説明

無線通信装置

【課題】送信無線信号を測定する機能を有する構成において、回路構成の簡略化を図ることが可能な無線通信装置を提供する。
【解決手段】無線通信装置101は、無線送信部52から送信される無線信号を測定するために、分岐回路16から受けた無線信号を、供給される第1の測定用変換信号を用いて周波数の低い第1の測定信号に変換し、第1の測定信号を、供給される第2の測定用変換信号を用いてデジタル信号に変換するか、または供給される第2の測定用変換信号を用いてさらに周波数の低い第2の測定信号に変換し、第2の測定信号をデジタル信号に変換するための送信信号測定部55と、送信用変換信号および第2の測定用変換信号を用いて第1の測定用変換信号を生成するための変換信号生成部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関し、特に、送信無線信号を測定する機能を有する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置において、送信データを補正することで送信アンプ等の歪みを補償するDPD(Digital Pre Distortion)を行なう場合がある(たとえば、Lei Ding, "Digital predistortion of power amplifiers for wireless application", Thesis, Georgia institute of Technology, 2004(非特許文献1)参照)。
【0003】
この場合、無線通信装置では、たとえば、分岐された送信無線信号を受信処理してベースバンドのデジタル信号に変換することにより、当該送信無線信号を測定する送信信号測定部が設けられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lei Ding, "Digital predistortion of power amplifiers for wireless application", Thesis, Georgia institute of Technology, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DPDを採用する装置では、たとえば、無線送信部において、ベースバンド信号または中間周波信号を送信無線信号にアップコンバートする際に用いるVCO(電圧制御発振回路:Voltage Controlled Oscillator)を設けることに加えて、送信信号測定部において、当該送信無線信号をダウンコンバートする際に用いるVCOを設ける必要がある。
【0006】
このように、DPDを採用する装置では、送信系および測定系において少なくとも2つのVCOが必要となる。VCOは、他の部品と比べて大きく、かつ高価であることから、このようなVCOの搭載数を削減することにより、装置の回路構成の簡略化を図る技術が望まれる。
【0007】
しかしながら、非特許文献1には、このような問題点を解決するための構成は開示されていない。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、送信無線信号を測定する機能を有する構成において、回路構成の簡略化を図ることが可能な無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる無線通信装置は、送信すべき通信データを生成し、生成した上記通信データをアナログ信号に変換して出力するための送信データ処理部と、上記送信データ処理部から受けた上記アナログ信号を、供給される送信用変換信号を用いて無線信号に変換し、他の装置へ送信するための無線送信部とを備え、上記無線送信部は、上記無線信号を分岐して出力するための分岐回路を含み、さらに、上記無線信号を測定するために、上記分岐回路から受けた上記無線信号を、供給される第1の測定用変換信号を用いて周波数の低い第1の測定信号に変換し、上記第1の測定信号を、供給される第2の測定用変換信号を用いてデジタル信号に変換するか、または供給される第2の測定用変換信号を用いてさらに周波数の低い第2の測定信号に変換し、上記第2の測定信号をデジタル信号に変換するための送信信号測定部と、上記送信用変換信号および上記第2の測定用変換信号を用いて上記第1の測定用変換信号を生成するための変換信号生成部とを備える。
【0010】
このような構成により、送信信号測定部における第1の測定用変換信号を生成するためのVCOを不要としながら、送信用変換信号の周波数に応じて周波数が変化する第1の測定用変換信号を生成することが可能となる。したがって、装置の回路構成の簡略化を図ることができる。
【0011】
(2)好ましくは、上記変換信号生成部は、上記送信用変換信号と上記第2の測定用変換信号の分周信号とを乗算し、上記乗算により発生する信号のうち、イメージ周波数の信号を減衰させるための減衰回路を含む。
【0012】
このような構成により、上記乗算によって発生するイメージ周波数の信号によって妨害信号を含んだ第1の測定信号が出力され、送信無線信号の誤った測定結果が得られることを防ぐことができる。
【0013】
(3)より好ましくは、上記送信用変換信号の周波数は変更可能であり、上記送信用変換信号の周波数に応じて上記無線信号の周波数が変化し、上記減衰回路は、上記送信用変換信号の周波数に応じて減衰対象周波数を変更する。
【0014】
このような構成により、無線通信装置の送信周波数が設定変更可能な場合でも、当該送信周波数に追従して減衰回路の減衰対象周波数を変更することができるため、イメージ周波数の信号を適切に除去することができる。
【0015】
(4)より好ましくは、上記変換信号生成部は、上記送信用変換信号を生成し、供給される制御電圧に応じて上記送信用変換信号の周波数が変化する電圧制御発振回路を含み、上記減衰回路は、上記制御電圧に応じて上記減衰対象周波数を変更する。
【0016】
このような構成により、簡易な構成で送信用変換信号の周波数の情報を減衰回路に通知することができる。
【0017】
(5)より好ましくは、上記減衰回路は、供給される上記制御電圧に応じて容量値が変化する可変容量素子を含み、上記可変容量素子の容量値に応じて上記減衰対象周波数が変化する。
【0018】
このような構成により、減衰回路における容量を連続的に制御できるので、インダクタンスを離散的に制御する構成と比べて、減衰対象周波数をなめらかに制御することができる。
【0019】
(6)より好ましくは、上記減衰回路はトラップ回路である。
【0020】
このような構成により、イメージ周波数成分の信号のみを適切に減衰させることができる。
【0021】
(7)好ましくは、上記送信信号測定部は、上記分岐回路から受けた上記無線信号と上記第1の測定用変換信号とを乗算することにより、上記第1の測定信号を出力するための第1のミキサと、上記第2の測定用変換信号として供給されるクロックに基づいて、上記第1の測定信号をデジタル信号に変換するためのアナログ/デジタル変換器とを含み、上記変換信号生成部は、上記クロックを受けて分周するための分周回路と、上記分周回路によって分周された上記クロックと上記送信用変換信号とを乗算することにより、第1の測定用変換信号を出力するための第2のミキサと、上記第2のミキサから出力される上記第1の測定用変換信号に含まれるイメージ周波数の信号を減衰させ、減衰後の上記第1の測定用変換信号を上記第1のミキサへ出力するための減衰回路とを含む。
