説明

無線LANシステム

【課題】列車内の各車両毎に発生する通信速度の差を均等化する。
【解決手段】この発明にかかる無線LANシステムによれば、列車内の無線アクセスポイント10,11,12が、自装置に接続している無線端末20,21,22,23,30の数を他のアクセスポイントに通知するとともに、他のアクセスポイントから通知された無線端末数から、自装置の接続端末数に比例した通信帯域を算出し、それに応じた通信帯域の制御を行うことで、各車両毎の通信速度を均等化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車内に配置された複数の無線アクセスポイント、無線端末を備える、無線LANシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車内公衆無線LANシステムは、列車内の乗客が使用する無線端末からインターネット等の公衆網への通信を実現するシステムである。列車内の乗客が使用するノートPCといった無線LAN端末と各車両毎に設置された無線アクセスポイントとを無線にて接続し、無線アクセスポイントから列車内に設置された列車〜地上間通信装置を経由して、インターネットへの通信を実現している。この際、列車内の無線アクセスポイントから列車内の列車〜地上間通信装置間、および地上側の列車〜地上間通信装置からインターネット間は銅線または光ケーブルのような有線による接続が可能であり、十分な通信速度が実現できるが、列車〜地上間に関しては、列車が移動するため、無線通信による接続が必要であり、一般的に通信速度の制限が発生する。
【0003】
これにより、列車内公衆無線LANシステムは、乗客全ての通信の合計が、一台の列車ごとの列車〜地上間の通信速度によって制限されている。
【0004】
また、列車内の無線LAN接続には、全ての座席にて十分な電波の強度を確保させるため、1車両あたりに1台以上の無線アクセスポイントが設置されている。これら、各車両設置の無線アクセスポイント間での無線の干渉を回避させるため、無線アクセスポイント毎に、他の無線アクセスポイントと間隔の離れた周波数が1chずつ割り当てられている。よって、1車両内の無線端末〜無線アクセスポイントの通信帯域は、1台の無線アクセスポイント1chにて使用できる無線通信帯域であり、1車両内に複数の無線端末が存在する場合、その無線通信帯域を複数の無線端末間で分割して使用することとなる。
【0005】
特許文献1は、下位の無線端末数により通信帯域の割り当てを行なっているが、無線アクセスポイントのエリアを拡大する際の中継無線アクセスポイントの帯域の均等化を目的とするものであり、上位の通信経路の均等化を目的とするものではない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−172719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1車両あたりの無線通信帯域を使用している端末数で分割しているため、車両毎の使用端末数に差がある場合、1台の無線端末あたりの最大無線通信速度に差が発生する。例えば車両1で使用している無線端末が4台で、車両2で使用している無線端末が1台で、1車両あたりの通信帯域が20Mbpsであった場合、車両2の無線端末は通信速度が最大20Mbpsまで通信が可能であるのに対し、車両1の無線端末は、4台同時に通信を行った場合、通信帯域20Mbpsを4分割して使用するため、1台あたりでは、通信速度は20/4=5Mbpsが最大の通信速度となり、車両2に対して4分の1までの速度にしかならない。
【0008】
車両1と車両2の全ての無線端末が同時に最大通信を行おうとした場合、確率的には、列車〜地上間通信の通信帯域は、全体の通信量に対するそれぞれの無線端末の通信量分に分割されることとなり、無線区間の最大通信速度の差が、そのままシステムを通した通信速度の差となるという問題があった。車両毎に同一の料金にてサービスを提供することを考慮すると、各無線端末間の通信速度に差が発生することは望ましくない。
【0009】
上記問題を解決するために、本発明では、各車両ごとの通信速度が均等化する手段をもって構築される無線LAN通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の態様にかかる無線LANシステムは、列車内に配置された、複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末とを備える。この無線LANシステムは、前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、他の前記無線アクセスポイントに通知する第1工程と、前記他の無線アクセスポイントが、通知された無線端末数の最大値と自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数との比率を算出し、前記比率に応じて前記無線端末への無線送出タイミングを調節する第2工程とを備えるものである。
【0011】
