられるように構成されている。すなわち、各アンテナ18に対応して設けられた前記第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれにおける移相量は等しいものとされ、例えば、前記アンテナ18bに対応して設けられた前記第1の移相部44及び第2の移相部46における移相量は何れも60°、前記アンテナ18cに対応して設けられた前記第1の移相部44及び第2の移相部46における移相量は何れも120°とされる。斯かる構成によれば、前記アンテナ18a及び送受信分離部26aに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号に対して、前記アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号の位相が、その受信信号合成部28において120°異なるものとされ(好適には、遅延させられ)る。また、前記アンテナ18c及び送受信分離部26cに対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号の位相が、その受信信号合成部28において240°異なるものとされ(好適には、遅延させられ)る。そして、それらの信号が受信信号合成部28において合成されることで相殺される。すなわち、前記送受信分離部26を通過して受信系へ入力される回り込み信号及び前記アンテナ18のインピーダンスミスマッチによる反射により受信系へ入力される回り込み信号が前記受信信号合成部28における合波により可及的に減衰させられる。
【0029】
ここで、前記無線タグ通信装置12にn個のアンテナ18が設けられた構成を考える。それらn個のアンテナ18にk=1、2、・・・、nで順番付けをし、1番目のアンテナ18に対応しては前記第1の移相部44及び第2の移相部46を設けないものとし、その他のアンテナ18すなわち2番目乃至n番目のアンテナ18に対応してそれぞれ所定の移相量を有する前記第1の移相部44及び第2の移相部46を設けるものとすると、k番目のアンテナ18に備えられた前記第1の移相部44及び第2の移相部46の移相量を何れも等しい(k−1)×360/2n°で表される値とすることで、各アンテナ18及び送受信分離部26に対応して設けられた前記送信アンプ24から受信信号合成部28までの信号伝達経路を通る信号が前記受信信号合成部28における合波により可及的に減衰させられる。すなわち、各移相部44及び46の移相量をそのように定めることで、前記送受信分離部26を通過して受信系へ入力される回り込み信号及び前記アンテナ18のインピーダンスミスマッチによる反射により受信系へ入力される回り込み信号が前記受信信号合成部28における合波により可及的に減衰させられる。
【0030】
図5は、2個のアンテナ18a、18bを備えた無線タグ通信装置12において、前記第1の移相部44及び第2の移相部46として90°ハイブリッドカプラ(hybrid coupler)が設けられた構成を例示する図である。なお、この図5に示すアンテナ18、送信アンプ24、及び送受信分離部26以外の構成については図2に示すものと同様であり、図5においては省略している。また、各部に示す構成に関して、前述した図2に示すものと共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。この図5に示す構成では、前記送信アンプ24と送受信分離部26との間の信号伝達経路に第1の移相部44としての第1の90°ハイブリッドカプラ72が、その送受信分離部26の出力側に第2の移相部46及び受信信号合成部として機能する第2の90°ハイブリッドカプラ74がそれぞれ設けられている。上記第1の90°ハイブリッドカプラ72は、前記送信アンプ24から供給される信号を前記送受信分離部26a、26bへ分配すると共に、その送受信分離部26bへ供給される信号の位相を送受信分離部26aへ供給される信号に対して90°異なるものとする(好適には、遅延させる)、分配器及び移相器の機能を兼ね備えたものである。また、上記第2の90°ハイブリッドカプラ74は、前記送受信分離部26bから入力される信号の位相を送受信分離部26aから入力される信号に対して90°異なるものとする(好適には、遅延させる)と共に、前記送受信分離部26a、26bからそれぞれ入力される信号を合波する、移相器及び合波器の機能を兼ね備えたものである。なお、この第2のハイブリッドカプラ74により合波された信号は、前記直交復調部30へ入力されて前述のように直交復調される。斯かる構成によれば、前記アンテナ18a及び送受信分離部26aに対応して設けられた前記送信アンプ24から第2の90°ハイブリッドカプラ74までの信号伝達経路を通る信号に対して、前記アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた前記送信アンプ24から第2の90°ハイブリッドカプラ74までの信号伝達経路を通る信号の位相が、その第2の90°ハイブリッドカプラ74における合波に際して180°反転したものとなり、それらの信号が第2の90°ハイブリッドカプラ74において合成されることで相殺される。すなわち、前記送受信分離部26を通過して受信系へ入力される回り込み信号及び前記アンテナ18のインピーダンスミスマッチによる反射により受信系へ入力される回り込み信号が前記第2の90°ハイブリッドカプラ74における合波により可及的に減衰させられる。
【0031】