【0022】
このような構成により、簡易な構成で、送信信号測定部における第1の測定用変換信号を生成するためのVCOを不要としながら、送信用変換信号の周波数に応じて周波数が変化する第1の測定用変換信号を生成することが可能となる。また、送信無線信号の誤った測定結果が得られることを防ぐことができる。
【0023】
(8)好ましくは、上記送信データ処理部は、上記送信信号測定部によって変換された上記第2の測定信号に基づいて上記通信データを補正し、補正した上記通信データをアナログ信号に変換して出力する。
【0024】
このような構成により、VCOの搭載数を削減しながら、送信無線信号の測定結果を用いて通信データを補正し、無線通信装置の送信特性を向上させることができる。
【0025】
(9)好ましくは、上記送信信号測定部は、上記第1の測定信号を、供給される第3の測定用変換信号を用いてさらに周波数の低い第3の測定信号に変換し、上記第2の測定用変換信号として供給されるクロックに基づいて、上記第3の測定信号をデジタル信号に変換し、上記変換信号生成部は、上記送信用変換信号および上記クロックを用いて上記第1の測定用変換信号を生成し、上記送信用変換信号および上記第1の測定用変換信号を用いて上記第3の測定用変換信号を生成する。
【0026】
このような構成により、送信信号測定部における第1の測定用変換信号および第3の測定用変換信号を生成するための2つのVCOを不要としながら、送信用変換信号の周波数に応じて周波数が変化する第1の測定用変換信号を生成することが可能となる。したがって、装置の回路構成の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、送信無線信号を測定する機能を有する構成において、回路構成の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る変換信号生成部の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置における各信号の周波数配置を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の変換信号生成部における各信号の周波数配置を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の変換信号生成部における減衰回路の周波数特性を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る変換信号生成部の構成を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る変換信号生成部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【0031】
図1を参照して、無線通信システム301は、無線基地局装置(無線通信装置)101と、複数の無線端末装置(無線通信装置)201とを備える。
【0032】
無線基地局装置101は、通信データを生成して無線端末装置201へ送信する。この通信データには、上位ネットワークから受信したデータも含まれる。また、無線基地局装置101は、無線端末装置201から受信した通信データの全部または一部を上位ネットワークへ送信する。
【0033】
ここで、無線基地局装置101および無線端末装置201においてそれぞれ生成された通信データは、無線基地局装置101および無線端末装置201によってそれぞれ種々の信号処理が施され、最終的に無線信号に変換された後、無線端末装置201および無線基地局装置101へそれぞれ送信される。
【0034】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【0035】
図2を参照して、無線基地局装置(無線通信装置)101は、送信データ処理部51と、無線送信部52と、送信信号測定部55と、アンテナ18と、変換信号生成部17とを備える。送信データ処理部51は、通信データ生成部75と、データ補正部76と、デジタル/アナログ変換器(DAC)12とを含む。無線送信部52は、直交変調器13と、送信アンプ15と、カプラ(分岐回路)16とを含む。直交変調器13は、ミキサ14を含む。送信信号測定部55は、ミキサ19と、LPF20と、アナログ/デジタル変換器(ADC)21と、ベースバンド変換部71とを含む。信号処理部11は、たとえばDSP(Digital Signal Processor)であり、少なくとも通信データ生成部75、データ補正部76およびベースバンド変換部71の機能を実行する。
【0036】
変換信号生成部17は、送信データ処理部51、無線送信部52および送信信号測定部55を動作させるための各種変換信号を生成する。
【0037】
送信データ処理部51は、送信すべき通信データを生成し、生成した通信データをアナログ信号に変換して出力する。
【0038】
無線送信部52は、変換信号生成部17から供給される周波数fTXの送信用ローカル信号(送信用変換信号)に基づいて動作することにより、送信データ処理部51から受けたアナログ信号を無線信号に変換して無線端末装置201へ送信する。
【0039】
送信信号測定部55は、変換信号生成部17から供給される周波数fMTXの測定用ローカル信号(第1の測定用変換信号)および周波数fADCのクロック(第2の測定用変換信号)に基づいて動作することにより、無線送信部52から受けた無線信号を中間周波帯のIF信号に変換し、変換したIF信号をデジタル信号に変換する。
【0040】
すなわち、送信信号測定部55は、無線送信部52から無線端末装置201へ送信される送信無線信号を測定するために、カプラ16から受けた無線信号を、変換信号生成部17から供給される周波数fMTXの測定用ローカル信号を用いて周波数の低い中心周波数fIFのIF(Intermediate Frequency)信号(第1の測定信号)に変換する。そして、送信信号測定部55は、変換したIF信号を、変換信号生成部17から供給される周波数fADCのクロックを用いてデジタル信号に変換する。
【0041】
より詳細には、送信データ処理部51において、通信データ生成部75は、たとえば上位ネットワークから受信したデータを含む通信データを生成し、生成した通信データに対してたとえばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式におけるIFFT(Inverse First Fourier Transform)等の信号処理を行い、この信号処理後のデジタル信号をデータ補正部76へ出力する。
【0042】
デジタル/アナログ変換器12は、データ補正部76を介して通信データ生成部75から受けたデジタル信号を、変換信号生成部17から供給される周波数fDACのクロックを用いてアナログ信号に変換し、直交変調器13へ出力する。
