説明

無線通信装置

【課題】2種類の無線通信システムを備え、これらによる信号の同時待ち受けが可能でありながらも、必要な部品点数や伝送路における電力損失を、極力低減させることが容易となる無線通信装置を提供する。
【解決手段】所定の無線通信方式によって通信される信号(第1信号)の送受信を行う第1無線通信システム、および、他の無線通信方式によって通信される信号(第2信号)の送受信を行う第2無線通信システムを備えた無線通信装置であって、第1接続端子、第2接続端子、および第3接続端子を有し、これらの端子のうちの何れかとアンテナとを、切替可能に接続する切替装置を備え、第1接続端子は、受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に、第2接続端子は、送信がなされるべき第1信号の伝送路に、第3接続端子は、送信がなされるべき第2信号の伝送路に、接続されている無線通信装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信機能および無線受信機能を備えた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、携帯電話機やスマートフォン等の無線通信機能を搭載した無線通信機器には、1台に複数の無線通信システムが採用されていることが多い。その中でも、通信周波数が2.4GHz帯である、無線LANやBluetooth(登録商標)などの無線通信システムは、使用に際して免許不要であり、取り扱いが容易であることから、一般的に使用されている。
【0003】
しかしながら、無線LANとBluetoothなどの同一周波数帯を利用する無線通信システムが同時に動作すると、周波数帯が同一であるため、帯域制限フィルター等を用いて他方の無線通信システムの信号を除去することは容易ではない。そのため、互いに妨害波として干渉し合い、それぞれの通信性能が劣化するという問題を抱えている。
【0004】
特に、携帯電話機等の小型の無線通信機器内部に、複数の無線通信システムが存在する場合、無線通信システムごとに備えられたアンテナ素子間の物理的な距離が短くなる。そのため、一方の無線通信システムのアンテナ素子から送信された信号(電波)が、他方の無線通信システムのアンテナ素子で受信され、妨害波として干渉しやすくなっている。
【0005】
このような干渉の低減に配慮された通信装置としては、例えば図2に示す形態(以下、「第1従来形態」と称する)のものが挙げられる。当該通信装置51は、各アンテナ入出力端子(62a、62b)に、無線LAN用のアンテナ素子61aと、Bluetooth用のアンテナ素子61bが接続されている。また各アンテナ素子(61a、61b)間の物理的な距離は、互いの干渉が無視できる程度に大きく設計されている。
【0006】
そして無線LANの信号待ち受け(信号の受信が可能である状態で待機すること)を行う場合には、制御回路58は、無線LANの信号処理部52に設けられている受信アンプ回路53aとアンテナ素子61aが接続されるように、SPDT[Single Pole Double Throw:単極双投]スイッチ回路63を制御する。また無線LANの信号送信を行う場合には、制御回路58は、送信アンプ回路53bとアンテナ素子61aが接続されるように、SPDTスイッチ回路63を制御する。
【0007】
一方、Bluetoothの信号待ち受けを行う場合には、制御回路58は、Bluetoothの信号処理部55に設けられている受信アンプ回路56aとアンテナ素子61bが接続されるように、SPDTスイッチ回路56cを制御する。またBluetoothの信号送信を行う場合には、制御回路58は、送信アンプ回路56bとアンテナ素子61bが接続されるように、SPDTスイッチ回路56cを制御する。
【0008】
このような第1従来形態の通信装置によれば、無線LANとBluetoothの何れの通信方式によっても信号の送受信が可能であるが、少なくとも2個のアンテナ素子が必要となるために部品点数が増加し、製造コストを抑えることが難しくなる。またアンテナ素子間の距離を十分に確保する必要があるため、製品の小型化を図ることが難しくなる。
【0009】
この点、図3に示す形態(以下、「第2従来形態」と称する)の通信装置(特許文献1に開示されているものと同等)によれば、設けられているアンテナ素子は1個のみであるため、上述した第1従来形態の問題点は解消される。当該通信装置51では、アンテナ61側から入力される電力を二つに分配する電力分配回路64が設けられている。
【0010】
そして無線LANの信号待ち受けを行う場合には、制御回路58は、無線LANの信号処理部52に設けられている受信アンプ回路53aと電力分配回路64が接続されるように、SPDTスイッチ回路53cを制御する。また無線LANの信号送信を行う場合には、制御回路58は、送信アンプ回路53bと電力分配回路64が接続されるように、SPDTスイッチ回路53cを制御する。