また、この発明の第2の態様にかかる無線LANシステムは、列車内に配置された、複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末と、前記複数の無線アクセスポイントと有線接続された列車地上間通信装置とを備える。この無線LANシステムは、前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、前記列車地上間通信装置に通知する第1工程と、前記列車地上間通信装置が、通知された無線端末数の最大値と各無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数との比率を算出し、各無線アクセスポイントに対応する前記比率を通知する第2工程と、前記無線アクセスポイントが、通知された前記比率に応じて、前記列車地上間通信装置への有線送出タイミング、または前記無線端末への無線送出タイミングを調節する第3工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の第1の態様によれば、無線LANシステムにおいて、列車内に配置された、複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末とを備え、前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、他の前記無線アクセスポイントに通知する第1工程と、前記他の無線アクセスポイントが、通知された無線端末数の最大値と自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数との比率を算出し、前記比率に応じて前記無線端末への無線送出タイミングを調節する第2工程とを備えることにより、各無線アクセスポイントが、他の無線アクセスポイントの端末接続数を認識し、列車内で最も多い無線端末の接続数と自装置の接続数の比率に応じて無線通信帯域を制御することで、自無線アクセスポイントに接続された無線端末1台あたりの無線通信帯域を、最も端末接続台数が多い無線アクセスポイントの無線端末1台あたりの無線通信帯域と同じにすることができ、列車全体で1無線端末あたりの無線通信帯域を均等化することが可能となることができる。
【0013】
また、この発明の第2の態様によれば、無線LANシステムにおいて、列車内に配置された、複数の無線アクセスポイントと、前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末と、前記複数の無線アクセスポイントと有線接続された列車地上間通信装置とを備え、前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、前記列車地上間通信装置に通知する第1工程と、前記列車地上間通信装置が、通知された無線端末数の最大値と各無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数との比率を算出し、各無線アクセスポイントに対応する前記比率を通知する第2工程と、前記無線アクセスポイントが、通知された前記比率に応じて、前記列車地上間通信装置への有線送出タイミング、または前記無線端末への無線送出タイミングを調節する第3工程とを備えることにより、各無線アクセスポイントの接続数の変動通知先を列車〜地上間通信装置1箇所に集約することで、各無線アクセスポイントとの1対1の通信による端末接続数の通知がより確実となり、また、列車〜地上間通信装置が、比率情報を所有することで、列車〜地上間通信装置から無線アクセスポイント向け方向の有線通信の通信帯域制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A.実施の形態1>
<A−1.構成>
上記の課題を解決するための本発明は、複数の無線アクセスポイントが列車内に存在する複数の無線端末との間で1対多の無線通信を行う無線LANシステムであって、前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続している無線端末数を同一の列車内の他の無線アクセスポイントへ通知する第1工程と、他の無線アクセスポイントから通知された端末接続数から、その最大値と、自無線アクセスポイントに接続している無線端末数の比率を算出し、その比率により、無線送出タイミングを調整する第2工程とを具備するものである。
【0015】
以下添付図を参照しながら、本発明の実施の形態1について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態1に関わる無線LANシステムの概略構成を表すブロック図である。図1を用いて、本発明の実施の形態1に関わる無線LANシステムの構成について説明する。
【0017】
本発明の実施の形態1に関わる無線LANシステムは、列車の各車両1,2内に設置された無線アクセスポイント10、11と、無線アクセスポイント10,11と接続され、地上の通信装置(インターネット50)と接続された列車側の列車〜地上間通信装置40,地上側の列車〜地上間通信装置41と、無線アクセスポイント10,11と無線通信可能であり、乗客が使用する無線端末20,21,22,23,30を備えるものである。