【0043】
直交変調器13は、デジタル/アナログ変換器12から受けたベースバンドのアナログ信号と変換信号生成部17から受けた周波数fTXの送信用ローカル信号とをミキサ14によって乗算することにより、デジタル/アナログ変換器12から受けたアナログ信号をたとえば直交変調して無線信号すなわちRF(Radio Frequency)帯の信号に変換し、送信アンプ15へ出力する。
【0044】
送信アンプ15は、ミキサ14から受けた無線信号を増幅し、カプラ16へ出力する。
【0045】
カプラ16は、送信アンプ15から受けた無線信号を分岐して出力する。カプラ16によって分岐された一方の無線信号は、アンテナ18を介して無線端末装置201へ送信される。また、カプラ16によって分岐された他方の無線信号は、送信信号測定部55におけるミキサ19へ出力される。ここで、カプラ16からミキサ19へ出力される無線信号の電力は、カプラ16からミキサ19へ出力される無線信号の電力と比べてかなり小さくなるように、カプラ16における結合度が設定される。
【0046】
ミキサ19は、カプラ16から受けた無線信号と変換信号生成部17から受けた周波数fMTXの測定用ローカル信号とを乗算することにより、カプラ16から受けた無線信号を中心周波数fIFのIF信号に周波数変換し、ローパスフィルタ20へ出力する。
【0047】
ローパスフィルタ20は、ミキサ19から受けたIF信号の周波数成分のうち、所定の周波数以上の成分を減衰させた信号をアナログ/デジタル変換器21へ出力する。
【0048】
アナログ/デジタル変換器21は、ローパスフィルタ20から受けたIF信号をサンプリング周波数fADCでアナログ/デジタル変換し、信号処理部11におけるベースバンド変換部71へ出力する。ここで、アナログ/デジタル変換器21は、変換信号生成部17から受けた周波数fADCのクロックを用いて上記IF信号をサンプリングする。
【0049】
ベースバンド変換部71は、アナログ/デジタル変換器21から受けたIF帯のデジタル信号をたとえば直交復調してベースバンドのデジタル信号に変換し、データ補正部76へ出力する。このベースバンドのデジタル信号が、無線送信部52から出力される送信無線信号の測定結果を示している。
【0050】
データ補正部76は、ベースバンド変換部71から受けたデジタル信号に基づいて、通信データ生成部75によって生成された通信データを補正し、デジタル/アナログ変換器12へ出力する。より詳細には、データ補正部76は、たとえば、無線送信部52から受けたデジタル信号が示す送信無線信号の測定結果から、当該送信無線信号の変調帯域外の成分すなわちサイドローブを測定し、このサイドローブが所定レベル以下になるように通信データを補正する。
【0051】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る変換信号生成部の構成を示す図である。
【0052】
図3を参照して、変換信号生成部17は、基準発振器22と、分周回路23,24と、矩形波変換回路25と、電圧制御発振回路31と、PLL(Phase Locked Loop)回路32と、カプラ33と、ミキサ34と、減衰回路35と、分周回路36とを含む。減衰回路35は、コイルLと、キャパシタCと、可変容量素子CVと、抵抗Rとを含む。可変容量素子CVは、たとえばバリキャップダイオードである。
【0053】
変換信号生成部17は、送信用ローカル信号およびアナログ/デジタル変換器21へのサンプリングクロックを用いて測定用ローカル信号を生成する。すなわち、変換信号生成部17は、周波数fTXの送信用ローカル信号と周波数fADCのクロックの分周クロックとを乗算することにより、周波数fMTXの測定用ローカル信号を生成する。
【0054】
より詳細には、基準発振器22は、アナログ信号である基準クロックを生成して出力する。矩形波変換回路25は、基準発振器22から受けた基準クロックをデジタル信号のクロックに変換し、分周回路23,24へ出力する。
【0055】
分周回路23は、矩形波変換回路25から受けたクロックを1/n1(n1は1以上の整数)に分周して周波数fDACのクロックを生成し、デジタル/アナログ変換器12へ出力する。分周回路24は、矩形波変換回路25から受けたクロックを1/n2(n2は1以上の整数)に分周して周波数fADCのクロックを生成し、アナログ/デジタル変換器21および分周回路36へ出力する。
【0056】
分周回路36は、分周回路24から受けたクロックを1/n3(n3は1以上の整数)に分周して周波数fIFのクロックを生成し、ミキサ34へ出力する。分周回路81は、矩形波変換回路25から受けたクロックを1/n4(n4は1以上の整数)に分周して位相比較用クロックを生成し、PLL回路32へ出力する。
【0057】
電圧制御発振回路31は、送信用ローカル信号を生成してカプラ33およびPLL回路32へ出力する。また、電圧制御発振回路31は、PLL回路32から受けた制御電圧Vctrlに基づいて送信用ローカル信号の周波数fTXを変更する。
【0058】
PLL回路32は、電圧制御発振回路31から受けた送信用ローカル信号の周波数fTXが位相比較用クロックの位相と同期し、かつ所定値になるように、電圧制御発振回路31へ出力する制御電圧のレベルを制御する。
【0059】
カプラ33は、電圧制御発振回路31から受けた送信用ローカル信号を分岐して出力する。カプラ33によって分岐された一方の送信用ローカル信号は、直交変調器13へ出力される。カプラ33によって分岐された他方の送信用ローカル信号は、ミキサ34へ出力される。
【0060】
ミキサ34は、カプラ33から受けた周波数fTXの送信用ローカル信号と分周回路36から受けた周波数fIFのクロックとを乗算することにより、周波数fMTXの測定用ローカル信号を生成して減衰回路35へ出力する。
【0061】
減衰回路35は、たとえばLC共振回路によって構成されるトラップ回路であり、ミキサ34の乗算により発生する信号のうち、測定用ローカル信号の周波数fMTX以外の周波数(以下、減衰対象周波数とも称する。)すなわちイメージ周波数の信号を減衰させ、ミキサ19へ出力する。
【0062】
[動作]
まず、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置が変換信号を生成する際の動作について図面を用いて説明する。
【0063】
無線基地局装置101の送信無線信号は、たとえば帯域幅がBW[MHz]に設定され、BW[MHz]の範囲でOFDM変調が行われる。送信無線信号のキャリア周波数すなわち中心周波数は、たとえば2000MHz、2000+BW[MHz]、2000+2×BW[MHz]・・・に設定される。
【0064】
DPD等を行なうために送信無線信号をモニタする場合には、送信無線信号のサイドローブを測定するために、送信無線信号の変調帯域幅の数倍の帯域を復調する必要がある。
【0065】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置における各信号の周波数配置を示す図である。