【0011】
一方、Bluetoothの信号待ち受けを行う場合には、制御回路58は、Bluetoothの信号処理部55に設けられている受信アンプ回路56aと電力分配回路64が接続されるように、SPDTスイッチ回路56cを制御する。またBluetoothの信号送信を行う場合には、制御回路58は、送信アンプ回路56bと電力分配回路64が接続されるように、SPDTスイッチ回路56cを制御する。
【0012】
また電力分配回路64が設けられることにより、両無線通信システム間に、所定の(一般的に15dB程度の)電気的なアイソレーションを確保することができる。そのため、両無線通信システムにおいてアンテナ素子61が共用されても、無線通信システム同士の不要な干渉を極力軽減させることが可能となっている。
【0013】
また、図4に示す形態(以下、「第3従来形態」と称する)の通信装置(特許文献2に開示されているものと同等)によっても、設けられるアンテナ素子を1個のみとすることが可能である。本形態では、3個のSPDTスイッチ回路(56c、65、66)が設けられている。
【0014】
この第3従来形態において無線LANの信号待ち受けを行う場合には、制御回路58は、無線LANの信号処理部52に設けられている受信アンプ回路53aとアンテナ素子61が接続されるように、各SPDTスイッチ回路(65、66)を制御する。また無線LANの信号送信を行う場合には、制御回路58は、送信アンプ回路53bとアンテナ素子61が接続されるように、各SPDTスイッチ回路(65、66)を制御する。
【0015】
一方、Bluetoothの信号待ち受けを行う場合には、制御回路58は、Bluetoothの信号処理部55に設けられている受信アンプ回路56aとアンテナ素子61が接続されるように、各SPDTスイッチ回路(56c、65、66)を制御する。またBluetoothの信号送信を行う場合には、制御回路58は、送信アンプ回路56bとアンテナ素子61が接続されるように、各SPDTスイッチ回路(56c、65、66)を制御する。
【0016】
また第3従来形態における各SPDTスイッチ回路(65、66)を、一つのSP3T[Single Pole 3 Throw:単極3投]スイッチ回路67で代用した形態(以下、「第4従来形態」と称する)の通信装置の構成を、図5に示す。本形態においても、制御回路58が、SP3Tスイッチ回路67やSPDTスイッチ回路56cを適切に制御することにより、各無線通信システムによる信号の送受信が可能となる。
【特許文献1】特開2007−36852号公報
【特許文献2】特開2007−228021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の通り、第2従来形態から第4従来形態の各通信装置によれば、第1従来形態の通信装置のようにアンテナ素子を複数設けることなく(つまり、部品点数をあまり増やすことなく)、2種類の無線通信システムによる信号の送受信が可能となる。
【0018】
しかしながら第2従来形態の通信装置によれば、無線LANに係る送受信信号とBluetoothに係る送受信信号との共通の信号伝送路(以下、単に「伝送路」と称することがある)には、電力損失が比較的大きな電力分配回路が介在することになる。そのため、各無線通信システムにおける送信と受信の双方において電力損失が大きくなり、信号の劣化や通信可能距離の低下などを招くおそれがある。なお、電力分配回路での損失は、2分岐回路で均等に電力が分配される場合、理想的に考えても3dB程度となり、比較的大きな信号劣化を伴うものである。
【0019】
なお送信電力を大きくするために、送信アンプ回路における増幅度を大きくし、伝送路における電力損失を補完することは可能である。しかし送信アンプ回路は消費電力が大きく、また発熱量も多いために、増幅度を大きくし過ぎると、通信装置ひいては通信装置を備えた通信機器の発熱が大きくなる。そのため、通信装置や通信機器における消費電力の増大や、製品寿命の低下を招くおそれがある。また送信アンプ回路を追加配置することになると、通信装置内にその分のスペースを確保する必要があるため、製品の小型化が妨げられる。
【0020】
また第3従来形態や第4従来形態の通信装置によれば、一方の無線通信システムの信号待ち受け時においては、他方の無線通信システムに係る受信アンプ回路は、アンテナと接続されないようになる。そのため、両方の無線通信システムにおいて、同時に信号待ち受けを行うこと(同時待ち受け)は不可能となっている。
【0021】
そのため、両方の無線通信システムによる信号の待ち受けを、できるだけ並行して実行させるためには、一方の無線通信システムにおける信号の待ち受け状態と、他方の無線通信システムにおける信号の待ち受け状態が、交互に切替えられる必要がある。しかしこのような切替がなされると、連続的な信号受信が阻害されるため、通信の質が劣化するおそれもある。また通信装置における処理負担も増大することになる。