【0018】
無線アクセスポイント10、11は、列車内無線端末20,21,22,23,30とは無線LANにて接続可能であって、列車〜地上間通信装置40とは有線LANにて接続し、列車〜地上間通信装置40〜41間を通して、インターネット50網と、列車内の無線端末間との通信を実現する。無線端末間の無線LANとしては、IEEE802.11b/gのインフラストラクチャーモードにおいて2.4GHz帯の高周波信号を用いている。
【0019】
無線端末20,21,22,23,30は、一般的な無線LAN通信手段を有したパーソナルコンピュータやPDA等であり、前記無線アクセスポイント10,11とIEEE802.11b/gのプロトコルにより通信を行うものである。なお、一般的にIEEE802.11b/gプロトコルにおいて、データの通信帯域は20〜30Mbps程度である。
【0020】
列車〜地上間通信装置40,41は、高速で移動する列車と地上とを無線接続する通信装置である。列車〜地上間通信は、列車の移動速度や、線路区間等の条件により、通信方式としてはさまざまな方式が存在するが、この通信帯域が狭ければ、列車〜地上間通信が、全体の通信における通信帯域の制限となる。例えば、LCXを用いた方式の場合、1列車あたりのデータ通信帯域は2Mbps程度となっている。
【0021】
図1において、車両1内の無線端末20,21,22,23は、無線アクセスポイント10と無線LANにより接続し、車両2内の無線端末30は、無線アクセスポイント11と無線LANにより接続する。
【0022】
<A−2−1.動作>
以下、各車両内の無線端末数に基づいて、各無線LANの通信帯域を制限する処理について説明する。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1の無線アクセスポイント10,11が、自無線アクセスポイントに接続している無線端末数を同一の列車内の他の無線アクセスポイントへ通知する第1工程と、他の無線アクセスポイントから通知された端末接続数から、その最大値と、自無線アクセスポイントに接続している無線端末数の比率を算出し、その比率により、無線送出タイミングを調整する第2工程を具備することを特徴とする無線LANシステムの動作の流れを示す説明図である。構成要素については、図1に示したものと同様である。
【0024】
図2に示されたブロードキャスト信号101,111は、それぞれ無線アクセスポイント10,11の識別情報と無線アクセスポイント10,11の端末接続数n0,n1が設定されたものである。図2に示すようにブロードキャスト信号101,111は、無線アクセスポイント10,11から送信され、無線アクセスポイント10,11,12に受信される。
【0025】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、本構成における、無線アクセスポイント10,11が実施する手順について説明する。以下、S1001,S1002…は、処理手順の番号を示す。
【0026】
ここで無線アクセスポイント10,11は、図4に示す表のような、自装置を含めた同じ列車内の全ての無線アクセスポイントについて、各無線アクセスポイント毎の現在接続している無線端末数の情報を管理する。図4の表は、各無線アクセスポイント10,11,12に現在接続されている無線端末の数を示し、各無線アクセスポイント10,11,12からの通知によって、順次更新されていくものである。
【0027】
無線アクセスポイント10,11は、自装置と無線端末20,21,22,23,30との接続または切断する(ステップS1001)毎に、第1工程として他の無線アクセスポイントへ対して自装置の識別情報と変動した端末接続数をブロードキャスト信号101で通知し(ステップS1002、図2における信号の送受信の状態)、 図4の無線アクセスポイント毎の接続数情報のうち、自装置分の接続されている無線端末数を修正する(ステップS1004)。
【0028】
また、他無線アクセスポイントで接続数が変動した場合は、他無線アクセスポイントから無線アクセスポイントの識別情報と端末接続数がブロードキャスト(例えば図2におけるブロードキャスト信号101,111)で通知される(ステップS1003)ので、受信した内容から、図4の無線アクセスポイント毎の接続数情報の該当の無線アクセスポイントの接続数を修正する(ステップS1004)。
【0029】
ステップS1004実施後、修正した各無線アクセスポイント毎の接続数情報から、最も多く無線端末を接続している無線アクセスポイントの接続数である最大接続数Nを抽出する(ステップS1005)。無線アクセスポイント10は、第2工程として最大接続数Nと自装置の接続端末数n0より算出されるn0/Nに基づき、通信帯域を制御する(ステップS1006)。
【0030】
このn0/Nは、無線アクセスポイント10に接続された無線端末1台あたりの通信帯域と、列車内で最も割当が小さい車両における1無線端末あたりの通信帯域との比率であり、無線アクセスポイント10の通信帯域をn0/Nに制御することで、両者を均一にできる。