【0066】
図4において、横軸が周波数を示し、縦軸がレベルを示す。また、fIFは、ミキサ19が出力するIF信号の中心周波数を示し、BWは、ミキサ19が出力するIF信号の変調帯域幅を示し、fADCは、アナログ/デジタル変換器21におけるサンプリング周波数すなわちアナログ/デジタル変換器21が用いるクロックの周波数を示している。
【0067】
また、図4は、アナログ/デジタル変換器21がミキサ19からのIF信号に対してオーバーサンプリングを行い、fIF:fADC=1:4である場合を示している。
【0068】
図4を参照して、送信信号測定部55において、アナログ/デジタル変換器21がサンプリング周波数fADCで中心周波数fIFのIF信号をサンプリングすることにより、DC(0Hz)〜fADC/2のナイキスト領域内における中心周波数fIFかつバンド幅(BW×5)のIF信号をデジタル変換した信号が生成される。これにより、当該IF信号の変調帯域外の成分すなわちサイドローブSDを測定することが可能となる。
【0069】
なお、サンプリング周波数fADCは、アナログ/デジタル変換器21の使用可能帯域を上限とした値に設定される。そして、DC(0Hz)〜fADC/2のナイキスト領域内にバンド幅(BW×5)のデジタル信号を生成できるように、アナログ/デジタル変換器21へ入力される信号の中心周波数fIFおよびサンプリング周波数fADCの値が設定される。すなわち、中心周波数fIFおよび周波数fADCの比は固定的に設定される。
【0070】
ここで、無線基地局装置101では、送信用ローカル信号の周波数は変更可能であり、送信用ローカル信号の周波数を変更することにより、送信無線信号の周波数が設定される。
【0071】
このため、無線基地局装置101では、送信無線信号の設定周波数に関わらず、送信信号測定部55におけるアナログ/デジタル変換器21の変換対象信号の中心周波数fIFが一定になるように、すなわちミキサ19における周波数変換によって生成される信号の中心周波数fIFが一定となるように、ミキサ19が周波数変換に用いる測定用ローカル信号の周波数fMTXを制御する必要がある。
【0072】
すなわち、送信無線信号の中心周波数をfTXとし、アナログ/デジタル変換器21に入力される信号の中心周波数をfIFとすると、以下の関係が成立する。
fTX−fMTX=fIF・・・(A)
【0073】
この式(A)に従い、fIFが一定値となるように、ミキサ19へ出力するローカル信号の周波数fMTXを制御することにより、周波数fMTXを周波数fTXに追従させる必要がある。
【0074】
すなわち、式(A)より、測定用ローカル信号の周波数fMTXは以下の式で表される。
fMTX=fTX−fIF・・・(B)
【0075】
式(B)より、測定用ローカル信号は、周波数fTXを有する信号と周波数fIFを有する信号とを乗算することにより得られることが分かる。
【0076】
ここで、アナログ/デジタル変換器21に入力される信号の中心周波数fIFと、アナログ/デジタル変換器21のサンプリングクロックの周波数fADCとの間には、たとえば、アナログ/デジタル変換器21がオーバーサンプリングを行なう場合、前述のようにfIF:fADC=1:4の固定関係がある。このため、アナログ/デジタル変換器21のサンプリングクロックを固定比で分周することにより、周波数fIFのクロックを作成することができる。
【0077】
そこで、無線通信装置101では、この固定関係を利用して、分周回路36によってアナログ/デジタル変換器21のサンプリングクロックを4分周し、ミキサ34によって分周クロックと周波数fTXの送信用ローカル信号と乗算する。
【0078】
これにより、送信信号測定部55における測定用ローカル信号を生成するためのVCOを不要としながら、送信用ローカル信号の周波数fTXに応じて周波数fMTXが変化する測定用ローカル信号を生成することが可能となる。
【0079】
ここで、無線通信装置101では、変換信号生成部17のミキサ34において、イメージ周波数の信号が発生する。送信信号測定部55におけるミキサ19がこのイメージ周波数の信号を受けると、ミキサ19からアナログ/デジタル変換器21へ妨害信号が出力される場合がある。そうすると、データ補正部76は、当該妨害信号を用いてDPDの補償演算を行なってしまう。
【0080】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の変換信号生成部における各信号の周波数配置を示す図である。
【0081】
図5を参照して、ミキサ34が、カプラ33から受けた周波数fTXの送信用ローカル信号と分周回路36から受けた周波数fIFのクロックとを乗算すると、ミキサ19へ出力すべき周波数fMTX=fTX−fIFの測定用ローカル信号に加えて、周波数(fTX+fIF)のイメージ周波数の信号が発生する。
【0082】
ここで、不要信号の漏えい等の原因により、送信信号測定部55におけるミキサ19が(fTX+2×fIF)の周波数成分を有する妨害信号を受けると、以下の式(C)で表されるように、ミキサ19から中心周波数fIFの妨害信号が出力されてしまう。そうすると、データ補正部76において誤ったデータ補正が行われてしまう場合がある。
fTX+fIF−fTX=fIF・・・(C)
【0083】
このような問題点を解決するために、無線通信装置101では、変換信号生成部17において減衰回路35を設ける。
【0084】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置の変換信号生成部における減衰回路の周波数特性を示す図である。
【0085】
図6を参照して、減衰回路35は、ミキサ34から受けた信号のうち、周波数(fTX+fIF)のイメージ周波数の信号成分を減衰させ、減衰後の信号をミキサ19へ出力する。
【0086】
また、減衰回路35は、送信用ローカル信号の周波数fTXに応じて減衰対象周波数を変更する。
【0087】
より詳細には、電圧制御発振回路31は、送信用ローカル信号を生成し、供給される制御電圧に応じて送信用ローカル信号の周波数fTXを変化させる。たとえば、周波数fTXは、制御電圧Vctrlが大きくなると高くなり、小さくなると低くなる。
【0088】
変換信号生成部17では、これを利用して、減衰回路35が、制御電圧Vctrlに応じて減衰対象周波数を変更する。
【0089】
たとえば、減衰回路35は、供給される制御電圧Vctrlに応じて容量値が変化する可変容量素子CVを含み、可変容量素子CVの容量値に応じて減衰対象周波数を変化させる。
【0090】
したがって、減衰回路35における可変容量素子CVへ与える制御電圧Vctrlを制御することにより、送信周波数fTXの変更によるイメージ周波数の変化に追従して、当該イメージ周波数の信号を減衰させることが可能となる。
【0091】
また、減衰回路35においてバリキャップダイオード等の可変容量素子を用いる構成により、LC共振回路における容量を連続的に制御できるので、インダクタンスを離散的に制御する構成と比べて、減衰対象周波数をなめらかに制御することができる。