ここで、上述した図5に示すように前記送信アンプ24から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象である無線タグ14から返信される返信信号を受信する2つのアンテナ18a、18bを備えた構成において、好適には、それら2つのアンテナ18a、18b相互間の距離は、前記無線タグ14との間の通信に用いられる電波の波長すなわち前記搬送波出力部22から出力される搬送波の波長の1/4となるように配設される。斯かる構成によれば、特にアンテナ18a、18bがダイポールアンテナ等の棒状(線状)アンテナであり、且つそれらアンテナ18a、18b相互間における前記送信アンプ24から受信信号合成部28(第2の90°ハイブリッドカプラ74)までの信号伝達経路の電気長の差が位相90°に相当するものである場合に、それらのアンテナ18a、18bが並んだ方向に送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性が向くため、前記無線タグ14との間で好適な通信を実現することができる。
【0032】
図6は、2個のアンテナ18a、18bを備えた無線タグ通信装置12において、前記第1の移相部44及び第2の移相部46として90°ハイブリッドカプラが設けられた構成の他の一例を示す図である。なお、この図6に示すアンテナ18、送信アンプ24、及び送受信分離部26以外の構成については図2に示すものと同様であり、図6においては省略している。また、各部に示す構成に関して、前述した図2及び図5に示すものと共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。この図6に示す構成では、各アンテナ18a、18bとそれらアンテナ18a、18bに対応する送受信分離部26a、26bとの間の信号伝達経路に、斯かる信号伝達経路をそれぞれ個別に開閉する回路切換部76a、76b(以下、特に区別しない場合には単に回路切換部76と称する)が設けられている。また、各回路切換部76におけるアンテナ18が接続された側の端子aとは逆の端子bは終端抵抗78a、78b(以下、特に区別しない場合には単に終端抵抗78と称する)を介して接地されている。これら回路切換部76は、前記DSP16から供給される制御信号に応じて、前記送受信分離部26に対する前記アンテナ18への接続(端子a側の接続)及び終端抵抗78へ接続(端子b側の接続)の何れか一方の接続を選択的に成立させるものであり、これにより、前記アンテナ18a、18bのうち何れかを用いて前記無線タグ14との間の通信を行う所謂ダイバーシティアンテナを備えた無線タグ通信装置12が実現される。斯かる構成において、前記無線タグ14との間の通信に用いるアンテナ18に対応する回路切換部76のみそのアンテナ18側の端子aに接続させ、斯かる通信に用いない他のアンテナ18に対応する回路切換部76は終端抵抗78側の端子bに接続させることで、そのダイバーシティアンテナを構成する複数のアンテナ18同士で特にアンテナ間の飛び込みに起因する送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。
【0033】
図7は、2個のアンテナ18a、18bを備えた無線タグ通信装置12において、前記第1の移相部44及び第2の移相部46に加えて第3の移相部80が設けられた構成を例示する図である。なお、この図7に示すアンテナ18、送信アンプ24、及び送受信分離部26以外の構成については図2に示すものと同様であり、図7においては省略している。また、各部に示す構成に関して、前述した図2に示すものと共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。この図7に示す構成では、前記第1の移相部44及び第2の移相部46が設けられた信号伝達経路に対応するアンテナ18bとは異なるアンテナ18aに対応して、そのアンテナ18aに対応する送受信部26aよりもそのアンテナ18a側の信号伝達経路に第3の移相部80が設けられている。この第3の移相部80は、前記送受信分離部26からアンテナ18までの信号伝達経路に関して、前記アンテナ18a及び送受信分離部26aに対応して設けられた経路の電気長と、アンテナ18b及び送受信分離部26bに対応して設けられた経路の電気長とを調整するために設けられたものであり、前記第1の移相部44及び第2の移相部46と同様に、よく知られたディレイラインやLC回路における遅延回路等が好適に用いられる。また、斯かる第3の移相部80の移相量は、好適には、前記第1の移相部44及び第2の移相部46と等しいものとされる。斯かる構成によれば、前記送信アンプ24からアンテナ18までの信号伝達経路及びアンテナ18から受信信号合成部28までの信号伝達経路に関して、前記アンテナ18aに対応する経路の電気長とアンテナ18bに対応する経路の電気長とをそれぞれ等しくすることができ、特にアンテナ18のVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:定在波比)が比較的低い場合において、前記アンテナ18a、18bの送信指向性及び受信指向性を前面に向けることができる。
【0034】
このように、本実施例によれば、所定の送信信号を出力させる送信信号出力部として機能する送信アンプ24及び送信データ出力部50と、その送信アンプ24から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象である無線タグ14から返信される返信信号を受信する複数のアンテナ18と、各アンテナ18に対応して前記送信アンプ24から出力される送信信号とそのアンテナ18により受信された受信信号とを分離する複数の送受信分離部26と、前記複数のアンテナ18によりそれぞれ受信された受信信号を合成する受信信号合成部28と、前記複数のアンテナ18のうち少なくとも1つのアンテナ18に対応して前記送信アンプ24と送受信分離部26との間の信号伝達経路に設けられた第1の移相部44と、その送受信分離部26と受信信号合成部28との間の信号伝達経路に設けられた第2の移相部46とを、備えたものであることから、前記第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれの移相量を適宜設定することで、特別な構成を設けることなく前記複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。すなわち、簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善する無線通信装置を提供することができる。