【0031】
実際の制御としては、処理が煩雑になることより、図5の表に示すように帯域の制御比率を数段階設定し、接続最大数との比率があるしきい値に達するごとに、タイミングを変更するという方法が考えられる。すなわち、無線アクセスポイント10は、接続数比率n0/Nが変動する毎に、図5の表を参照し、接続数比率n0/Nが設定されたしきい値(表の左欄)を超えると、それに対応した通信帯域に割り当てられるように制御を行う。
【0032】
<A−2−2.制御方法の例>
前述の通信帯域の制御する方法の一つとして、無線送出タイミングを制御する方法を図6を用いて以下に示す。
【0033】
無線アクセスポイント10は、無線LANにおいて、衝突回避として設定されているCTS(Clear To Send)信号を使用することで、無線データの送受信を特定のタイミングで停止させることができる。その仕組みを図6に示す。図6の横方向が時間方向に対応している。無線によるデータ送受信後、無線アクセスポイント10はCTSを自装置宛に送出する。IEEE802.11に制定された規格より、CTS信号を受信した無線端末20,21は、このCTS信号の対象となる装置からのACK信号を受信するまでは、CTS信号対象の無線装置が無線通信を使用中と認識し、無線通信の送出を行わない。CTS信号の対象を無線アクセスポイント10自身に設定することにより、無線アクセスポイント10が自装置宛のACK信号を送出するまでは、他の無線端末による無線データの送信が行われない。よって、図6に示すように、無線アクセスポイント10が自装置宛のCTS信号送信した時から、自装置宛のACK信号を送信する時までは、無線端末20,21とは通信を行なわず、無線アクセスポイント10がCTS信号とACK信号間の時間を制御することで、無線データの停止時間を制御することができる。ACK信号受信後、DIFS時間+αの時間を置いて、送受信が開始される。
【0034】
ここで、1パケットあたりの伝送時間をAとしたとき、無線データ送受信毎に、Aに特定の比率をかけた時間分の無線データの送受信を停止することにより、無線通信帯域の割当が実現できる。無線通信においては、通信伝送速度が電波状態により変動するため、Aの値は直前の通信の伝送速度より算出する必要がある。
【0035】
図7に、その動作例を示す。図7の横方向が時間方向に対応している。それぞれの接続端末数により、例えば無線アクセスポイント10の通信帯域の割当が10%で、無線アクセスポイント11の通信帯域の割当が20%であった場合、無線アクセスポイント10に対して、1パケット毎に遅延時間9Aを、無線アクセスポイント11に対して、遅延時間4Aを付与する。これにより、遅延時間以外の時間がデータ送信時間に相当することから、単位時間あたりのデータの送信時間が、それぞれ10%と20%になり、通信帯域の割当が実現できる。
【0036】
また、通信帯域の制御には、無線アクセスポイント10,11と列車〜地上通信装置間の有線通信の帯域を第2工程として制御することにより、車両間の通信の均一化に対して同様の効果が期待できる。
【0037】
無線アクセスポイント10,11と列車〜地上通信装置間の有線接続通信においては、通信速度は一定の値であり、この通信速度によって算出された1パケットあたりの伝送時間をAとする。無線アクセスポイント10,11から送出される信号に、このAの特定の比率をかけた遅延を加えることで、有線タイミングを特定の比率に割り当てることができる。
【0038】
<A−3.効果>
この発明にかかる実施の形態1によれば、無線LANシステムにおいて、列車内に配置された、複数の無線アクセスポイント10,11と、前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末20,21,22,23,30とを備え、前記無線アクセスポイント10,11が、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、他の前記無線アクセスポイントに通知する第1工程と、前記無線アクセスポイント10,11が、通知された無線端末数の最大値Nと自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数n0との比率を算出し、前記比率に応じて前記無線端末20,21,22,23,30への無線送出タイミングを調節する第2工程とを備えることで、前記比率であるn0/Nは、例えば無線アクセスポイント10に接続された無線端末1台あたりの通信帯域と、列車内で最も割当が小さい車両における1無線端末あたりの通信帯域との比率となるので、無線アクセスポイント10の通信帯域をn0/Nに制御することで、両者を均一にできる。
【0039】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、無線LANシステムにおいて複数の無線アクセスポイント10,11と有線接続された列車地上間通信装置40をさらに備え、無線端末20,21,22,23,30への無線送出タイミングを調節する替わりに、前記列車地上間通信装置への有線送出タイミングを調節する第2工程を備えることにより、接続端末数の最大値Nと、自無線アクセスポイントに接続している無線端末数n0の比率により、通信帯域を制御する方法として、無線アクセスポイント10,11から列車〜地上通信装置40へ送信される有線通信の帯域を制御することで、同様に車両間の通信の均一化することができる。