【0092】
なお、電圧レベル、および容量値の変化度合い等の問題により、制御電圧Vctrlをそのまま減衰回路35における可変容量素子CVに供給することができない場合には、図3に示すように、トラップ制御回路82を設けてもよい。
【0093】
すなわち、トラップ制御回路82は、電圧制御発振回路31から受けた制御電圧Vctrlを変換して可変容量素子CVに供給する。たとえば、トラップ制御回路82の出力電圧Yは、定数aおよび定数bを用いて以下の式で表される。
Y=a×Vctrl+b
【0094】
ところで、DPDを採用する装置では、送信系および測定系において少なくとも2つのVCOが必要となる。VCOは、他の部品と比べて大きく、かつ高価であることから、このようなVCOの搭載数を削減することにより、装置の回路構成の簡略化を図る技術が望まれる。
【0095】
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、送信信号測定部55は、無線送信部52から無線端末装置201へ送信される無線信号を測定するために、カプラ16から受けた無線信号を、変換信号生成部17から供給される周波数fMTXの測定用ローカル信号を用いて周波数の低い中心周波数fIFのIF信号に変換する。そして、送信信号測定部55は、中心周波数fIFのIF信号を、変換信号生成部17から供給される周波数fADCのクロックを用いてデジタル信号に変換する。そして、変換信号生成部17は、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fADCのクロックを用いて周波数fMTXの測定用ローカル信号を生成する。
【0096】
このような構成により、送信信号測定部55における測定用ローカル信号を生成するためのVCOを不要としながら、送信用ローカル信号の周波数fTXに応じて周波数fMTXが変化する測定用ローカル信号を生成することが可能となる。したがって、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、装置の回路構成の簡略化を図ることができる。
【0097】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、変換信号生成部17は、周波数fTXの送信用ローカル信号と周波数fADCのクロックの分周クロックとを乗算する。そして、減衰回路35は、上記乗算により発生する信号のうち、測定用ローカル信号の周波数fMTX以外の減衰対象周波数すなわちイメージ周波数の信号を減衰させる。
【0098】
このような構成により、上記乗算によって発生するイメージ周波数の信号によってミキサ19から妨害信号が出力され、データ補正部76において誤ったデータ補正が行われることを防ぐことができる。
【0099】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、送信用ローカル信号の周波数は変更可能であり、この周波数に応じて送信無線信号の周波数が変化する。そして、減衰回路35は、送信用ローカル信号の周波数fTXに応じて減衰対象周波数を変更する。
【0100】
このような構成により、無線通信装置の送信周波数が設定変更可能な場合でも、当該送信周波数に追従して減衰回路35の減衰対象周波数を変更することができるため、イメージ周波数の信号を適切に除去することができる。
【0101】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、変換信号生成部17において、電圧制御発振回路31は、周波数fTXの送信用ローカル信号を生成し、この周波数fTXは、電圧制御発振回路31に供給される制御電圧Vctrlに応じて変化する。そして、減衰回路35は、制御電圧Vctrlに応じて減衰対象周波数を変更する。
【0102】
このような構成により、簡易な構成で送信用ローカル信号の周波数fTXの情報を減衰回路35に通知することができる。
【0103】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、減衰回路35は、供給される制御電圧Vctrlに応じて容量値が変化する可変容量素子を含み、この可変容量素子の容量値に応じて減衰対象周波数が変化する。
【0104】
このような構成により、減衰回路35における容量を連続的に制御できるので、インダクタンスを離散的に制御する構成と比べて、減衰対象周波数をなめらかに制御することができる。
【0105】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、減衰回路35はトラップ回路である。
【0106】
このような構成により、イメージ周波数成分の信号のみを適切に減衰させることができる。
【0107】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、送信信号測定部55において、ミキサ19は、カプラ16から受けた無線信号と周波数fMTXの測定用ローカル信号とを乗算することにより、中心周波数fIFのIF信号を出力する。アナログ/デジタル変換器21は、変換信号生成部17から供給される周波数fADCのクロックに基づいて、中心周波数fIFのIF信号をデジタル信号に変換する。また、変換信号生成部17において、分周回路36は、周波数fADCのクロックを受けて分周する。ミキサ34は、分周回路36によって分周された周波数fADCのクロックと周波数fTXの送信用ローカル信号とを乗算することにより、周波数fMTXの測定用ローカル信号を出力する。減衰回路35は、ミキサ34から出力される周波数fMTXの測定用ローカル信号に含まれるイメージ周波数の信号を減衰させ、減衰後の測定用ローカル信号をミキサ19へ出力する。
【0108】
このような構成により、簡易な構成で、送信信号測定部55における測定用ローカル信号を生成するためのVCOを不要としながら、送信用ローカル信号の周波数fTXに応じて周波数fMTXが変化する測定用ローカル信号を生成することが可能となる。また、データ補正部76において誤ったデータ補正が行われることを防ぐことができる。
【0109】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、送信データ処理部51は、送信信号測定部55によって変換されたデジタル信号に基づいて通信データを補正し、補正した通信データをアナログ信号に変換して出力する。
【0110】
このような構成により、VCOの搭載数を削減しながら、送信無線信号の測定結果を用いて通信データを補正し、無線通信装置の送信特性を向上させることができる。
【0111】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、アナログ/デジタル変換器21においてオーバーサンプリングが行われる場合について説明した。一方、アナログ/デジタル変換器21においてアンダーサンプリングが行われる場合には、(fTX+fIF)の周波数成分を有する妨害信号ではなく、他の周波数成分を有する妨害信号が問題となる。しかしながら、アンダーサンプリングの場合でも、アナログ/デジタル変換器21に入力される信号の中心周波数fIFと、アナログ/デジタル変換器21のサンプリングクロックの周波数fADCとの間には固定関係があることから、同様に本発明を適用可能である。