【0022】
なお第1〜第4従来形態の各通信装置によると、SPDTスイッチ回路やSP3Tスイッチ回路といった、信号伝送路を切替えるためのスイッチ回路が多く備えられているため、回路構成が複雑となりやすい。またこのことは、通信装置の小型化を阻害する要因となる。
【0023】
本発明は上述した問題点に鑑み、2種類の無線通信システムを備え、これらによる信号の同時待ち受けが可能でありながらも、必要な部品点数や伝送路における電力損失を、極力低減させることが容易となる無線通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明に係る無線通信装置は、所定の無線通信方式によって通信される信号(「第1信号」とする)の送受信を行う第1無線通信システム、および、他の無線通信方式によって通信される信号(「第2信号」とする)の送受信を行う第2無線通信システムを備えた無線通信装置であって、第1接続端子、第2接続端子、および第3接続端子を有し、これらの端子のうちの何れかとアンテナ素子とを、切替可能に接続する切替装置を備え、該第1接続端子は、受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に、該第2接続端子は、送信がなされるべき第1信号の伝送路に、該第3接続端子は、送信がなされるべき第2信号の伝送路に、それぞれ接続されている構成(第1の構成)とする。
【0025】
本構成によれば、アンテナ素子を受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に接続させた状態、アンテナ素子を送信がなされるべき第1信号の伝送路に接続させた状態、およびアンテナ素子を送信がなされるべき第2信号の伝送路に接続させた状態、の何れかに、切替装置によって切替えられる。そのため、アンテナ素子を2種類の無線通信システムに共用させることができ、ひいては無線通信システムごとに別々にアンテナ素子を設ける必要が無く、必要な部品点数を極力抑えることが可能である。
【0026】
また本構成によれば、アンテナ素子を受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に接続させた状態とすることが可能であるため、第1信号と第2信号の同時待ち受けが可能となる。更に、例えば第1信号および第2信号の伝送路に電力分配回路が設けられたとしても、送信がなされるべき第1信号の伝送路や、送信がなされるべき第2信号の伝送路に、当該電力分配回路を介在させないようにすることが容易である。そのため、伝送路における電力損失を、極力低減させることが容易となる。
【0027】
また上記第1の構成において、前記第1接続端子の後段側には、入力された電力を分配して出力する、電力分配回路が設けられている構成(第2の構成)としてもよい。
【0028】
本構成によれば、受信された第1信号を処理する回路と、受信された第2信号を処理する回路が別個に備えられていても、それぞれの回路に、受信された第1信号または第2信号を分配することが可能となる。
【0029】
また上記第2の構成において、受信された第1信号の入力に用いられる第1入力端子と、送信すべき第1信号の出力に用いられる第1出力端子を別個に有し、第1信号についての変調および復調処理を行う、第1信号処理回路と、受信された第2信号の入力に用いられる第2入力端子と、送信すべき第2信号の出力に用いられる第2出力端子を別個に有し、第2信号についての変調および復調処理を行う、第2信号処理回路と、を備え、該第1入力端子は、前記電力分配回路の分配先の一方に、該第2入力端子は、前記電力分配回路の分配先の他方に、該第1出力端子は、前記第2接続端子に、該第2出力端子は、前記第3接続端子に、それぞれ接続されている構成(第3の構成)としてもよい。
【0030】
本構成によれば、第1信号と第2信号の双方について、受信された信号の復調や送信すべき信号の変調を適切に実行させることが可能となる。
【0031】
また上記第3の構成において、前記第1接続端子と前記電力分配回路との間には、電力を増幅させる増幅回路が設けられており、該増幅回路は、該増幅の実行/不実行が切替可能となっている構成(第4の構成)としてもよい。
【0032】
本構成によれば、電力分配回路における電力損失を補い、受信信号の強度を適切に維持させることが可能となる。また信号の受信時には増幅を実行させる一方、送信時には増幅を不実行とすることで、受信用の伝送路と送信用の伝送路とのアイソレーションを高めることが可能となる。そのため、送信信号が受信用の伝送路に入り込むといった不具合を、極力防ぐことが可能となる。なお増幅回路は、第1信号と第2信号との共通の受信用伝送路に配置されるため、それぞれの信号の受信用伝送路に別個に配置されるような場合に比べて、部品点数を少なくすることが可能となる。
【0033】