【0040】
<B.実施の形態2>
<B−1.構成>
構成要素に関しては、実施の形態1における場合と同様であるので、説明を省略する。ただし、図2におけるブロードキャスト信号101,111の替わりに、図8におけるユニキャスト信号102,112,122を用いて通信する点においては異なる。
【0041】
<B−2.動作>
無線アクセスポイント10,11,12の端末接続数を各無線アクセスポイント間で送受信する方法としては、列車〜地上間通信装置40,41において、前記無線アクセスポイント10,11,12の各無線アクセスポイントの接続端末数を集約し、列車内の全接続端末数、例えばその最大値と、各無線アクセスポイントに接続している無線端末数の比率を算出し、各無線アクセスポイントへする方式も可能である。
【0042】
図8は本方式の信号の流れを示す説明図である。102,112,122はそれぞれ無線アクセスポイント10,11,12と列車〜地上通信装置40間とで端末接続情報を送受信するユニキャスト信号である。
【0043】
以下、本実施の形態2における無線LANシステムが実施する手順を、図9のフローチャートに従って説明する。
【0044】
本方式においては、無線アクセスポイント10,11,12は、自装置に接続されている無線端末数が変動すると(ステップS2001)、第1工程として、無線端末数n0をユニキャスト通信102,112,122にて、列車〜地上通信装置40へ通知する(ステップS2002)。
【0045】
列車〜地上通信装置40は、通知された端末接続数n0,n1,n2より、列車内の接続最大数Nを抽出する(ステップS2003)。そして、第2工程として、各無線アクセスポイント10,11,12へ、接続最大数Nに対する各無線アクセスポイントの接続比率n0/N,n1/N, n2/Nを定期的にユニキャスト102,112,122にて通知する(ステップS2004)。
【0046】
各無線アクセスポイントは、通知された比率n0/N,n1/N, n2/Nに応じて、通信帯域を制御する(ステップS2005)。通信帯域の制御は、前記の通り、第3工程として、無線通信の送出タイミングあるいは有線通信のタイミングを制御することで実現する。
【0047】
また、列車〜地上間通信装置40は、第3工程として、前記接続比率n0/N,n1/N, n2/Nに応じて、各無線アクセスポイント向けの有線接続の通信制御することも可能である。この制御方式としては、前記無線アクセスポイント10,11,12による有線通信の制御と同等の方式が使用できる。列車〜地上間通信装置40による制御と、無線アクセスポイント10,11,12による制御を並行して実施することによって、無線アクセスポイント10,11,12と列車〜地上間通信装置との間の有線通信を送受信とも制御することができ、より精密な制御が可能となる。
【0048】
<B−3.効果>
本実施の形態2によれば、無線LANシステムにおいて、列車内に配置された、複数の無線アクセスポイント10,11,12と、前記無線アクセスポイント10,11,12と無線接続自在な複数の無線端末20,21,22,23,30と、前記複数の無線アクセスポイント10,11,12と有線接続された列車地上間通信装置40とを備え、前記無線アクセスポイント10,11,12が、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、前記列車地上間通信装置40,41に通知する第1工程と、前記列車地上間通信装置40が、通知された無線端末数の最大値と各無線アクセスポイント10,11,12に接続された前記無線端末数との比率を算出し、各無線アクセスポイント10,11,12に対応する前記比率を通知する第2工程と、前記無線アクセスポイント10,11,12が、通知された前記比率に応じて、前記列車地上間通信装置40への有線送出タイミング、または前記無線端末20,21,22,23,30への無線送出タイミングを調節する第3工程とを備えることにより、各無線アクセスポイント10,11,12の接続数の変動通知先を列車〜地上間通信装置1箇所に集約することで、各無線アクセスポイント10,11,12との1対1の通信による端末接続数の通知がより確実となり、また、列車〜地上間通信装置40,41が、比率情報を所有することで、列車〜地上間通信装置40から無線アクセスポイント10,11,12向け方向の有線通信の通信帯域制御が可能となる。
【0049】
また、本実施の形態2によれば、無線LANシステムにおいて、無線アクセスポイント10,11,12が、通知された比率に応じて、列車間通信装置40への有線送出タイミングを調節する場合に、前記列車地上間通信装置40が、前記無線アクセスポイント10,11,12への有線送出タイミングを調節する第3工程を備えることにより、列車〜地上間通信装置40による制御と、無線アクセスポイント10,11,12による制御を並行して実施することができ、より精密な制御が可能となる。