【0112】
すなわち、アナログ/デジタル変換器21に入力される信号の中心周波数fIFと、アナログ/デジタル変換器21のサンプリングクロックの周波数fADCとが1:4の関係ではなくても、1:3等の一定の関係にはなるので、変換信号生成部17により、VCOの搭載数を削減し、妨害信号による誤動作の防止が可能となる。
【0113】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、アナログ/デジタル変換器21においてIFサンプリングを行なう構成であるとしが、これに限定するものではない。アナログ/デジタル変換器21の前段回路において送信無線信号がベースバンド信号にダウンコンバートされ、アナログ/デジタル変換器21がベースバンド信号をサンプリングする構成であってもよい。
【0114】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、減衰回路35は、電圧制御発振回路31に供給される制御電圧Vctrlに応じて減衰対象周波数を変更する構成であるとしたが、これに限定するものではない。減衰回路35は、送信用ローカル信号の周波数fTXの情報を取得する構成であればよい。たとえば、信号処理部11が送信無線信号の周波数情報を有し、PLL回路32の動作設定を行なう場合には、減衰回路35は、信号処理部11から送信用ローカル信号の周波数fTXの情報を取得する構成とすることができる。
【0115】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置では、減衰回路35は、送信用ローカル信号の周波数fTXに応じて減衰対象周波数を変更する構成であるとしたが、これに限定するものではない。
【0116】
無線通信装置101の送信無線信号の周波数が一定である場合には、周波数fMTXを変化させる必要はなく、減衰回路35の減衰対象周波数が固定される構成であってもよい。
【0117】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置は、DPDを行なう構成であるとしたが、これに限定するものではない。DPDに限らず、送信無線信号の測定結果を外部へ出力したり、内部のメモリに蓄積したりする等、単に送信無線信号を測定する構成であってもよい。
【0118】
また、本発明の第1の実施の形態では、無線基地局装置101におけるVCOの搭載数を削減する例を説明したが、本発明は、無線端末装置201等の他の無線通信装置にも適用可能である。
【0119】
また、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置は、TDD方式およびFDD方式等、種々の無線通信方式に適用することが可能である。
【0120】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0121】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る無線通信装置と比べて送信信号測定部におけるミキサを2段設けた無線通信装置に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る無線通信装置と同様である。
【0122】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【0123】
図7を参照して、無線基地局装置(無線通信装置)102は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置と比べて、ベースバンド変換部71を備えず、変換信号生成部17の代わりに変換信号生成部67を備え、送信信号測定部55の代わりに送信信号測定部77を備える。送信信号測定部77は、ミキサ19と、BPF61と、直交復調器62と、アナログ/デジタル変換器(ADC)21と、ベースバンド変換部71とを含む。直交復調器62は、ミキサ63を含む。
【0124】
送信信号測定部77は、無線信号から変換したIF信号(第1の測定信号)を、変換信号生成部67から供給される周波数fMTX2の測定用ローカル信号(第3の測定用変換信号)を用いてさらに周波数の低いベースバンド信号またはIF信号(第3の測定信号)に変換し、変換信号生成部67から供給されるクロック(第2の測定用変換信号)に基づいて、変換された信号をデジタル信号に変換する。
【0125】
より詳細には、ミキサ19は、カプラ16から受けた無線信号と変換信号生成部67から受けた周波数fMTX1の測定用ローカル信号とを乗算することにより、カプラ16から受けた無線信号をIF信号に周波数変換し、BPF61へ出力する。
【0126】
BPF61は、ミキサ19から受けたIF信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させた信号を直交復調器62へ出力する。
【0127】
直交復調器62は、BPF61から受けたIF信号と変換信号生成部67から受けた周波数fMTX2の測定用ローカル信号とをミキサ63によって乗算することにより、BPF61から受けたIF信号を直交復調してベースバンド信号に変換し、アナログ/デジタル変換器21へ出力する。このベースバンドのデジタル信号が、無線送信部52から出力される送信無線信号の測定結果を示している。
【0128】
アナログ/デジタル変換器21は、直交復調器62から受けたベースバンド信号をサンプリング周波数fADCでアナログ/デジタル変換し、データ補正部76へ出力する。ここで、アナログ/デジタル変換器21は、変換信号生成部67から受けた周波数fADCのクロックを用いて上記ベースバンド信号をサンプリングする。
【0129】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る変換信号生成部の構成を示す図である。
【0130】
図8を参照して、変換信号生成部67は、変換信号生成部17と比べて、さらに、ミキサ37を含む。
【0131】
変換信号生成部67は、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fADCのクロックを用いて周波数fMTX1の測定用ローカル信号(第1の測定用変換信号)を生成し、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fMTX1の測定用ローカル信号を用いて周波数fMTX2の測定用ローカル信号を生成する。
【0132】
より詳細には、ミキサ37は、カプラ33から受けた周波数fTXの送信用ローカル信号とミキサ34から減衰回路35経由で受けた周波数fMTX1の測定用ローカル信号とを乗算することにより、周波数fMTX2の測定用ローカル信号を生成してミキサ63へ出力する。なお、変換信号生成部67において、ミキサ37の後段に、イメージ周波数の信号を減衰させるための減衰回路が設けられる構成であってもよい。