また上記第2から第4の何れかの構成において、前記電力分配回路における電力の分配率は、第1無線通信システムと第2無線通信システムにおける、必要な受信強度の比に応じて設定されている構成(第5の構成)としてもよい。本構成によれば、電力分配回路による電力の分配を、効率の良いものとすることが可能となる。
【0034】
また上記第1から第5の何れかの構成において、第1信号の待ち受けと同時に、第2信号の待ち受けも実行される構成(第6の構成)としてもよい。本構成によれば、第1信号と第2信号の何れの信号が到来しても、当該信号を適切に受信することが可能となる。また、例えば第1信号の待ち受けと第2信号の待ち受けが交互に実行されるものに比べて、通信の質を良好に維持させることが容易となる。
【0035】
また上記第1から第6の何れかの構成において、前記切替装置、前記電力分配回路、前記増幅回路、前記第1信号処理回路、および前記第2信号処理回路の各々が、同一基板上に配置されている構成(第7の構成)としてもよく、1つの集積回路に配置されている構成(第8の構成)としてもよい。本構成によれば、無線通信装置の小型化を図ることが容易となる。
【0036】
また上記第1から第8の何れかの構成としてより具体的には、前記第1無線通信システムと前記第2無線通信システムは、互いに同一の周波数帯により、無線通信を行う構成(第9の構成)としてもよく、前記第1無線通信システムは、無線LANの方式によって無線通信を行い、前記第2無線通信システムは、Bluetoothの方式によって無線通信を行う構成(第10の構成)としてもよい。
【発明の効果】
【0037】
上述した通り、本発明に係る無線通信装置によれば、アンテナ素子を受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に接続させた状態、アンテナ素子を送信がなされるべき第1信号の伝送路に接続させた状態、およびアンテナ素子を送信がなされるべき第2信号の伝送路に接続させた状態、の何れかに、切替装置によって切替えられる。そのため、アンテナ素子を2種類の無線通信システムに共用させることができ、ひいては無線通信システムごとに別々にアンテナ素子を設ける必要が無く、必要な部品点数を極力抑えることが可能である。
【0038】
また本構成によれば、アンテナ素子を受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に接続させた状態とすることが可能であるため、第1信号と第2信号の同時待ち受けが可能となる。更に、例えば第1信号および第2信号の伝送路に電力分配回路が設けられたとしても、送信がなされるべき第1信号の伝送路や、送信がなされるべき第2信号の伝送路に、当該電力分配回路を介在させないようにすることが容易である。そのため、伝送路における電力損失を、極力低減させることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態について、無線通信装置(高周波通信装置)を例に挙げて、以下に説明する。当該無線通信装置は、無線LANの方式によって信号の送受信を行う無線LANシステムと、Bluetoothの方式によって信号の送受信を行うBluetoothシステムの双方を備えている。なおここでの「システム」は、通信を実行するための各装置からなる体系を指す。
【0040】
また無線LANおよびBluetoothは、一般的に使用されている2.4GHz帯を用いた通信方式として知られている。また本実施形態の無線通信装置は、例えば携帯電話機やスマートフォンといった携帯型の通信端末をはじめ、各種の通信機器に適用され得る。
【0041】
当該無線通信装置の概略的な構成図を、図1に示す。本図に示すように、無線通信装置1は、無線LAN用信号処理部2、Bluetooth用信号処理部3、アンテナ入出力端子12、SP3Tスイッチ回路13、LNA[Low Noise Amplifier]14、電力分配回路15、および制御回路20などを備えている。
【0042】
無線LAN用信号処理部2は、無線LAN用RF回路16および無線LAN用BB/MAC回路18を備えており、無線LANシステムの中心的役割を果たす。無線LAN用BB/MAC回路18は、例えばICチップとして形成されており、無線LAN用RF回路16との間におけるベースバンド信号の送受や、無線LANシステムに関わる各種の情報処理などを行う。
【0043】
また無線LAN用RF回路16は、受信された信号の入力に用いられる第1入力端子16cと、送信すべき信号の出力に用いられる第1出力端子16dを別個に有している。また受信された信号を増幅させるための、LNAとして形成されている受信アンプ16aと、送信すべき信号を増幅させるための送信アンプ16bをも備えている。受信アンプ16aの入力側は第1入力端子16cに、送信アンプ16bの出力側は第1出力端子16dに、それぞれ接続されている。そして無線LAN用RF回路16は、受信された信号に対しては復調処理を、送信すべき信号に対しては変調処理を実行する。