【0050】
以上説明したとおり、本発明により、列車内における公衆無線LANシステムの1方式において、車両間での通信速度を均一化することが可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態1,2において示された、複数の無線アクセスポイント、無線端末は、図に示された数等に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に関わる無線LANシステムの概略構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に関わる無線LANシステムの信号の流れを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における無線アクセスポイントが実施する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の無線アクセスポイントと接続端末数の管理状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における接続数比率と通信帯域制御を表す図である。
【図6】本発明の実施の形態における無線通信タイミング制御の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における有線通信タイミング制御の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2に関わる無線LANシステムの信号の流れを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2における無線LANシステムが実施する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1,2 車両、10,11,12 無線アクセスポイント、20,21,22,23,30 無線端末、40,41 列車〜地上間通信装置、50 インターネット、101,111 ブロードキャスト信号、102,112,122 ユニキャスト信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車内に配置された、複数の無線アクセスポイントと、
前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末と、
を備える、無線LANシステムであって、
前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、他の前記無線アクセスポイントに通知する第1工程と、
前記無線アクセスポイントが、通知された無線端末数の最大値と自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数との比率を算出し、前記比率に応じて前記無線端末への無線送出タイミングを調節する第2工程と、
を備える、無線LANシステム。
【請求項2】
前記複数の無線アクセスポイントと有線接続された列車地上間通信装置をさらに備え、
前記第2工程は、前記無線端末への前記無線送出タイミングを調節する替わりに、前記列車地上間通信装置への有線送出タイミングを調節する工程である、
請求項1に記載の無線LANシステム。
【請求項3】
列車内に配置された、複数の無線アクセスポイントと、
前記無線アクセスポイントと無線接続自在な複数の無線端末と、
前記複数の無線アクセスポイントと有線接続された列車地上間通信装置と、
を備える、無線LANシステムであって、
前記無線アクセスポイントが、自無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数を、前記列車地上間通信装置に通知する第1工程と、
前記列車地上間通信装置が、通知された無線端末数の最大値と各無線アクセスポイントに接続された前記無線端末数との比率を算出し、各無線アクセスポイントに対応する前記比率を通知する第2工程と、
前記無線アクセスポイントが、通知された前記比率に応じて、前記列車地上間通信装置への有線送出タイミング、または前記無線端末への無線送出タイミングを調節する第3工程と、
を備える、無線LANシステム。
【請求項4】
前記第3工程が、前記無線アクセスポイントが、通知された前記比率に応じて、前記列車間通信装置への有線送出タイミングを調節する工程である場合、
前記列車地上間通信装置は、前記無線アクセスポイントへの有線送出タイミングを調節する、
請求項3に記載の無線LANシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−114562(P2010−114562A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284168(P2008−284168)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】