【0035】
また、所定のアンテナ18に対応して設けられた前記第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれにおける移相量は等しいものであるため、送信指向性及び受信指向性を整合させつつ、前記複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制するために、前記第1の移相部44及び第2の移相部46それぞれの移相量を適宜設定することができる。
【0036】
また、前記送信アンプ24から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象である無線タグ14から返信される返信信号を受信するn個のアンテナ18を備えたものであり、それらn個のアンテナ18のうちk番目のアンテナ18に備えられた前記第1の移相部44及び第2の移相部46の移相量は、(k−1)×360/2nで表される値であるため、前記複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。
【0037】
また、前記移相部44、46、80としてディレイラインを備えたものであるため、前記複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を実用的且つ簡単な構成により抑制することができる。
【0038】
また、各アンテナ18とそれらアンテナ18に対応する送受信分離部26との間の信号伝達経路をそれぞれ個別に開閉する回路切換部76を備え、その回路切換部76において前記アンテナ18への接続及び終端抵抗78へ接続の何れか一方の接続を選択可能としたものであるため、所謂ダイバーシティアンテナを備えた無線通信装置において、そのダイバーシティアンテナを構成する複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を効果的に抑制することができる。
【0039】
また、前記第1の移相部44及び第2の移相部46が設けられたアンテナ18とは異なるアンテナ18に対応して、そのアンテナ18に対応する送受信分離部26よりもそのアンテナ18側の信号伝達経路に第3の移相部80を備えたものであるため、前記複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を更に効果的に抑制することができる。
【0040】
また、前記送信アンプ24から出力される送信信号を送信すると共にその送信信号に応じて通信対象である無線タグ14から返信される返信信号を受信する2つのアンテナ18を備えたものであり、それら2つのアンテナ18相互間の距離が前記無線タグ14との間の通信に用いられる電波の波長の1/4となるように配設されたものであるため、前記送信信号の送信指向性を2つのアンテナ18が並んだ方向に向けることができる。
【0041】
また、前記移相部として90°ハイブリッドカプラ72、74を備えたものであるため、前記2つのアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を実用的且つ簡単な構成により抑制することができる。
【0042】
また、本実施例の無線通信装置は、通信対象である無線タグ14に向けて前記複数のアンテナ18のうち少なくとも1つのアンテナ18により所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグ14から返信される返信信号を前記複数のアンテナ18のうち少なくとも1つのアンテナ18により受信することで前記無線タグ14との間で情報の通信を行う無線タグ通信装置12であるため、送信側からの回り込み信号がSN比に影響を与え易い無線タグ通信装置12において、簡単な構成により受信信号に含まれる送信側からの回り込み信号を好適に除去しつつSN比を改善することができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0044】
例えば、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12は、前記第1の移相部44及び第2の移相部46等を介して、特別な構成を設けることなく前記複数のアンテナ18同士で送信側からの回り込み信号を抑制するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば前述した図2に示す構成に加えて、前記搬送波出力部22から出力(分配)される搬送波の位相及び/又は振幅を制御してキャンセル信号を生成し、そのキャンセル信号を前記受信信号合成部28から出力される合成信号に足し合わせる構成を備えたものであっても構わない。斯かる構成によれば、前記アンテナ18相互間の飛び込みに起因する送信側からの回り込み信号を特に効率的に抑制できるという利点がある。
【0045】
また、前述の実施例において、前記受信信号合成部28は、各アンテナ18から送受信分離部26等を介して入力されるアナログ信号としての受信信号を合成するものであったが、それら受信信号をディジタル信号に変換していったんメモリ部に記憶させた後、そのメモリ部に記憶された受信信号を読み出して合成するものであってもよく、その場合にはディジタル信号としての受信信号を合波するものとされる。このように、前記無線タグ通信装置12に備えられた各部の構成は、ディジタル信号を処理するものであっても構わない。