【0044】
Bluetooth用信号処理部3は、Bluetooth用RF回路17およびBluetooth用BB/MAC回路19を備えており、Bluetoothシステムの中心的役割を果たす。またBluetooth用BB/MAC回路19は、例えばICチップとして形成されており、Bluetooth用RF回路17との間におけるベースバンド信号の送受や、Bluetoothシステムに関わる各種の情報処理などを行う。
【0045】
またBluetooth用RF回路17は、受信された信号の入力に用いられる第2入力端子17cと、送信すべき信号の出力に用いられる第2出力端子17dを別個に有している。また受信された信号を増幅させるための、LNAとして形成されている受信アンプ17aと、送信すべき信号を増幅させるための送信アンプ17bをも備えている。受信アンプ17aの入力側は第1入力端子17cに、送信アンプ17bの出力側は第1出力端子17dに、それぞれ接続されている。そしてBluetooth用RF回路17は、受信された信号に対しては復調処理を、送信すべき信号に対しては変調処理を実行する。
【0046】
またSP3Tスイッチ回路13は、一方側には単極の端子13aが、他方側には第1接続端子13b、第2接続端子13c、および第3接続端子13dの各々が設けられている。そして単極の端子13aが3個の端子(13b〜13d)の何れかに、切替可能に接続されるようになっている。
【0047】
また単極の端子13aは、アンテナ入出力端子12を介して、アンテナ素子11に接続されている。また第2接続端子13cは、第1出力端子16dに接続されており、第3接続端子13dは、第2出力端子17dに接続されている。なおSP3Tスイッチ回路13における接続の切替は、制御回路20の指示に応じて実行される。
【0048】
LNA14は、入力側が、SP3Tスイッチ回路13における第1接続端子13bに、出力側が、電力分配回路15の入力側に接続されている。これにより、入力された電力を所定の増幅率の分だけ増幅させて出力する。なおLNA14においては、増幅の実行/不実行が、制御回路20の指示に応じて切替可能となっている。
【0049】
電力分配回路15は、LNA14の後段側に設けられており、出力側が、第1入力端子16cと第2入力端子17cに接続されている。これにより電力分配回路15は、LNA14から入力された電力(受信信号)を、二つの分配先(第1入力端子16cと第2入力端子17c)に分配する。なお、第1入力端子16cが、電力分配回路15の分配先の一方に、第2入力端子17cが、電力分配回路15の分配先の他方に、それぞれ接続されていると見ることもできる。また、第1接続端子13bから電力分配回路15までの伝送路は、無線LANシステムとBluetoothシステムにおける、共通の受信用伝送路と見ることもできる。
【0050】
なおこの電力分配回路15における電力の分配率は、各無線通信システムにおける、必要な(要求される)受信強度の比に応じて設定されている。例えば無線LANシステムにおいて必要な受信強度と、Bluetoothシステムにおいて必要な受信強度との比が、5:4であれば、電力分配回路15における電力の分配率も、5:4(無線LANシステム側:Bluetoothシステム側)に設定される。これにより、受信信号に係る電力の分配を効率の良いものとすることが可能となり、ひいては、LNA14における電力増幅率の設定値を極力小さくすることが可能となる。ただし電力分配回路15としては、電力を均等に分配するものや、電力の分配率が可変(調整可能)であるもの等が採用されていても構わない。
【0051】
制御回路20は、無線通信装置1において実行される各種処理を制御する。制御の対象となる処理には、SP3Tスイッチ回路13における接続の切替や、LNA14における増幅の実行/不実行の切替が含まれる。なお制御回路20の実装形態としては、無線通信装置1内部にCPU[Central Processing Unit]等として実装される形態の他、無線LAN用BB/MAC回路18やBluetooth用BB/MAC回路19の内部に実装される形態、無線通信装置1の外部に実装される形態などであっても構わない。
【0052】
以上に説明した構成の無線通信装置1によれば、無線LANの通信方式による信号送信、Bluetoothの通信方式による信号送信、および、双方の通信方式に係る信号の待ち受け(同時待ち受け)の各動作を、適宜切替えて実行することが可能である。より詳細には、次の通りである。
【0053】
まず無線LANの通信方式による信号送信が実行される場合には、制御回路20は、アンテナ素子11が送信アンプ16bへ接続されるようにSP3Tスイッチ回路13を制御するとともに、LNA14における増幅が不実行となるようにする。そしてこの状態で、無線LAN用BB/MAC回路18によって生成されたベースバンド信号(送信すべき信号)は、無線LAN用RF回路16に入力されて、無線LANの規格に従った形式の高周波信号に変換(変調)される。