【0133】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置では、送信信号測定部77は、無線信号から変換したIF信号を、変換信号生成部67から供給される周波数fMTX2の測定用ローカル信号を用いてさらに周波数の低いベースバンド信号またはIF信号に変換し、変換信号生成部67から供給されるクロックに基づいて、変換された信号をデジタル信号に変換する。そして、変換信号生成部67は、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fADCのクロックを用いて周波数fMTX1の測定用ローカル信号を生成し、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fMTX1の測定用ローカル信号を用いて周波数fMTX2の測定用ローカル信号を生成する。
【0134】
すなわち、送信用ローカル信号とアナログ/デジタル変換器21へのサンプリングクロックとを用いて1段目のミキサ19用の測定用ローカル信号を生成する構成により、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置と同様に、ミキサ19専用のVCOが不要となり、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0135】
さらに、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置では、送信用ローカル信号とミキサ19用の測定用ローカル信号とを用いて2段目のミキサ63用の測定用ローカル信号を生成する構成により、ミキサ63専用のVCOが不要となる。すなわち、送信信号測定部77における2つのVCOが不要となり、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0136】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る無線通信装置と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0137】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0138】
<第3の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る無線通信装置と比べてサンプリングクロックの代わりに測定用ローカル信号を用いて他の測定用ローカル信号を生成する無線通信装置に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る無線通信装置と同様である。
【0139】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る無線通信装置の構成を示す図である。
【0140】
図9を参照して、無線基地局装置(無線通信装置)103は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置と比べて、変換信号生成部17の代わりに変換信号生成部68を備え、また、送信信号測定部55の代わりに送信信号測定部78を備える。送信信号測定部78は、ミキサ19と、BPF61と、直交復調器62と、電圧制御発振回路39と、アナログ/デジタル変換器(ADC)21と、ベースバンド変換部71とを含む。直交復調器62は、ミキサ63を含む。
【0141】
送信信号測定部78は、カプラ16から受けた無線信号を、変換信号生成部68から供給される周波数fMTX1の測定用ローカル信号(第1の測定用変換信号)を用いて周波数の低いIF信号(第1の測定信号)に変換する。そして、送信信号測定部78は、このIF信号を、変換信号生成部68から供給される周波数fMTX2の測定用ローカル信号(第2の測定用変換信号)を用いてさらに周波数の低いIF信号(第2の測定信号)に変換する。そして、送信信号測定部78は、このIF信号を、変換信号生成部68から供給される周波数fADCのクロックを用いてデジタル信号に変換する。
【0142】
より詳細には、ミキサ19は、カプラ16から受けた無線信号と変換信号生成部68から受けた周波数fMTX1の測定用ローカル信号とを乗算することにより、カプラ16から受けた無線信号をIF信号に周波数変換し、BPF61へ出力する。
【0143】
BPF61は、ミキサ19から受けたIF信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させた信号を直交復調器62へ出力する。
【0144】
電圧制御発振回路39は、周波数fMTX2の測定用ローカル信号を生成してミキサ63および変換信号生成部68へ出力する。
【0145】
直交復調器62は、BPF61から受けたIF信号と電圧制御発振回路39から受けた周波数fMTX2の測定用ローカル信号とをミキサ63によって乗算することにより、BPF61から受けたIF信号を直交復調し、アナログ/デジタル変換器21へ出力する。
【0146】
アナログ/デジタル変換器21は、直交復調器62から受けたIF信号をサンプリング周波数fADCでアナログ/デジタル変換し、信号処理部11におけるベースバンド変換部71へ出力する。ここで、アナログ/デジタル変換器21は、変換信号生成部68から受けた周波数fADCのクロックに基づいて動作する。
【0147】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る変換信号生成部の構成を示す図である。
【0148】
図10を参照して、変換信号生成部68は、変換信号生成部17と比べて、分周回路36を含まない構成である。
【0149】
変換信号生成部68は、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fMTX2の測定用ローカル信号を用いて周波数fMTX1の測定用ローカル信号を生成する。
【0150】
より詳細には、ミキサ34は、カプラ33から受けた周波数fTXの送信用ローカル信号と電圧制御発振回路39から受けた周波数fMTX2の測定用ローカル信号とを乗算することにより、周波数fMTXの測定用ローカル信号を生成して減衰回路35へ出力する。
【0151】
このように、本発明の第3の実施の形態に係る無線通信装置では、送信信号測定部78は、カプラ16から受けた無線信号を、変換信号生成部68から供給される周波数fMTX1の測定用ローカル信号を用いて周波数の低いIF信号に変換する。送信信号測定部78は、このIF信号を、変換信号生成部68から供給される周波数fMTX2の測定用ローカル信号を用いてさらに周波数の低いIF信号に変換する。送信信号測定部78は、このIF信号を、変換信号生成部68から供給される周波数fADCのクロックを用いてデジタル信号に変換する。そして、変換信号生成部68は、周波数fTXの送信用ローカル信号および周波数fMTX2の測定用ローカル信号を用いて周波数fMTX1の測定用ローカル信号を生成する。