【0046】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の無線通信装置が好適に適用される無線タグ通信システムを説明する図である。
【図2】本発明の無線通信装置の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図2の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図4】図2の無線タグ通信装置の送受信回路に備えられた第1の移相部及び第2の移相部の原理を説明する図である。
【図5】図2の無線タグ通信装置の変形例である、2個のアンテナを備えた構成において、第1の移相部及び第2の移相部として90°ハイブリッドカプラが設けられた構成を例示する図である。
【図6】図2の無線タグ通信装置の変形例である、2個のアンテナを備えた構成において、第1の移相部及び第2の移相部として90°ハイブリッドカプラが設けられた他の構成を例示する図である。
【図7】図2の無線タグ通信装置の変形例である、2個のアンテナを備えた構成において、第1の移相部及び第2の移相部に加えて第3の移相部が設けられた構成を例示する図である。
【符号の説明】
【0048】
12:無線タグ通信装置(無線通信装置)
14:無線タグ
18:アンテナ
24:送信アンプ
26:送受信分離部
28:受信信号合成部
44:第1の移相部
46:第2の移相部
50:送信データ出力部
72:第1の90°ハイブリッドカプラ(第1の移相部)
74:第2の90°ハイブリッドカプラ(第2の移相部、受信信号合成部)
76:回路切換部
78:終端抵抗
80:第3の移相部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の送信信号を出力させる送信信号出力部と、該送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共に該送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信する複数のアンテナと、各アンテナに対応して前記送信信号出力部から出力される送信信号と該アンテナにより受信された受信信号とを分離する複数の送受信分離部と、前記複数のアンテナによりそれぞれ受信された受信信号を合成する受信信号合成部とを備え、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナにより前記通信対象との間で情報の通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナに対応して前記送信信号出力部と送受信分離部との間の信号伝達経路に設けられた第1の移相部と、
該送受信分離部と受信信号合成部との間の信号伝達経路に設けられた第2の移相部と
を、備えたものであることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
所定のアンテナに対応して設けられた前記第1の移相部及び第2の移相部それぞれにおける移相量は等しいものである請求項1の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共に該送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信するn個のアンテナを備えたものであり、それらn個のアンテナのうちk番目のアンテナに備えられた前記第1の移相部及び第2の移相部の移相量は、(k−1)×360/2nで表される値である請求項2の無線通信装置。
【請求項4】
前記移相部としてディレイラインを備えたものである請求項1から3の何れかの無線通信装置。
【請求項5】
各アンテナとそれらアンテナに対応する送受信分離部との間の信号伝達経路をそれぞれ個別に開閉する回路切換部を備え、該回路切換部において前記アンテナへの接続及び終端抵抗へ接続の何れか一方の接続を選択可能としたものである請求項1から4の何れかの無線通信装置。
【請求項6】
前記第1の移相部及び第2の移相部が設けられたアンテナとは異なるアンテナに対応して、該アンテナに対応する送受信分離部よりも該アンテナ側の信号伝達経路に第3の移相部を備えたものである請求項1から5の何れかの無線通信装置。
【請求項7】
前記送信信号出力部から出力される送信信号を送信すると共に該送信信号に応じて通信対象から返信される返信信号を受信する2つのアンテナを備えたものであり、それら2つのアンテナ相互間の距離が前記通信対象との間の通信に用いられる電波の波長の1/4となるように配設されたものである請求項1から6の何れかの無線通信装置。
【請求項8】
前記移相部として90°ハイブリッドカプラを備えたものである請求項7の無線通信装置。
【請求項9】
前記無線通信装置は、通信対象である無線タグに向けて前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナにより所定の送信信号を送信すると共に、該送信信号に応答して前記無線タグから返信される返信信号を前記複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナにより受信することで前記無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置である請求項1から8の何れかの無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−258886(P2008−258886A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98296(P2007−98296)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】