【0054】
この高周波信号は、送信アンプ16bから、第1出力端子16d、SP3Tスイッチ回路13、およびアンテナ入出力端子12を含む伝送路を経て、アンテナ素子11に伝送され、電波として放出される。これにより、無線LANの通信方式による信号送信が達成される。
【0055】
またBluetoothの通信方式による信号送信が実行される場合には、制御回路20は、アンテナ素子11が送信アンプ17bへ接続されるようにSP3Tスイッチ回路13を制御するとともに、LNA14における増幅が不実行となるようにする。そしてこの状態で、Bluetooth用BB/MAC回路19によって生成されたベースバンド信号(送信すべき信号)は、Bluetooth用RF回路17に入力されて、Bluetoothの規格に従った形式の高周波信号に変換(変調)される。
【0056】
この高周波信号は、送信アンプ17bから、第2出力端子17d、SP3Tスイッチ回路13、およびアンテナ入出力端子12を含む伝送路を経て、アンテナ素子11に伝送され、電波として放出される。これにより、Bluetoothの通信方式による信号送信が達成される。
【0057】
また双方の通信方式の信号待ち受けが実行される場合には、制御回路20は、アンテナ素子11がLNA14へ接続されるようにSP3Tスイッチ回路13を制御するとともに、LNA14における増幅が実行されるようにする。この状態では、外部から到来した高周波信号はアンテナ素子11によって受信され、アンテナ入出力端子12、SP3Tスイッチ回路13、LNA14、および電力分配回路15を含む伝送路を経て、それぞれの受信アンプ(16a、17a)に伝送される。
【0058】
そこで、無線LAN用RF回路16は、受信アンプ16aへ伝送されてきた無線LANの規格に従った高周波信号を、ベースバンド信号に変換(復調)して、無線LAN用BB/MAC回路18に伝送する。また、Bluetooth用RF回路17は、受信アンプ17aへ伝送されてきたBluetoothの規格に従った高周波信号を、ベースバンド信号に変換(復調)して、Bluetooth用BB/MAC回路19に伝送する。これにより、無線LANとBluetoothの何れに係る高周波信号が到来した場合であっても、無線通信装置1は、当該高周波信号は適切に受信される。つまり、双方の通信方式に係る信号の同時待ち受けが実行されることになる。
【0059】
また上述したように、制御回路20は、信号の待ち受けが実行される時にはLNA14における増幅が実行されるようにする一方、それ以外の時(信号送信時など)には、増幅が不実行となるように、LNAを制御する。これにより、受信用の伝送路と送信用の伝送路とのアイソレーションが高められ、送信信号が受信用の伝送路に入り込むといった不具合を、極力防ぐことが可能となっている。
【0060】
また信号の待ち受け時以外には増幅が不実行となっているため、増幅が常時実行される場合等に比べて、省電力を図ることも可能となっている。また更に、LNA14は、無線LANによる受信信号とBluetoothによる受信信号の、共通の受信用伝送路に配置されているため、それぞれの無線通信システムについて別個にLNAが配置されるような場合に比べて、部品点数を少なくすることが可能となっている。
【0061】
ここで、必要な部品点数、伝送路における電力損失、および信号の同時待ち受けの可否の各観点から、本実施形態に係る無線通信装置1と、先述した第1従来形態から第4従来形態(図2から図5)の各々に係る従来の通信装置とを比較した場合の優劣について、以下に説明する。
【0062】
まず通信装置に必要なアンテナ素子の個数については、本実施形態では1個であるのに対して、第1従来形態では2個となっている。このように本実施形態では、第1従来形態の通信装置に比べて、必要な部品点数が少なくなっており、製造コストを抑えることが比較的容易となっている。なお、通信装置に必要なスイッチ回路(SPDTまたはSP3T)の個数については、本実施形態では1個であるのに対して、第1従来形態と第4従来形態では2個、第2従来形態と第3従来形態では3個となっている。このように本実施形態は、必要なスイッチ回路が比較的少なくなっており、この点からも、部品点数の低減において有利である。
【0063】
また、SP3Tスイッチ回路での電力損失をa[dB]、電力分配回路での電力損失をb[dB]、SPDTスイッチ回路での電力損失をc[dB]とすると、各通信装置についての信号の伝送路における電力損失は、表1に示す通りとなる。例えば本実施形態の場合、無線LANシステムまたはBluetoothシステムによる信号受信時では、伝送路にSP3Tスイッチ回路13と電力分配回路15が介在しているため、電力損失は表1に示すように、a+b[dB]である。ただし表1に示す値は、単位がdBであり、配線等における損失等を省略したもの(理想値)とする。