【0152】
すなわち、1段目のミキサ19が用いる測定用ローカル信号の周波数fMTX1は送信周波数に合わせて可変であることが必要となるが、2段目のミキサ63が用いる測定用ローカル信号の周波数fMTX2は可変である必要はない。したがって、送信用ローカル信号と2段目のミキサ63が用いる測定用ローカル信号とを用いて1段目のミキサ19用の測定用ローカル信号を生成する構成により、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信装置と同様に、ミキサ19専用のVCOが不要となり、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0153】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る無線通信装置と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0154】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
11 信号処理部
12 デジタル/アナログ変換器
13 直交変調器
14 ミキサ
15 送信アンプ
16 カプラ(分岐回路)
17 変換信号生成部
18 アンテナ
19 ミキサ
20 LPF
21 アナログ/デジタル変換器
22 基準発振器
23,24 分周回路
25 矩形波変換回路
31 電圧制御発振回路
32 PLL回路
33 カプラ
34 ミキサ
35 減衰回路
36 分周回路
37 ミキサ
39 電圧制御発振回路
51 送信データ処理部
52 無線送信部
55 送信信号測定部
61 BPF
62 直交復調器
63 ミキサ
67 変換信号生成部
68 変換信号生成部
71 ベースバンド変換部
75 通信データ生成部
76 データ補正部
77 送信信号測定部
78 送信信号測定部
82 トラップ制御回路
101,102,103 無線基地局装置(無線通信装置)
201 無線端末装置(無線通信装置)
301 無線通信システム
L コイル
C キャパシタ
CV 可変容量素子
R 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき通信データを生成し、生成した前記通信データをアナログ信号に変換して出力するための送信データ処理部と、
前記送信データ処理部から受けた前記アナログ信号を、供給される送信用変換信号を用いて無線信号に変換し、他の装置へ送信するための無線送信部とを備え、
前記無線送信部は、前記無線信号を分岐して出力するための分岐回路を含み、
さらに、
前記無線信号を測定するために、前記分岐回路から受けた前記無線信号を、供給される第1の測定用変換信号を用いて周波数の低い第1の測定信号に変換し、前記第1の測定信号を、供給される第2の測定用変換信号を用いてデジタル信号に変換するか、または供給される第2の測定用変換信号を用いてさらに周波数の低い第2の測定信号に変換し、前記第2の測定信号をデジタル信号に変換するための送信信号測定部と、
前記送信用変換信号および前記第2の測定用変換信号を用いて前記第1の測定用変換信号を生成するための変換信号生成部とを備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記変換信号生成部は、前記送信用変換信号と前記第2の測定用変換信号の分周信号とを乗算し、前記乗算により発生する信号のうち、イメージ周波数の信号を減衰させるための減衰回路を含む、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信用変換信号の周波数は変更可能であり、前記送信用変換信号の周波数に応じて前記無線信号の周波数が変化し、
前記減衰回路は、前記送信用変換信号の周波数に応じて減衰対象周波数を変更する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記変換信号生成部は、前記送信用変換信号を生成し、供給される制御電圧に応じて前記送信用変換信号の周波数が変化する電圧制御発振回路を含み、
前記減衰回路は、前記制御電圧に応じて前記減衰対象周波数を変更する、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記減衰回路は、供給される前記制御電圧に応じて容量値が変化する可変容量素子を含み、前記可変容量素子の容量値に応じて前記減衰対象周波数が変化する、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記減衰回路はトラップ回路である、請求項2から5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記送信信号測定部は、前記分岐回路から受けた前記無線信号と前記第1の測定用変換信号とを乗算することにより、前記第1の測定信号を出力するための第1のミキサと、
前記第2の測定用変換信号として供給されるクロックに基づいて、前記第1の測定信号をデジタル信号に変換するためのアナログ/デジタル変換器とを含み、
前記変換信号生成部は、
前記クロックを受けて分周するための分周回路と、
前記分周回路によって分周された前記クロックと前記送信用変換信号とを乗算することにより、第1の測定用変換信号を出力するための第2のミキサと、
前記第2のミキサから出力される前記第1の測定用変換信号に含まれるイメージ周波数の信号を減衰させ、減衰後の前記第1の測定用変換信号を前記第1のミキサへ出力するための減衰回路とを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記送信データ処理部は、前記送信信号測定部によって変換された前記第2の測定信号に基づいて前記通信データを補正し、補正した前記通信データをアナログ信号に変換して出力する、請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記送信信号測定部は、前記第1の測定信号を、供給される第3の測定用変換信号を用いてさらに周波数の低い第3の測定信号に変換し、前記第2の測定用変換信号として供給されるクロックに基づいて、前記第3の測定信号をデジタル信号に変換し、
前記変換信号生成部は、前記送信用変換信号および前記クロックを用いて前記第1の測定用変換信号を生成し、前記送信用変換信号および前記第1の測定用変換信号を用いて前記第3の測定用変換信号を生成する、請求項1から8のいずれか1項に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119744(P2012−119744A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265034(P2010−265034)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】