【表1】

【0064】
また本実施形態、第1従来形態、および第2従来形態では、無線LANシステムによる信号と、Bluetoothシステムによる信号を、同時に待ち受けることが可能となっているが、第3従来形態および第4従来形態では、このような同時待ち受けが不可能となっている。これらの形態においては、一方のシステムによる受信信号の伝送路がアンテナ素子に接続されている状態では、他方のシステムにおける受信信号の伝送路は、アンテナ素子に接続されていないからである。
【0065】
ここで、伝送路での電力損失、アンテナ素子の数、および信号の同時待ち受けの可否に関して、本実施形態と各従来形態を比較したものを表2に示す。なおSPDTスイッチ回路やSP3Tスイッチ回路による電力損失(先述したa[dB]やc[dB])は、通常1[dB]程度であり、また電力配分回路による電力損失(先述したb[dB])は、通所3[dB]程度である。そのため、表2における電力損失の値は、各形態を比較容易とするために、これらの値を代入して求めたものとしている。
【表2】

【0066】
表2に示す通り、信号の同時待ち受けが可能であり、かつ、必要なアンテナ素子の数が1個であるのは、本実施形態と第2従来形態のみである。またこれらのうち、伝送路での電力損失がより小さいのは、本実施形態であるといえる。つまり本実施形態は、信号の同時待ち受け機能の発揮、部品点数の低減、および伝送路での電力損失の低減の各観点から総合的に評価した場合、各従来形態に比べて優れているということができる。
【0067】
なお本実施形態は、第1従来形態と比べて、必要なアンテナ素子数は少ないが、信号受信時における伝送路での電力損失は大きくなっている。しかしながら本実施形態では、信号受信時における伝送路での電力損失を、LNA14で補うことが可能となっている。そのため、必要なアンテナ素子が少なくて済む本実施形態は、第1従来形態に比べて有利な構成であるといえる。
【0068】
また無線通信装置1に用いられている各部品、つまり、無線LAN用信号処理部2、Bluetooth用信号処理部3、SP3Tスイッチ回路13、LNA14、電力分配回路15、および制御回路20などの実装形態としては、例えば、同一基板上に全て配置されている形態としてもよく、一つの集積回路に全て配置されている形態としても良い。このような形態とすることで、無線通信装置1の小型化を図ることが容易となる。
【0069】
以上に説明した通り、無線通信装置1は、無線LANの通信方式によって通信される信号(第1信号)の送受信を行う無線LANシステム、および、Bluetoothの通信方式によって通信される信号(第2信号)の送受信を行うBluetoothシステムを備えている。また更に、第1接続端子13b、第2接続端子13c、および第3接続端子13dを有し、これらの端子のうちの何れかとアンテナ素子11とを、切替可能に接続するSP3Tスイッチ回路13(切替装置)を備えている。
【0070】
そしてこの第1接続端子13bは、受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に、第2接続端子13cは、送信がなされるべき第1信号の伝送路に、第3接続端子13dは、送信がなされるべき第2信号の伝送路に、それぞれ接続されている。また、第1接続端子13bの後段側には、入力された電力を分配して出力する、電力分配回路15が設けられている。
【0071】
そのため、アンテナ素子11を2種類の無線通信システムに共用させることができ、ひいては無線通信システムごとに別々にアンテナ素子を設ける必要が無く、必要な部品点数を極力抑えることが可能となっている。
【0072】
また、アンテナ素子11を受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に接続させた状態とすることが可能であるため、第1信号と第2信号の同時待ち受けが可能となっている。更に、受信信号に係る電力を増幅させるための電力分配回路15が設けられているが、送信がなされるべき第1信号の伝送路や、送信がなされるべき第2信号の伝送路には、電力分配回路15が介在しないようになっている。そのため、信号送信用の伝送路に電力分配回路が介在するものに比べて、伝送路における電力損失を低減させることが可能となっている。
【0073】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態としては、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、無線通信装置などの分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信装置の構成図である。
【図2】従来の無線通信装置における一形態(第1従来形態)の構成図である。
【図3】従来の無線通信装置における一形態(第2従来形態)の構成図である。
【図4】従来の無線通信装置における一形態(第3従来形態)の構成図である。
【図5】従来の無線通信装置における一形態(第4従来形態)の構成図である。
【符号の説明】
【0076】
1 無線通信装置
2 無線LAN用信号処理部(第1信号処理回路)
3 Bluetooth用信号処理部(第2信号処理回路)
11 アンテナ素子
12 アンテナ入出力端子
13 SP3Tスイッチ回路(切替装置)
13a 単極の端子
13b 第1接続端子
13c 第2接続端子
13d 第3接続端子
14 LNA(増幅回路)
15 電力分配回路
16 無線LAN用RF回路
16a 受信アンプ
16b 送信アンプ
16c 第1入力端子
16d 第1出力端子
17 Bluetooth用RF回路
17a 受信アンプ
17b 送信アンプ
17c 第2入力端子
17d 第2出力端子
18 無線LAN用BB/MAC回路
19 Bluetooth用BB/MAC回路
20 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の無線通信方式によって通信される信号(「第1信号」とする)の送受信を行う第1無線通信システム、および、他の無線通信方式によって通信される信号(「第2信号」とする)の送受信を行う第2無線通信システムを備えた無線通信装置であって、
第1接続端子、第2接続端子、および第3接続端子を有し、これらの端子のうちの何れかとアンテナ素子とを、切替可能に接続する切替装置を備え、
該第1接続端子は、受信のなされた第1信号および第2信号の伝送路に、
該第2接続端子は、送信がなされるべき第1信号の伝送路に、
該第3接続端子は、送信がなされるべき第2信号の伝送路に、
それぞれ接続されていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1接続端子の後段側には、
入力された電力を分配して出力する、電力分配回路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
受信された第1信号の入力に用いられる第1入力端子と、送信すべき第1信号の出力に用いられる第1出力端子を別個に有し、第1信号についての変調および復調処理を行う、第1信号処理回路と、
受信された第2信号の入力に用いられる第2入力端子と、送信すべき第2信号の出力に用いられる第2出力端子を別個に有し、第2信号についての変調および復調処理を行う、第2信号処理回路と、
を備え、
該第1入力端子は、前記電力分配回路の分配先の一方に、
該第2入力端子は、前記電力分配回路の分配先の他方に、
該第1出力端子は、前記第2接続端子に、
該第2出力端子は、前記第3接続端子に、
それぞれ接続されていることを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第1接続端子と前記電力分配回路との間には、電力を増幅させる増幅回路が設けられており、
該増幅回路は、
該増幅の実行/不実行が切替可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記電力分配回路における電力の分配率は、
第1無線通信システムと第2無線通信システムにおける、必要な受信強度の比に応じて設定されていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
第1信号の待ち受けと同時に、第2信号の待ち受けも実行することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記切替装置、前記電力分配回路、前記増幅回路、前記第1信号処理回路、および前記第2信号処理回路の各々は、同一基板上に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記切替装置、前記電力分配回路、前記増幅回路、前記第1信号処理回路、および前記第2信号処理回路の各々は、1つの集積回路に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記第1無線通信システムと前記第2無線通信システムは、
互いに同一の周波数帯により、無線通信を行うことを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記第1無線通信システムは、無線LANの方式によって無線通信を行い、
前記第2無線通信システムは、Bluetoothの方式によって無線通信を行うことを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−16732(P2010−16732A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176482(P2008−176482)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】